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特開2022-117272給水装置及び該給水装置の通信回線切替方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117272
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】給水装置及び該給水装置の通信回線切替方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/851 20220101AFI20220803BHJP
【FI】
H04L12/905
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013880
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(71)【出願人】
【識別番号】509044109
【氏名又は名称】ウイングレット・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕大
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】西野 憲次郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 正之
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA13
5K030HB06
5K030HC01
5K030HC09
5K030JT09
5K030LB08
5K030MA04
5K030MB05
5K030MC07
(57)【要約】
【課題】給水装置と管理装置との間で安定した通信を行うことを可能として、災害等のトラブル発生時の迅速な対応を可能とする給水装置及び該給水装置の通信回線切替方法を提供する。
【解決手段】災害等のトラブル発生時は、通信回線が輻輳して通信品質が低下する。このため、通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定し、測定結果に基づいて、複数の移動体通信事業者のうち一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線から、他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線へと切り替え制御を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、
前記ポンプユニットの運転情報を取得する運転情報取得部と、
前記ポンプユニットに関する設定情報を記憶する設定記憶部と、
前記ポンプユニットの異常に関する異常履歴情報を記憶する異常履歴情報記憶部と、
前記運転情報、前記設定情報、または前記異常履歴情報を、複数の移動体通信事業者のうち一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線を介して通信パケットを用いて送信する通信部と、
通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定し、該測定結果に基づいて前記一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線から他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線へと切替制御を行う通信制御部と、を有することを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記通信部は、応答要求パケットを送信するとともに、該応答要求パケットに対する応答パケットを受信し、
前記通信制御部は、受信した前記応答パケット数に基づいて通信品質を測定することを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記複数の移動体通信事業者が運用する全ての移動体通信回線の通信品質を測定し、該測定結果に基づいてウェイト処理を実行してから再起動することを特徴とする請求項1又は2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記ウェイト処理における待ち時間は、前記通信制御部が再起動する回数に応じて増加することを特徴とする請求項3に記載の給水装置。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記通信部が無作為なタイミングで通信接続を開始するように前記通信部を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、システムログを収集し、該システムログに基づいて前記無作為なタイミングを生成することを特徴とする請求項5に記載の給水装置。
【請求項7】
ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、
前記ポンプユニットの運転情報を取得する運転情報取得部と、
前記ポンプユニットに関する設定情報を記憶する設定記憶部と、
前記ポンプユニットの異常に関する異常履歴情報を記憶する異常履歴情報記憶部と、
前記運転情報、前記設定情報、または前記異常履歴情報を送信する通信部と、
該通信部を制御する通信制御部と、を有する給水装置の通信回線切替方法であって、
前記通信部が、複数の移動体通信事業者のうち一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線を介して通信パケットを用いて前記運転情報、前記設定情報、または前記異常履歴情報を送信するステップと、
前記通信制御部が、通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定するステップと、
前記通信制御部が、前記測定結果に基づいて前記一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線から他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線へと切替制御を行うステップと、を有することを特徴とする給水装置の通信回線切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置及び給水装置の通信回線切替方法に係り、特に、移動体通信回線の切り替えを行う給水装置とその通信回線切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、商業施設または工場等で使用する水を供給するために、給水装置が広く利用されている。そして給水装置は、私たちの日常生活で必要な生活水や、経済活動を実現するための工業用水等を安定的に供給する上で重要な役割を担っている。そのため、給水装置には、その運転状態や故障に関する情報を取得するために種々なセンサが取り付けられおり、センサによって取得された情報を遠隔の管理装置に送信している。これにより、管理装置のオペレータは、安定した運転状態を維持することができるように給水装置を監視し、必要に応じて作業員を派遣して部品の交換やメンテナンス等を行うとともに、例えば停電の発生等によって一時的に運転を中止した場合にも、適切な復旧対応を迅速に行うことが可能となる。
【0003】
特許文献1には、給水装置と通信装置とが近距離無線通信によって接続されて、給水装置の運転状況や故障に関する情報を遠隔のサーバに送信する技術が開示されている。通信装置としては、給水装置が設置された現場付近の情報端末、または作業員が所持する携帯端末であって、PC、タブレット型端末、スマートフォン、ラップトップ型端末などが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-128751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給水装置をインターネット等の広域通信網と接続することによって、給水装置の運転状況や故障情報を遠隔の管理装置に送信することが可能となるものの、給水装置は、生活水や工業用水を供給するという重要な役割を担っていることから、通信の安定性及び天災地変等の災害が発生した際の迅速な復旧能力が求められている。
特に災害が発生したときは、被災者の安否を確認するための通信によって通信回線が混雑し、通信の安定性が低下する。このように、通信回線が混雑することにより通信性能が低下する状態を、輻輳という。災害が発生すると、輻輳によって給水装置と管理装置との間に通信障害が発生し、給水装置に対する迅速な対応が妨げられる虞があった。
【0006】
そこで、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、給水装置と遠隔の管理装置との間で、より安定した通信を行い、災害等のトラブルが発生した際に迅速な対応を可能とする給水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の給水装置によれば、ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、前記ポンプユニットの運転情報を取得する運転情報取得部と、前記ポンプユニットに関する設定情報を記憶する設定記憶部と、前記ポンプユニットの異常に関する異常履歴情報を記憶する異常履歴情報記憶部と、前記運転情報、前記設定情報、または前記異常履歴情報を、複数の移動体通信事業者のうち一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線を介して通信パケットを用いて送信する通信部と、通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定し、該測定結果に基づいて前記一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線から他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線へと切替制御を行う通信制御部と、を有することにより解決される。
【0008】
上記構成によれば、給水装置は、通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定し、測定結果に基づいて一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線から他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線へと切り替え制御をおこなうため、接続中の移動体通信回線に輻輳等の通信障害が発生した場合には他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線に切り替えて通信を行うことができる。これによって給水装置と管理装置との間でより安定した通信を実現することができる。
また移動体通信回線は、我が国において広く一般に利用可能な広域通信回線であるため、様々な地域に設置される給水装置が、管理装置との間で安定した通信を実現することができる。
【0009】
また、前記通信部は、応答要求パケットを送信するとともに、該応答要求パケットに対する応答パケットを受信し、前記通信制御部は、受信した前記応答パケット数に基づいて通信品質を測定すると好適である。これにより、給水装置と管理装置の間の通信回線を介して実際に到達した通信パケットを用いて通信品質の測定を行うため、通信回線の通信品質を高い信頼性で測定することができる。
【0010】
また、通信制御部は、前記複数の移動体通信事業者が運用する全ての移動体通信回線の通信品質を測定し、該測定結果に基づいてウェイト処理を実行してから再起動すると好適である。全ての移動体通信回線で通信品質が低下してる場合、災害等が発生したことによって通信回線全体が逼迫した状態にあると推測される。このため、すぐに再接続処理を行うのではなく、ウェイト処理を実行してから再接続を試みることにより、再接続によって通信回線の逼迫した状態を悪化させてしまう事態を回避することができる。
【0011】
また、前記ウェイト処理における待ち時間は、前記通信制御部が再起動する回数に応じて増加すると好適である。これにより、通信回線全体が逼迫した状態を継続している場合に、ウェイト処理における待ち時間を増加することで再接続を行うタイミングを遅らせて、再接続によって逼迫した状態を悪化させてしまう事態を回避することができる。
【0012】
また、前記通信制御部は、前記通信部が無作為なタイミングで通信接続を開始するように前記通信部を制御すると好適である。これにより、複数の給水装置から管理装置に通信接続するタイミングにばらつきが生じるため、多数の給水装置が同時に管理装置に通信接続を行うことにより給水装置と管理装置との間の通信回線が輻輳することを防止し、より安定した通信を実現することができる。
【0013】
また、前記通信制御部は、システムログを収集し、該システムログに基づいて前記無作為なタイミングを生成すると好適である。システムログは、給水装置ごとに固有の情報であって、かつイベントが発生するたびに更新される。したがって、給水装置が管理装置に通信接続するタイミングにばらつきが生じ、多数の給水装置が同時に管理装置に通信接続を行うことにより給水装置と管理装置との間の通信回線が輻輳することを防止し、より安定した通信を実現することができる。
【0014】
また、ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、前記ポンプユニットの運転情報を取得する運転情報取得部と、前記ポンプユニットに関する設定情報を記憶する設定記憶部と、前記ポンプユニットの異常に関する異常履歴情報を記憶する異常履歴情報記憶部と、前記運転情報、前記設定情報、または前記異常履歴情報を送信する通信部と、該通信部を制御する通信制御部と、を有する給水装置の通信回線切替方法であって、前記通信部が、複数の移動体通信事業者のうち一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線を介して通信パケットを用いて前記運転情報、前記設定情報、または前記異常履歴情報を送信するステップと、通信制御部が、通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定するステップと、前記通信制御部が、前記測定結果に基づいて前記一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線から他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線へと切替制御を行うステップと、を有することにより解決される。
【0015】
上記構成によれば、給水装置は、通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定し、測定結果に基づいて一の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線から他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線へと切り替え制御を行うため、接続中の移動体通信回線において輻輳等の通信障害が発生した場合には他の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線に切り替えて通信を行うことができる。これによって給水装置と管理装置との間でより安定した通信を実現することができる。
また移動体通信回線は、我が国において広く一般的に利用可能な広域通信回線であるため、様々な地域に設置される給水装置が、管理装置との間で安定した通信を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る給水装置によれば、遠隔の管理装置に対して、給水装置の運転状態や異常に関する情報をより安定した通信回線を介して送信することができるとともに、災害等のトラブルが発生した際にも、迅速な対応を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】給水装置管理システムの全体構成を示す図である。
図2】給水装置の斜視図である。
図3】給水装置の機能ブロックを示す図である。
図4】優先順位テーブルを示す図である。
図5】起動接続処理の流れを示す図である。
図6】接続タイミングの無作為化の概念を示す図である。
図7】接続開始ウェイト処理の流れを示す図である。
図8】接続処理の流れを示す図である。
図9】再起動ウェイト処理の流れを示す図である。
図10】定期通知処理の流れを示す図である。
図11】定期検証処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について図1図11を用いて説明する。
<<実施形態の概要>>
最初に、給水装置管理システム1の概要を説明する。
本実施形態に係る給水装置管理システム1は、天災地変等の災害が発生し、通信回線が混雑した状態において、適切な通信タイミングの設定及び通信回線の選択を行う。これにより、給水装置10と遠隔の管理装置50の間に安定した通信回線を確保し、給水装置10に対する迅速な対応を可能とするために用いられる。
【0019】
図1は、給水装置管理システム1の全体構成を示す図である。
給水装置管理システム1は、複数の給水装置10と、給水装置10の運転状態及び異常に関する情報を収集して給水装置10を集中管理する管理装置50と、を有している。複数の給水装置10と管理装置50は、複数の移動体通信事業者(携帯電話キャリア)が運用する移動体通信回線(携帯電話回線)MN-A、MN-B、MN-C及び広域通信網であるインターネット回線INを介して通信可能に接続されている。
移動体通信回線MN-A、MN-B、MN-Cは、第四世代移動体通信規格(LTE)に準拠し、それぞれ複数の基地局Bと、基地局Bの受信信号に対して通信制御を行うMME(Mobility Management Equipment)(不図示)及びSGW(Service Gateway)(不図示)と、インターネット回線INに接続するゲートウェイとしての役割を担うPDNG(Packet Data Network Gateway)(不図示)等を含んでいる。また、第三世代移動体通信規格や第五世代移動体通信規格に準拠した通信設備及び通信機器を含んでいてもよい。
【0020】
図1において4台の給水装置10が示されているが、給水装置10の台数は4台に限定されることはなく、管理装置50は4台以上の給水装置10を集中管理することができる。同様に、図1において3社の移動体通信事業者によってそれぞれ運用される3つの移動体通信回線MN-A、MN-B及びMN-Cが示されているが、4以上の移動体通信事業者によってそれぞれ運用される4以上の移動体通信回線があってもよい。
また以下の説明において、複数の移動体通信回線MN-A、MN-B及びMN-Cを特に区別する必要がない場合には、単に「移動体通信回線MN」として説明する。
【0021】
給水装置10は、後述するように、複数の移動体通信回線MN-A、MN-B、MN-Cのうちいずれか一の移動体通信回線MNを介して管理装置50と通信接続を行う機能を有している。そして、移動体通信回線MNの通信品質を測定し、測定結果に基づいて一の移動体通信回線MNから、他の移動体通信回線MNへと通信回線の切替制御を行うことができる。
【0022】
また給水装置10は、複数の給水装置10が同時に管理装置50にアクセスすることにより管理装置50に対する通信接続が集中して輻輳が発生することを回避するために、通信接続のタイミングを無作為なウェイト時間を用いて遅延させることができる。
【0023】
これにより、給水装置10は、管理装置50に対して適切な通信回線の確保及び輻輳の回避を行うことが可能となる。給水装置10は、異常に関する情報や運転状態を管理装置50に送信し、管理装置50から適切な運転パラメータを受信することができるため、トラブルの発生時に給水装置10に対して迅速な対応を図ることができる。
【0024】
<<給水装置の概要>>
本実施形態の給水装置10は、集合住宅やビルにおける一般的な給水のために用いられることとして説明する。ただし、例えば簡易水道や、農業用水、工業用水の給水のために利用することもできる。
また、水道管から供給される水道水をいったん受水槽に貯めて、受水槽の水を揚水する貯水槽方式を採用することとして説明するが、給水装置10を水道管に直結し、水道管から供給される水道水を直接揚水する直結方式においても利用可能である。
【0025】
図2は、給水装置10の斜視図である。
図2に示すように、給水装置10は、基台11と、基台11上に互いに並べて設置された2台のポンプユニット(第一のポンプユニット12A及び第二のポンプユニット12B)と、2台のポンプユニット12A、12Bの運転を制御する制御部22(不図示)を収容した制御盤16とを有している。2台のポンプユニット12A、12Bは吸込口17A、17Bに連結される吸込配管から吸込まれる水を増圧し、2台のポンプユニット12A、12Bの吐出側に接続された合流管18において吐出水を合流し、合流吐出口19から吐出する。
また合流管18には、合流管18内の水圧を所定の圧力に維持するための蓄圧タンク20が接続されている。
【0026】
ここで、第一のポンプユニット12Aと第二のポンプユニット12Bとは同一の構成を有しているため、以下の説明において、第一のポンプユニット12Aと第二のポンプユニット12Bとを特に区別する必要がない場合には、単に「ポンプユニット12」として説明する。後述するポンプユニット12の構成部品であるポンプ13、モータ(電動機)14、検出器15、吸込口17についても、同様である。
【0027】
制御部22は、第一のポンプユニット12A及び第二のポンプユニット12Bを単独で、または同時に並列運転制御することができる。これにより、給水装置10から供給可能な水量を、1台のポンプユニット12の場合と比べて増量することができる。このように、複数台のポンプユニット12A、12Bによって給水装置10を構成することによって、1台の大型のポンプユニットによって給水装置10を構成する場合と比べて、所望の給水性能をよりコンパクトに、かつ高い省エネルギー性とともに実現することができる。
ポンプユニット12は、所望の給水性能を得ることができればよく、その台数は2台に限定されない。給水装置10は、3台以上、例えば6台のポンプユニットを有することとしてもよい。この場合、制御部22が6台のポンプユニット12を制御することができる。
【0028】
図3は、給水装置10の機能ブロックを示している。図3に示すように、ポンプユニット12は、揚力を発生するポンプ13と、ポンプ13に回転動力を伝えるモータ14と、ポンプユニット12の運転状況を検出する検出器15とを有している。制御盤16に収容された制御部22は、供給すべき水量に応じてモータ14を回転制御し、複数のポンプユニット12が単独で、または同時に並列運転を行うことによって給水を行う。すなわち、制御部22とともに制御盤16の内部に収容されたインバータ21から供給される電気エネルギーをモータ14が回転動力に変換し、この回転動力によってポンプ13内に配設された羽根車(不図示)が回転する。羽根車の回転運動は、ポンプ13の吸込口17から吸い込まれた水に対して遠心力を与える。この遠心力が揚力となって、吸込み水は増圧された状態で吐き出される。
本実施形態において、モータ14は永久磁石同期モータ(PMモータ)であるが、ポンプ13に対して必要な回転動力を伝えることができればよく、誘導モータであってもよい。
検出器15は、給水装置10の運転情報を検出可能なセンサ類であって、圧力センサや流量センサ等が含まれる。検出器15の出力は、ポンプユニット12を制御するために必要な情報として用いられる。
【0029】
制御部22は、ポンプユニット12の運転制御を行うとともに、後述する運転情報取得部23を介して取得する信号等に基づいて異常の有無を判定する。具体的には、制御部22は、ポンプユニット12の異常及び受水槽の液面異常を判定し、判定結果を後述する記憶部27の履歴情報記憶部28に格納する。そして、災害等が発生した場合の停電及び復電に関する情報や、後述する通信制御部24が検出する通信障害に関する情報も、履歴情報記憶部28に格納される。
【0030】
運転情報取得部23は、ポンプユニット12の運転情報として、ポンプユニット12の検出器15が出力する各種センサ信号とインバータ21の運転情報を取得する。そしてさらに、給水装置10に接続された受水槽の液面に関する情報を取得して、これを制御部22に対して出力する。
運転情報取得部23は、A/D変換器、LPF(低域通過フィルタ)、BPF(帯域通過フィルタ)を有しており、必要に応じてアナログ信号をディジタル信号に変換するとともに、不要な周波数帯域のノイズを除去し、所望の周波数成分を有する信号を出力することができる。
【0031】
記憶部27は、フラッシュメモリからなる不揮発性メモリであって、給水装置10の異常に関する情報や受水槽の液面情報等を記憶した履歴情報記憶部28(本発明の異常履歴情報記憶部)と、給水装置10の設定値を記憶する設定記憶部29と、給水装置10を識別するために必要な給水装置識別情報記憶部31と、後述する再起動ウェイト処理で用いられる待ち時間を記憶する待ち時間記憶部32を有している。
履歴情報記憶部28は、給水装置10の異常に関する履歴データ(本発明の異常履歴情報)を格納している。履歴データには、異常の発生日時、異常の種類、異常発生時のポンプユニット12の運転状況を含むことができる。異常の種類には、上述したように、ポンプユニット12の異常、受水槽の液面異常、停電及び復電を含む電源異常及び通信異常を含むことができる。ポンプユニット12の運転状況には、インバータ21の運転周波数、検出器15が出力する吸込圧力センサ、流量センサ、そして吐出圧力センサの検出値、ポンプユニット12の積算運転時間を含むことができる。
【0032】
設定記憶部29は、給水装置10の設定情報を格納している。具体的には、給水装置10の納入日、設置日、設置場所の他、給水装置10の運転パラメータである運転圧力設定値、加速時間、減速時間と、後述する通信制御部24が移動体通信回線MNを選択する際に参照する優先順位テーブル30を含んでいる。
図4は、優先順位テーブル30の構造を示す図である。
図4に示すように、優先順位テーブル30は、優先順位と移動体通信回線の項目を有している。詳細は後述するが、通信制御部24は、優先順位が最も高い移動体通信回線MNを選択して通信接続を行う。そして、輻輳等の原因で通信回線の通信品質が低下した場合、通信制御部24は、次に優先順位が高い移動体通信回線MNを選択して通信接続を行う。このように、通信品質が低下した場合に、優先順位テーブル30に記憶された優先順位に基づいて移動体通信回線MNを切り替えて通信接続を行う。
【0033】
図4に示す優先順位テーブル30には、最も優先順位が高い移動体通信回線MN-Aと、次に優先順位が高い移動体通信回線MN-Bと、最も優先順位が低い移動体通信回線MN-Cが記憶されている。
なお、図4に示す優先順位テーブル30には移動体通信回線MN-A、MN-B、MN-Cの3つのレコードが格納されているが、優先順位テーブル30の記憶内容を編集し、移動体通信回線MNのレコードを追加、又は削除してもよい。
【0034】
図3に戻って、給水装置識別情報記憶部31には、給水装置10の製品種別や製品型番と、給水装置10を識別可能な給水装置識別情報と、第一のポンプユニット12A及び第二のポンプユニット12Bをそれぞれ識別可能なポンプユニット識別情報とを含む情報を格納している。
待ち時間記憶部32は、後述するように、通信制御部24及び通信器25を再起動する前に実行するウェイト処理の待ち時間を記憶する。
【0035】
次に、通信制御部24及び通信器25(本発明の通信部)について説明する。通信器25は、1又は複数のSIM(Subscriber Identification Module)を搭載し、複数の移動体通信事業者が運用する移動体通信回線(携帯電話回線)MN―A、MN-B、MN-Cを介して通信可能な通信機器である。具体的には、通信器25は、eSIM(Embedded SIM)を内蔵するとともに、拡張カードとしてUSIM(Universal Subscriber Identification Module)を搭載することができる。通信器25は、移動体通信回線MNを介して遠隔の管理装置50とパケット通信を行うことができるLTEに準拠した通信モデムである。
【0036】
通信制御部24は、通信器25とシリアル通信接続され、通信器25に対する通信制御を行う。具体的には、通信制御部24は、履歴情報記憶部28に記憶された給水装置10の履歴データを、給水装置識別情報記憶部31に記憶された識別情報及び設定記憶部29に記憶された設定情報とともに管理装置50に送信するように通信器25を制御する。これにより、管理装置50は複数の給水装置10の異常に関する情報を給水装置10の識別情報とともに集中管理することができる。管理装置50のオペレータは、給水装置10の設定情報を確認し、必要に応じて給水装置10の運転パラメータを変更することができる。
通信器25は、管理装置50から給水装置10に対して送信される運転パラメータを受信する。制御部22は、通信器25が受信した運転パラメータを上述した設定記憶部29に格納する。
【0037】
本実施形態における通信制御部24は、輻輳等により通信品質の低下が検出された場合、給水装置10と管理装置50との間の安定した通信を実現するための通信制御を行う。すなわち、通信制御部24は、通信器25が通信可能な複数の移動体通信回線MN-A、MN-B、MN-Cのうち一の移動体通信回線MNから他の移動体通信回線MNへと切替制御を行う。
詳細は後述するように、通信制御部24は、複数の移動体通信回線MN-A、MN-B、MN-Cのうち、最も優先順位の高い移動体通信回線MNを選択して管理装置50に通信接続する。そして通信制御部24は、通信品質の低下を検出した場合に、次に優先順位の高い移動体通信回線MNに切替制御する。これにより、適切な移動体通信回線MNを選択することが可能となるため、給水装置10は、管理装置50と安定した通信を行うことができる。通信品質の測定方法については、後述する。
【0038】
そして、通信制御部24は、全ての通信回線で通信品質の低下を検出した場合には、通信制御部24及び通信器25の再起動を行う前に、ウェイト処理を実行する。全ての通信回線で通信品質が低下している場合、災害等の影響によって通信回線全体が逼迫した状態にあることが予想される。このため、ウェイト処理を実行することによって給水装置10と管理装置50の間の通信接続の頻度を低下させて、給水装置10と管理装置50の間の通信接続によってさらに通信回線を逼迫させてしまうことを防止する。
【0039】
また、通信制御部24は、給水装置10の運転を開始する際に、無作為なタイミングで管理装置50と接続するように制御する。すなわち、災害等の影響による停電後の復電時には、複数の給水装置10が、一斉に管理装置50に対して通信接続を開始するため、給水装置10と管理装置50との間の通信回線が輻輳して通信品質が低下することが予想される。そこで、通信制御部24は、運転開始とともに乱数を生成し、該乱数に基づく無作為なタイミングで管理装置50に対して通信接続を行う。これにより、複数の給水装置10から同時に管理装置50に対して通信接続することによる通信品質の低下を防止することができる。無作為なタイミングの生成方法については、後述する。
【0040】
操作パネル26は、オペレータの入力操作を受け付けて、給水装置10に対する設定情報を入力することができる。また、操作パネル26は、給水装置10の運転状態及び異常に関する情報を出力表示することができる。
【0041】
制御部22は、図示しないCPU、不揮発性メモリ、及び揮発性メモリを有し、不揮発性メモリには、予めOS(Operating System)プログラム及びポンプユニット12の運転状態を監視してポンプユニット12を運転制御するためのプログラムが格納されている。CPUは、これらのプログラムを不揮発性メモリから揮発性メモリにロードして順次実行する。
同様に、通信制御部24は、図示しないCPU、不揮発性メモリ、及び揮発性メモリを有する。不揮発性メモリには、あらかじめOSプログラム及び通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定し、該測定結果に基づいて複数の通信回線の切り替え制御を行うためのプログラムが格納されている。CPUは、これらのプログラムを不揮発性メモリから揮発性メモリにロードして順次実行する。
【0042】
<<起動接続処理>>
次に、給水装置10と管理装置50の間で行われる通信処理について説明する。給水装置10は、起動時に管理装置50に対して通信接続し、その後、一定の時間間隔で定期的に管理装置50に対して給水装置10の運転状態や異常に関する情報を送信する定期通信を行う。先に起動時の通信接続を行う起動接続処理について説明する。
【0043】
図5は、給水装置10の起動時に通信制御部24によって実行される起動接続処理の流れを示している。起動接続処理は、例えば、給水装置10に対するメンテナンス作業の終了後に給水装置10を再起動して管理装置50と通信接続するときや、停電が発生した後の復電によって給水装置10が復旧し、管理装置50と通信接続を行うときに実行される処理である。
上述したように、通信制御部24は、優先順位テーブル30に基づいて優先順位の高い移動体通信回線MNから順番に通信接続を試みる。図5において、ステップS11は、最も優先順位の高い移動体通信回線MN-Aに対する接続処理を、ステップS14は、次に優先順位の高い移動体通信回線MN-Bに対する接続処理を、ステップS17は、最も優先順位が低い移動体通信回線MN-Cに対する接続処理を示している。
【0044】
図5に示すように、給水装置10が起動すると、通信制御部24は、ステップS10で接続開始ウェイト処理を行う。具体的には、複数の給水装置10が同時に管理装置50に対して通信接続することによる輻輳の発生を防止する目的で、給水装置10から管理装置50に対して通信接続するタイミングを無作為に遅延させる。すなわち、乱数に基づく無作為な待ち時間を算出し、その待ち時間を経過した後にステップS11の接続処理を実行させるためのウェイト処理を実行する。接続開始ウェイト処理の詳細は、図7を参照して後述する。
【0045】
次に通信制御部24は、管理装置50に対して接続処理を行う(ステップS11)。上述したように、通信制御部24は、優先順位テーブル30を参照して、最も優先順位が高い移動体通信回線MN-Aとインターネット回線INを介して、管理装置50に接続する。接続処理の詳細は、図8を参照して後述する。
【0046】
続いて通信制御部24は、通信障害の有無を判定する(ステップS12)。通信回線が輻輳している状況では、通信品質が低下して通信パケットが失われるため、通信障害有りと判定される。
通信障害有りと判定された場合(ステップS12;Yes)、通信制御部24は、通信回線の切り替えを行う(ステップS13)。具体的には、通信制御部24は、移動体通信回線MN-Aから、次に優先順位が高い移動体通信回線MN-Bへと切り替えるための制御信号を通信器25に対して出力する。
【0047】
通信制御部24は、管理装置50に対して、移動体通信回線MN-Bを介して再び接続処理を行う(ステップS14)。上述したように、接続処理の詳細は、図8を参照して後述する。
通信制御部24は、ステップS12と同様に、通信障害の有無を判定する(ステップS15)。通信障害有りと判定された場合(ステップS15;Yes)、通信制御部24は、ステップS13と同様に通信回線の切り替えを行う(ステップS16)。すなわち、通信制御部24は、移動体通信回線MN-Bから、次に優先順位が高い移動体通信回線MN-Cへと切り替えるための制御信号を通信器25に対して出力する。
【0048】
通信制御部24は、管理装置50に対して、移動体通信回線MN-Cを介して接続処理を行う(ステップS17)。そして通信制御部24は、通信障害の有無を判定し(ステップS18)、通信障害有りと判定された場合(ステップS18;Yes)、通信制御部24は、通信回線の切り替えを行う(ステップS19)。図3に示すように、移動体通信回線MN-Cは、最も優先順位の低い移動体通信回線MNとして設定されている。そこで、通信制御部24は、再び最も優先順位の高い移動体通信回線MN-Aへと切り替えるための制御信号を通信器25に対して出力する。
【0049】
この後、通信制御部24は、再起動ウェイト処理を行い(ステップS20)、通信制御部24及び通信器25を再起動してから起動時ウェイト処理を終了する。再起動する前にウェイト処理を実行する理由を説明すると、複数の移動体通信回線MN-A、MN-B、MN-Cのいずれにおいても通信障害が検出された場合、災害等によって通信回線全体が逼迫した状態にあることが予想される。そのため、再起動と再接続の処理を繰り返すことによって通信回線の逼迫状態をさらに悪化させてしまうことを回避するため、通信制御部24は、通信制御部24及び通信器25を再起動するように制御する前に、待ち時間を設定し、その待ち時間の経過後に再起動処理を行う。これにより、短時間で再起動と再接続が繰り返されて通信回線の逼迫状態を悪化させてしまうことを防止することができる。再接続ウェイト処理の詳細は、図9を参照して後述する。
ステップS12、ステップS15、ステップS17で通信障害有りと判定されなかった場合、通信制御部24は、以降の処理を行うことなく、起動接続処理を終了する。
【0050】
次に、図5のステップS10の接続開始ウェイト処理について説明する。
上述したように、本実施形態の給水装置10は、通信制御部24に対して無作為な待ち時間を設定することによって、複数の給水装置10が同時に管理装置50に接続することを防止するために接続開始ウェイト処理を実行する。ここで、通信制御部24が起動してから管理装置50と通信を開始するまでの処理の流れと、待ち時間の関係について説明する。
【0051】
図6は、接続タイミングの無作為化の概念を示す図である。
図6に示すように、通信制御部24が起動してから管理装置50に対して接続を開始するまでの間に、2種類の待ち時間(第一の待ち時間及び第二の待ち時間)を設定する。第一の待ち時間は、通信制御部24が起動してから、図5のステップS11に示す接続処理を行うための接続プログラムをロードするまでの待ち時間である。第二の待ち時間は、接続プログラムをロードして接続プログラムが起動してから実際に管理装置50に対して接続処理を開始するまでの待ち時間である。
このように通信制御部24を起動してから管理装置50との接続処理を開始するまでの時間を、2つの無作為な待ち時間(第一の待ち時間及び第二の待ち時間)によって遅延させる処理が、接続開始ウェイト処理である。2段階で無作為な待ち時間を設定することにより、給水装置10から管理装置50に対する接続タイミングのばらつきの度合いが大きくなり、複数の給水装置10が管理装置50に対して同時に通信接続を行うことによる輻輳の発生を抑制することができる。
【0052】
次に、第一の待ち時間及び第二の待ち時間の生成方法について説明する。
本実施形態において、第一の待ち時間及び第二の待ち時間は、疑似的な乱数を発生する疑似乱数発生器を用いて生成する。具体的には、通信制御部24は、エントロピープールに収集し、収集したエントロピープールに基づいて第一の待ち時間及び第二の待ち時間を生成する。エントロピープールとは、通信制御部24が取得する不規則かつ予測できないイベント情報の集合である。本実施形態において、通信制御部24の機能を実行するCPUに搭載されたOSが取得するシステムログからエントロピープールを収集する。
【0053】
システムログとは、通信制御部24の起動とともに発生した各種イベントに関する情報であって、例えば、制御部22や通信器25との通信メッセージ、通信制御部24の起動と終了、OSが取得する警告やエラー情報などを、その発生時刻とともに蓄積したものである。つまり、システムログは、複数の給水装置10のそれぞれに固有のイベント履歴データであって、イベントの発生とともにその内容が更新される。したがって、複数の給水装置10の通信制御部24は、それぞれ固有のエントロピープール(不規則かつ予測できないイベント情報の集合)に基づいて疑似乱数を生成する。第一の待ち時間と第二の待ち時間は、エントロピープールを疑似乱数発生器に入力することによって生成される。
【0054】
疑似乱数発生器が出力する疑似乱数は、所定の最大待ち時間を上限とする無作為な数値である。第一の待ち時間の最大待ち時間は、例えば60秒である。そして、第二の待ち時間の最大待ち時間は、例えば600秒(10分)である。
なお、上述したシステムログとともに、給水装置10の固有情報を組み合わせて用いることによって疑似乱数を生成してもよい。給水装置10の固有情報は、給水装置識別情報記憶部31に記憶された識別情報とともに、制御盤16の製造番号や給水装置10の故障来歴、及び位置情報などを含みうる。
また、疑似乱数の生成方法は上述した方法に限定されない。例えば線形合同法など、公知の疑似乱数生成アルゴリズムを用いて疑似乱数を生成してもよい。
【0055】
図7は、通信制御部24が実行する接続開始ウェイト処理の流れを示している。
図7に示すように、通信制御部24は、ステップS30で、エントロピープールを収集する。具体的には、通信制御部24の機能を実行するCPUに搭載されたOSが蓄積したシステムログを取得する。
【0056】
次に、通信制御部24は、第一の待ち時間及び第二の待ち時間を生成する(ステップS31、ステップS32)。第一の待ち時間及び第二の待ち時間は、ステップS30で収集したエントロピープールを疑似乱数発生器に入力することによって生成することができる。
続いて通信制御部24は、第一のウェイト処理を実行し(ステップS33)、ステップS31で生成した第一の待ち時間の経過後に、接続プログラムを不揮発性メモリ(不図示)から揮発性メモリにロードする(ステップS34)。
【0057】
そして通信制御部24は、第二のウェイト処理を実行し(ステップS35)、ステップS32で生成した第二の待ち時間の経過後に、接続開始ウェイト処理を終了する。
以上で説明した接続開始ウェイト処理によって、複数の給水装置10は、それぞれが無作為なタイミングで管理装置50に対して通信接続を開始するため、複数の給水装置10が同時に管理装置50に対して通信接続を行うことによる輻輳を回避し、安定した通信品質を確保することができる。
また、2段階で無作為な待ち時間を設定することにより、給水装置10から管理装置50に対する接続タイミングのばらつきの度合いを大きくすることができる。
【0058】
次に、図5のステップS11の接続処理について説明する。
本実施形態における接続処理は、移動体通信回線MNに接続するとともに、接続した移動体通信回線MNとインターネット回線INの通信品質を測定する処理を含んでいる。具体的には、通信制御部24は、所定時間内に管理装置50から受信した通信パケット数(応答パケット数)または通信時間に基づいて、通信回線の品質を測定する。
【0059】
ここで、基地局Bが送信する無線電波の受信信号レベルに基づいて、通信品質を測定することも可能である。しかしながら、基地局Bから高い信号レベルの無線電波を受信することができても、基地局Bの先の移動体通信回線MNまたはインターネット回線INが輻輳状態にある場合、通信パケットは、相手先まで到達することなく失われる。
本実施形態では、基地局Bが送信する無線電波の受信信号レベルではなく、管理装置50から受信した通信パケット数または通信時間に基づいて通信回線の品質を測定する。このように、実際に通信相手に到達したパケット数に基づいて通信品質を測定することにより、測定結果の信頼性を高めることができる。
【0060】
図8は、通信制御部24が実行する接続処理の流れを示している。
図8に示すように、通信制御部24は、移動体通信回線MNに接続を開始する(ステップS40)。具体的には、APN(Access Point Name)及び認証情報を外部の認証サーバに対して送信し、認証を受ける。
次に通信制御部24は、管理装置50に応答要求パケットを送信する(ステップS41)。具体的には、通信制御部24は、管理装置50に対してPINGコマンドを実行する。PINGコマンドとは、ICMP(Internet Control Message Protocol)を利用したネットワーク診断プログラムである。
【0061】
続いて通信制御部24は、管理装置50から応答パケットを受信する(ステップS42)。通信品質が低下した状況では、管理装置50が送信した応答パケットの一部または全てが給水装置10まで到達することなく失われることがある。また、通信制御部24が送信した応答要求パケットが管理装置50に到達することなく失われ、管理装置50が応答パケットを送信しないこともある。
【0062】
次に通信制御部24は、通信品質の算出を行って(ステップS43)、接続処理を終了する。
図5を参照して上述したように、通信品質の測定結果に基づいて、図5のステップS12、ステップS15、ステップS18で通信障害の有無が判定され、通信障害有りと判定された場合には次のステップS13、ステップS16及びステップS19で一の移動体通信回線MNから他の移動体通信回線MNへ切替制御が行われる。
【0063】
次に、図5のステップS20の再起動ウェイト処理について説明する。
複数の移動体通信回線MN-A、MN-B、MN-Cの全てについて通信障害有りと判定された場合(図5のステップS12;Yes、ステップS15;Yes、ステップS18;Yes)、通信回線全体が逼迫したが状態にあると推測される。そこで、再起動ウェイト処理は、再起動と再接続を繰り返し試みることにより通信回線の逼迫した状態を悪化させてしまう事態を回避するため、待ち時間を設定してウェイト処理を実行する。
【0064】
図9は、通信制御部24が実行する再起動ウェイト処理の流れを示している。
図9に示すように、通信制御部24は、通信制御部24の起動後の経過時間Tを取得する(ステップS50)。起動後の経過時間Tは、通信制御部24の起動時にリセットされるカウントアップタイマによって取得することができる。
次に、通信制御部24は、起動後の経過時間Tが予め設定された閾値TH1を上回るか否かを判定する(ステップS51)。給水装置10の動作検証やメンテナンス作業を行う試験運転では、給水装置10を短時間だけ起動して短時間のうちに再起動することが行われる。閾値TH1は、給水装置10の試験運転を判定するために予め設定された閾値であって、例えば1時間である。
【0065】
起動後の経過時間Tが閾値TH1を超えると判定された場合(ステップS51;Yes)、給水装置10は試験運転ではなく本運転状態にあると推定され、再起動までの待ち時間を算出する(ステップS52)。具体的には、通信制御部24は、前回の再起動時の待ち時間を待ち時間記憶部32から読み出し、所定の係数を乗算することによって今回の待ち時間を算出する。すなわち、今回の待ち時間WT(n)を、次の式によって求めることができる。ここで、WT(n-1)は前回の待ち時間、Kは1より大きい実数である。
【0066】
【数1】

また、今回の待ち時間WT(n)を、次の式によって求めることもできる。ここでWT(0)は待ち時間WTの初期値であり、nは再起動を行った回数である。
【0067】
【数2】
【0068】
次に通信制御部24は、ステップS52で算出された待ち時間を経過するまでウェイト処理を実行してから(ステップS53)、今回の待ち時間WT(n)を待ち時間記憶部32に記憶して、再起動ウェイト処理を終了する。
これにより、通信制御部24は、再起動するたびに待ち時間が増加するウェイト処理を実行する。すなわち、数式1及び数式2において、Kは1より大きい実数であるため、待ち時間WTは、再起動を行う回数に応じて指数関数的に増加する。したがって、通信制御部24が再起動と再接続を繰り返し試みることにより通信回線の逼迫した状態を悪化させてしまう事態を回避することができる。
【0069】
ステップS51で起動後の経過時間Tが閾値TH1を超えると判定されなかった場合(ステップS51;No)、給水装置10は試験運転状態にあると推定することができる。したがって通信制御部24は、記憶部27の待ち時間をリセットしてから再起動ウェイト処理を終了する。すなわち、試験運転の場合には、ウェイト処理を実行する必要がなく、待ち時間を指数関数的に増加させる必要もないため、待ち時間記憶部32に初期値であるWT(0)を格納して、再起動する。
【0070】
上述したように、本実施形態の通信制御部24は、無作為なタイミングで管理装置50に接続を開始するとともに、接続中の移動体通信回線MNの通信品質を測定し、該測定結果に基づいて移動体通信回線MNの切替制御を行う。これにより、給水装置10と管理装置50との間で安定した通信回線を確保することができる。
また複数の移動体通信回線MNの全てで通信障害を検出した場合には、ウェイト処理を実行するため、繰り返し再接続を試みることによる通信回線の逼迫した状況を悪化させてしまう事態を回避することができる。
【0071】
<<定期通信>>
続いて、給水装置10と管理装置50が上述した起動接続処理によって接続した後に実行される定期通信について説明する。
通信制御部24は、給水装置10の運転情報、設定情報又は異常に関する履歴情報を管理装置50に対して定期的に送信する定期通知処理と、接続中の通信回線の通信品質を測定し、必要に応じて通信回線の切替制御を行う定期検証処理を実行する。定期通知処理と定期検証処理とは、同一の実行周期、又は実行タイミングで実行することができるが、互いに異なる実行周期、又は実行タイミングであってもよい。また、管理装置50から給水装置10に対して、定期通知処理及び定期検証処理の実行周期、及び実行タイミングを設定することができてもよい。
【0072】
図10は、通信制御部24が実行する定期通知処理の流れを示している。定期通知処理は、例えば24時間ごとに通信制御部24によって実行される。
図10に示すように、通信制御部24は、給水装置識別情報記憶部31に記憶された給水装置識別情報を取得する(ステップS60)。次に、通信制御部24は、運転情報取得部23を介してポンプユニット12の運転情報を取得する(ステップS61)。そして、履歴情報記憶部28に記憶された給水装置10の異常に関する情報の履歴データを取得する(ステップS62)。履歴情報記憶部28は、送信済みの履歴データと、未送信の履歴データを区別可能に記憶しており、通信制御部24は、履歴情報記憶部28に記憶された履歴データのうち、未送信の履歴データを取得する。
【0073】
続いて通信制御部24は、設定記憶部29に記憶された設定情報を取得する(ステップS63)。そして通信制御部24は、ステップS60で取得した給水装置識別情報と、ステップS61で取得した履歴データ、とステップS62で取得した設定情報とを管理装置50に送信して(ステップS64)、定期通知処理を終了する。
【0074】
以上の定期通知処理によって、運転情報、履歴データ、及び設定情報は、給水装置識別情報とともに管理装置50に送信される。したがって、管理装置50のオペレータは、給水装置識別情報ごとに運転情報、履歴データ、及び設定情報を確認することができるため、複数の給水装置10を集中管理することができる。
なお、運転情報、履歴データ、及び設定情報のいずれか一つ、または2つのみを給水装置識別情報とともに管理装置50に送信することとしてもよい。
【0075】
また、管理装置50のオペレータは、履歴データに何らかの異常がある場合に、履歴データとともに受信した運転情報及び設定情報を確認し、設定情報の変更の要否を判断することができる。設定情報の変更が必要な場合には、新たな設定情報を給水装置10に送信することができる。これにより、給水装置10に異常が発生した場合に、管理装置50のオペレータは迅速な対応をとることができる。
【0076】
図11は、通信制御部24が実行する定期検証処理の流れを示している。定期検証処理は、例えば1時間ごとに通信制御部24によって実行される。
図11に示すように、通信制御部24は、管理装置50に応答要求パケットを送信する(ステップS70)。具体的には、通信制御部24は、PINGコマンドを実行する。そして通信制御部24は、管理装置50から応答パケットを受信する(ステップS71)。
【0077】
続いて、通信制御部24は、通信品質の算出を行う(ステップS72)。具体的には、通信制御部24は、所定時間内に受信した応答パケットの有無を確認し、応答パケットが無い場合には、通信障害有りと判定し(ステップS73;Yes)、応答パケットがある場合は通信障害なしと判定する(ステップS73;No)。
【0078】
通信障害有りと判定された場合(ステップS73;Yes)、通信制御部24は、一の移動体通信回線MNから他の移動体通信回線MNへ通信回線の切り替えを行う(ステップS74)。上述したように、通信制御部24は、優先順位テーブル30を参照して、次に優先順位が高い移動体通信回線MNへと切り替えるための制御信号を通信器25に対して出力する。なお、優先順位テーブル30に、次に優先順位が高い移動体通信回線MNが記憶されていない場合には、最も優先順位が高い移動体通信回線MNへと切り替えてから上述した再接続ウェイト処理を実行することとしてもよい。
【0079】
通信制御部24は、再び管理装置50に対して接続処理を行う(ステップS75)。ステップS75の接続処理は、図8を参照して上述した接続処理と同一であるため、詳細な説明を省略する。
通信制御部24は、再び通信障害の有無を判定する(ステップS76)。そして、通信障害有りと判定された場合には(ステップS76;Yes)、ステップS74に戻り、再び通信回線の切り替えを行う。一方、通信障害有りと判定されなかった場合には(ステップS76;No)、通信制御部24は定期検証処理を終了する。ステップS73で通信障害有りと判定されなかった場合も同様に、定期検証処理を終了する。
【0080】
以上の定期検証処理によって、給水装置10の運転中においても通信回線の品質を定期的に測定し、該測定結果に基づいて移動体通信回線MNの切替制御を行う。これにより、給水装置10と管理装置50との間で安定した通信回線を確保することができる。
【0081】
次に、通知処理の変形例について説明する。上述した実施形態において、一定の時間間隔で定期的に履歴情報記憶部28に格納された履歴データを、遠隔の管理装置50へ送信することとして説明した。これに対して本変形例では、制御部22が異常を検出したときにその異常に関する情報を遠隔の管理装置50へ送信することとしてもよい。これにより、管理装置50のオペレータは、異常の発生を早期に認識することが可能となり、異常の種類に応じて迅速な対応をとることが可能となる。
【0082】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、この実施形態及び変形例は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0083】
1 給水装置管理システム
10 給水装置
11 基台
12 ポンプユニット
12A 第一のポンプユニット
12B 第二のポンプユニット
13 ポンプ
13A 第一のポンプ
13B 第二のポンプ
14 モータ(電動機)
14A 第一のモータ
14B 第二のモータ
15 検出器
15A 第一の検出器
15B 第二の検出器
16 制御盤
17 吸込口
17A 第一の吸込口
17B 第二の吸込口
18 合流管
19 合流吐出口
20 蓄圧タンク
21 インバータ
22 制御部
23 運転情報取得部
24 通信制御部
25 通信器(通信部)
26 操作パネル
27 記憶部
28 履歴情報記憶部(異常履歴情報記憶部)
29 設定記憶部
30 優先順位テーブル
31 給水装置識別情報記憶部
32 待ち時間記憶部
50 管理装置
B 基地局
IN インターネット回線
MN 移動体通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11