IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Semillaの特許一覧

<>
  • 特開-マット式融雪装置 図1
  • 特開-マット式融雪装置 図2
  • 特開-マット式融雪装置 図3
  • 特開-マット式融雪装置 図4
  • 特開-マット式融雪装置 図5
  • 特開-マット式融雪装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117371
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】マット式融雪装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/26 20060101AFI20220803BHJP
   E01H 5/10 20060101ALI20220803BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20220803BHJP
   G01G 19/02 20060101ALI20220803BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
E01C11/26 A
E01H5/10 Z
E04H9/16 H
G01G19/02 A
H05B3/20 345
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021049272
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】319004124
【氏名又は名称】株式会社Semilla
(74)【代理人】
【識別番号】100111224
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 攻治
(72)【発明者】
【氏名】清宮 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】菊地 武志
【テーマコード(参考)】
2D026
2D051
2E139
3K034
【Fターム(参考)】
2D026CL02
2D026CL03
2D051AA08
2D051AD04
2D051GA01
2D051GB02
2E139AA03
2E139DA04
2E139DA43
2E139DB27
2E139DC04
2E139DC08
2E139DC13
2E139DC14
2E139DC18
2E139DC23
3K034AA02
3K034AA12
3K034BB08
3K034BB13
3K034DA01
3K034FA13
3K034HA04
3K034HA09
3K034JA07
(57)【要約】
【課題】敷設、撤去、搬送が容易なマット式融雪装置、並びに車両重量測定や車両走行速度測定が可能な付加価値を具えた、降雪時の安全を図るマット式融雪装置を提供する。
【解決手段】マット式融雪装置1は、発熱部10と、発熱部10の両主平面を覆ってサンドイッチ構造とする一対の非導電性エラストマトート11、12とから構成される。発熱部10は、金網状部材または多数の空隙が穿孔された金属板からなるベース部材に電熱線17を取り付けて形成される。前記金網状部材または金属板は、鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミニウムのいずれかとすることができる。ベース部材としてステンレス鋼製の金網状部材16を用いることで、軽量で適度な剛性、柔軟性、熱容量を確保できて好ましい。マット式融雪装置1に対し、同じくマット式の重量測定装置2もしくは車両走行速度測定装置を組み合わせて使用することで、降雪時における測定作業の効率化を図ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
降雪時に屋外に敷設し、電熱源を利用して雪を融解、除去するマット式融雪装置において、
平板状金属製のベース部材に電熱線を取り付けた発熱部と、前記発熱部の両主平面を覆ってサンドイッチ構造とする一対の非導電性エラストマーシートとから構成され、
前記平板状金属製のベース部材が、金網状部材、もしくは多数の空隙が穿孔された金属板のいずれかであることを特徴とするマット式融雪装置。
【請求項2】
前記ベース部材となる金網状部材が、鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミニウムのいずれかからなる金網またはワイヤーネットである、請求項1に記載されたマット式融雪装置。
【請求項3】
前記ベース部材となる多数の空隙が穿孔された金属板が、鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミニウムのいずれかからなるエキスパンドメタルまたはパンチングメタルである、請求項1に記載されたマット式融雪装置。
【請求項4】
前記ステンレス鋼が、非磁性体のステンレス鋼である、請求項2または請求項3に記載されたマット式融雪装置。
【請求項5】
前記発熱部が、融雪に必要な適切な温度を維持できるよう、電力をマニュアルで制御可能な制御装置、もしくは温度センサまたは積雪センサのいずれか一方もしくは双方からの入力を利用して自動で制御可能な制御装置のいずれかにつながれている、請求項1に記載されたマット式融雪装置。
【請求項6】
前記マット式融雪装置に対し、同じくマット式の車両重量測定装置または車両走行速度測定装置のいずれかであって、当該測定装置に車両が乗り上げることによって変化する静電容量もしくは電気抵抗の変化を検出して重量もしくは走行速度を測定する車両重量測定装置または車両走行速度測定装置のいずれかが重ね合わされたマットユニットとして形成されている、請求項1から請求項5のいずれか一に記載されたマット式融雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雪時に路面に積もった雪を溶かして歩行、走行の安全を確保するため、あるいは建物や屋外建造物等に積もった雪を溶かして建物等を保護し、歩行者や走行車両の安全を確保するための融雪装置に関し、特には路面や建物等への設置、撤去、搬送を容易に行うことができるマット式融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪時に路面上に堆積する雪を除去し、あるいは積雪を防ぐために路面もしくは路面下に配置され、エネルギ源を利用して融雪によって歩行、走行の安全を図る融雪装置が従来技術においても各種知られている。融雪に使用されるエネルギ源としては加熱温水式、地熱利用式、地下水利用式などが見られるが、中でも電熱源を利用した方式が広く知れられている。
【0003】
図3は、特許文献1に開示された消雪マットを示しており、ここでは電熱線(1)を熱伝導性の優れた金属版(2)で挟み、さらにこれを耐熱性・耐久性・防水性を有するマット(3)で覆う構造を開示している。当該消雪マットからは電熱線(1)から分岐した端子が四方に延び、この端子同士を接続することによって親マット(5)と子マット(6)を接続し、これを展開することで所定の面積にまで拡大することを可能にしている。電熱線(1)には電気コード(4)が接続され、さらには電源(7)につながれることによって通電により電熱線(1)を加熱し、さらには金属版(2)に熱伝導させることによってマット全体を温め、マット表面に降雪した雪を消雪するものとしている。
【0004】
次に、図4は特許文献2に開示されたロードヒーティング装置を示している。ここでは路面幅に延びる発熱シート(1)を接続端子(2a、2b)を介して順次道路進行方向に接続して一定長さで路面を覆い、各種センサから得た情報をもとに通電制御部(5)の制御により発熱シート(1)に通電して加熱し、路面の融雪を行うものとしている。発熱シート(1)は、特性ポリエステル樹脂を含侵せしめた含侵布の片面に導電性塗料により梯子型パターンの回路を形成し、その面に含侵布を接着して構成している。導電性塗料は、電気抵抗の小さい金属材料を不飽和ポリエステル樹脂塗料中に分散させて得られるとしている。当該発熱シート(1)はアスファルト混合物の基層の上に敷設され、さらにその上から同質のアスファルト混合物の表層を転圧仕上げして設置するものとしている。
【0005】
次に、図5は特許文献3に開示された面状発熱体を示している。当該面状発熱体は、電気による発熱特性を有する面状発熱素子を用い、電気絶縁性に優れた材料にて被覆して発熱体とされる。前記発熱素子としては、金属線(ニクロム線)を一平面上で繰り返し曲げ加工することで面状に形成したもの(図5)、金属膜(アルミ箔など)を打抜加工により平面波形状に形成したもの(同、)、無機充填材からなる半導体の両側に導電線を埋め込んだカーボン樹脂半導体(同、)などが挙げられている。
【0006】
上述した融雪装置とは全く異なる従来技術として、融雪装置と同様に路面に敷設して使用されるマット式の車両重量測定装置が知られている(例えば、特許文献4、5参照。)。図6は特許文献4に開示された車両重量測定装置の断面の例を示している。同図において当該装置は、柔軟な導電ゴムからなる一対の導電性シート(1、2)と、両者の間を一定距離(H)に保つ台形断面形状で図面に垂直方向に延びる細条状の非導電性エラストマー素子(3)とから構成されている。非導電性エラストマー素子(3)は、同図の右側に示すように車両重量が加わると断面が太鼓状に変形し、これによって変化する一対の導電性シート(1、2)間の静電容量もしくは電気抵抗を検出してCPU処理をして車両重量を測定している。各条の非導電性エラストマー素子(3)は一体成型された非導電性ウェブ(4)によって結ばれ、移動、変形が抑制されている。
【0007】
さらに図6と同様な構成を具えたマット式センサを利用し、別のロジックを組むことによってマットの上を通過する車両の車速を測定するマット式の車速測定装置も従来技術で知られている(例えば、特許文献6参照。)。ここでは特許文献4、5と同様にマットセンサ上を通過する車両重量によって変化する一対の導電性シート間の静電容量もしくは電気抵抗の変化量を捉え、そのピーク値の1/2以上を示す車両通過時間を計測し、その結果に基づいてCPUを用いて車速を演算処理するものとしている。
【0008】
なお、上記各特許文献に関連した説明の中で構成要素の後のカッコ内に示した符号は、各特許文献における構成要素を示すものとして表記されたものであり、これら符号は該当する特許文献のみに対応するものであって、他の特許文献や本願発明の構成要素に対して適用される符号ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平6-56125号公報
【特許文献2】特開平7-3713号公報
【特許文献3】実開昭59-46487号公報
【特許文献4】実開平3-106428号公報
【特許文献5】特公昭50-19057号公報
【特許文献6】特公平8-1442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3に開示された従来技術による各種融雪装置には未だ改善の余地があった。特許文献1に開示された図3に示す消雪マットでは、基本概念は開示されているものの具体的な技術内容が不明確である。例えば電熱線(1)の金属版(2)への固定方法が開示されていないので組み立て時の電熱線の配置手段が不明であるほか、電熱線と金属版との絶縁方法が不明のため考案の具体性が不透明である。さらに「金属版で電熱線をはさむ」とあるが、金属版(ママ)とは何であるのかその具体的性状が不明のため、例えばマットの屈曲性の有無等が不明である。
【0011】
特許文献2に開示された図4に示すロードヒーティング装置では、発熱シートとして特性ポリエステル樹脂を含侵せしめた含侵布の片面に導電性塗料により梯子型パターンの回路を形成、その上に含侵布を接着するなど構造が複雑であり、製造にも手間を要する。さらに当該発熱シートを路面のアスファルト混合物の基層の上に敷設し、その上から同質のアスファルト混合物の表層を転圧仕上げして設置するなどが要求されており、実施する際の簡便性に欠ける。また、熱容量の高い金属部材が設けられていないことから、保温性にも問題が残り得る。
【0012】
特許文献3に開示された図5に示す面状発熱体では、金属線(図5)、金属箔(図5)、半導体(図5)からなる発熱体をローラを介して押出機(特許文献3に添付の図2の符号E1)に送り込み、溶融状ポリマを使用して発熱体を挟むものとしているが、この工法は困難が想定される。金属箔の場合、その厚みは80μのため剛性に欠け、ローラ(同上図2の符号R1、R1’)を用いて連続的に供給することが可能であるかの問題がある。特に金属線となった場合、文献には実施例の記載を欠いているが、ローラによって屈曲した金属線を連続供給できるかなどはなはだ疑問が残るところである。たとえこれが可能であったとしても相当の技術的対応が想定され、実施化には困難が予想され得る。
【0013】
加えて、従来技術に開示された融雪装置では、いずれも融雪機能に特化されており、付加的機能が追加された技術は開示されていない。特に路面に敷設される場合にはその上を走行する車両の重量測定機能、車速測定機能の追加が考えられるものの、そのような技術発想は見られない。
【0014】
以上より、本発明は上述した従来技術にある融雪装置の技術的課題を解消し、製造、路面への敷設、撤去が容易となる融雪装置を提供すること、さらには融雪に加えてさらなる付加機能を持たせたマットユニットが形成可能である融雪装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、マット式の融雪装置の発熱部の芯材として金網状部材、もしくは多数の空隙が穿孔された金属板を使用することにより上述した課題を解消するマット式融雪装置を提供すること、ならびに当該マット式融雪装置に対してマット式の車両重量測定装置もしくはマット式の車両走行速度測定装置のいずれかを組み合わせたマットユニットを提供することにより上述した課題を解消するもので、具体的には以下の内容を含む。
【0016】
すなわち、本発明に係る1つの態様は、降雪時に屋外に敷設し、電熱源を利用して雪を融解、除去するマット式融雪装置であって、平板状金属製のベース部材に電熱線を取り付けた発熱部と、当該発熱部の両主平面を覆ってサンドイッチ構造とする一対の非導電性エラストマーシートとから構成され、前記金属製のベース部材が、金網やワイヤーネット等の金網状部材、もしくは多数の空隙が穿孔された金属板のいずれかであることを特徴とするマット式融雪装置に関する。
【0017】
前記ベース部材となる金網状部材は、鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミニウムのいずれかからなる金網もしくはワイヤーネットとすることができる。さらに、前記ベース部材となる多数の空隙が穿孔された金属シートは、鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミニウムのいずれかからなるエキスパンドメタルまたはパンチングメタルとすることができる。この場合、前記ステンレス鋼は非磁性体のステンレス鋼であることが好ましい。
【0018】
前記発熱部は、融雪に必要な適切な温度を維持できるよう、電力をマニュアルで制御可能な制御装置、もしくは温度センサまたは積雪センサのいずれか一方もしくは双方からの入力を利用して自動で制御可能な制御装置のいずれかにつなぐことができる。
【0019】
前記マット式融雪装置に対し、同じくマット式の車両重量測定装置または車両走行速度測定装置のいずれかであって、当該測定装置に車両が乗り上げることによって変化する静電容量もしくは電気抵抗の変化を検出して重量もしくは走行速度を測定する車両重量測定装置または車両走行速度測定装置のいずれかを重ね合わせたマットユニットとして形成することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施により、降雪時における人の歩行や車両の走行の安全を確保する手段をより容易に実施可能となり、また降雪時における車両重量測定、車両走行速度測定の作業をより容易、安全に実施可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係るマット式融雪装置の断面図(a)、および内部構造を示す平面図(b)である。
図2図1に示すマット式融雪装置を含む本発明の他の実施の形態に係るマットユニットの断面図(a)、ならびに配線図(b)である。
図3】従来技術に係るマット式融雪装置の例を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
図4】従来技術に係るマット式融雪装置の他の例を示す平面図である。
図5】従来技術に係るマット式融雪装置のさらに他の例を示す平面図および断面図である。
図6】従来技術に係るマット式の車両重量測定装置の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の実施の形態に係るマット式融雪装置について、図1を参照して説明する。図1(a)の断面図で示す本実施の形態に係るマット式融雪装置1は、一対の非導電性エラストマーシート11、12と、該エラストマーシート11、12に両主平面を覆われた発熱部10とからなるサンドイッチ構造に構成されている。発熱部10からはリード線14が延び、当該リード線4には制御装置15がつながれ、制御装置15はさらに電源へとつながれている。図示の例では制御装置15は変圧器から構成されて発熱部10に加わる電圧の調整を可能にしており、また発熱部10と制御装置15の間にはヒューズ13が設けられて過剰電流の流入による発熱部10の損傷を防いでいる。
【0023】
図1(b)は、サンドイッチ構造の内部にある発熱部10の構成を平面図で示している。本実施の形態に係る発熱部10は、ベース部材となる金網状部材16(以下、単に「金網16」と呼ぶ。)と、発熱時の熱源となる電熱線17とを組み合わせて構成されている。この内金網16は、シート式融雪装置1全体の形状を維持するために必要な強度を提供するほか、発熱時に電熱線17から生ずる熱量を保ち、保温効果を高める作用を果たす。このためベース部材としては、熱容量が高い金属であることが好ましく、またマット形状を維持するための適度な剛性と同時に、搬送時を考慮してある程度の屈曲性を具えていること、加えて軽量であることが好ましい。
【0024】
本実施の形態ではこのベース部材の機能を最大限発揮できる好ましい部材として、金網16を使用しているが、ただし本発明のベース部材が金網16に限定されず、同等な代替部材が使用可能である。金網16の代替となる他の好ましいベース部材としてはワイヤーネット(メッシュパネル)、あるいは必要な強度を保ちつつ重量軽減と柔軟性確保のための空隙が形成されたエキスパンドメタル(ラスメタル)、パンチングメタルなどが考えられる。ワイヤーネットは、金網に類似しているが金網のように編み込むことなく、ワイヤを縦・横に碁盤目状に重ねてその周囲を溶接や折り曲げなどにより固定したもので、本明細書における「金網状部材」には、金網16のほかにワイヤーネットやメッシュパネル等の金網同等部材が含まれるものとする。
【0025】
また、エキスパンドメタルは平板に多数の例えば「への字」状の切り込みを付けた上で長手方向に引っ張って多数の空隙を形成するもの、パンチングメタルは角や丸などの各種形状の多数の空隙を平板に打ち抜いたものをいう。そして金網状部材を含めて材質的には、鉄、鋼、特には防錆に優れ、熱容量の高いステンレス鋼などが好ましい。熱容量の点からはやや不利とはなるが軽量化の観点からはアルミニウムの使用も可能である。本実施の形態の金網16は、非磁性オーステナイト系のSUS304ステンレス鋼の線を編んだ金網としている。
【0026】
発熱線17はニクロム線とすることが一般的である。本実施の形態ではニクロム線を絶縁エラストマーで被覆した発熱線を使用している。発熱線17は、金網16の全体を均等に巡るように配線することが好ましく、図1(b)の配線はその一例を示したものである。ここでは金網の升目に沿って屈曲を繰り返し、各屈曲個所では金網の端部を跨がせることで発熱線17を確実に金網16に固定している。一般に金網には周囲を囲うような枠が設けられているが、この枠を除くことで発熱線17の屈曲時の固定が容易となるが、枠がある場合においても升目に発熱線17を通すことで固定は可能である。エキスパンドメタル、パンチングメタルなどの空隙のあるベース部材が使用された場合にも、その空隙を通すなどにより同様に固定が可能である。加えて、全体に多数の空隙が設けられていることから、ベース部材の平面に発熱線17を均等に配置し固定することが容易となる。
【0027】
図1には示していないが、幾つものマット式融雪装置1を順に縦・横につなぎ合わせ、一定の面積を占める面状に配置することが可能である。この場合には発熱線17の途中から導線を出し、カプラーなどによって相互のマット式融雪装置1をつなぎ合わせることで対応が可能である。その態様は、従来技術の説明で用いた図3に示す親マット(5)と子マット(6)とのつなぎ合わせと同様である。また、つなぎ合わせて展開する面積が広い場合には、いくつかのブロックに分けて夫々のブロック別に制御装置15を配置するようにしてもよい。
【0028】
図1(a)に戻って、同図(b)に示すように金網16と発熱線17とで構成された発熱部10を芯材とし、その両主平面を非導電性エラストマーシート11、12で覆うことにより、搬送、敷設、撤去が容易な本実施の形態に係るマット式融雪装置1が形成される。非導電性エラストマーシート11、12としては、未加硫ゴム、粉末利用ゴムマットなどが利用可能であり、本実施の形態では粉末利用ゴムマットとしている。粉末利用ゴムマットは、古タイアなどを粉末状にしてこれを圧縮成形したもので、柔軟性、クッション性、適度な強度を具えていることから、例えば新幹線の線路下などへの使用実績が見られる。
【0029】
制御装置15は、本実施の形態では最も単純な変圧器を利用するものとしているが、各種入力情報を基に、マット式融雪装置1が好ましい融雪作用を果たすよう、より高度でより適切な制御を行うよう構成することもできる。この場合の各種入力情報としては、発熱部10に含まれた図示しない温度センサからの入力、およびこれに反応して融雪装置1の温度を初期設定値に維持するよう電流を制御する制御装置もしくはサーモスタット、あるいは外部に設置された同じく図示しない降雪センサもしくは積雪センサからの入力、およびこれに反応して電源のオン・オフを制御する制御装置等、ならびにこれらを組み合わせた制御装置が考えられる。図示の変圧器を使用する場合は、マット式融雪装置1の操作そのものがマニュアルで行われるものとなり、融雪装置1を降雪時に路面に敷設し、変圧器を操作してあらかじめ設定された負荷電圧を付与してその間常時通電とすること、もしくは間歇通電とすることができる。
【0030】
以上のように構成されたマット式融雪装置1の使用形態は以下のようである。降雪時、除雪、融雪が所望される路面の必要な面積をカバーする単数もしくは複数のマット式融雪装置1を路面上に敷設し、マットが複数の場合にはその相互間の結線をする。路面に接する非電動エラストマーシート12の路面に接する表面はある程度の粘着性を有しているため、マット式融雪装置1の上面を人や車が走行しても極端なずれが生ずることはない。ただし、必要に応じて非電動エラストマーシート12の路面に接する表面に摩擦抵抗の大きな液状フェノール樹脂などを塗布したり、着脱可能な粘着剤をコーティングしたり、さらに必要であれば一定箇所にアンカー部材を取り付けて路面や外部の固定箇所と結ぶことなどが考えられる。
【0031】
本実施の形態に係るマット式融雪装置1は、軽量で取扱いが容易であるため、特には減速、停止が要求される高速道路の料金徴収所付近、あるいは一般にカーブが急である高速道路の侵入、退出路近辺に敷設することで、降雪時のスリップ事故の防止に効果的であり、安全性を確保することができる。歩行者用としては、一般通路のほか特には横断歩道に利用することで歩行者の安全性が高まる。横断歩道で利用する際にはマット式融雪装置1の上側となるエラストマーシート11の表面に、横断歩道であることを示すゼブラ模様を直接描いておくことが安全面でより効果的である。なお、これまでの説明ではマット式融雪装置1を路面の融雪に適用する例を述べてきたが、これに限定することなく、家屋、ガレージや物置などの屋外構造物の屋根や軒先、玄関の出入り口等、除雪、融雪が所望されるその他の場所においても同様に使用可能である。
【0032】
マット式融雪部材のベース部材(芯材)として従来技術には見られない金網状部材、あるいは多数の空隙を穿孔した金属板を用いることにより、従来技術と比較して以下のような各種メリットが得られる。
(1)軽量でありながら、マット形状維持に必要な十分な強度を確保することができる。
(2)軽量の割には保温に有利となる高い熱容量が確保できる。
(3)取扱いや搬送に有利となるある程度の柔軟性、屈曲性が得られる。
(4)金網16などのベース部材に対する発熱線17の取り付けや均等配置が容易となる。
【実施例0033】
マット式融雪装置1としての機能確認を行うため、以下のサンプル品による実施テストを行った。
1.発熱部10の構成
-金網:SUS304ステンレス金網1.2mm径×3mesh(7.266mm目)、サイズ200mm×200mm
-発熱体:ニクロム線0.6mm径×3m長+シュリンクSiチューブ3mm径 11.54オーム
-変圧器:V105交流電圧調整器、入力AC100V、出力AC20-98V
-発熱部外形寸法:10mm厚×250mm×250mm
2.使用した測定器
-温度測定:非接触温度計 FLUKE59MAX
-電圧、抵抗:デジタルマルチメータ サンワPC500a
-電流:デジタルクランプメータ CUSLOM C-02
3.測定結果
-変圧器のダイアル1.0と1.5の二段階で通電して2分ごとに測定。以下はその結果の抜粋。
-測定点は発熱体の中央部。室温19.9℃。
以上より、融雪に必要な十分な発熱が得られることを確認した。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るマットユニットについて、図2を参照して説明する。図2(a)に示す本実施の形態に係るマットユニットMUは、先の実施の形態で説明したマット式融雪装置1に対し、マット式の車両重量測定装置2を組み合わせてユニット化したものである。両装置1、2は重ね合わせて一体化したユニットとなるが、この両者の固定は接着によることでもよく、あるいはマット式融雪装置1の下側に位置する非導電性エラストマーシート12と、車両重量測定装置2の上側に位置する導電性シート21をいずれも未加硫ゴムとし、これを加圧してラミネート状に固着することなど、他の方策が用いられてもよい。他の方法の一つとして、マットユニットの形状に応じてその周囲を覆う枠を準備し、両マットをその枠内で重ねるように拘束して敷設してもよい。
【0035】
当該マットユニットMUの構成要素の内、マット式の重量測定装置2は、従来技術の項において図6を参照して説明した車両重量測定装置と同一である。説明が一部重複するが、図2(a)においてマット式の車両重量測定装置2は、導電ゴムからなる一対の導電性シート21、22と、両者の間を一定距離に保つ非導電性エラストマー素子23とから構成されている。一対の導電性シート21、22はコンデンサのプレートに相当し、図示のマットユニットMUに車両が乗り上げると、上層に位置するマット式融雪装置1を介してマット式の車両重量測定装置2に荷重が加わり、導電性シート21が変形することによって一対の導電性シート21、22間の間隔が圧縮される。これに伴ってコンデンサに相当する車両重量測定装置2の静電容量もしくは電気抵抗がリニアに変化するため、その変化量を検出することによって車両重量が測定可能となる。
【0036】
図2(b)において、マット式重量測定装置2の重量測定プロセスとしては、一対の導電性シート21、22間の距離の変化に伴う静電容量の変化量を各導電性シート21、22に取り付けられた導線を経由してブリッジ回路25で取り出し、増幅器26で増幅したのちにA/D変換器27でA/D変換する。変換後の数値をCPU28で処理し、表示器29に重量地として表示する一連の動作からなる。なお、当該マット式の測定器を用いて静電容量の変化から車両重量を検出する基本概念は、特許文献5により開示されている。
【0037】
マットユニットMUは、マット式融雪装置1とマット式車両重量測定装置2が重ね合わされて一体のマットとなって路面上に敷設されて使用される。したがってこの両者を組み合わせてユニット化することで、積雪地域で使用する際に路面敷設作業、撤去作業を一度で同時に行うことを可能とし、作業の効率化を図るというメリットが得られる。当該マットユニットMUを車両重量測定場所の路面に敷設することで、積雪時においても安定した重量測定を可能にすると共に雪による誤差の発生を回避できるというメリットも得られる。車両が侵入してくる方向の一定の領域にマット式融雪装置1をさらに敷設してマットユニットMUと合わせて配置すればより効果的となる。マットユニットMUはある程度の柔軟性があるため、コンパクトに巻き取ることが可能で搬送も容易となる。
【0038】
図2(a)の断面図はやや誇張して描かれているが、実際にはマット式融雪装置1の厚さは約5mmから約20mm、マット式の車両重量測定装置2の厚さが約15mm程度でマットユニットMU全体でも20mmから35mm程度の厚さしかなく、車両が乗る上げる際に障害となるほどの段差が生じることはない。必要であれば、マット敷設用に上述した枠を設ける場合には、車両の進行方向に位置する枠をスロープ状に形成することで段差によって生ずる衝撃を緩和することができる。
【0039】
なお、先の実施の形態ではマット式融雪装置1の熱源となる発熱部10のベース部材となる金網16としてオーステナイト系非磁性体のSUS304ステンレス鋼からなる金網を使用しているが、これによって信号処理を行うマット式重量測定装置2に対する外乱要因となる電磁波の発生やノイズの発生を排除できる点においても好ましい。
【0040】
本実施の形態のマットユニットMUの他の態様として、図6に示す重量測定装置2の代わりとして車両走行速度測定装置に置き換えることができる。従来技術の項で特許文献6を参照して説明したが、図6の重量測定装置2と同様な構成を利用して別ロジックを組むことにより、マットユニットMU上を通過する車両重量によって変化する導電性シート21、22間の静電容量もしくは電気抵抗の変化量を捉え、そのピーク値の1/2以上を示す車両通過時間を計測して車速を検出することが可能である。このようなマット式の車両走行速度検出装置と先の実施の形態に係るマット式融雪装置を組み合わせて新たなマットユニットとすることで、上述した重量測定と同様にして積雪の中においても有効な車両速度検出が可能となる。
【0041】
なお、図2(a)においてマット式融雪装置1を上層に、車両重量測定装置2を下層に配置して描いているが、これを逆にして車両重量測定装置2を上層に、マット式融雪装置1を下層に配置することでもよい。これによって車両重量の測定精度を高めることが見込まれ、またマット式融雪装置1の熱量も上層まで十分に伝達可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るマット式融雪装置ならびに当該マット式融雪装置を含むマットユニットは、融雪装置の開発、製造、販売を行う産業分野、ならびに積雪による障害を排除して円滑な産業流通を確保する各産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1.マット式融雪装置、 2.マット式車両重量測定装置、 10.発熱部、 11、12.非導電性エラストマーシート、 13.ヒューズ、 14.リード線、 15.制御装置、 16.金網状部材(金網)、 17.電熱線、 21、22.導電性シート、 23.非導電性エラストマー、 25.ブリッジ回路、 26.増幅器、 27.A/D変換器、 28.CPU、 29.表示器、 MU.マットユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6