(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117394
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】蛍光体、蛍光部材および発光モジュール
(51)【国際特許分類】
C09K 11/81 20060101AFI20220803BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220803BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20220803BHJP
【FI】
C09K11/81
G02B5/20
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118918
(22)【出願日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2021013506
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】大長 久芳
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA19
4H001CA02
4H001XA08
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA15
4H001XA20
4H001XA38
4H001XA39
4H001XA56
4H001YA58
5F142AA23
5F142DA02
5F142DA12
5F142DA14
5F142DA45
5F142DA54
5F142DA55
5F142DA73
(57)【要約】
【課題】新規な蛍光体を提供する。
【解決手段】蛍光体は、一般式がMaY
3-a-bAl
5-a/2P
a/2O
12:Ce
b(但し、MはBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。aは0<a≦1.5、bは0<b≦0.12を満たす。)で表される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式がMaY3-a-bAl5-a/2Pa/2O12:Ceb(但し、MはBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。aは0<a≦1.5、bは0<b≦0.12を満たす。)で表されることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
結晶構造がガーネット型であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光で励起され、ドミナント波長が567~572nmの範囲にある黄色光を発することを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光で励起され、色度座標(cx、cy)が、0.414≦cx≦0.453、0.532≦cy≦0.558を満たす光を発することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光体の粉末である蛍光体粉末と、
前記蛍光体の熱伝導度よりも高い熱伝導度を有する材料の粉末である熱伝導粉末と、
を含む、蛍光部材。
【請求項6】
前記蛍光体粉末と前記熱伝導粉末との体積比は、90:10~60:40であることを特徴とする請求項5に記載の蛍光部材。
【請求項7】
前記蛍光体粉末は、ピーク波長が450nmの光を吸収し、
前記蛍光部材の厚みは、0.12~0.30mmであり、
前記蛍光部材の波長550~600nmの光の透過率は、70%以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の蛍光部材。
【請求項8】
前記蛍光体粉末は、ピーク波長が450nmの青色光を吸収し、
前記蛍光部材の前記青色光の吸収率は、75~85%であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の蛍光部材。
【請求項9】
可視光に対して透明な樹脂と、前記樹脂に内包された請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光体と、を含む蛍光部材であって、
前記蛍光体は、前記樹脂において0.1~30vol%含有されており、
前記蛍光部材の厚みが0.01~5mmであることを特徴とする蛍光部材。
【請求項10】
ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光を発するLEDと、
前記LEDが発する青色光で励起され、黄色光を発する請求項5乃至9のいずれか1項に記載の蛍光部材を含む光波長変換層と、を備え、
前記青色光と前記黄色光とを混色した発光色が、色度座標(cx、cy)=(0.311、0.339)、(0.313、0.342)、(0.331、0.354)、(0.331、0.338)、(0.319、0.315)、(0.311、0.309)で囲まれる範囲の色度であることを特徴とする発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、YAG蛍光体と青色LEDとを組み合わせた白色光源が広く知られている。一方、光源の高輝度化に伴い、YAG蛍光体での波長変換(ストークスロス)による熱集中によって温度消光が起こり、白色光源の効率低下を招いていた。そこで、YAG蛍光体にBaとSiを固溶させたBaY1.92Al4SiO12:Ce0.08が考案されている(非特許文献1参照)。この蛍光体は、従来のYAG蛍光体(Y3Al5O12:Ce)より温度特性が良好で、25℃から200℃まで昇温させた場合の発光強度維持率は91.5%であり、温度消光を起こし難い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Haipeng Ji et al.、「New Y2BaAl4SiO12:Ce3+ yellow microcrystal-glass powder phosphor with high thermal emission stability」、Journal of Materials Chemistry C, 2016, 4, pp.9872-9878
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のBaY1.92Al4SiO12:Ce0.08で表される黄色蛍光体で実現できる色度範囲には制限がある。そのため、この黄色蛍光体と青色LEDとを組み合わせた白色光源として実現できる色度範囲にも制限がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところの一つは、新規な蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の蛍光体は、一般式がMaY3-a-bAl5-a/2Pa/2O12:Ceb(但し、MはBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。aは0<a≦1.5、bは0<b≦0.12を満たす。)で表される。
【0007】
この態様によると、発光特性や温度特性が良好である新規な蛍光体を実現できる。
【0008】
結晶構造がガーネット型であってもよい。
【0009】
ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光で励起され、ドミナント波長が567~572nmの範囲にある黄色光を発してもよい。これにより、新規な黄色蛍光体を実現できる。
【0010】
ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光で励起され、色度座標(cx、cy)が、0.414≦cx≦0.453、0.532≦cy≦0.558を満たす光を発してもよい。これにより、例えば、ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光を発する発光素子と組み合わせて白色光源を実現できる。
【0011】
本発明の他の態様は、蛍光部材である。この蛍光部材は、上記の蛍光体の粉末である蛍光体粉末と、蛍光体の熱伝導度よりも高い熱伝導度を有する材料の粉末である熱伝導粉末と、を含んでよい。
【0012】
この態様によると、蛍光部材の放熱性を向上させることができる。
【0013】
蛍光体粉末と熱伝導粉末との体積比は、90:10~60:40であってよい。これにより、蛍光部材の放熱性を向上させつつ、蛍光部材の発光性能を高めることができる。
【0014】
蛍光体粉末は、ピーク波長が450nmの光を吸収し、蛍光部材の厚みは、0.12~0.30mmであり、蛍光部材の波長550~600nmの光の透過率は、70%以上であってよい。これにより、蛍光部材の機械的強度を高めつつ、所望の用途(たとえばヘッドランプ)に適した光を実現できる。
【0015】
蛍光体粉末は、ピーク波長が450nmの青色光を吸収し、蛍光部材の青色光の吸収率は、75~85%であってよい。これにより、所望の用途(たとえばヘッドランプ)に適した光を実現できる。
【0016】
蛍光部材は、可視光に対して透明な樹脂と、樹脂に内包された蛍光体と、を含んでよい
。蛍光体は、樹脂において0.1~30vol%含有されており、蛍光部材の厚みが0.01~5mmであってよい。これにより、所望の発光効率を達成しつつ、発光色が所望の範囲の色度である発光モジュールを実現できる。
【0017】
本発明の他の態様は発光モジュールである。この発光モジュールは、ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光を発するLEDと、LEDが発する青色光で励起され、黄色光を発する上記の蛍光部材を含む光波長変換層と、を備えている。また、青色光と黄色光とを混色した発光色が、色度座標(cx、cy)=(0.311、0.339)、(0.313、0.342)、(0.331、0.354)、(0.331、0.338)、(0.319、0.315)、(0.311、0.309)で囲まれる範囲の色度である。
【0018】
この態様によると、特定の用途(例えば車両用前照灯)に適した白色光源を実現できる。
【0019】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法、灯具や照明などの装置、発光モジュール、光源などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、新規な蛍光体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来の黄色蛍光体と青色LEDの発光色の色度を示す色度図(CIE1931)である。
【
図2】本実施の形態に係る黄色蛍光体が目標とするドミナント波長の範囲を説明するための図である。
【
図3】本実施の形態に係る黄色蛍光体におけるPの仕込量とドミナント波長との関係を示す図である。
【
図4】Pの仕込量と発光強度との関係を示す図である。
【
図5】Pの仕込量と温度特性(発光強度維持率)との関係を示す図である。
【
図6】本実施の形態に係る発光モジュールの模式図である。
【
図7】実施例11乃至14に係る発光モジュールの発光色の色度と、含まれている黄色蛍光体の濃度との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
[蛍光体]
本実施の形態に係る蛍光体は、青色光で効率良く励起され発光する蛍光体である。具体的には、ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光で強い励起を示し、ドミナント波長が567~572nmの範囲にある黄色光を発する蛍光体である。また、本実施の形態に係る蛍光体は、結晶構造がガーネット型であり、Ce3+イオン等の賦活剤をドープすることで黄色発光を実現している。
【0024】
次に、本実施の形態に係る蛍光体について詳述する。本実施の形態に係る蛍光体は、一般式がMaY3-a-bAl5-a/2Pa/2O12:Ceb(但し、Mはアルカリ土類金属であるBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。aは0<a<1.5、bは0<b<0.12を満たす。)で表される。本願発明者らがこの蛍光体に想到した経緯は以下の通りである。
【0025】
(1)ドミナント波長シフト
YAG蛍光体の発光イオンであるセリウム(Ce3+)は、結晶中で、酸素(O)と十二面体の構造因子(Ceサイト)を形成する。その際、Ceサイトは、2か所で、SiO4四面体(辺長1.60Å)、またはAlO4四面体(辺長1.74Å)と稜を共有している。このSiO4四面体のSi(イオン半径0.26Å)を、Siよりイオン半径の小さいリン(P)(イオン半径0.17Å)に置換することで、SiO4四面体より小さいPO4四面体(辺長1.48Å)を生じさせる。その結果、Ceサイトと共有している稜が縮小することで、Ceサイトに歪が発生し、結晶場エネルギーが増大することで、ドミナント波長が長波長側にシフトした蛍光体を実現できる可能性に想到した。
【0026】
図1は、従来の黄色蛍光体と青色LEDの発光色の色度を示す色度図(CIE1931)である。
図1に示すポイントC1は、YAG蛍光体にBaとSiを固溶させた公知の蛍光体(BaY
1.92Al
4SiO
12:Ce
0.08)の色度座標であり、この公知の蛍光体のドミナント波長は566.3nmである。一方、ポイントC2は、ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色LEDの一例の色度座標である。
【0027】
また、範囲R1は、特定の用途(車両用ヘッドライト)の白色光として規定される色度範囲である。具体的には、範囲R1は、色度座標(cx、cy)=(0.311、0.339)、(0.313、0.342)、(0.331、0.354)、(0.331、0.338)、(0.319、0.315)、(0.311、0.309)で囲まれる範囲である。
【0028】
公知蛍光体による黄色光とLEDの青色光とを組み合わせた混色光は、ポイントC1とポイントC2とを結んだ直線上の色度を持つ。そのため、
図1に示すように、黄色光のドミナント波長が長波長側になると、青色LEDを変更しない限り範囲R1に含まれる白色光を実現できない。そこで、本願発明の黄色光蛍光体のように、従来の黄色蛍光体よりもドミナント波長が長波長側にシフトした蛍光体が求められる。
【0029】
(2)温度消光の抑制
温度消光の要因は、温度上昇時における格子振動の増大であると考えられる。詳述すると、発光元素であるCeの配位構造の変動(伸び-縮み)により、Ceが吸収した励起エネルギーが、Ceに配位する酸素イオンとの振動に吸収され、失活することが温度消光の要因と考えられる。
【0030】
YAG蛍光体にBaとSiを固溶させた従来の蛍光体の結晶中では、AlとOが形成するAlO4四面体、及び、SiとOが形成するSiO4四面体は、AlとOとの結合(Al-O)、及び、SiとOとの結合(Si-O)が等価であるため、Al及びSiの位置が固定され、強固な四面体ユニットを形成している。この四面体ユニットは、温度上昇時に強固な四面体として振動するため、稜を共有しているCeサイトは大きな格子振動を受ける。
【0031】
一方、PとOが形成するPO4四面体では、Pに配位する4つのOとの結合(P-O)のうち、一つが二重結合を形成するため、Pの位置は、4つのOに対し等価でない。そのため、Pは、PO4四面体において、振動する(位置を変える)ことができる。その結果、稜を共有するCeサイトへの熱振動の影響が小さくなり、温度消光の抑制ができる可能性に本願発明者らは想到した。
【0032】
以下、実施例を用いて更に具体的に説明するが、下記の蛍光体の原料、製造方法、蛍光体の化学組成等の記載は本発明の蛍光体の実施の形態を何ら制限するものではない。
【0033】
(実施例1)
実施例1に係る蛍光体は、Ba0.80Y2.14Al4.60P0.40:Ce3+
0.06で表される蛍光体である。実施例1に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、BaCO3(99.9%:関東化学株式会社製)、Y2O3(99.9%:株式会社高純度化学研究所製)、CeO2(99.99%:株式会社高純度化学研究所製)、α-Al2O3(99.99%:株式会社高純度化学研究所製)、AlPO4(株式会社高純度化学研究所製)の粉末原料を準備する。そして、それぞれの粉末原料を、Ba=0.80、Y=2.14、Al=4.60、P=0.40、Ce=0.06のmol比となるように計量する。
【0034】
フラックスとしてBaF2(99%:株式会社高純度化学研究所製)を、粉末原料の合計重量の5wt%計量し、粉末原料と合わせ、それらを乳鉢で均一混合する。その後、アルミナルツボ(SSA-S B1:株式会社ニッカトー製)に入れ、還元雰囲気中(H2:N2=5/95(vol比))、1550℃で4h加熱し焼結する。常温まで冷却後、乳鉢で粉砕し、分光光度計(FP-8500:日本分光株式会社製)にて、波長が460nmの光で励起された蛍光体の発光特性を測定した。
【0035】
その結果、実施例1に係る蛍光体のドミナント波長は569.0nm、発光強度はPを含まない後述の比較例の1.15倍となった。また、温度特性としては、25℃から200℃に昇温した際の発光強度維持率を評価したところ95.0%であった。
【0036】
各実施例および比較例に係る蛍光体の発光特性や温度特性の結果を表1にまとめて示す。なお、表1では、Pの仕込量の最も少ない実施例8から順に記載されている。
【0037】
【0038】
(実施例2)
実施例2に係る蛍光体は、Ba1.00Y1.94Al4.50P0.50:Ce3+
0.06で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=1.00、Y=1.94、Al=4.50、P=0.50、Ce=0.06のmol比となるように計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0039】
(実施例3)
実施例3に係る蛍光体は、Ba0.60Y2.34Al4.70P0.30:Ce3+
0.06で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=0.60、Y=2.34、Al=4.70、P=0.30、Ce=0.06のmol比となるように計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0040】
(実施例4)
実施例4に係る蛍光体は、Ba0.50Y2.44Al4.75P0.25:Ce3+
0.06で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=0.50、Y=2.44、Al=4.75、P=0.25、Ce=0.06のmol比となるように計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0041】
(実施例5)
実施例5に係る蛍光体は、Ba0.20Y2.77Al4.90P0.10:Ce3+
0.03で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=0.20、Y=2.77、Al=4.90、P=0.10、Ce=0.03のmol比となるように計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0042】
(実施例6)
実施例6に係る蛍光体は、Ba1.20Y1.72Al4.40P0.60:Ce3+
0.08で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=1.20、Y=1.72、Al=4.40、P=0.60、Ce=0.08のmol比となるように計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0043】
(実施例7)
実施例7に係る蛍光体は、Ba1.30Y1.60Al4.35P0.65:Ce3+
0.10で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=1.30、Y=1.60、Al=4.35、P=0.65、Ce=0.10のmol比となるように計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0044】
(実施例8)
実施例8に係る蛍光体は、Ba0.10Y2.87Al4.95P0.05:Ce3+
0.03で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=0.10、Y=2.87、Al=4.95、P=0.05、Ce=0.03のmol比で計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性を評価した。発光特性および温度特性の結果を表1に示す。
【0045】
(実施例9)
実施例9に係る蛍光体は、Ba1.50Y1.38Al4.25P0.75:Ce3+
0.12で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=1.50、Y=1.38、Al=4.25、P=0.75、Ce=0.12のmol比となるように計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0046】
(実施例10)
実施例10に係る蛍光体は、Ba1.10Y1.84Al4.45P0.55:Ce3+
0.06で表される蛍光体である。なお、実施例1と同様のそれぞれの原料粉末を、Ba=1.10、Y=1.84、Al=4.45、P=0.55、Ce=0.06のmol比となるように計量した以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0047】
(比較例)
比較例に係る蛍光体は、Ba1.00Y1.92Al4.00Si1.00:Ce3+
0.08で表される蛍光体である。比較例に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、BaCO3(99.9%:関東化学株式会社製)、Y2O3(99.9%:株式会社高純度化学研究所製)、CeO2(99.99%:株式会社高純度化学研究所製)、α-Al2O3(99.99%:株式会社高純度化学研究所製)、SiO2(99.9%:株式会社トクヤマ製)の粉末原料を準備する。そして、それぞれの粉末原料を、Ba=1.00、Y=1.92、Al=4.00、Si=1.00、Ce=0.08のmol比となるように計量する。以降、実施例1と同様の条件で蛍光体を作製し、発光特性や温度特性を評価した。
【0048】
図2は、本実施の形態に係る黄色蛍光体が目標とするドミナント波長の範囲を説明するための図である。本実施の形態に係る黄色蛍光体は、青色LEDと組み合わせて車両用ヘッドライトの白色光として規定される色度範囲を実現するために、青色LEDの色度(cx2,cy2)と黄色蛍光体の色度(cx1,cy1)とを結んだ直線が、範囲R1を通ることが必要である。
【0049】
本願発明者らの検討によれば、ポイントC2における青色LEDの色度(cx2,cy2)とポイントC1’における黄色蛍光体の色度(cx1’,cy1’)とを結んだ直線が、色度範囲R1の上部で接する場合のドミナント波長は567.4nmである。同様に、ポイントC2における青色LEDの色度(cx2,cy2)とポイントC1”における黄色蛍光体の色度(cx1”,cy1”)とを結んだ直線が、色度範囲R1の下部で接する場合のドミナント波長は570.6nmである。
【0050】
そこで、本実施の形態に係る黄色蛍光体は、ドミナント波長が567~572nmの範囲であるとよく、好ましくは、ドミナント波長が567.4~570.6nmの範囲であるとよい。
【0051】
図3は、本実施の形態に係る黄色蛍光体におけるPの仕込量とドミナント波長との関係を示す図である。なお、
図3では、Ceの仕込量が同じ0.06molである実施例1乃至4について図示しているが、表1に示すように、実施例1乃至10の全ての黄色蛍光体において、公知の黄色蛍光体のドミナント波長である566.3nmよりも長波長側にシフトしていることがわかる。また、実施例8を除く各実施例に係る黄色蛍光体のドミナント波長が567~572nmの範囲に含まれている。また、実施例8,9を除く各実施例に係る黄色蛍光体は、ドミナント波長が567.4~570.6nmの範囲に含まれている。
【0052】
つまり、本実施の形態に係る黄色蛍光体の一般式MaY3-a-bAl5-a/2Pa/2O12:Cebにおいて、aは0<a≦1.5の範囲がよく、好ましくは0.10≦a≦1.50がよく、更に好ましくは0.20≦a≦1.30の範囲がよい。また、bは0<b≦0.12の範囲がよい。
【0053】
図4は、Pの仕込量と発光強度との関係を示す図である。
図5は、Pの仕込量と温度特性(発光強度維持率)との関係を示す図である。
図4に示すようにPの仕込量が0.20~0.50molの範囲では、本実施の形態に係る黄色蛍光体は、発光強度が比較例の場合と比較して10~15%程度向上している。つまり、発光強度に着目すると、本実施の形態に係る黄色蛍光体を表す一般式におけるaは、0.40≦a≦1.00の範囲が好ましい。
【0054】
また、
図5や表1に示すように、実施例7や実施例9における温度特性の低下(200℃の発光強度が25℃の発光強度の0.88~0.90倍に低下)を考慮すると、本実施の形態に係る黄色蛍光体を表す一般式におけるaは0.10≦a≦1.20、bは0.03≦b<0.10の範囲がよい。好ましくはaが0.50≦a≦0.80の範囲であれば、発光強度維持率は95%程度を達成できる。
【0055】
このように、本実施の形態に係る黄色蛍光体は、発光特性や温度特性が良好である新規な蛍光体である。また、この黄色蛍光体は、色度座標(cx、cy)が、0.414≦cx≦0.453、0.532≦cy≦0.558を満たす光を発するとよい。これにより、例えば、ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光を発する発光素子と組み合わせて白色光源を実現できる。
【0056】
[発光モジュール]
図6は、本実施の形態に係る発光モジュールの模式図である。本実施の形態に係る発光モジュール10は、実装基板12と、実装基板12の上に実装された発光素子であるLED14と、樹脂に蛍光体が分散された光波長変換層16と、を備える。LED14は、ピーク波長が430~480nmの範囲にある青色光を発する。光波長変換層16は、可視光に対して透明なシリコーン樹脂に、本実施の形態に係る黄色蛍光体が分散された蛍光部材を備えている。また、光波長変換層16は、黄色蛍光体を0.1~30vol%含有し、厚みtが0.01~5mmである。なお、厚みは0.1~2mmの範囲であってもよい。黄色蛍光体の体積濃度は10vol%以下であってもよい。これにより、所望の発光効率を達成しつつ、発光色が前述のヘッドランプに好適な範囲の色度である発光モジュールを実現できる。
【0057】
以下、所望のドミナント波長の黄色光が得られた実施例1、4、5、7の蛍光体と青色LEDとを組み合わせた白色発光モジュールについて発光特性を評価した。
図7は、実施例11乃至14に係る発光モジュールの発光色の色度と、含まれている黄色蛍光体の濃度との関係を説明するための図である。
【0058】
(実施例11)
実施例1に係る蛍光体(Pの仕込量0.40)を透明シリコーン樹脂に任意の濃度で混合した光波長変換層を、ピーク波長が460nmの青色LEDの光出射面を覆うように、t=0.5mmの膜厚でポッティングし、白色発光モジュールを作製した。黄色蛍光体の濃度の異なる発光モジュールの発光色を評価した結果、発光色の色度は、黄色蛍光体の色度と青色LEDの色度とを結ぶ直線上を変化した。実施例11に係る発光モジュールの場合、実施例1に係る蛍光体の濃度が3,4,5,6,7vol%のとき、発光モジュールの発光色の色度が、ヘッドランプに好適な所望の色度の範囲R1に入った。
【0059】
(実施例12)
実施例4に係る蛍光体(Pの仕込量0.25)を透明シリコーン樹脂に任意の濃度で混合した光波長変換層を、ピーク波長が460nmの青色LEDの光出射面を覆うように、t=0.5mmの膜厚でポッティングし、白色発光モジュールを作製した。黄色蛍光体の濃度の異なる発光モジュールの発光色を評価した結果、発光色の色度は、黄色蛍光体の色度と青色LEDの色度とを結ぶ直線上を変化した。実施例12に係る発光モジュールの場合、実施例4に係る蛍光体の濃度が3.5vol%のとき、発光モジュールの発光色の色度が、ヘッドランプに好適な所望の色度の範囲R1に入った。
【0060】
(実施例13)
実施例5に係る蛍光体(Pの仕込量0.10)を透明シリコーン樹脂に任意の濃度で混合した光波長変換層を、ピーク波長が460nmの青色LEDの光出射面を覆うように、t=0.5mmの膜厚でポッティングし、白色発光モジュールを作製した。黄色蛍光体の濃度の異なる発光モジュールの発光色を評価した結果、発光色の色度は、黄色蛍光体の色度と青色LEDの色度とを結ぶ直線上を変化した。実施例13に係る発光モジュールの場合、実施例4に係る蛍光体の濃度が3vol%のとき、発光モジュールの発光色の色度が、ヘッドランプに好適な所望の色度の範囲R1に入った。
【0061】
(実施例14)
実施例7に係る蛍光体(Pの仕込量0.65)を透明シリコーン樹脂に任意の濃度で混合した光波長変換層を、ピーク波長が460nmの青色LEDの光出射面を覆うように、t=0.5mmの膜厚でポッティングし、白色発光モジュールを作製した。黄色蛍光体の濃度の異なる発光モジュールの発光色を評価した結果、発光色の色度は、黄色蛍光体の色度と青色LEDの色度とを結ぶ直線上を変化した。実施例14に係る発光モジュールの場合、実施例4に係る蛍光体の濃度が5,6,7vol%のとき、発光モジュールの発光色の色度が、ヘッドランプに好適な所望の色度の範囲R1に入った。
【0062】
[蛍光体粉末を含む焼結体]
以下では、上述した蛍光体の粉末である蛍光体粉末を含む蛍光部材の一例である焼結体について説明する。焼結体は、各種の公知の焼結技術を用いて作製されてよい。たとえば、蛍光体粉末を金型に充填して成形を行い、得られた成形体にCIP(Cold Isostatic Pressing)およびHIP(Hot Isostatic Pressing)等を行うことによって焼結体を作製してもよい。
【0063】
焼結体は、蛍光体粉末に加えて必要に応じて各種の材料を含んでよく、たとえば、蛍光体の熱伝導度よりも高い熱伝導度を有する材料の粉末である熱伝導粉末を含んでもよい。この材料は、たとえば、170W/mK程度の熱伝導度を有する誘電体である窒化アルミニウム(AlN)または20W/mK程度の熱伝導度を有する酸化アルミニウム(Al2O3)などであってよい。焼結体が蛍光体粉末に加えて熱伝導粉末を含むことにより、焼結体が熱伝導粉末を含まない場合よりも、焼結体が発光する際に発生した熱をより速く拡散させることができる。本実施形態によれば、焼結体の放熱性を向上させることができるため、高輝度のLEDに焼結体を実装した場合にも発光時における温度上昇を抑制することができ、高温で発光性能が低下することを抑制できる。
【0064】
また、焼結体に含まれる蛍光体粉末と熱伝導粉末との体積比は、90:10~60:40であることが好ましい。熱伝導粉末の体積率が10vol%以上であり、蛍光体粉末の体積率が90vol%以下であることにより、焼結体の放熱性をより向上させることができる。また、熱伝導粉末の体積率が40vol%以下であり、蛍光体粉末の体積率を60vol%以上であることにより、焼結体の光(たとえば、ピーク波長が450nmの青色光など)の吸収率および光(たとえば、波長が550~600nmの黄色光など)透過率を高めることができる。なお、本明細書において体積比とは、焼結体などの蛍光部材に含まれる蛍光体粉末および熱伝導粉末の体積の合計に対する体積比を意味するものとする。
【0065】
焼結体の形状は特に限定されるものではなく、焼結体は各種の形状に加工され得るが、たとえば焼結体の形状は所定の厚みを有する板状であってよい。また、焼結体の形状は、たとえば、
図6に示した光波長変換層として用いられる所定の厚みを有した形状であってよい。
【0066】
焼結体の厚みは、特に限定されるものではないが、120~300μm(0.12~0.30mm)であることが好ましい。焼結体の厚みが120μm以上であることにより、焼結体の機械的強度を高めることができる。これにより、焼結体が壊れにくくなり、焼結体の取り扱いが容易となる。また、焼結体の厚みが300μm以下であることにより、LEDから焼結体に照射された光が焼結体の側面から漏れることが抑制され、焼結体の有効光束を高めることが可能となる。
【0067】
焼結体は、各種波長の光を透過させてよいが、たとえば波長が550~600nmの光を透過させてよい。また、焼結体の光(たとえば波長が550~600nmの光)の透過率は、70%以上であってよい。焼結体(より具体的には、焼結体に含まれる蛍光体)は、各種波長の光を吸収してよいが、たとえばピーク波長が450nmの青色光を吸収してよい。また、焼結体の青色光の吸収率は、たとえば75~85%であってよい。これにより、青色光を発する光源(たとえばLEDなど)と蛍光部材とを組み合わせて、所望の用途(たとえば、ヘッドランプ)に適した白色光を発する光源を実現できる。たとえば、青色LEDと蛍光部材とを組み合わせて、色度座標(cx、cy)=(0.311、0.339)、(0.313、0.342)、(0.331、0.354)、(0.331、0.338)、(0.319、0.315)、(0.311、0.309)で囲まれる範囲の色度の白色光を発する光源を実現できる。
【0068】
以下、実施例を用いて、蛍光体粉末を含む焼結体について更に具体的に説明する。
【0069】
(実施例15)
実施例15に係るサンプルに用いた蛍光体は、Ba0.04Y2.91Al4.98P0.02O12:Ce3+
0.05で表される蛍光体である。はじめに、BaO3(99.9%)、Y2O3(99.9%)、α-Al2O3(99.99%)、AlPO4(99.99%)、CeO2(99.99%)の粉末原料を準備した。そして、それぞれの粉末原料を、Ba=0.04、Y=2.91、Al=4.98、P=0.02、Ce=0.05のmol比となるように計量した。
【0070】
フラックスとしてBaF2(99%)を粉末原料の合計重量の5wt%計量し、BaF2を計量した粉末原料と合わせ、それらを乳鉢で均一混合して混合粉末を得た。その後、アルミナルツボ(SSA-S B1:株式会社ニッカトー製)に混合粉末を入れ、還元雰囲気中(H2:N2=5/95(vol比))において、1550℃で混合粉末を4h加熱して焼結させることで蛍光体を得た。その後、蛍光体を室温まで冷却し、乳鉢を用いて蛍光体を粉砕し、粒径が1~30μmの蛍光体粉末を得た。
【0071】
得られた蛍光体粉末とAlN粉末(99.9%)とを体積比が90:10となるように計量した。次いで、ボールミルを用いて、これらの粉末の粒径が3μm以下となるように、蛍光体粉末とAlNの粉末とを混合および粉砕した。
【0072】
混合および粉砕して得られた粉末をφ20mmの金型に充填し、10MPaの成形圧力で粉末を成形して1次成形体を得た。次いで、CIPを利用して、98MPaの成形圧力で1次成形体を圧縮成形して2次成形体を得た。次いで、加熱炉を用いて、1×10-3Paの窒素雰囲気において、2次成形体を1650℃で24h加熱した。さらに、加熱した2次成形体をHIPによって、196MPaおよび1550℃の条件で24h加熱して焼結体を得た。次いで、得られた焼結体を紙やすりを用いて研削および研磨して100μmの厚みに調整し、1mm角の大きさに切り出して、板状の焼結体のサンプルを作製した。
【0073】
熱伝導度計を使用して、定常法によりサンプルの熱伝導度を測定した。熱伝導度の基準値を30W/mKとし、測定値がこの基準値以上である場合には、サンプルの熱伝導度が良好であるものと評価した。
【0074】
分光光度計(日立社製)を使用して、サンプルの透過率を測定した。励起光の波長を460nmとし、測定光を波長が600nmである黄色光とした。黄色光の透過率が70%以上である場合に、サンプルの透過率が良好であるものと評価した。
【0075】
積分球を使用して、サンプルの吸収率を測定した。励起光は、波長が460nmである青色光とした。青色光の吸収率が75%~85%である場合に、サンプルの吸収率が良好であるものと評価した。
【0076】
また、照度計を使用して、サンプルの有効光束を測定した。具体的には、板状のサンプルを460nmの励起光を出射するLEDチップ上に搭載し、LEDチップに励起光を出射させ、サンプルの直上および側面のみについて測定および有効光束の算出を行った。サンプルの側面から漏れる光の量が10%以下である場合に、サンプルの有効光束が良好であるものと評価した。
【0077】
また、サンプルをピンセットでハンドリングした場合に、サンプルが破損しなかった場合に、サンプルのハンドリング性が良好であるものと評価した。
【0078】
さらに、サンプルの熱伝導度、透過率、吸収率、ハンドリング性および有効光束のいずれの評価も良好である場合に、そのサンプルについての総合評価が良好であるものとした。
【0079】
各実施例に係るサンプルの作製条件および評価結果を表2にまとめて示す。
【0080】
【0081】
(実施例16~20)
実施例16~20では、サンプルの厚みを120,180,240,300または360μmに変更したこと以外は実施例15と同様にして焼結体のサンプルを作製した。
【0082】
(実施例21~38)
実施例21~38では、蛍光体粉末とAlN粉末との体積比およびサンプルの厚みを表2に示す値に変更したこと以外は実施例15と同様にして焼結体のサンプルを作製した。具体的には、蛍光体粉末とAlN粉末との体積比を70:30,60:40または50:50とし、それぞれの体積比について、サンプルの厚みを100,120,180,240,300または360μmとして、焼結体のサンプルを作製した。
【0083】
(実施例39)
実施例39では、実施例15と同様にして混合粉末を加熱して焼結させ、得られた蛍光体を乳鉢で粉砕して蛍光体粉末を得た。この蛍光体粉末をAlN粉末と混合せずに、ボールミルを用いて蛍光体粉末を粉砕した。
【0084】
次いで、ボールミルを用いて粉砕した蛍光体粉末をφ20mmの金型に充填し、10MPaの成形圧力で蛍光体粉末を成形して1次成形体を得た。以下、実施例15と同様にして焼結体のサンプルを作製した。
【0085】
(実施例40)
実施例40では、AlN粉末に代えてAl2O3粉末を蛍光体粉末に混合したこと以外は、実施例23と同様にして、すなわち蛍光体粉末と熱伝導粉末との体積比を70:30とし、サンプルの厚みを180μmとして、焼結体のサンプルを作製した。
【0086】
以上、実施例に係るサンプルの作製方法について説明した。以下、評価結果について説明する。
【0087】
実施例15~38に係るAlN粉末を含むサンプルの熱伝導度は、いずれも基準値を上回り、良好となった。さらに、AlN粉末の体積率が10~40vol%であり、サンプルの厚みが120~300μmである実施例では、熱伝導度、透過率、吸収率、ハンドリング性および有効光束のいずれの評価項目も良好であった。以下、評価結果についてより詳細に説明する。
【0088】
実施例39に係る熱伝導粉末を含まないサンプルでは、透過率、吸収率、ハンドリングおよび有効光束については良好な評価となったが、熱伝導度については良好な評価とはならなかった。実施例40に係るサンプルは、蛍光体の熱伝導度よりも高い熱伝導度を有するAl2O3の粉末を含む。このため実施例40に係るサンプルの熱伝導度は、実施例39に係るサンプルの熱伝導度よりも高くなったが、良好な評価とはならなかった。
【0089】
実施例23に係るサンプルでは、実施例40に係るサンプルと比べて、熱伝導粉末がAl2O3粉末からAlN粉末に変更されている。AlNの熱伝導度はAl2O3の熱伝導度よりも高いため、実施例23に係るサンプルの熱伝導度は、実施例40に係る熱伝導度よりも高くなり、良好な値となった。
【0090】
さらに、AlN粉末を含む実施例15~38に係るサンプルのいずれにおいても、熱伝導度は良好な値(>30W/mK)となった。したがって、少なくともAlN粉末の体積率が10vol%以上であれば、サンプルの熱伝導度が良好な値となることがわかった。
【0091】
また、AlN粉末の体積率が30vol%以上である実施例21~38のうち、サンプルの厚みが360μmの実施例では、透過率が70%未満となったが、サンプルの厚みが300μm以下の実施例では、透過率が良好な値となった。
【0092】
また、AlN粉末の体積率が50vol%である実施例33~38のうち、サンプルの厚みが100~300μmの実施例では、吸収率が75%未満となったが、厚みが360μmの実施例では、吸収率について良好な結果が得られた。なお、厚みが100~300μmの実施例では、サンプルの側面における光の漏れを抑制でき、有効光束については良好な結果となった。
【0093】
さらに、サンプルの厚みが120μm未満の実施例では、機械的強度が低く、ハンドリング性について良好な結果が得られなかったが、厚みが120μm以上の実施例では、サンプルをピンセットで取り扱ってもサンプルが壊れることがなく、ハンドリング性について良好な結果が得られた。
【0094】
[発光モジュール]
(実施例41)
実施例41では、
図6を参照して説明した発光モジュールを作製した。具体的には、実施例22に係るサンプルと同様の条件で作製した蛍光体粉末とAlN粉末とを含む焼結体を光波長変換層とし、この光波長変換層が青色LED(ピーク波長:460nm)の光出射面を覆うように、サファイアの実装基板に光波長変換層を常温接合することにより白色発光モジュールを作製した。
【0095】
実施例41では、発光モジュールの発光色の色度は、ヘッドランプに好適な色度の範囲に入り、色度(cx、cy)=(0.32、0.33)となった。したがって、本実施例では、本発明の一実施形態に係る蛍光部材を青色LED上に搭載することにより、高温特性に優れた特定の用途(車両用ヘッドライトなど)に好適な白色LEDを作製できたといえる。
【0096】
以上、本発明を上述の実施の形態や各実施例を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態や各実施例に限定されるものではなく、実施の形態や各実施例の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態や各実施例における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態や各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0097】
上記実施形態では、蛍光体粉末と熱伝導粉末とを含む蛍光部材の一例として、焼結体を説明した。これに限らず、たとえば、樹脂に蛍光体粉末と熱伝導粉末とを分散させたものを蛍光部材としてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10 発光モジュール、 12 実装基板、 14 LED、 16 光波長変換層。