(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117397
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】肥満の予測方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20220803BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220803BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220803BHJP
【FI】
C12Q1/06
G01N33/48 M
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126318
(22)【出願日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2021012817
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514235307
【氏名又は名称】アニコム ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】松本 拳悟
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 寛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐幸
(72)【発明者】
【氏名】堀江 亮
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
5L049
【Fターム(参考)】
2G045CB04
2G045CB17
2G045CB21
2G045DA14
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QR75
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】動物の肥満の予測、判定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、及び、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌種数を測定する測定工程を備える動物の肥満の予測方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、及び、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌種数を測定する測定工程を備える動物の肥満の予測方法。
【請求項2】
前記動物の体内が腸である請求項1記載の動物の肥満の予測方法。
【請求項3】
前記動物から単離された試料が動物の糞便である請求項1記載の動物の肥満の予測方法。
【請求項4】
前記測定工程が、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)及び/又はプレボテラ科(Prevotellaceae)に属する菌の菌種数を測定するものである請求項1~3のいずれか一項記載の動物の肥満の予測方法。
【請求項5】
さらに、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の占有率を測定する測定工程を備える請求項1~4のいずれか一項記載の動物の肥満の予測方法。
【請求項6】
前記動物が犬である請求項1~5のいずれか一項記載の動物の肥満の予測方法。
【請求項7】
前記動物の年齢が5歳以下である請求項1~6のいずれか一項記載の動物の肥満の予測方法。
【請求項8】
動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、及び、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌種数を測定する測定工程を備える動物の肥満の判定方法。
【請求項9】
動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するコリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の占有率を測定する測定工程を備える動物の疾患罹患の予測方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項記載の動物の肥満の予測方法による予測結果に基づいて保険料を算出する動物の保険料算出方法。
【請求項11】
動物の腸内細菌叢の多様度指数を測定する工程を備える動物の肥満の予測方法。
【請求項12】
前記多様度指数が、シャノン・ウィーナーの多様度指数である請求項11記載の動物の肥満の予測方法。
【請求項13】
動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の菌種数に関するデータから、当該動物が肥満になるかどうかを予測する工程を備える動物の肥満の予測方法。
【請求項14】
動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ゲメラ科(Gemellaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)、セレノモナス科(Selenomonadaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)、サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)、サテレラ科(Sutterellaceae)及びモルガネラ科(Morganellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の占有率に関するデータから、当該動物が肥満になるか否かを予測する工程を備える動物の肥満の予測方法。
【請求項15】
前記菌の占有率に関するデータが、占有率に応じて付与されたスコアである請求項14記載の動物の肥満の予測方法。
【請求項16】
動物の体内又は動物から単離された試料中に存在する菌について、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを受け付ける受付手段と、
動物の体内又は動物から単離された試料中に存在する菌について、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータから当該動物が肥満になるか否かを予測する判定手段と、
を備える動物の肥満予測システム。
【請求項17】
前記判定手段による予測結果を、肥満になりやすさに応じたアイコンで表示する表示部を備える請求項16記載の動物の肥満予測システム。
【請求項18】
前記判定手段による予測結果とともに、所定の菌科に属する所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率の大小を、アイコンで表示する表示部を備える請求項17記載の動物の肥満予測システム。
【請求項19】
前記判定手段による予測結果に応じて肥満を改善するためのアドバイスを提供するアドバイス手段を備える請求項16~18のいずれか一項記載の動物の肥満予測システム。
【請求項20】
前記判定手段による予測結果に応じてフードをレコメンドする提案手段を備える請求項16~19のいずれか一項記載の動物の肥満予測システム。
【請求項21】
前記所定の菌科が、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科である請求項16~20のいずれか一項記載の動物の肥満予測システム。
【請求項22】
前記所定の菌科が、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ゲメラ科(Gemellaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)、セレノモナス科(Selenomonadaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)、サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)、 サテレラ科(Sutterellaceae)及びモルガネラ科(Morganellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科である請求項16~20のいずれか一項記載の動物の肥満予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の肥満の予測方法、判定方法及び動物の疾患の予測方法に関し、詳しくは、動物の体内または動物から得られた試料中の菌種数の測定に基づいて動物が肥満になるかを予測する肥満の予測方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫、ウサギを始めとする愛玩動物、牛や豚を始めとする家畜は、人間にとってかけがえのない存在である。近年、人間が飼育する動物の平均寿命が大幅に伸びた一方で、動物がその一生の中で何らかの疾患に罹患することが多くなり、飼育者が負担する医療費の増大が問題となっている。
【0003】
特に近年では、動物もヒトと同様に、運動不足やフードの過剰摂取あるいは遺伝的要因等に基づく肥満の問題が顕在化している。肥満は、種々の疾患の原因となり得ることが指摘されており、動物の医療費の高額化の一因となっていると考えられる。
【0004】
一方、愛玩動物の医療費をカバーするペット保険が提供されている。ペット保険は、人間に対する生命保険や医療保険と同様に、動物の品種・年齢や既往歴等に応じて保険料や加入の可否が決まることが多い。そして、ペット保険の加入者にとって、保険対象となる動物が健康であることが好ましいことは言うまでもない。
【0005】
そのため、ペット保険の加入者に対して、保険対象となる動物の健康に関する情報を提供し、当該動物の健康維持へのモチベーション向上を図ることが望まれている。
【0006】
動物の肥満は、遺伝的な要因に基づくものもあるが、多くは生活習慣に起因すると考えられ、飼育者やペット保険の加入者への情報提供や啓蒙によって、動物の肥満の予防や解消の可能性が高まることが期待される。したがって、簡易な方法で動物の肥満やそれに関連する疾患に関する情報を提供できる方法が求められている。
【0007】
特許文献1には、腸内細菌叢中、バクテロイデス門(Bacteroidetes)の細菌を増殖させ、ファーミキューテス門(Firmicutes)の細菌を減少させることによって、腸内細菌叢を有効に調整又は改善する効果を有する腸内細菌叢調整又は改善組成物が開示されているが、動物の腸内細菌叢などの動物体内(動物の腸内)や動物から採取される試料中の特定の細菌種と肥満との関連については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2017/094892号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、動物の肥満の予測、判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ペット保険に加入している動物の肥満状態と当該動物体内の細菌叢の状態についての膨大なデータを分析、検討した結果、動物の腸内細菌叢などの動物体内や動物から採取される試料中の特定の細菌グループと肥満との関連を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の[1]~[22]である。
[1]動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、及び、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌種数を測定する測定工程を備える動物の肥満の予測方法。
[2]前記動物の体内が腸である[1]の動物の肥満の予測方法。
[3]前記動物から単離された試料が動物の糞便である[1]の動物の肥満の予測方法。
[4]前記測定工程が、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)及び/又はプレボテラ科(Prevotellaceae)に属する菌の菌種数を測定するものである[1]~[3]のいずれかの動物の肥満の予測方法。
[5]さらに、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の占有率を測定する測定工程を備える[1]~[4]のいずれかの動物の肥満の予測方法。
[6]前記動物が犬である[1]~[5]のいずれかの動物の肥満の予測方法。
[7]前記動物の年齢が5歳以下である[1]~[6]のいずれかの動物の肥満の予測方法。
[8]動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、及び、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌種数を測定する測定工程を備える動物の肥満の判定方法。
[9]動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するコリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の占有率を測定する測定工程を備える動物の疾患罹患の予測方法。
[10][1]~[7]のいずれかの動物の肥満の予測方法による予測結果に基づいて保険料を算出する動物の保険料算出方法。
[11]動物の腸内細菌叢の多様度指数を測定する工程を備える動物の肥満の予測方法。
[12]前記多様度指数が、シャノン・ウィーナーの多様度指数である[11]の動物の肥満の予測方法。
[13]動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の菌種数に関するデータから、当該動物が肥満になるかどうかを予測する工程を備える動物の肥満の予測方法。
[14]動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ゲメラ科(Gemellaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)、セレノモナス科(Selenomonadaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)、サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)、サテレラ科(Sutterellaceae)及びモルガネラ科(Morganellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の占有率に関するデータから、当該動物が肥満になるか否かを予測する工程を備える動物の肥満の予測方法。
[15]前記菌の占有率に関するデータが、占有率に応じて付与されたスコアである[14]の動物の肥満の予測方法。
[16]動物の体内又は動物から単離された試料中に存在する菌について、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを受け付ける受付手段と、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在する菌について、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータから当該動物が肥満になるか否かを予測する判定手段と、を備える動物の肥満予測システム。
[17]前記判定手段による予測結果を、肥満になりやすさに応じたアイコンで表示する表示部を備える[16]の動物の肥満予測システム。
[18]前記判定手段による予測結果とともに、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率の大小を、アイコンで表示する表示部を備える[17]の動物の肥満予測システム。
[19]前記判定手段による予測結果に応じて肥満を改善するためのアドバイスを提供するアドバイス手段を備える[16]~[18]のいずれかの動物の肥満予測システム。
[20]前記判定手段による予測結果に応じてフードをレコメンドする提案手段を備える[16]~[19]のいずれかの動物の肥満予測システム。
[21]前記所定の菌科が、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科である[16]~[20]のいずれかの動物の肥満予測システム。
[22]前記所定の菌科が、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ゲメラ科(Gemellaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)、セレノモナス科(Selenomonadaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)、サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)、サテレラ科(Sutterellaceae)及びモルガネラ科(Morganellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科である[16]~[20]のいずれかの動物の肥満予測システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、動物の肥満の予測、判定方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図7】本発明の表示部が表示するアイコンの一例である。
【
図8】本発明の表示部が表示するアイコンの一例である。
【
図9】本発明の動物の肥満予測システムの一実施態様を表す模式図である。
【
図10】本発明の動物の肥満予測システムの一実施態様を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<肥満の予測方法>
本発明の肥満の予測方法の一つは、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)及びパラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌種数を測定する測定工程を備えることを特徴とするものである。
【0015】
[対象となる動物]
対象となる動物は特に限定されず、好ましくは哺乳類であり、例えば、犬、猫、ウサギ、フェレット等が挙げられ、特に犬が好ましい。
動物の年齢は5歳以下が好ましく、3~5歳であることが特に好ましい。
【0016】
[試料]
動物の体内又は動物から単離された試料中に存在する菌の種類やその数を検査、測定する方法は公知の方法をいずれも用いることができる。菌としては、腸内細菌が好ましく、試料としては、動物の糞便が好ましい。すなわち、好適な態様としては、動物の糞便を試料として、動物の腸内細菌叢を調べることが挙げられる。
【0017】
[菌種数の測定]
菌種数の測定は、NGSなどのシーケンサーを用いたアンプリコンシーケンスなどの公知のメタゲノム解析法や細菌叢の解析方法を用いることができる。例えば、試料中に含まれるあらゆる生物のDNAやRNAの塩基配列情報を次世代シーケンサーを用いて解析することによって、当該試料中に含まれる生物を同定する方法が挙げられる。好ましくは、試料中に含まれる16SrRNA遺伝子の全部又は一部を、必要に応じて増幅して、シーケンスを行い、得られた配列をソフトウェアを用いて解析し、試料中の細菌の組成データを得る方法が挙げられる。試料中の細菌の組成データを、ソフトウェアで処理すること、あるいは、Genbank、Greengenes、SILVA databaseといった遺伝子データベースを参照することによって、試料中に含まれる細菌の菌種の帰属を決定し、特定の科に属する細菌の菌種数を測定することができる。
【0018】
NGS(次世代シーケンサー)を利用した16SrRNA遺伝子のアンプリコン解析(菌叢解析)の一例を具体的に説明する。まず、DNA抽出試薬を用いて試料よりDNAを抽出し、抽出したDNAからPCRによって16SrRNA遺伝子を増幅する。その後、増幅したDNA断片についてNGSを用いて網羅的に塩基配列を決定し、低クオリティリードやキメラ配列の除去を行った後、配列同士をクラスタリングしてOTU(Operational Taxonomic Unit)解析を行う。OTUとは、ある一定以上の類似性(例えば、96~97%以上の相同性)を持つ配列同士を一つの菌種のように扱うための操作上の分類単位である。従って、OTU数は菌叢を構成する菌種の数を表し、同一のOTUに属するリードの数はその種の相対的な存在量を表していると考えられる。また、各OTUに属するリード数の中から代表的な配列を選び、データベース検索により科名や属種名の同定が可能となる。このようにして、特定の科に属する菌種数を測定することができる。
【0019】
[予測方法]
本発明の肥満の予測方法は、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在する特定の科に属する菌(細菌)の菌種数を測定する測定工程を備えることを特徴とするものであり、当該菌種数が少ない場合に、将来、当該動物が肥満となることを予測するものである。ここでいう将来とは、所定期間内にという意味であり、期間は特に限定されないが、好ましくは3年以内、より好ましくは2年以内、さらに好ましくは1年以内である。また、肥満の予測であるから、本発明の方法の使用後、当該動物の食生活や生活習慣の改善により、肥満とならない事態も充分に想定される。むしろ、当該動物の飼育者に対して、当該動物が肥満になる危険性があることを伝えることによって、当該動物の食生活や生活習慣を改善することを促すという使い方もできる。例えば、本発明の肥満の予測方法による予測結果に応じて、肥満を防止するための食事、肥満になりにくい細菌を含むサプリ、低カロリーの食事、低糖質の食事、ダイエットメニュー等を提案したり、推奨することができる。
また、本発明の肥満の予測方法による予測結果に応じて、肥満を防止するための飲料、食事、サプリメントを製造あるいはカスタマイズすることもできる。肥満防止に関するサービスとして、本発明の肥満の予測方法による予測、予測結果の提供、予測結果に応じた飲料、食事、サプリメントを製造あるいはカスタマイズ、当該飲料、食事、サプリメントの提案、推奨という形態もとり得る。また、このようなサービスを提供した後に、さらに本発明の肥満の予測方法を実施し、肥満傾向が改善したのかどうかを提示するといった方法も可能である。上記飲料、食事、サプリメントには、食餌療法用飲料、ダイエット食品、栄養補助用添加物等が含まれる。
また、上記菌種数の測定結果に、さらに、遺伝子検査の結果(肥満に影響しやすい遺伝子の有無)と組み合わせて肥満を予測することが好ましい。遺伝子検査の結果を組み合わせることにより、高い精度で肥満の予測をすることができる。
【0020】
肥満の基準としては、例えば、各動物(品種)のボディ・コンディション・スコア(BCS)において、5段階の場合はBCS4以上である(9段階の場合は6以上)ということができるが、この基準に限定されるものではない。BCSが定められていない動物においては、例えば、体脂肪率を基準に用いることができ、この場合、肥満とは当該動物の体脂肪率が、その動物種の平均値から高い、好ましくは50%以上高い、より好ましくは75%以上高い場合をいうが、これに限定されるものではない。また、BCSが定められていない動物については、BCSが定められている犬や猫を参考にして肥満を定義づけることもできる。
【0021】
本発明者らによる検証により、肥満又は肥満傾向にある動物は、腸内細菌叢において、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)又はパラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)に属する細菌の菌種数が、肥満ではない動物と比較して少ないことが見出された。したがって、これらの菌科の菌種数は、肥満との関連性があり、これらの菌科の菌種数が少ない、あるいは、減少すると、肥満になりやすいことが理解できる。逆に、これらの菌種数が多い、増えているといった場合、肥満になりにくいと予測、判定することができる。
菌種数の減少や菌種数が少ないことは、肥満ではないあるいは肥満傾向にない同種の動物の菌種数との比較に基づいて決定してもよいし、同一の動物について経時的に複数回菌種数の測定を行い、当該動物における菌種数の変化を見ることによって決定してもよい。
また、動物種ごとに、上記科に属する菌種数のデータベースを構築しておき、当該データベース中の菌種数との比較によって、菌種数が減っているあるいは少ないことを確認することもできる。
例えば、菌種数が、対象動物や対象動物の平均値と比較して、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上少ない場合、肥満になる可能性があると予測することができる。
また、別の例では、菌種数が、同一の動物において、前回の測定時と比較して、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上減少している場合、肥満になる可能性があると予測することができる。
【0022】
また、本発明の肥満の予測方法は、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の菌種数に関するデータから、当該動物が肥満になるかどうかを予測する工程を備える動物の肥満の予測方法であってもよい。
菌の菌種数に関するデータとしては、例えば、菌種数、菌種数に応じて付与されたスコア、菌種数が所定値以上であるか所定値未満であるかに応じて付与されたスコア等が挙げられる。各菌科のスコアを合計して算出した合計スコアを用いてもよい。
【0023】
また、本発明の肥満の予測方法は、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ゲメラ科(Gemellaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)、セレノモナス科(Selenomonadaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)、サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)、サテレラ科(Sutterellaceae)及びモルガネラ科(Morganellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の占有率に関するデータから、当該動物が肥満になるか否かを予測する工程を備える動物の肥満の予測方法であってもよい。
菌の占有率に関するデータとしては、例えば、占有率、占有率に応じて付与されたスコア、占有率が所定値以上であるか所定値未満であるかに応じて付与されたスコア等が挙げられる。各菌科のスコアを合計して算出した合計スコアを用いてもよい。
【0024】
[科]
測定対象となる科は、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)及びパラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)からなる群から選ばれる1種以上である。特に、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)及び/又はプレボテラ科(Prevotellaceae)に属する菌の菌種数を測定することが好ましい。これらの科に属する菌は、肥満となっている動物及び肥満に関連する疾病に罹患している動物の双方において、健常動物との比較において菌種数が減少していることが本発明者らによって確認されたものである。
さらに、上記に加えて、或いは、上記に代えて、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科に属する菌の占有率を測定してもよい。占有率とは、腸内細菌叢などの細菌叢に占める各菌種の存在比(検出比率)のことをいう。
【0025】
また、上記に加えて、或いは、上記に代えて、対象となる菌科として、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ゲメラ科(Gemellaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)、セレノモナス科(Selenomonadaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)、サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)、サテレラ科(Sutterellaceae)、モルガネラ科(Morganellaceae)を挙げることができる。
【0026】
[レンサ球菌科(Streptococcaceae)]
レンサ球菌科は、ラクトバシラス目の中に置かれ、ラクトコッカス属、ラクトウム属、レンサ球菌属を含む。
【0027】
[ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)]
ルミノコッカス科は、クロストリジウム綱クロストリジウム目に属する細菌の科である。ルミノコッカス属のほか、属として、Acetanaerobacterium、Acutalibacter、
Anaerobacterium、Anaerofilum、Anaerotruncus、Dysosmobacter、Ercella、Ethanoligenens、Faecalibacterium、Fastidiosipila、Hydrogenoanaerobacterium、
Oscillibacter、Oscillospira、Papillibacter、Pseudobacteroides、Sporobacter、
Subdoligranulum、Youngiibacterが含まれる。
【0028】
[ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)]
ビフィドバクテリウム科は、ビフィドバクテリウム目に含まれる科であり、ビフィドバクテリウム属を含む。
【0029】
[エンテロコッカス科(Enterococcaceae)]
エンテロコッカス科は、ラクトバシラス目に属するグラム陽性の真正細菌の科である。 代表的な属として、エンテロコッカス属(Enterococcus)、Melissococcus、Pilibacter、テトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)及びVagococcusが含まれる。
【0030】
[エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)]
エリュシペロトリクス科は、エリュシペロトリクス目に属する科であり、属として、Allobaculum、Breznakia、Bulleidia、Catenibacterium、Catenisphaera、 Coprobacillus、Dielma、Dubosiella、Eggerthia、Erysipelothrix、Faecalibaculum、Holdemania、Ileibacterium、Kandleria、Longibaculum、Longicatena、Solobacterium Turicibacterが含まれる。
【0031】
[コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)]
コリオバクテリウム科は、コリオバクテリウム目に属する科であり、属として、Atopobium属、Olsenella属が含まれる。
【0032】
[プレボテラ科(Prevotellaceae)]
プレボテラ科は、バクテロイデス目に属する科であり、プレボテラ属を含む。
【0033】
[コプロバチルス科(Coprobacillaceae)]
コプロバチルス科は、エリュシペロトリクス目に属する科であり、Coprobacillus属を含む。
【0034】
[パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)]
パラプレボテラ科は、バクテロイデス目に属する科であり、パラプレボテラ属を含む。また、パラプレボラ科を独立した科とせずに、パラプレボテラ属をプレボテラ科に含める分類方法もある。
【0035】
[アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)]
アルカリゲネス科は、ブルクホルデリア目に属する科であり、アルカリゲネス属を含む。
【0036】
[フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)]
フソバクテリウム科は、フソバクテリウム目に属する科であり、フソバクテリウム属を含む。
【0037】
[ベイロネラ科(Veillonellaceae)]
ベイロネラ科は、Clostridiales目に属する科であり、属として、Acetonema、
Acidaminococcus、Allisonella、Anaeroarcus、Anaeroglobus、Anaeromusa、
Anaerosinus、Anaerospora、Anaerovibrio、Centipeda、Dendrosporobacter、
Desulfosporomusa、Dialister、Megamonas、Megasphaera、Mitsuokella、Pectinatus、
Pelosinus、Phascolarctobacterium、Propionispira、Propionispora、Psychrosinus、
Quinella、Schwartzia、Selenomonas、Sporomusa、Sporotalea、Succiniclasticum、
Succinispira、Thermosinus、Veillonella、Zymophilusを含む。
【0038】
[バクテロイデス科(Bacteroidaceae)]
バクテロイデス科は、バクテロイデス門バクテロイデス綱バクテロイデス目に属する科であり、バクテロイデス属を含む。
【0039】
[ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)]
ポルフィロモナス科は、バクテロイデス目に属する科であり、ポルフィロモナス属を含む。
【0040】
[エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)]
エリュシペラトクロストリジウム科は、エリュシペロトリクス目に属する科であり、エリュシペラトクリストリジウム属を含む。
【0041】
[ゲメラ科(Gemellaceae)]
ゲメラ科は、スタフィロコッカス目に属する科であり、ゲメラ属を含む。
【0042】
[クロストリジウム科(Clostridiaceae)]
クロストリジウム科は、クロストリジウム目の科であり、クロストリジウム属を含む。
【0043】
[オシロスピラ科(Oscillospiraceae)]
オシロスピラ科は、ユーバクテリウム目に属する科であり、オシロスピラ属を含む。
【0044】
[アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)]
アシダミノコッカス科は、アシダミノコッカス目に属する科であり、アシダミノコッカス属を含む。
【0045】
[セレノモナス科(Selenomonadaceae)]
セレノモナス科は、セレノモナス目(Selenomonadales)に属する科であり、セレノモナス属を含む。
【0046】
[サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)]
サッカリモナス科は、サッカリモナス目に属する科であり、サッカリモナス属を含む。
【0047】
[スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)]
スフィンゴモナス科は、スフィンゴモナス目の科であり、スフィンゴモナス属を含む。
【0048】
[ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)]
ヘリコバクター科は、イプシロンプロテオバクテリア綱カンピロバクター目に属する科であり、ヘリコバクター属を含む。
【0049】
[デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)]
デスルフォビブリオ科は、デルタプロテオバクテリア綱デスルフォビブリオ目に属する科であり、デスルフォビブリオ属を含む。
【0050】
[サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)]
サクシニビブリオ科は、ガンマプロテオバクテリア綱エアロモナス目に属する科であり、エアロモナス属、アナエロビオスピリルム属を含む。
【0051】
[サテレラ科(Sutterellaceae)]
サテレラ科は、バークホルデリア目の科であり、サテレラ属を含む。
【0052】
[モルガネラ科(Morganellaceae)]
モルガネラ科は、エンテロバクター目の科であり、モルガネラ属を含む。
【0053】
<肥満の判定方法>
本発明の動物の肥満の判定方法は、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するレンサ球菌科Streptococcaceae、ルミノコッカス科Ruminococcaceae、ビフィドバクテリウム科Bifidobacteriaceae、エンテロコッカス科Enterococcaceae、エリュシペロトリクス科Erysipelotrichaceae、コリオバクテリウム科Coriobacteriaceae、プレボテラ科Prevotellaceae、コプロバチルス科Coprobacillaceae、及び、パラプレボテラ科Paraprevotellaceaeからなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌種数を測定する測定工程を備えるものである。
上記1つ以上の科について、当該科に属する菌種数が減少している、あるいは、少ない場合に、当該動物が肥満であると判定することができる。
菌種数の減少や菌種数が少ないことは、肥満ではないあるいは肥満傾向にない同種の動物の菌種数との比較に基づいて決定してもよいし、同一の動物について経時的に複数回菌種数の測定を行い、当該動物における菌種数の変化を見ることによって決定してもよい。
また、動物種ごとに、上記科に属する菌種数のデータベースを構築しておき、当該データベース中の菌種数との比較によって、菌種数が減っているあるいは少ないことを確認することもできる。
例えば、菌種数が、標準体型である対照動物や対照動物の平均値(体型が「ふつう」であると飼育者が回答した動物や標準体型である動物等の平均値)と比較して、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上少ない場合、肥満になる可能性があると予測することができる。
また、別の例では、菌種数が、同一の動物において、前回の測定時と比較して、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上減少している場合、肥満になる可能性があると予測することができる。
【0054】
<疾患罹患の予測方法>
本発明の疾患罹患の予測方法は、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在するコリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科について、当該科に属する菌の占有率を測定する測定工程を備えることを特徴とするものである。
本発明者らの検討により、肥満群の動物で罹患割合が高い特定の疾患(内分泌疾患、呼吸器疾患、血液疾患、筋骨格疾患、皮膚疾患、耳の疾患、全身性疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患)に罹患している動物では、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)又はベイロネラ科(Veillonellaceae)に属する菌の腸内細菌叢中の占有率や保有率が低いことが明らかとなった。したがって、これらの科に属する菌は、肥満と関連する特定疾患への罹患率との関連性があることが分かる。
上記1つ以上の科について、当該科に属する菌種について、菌種数や占有率が減少している、あるいは、少ない場合に、当該動物が疾患に罹患する可能性がある(高い)と判定することができる。
菌種数の減少や菌種数が少ないことは、同種の動物の菌種数との比較に基づいて決定してもよいし、同一の動物について経時的に複数回菌種数の測定を行い、当該動物における菌種数の変化を見ることによって決定してもよい。
また、動物種ごとに、上記科に属する菌種数のデータベースを構築しておき、当該データベース中の菌種数との比較によって、菌種数が減っているあるいは少ないことを確認することもできる。
例えば、菌種数が、対象動物や対象動物の平均値と比較して、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上少ない場合、疾患に罹患する可能性があると予測することができる。
また、別の例では、菌種数が、同一の動物において、前回の測定時と比較して、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上減少している場合、疾患に罹患する可能性があると予測することができる。
【0055】
[保険料の算出方法]
本発明の保険料の算出方法は、上記の動物の肥満の予測方法による予測結果に基づいて保険料を算出することを特徴とするものである。肥満になることが予測される動物、あるいは、肥満になりやすい動物、肥満傾向のある動物は、将来、疾患、特に肥満に関連する疾患に罹患する可能性が、通常体型の同種動物と比較して高いことが想定されるからその分保険料を高く算定することができる。また、例えば、肥満傾向になることが予想されない動物、肥満になりにくい動物、又は肥満傾向にない動物については、保険料を安く算定することができる。
【0056】
[多様度指数]
本発明の肥満の予測方法は、動物の腸内細菌叢の多様度指数を測定する工程を備える動物の肥満の予測方法である。多様度指数としては、シャノン・ウィーナーの多様度指数(Shannon Index)、シンプソンの多様度指数等が挙げられるが、シャノン・ウィーナーの多様度指数が好ましい。
動物の腸内細菌叢の多様度指数が高いほど、当該動物が肥満になりにくいと予測することができる。
腸内細菌叢の多様度指数は公知の方法によって測定することができる。その他の点は上記と同様である。
【0057】
<動物の肥満予測システム>
本発明の動物の肥満予測システムは、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在する菌について、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを受け付ける受付手段と、動物の体内又は動物から単離された試料中に存在する菌について、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータから当該動物が肥満になるか否かを予測する判定手段と、を備えるものである。
【0058】
[受付手段]
本発明の受付手段は、肥満になる可能性を予測したい動物由来の試料における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータの入力を受け付ける手段である。動物としては、犬、猫、鳥、ウサギ、フェレット等が挙げられる。また、対象となる動物の年齢は限定されないが、好ましくは0歳以上、より好ましくは0歳~12歳、さらに好ましくは1歳~10歳である。菌種数又は占有率に関するデータの受付方法は、端末へのデータの入力、送信などいずれの方法であってもよい。
【0059】
菌種数や占有率に関するデータとは、動物由来の試料、例えば、糞便サンプルや腸内細菌叢に含まれる各菌の菌種数や占有率に関連するデータである。占有率とは、試料中の細菌叢に占める各菌科に属する細菌の存在比(検出比率)であり、例えば、NGSなどのシーケンサーを用いたアンプリコンシーケンスなどの公知のメタゲノム解析法での検出結果「hit rate」として測定することができる。本発明では、菌種数や占有率に関するデータとして、細菌叢の菌種数や占有率の数値を用いてもよく、菌種数や占有率に基づいて設定されたラベルやスコアを用いてもよい。
【0060】
本発明における占有率は、菌の科ごとの占有率である。科ごとの占有率とは、ある科に属する菌全体についての占有率である。つまり、科ごとの占有率を算定する場合には、細菌叢における各菌種について、ある科に属する菌種の占有率を合計して、当該科の占有率を算定することができる。種レベルや属レベルまでの同定を行って、科ごとに合計してもよいし、種レベルや属レベルまでの同定を行わずに、科レベルでの同定を行って科の占有率を算定してもよい。
【0061】
占有率に基づいて設定されたラベルとは、占有率の数値の大小に応じて適宜設定されたラベルである。例えば、占有率の数値に応じて、「大」、「中」、「小」或いは「多」、「中」、「少」という3段階のラベルを設定することができる。また、ラベルの段階数は任意に設定することができ、例えば、「0」、「1」、「2」、「3」、・・・「20」といった多段階のラベルを付すこともできる。
ラベルを用いる場合は、細菌叢中の占有率を測定し、入力手段に数値を入力する前に、当該測定された占有率に応じて、予め定めておいた対応表から特定のラベルを割当てて、そのラベルを受付手段に入力することができる。
また、菌種数に基づいて設定されたラベルとは、菌種数に応じて適宜設定されたラベルである。例えば、菌種数が所定値を超える場合は「1」、超えない場合は「0」といったラベルを付すことができる。
【0062】
占有率に基づいて設定されたスコアとは、菌の占有率の数値の大小に応じて適宜設定されたスコアである。例えば、占有率がある基準値以上の場合は「+1」、ある基準値未満の場合は「-1」というスコアが与えられる。
また、菌種数に基づいて設定されたスコアとは、菌種数に応じて適宜設定されたスコアである。例えば、特定の科について、その科に属する菌の菌種数が所定値以上であれば「+1」、所定値以下であれば「0」や「-1」というスコアが与えられる。
このようなスコアを菌科ごとに算出し、受付手段に入力してもよい。また、受付手段に菌科に属する菌の菌種数や占有率を入力し、当該入力された菌の菌種数についてのデータや占有率に基づいて予め設定されたスコア付与基準に基づいて各菌科ごとにスコアを算出するという構成でもよい。
本発明の肥満予測システムは、判定手段が、菌科ごとに算出又は入力されたスコアを合計し、得られた合計スコアに基づいて肥満になる可能性を予測判定するという構成でもよい。
【0063】
[判定手段]
本発明の判定手段は、受付手段に入力された動物由来の試料中の細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータからその動物が所定期間内に肥満になるか否かを予測判定する手段である。予測判定方法は特に限定されない。例えば、プロセッサが、予め設定されたプログラムを用いて動物由来の試料中の細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータからその動物が所定期間内に肥満になるか否かを予測判定する。また、上記のように、菌科ごとの菌の菌種数や占有率から、予め設定された基準に従ってスコアを算出し、当該スコアを合計した合計スコアに基づいて、肥満リスクを判定するといった構成でもよい。すなわち、合計スコアが所定値以上なら、肥満リスクが高く(或いは肥満リスクが低く)、合計スコアが所定値未満なら肥満リスクが低い(或いは肥満リスクが高い)といった具合である。
【0064】
本発明の判定手段は、動物由来の試料中の細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを受け付けると、所定期間内、好ましくは、受付時から、試料の取得時から、又は、細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータ取得時から、所定期間内に、肥満になるかどうかの予測判定を行う。所定期間とは、好ましくは3年以内、より好ましくは2年以内、さらに好ましくは1年以内である。
【0065】
本発明の判定手段は、学習済みモデルを使って予測判定する構成であってもよい。このような学習済みモデルとしては、細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータと、その動物が、試料の取得時又は細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータの取得時から所定期間内に肥満になったか否かに関する情報との関係を学習した学習済みモデルであることが好ましい。学習済みモデルとしては、さらに、細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータと、その動物が、試料の取得時又は腸内細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータの取得時から所定期間内に肥満になったか否かに関する情報とを教師データとして学習を行った学習済みモデルが好ましい。このような教師データに用いる所定期間内に肥満になったか否かに関する情報における所定期間としては、3年以内が好ましく、2年以内がより好ましく、1年以内がさらに好ましい。
【0066】
前記学習済みモデルとしては、人工知能(AI)が好ましい。人工知能(AI)とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムであり、具体的には、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラムなどのことをいう。人工知能としては、汎用型、特化型のいずれであってもよく、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク等のいずれであってもよく、公開されているソフトウェアを使用することができる。
【0067】
学習済みモデルを生成するために、人工知能に教師データを用いて学習させる。学習としては、機械学習とデイープラーニング(深層学習)のいずれであってもよいが、機械学習が好ましい。ディープラーニングは、機械学習を発展させたものであり、特徴量を自動的に見つけ出す点に特徴がある。本発明では、たとえば、特徴量として、腸内細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを用いることができる。
【0068】
学習済みモデルを生成するための学習方法としては、特に制限されず、公開されているソフトウェアを用いることができる。例えば、NVIDIAが公開しているDIGITS (the Deep Learning GPU Training System)を用いることができる。その他、例えば、「サポートベクターマシン入門」(共立出版)等において公開されている公知のサポートベクターマシン法(Support Vector Machine法)等によって学習させてもよい。
【0069】
機械学習としては、教師無し学習及び教師あり学習のいずれでもあり得るが、教師あり学習が好ましい。教師あり学習の手法としては特に限定されず、例えば、決定木(ディシジョン・ツリー)、アンサンブル学習、勾配ブースティング等を挙げることができる。公開されている機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、XGBoost、CatBoostやLightGBMが挙げられる。
【0070】
学習のための教師データは、例えば、動物由来の試料中の細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータと、その動物が試料(例えば、糞便サンプル)の取得時、又は、試料中の細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータの取得時から所定期間内に、好ましくは3年以内、より好ましくは2年以内、さらに好ましくは1年以内、特に好ましくは180日以内に肥満になったか、肥満にならなかったかという肥満の有無である。肥満になったか否かは、ダミー変数に置き換えることができる。教師データとしての動物由来の試料中の細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数や占有率に関するデータは、上記受付方法で説明した動物由来の試料中の細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数や占有率に関するデータと同様である。当該動物が所定期間内に肥満になったかどうかの情報は、例えば、スマートフォンのアプリ、アンケートを利用して、動物の試料を提供した飼い主等から入手可能である。
【0071】
[出力]
本発明の判定手段による予測判定の出力の形式は特に限定されず、例えば、パソコンやスマートフォンなどの端末の画面上において、「今後1年以内に肥満になる可能性あり」、「今後1年以内に肥満になる可能性は高い」あるいは、「今後1年以内に肥満になる可能性は○%」、「肥満傾向があります。」といった表示をすることで予測判定を出力することができる。好ましくは、肥満になりやすいかどうかを、利用者の端末の画面上でアイコンで表示する。アイコンは、例えば、
図7のように、利用者に分かりやすいように、肥満のなりやすさを数段階で、図形により表すことが好ましい。
本発明の動物の肥満予測システムは、判定手段から判定結果を受信し、判定結果を出力する出力手段を別途有していてもよい。
【0072】
本発明の動物の肥満予測システムは、上記判定手段による予測結果とともに、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率の大小を、例えば、
図8のようなアイコンで表示する表示部を備える事が好ましい。
【0073】
本発明の動物の肥満予測システムは、さらに、肥満予測の結果に応じて、生活改善方法をアドバイスするアドバイス手段を備えることが好ましい。例えば、アドバイス手段は、判定手段から出力される予測結果を受け取り、予測結果に応じて、散歩の回数、距離を増やす提案をしたり、ドッグランに行くことを提案したり、生活リズムを整えることを提案する。アドバイス手段は、学習済みモデルを有していてもよい。
【0074】
本発明の動物の肥満予測システムは、さらに、肥満予測の結果に応じて、フードを提案する(レコメンドする)提案手段を備えることが好ましい。例えば、提案手段は、判定手段から出力される予測結果を受け取り、予測結果に応じて、予測される肥満リスクを回避するためのフード、例えば、肥満になりにくい細菌を含むサプリ、低塩分、低カロリーの食事、低糖質の食事、ダイエットメニュー等を提案したり、推奨することができる。提案手段は、学習済みモデルを有していてもよい。
【0075】
[好適な科]
上記のように、本発明の動物の肥満予測システムは、所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを用いるものである。所定の菌科としては、特に限定されないが、例えば、上記した菌科が挙げられる。また、菌科として、前記所定の菌科が、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)及びベイロネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科が好ましい。
【0076】
また、所定の菌科として、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ゲメラ科(Gemellaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)、セレノモナス科(Selenomonadaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)、サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)、サテレラ科(Sutterellaceae)及びモルガネラ科(Morganellaceae)からなる群から選ばれる1つ以上の科が好ましい。
【0077】
本発明の動物の肥満予測システムは、動物由来の試料中の細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータのほか、当該動物の顔画像、種類、品種、年齢、性別、体重、既往歴、遺伝子の配列情報、SNP、遺伝子変異の有無等の情報を用いてもよい。
【0078】
以下、本発明の動物の肥満予測システムの一実施態様について、
図9を参照しながら説明する。
図9中、端末40は、肥満予測システムを利用したい者(ユーザ)が利用する端末である。端末40は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレット端末などが挙げられる。端末40は、CPUなどの処理部、ハードディスク、ROMあるいはRAMなどの記憶部、液晶パネルなどの表示部、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力部、ネットワークアダプタなどの通信部などを含んで構成される。
ユーザーは、端末40から、サーバにアクセスし、対象となる動物の試料中の細菌叢、好ましくは腸内細菌叢(以下、腸内細菌叢の例で説明する。)の所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータ、及び、必要に応じて、顔画像(写真)、当該動物の種類、品種、年齢、体重、既往歴などの情報を入力、送信する。
また、ユーザーは、端末40がサーバにアクセスすることによって、サーバにおける肥満予測結果を受信することができる。
【0079】
また、ユーザーは、飼育している動物の腸内細菌叢を調べるための糞便サンプル採取キットの送付を受け、糞便サンプルを腸内細菌叢の測定を行う業者に送付する(図示しない)。当該業者は、当該動物の腸内細菌叢の測定を行い、腸内細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを取得する。そして、当該業者が、直接、自らの端末を経由してサーバの受付手段31に当該動物の腸内細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを入力、送信してもよいし、当該業者が別途郵便やメール等で当該ペットの腸内細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータをユーザーに送付し、ユーザーが端末40を通じて、受付手段31に腸内細菌叢の菌種数データ、占有率データ又は多様性データを入力、送信してもよい。
【0080】
本実施形態においては、サーバはコンピュータによって構成されるが、本発明にかかる機能を有する限りにおいて、どのような装置であってもよい。
記憶部10は、例えばROM、RAMあるいはハードディスクなどから構成される。記憶部10には、サーバの各部を動作させるための情報処理プログラムが記憶され、特に、判定手段11のためのソフトウェアなどが記憶される。
【0081】
判定手段11は、上記のように、ユーザー又は腸内細菌叢の測定を行った業者が入力した対象となる動物の腸内細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータを入力とし、当該動物が所定期間内(例えば、1年以内)に肥満になるかどうか、あるいは、肥満になる可能性が何%かの予測を出力するものである。判定手段としては、学習済みモデルであってもよい。そのような学習済みモデルは、例えば、XGBoost、CatBoost、LightGBM、或いは、ディープニューラルネットワーク又は畳み込みニューラルネットワークを含んで構成される。
本実施形態では、判定手段や受付手段がサーバに格納され、ユーザーの端末とインターネットやLAN等の接続手段で接続される態様を説明したが、本発明はこれに限定されず、判定手段、受付手段、インターフェース部が一つのサーバや装置内に格納される態様や、利用者が利用する端末を別途必要としない態様等であってもよい。
【0082】
本発明の動物の肥満予測システムは、
図10のように、提案手段12(アドバイス手段も同様である。)を備えていてもよい。提案手段12は、上記判定手段11が出力した肥満予測と、ユーザーが入力した当該動物の種類、品種、腸内細菌叢のデータ取得時の年齢、体重、既往歴などの情報から、当該動物に適したフードを選定し、提案するソフトウェアである。例えば、ソフトウェアは、当該動物の種類、品種、腸内細菌叢のデータ取得時の年齢、体重、既往歴等に応じて、肥満傾向の等級分けを行い、最後に、上記判定手段11が出力した肥満予測を加味して当該等級を修正し、肥満傾向の等級に基づいて、肥満対策に適したフードをレコメンドするためのソフトウェアである。
提案手段12と判定手段11は一つのソフトウェアであってもよい。
【0083】
処理演算部20は、記憶部に記憶された判定手段11や提案手段12を用いて、肥満予測やフードレコメンド結果を算出する。
【0084】
インターフェース部(通信部)30は、受付手段31と出力手段32を備え、ユーザーの端末から、動物の腸内細菌叢における所定の菌科に属する菌の菌種数又は占有率に関するデータやその他の情報を受け付け、ユーザーの端末に対して、肥満予測やフードのレコメンド結果を出力する。
【実施例0085】
[実施例1]
(糞便試料からのDNA抽出)
以下のようにして、各犬(トイプードル)から糞便試料を採取し、DNAを抽出した。
犬(トイプードル)の飼育者が糞便の採取キットを用いて、犬の糞便試料を採取した。当該糞便試料を受領し、水に懸濁した。
次に、糞便懸濁液200 μLとLysis buffer(224μg/mLのProtenaseKを含む)810 μLをビーズチューブに添加し、ビーズ式ホモジナイザーにてビーズ破砕(6,000 rpm、破砕20秒、インターバル30秒、破砕20秒)を行った。その後、検体を70℃のヒートブロック上にて10分間静置することでProtenase Kによる処理を行い、続いて95℃のヒートブロック上にて5分間静置することでProtenase Kを不活化した。溶菌処理を行った検体はchemagic 360(PerkinElmer)を用い、chemagicキットstool用プロトコルにてDNAの自動抽出を行い、100 μLのDNA抽出液を得た。
【0086】
(メタ16SRNA遺伝子シーケンス解析)
メタ16Sシーケンス解析はillumina 16S Metagenomic Sequencing Library Preparation(バージョン15044223 B)を改変して行った。まず、16S rRNA遺伝子の可変領域V3-V4を含む460 bpの領域をユニバーサルプライマー(Illumina_16S_341FおよびIllumina_16S_805RPCR)を用いたPCRで増幅した。PCR反応液は10 μLのDNA抽出液、0.05 μLの各プライマー(100 μM)、12.5 μLの2x KAPA HiFi Hot-Start ReadyMix(F. Hoffmann-La Roche、Switzerland)、2.4 μLのPCR grade waterを混合して調製した。PCRには95℃ 3分間の熱変性後、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒のサイクルを30回繰り返し、最後に72℃ 5分の伸長反応を行った。増幅産物は磁気ビーズを用いて精製し、50 μLのBuffer EB(QIAGEN、Germany)で溶出した。精製後の増幅産物はNextera XT Index Kit v2(illumina、CA、US)を用いてPCRを行い、インデックスを付加した。PCR反応液は2.5 μLの増幅産物、2.5 μLの各プライマー、12.5 μLの2x KAPA HiFi Hot-Start ReadyMix、5 uLのPCR grade waterを混合して調製した。PCRには95℃ 3分間の熱変性後、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒のサイクルを12回繰り返し、最後に72℃ 5分の伸長反応を行った。インデックス付加を行った増幅産物は磁気ビーズを用いて精製し、80-105 μLのBuffer EBで溶出した。各増幅産物の濃度はNanoPhotometer(Implen、CA、US)で測定し、1.4 nMに調製した後、等量ずつ混合し、これをシーケンス用ライブラリーとした。シーケンス用ライブラリーのDNA濃度および増幅産物のサイズを電気泳動にて確認し、これをMiSeqにより解析した。解析にはMiSeq Reagent Kit V3を用い、2×300 bpのペアエンドシーケンスを行った。得られた配列はMiSeq Reporterにて解析し、細菌の組成データを得た。
上記で用いたユニバーサルプライマーの配列は以下のとおりである。このユニバーサルプライマーは市販されているものを購入することができる。
Illumina_16S_341F
5′-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG- 3’
llumina_16S_805R
5′-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC- 3’
【0087】
上記方法に従って、3~13歳の9390個体(うち、肥満の個体は1029個体)のトイプードルについて、腸内細菌叢中の科ごとの菌種数の測定を行った。なお、肥満かどうかの分類は飼育者からの犬の体格に関する問診データに従った。問診データは、飼育者に対して、対象となる犬の体格に関して、「太っている」、「痩せている」、「普通である」の3択を示し、そこから選択して回答してもらったものである。飼育者の主観的な判断ではあるが、当該問診データは、ペット保険の保険加入者が回答したものであり、嘘をつく動機がないこと、飼育者は当該犬と常に接しており飼っている犬に対する情報を把握していると考えられること、選択肢として分かりやすいものを3つのみを提示しており回答を誤る可能性が低いと考えられることから、ある程度の信頼性があるものと考えられる。
菌種数の測定についての結果を
図1に示す。
図1において、棒グラフが示す菌種数はふつう群、肥満群それぞれの、各菌科の検出された菌種数の平均値である。当該菌種が検出されない個体もいるため、平均値が1を下回る場合もある。
図1から明らかなように、肥満群に属するトイプードルについて、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、及び、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)のそれぞれについて、ふつう群に属するトイプードルと比較して、菌種数が5%以上少ないことが明らかとなった。なお、菌種数の減少割合「%」については、「肥満群の平均菌種数/ふつう群の平均菌種数」で算出した。
【0088】
(多様度指数(Shanonn Index)の算出)
得られた細菌の組成データ(FASTQファイル)から、QIIME2を用いてShanon Index(シャノン・ウィナーの多様度指数)を算出した。そして、年齢が3~5歳の群と、6~11歳の群に分けて、Shanon Indexと肥満割合との相関を見た。
結果を
図2Aおよび
図2Bに示す。
図2Aおよび
図2Bから明らかなように、3~5歳の群において、多様度指数(Shanon Index)と、肥満割合との相関性が高いことが分かった。なお、ここでいう「肥満割合」とは、同じ多様度指数を示す個体群中における肥満個体の割合である。その際、多様度指数は小数点第二位で四捨五入し、第一位までで揃えている。例えば、多様度指数が「3.2」と検出された個体が120おり、その内肥満個体が12いた場合、多様度指数3.2の肥満割合は10%となる。
【0089】
(肥満と疾患の罹患割合)
肥満群に属するトイプードルと、ふつう群に属するトイプードルについて、それぞれ回答の前後180日以内に疾患に罹患したかをグラフにした。結果を
図3に示す。疾患への罹患の有無は、ペット保険の保険金請求記録を用い、糞便採取を行った各個体の糞便採取日の前後180日以内に保険金支払請求があったか否かで調査した。
図3から明らかなように、肥満群に属するトイプードルでは、内分泌疾患、呼吸器疾患、血液疾患、筋骨格疾患、皮膚疾患、耳の疾患、全身性疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患といった疾患(以下「特定疾患」という。)への罹患確率が高いことが分かる。
【0090】
(特定疾患への罹患と菌種数)
特定疾患に罹患したトイプードル(3~13歳。合計3199匹)と、そうではないトイプードル(3~13歳。無事故群。5088匹)について、腸内細菌叢における特定の科に属する菌種の占有率及び保有率を測定した。
結果を
図4及び
図5に示す。
図4は、特定の科に属する菌種の占有率(占有率とは、腸内細菌叢に占める各菌種の存在比(検出比率)であり、検出結果にある「hit rate」と同義である。)を示すグラフであり、
図5は、保有率(保有率とは、ふつう群、肥満群等特定のカテゴリーで群全体を見た際に、その細菌を持つ個体の割合である。保有率は、各個体が当該細菌を持つか、持たないかのみに関する値であり、「hit rate」等の「どの程度もつか」といった量的な大小関係は含まない値である。)を示すグラフである。
図4及び
図5から、特定疾患への罹患と、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、アルカリゲネス科(Alcaligenaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)又はベイロネラ科(Veillonellaceae)に属する菌の菌種の保有の有無が関連することが分かる。
【0091】
(菌種数と肥満割合の相関)
図1のデータを算出するにあたって調査対象となった3~13歳の9390個体(うち、肥満の個体は1029個体)のトイプードルについて、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、コプロバチルス科(Coprobacillaceae)、及び、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)の合計の菌種数と肥満割合をプロットし、グラフにした。なお、ここでいう「肥満割合」とは、同じ菌種数を示す個体群中における肥満個体の割合である。
結果を
図6に示す。
図6から、上記科に属する菌の菌種数と肥満とは強い相関があることが分かる。
【0092】
[実施例2]
実施例1と同様にして、犬の糞便試料を採取し、0~18歳の3,610個体の犬について、腸内細菌叢中の科ごとの菌種数の測定を行った。なお、肥満かどうかの分類は飼育者からの犬の体格に関する問診データに従い、肥満、ふつう、痩せているの3群に分けた。肥満群が677個体、ふつう群が2,671個体、痩せている群が262個体であった。
【0093】
問診から得た肥満群とふつう群の科レベルの占有率(hit rate)を比較して、肥満群とふつう群とで占有率に相違が見られる菌科を選択した。そのような菌科として、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、 ゲメラ科(Gemellaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae)、セレノモナス科(Selenomonadaceae)、フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae)、サッカリモナス科(Saccharimonadaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae)、サテレラ科(Sutterellaceae)及びモルガネラ科(Morganellaceae)を選択した。
【0094】
3,610個体の犬それぞれについて、これらの菌科の占有率の値によって以下のようにスコアを付与した。
・ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae):hit rateが0ならば-1、それ以外は2
・コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae):hit rateが0ならば-1、それ以外は1
・バクテロイデス科(Bacteroidaceae):hit rateが0.3より大きければ-1、0ならば0、それ以外は1
・ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae):hit rateが0ならば0、それ以外は1
・プレボテラ科(Prevotellaceae):hit rateが0ならば-1、0.05より大きければ2、それ以外は0
・エリュシペラトクロストリジウム科(Erysipelatoclostridiaceae):hit rateが0.01より大きければ2、それ以外は-2
・エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae):hit rateが0.01より大きければ2、それ以外は-2
・ゲメラ科(Gemellaceae):hit rateが0ならば0、それ以外は-2
・クロストリジウム科(Clostridiaceae):hit rateが0ならば1、0.01より大きければ-1、それ以外は0
・オシロスピラ科(Oscillospiraceae):hit rateが0ならば-1、それ以外は1
・ルミノコッカス科(Ruminococcaceae):hit rateが0ならば-2、0.003より大きければ2、それ以外は-1
・アシダミノコッカス科(Acidaminococcaceae):hit rateが0ならば0、それ以外は1
・セレノモナス科(Selenomonadaceae):hit rateが0ならば-1、それ以外は1
・フソバクテリウム科(Fusobacteriaceae):hit rateが0ならば0、0.02より大きければ0、それ以外は2
・サッカリモナス科(Saccharimonadaceae):hit rateが0ならば0、それ以外は2
・スフィンゴモナス科(Sphingomonadacea):hit rateが0ならば0、それ以外は-2
・ヘリコバクター科(Helicobacteraceae):hit rateが0ならば0、それ以外は2
・デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae):hit rateが0ならば0、それ以外は1
・サクシニビブリオ科(Succinivibrionaceae):hit rateが0ならば0、それ以外は2
・サテレラ科(Sutterellaceae):hit rateが0ならば-1、それ以外は1
・モルガネラ科(Morganellaceae):hit rateが0ならば0、それ以外は-2
【0095】
各個体について上記スコアを合計して合計スコアを算出した。
そして、合計スコアの値によって以下の区分に従って各個体を分類した。
-4以下:「太りやすい」
-3~4:「平均的」
5~25:「太りにくい」
【0096】
上記合計スコアの値によって、各群に分類された個体群について、上記問診において、肥満と回答された個体の占める割合(「肥満度」という)を計算した。合計スコアによる分類と問診による分類(肥満度)との関連性を表1に示す。また、表1の値をグラフに表したものを
図11に示す。
【0097】
【0098】
表1や
図11から明らかなように、菌科の占有率に関するデータから算出した合計スコアに基づく分類と肥満度は相関していることが分かる。たとえば、合計スコアから「太りやすい」と分類された群は、肥満度が高い。