IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイコ エレクトロニクス (シャンハイ) カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ タイコ エレクトロニクス (スーチョウ) リミテッドの特許一覧

特開2022-117466電気めっき装置および電気めっきシステム
<>
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図1
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図2
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図3
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図4
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図5
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図6
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図7
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図8
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図9
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図10A
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図10B
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図10C
  • 特開-電気めっき装置および電気めっきシステム 図10D
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117466
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】電気めっき装置および電気めっきシステム
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/00 20060101AFI20220803BHJP
   C25D 17/06 20060101ALI20220803BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20220803BHJP
   C25D 17/12 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C25D17/00 J
C25D17/06 E
C25D17/10 B
C25D17/10 C
C25D17/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022009858
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】202110133322.3
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】508079120
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521523202
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス (スーチョウ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ダイチィオン ディアナ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ユエリィン ケヴィン リィアン
(72)【発明者】
【氏名】ドォンチィン ゲイツ パァン
(72)【発明者】
【氏名】チゥンイェン シェリー ヂォウ
(72)【発明者】
【氏名】ヂォンシィー ファン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気めっき装置および電気めっきシステムを提供する。
【解決手段】電気めっき装置100は、めっき槽1に設けられている第1のアノード2と、液体噴霧装置3とを備える。液体噴霧装置は、めっき液を本体部分に運ぶための少なくとも1つの入口を備える本体部分と、本体部分に装着されている複数のノズルとを含み、ノズルから噴出されるめっき液の流れ方向が、第1のアノード2とカソードとによって形成される電力線の方向に略平行であるように構成されている。ノズルから噴霧されるめっき液の流れ方向は、第1のアノードとカソードとによって形成される電力線の方向に略平行であり、電気めっきの効率を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードとしての被電気めっき加工物(200)が少なくとも部分的に浸漬される電気めっき液を収容するのに適した電気めっき槽(1)と、
前記電気めっき槽(1)に設けられている第1のアノード(2)と、
液体噴霧装置(3)とを備え、前記液体噴霧装置(3)は、
少なくとも1つの入口を備える本体部分(31)であって、前記少なくとも1つの入口は、前記電気めっき液を前記本体部分(31)に運ぶためのものである、本体部分(31)と、
前記本体部分(31)に装着されている複数のノズル(32)とを含み、
前記ノズル(32)の少なくとも一部は、前記ノズル(32)から噴出される前記電気めっき液の流れ方向が、前記第1のアノード(2)と前記カソードとによって形成される電力線の方向に略平行であるように構成されている、電気めっき装置(100)。
【請求項2】
前記第1のアノード(2)は、前記液体噴霧装置(3)と前記加工物(200)との間に設けられ、
複数の第1の貫通孔(21)が前記第1のアノード(2)に形成され、前記ノズル(32)から噴出される前記電気めっき液の一部が前記第1の貫通孔(21)を通って流れる、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項3】
複数の前記第1のアノード(2)が設けられ、2つの隣接する第1のアノード(2)間に間隙がある、請求項2に記載の電気めっき装置。
【請求項4】
前記ノズル(32)は前記本体部分(31)に取り外し可能に取り付けられ、前記ノズル(32)の少なくとも一部の噴霧方向は調整可能に構成されている、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項5】
前記ノズル(32)は、高電流密度領域で疎に配置され、低電流密度領域で密に配置されている、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項6】
前記本体部分(31)の上部における前記ノズル(322)の配置密度が、前記本体部分(31)の下部における前記ノズル(321)の配置密度よりも大きい、請求項5に記載の電気めっき装置。
【請求項7】
前記本体部分(31)は、
第1の部分(311)と、
前記本体部分(31)の両端部にそれぞれ設けられ、前記加工物(200)に向かって延びる2つの第2の部分(312)とを含み、
前記ノズル(32)は、
前記第1の部分(311)に取り付けられた複数の第1のノズル(321、322)であって、前記第1のノズル(321、322)から噴出される前記電気めっき液の前記流れ方向が、前記第1のアノード(2)と前記カソードとによって形成される前記電力線の前記方向に略平行である、第1のノズルと、
前記2つの第2の部分(312)の内側に設けられ、前記電気めっき液を前記加工物(200)に向けて噴出するように構成されている複数の第2のノズル(323)とを含む、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項8】
前記加工物(200)は、前記電気めっき槽(1)を通って水平に移動するように構成されている材料ストリップに配置され、
前記第1のノズル(321、322)から噴出される前記電気めっき液の前記流れ方向は、前記材料ストリップの移動方向に垂直であり、
前記電気めっき槽(1)の2つの対向する側壁の各々が溢流口(11)を備え、前記材料ストリップは前記溢流口(11)を通って移動する、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項9】
第2のアノード(4)をさらに備え、前記第2のアノード(4)の電解電位が前記第1のアノード(2)の電解電位よりも低い、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項10】
前記第2のアノード(4)は、複数の第1の貫通孔(21)を有するバスケット(6)に入れられている、請求項9に記載の電気めっき装置。
【請求項11】
前記電気めっき槽(1)を外側収容部分(13)と前記外側収容部分(13)の内側に位置する内側収容部分(14)とに分離するように構成されている2つの隔壁(9)をさらに含み、
複数対の前記第1のアノード(2)が前記内側収容部分(14)に配置され、複数対の前記第2のアノード(4)が前記外側収容部分(13)に配置され、
複数の第2の貫通孔(91)が前記隔壁(9)に形成されて、前記外側収容部分(13)の前記電気めっき液が前記第2の貫通孔(91)を通って前記内側収容部分(14)に流入することを可能にする、請求項9に記載の電気めっき装置。
【請求項12】
前記第1のアノード(2)は第1のブラケット(22)によって前記隔壁(9)に装着され、前記第2のアノード(4)は第2のブラケット(41)によって前記電気めっき槽(1)の前記側壁に装着されている、請求項11に記載の電気めっき装置。
【請求項13】
前記第1のアノード(2)および前記第2のアノード(4)に電力を供給するように構成されている電源装置(5)をさらに備える、請求項10に記載の電気めっき装置。
【請求項14】
前記電源装置(5)は、前記第1のアノード(2)および前記第2のアノード(4)のそれぞれに送られる電流を調整するように構成されている第1の電流調整器(51)と第2の電流調整器(52)とを含む、請求項13に記載の電気めっき装置。
【請求項15】
前記第1の電流調整器(51)および前記第2の電流調整器(52)はまた、前記加工物(200)に電気めっきされる合金の金属の割合に従って、前記第1のアノード(2)および前記第2のアノード(4)に送られる電流の割合を調整するように構成されている、請求項14に記載の電気めっき装置。
【請求項16】
補助カソード(8)をさらに備え、
前記電源装置(5)は第3の電流調整器(53)をさらに含み、前記第3の電流調整器(53)のカソードが前記補助カソード(8)に接続され、前記第3の電流調整器(53)のアノードが前記第2のアノード(4)に接続され、
前記第3の電流調整器(53)は、前記第2の電流調整器(52)が前記第2のアノード(4)に電流を送ることを停止している間に前記第2のアノード(4)に電力を供給するのに適しており、それにより、前記第2のアノード(4)は正電位を有して、前記第2のアノード(4)と前記電気めっき液との間の置換反応を防ぐようになっている、請求項13に記載の電気めっき装置。
【請求項17】
前記第2のアノード(4)に略位置合わせされた複数の第1の液体入口孔(15)が、前記電気めっき槽(1)の底壁に配置され、前記第1の液体入口孔(15)は、前記電気めっき液を前記第2のアノード(4)に向けて垂直方向に運ぶのに適している、請求項9に記載の電気めっき装置。
【請求項18】
前記加工物(200)に略位置合わせされた複数の第2の液体入口孔(12)が前記電気めっき槽(1)の底壁に配置され、前記第2の液体入口孔(12)は、前記電気めっき液を前記加工物(200)に向けて垂直方向に運ぶのに適している、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項19】
対の調整カバー(7)が前記第2の液体入口孔(12)の両側にそれぞれ設けられ、前記調整カバー(7)は、前記加工物(200)における前記電気めっき液の液位を調整するように構成されている、請求項18に記載の電気めっき装置。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の前記電気めっき装置(100)と、
前記電気めっき槽(1)から溢れ出た前記電気めっき液が流入するタンク(20)と、
前記タンク(20)から管(401)を通して前記液体噴霧装置(3)の前記入口へ前記電気めっき液を送り出すように構成されているポンプ(40)とを備える、電気めっきシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、2021年1月29日に中国国家知識産権局に出願された中国特許出願第CN202110133322.3号の優先権を主張する。
【0002】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、電気めっき装置、および電気めっき装置を備える電気めっきシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術において、銅、ニッケル、スズ、金、銀、および関連合金を、接続端子、ロック、およびシェルなどの加工物に電気めっきする電気めっき方法は、使用する電気めっき設備の種類に基づいて、バレルめっきおよび引掛けめっきを主に含む。引掛けめっきのプロセスにおいて、被電気めっき加工物は、ストリップに配置されるか、または特別な材料ストリップに引掛けられて、連続した電気めっきを容易にする。従来の連続電気めっき装置は、母タンクと溢流タンクとを主に備える。
【0004】
一般に、溢流タンクは、電気めっき液を収容するのに適している。溢流口が溢流タンクの両側に形成され、被電気めっき加工物の材料ストリップが、溢流口を連続して通過するように配置されて、異なる溢流タンク間で、加工物の電気めっき、水洗い、およびその他のプロセスが行われるようになっている。同時に、溢流タンクから溢れ出た電気めっき液は、隣接する溢流サブタンクを汚染することなく、ポンプを通って母タンクに戻る。電気めっき液は、溢流タンクにおいて下から上へ噴出し、連続して循環し、電気めっき液を交換して一貫した電気めっきの品質を確保する。ポンプの流量と溢流口の幅とを調整することにより、溢流タンクにおける電気めっき液の液位を制御して、何らかの簡単な選択的電気めっきを完了することができる。
【0005】
従来技術において、溢流タンクの両側にアノードが設けられ、アノードはカソードとして使用される材料ストリップの両側に平行であり、アノードとカソードとの間に電界が形成されて、電気めっきを実現する。カソード近くの電気めっき液の流れ方向は単一であり、液体流の衝撃力が弱いため、アノード表面への電気めっき液の流れの衝撃がほとんどなく、隠れた場所(側面、孔、くぼみ、カップ口、および空洞など)に複雑な構造を有する加工物の機能領域の電気めっき効果は大きく制限される。加えて、電気めっき液の流れ方向は主に下から上であり、電界の電力線に垂直、すなわち、カソードの材料ストリップの電気めっき機能面に平行であるため、電気めっき液が電気めっき機能面に与える衝撃は不十分であり、特に複雑な部分の細い針、鋭い凸部、孔、くぼみ、カップ口、および空洞構造における、平面電気めっき領域の霧、先端の焼損、被膜厚さの不均一な分布が生じやすい。
加えて、電気めっき液の交換速度が不十分であるか、または材料ストリップの高速走行方向とは反対の材料ストリップの裏面における電気めっき液の量が少なくなり、深刻な場合には、欠落しためっきまたは誤っためっき(弱い被膜密着性)が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の欠点のうちの少なくとも1つの態様を克服または軽減するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様によれば、カソードとしての被電気めっき加工物が少なくとも部分的に浸漬される電気めっき液を収容するのに適した電気めっき槽(electroplating bath)と、電気めっき槽に設けられている第1のアノードと、液体噴霧装置とを備える、電気めっき装置が提供される。液体噴霧装置は、電気めっき液を本体部分に運ぶための少なくとも1つの入口を備える本体部分と、本体部分に装着されている複数のノズルとを含み、ノズルの少なくとも一部は、ノズルから噴出される電気めっき液の流れ方向が、第1のアノードとカソードとによって形成される電力線の方向に略平行であるように構成されている。
【0008】
本発明の例示的な実施形態によれば、第1のアノードは、液体噴霧装置と加工物との間に設けられ、複数の第1の貫通孔が第1のアノードに形成され、ノズルから噴出される電気めっき液の一部が第1の貫通孔を通って流れる。
【0009】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、複数の第1のアノードが設けられ、2つの隣接する第1のアノード間に間隙がある。
【0010】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、ノズルは本体部分に取り外し可能に取り付けられている。
【0011】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、ノズルの少なくとも一部の噴霧方向は調整可能に構成されている。
【0012】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、ノズルは、高電流密度領域で疎に配置され、低電流密度領域で密に配置されている。
【0013】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、本体部分の上部におけるノズルの配置密度が、本体部分の下部におけるノズルの配置密度よりも大きい。
【0014】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、本体部分は、第1の部分と、本体部分の両端部にそれぞれ設けられ、加工物に向かって延びる2つの第2の部分とを含む。ノズルは、第1の部分に取り付けられた複数の第1のノズルであって、第1のノズルから噴出される電気めっき液の流れ方向が、第1のアノードとカソードとによって形成される電力線の方向に略平行である、第1のノズルと、2つの第2の部分の内側に設けられ、電気めっき液を加工物に向けて噴出するように構成されている複数の第2のノズルとを含む。
【0015】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、加工物は、電気めっき槽を通って水平に移動するように構成されている材料ストリップに配置され、第1のノズルから噴出される電気めっき液の流れ方向は、材料ストリップの移動方向に垂直であり、電気めっき槽の2つの対向する側壁の各々が溢流口を備え、材料ストリップは溢流口を通って移動する。
【0016】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、電気めっき装置は、第2のアノードをさらに備え、第2のアノードの電解電位(electrolytic potential)が第1のアノードの電解電位よりも低い。
【0017】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、第2のアノードは、複数の第1の貫通孔を有するバスケットに入れられている。
【0018】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、電気めっき装置は、電気めっき槽を外側収容部分と外側収容部分の内側に位置する内側収容部分とに分離するように構成されている2つの隔壁をさらに含み、複数対の第1のアノードが内側収容部分に配置され、複数対の第2のアノードが外側収容部分に配置され、複数の第2の貫通孔が隔壁に形成されて、外側収容部分の電気めっき液が第2の貫通孔を通って内側収容部分に流入することを可能にする。
【0019】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、第1のアノードは第1のブラケットによって隔壁に装着され、第2のアノードは第2のブラケットによって電気めっき槽の側壁に装着されている。
【0020】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、電気めっき装置は、第1のアノードおよび第2のアノードに電力を供給するように構成されている電源装置をさらに備える。
【0021】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、電源装置は、第1のアノードおよび第2のアノードのそれぞれに送られる電流を調整するように構成されている第1電流調整器と第2の電流調整器とを含む。
【0022】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、第1の電流調整器および第2の電流調整器は、加工物に電気めっきされる合金の金属の割合に従って、第1のアノードおよび第2のアノードに送られる電流の割合を調整するようにさらに構成されている。
【0023】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、電気めっき装置は補助カソードをさらに備え、電源装置は第3の電流調整器をさらに含み、第3の電流調整器のカソードが補助カソードに接続され、第3の電流調整器のアノードが第2のアノードに接続され、第3の電流調整器は、第2の電流調整器が第2のアノードに電流を送ることを停止している間に第2のアノードに電力を供給するのに適しており、それにより、第2のアノードは正電位を有して、第2のアノードと電気めっき液との間の置換反応を防ぐようになっている。
【0024】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、第2のアノードに略位置合わせされた複数の第1の液体入口孔が、電気めっき槽の底壁に配置され、第1の液体入口孔は、電気めっき液を第2のアノードに向けて垂直方向に運ぶのに適している。
【0025】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、加工物に略位置合わせされた複数の第2の液体入口孔が電気めっき槽の底壁に配置され、第2の液体入口孔は、電気めっき液を加工物に向けて垂直方向に運ぶのに適している。
【0026】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、対の調整カバーが第2の液体入口孔の両側にそれぞれ設けられ、調整カバーは、加工物における電気めっき液の液位を調整するように構成されている。
【0027】
本発明の別の態様によれば、上記の電気めっき装置と、電気めっき槽から溢れ出た電気めっき液が流入するタンクと、タンクから管を通して液体噴霧装置の入口へ電気めっき液を送り出すように構成されているポンプとを備える電気めっきシステムが提供される。
【0028】
本発明の実施形態による電気めっき装置および電気めっきシステムにおいて、液体噴霧装置のノズルの少なくとも一部は、カソードとしての被電気めっき加工物に向けて、電気めっき液をある流量で強力に噴霧することができ、ノズルから噴霧される電気めっき液の流れ方向は、第1のアノードとカソードとによって形成される電力線の方向に略平行であり、電気めっきの効率を向上させることができる。
【0029】
添付図面を参照しながら例示的な実施形態を詳細に説明することにより、本発明の上記その他の特徴がより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の例示的な実施形態による電気めっきシステムの説明図である。
図2】本発明の例示的な実施形態による電気めっき装置の説明斜視図である。
図3】本発明の例示的な実施形態による液体噴霧装置の説明斜視図である。
図4】本発明の例示的な実施形態による第1のアノードの説明斜視図である。
図5】電気めっき槽を長手方向に切り取った、本発明の別の例示的な実施形態による電気めっきシステムの説明図である。
図6】電気めっき槽を横方向に切り取った、図5に示す電気めっきシステムの別の説明図である。
図7】電気めっき槽を横方向に切り取った、本発明の別の例示的な実施形態による電気めっきシステムの説明図である。
図8】本発明の別の例示的な実施形態による電気めっき装置の説明斜視図である。
図9】本発明の別の例示的な実施形態によるアノードおよび加工物の説明斜視図である。
図10A】本発明の例示的な実施形態による管の異なる装着様式の説明斜視図である。
図10B】本発明の例示的な実施形態による管の異なる装着様式の説明斜視図である。
図10C】本発明の例示的な実施形態による管の異なる装着様式の説明斜視図である。
図10D】本発明の例示的な実施形態による管の異なる装着様式の説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下で、添付図面を参照しながら本開示の例示的な実施形態について詳細に説明する。図中、同様の参照符号は同様の要素を指す。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書で述べる実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的で完全なものであり、本開示の概念を当業者に十分に伝えるように提示される。
【0032】
以下の詳細な説明では、説明の目的で、開示する実施形態の徹底的な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細について述べる。しかしながら、これらの具体的な詳細がなくても1つまたは複数の実施形態を実施することができることが明らかであろう。他の場合、図面を簡略化するために、周知の構造およびデバイスを概略的に示す。
【0033】
本発明の一般的な概念によれば、カソードとしての被電気めっき加工物が少なくとも部分的に浸漬される電気めっき液を収容するのに適した電気めっき槽と、電気めっき槽に設けられている第1のアノードと、液体噴霧装置とを備える、電気めっき装置が提供される。液体噴霧装置は、電気めっき液を本体部分に運ぶための少なくとも1つの入口を備える本体部分と、本体部分に装着されている複数のノズルとを含み、ノズルの少なくとも一部は、ノズルから噴出される電気めっき液の流れ方向が、第1のアノードとカソードとによって形成される電力線の方向に略平行であるように構成されている。
【0034】
本発明の別の一般的な概念によれば、上記の電気めっき装置と、電気めっき槽から溢れ出た電気めっき液が流入するタンクと、タンクから管を通して液体噴霧装置の入口へ電気めっき液を送り出すように構成されているポンプとを備える、電気めっきシステムが提供される。
【0035】
図1は、本発明の例示的な実施形態による電気めっきシステムの説明図である。図2は、本発明の例示的な実施形態による電気めっき装置の説明斜視図である。図3は、本発明の例示的な実施形態による液体噴霧装置の説明斜視図である。
【0036】
本発明の例示的な実施形態によれば、図1図3に示すように、電気めっき装置100(以下で詳細に説明する)と、タンク20と、ポンプ40とを備える電気めっきシステムが提供される。電気めっきプロセスにおいて、電気めっき装置100の電気めっき槽1から溢れ出た電気めっき液が、タンク20に流入する。ポンプ40は、電気めっき槽1に電気めっき液を補充するために、タンク20から管401を通して電気めっき槽1へ電気めっき液を送り出すのに適している。
【0037】
本発明の例示的な実施形態によれば、図1図3に示すように、電気めっき装置100は、ロールめっきまたは引掛けめっきによって金属層を加工物200に電気めっきするのに適しており、被電気めっき加工物200を、材料ストリップに配置または直接接続して、材料ストリップと共に移動するようにしてもよい。電気めっき装置100は、電気めっき槽1と、第1のアノード2と、液体噴霧装置3とを備える。電気めっき槽1は、カソードとしての被電気めっき加工物200が少なくとも部分的に浸漬される電気めっき液を収容するのに適している。第1のアノード2は、電気めっき槽1に設けられている。液体噴霧装置3は、本体部分31と複数のノズル32とを含む。本体部分31は真空に形成され、電気めっき液を本体部分31に運ぶための少なくとも1つの入口を備える。
複数のノズル32が本体部分31に装着され、ノズル32の少なくとも一部は、ノズル32から噴出される電気めっき液の流れ方向が第1のアノード2とカソードとによって形成される電力線の方向に略平行であるように構成されている。
【0038】
一般に、電力線に平行かつ電力線に垂直な被電気めっき材料ストリップに作用する電気めっき液の液体流れ方向は、最も高い電気めっき効率を有する液体流れ方向である。本発明の上記の実施形態によれば、液体噴霧装置のノズルの少なくとも一部は、カソード(すなわち、被電気めっき加工物200)として、電気めっき液をある流量で強力に噴霧することができ、ノズルから噴霧される電気めっき液の流れ方向は、第1のアノードとカソードとによって形成される電力線の方向に略平行であり、電気めっきの効率を向上させることができる。
【0039】
例示的な実施形態において、図2に示すように、第1のアノード2は、液体噴霧装置3と加工物200との間に配置されている。第1のアノード2は、電気めっきに必要な金属を提供し、単一金属から形成されるか、または合金電気めっきに必要ないくつかの金属を提供する合金材料から形成されてよい。例えば、第1のアノードは、不溶性アノード白金/炭素などの材料から形成されてよい。第1のアノード2に複数の第1の貫通孔21が形成され、ノズル32から噴出される電気めっき液の一部は第1の貫通孔21を通って流れる。
【0040】
実施形態において、複数の第1のアノード2が設けられ、2つの隣接する第1のアノード2間に間隙がある。例えば、第1のアノードは、網状で複数の貫通孔を有する平板として配置されているか、または第1のアノードは、液体流の浸透を可能にし、かつある程度の緩衝材の役割を果たすように、複数の部分およびスロットから構成されている。電気めっき液の一部は、第1のアノード2の第1の貫通孔または2つの隣接する第1のアノード間の間隙を通って、被電気めっき加工物の表面に到達する。電気めっき液の流れは、第1のアノード2に十分に衝撃を与え、第1のアノード2を効果的に作動させ、第1のアノード2の金属溶解速度を加速させ、やがては電気めっき液中に分散して、第1のアノード2の作業効率をさらに向上させ、第1のアノードの量を減少させることができる。
さらに、第1のアノード2の溶解副産物(アノード泥(anode mud, 陽極泥)など)も、やがてはタンク20へ流れることができ、電気めっき液を濾過および洗浄して、不純物による被膜の粗さを回避することができるようになっている。
【0041】
例示的な実施形態において、図2および図3に示すように、例えば、管401、電気めっき槽1、およびノズル32は、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン、および耐食性材料などの非金属絶縁材料から形成されてよい。ノズル32は、本体部分31に取り外し可能に取り付けられている。このようにして、異なるモデルおよびサイズのノズルを、被電気めっき加工物200の種類または電気めっき液の種類に応じて交換することができる。ノズルの少なくとも一部の噴霧方向は、調整可能に構成されている。このようにして、ノズルによって噴出される電気めっき液の液体流の噴射角度を、被電気めっき加工物200の形状および/または構造の変化に適応するように変更することができる。
【0042】
例示的な実施形態において、図2に示すように、ノズル32は、高電流密度領域で疎に配置され、低電流密度領域で密に配置されている。複数のノズルは、水平方向に平行に配置されているか、垂直方向に平行に配置されているか、または交差する。さらに、本体部分31の上部におけるノズル322の配置密度が、本体部分の下部におけるノズル321の配置密度よりも大きい。このようにして、電気めっき液の適切な流速を適切な電流密度と組み合わせることにより、加工物200に電気めっきされる電気めっき被膜の均一性を向上させることができる。
【0043】
例示的な実施形態において、図2に示すように、液体噴霧装置3の本体部分31は、第1の部分311と2つの第2の部分312とを含む。2つの第2の部分312は、本体部分311の両端部にそれぞれ配置され、加工物200に向かって延びる。このようにして、上面図では、2つの対向する液体噴霧装置3の本体部分31は、おおよそ「[]」の形状を形成する。各液体噴霧装置3のノズル32は、複数の第1のノズル321、322と複数の第2のノズル323とを含む。第1のノズル321、322は第1の部分311に装着され、第1のノズルから噴出される電気めっき液の流れ方向は、第1のアノード2とカソードとによって形成される電力線の方向に略平行である。複数の第2のノズル323は、2つの第2の部分312の内側に配置され、電気めっき液を反対方向に噴出する。
すなわち、2つの第2の部分312に設けられた第2のノズルは、電気めっき液を加工物200に向けて長手方向に噴霧する。被電気めっき加工物200が中央にある状態で、電気めっき液は、第1のノズルおよび第2のノズルから左右方向および前後方向のそれぞれの様々な角度で噴霧され、カソードとしての被電気めっき加工物を囲む多角度の強力噴射を形成する。強力噴射は、加工物の深孔死角に衝撃を与え、電気めっき被膜の仕上げ、均一な電気めっき能力、および密着性を向上させることができる。本発明の実施形態による電気めっき装置は、側面、孔、くぼみ、カップ口、および空洞の複雑な部分などの隠れた場所の機能領域、例えば、側面に圧着面を有する端子およびカップ口または空洞構造に接触面を有する雌端子の電気めっきに特に適している。
【0044】
例示的な実施形態において、加工物200は、直接接続または取り外し可能な装着によって材料ベルトに設けられ、例えば、材料ベルトは、電気めっき槽1を通って水平に移動するように配置され、第1のノズルから噴出される電気めっき液の流れ方向(横方向)は、材料ベルトの移動方向(長手方向)に垂直である。本発明の実施形態による電気めっき装置は、材料ベルトが高速で走行するときに加工物の裏面において液体が少なくなる現象を回避して、電気めっきの効率を向上させることができる。
【0045】
例示的な実施形態において、図2に示すように、電気めっき槽1の2つの対向する側壁は、それぞれ溢流口11を備え、材料ベルトは溢流口11を通って移動する。電気めっき槽1の電気めっき液は、溢流口11から流出することができる。
【0046】
図4は、本発明の例示的な実施形態による第1のアノードの説明斜視図である。図4に示すように、一実施形態において、第1のアノード2を、第1のブラケット22によって電気めっき槽1の側壁に取り付けることができる。例えば、フック221を第1のブラケット22に設けて、第1のブラケット22を電気めっき槽1の側壁に取り外し可能に都合よく引掛けることができる。
【0047】
例示的な実施形態において、図1に示すように、電気めっき装置100は、第1のアノード2に電力を供給するのに適した電源装置5も備える。電源装置5は、直流電源、またはパルス電圧もしくはパルス電流を供給することができるパルス電源であってよい。
【0048】
本発明の実施形態によれば、図1に示すように、電気めっきシステムは、上記の実施形態のいずれかによる電気めっき装置100と、タンク20と、ポンプ40とを備える。電気めっき槽1から溢れ出た電気めっき液は、タンク20に流入する。ポンプ40は、タンク20から管401を通して液体噴霧装置3の入口301へ電気めっき液を送り出すのに適しており、液体噴霧装置3内の電気めっき液は、各ノズル32から電気めっき槽内に噴霧される。電気めっき装置100は、移行タンク30も備え、電気めっき槽1から溢れ出た電気めっき液は、移行タンク30を通ってタンク20へ流れる。
【0049】
図1を参照すると、電源装置5の正極が第1のアノード2に接続され、負極がカソードとしての加工物200に接続されている。図の矢印は、電気めっき液の流れ方向を示す。電気めっきプロセスにおいて、加工物200と第1のアノード2とは、電気めっきするイオンを含む電気めっき液に同時に浸漬され、カソードが還元され、電気めっきするイオンが加工物200において原子に還元されて、加工物の表面に電気めっきされる。第1のアノードは酸化反応を有し、第1のアノードの材料は電気めっきする金属を優先的に取り入れ、この金属は酸化して、電気めっきするイオンになり、電気めっき液に溶解されて、電気めっき液における電気めっきするイオンの濃度の安定性を維持する。
【0050】
電気めっき槽1の電気めっき液は、最初に、電気めっき槽の溢流口11から移行タンク30に流入し、次に、移行タンク30の戻り管301を通ってタンク20に流入して、電気めっき液を濾過および洗浄できるようになっている。次に、タンク20の電気めっき液を、ポンプ40によって管401を通して液体噴霧装置3に運び、ノズル32から電気めっき槽内に噴霧して循環させる。
【0051】
図1に示す実施形態において、管401は、電気めっき槽1の底壁の第2の液体入口孔12を通して、電気めっき槽1に電気めっき液を送ることができることに留意されたい。加えて、電気めっき槽1の電気めっき液は、底壁の他の開口部を通って移行タンク30へ流れることもできる。電気めっき液は、複数の液体入口孔および開口部を通って電気めっき槽に流入および電気めっき槽から流出することができ、電気めっき液が複数の方向に流れることができることが理解できる。
【0052】
本発明の実施形態の電気めっき装置100は、金、ロジウム、銀、パラジウム、ニッケル、銅、スズ、インジウム、ビスマス、鉛、コバルト、鉄、亜鉛などの単一金属被膜を、端子、ロック、およびシェルなどの精密電子部品に電気めっきするのに適している。そのプロセスは比較的安定し、制御可能であるため、電子部品は、より良好な機械的特性、電気的特性、耐食性、およびその他の特性を得ることができる。
【0053】
図5は、電気めっき槽を長手方向に切り取った、本発明の別の例示的な実施形態による電気めっきシステムの説明図である。図6は、電気めっき槽を横方向に切り取った、図5に示す電気めっきシステムの別の説明図である。図7は、電気めっき槽を横方向に切り取った、本発明の別の例示的な実施形態による電気めっきシステムの説明図である。図8は、本発明の別の例示的な実施形態による電気めっき装置の説明斜視図である。図9は、本発明の別の例示的な実施形態によるアノードおよび加工物の説明斜視図である。
【0054】
図5図9に示すように、本発明の別の実施形態による電気めっき装置300は、図1図3に示す電気めっき装置100を基礎として、さらに第2のアノード4を備えており、第2のアノード4の電解電位は、第1のアノード2の電解電位よりも低い。図5図9に示す電気めっき装置300および図1図3に示す電気めっき装置100の同じまたは同様の構成要素は、同じ参照符号を使用する。
【0055】
一実施形態において、図5図9に示すように、電気めっき装置300は、電気めっき槽1と、第1のアノード2と、第2のアノード4と、液体噴霧装置3とを備える。電気めっき槽1は、カソードとしての被電気めっき加工物200が少なくとも部分的に浸漬される電気めっき液を収容するのに適している。第1のアノード2は、電気めっき槽1に設けられている。液体噴霧装置3は、本体部分31と複数のノズル32とを含む。本体部分31は真空に形成され、電気めっき液を本体部分31に運ぶための少なくとも1つの入口を備える。複数のノズル32が本体部分31に装着され、ノズル32の少なくとも一部は、ノズル32から噴出される電気めっき液の流れ方向が第1のアノード2とカソードとによって形成される電力線の方向に略平行であるように構成されている。
第2のアノード4の電解電位は、第1のアノード2の電解電位よりも低い。図1図3に記載の電気めっき装置100の技術的効果を実現することに加えて、本発明の実施形態による電気めっき装置300は、2つのアノードを使用することにより加工物に合金電気めっきを行うことができる。
【0056】
例示的な実施形態において、図5図6図8、および図9に示すように、電気めっき装置300は、電気めっき槽1を外側収容部分13と外側収容部分13の内側に位置する内側収容部分14とに分離するのに適した2つの隔壁9も備え、複数対の第1のアノード2が内側収容部分に配置され、複数対の第2のアノード4が外側収容部分13に配置されている。隔壁9に複数の第2の貫通孔91が形成されて、外側収容部分13の電気めっき液が第2の貫通孔91を通って内側収容部分14に流入することを可能にする。
【0057】
例示的な実施形態において、図5図7図8、および図9に示すように、第2のアノード4は、複数の第1の貫通孔を有するバスケット6に入れられ、電気めっき液が第1の貫通孔を通ってバスケット6に流入およびバスケット6から流出して、第2のアノード4に衝撃を与えることができる。
【0058】
例示的な実施形態において、図6に示すように、対の調整カバー7が、第2の液体入口孔12の両側にそれぞれ設けられている。対の調整カバー7は、加工物200における電気めっき液の液位を調整するのに適している。電気めっき槽1は、電気めっき液の流れを促進または阻止するために、ノズル32、隔壁9、液体入口孔、およびその他の機構を備えており、電気めっき槽における電気めっき液の液位は部分によって異なっていてもよい。調整カバー7を設定することにより、加工物200における電気めっき液の液位を調整することができる。
【0059】
例示的な実施形態において、図4図5図6図8、および図9に示すように、第1のアノードは第1のブラケット22によって隔壁9に取り付けられ、第2のアノードは第2のブラケット41によって電気めっき槽の側壁に取り付けられている。フック221、411がそれぞれ、第1のブラケット22および第2のブラケット41に設けられている。
【0060】
例示的な実施形態において、図5図8に示すように、電気めっき装置300は、第1のアノード2および第2のアノード4に電力を供給するのに適した電源装置5も備える。さらに、電源装置5は、第1のアノード2および第2のアノード4のそれぞれに送られる電流を調整するのに適した第1の電流調整器51と第2の電流調整器52とを含む。
【0061】
例示的な実施形態において、第1の電流調整器51および第2の電流調整器52はまた、加工物200に電気めっきされる合金の金属の割合に従って、第1のアノード2および第2のアノード4に送られる電流の割合を調整するように構成されている。このようにして、第1のアノード2および第2のアノード4に送られる電流の割合を調整することができるため、電気めっき液の金属イオンの割合が常に均衡し、合金電着被膜の合金の割合を正確に制御することができる。
【0062】
例示的な実施形態において、合金電着被膜は、スズ銀合金、金コバルト合金、金ニッケル合金、パラジウムニッケル合金、スズニッケル合金、亜鉛ニッケル合金、スズビスマス合金、スズ鉛合金、銅亜鉛スズ合金、亜鉛ニッケル鉄合金などを含む。例えば、亜鉛(Zn(2+))の電解電位は-0.76V、ニッケル(Ni(2+))の電解電位は-0.25V、スズ(Sn(2+))の電解電位は-0.14V、鉛の電解電位(Pb(2+))は-0.13V、銅(Cu(2+))の電解電位は+0.34V、銀(Ag(1+))の電解電位は+0.80V、および金(Au(1+))の電解電位は+1.68Vである。
【0063】
例示的な実施形態において、図5図8に示すように、電気めっき装置300は補助カソード8も備え、電源装置は第3の電流調整器53も含み、第3の電流調整器53のカソードが補助カソード8に接続され、第3の電流調整器のアノードが第2のアノード4に接続されている。第3の電流調整器53は、第2の電流調整器52が第2のアノード4に電流を送ることを停止している間に、第2のアノード4に電力を供給するのに適しており、それにより、第2のアノード4は正電位を有して、第2のアノード4と電気めっき液との間の置換反応を防ぐようになっている。
【0064】
本発明の実施形態において、補助カソード8は、例えば、チタン、炭素、およびSUS316ステンレス鋼などの不活性導体から形成された弱電解電極である。第2のアノード4(低電位金属アノード)を流れる弱電流は、第3の電流調整器53によって約0.01Aとなるように制御されるため、電気めっき液の高電位金属を置換することなく、第2のアノード4は弱い正となる。同時に、(損失を低減させるために)補助カソードをできるだけ少ない合金被膜で電気めっきすると、補助カソードは電気めっき液の異金属汚染も吸収して、電気めっき液を浄化する。
【0065】
第1の電流調整器と第2の電流調整器とは、1つの電源を共有してもよく、またはそれぞれ異なる電源に接続されてもよいことが理解できる。第1の電流調整器、第2の電流調整器、および第3の電流調整器は、シリコン制御整流器などの整流器、または調整可能な抵抗器を含むことができる。
【0066】
図10A図10Dは、本発明の例示的な実施形態による管の異なる装着様式の説明斜視図である。
【0067】
複数の方向の電気めっき液の流れを実現するために、様々な液体入口孔を設けて、電気めっき液を異なる部分から電気めっき槽に運ぶことができる。例示的な実施形態において、図6図7、および図10A図10Dに示すように、電気めっき槽1の底壁に、第2のアノードに略位置合わせされた第1の液体入口孔15が形成され、第1の液体入口孔15は、電気めっき液を第2のアノード4に向けて垂直方向に運ぶのに適している。電気めっき槽1の底壁に、加工物200に略位置合わせされた第2の液体入口孔12が形成され、第2の液体入口孔12は、電気めっき液を加工物200に向けて垂直方向に運ぶのに適している。
【0068】
例示的な実施形態において、図10Aに示すように、かつ図2および図7を参照すると、管41は、液体噴霧装置3の入口331に連通するための第1の出口402と、電気めっき槽1の側壁から電気めっき槽内に電気めっき液を運ぶための第2の出口403とを備える。
【0069】
例示的な実施形態において、図10Bに示すように、かつ図2および図8を参照すると、管41は、液体噴霧装置3の入口331に連通するための第1の出口402と、電気めっき槽1の側壁から電気めっき槽内に電気めっき液を運ぶための第2の出口403と、電気めっき槽1の底壁の第2の液体入口孔12に連通する第3の出口404とを備える。
【0070】
例示的な実施形態において、図10Cに示すように、かつ図2および図8を参照すると、管41は、液体噴霧装置3の入口331に連通するための第1の出口402と、電気めっき槽1の側壁から電気めっき槽内に電気めっき液を運ぶための第2の出口403と、電気めっき槽1の底壁の第1の液体入口孔15に連通する第4の出口405とを備える。
【0071】
例示的な実施形態において、図10Dに示すように、かつ図2および図8を参照すると、管41は、液体噴霧装置3の入口331に連通するための第1の出口402と、電気めっき槽1の側壁から電気めっき槽内に電気めっき液を運ぶための第2の出口403と、電気めっき槽1の底壁の第2の液体入口孔12に連通する第3の出口404と、電気めっき槽1の底壁の第1の液体入口孔15に連通する第4の出口405とを備える。
【0072】
本発明の別の態様の実施形態によれば、図5および図6に示すように、電気めっきシステムは、上記実施形態のいずれかによる電気めっき装置300と、タンク20と、ポンプ40とを備え、電気めっき槽1から溢れ出た電気めっき液は、タンク20に流入する。ポンプ40は、タンク20から管401を通して液体噴霧装置3の入口301へ電気めっき液を送り出すのに適しており、液体噴霧装置3内の電気めっき液は、各ノズル32から電気めっき槽内に噴霧される。電気めっき装置300は、移行タンク30も備え、電気めっき槽1から溢れ出た電気めっき液は、移行タンク30を通ってタンク20へ流れる。
【0073】
例示的な実施形態において、電気めっきシステムは、巻取り胴201および巻戻し胴202をさらに備える。加工物を運ぶ材料ストリップは巻取り胴201に巻き取られ、材料ストリップは巻戻し胴202から巻き戻される。このようにして、材料ストリップに配置された被電気めっき加工物は、巻取り胴によって駆動されて、電気めっき槽において長手方向に移動することができる。
【0074】
上記の実施形態は例示的なものであり、限定的ではないことを、当業者には理解されたい。例えば、当業者であれば、構成上または原理上矛盾することなく、上記の実施形態に多くの修正を加えることができ、異なる実施形態に記載する様々な特徴を互いに自由に組み合わせることができる。
【0075】
いくつかの例示的な実施形態について図示および説明したが、本開示の原理および趣旨から逸脱することなく、これらの実施形態に様々な変更または修正を加えることができることが、当業者には理解されよう。本開示の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物により定義される。
【0076】
本明細書で用いられる場合、単数形で記載され、「1つの(a)」または「1つの(an)」という語で始まる要素は、特に明記しない限り、前記要素またはステップの複数形を除外しないものとして理解されるべきである。さらに、本発明の「一実施形態」に対する言及は、記載した特徴も組み込んだ追加の実施形態の存在を除外するものと解釈されることを意図していない。さらに、特に断りのない限り、特定の特性を有する要素または複数の要素を「備える(comprising)」または「有する(having)」実施形態は、その特性を有さない追加のこのような要素を含んでいてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
【外国語明細書】