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特開2022-117484無線電力システム内の飽和を軽減するための方法及び回路系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117484
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】無線電力システム内の飽和を軽減するための方法及び回路系
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20220803BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220803BHJP
   H02J 50/60 20160101ALI20220803BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20220803BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/10
H02J50/60
H02J50/80
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022011481
(22)【出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】63/143,704
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/198,116
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Apple Inc.
【住所又は居所原語表記】One Apple Park Way,Cupertino, California 95014, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121979
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 吉信
(72)【発明者】
【氏名】アダム エル シューウォーツ
(72)【発明者】
【氏名】アリレザ サファイ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン シー テリー
(72)【発明者】
【氏名】ジユアン フー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】無線電力システム内の飽和を軽減する無線送電デバイス及び無線充電システムを提供する。
【解決手段】無線電力システム8は、無線送電デバイス12などの無線送電デバイスを含み、かつ、無線受電デバイス24などの無線受電デバイスを含む。無線送電デバイス12は制御回路系16を含む。無線受電デバイス24は、制御回路系30を含む。制御回路系16及び制御回路系30などのシステム8内の制御回路系は、システム8の動作を制御する際に使用される。この制御回路系は、マイクロプロセッサ、電力管理ユニット、ベースバンドプロセッサ、アプリケーションプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラ、バッテリチャージャ及び/又は処理回路を備えた特定用途向け集積回路に関連する、処理回路系を含む。処理回路系は、デバイス12及び24内に飽和を検出及び軽減する制御及び通信機能を実現する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送電デバイスであって、
無線受電デバイスに無線電力を伝送するように構成された無線送電コイルを有する共振回路と、
前記無線送電コイル上で、スイッチング周波数で交流信号を駆動するように構成されたインバータと、
前記共振回路内のエネルギーレベルを表す値を測定するように構成された測定回路系と、
制御回路系であって、
測定された前記値を閾値と比較することによって前記共振回路内の飽和を検出し、
前記飽和の検出に応じて前記無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成された制御回路系と
を備える無線送電デバイス。
【請求項2】
測定された前記値は、測定された電流レベル又は測定された電圧レベルを含む、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項3】
前記測定回路は、前記スイッチング周波数の低調波範囲にある測定周波数で前記値を測定するように構成されている、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項4】
前記測定周波数は、前記スイッチング周波数の半分である、請求項3に記載の無線送電デバイス。
【請求項5】
前記測定回路は、前記スイッチング周波数の高調波である測定周波数で前記値を測定するように構成されている、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項6】
前記測定回路は、前記スイッチング周波数での前記共振回路内のエネルギーレベルを表す追加の値を測定するように構成されており、
前記閾値は、前記追加の値の端数である、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項7】
前記測定された値は、測定された電流レベル又は測定された電圧レベルを含み、
前記制御回路系は、連続する2つのサイクルにおいて測定された前記値の分散又は測定された前記値の比を前記閾値と比較することによって前記飽和を検出する、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項8】
測定された前記値は、ピークと谷の差を含み、
前記制御回路系は、ピークと谷の前記差又はピークと谷の前記差の分散を前記閾値と比較することによって前記飽和を検出する、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項9】
前記制御回路系は、前記飽和の検出に応じて、前記無線送電コイル上で駆動される交流信号のデューティサイクルを低下させることにより、前記無線送電コイルによる前記無線送電を制御するように構成されている、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項10】
前記制御回路系は、前記飽和の検出に応じて、前記インバータに電力供給する電源電圧を低下させることにより、前記無線送電コイルによる前記無線送電を制御するように構成されている、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項11】
前記制御回路系は、前記飽和の検出に応じて、前記飽和を軽減する予め決定された電力レベルに前記無線電力を制限することにより、前記無線送電コイルによる前記無線送電を制御するように構成されている、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項12】
前記制御回路系は、前記飽和の検出に応じて、前記インバータの前記スイッチング周波数を調整することにより、前記無線送電コイルによる前記無線送電を制御するように構成されている、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項13】
前記共振回路は、前記無線送電コイルと直列に接続されたコンデンサをさらに備え、
前記制御回路系は、前記飽和の検出に応じて、非対称デューティサイクルを使用して前記インバータを動作させて、前記コンデンサの両端間のDCバイアス電圧を除去することにより、前記無線送電コイルによる前記無線送電を制御するように構成されている、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項14】
前記制御回路系は、
前記飽和を検出しないことに応じて、前記無線電力を増加させるように構成されている、請求項1に記載の無線送電デバイス。
【請求項15】
前記無線送電デバイス上に異物が存在するかどうかを検出するように構成された異物検出回路を更に備え、前記異物検出回路は、前記制御回路系が前記無線電力を増加させている間は停止される、請求項14に記載の無線送電デバイス。
【請求項16】
前記制御回路系は、
前記飽和を検出した後に、前記無線電力を増加させる要求を前記無線受電デバイスから受信し、
前記飽和が検出されなくなるまで、前記要求を無視するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
無線送電デバイスであって、
無線受電デバイスに無線電力を伝送するように構成された無線送電コイルと、
前記無線送電コイル上で交流信号を駆動するように構成されたインバータと、
制御回路系であって、
前記無線受電デバイスの磁気透過性構造の特徴的状態を検出し、
前記無線受電デバイスの前記磁気透過性構造の前記特徴的状態の検出に応じて、前記インバータを調整するように構成された制御回路系と
を備える無線送電デバイス。
【請求項18】
前記磁気透過性構造はフェライト構造であり、
前記特徴的状態は、前記フェライト構造のフェライト飽和を含む、請求項17に記載の無線送電デバイス。
【請求項19】
無線充電システムであって、
磁気透過性材料を有する無線受電器と、
前記無線受電器に無線電力を伝送するように構成された無線送電器とを備え、前記無線送電器は、
前記無線受電器に前記無線電力を伝送するように構成された無線送電コイルを備えたタンク回路と、
前記無線送電コイル上で、スイッチング周波数で交流信号を駆動するように構成されたインバータと、
制御回路系であって、
前記無線受電デバイス内の磁気透過性材料の特徴的状態を検出し、
前記特徴的状態の検出に応じて、前記無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成された制御回路系と
を有する、無線充電システム。
【請求項20】
前記特徴的状態は、前記磁気透過性材料の飽和を含み、
前記磁気透過性材料はフェライトを含み、
前記特徴的状態は、前記フェライトのフェライト飽和を含む、請求項19に記載の無線充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、電力システムに関し、より具体的には、電子デバイスを充電するための無線電力システムに関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月10日に出願された米国特許出願第17/198,116号、及び2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,704号の優先権を主張するものであり、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
無線充電システムでは、充電マットなどの無線送電デバイスが、バッテリ駆動式ポータブル電子デバイスなどの無線受電デバイスに無線で電力を伝送する。無線送電デバイスは、電磁束を形成するコイルを有する。無線受電デバイスは、送電器によって形成された電磁束を使用して、バッテリ駆動式ポータブル電子デバイス内の電気的負荷に電力供給するために使用し得る直流電力を形成するコイル及び整流回路系を有する。無線充電システムを設計することが困難になる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1A】いくつかの実施形態による、無線送電デバイス及び無線受電デバイスを含む例示的な無線充電システムのブロック図である。
図1B】いくつかの実施形態による、例示的な無線送電デバイスの分解図である。
図2】いくつかの実施形態による、無線送受電回路系の回路図である。
図3】いくつかの実施形態による、飽和によって引き起こされる結合インダクタンスの低下を示すプロット図である。
図4】いくつかの実施形態による、飽和の有無による無線送電デバイス内の送信コイル電流の挙動を示すタイミング図である。
図5】いくつかの実施形態による、電力上昇を実施するための例示的なステップのフローチャートである。
図6】いくつかの実施形態による、飽和の検出及び軽減を実施するための例示的なステップのフローチャートである。
図7】いくつかの実施形態による、共振回路を駆動するインバータの回路図である。
図8A】いくつかの実施形態による、180°位相シフト及び対称スイッチングデューティサイクルによるインバータ出力を示すタイミング図である。
図8B】いくつかの実施形態による、180°位相シフト及び非対称デューティサイクルによるインバータ出力を示すタイミング図である。
図8C】いくつかの実施形態による、90°位相シフト及び非対称デューティサイクルによるインバータ出力を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
無線電力システムは無線送電デバイスを含む。無線送電デバイスは、1つ以上の無線受電デバイスに電力を無線で伝送する。無線受電デバイスは、腕時計、セルラー電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、イヤーバッド、イヤーバッド及び他のデバイス用のバッテリケース、タブレットコンピュータのスタイラス(ペンシル)及び他の入出力デバイス、ウェアラブルデバイス、又は他の電子機器などの、電子デバイスを含んでもよい。無線送電デバイスは、無線充電マット若しくはパック、無線送電回路系を備えたタブレットコンピュータ若しくは他のバッテリ駆動式電子デバイス、又は他の無線送電デバイスなどの、電子デバイスであってもよい。無線受電デバイスは、内部コンポーネントに電力供給し、内部バッテリを充電するために、無線送電デバイスからの電力を使用する。伝送された無線電力は、内部バッテリを充電するためにしばしば使用するため、無線送電動作は、無線充電動作と呼ばれることもある。
【0005】
例示的な無線電力システム(無線充電システムと呼ばれることもある)を図1Aに示す。図1Aに示すように、無線電力システム8は、無線送電デバイス12などの無線送電デバイスを含み、かつ、無線受電デバイス24などの無線受電デバイスを含む。無線送電デバイス12は制御回路系16を含む。無線受電デバイス24は制御回路系30を含む。制御回路系16及び制御回路系30などのシステム8内の制御回路系は、システム8の動作を制御する際に使用される。この制御回路系は、マイクロプロセッサ、電力管理ユニット、ベースバンドプロセッサ、アプリケーションプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラ、バッテリチャージャ、及び/又は処理回路を備えた特定用途向け集積回路に関連する、処理回路系を含んでもよい。処理回路系は、デバイス12及び24内に所望の制御及び通信機能を実現する。
【0006】
例えば、処理回路系は、無線電力コイルの選択、送電レベルの判定、センサデータ及び他のデータの処理、ユーザ入力の処理、デバイス12と24との間の交渉への対処、帯域内データ及び帯域外データの送受信、測定の実行、並びに他の方法でのシステム8の動作の制御を行う際に使用してもよい。別の例として、処理回路系は、インターネット閲覧アプリケーション、ボイスオーバー・インターネット・プロトコル(VOIP)電話アプリケーション、電子メールアプリケーション、メディア再生アプリケーション、オペレーティングシステム機能、1つ以上のプロセッサがウェイクアップする時間を制御するための電力管理機能、ゲームアプリケーション、マップ、インスタントメッセージングアプリケーション、決済アプリケーション、カレンダアプリケーション、通知/リマインダアプリケーションなどのソフトウェアを実行するために使用するアプリケーションプロセッサなどの、1つ以上のプロセッサを含んでもよい。
【0007】
システム8内の制御回路は、ハードウェア(例えば、専用のハードウェア又は回路)、ファームウェア及び/又はソフトウェアを使用して、システム8内で動作を実行するように構成されてもよい。システム8内で動作を実行するためのソフトウェアコードは、制御回路8内の非一時的コンピュータ可読記憶媒体(例えば、有形のコンピュータ可読記憶媒体)上に記憶される。ソフトウェアコードは、時に、ソフトウェア、データ、プログラム命令、命令、又はコードと呼ばれることがある。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)などの不揮発性メモリ、1つ以上のハードドライブ(例えば、磁気ドライブ若しくはソリッドステートドライブ)、1つ以上のリムーバブルフラッシュドライブ、又は他のリムーバブル媒体、などを含むことができる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたソフトウェアは、制御回路16及び/又は30の処理回路上で実行することができる。処理回路系は、処理回路系を備えた特定用途向け集積回路、アプリケーションプロセッサなどの1つ以上のマイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)又は他の処理回路系を含んでもよい。
【0008】
無線送電デバイス12は、スタンドアロン型電源アダプタ(例えば、電源アダプタ回路系を含む無線充電マット若しくはパック)であってもよく、電源アダプタ若しくは他の機器にケーブルによって接続される無線充電マット若しくはパックであってもよく、バッテリ駆動式電子デバイス(セルラー電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、リムーバブルケースなど)であってもよく、家具、車両若しくは他のシステムに組み込まれた機器であってもよく、又は他の無線電力伝送機器であってもよい。本明細書では、無線送電デバイス12が無線充電パック又はバッテリ駆動式電子デバイスである例示的な構成を例として説明することもある。
【0009】
無線受電デバイス24は、腕時計、セルラー電話、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、イヤーバッドなどのアクセサリ、無線タブレットコンピュータスタイラス(ペンシル)などのタブレットコンピュータ入力デバイス、バッテリケース又は他の電子機器などの、ポータブル電子デバイスであってもよい。無線送電デバイス12は、1つ以上の入出力デバイス62(例えば、入出力デバイス56に関連して説明したタイプの入力デバイス及び/又は出力デバイス)を含んでもよく、(例えば、デバイスを複雑にしないために)入出力デバイス62は省略されてもよい。無線送電デバイス12は、壁コンセント(例えば、交流電源)に接続されてもよく、電力を供給するためのバッテリを有してもよく、かつ/又は別の電源を有してもよい。デバイス12は、壁コンセント又は他の電源からのAC電力をDC電力に変換するための、AC-DC電力コンバータ14などの交流(AC)-直流(DC)電力コンバータを有してもよい。
【0010】
いくつかの構成では、AC-DC電力コンバータ14は、デバイス12のエンクロージャ(例えば、無線充電パックのエンクロージャ又はバッテリ駆動式電子デバイスのエンクロージャ)とは別個のエンクロージャ(例えば、電力ブリックエンクロージャ)内に設けてもよく、電力コンバータからのDC電力をデバイス12に供給するためにケーブルを使用してもよい。DC電力を使用して、制御回路16に電力を供給することができる。動作中、制御回路16内のコントローラは、送電回路52を使用して、デバイス24の受電回路54に無線電力を伝送することができる。送電回路系52は、制御回路系16によって提供された制御信号に基づいてオン及びオフされて、1つ以上の送信コイル42を通るAC電流信号を生成するスイッチング回路系(例えば、トランジスタから形成されたインバータ回路系60)を有してもよい。コイル42は、(例えば、デバイス12が無線充電マットである構成では)平面状のコイルアレイで配置されてもよく、又は(例えば、デバイス12が無線充電パックである構成では)コイルのクラスタを形成するように配置されてもよい。いくつかの構成では、デバイス12(例えば、充電マット、パック、バッテリ駆動式デバイスなど)は、単一のコイルのみを有してもよい。他の構成では、無線充電デバイス12は、複数のコイル(例えば、2つ以上のコイル、5~10個のコイル、少なくとも10個のコイル、10~30個のコイル、35個未満のコイル、25個未満のコイル、又は他の好適な数のコイル)を有してもよい。
【0011】
AC電流が1つ以上のコイル42を通過するときに、コイル42は、AC電流信号に応じた電磁場信号44を生成する。そして、電磁場信号(無線電力信号と呼ばれることもある)44は、受電デバイス24内のコイル48などの近傍の1つ以上の受信コイルに流れ込むように対応するAC電流を誘導することができる。交流電磁場がコイル48によって受信されるときに、対応する交流電流がコイル48内に誘導される。ブリッジネットワークに配置された同期整流金属酸化物半導体トランジスタなどの整流コンポーネントを含む、整流器50などの整流回路系が、コイル48による受信されたAC信号(電磁信号44に関連する受信された交流信号)を、デバイス24内の負荷に電力供給する(アプリケーションプロセッサに電力供給する、及びデバイス内のバッテリを充電する)ためのDC電圧信号に変換する。無線電力伝送のこの原理は、無線電力信号の送受信と呼ばれる場合がある。
【0012】
整流器50によって形成されたDC電圧は、バッテリ58などのエネルギー蓄積デバイスに電力供給する際に使用することができ、デバイス24内の他のコンポーネントに電力供給する際に使用することができる。例えば、デバイス24は、ディスプレイ、タッチセンサ、通信回路、オーディオコンポーネント、センサ、タブレットコンピュータ内又はタッチセンサを備えた他のデバイス内のタッチセンサによって感知される電磁信号を(例えば、スタイラス入力を提供するために)生成するコンポーネント、他のコンポーネントなどの入出力デバイス56を含んでもよく、これらのコンポーネントには、バッテリ58などの他の利用可能なエネルギー源と組み合わせて、整流器50によって形成されたDC電圧によって電力供給することができる。
【0013】
無線電力伝送動作中、回路系52は、AC電流信号などのAC駆動信号を所与の送電周波数で1つ以上のコイル42に供給する。送電周波数は、搬送周波数、電力搬送周波数、駆動周波数又はインバータスイッチング周波数Fsと呼ばれることもある。インバータスイッチング周波数Fsは、例えば、約125kHz、約128kHz、約200kHz、約326kHz、約360kHz、少なくとも80kHz、少なくとも100kHz、500kHz未満、300kHz未満又は他の好適な無線電力周波数からなる予め決定された周波数であってもよい。ワイアレスパワーコンソーシアムによって制定されたQi無線充電規格のもとで動作するデバイスは、一般に110~205kHz又は80~300kHzで動作する。いくつかの構成では、スイッチング周波数Fsは、デバイス12と24との間の通信で交渉される。他の構成では、送電周波数を固定することができる。
【0014】
制御回路系16はまた、デバイス12の充電面上の外部物体を検出し、電流測定、電圧測定、電力測定及び/又はエネルギー測定などの他の所望の測定を行うように構成された外部物体測定回路系41を含んでもよい。測定回路系41は、デバイス12に当接している物体の気配を検出することができる。測定回路系41は、近傍の物体が無線充電動作に適合するかどうか、又は近傍の物体が、誘導場に反応するが無線充電に適合しない、コイル、紙クリップ、コイン及び他の概ね金属製の物体であるらしいことを検出するのを助けることができる。
【0015】
図1Bは、受電デバイス24の分解図を示す。図1Bに示すように、例示的な受電デバイス24は、筐体層300などのデバイス筐体、無線電力コイル48、遮蔽層302及び304、バッテリ58、ディスプレイ306、並びにディスプレイ306上に配置されたカバーガラス308などのカバー層を含む。デバイス筐体300及びカバーガラス308はそれぞれ、下側及び上側の外部保護層として機能する。明示的に示していないが、通信、記憶及び処理コンポーネントなどの追加のコンポーネントが、デバイス24のスタックアップ内に含まれる。デバイス24などのデバイス内のコンポーネントの配置は、変更してもよい。
【0016】
デバイス24内の電子コンポーネントは、信号干渉を受ける。遮蔽層302は、電磁干渉を抑制するように構成された金属シールドであることができる。このタイプの遮蔽層302は、銅、ニッケル、銀、金、他の金属、これらの材料の組み合わせ、又は無線周波数信号を抑制する他の好適な導電性材料などの材料から形成することができ、無線周波数シールド又は電子シールドと呼ばれることもある。
【0017】
遮蔽層304は、無線送電器から受信される電磁束のガイドとして機能して、比較的低い周波数に磁場を導く。層304は、磁気シールドとして機能し得る磁性材料の層であってもよい(すなわち、層304は、磁束を遮断することができ、500以上、1000以上又は他の好適な値の比透磁率を有してもよい)。磁気遮蔽層304を形成する際に使用できる材料の例は、フェライトである。磁気遮蔽層304を形成する際に使用できる材料の別の例は、ミュー金属又はパーマロイと呼ばれることもある高透磁率ニッケル-鉄磁性合金である。磁気遮蔽層304を形成する際に使用できる材料の別の例は、鉄系ナノ結晶材料である。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、送電デバイス12は、受電デバイス24の遮蔽構造内の特定の特徴的状態に寄与し得る1つ以上の磁石を含む場合がある。図1Bに示すように、受電デバイス24は、遮蔽層304を含んでもよい。無線送電中、インバータ60は、コイル42を通るAC電流信号を駆動してもよい。コイル42を流れるAC電流は、デバイス12内の磁石に関連するDC磁束を増加し得るAC磁束を誘導する。送電デバイス12でAC磁束とDC磁束を組み合わせることで、シールド304での飽和などの特徴的状態が生じる場合がある。飽和は、印加磁場の増加が材料の磁化をさらに増大させることができないときに起きる。飽和はまた、高い磁気飽和又は高いAC流束によってフェライト又はナノ結晶材料で起きる場合がある。飽和(例えば、磁気飽和又は磁束飽和)は、デバイス12と24との間の結合インダクタンス(mated inductance)の低下を引き起こす場合があり、無線充電性能に影響を与える。図3は、飽和によって引き起こされる結合インダクタンスの低下を示す。図3は、無線送電コイル42を流れる電流ITXに応じた結合インダクタンス値LTXをプロットしている。曲線110によって示すように、飽和によって生じる結合インダクタンス値の低下は、電流ITXの増加につながる。
【0019】
図4は、飽和の有無による送信コイル電流ITXの挙動を示すタイミング図である。波形120は、飽和がない場合の電流ITXの挙動を表す一方、波形122は、飽和がある場合の電流ITXの挙動を表す。図4に示すように、波形120は、インバータスイッチング周波数Fsで切り換わり、Fsは、Fsの逆数に等しい周期Ts(例えば、持続時間Tsが電力搬送周波数の逆数に等しい)を有する。波形120は、相対的に安定したピーク及び谷をサイクル毎に有し、このことは、基本的なスイッチング周波数Fsでの期待エネルギーレベルをもたらす。
【0020】
対照的に、波形122は、飽和及び結合インダクタンスの低下の結果として、(上昇ピーク124によって示すように)かなり高いピーク電流レベルを1サイクル置きに示す。波形122は、(下降ピーク126によって示すように)相対的に低いピーク電流レベルに1サイクル置きに戻る。したがって、波形122は、周期2*Tsを有するスイッチング周波数の半分Fs/2で著しく高いエネルギーレベルを示す。より高いエネルギーレベルが、スイッチング周波数Fsの何らかの割合に存在する、特にFsの低調波に存在する、この現象は、飽和を現す。
【0021】
図2に戻ると、測定回路系41は、異物検出(FOD)回路100などのFOD回路及び/又は飽和検出回路102などの飽和検出回路を含んでもよい。飽和検出回路102は、様々な周波数帯域での共振タンク内のエネルギーレベルを表す値を測定して、飽和ひいては発振が起きたかどうかを判定するように構成された、エネルギー測定回路を含んでもよい。飽和検出回路102はまた、コンデンサ70の両端間のDC電圧を測定するように構成されてもよい。コンデンサ70の両端間の非ゼロDC電圧は、必ずしも飽和を意味しないが、飽和は、コンデンサ70の両端間の非ゼロDCバイアス電圧を生じさせる。
【0022】
受電デバイス24内で起こり得るフェライト飽和又は他の磁気飽和、及び結果としての発振は、デバイス12と24との間の通信を損ねる可能性がある。上述したように、発振は、送られた電磁束が受電デバイス24内の飽和を誘発するのに十分なほど大きくなるときに起きる。典型的な無線充電システムでは、起動時に、送電が低電力レベルから目標電力レベルまで上昇し始める。送電レベルが上昇すると、飽和(及び特徴的発振)が起きる場合がある。例えば、無線受電器が電力伝送中に無線電力トランスミッタに対して移動された場合、飽和はまた、電力上昇段階後に起き、又は再び現れる場合がある。このことはまた、温度などの特定の環境又は動作状態が変化するときに起きる場合がある。
【0023】
図5は、電力上昇動作を実施するための例示的なステップのフローチャートである。ステップ130で、インバータ電源電圧Vinを初期電圧レベルに設定してもよい。例として、電圧Vinを9Vに初期化してもよい。これは単なる例示である。インバータ供給電圧Vinは、4V、5V、6V、7V、8V、10V、11V、1~10V又は他の開始電圧レベルに初期化されてもよい。
【0024】
ステップ132で、インバータ60によって出力されるAC駆動信号の位相を初期位相量に設定してもよい。例として、インバータAC駆動信号の位相は、90度に設定されてもよい。90°の位相は、25%のデューティサイクルに相当してもよい。これは単なる例示に過ぎない。AC駆動信号の位相は、45度(例えば、12.5%のデューティサイクル)、60度(例えば、16.7%のデューティサイクル)、120度(例えば、33.3%のデューティサイクル)、135度(例えば、37.5%のデューティサイクル)、80~100度、70~110度、60~120度又は他の開始位相量に初期化されてもよい。
【0025】
ステップ134で、コントローラ16Mなどの制御回路系は、最大位相に達したかどうかを判定してもよい。制御回路系は、現在の位相レベルを最大位相レベルと比較してもよい。例として、最大位相レベルは、180度に設定されてもよく、これは、50%のデューティサイクルに相当する。これは単なる例示に過ぎない。最大位相は、160度、170度、190度、200度、180度未満、180度超、120~180度、180~360度、170~190度、160~200度、150~210度、140~220度又は他の最大位相量に設定されてもよい。
【0026】
最大位相に達していない場合(すなわち、現在の位相が最大位相限界に等しい場合)、制御回路系は、ブロック136で位相ステップ量だけAC駆動信号の位相を増加させるであろう。位相ステップ量は、5度、10度、15度、20度又は他の位相デルタであってもよい。インバータAC駆動信号の位相は、AC駆動信号のデューティサイクルを増加させることによって増加させることができる。最大に達した場合(すなわち、現在の位相が最大位相限界以上の場合)、制御回路系は、ブロック138で電圧ステップ量だけインバータ供給電圧Vinを増加させるであろう。電圧ステップ量は、1V、0.5V、2V、1.5V、0.1V、0.2V、0.3V、0.1~2V又は他の電圧デルタであってもよい。
【0027】
ステップ140で、制御回路系は、送電レベルが目標電力レベルに達したかどうかを判定するであろう。目標電力レベルは、12V、13V、14V、15V、16V、17V、18V、9~18V、12V以上、18V以上又は他の目標電力レベルであってもよい。目標電力レベルに達していない場合、処理は、経路141によって示すように、ステップ134にループバックしてもよい。目標電力レベルに達した場合、電力上昇が完了する(ステップ142)。
【0028】
上述したように、飽和は、電力上昇段階中又は電力上昇段階後に起きる場合がある。いくつかの実施形態によれば、送電デバイス12内の制御回路系16(例えば、図1を参照)は、電力上昇段階中及び/又は電力上昇段階後に、飽和の検出及び軽減を実施するために使用することができる。電力上昇段階中に発振が検出されなければ、デバイス12は、その電力レベルを上昇させ続けることができる。図6は、飽和の検出及び軽減動作を実施するための例示的なステップのフローチャートである。
【0029】
ステップ200で、データ受信器40Rが、制御エラーパケット(CEP)を受信してもよく、デバイス12と24との間の通信がタイムアウトしてもよく、又は飽和検出タイマが時間切れになってもよい。送電レベルを制御するためのQi機構メカニズムは、制御エラーパケット(CEP)と呼ばれることもあるASK変調パケットなどの電力調整要求を送電デバイス12に送信するために、受電デバイス24を使用する。制御回路系16は、時間切れになると対応する飽和検出動作を作動させる飽和検出タイマを含んでもよい。飽和検出タイマは、周期的に、又は電力上昇段階の開始などの特定のイベントに応じて、開始することができる。
【0030】
飽和検出回路102(例えば、図2を参照)は、送電デバイス12が受電デバイス24から制御エラーパケットを受信することに応じて、通信タイムアウトのイベントに応じて、又は飽和検出タイマの時間切れに応じて、ステップ202で飽和検出動作を実施するように構成されてもよい。様々な飽和検出スキームを使用することができる。
【0031】
例として、飽和検出回路102は、共振タンクのエネルギーレベル、又はインバータスイッチング周波数の半分に等しい測定周波数(例えば、測定周波数はFs/2に等しくてもよい)での測定された電流レベル若しくは電圧レベルなどのエネルギーレベルを表す値を測定するように構成された測定回路を含むことができる。したがって、測定回路102は、エネルギー測定回路と呼ばれることもある。エネルギー測定回路は、バンドパスフィルタ、続いて(例として)エネルギー積分器を有する周波数選択エネルギー計算ブロックであってもよい。別の例として、エネルギー測定回路は、高速フーリエ変換(FFT)ブロックを含んでもよい。飽和検出回路102は、測定された値を閾値と比較してもよい。
【0032】
閾値は、スイッチング周波数Fsでの共振タンクのエネルギーレベルを表すエネルギーレベル又は別の値の1パーセントに等しくてもよい。周波数Fsでのエネルギーレベルは、飽和なしの場合にインバータ60の出力でAC駆動信号によって形成される予想エネルギー量(例えば、図4の波形120によって形成されるFsでの期待エネルギーレベル)であることができる。予想(期待)エネルギー量は、シミュレーションを使用して、又は実験的に予め決定することができる。スイッチング周波数Fsでのエネルギーレベルはまた、(例えば、バンドパスフィルタをFsに調整することによって)測定回路102を使用してリアルタイムで測定することができる。この1%の閾値は単なる例示である。他の実施形態では、閾値は、Fsでの期待/測定されるエネルギーレベルの0.1%、Fsでの期待/測定されるエネルギーレベルの0.1~1.0%、Fsでの期待/測定されるエネルギーレベルの2%、Fsでの期待/測定されるエネルギーレベルの1~5%、Fsでの期待/測定されるエネルギーレベルの1~10%、Fsでの期待/測定されるエネルギーレベルの1%未満、Fsでの期待/測定されるエネルギーレベルの1%超、又はFsでのエネルギーレベルの他の所望の割合であってもよい。測定された値が閾値を超えれば、飽和が検出されている。測定された値が閾値を超えなければ、飽和は検出されておらず、(ステップ204で)飽和検出は終了する。
【0033】
測定回路が、Fs/2でのエネルギーレベル(又はエネルギーレベルを表す何らかの値)を測定する上記の例は、単なる例示である。別の例として、測定回路は、Fs/3でのエネルギー代表値を測定する可能性がある。別の例として、測定回路は、2*Fs/3でのエネルギー代表値を測定する可能性がある。別の例として、測定回路は、Fs/4でのエネルギー代表値を測定する可能性がある。別の例として、測定回路は、3*Fs/4でのエネルギー代表値を測定する可能性がある。一般に、飽和検出回路102は、スイッチング周波数Fsの任意の好適な低調波範囲又は割合でのエネルギー代表値(例えば、測定された電流値又は電圧値)を測定するように構成することができる。
【0034】
エネルギー測定回路が、スイッチング周波数Fsの何らかの割合でのエネルギーレベルを表す値を測定する上記の例は、単なる例示である。図3に示すように、飽和を示す波形122の下側ピーク126は、偶数高調波でエネルギーを励起することができる。よって、測定回路は、2*Fs、4*Fs、6*Fsなどでエネルギーレベルを測定し、測定したエネルギーレベルを、Fsでの期待エネルギーレベルの何らかの端数である何らかの閾値と比較する。必要に応じて、飽和検出回路102は、スイッチング周波数の奇数高調波(例えば、3*Fs、5*Fs、7*Fsなど)でのエネルギーレベルを測定するように構成することができる。
【0035】
飽和検出回路102が様々な周波数副帯のエネルギーレベルを測定する上記の例は、単なる例示である。他の実施形態では、回路102は、時間領域で飽和検出を実施することができる。例えば、飽和検出回路102は、N≧2サイクルにわたるピーク間変動を測定し、(例えば、連続する少なくとも2つのサイクルから測定されたピーク値の比を計算することによって)あるサイクル中に測定されたピークを、後続のサイクル中に測定されたピークと比較してもよい。飽和検出回路102は、ピーク間電流、ピーク間電圧及び/又はピーク間電力レベルを監視してもよい。
【0036】
図4に示すように、波形122のピークから谷までの変動は、飽和がある場合に、サイクル間でかなり大きくなる場合がある。例えば、第1のサイクル中のピークと谷との間の差を計算することによって第1のデルタ値を取得することができ、第1のサイクルに続く第2のサイクル中のピークと谷との間の差を計算することによって第2のデルタ値を得ることができる。最大デルタ値又はNサイクルにわたる2つのデルタ値の分散がデルタ閾値レベルを超えれば、飽和が検出される。最大デルタ値又は連続するN個のサイクルにわたる2つのデルタ値の分散がデルタ閾値レベルを超えなければ、飽和は検出されておらず、(ステップ204で)飽和検出は終了する。この時間領域のピーク間変動はまた、(例えば、スライド平均ウィンドウを使用して)平滑化フィルタを適用することによって計算することができる。時間領域の飽和検出中に使用する閾値レベルは、実験的に又はシミュレーションによって特定される決定論的な閾値であってもよい。
【0037】
飽和検出回路102が1つ以上の周波数でのエネルギーレベルを測定する上記の例は、単なる例示である。別の例として、測定回路系41は、飽和の代わりに、損失エネルギーの別個の指標を使用してもよい。飽和は、過度のエネルギー損失につながる場合があり、このことは、FODを意図せずに作動させる場合があり、機能停止につながる場合がある。FODを意図せずに作動させることを防止するために、無効化タイマを使用して、電力上昇段階中又は飽和検出動作中にFOD回路100を一時的に停止させてもよい。また別の例として、測定回路系41は、直列コンデンサ(図2のコンデンサ70を参照)の両端間のDCバイアス電圧を測定するように構成されてもよい。飽和が起きた場合、直列コンデンサの両端間に非ゼロバイアス電圧が見られる。
【0038】
図6の例では、飽和軽減動作に進む前に、連続するM回の肯定的な飽和検出をステップ202で必要としてもよい。Mは、1、2、3、4、5、1~5、1超、5超、5~10又は他の整数に等しくてもよい。Mの値が大きいほど、潜在的にノイズが多い飽和測定値をフィルタ除去し、偽の肯定的な飽和検出を防ぐことができる。
【0039】
飽和が検出された場合、様々な飽和軽減動作を実施することができる(例えば、図6のステップ206、208、210及び/又は212を参照)。ステップ206で、制御回路系は、最小位相に達するまで、又は飽和が検出されなくなるまで、AC駆動信号の位相(例えば、デューティサイクル)を低下させてもよい。最小位相は、70度、70度未満、70度超、60~80度、50~90度又は他の位相量であってもよい。例えば、制御回路系は、位相を5°だけ減少させ、飽和検出を再び実施して、飽和が軽減されたかどうかを確認してもよい。5°ステップサイズは単なる例示である。必要に応じて、5°未満、5°超、1~5°、5~10°、1~10°又は他の位相デルタからなる位相ステップサイズを使用することができる。必要に応じて、位相は、位相レベルが高いほど急に、位相レベルが低いほど緩やかに減少してもよい。飽和が検出されなくなると、飽和軽減動作が完了する。
【0040】
最小位相に達したが、飽和が依然としてある場合、制御回路系は、飽和が検出されなくなるまで、インバータ供給電圧Vinを低下させてもよい(ステップ208)。例えば、制御回路系は、電圧Vinを200mVだけ減少させ、飽和検出を再び実施して、飽和が収まったかどうかを確認してもよい。200mVのステップサイズは単なる例示である。必要に応じて、10mV、50mV、100mV、300mV、10~300mV、190~210mV、180~220mV、150~250mV、100~300mV又は他の電圧デルタからなる電圧ステップサイズを使用することができる。飽和が検出されなくなると、飽和軽減動作を終了することができる。
【0041】
別の例として、制御回路系は、飽和が検出されなくなるまで、AC駆動信号のスイッチング周波数を任意で調整することができる(ステップ210)。スイッチング周波数を調整する(例えば、Fsを増加又は減少させる)ことで、結合ゲインを低下させるとともに半サイクル周期を短くすることができ、このことは、送信コイル電流の増加を制限し、ひいては飽和を防止するのに役立つことができる。送電ワット数レベルが飽和に影響を与えるかどうかを検出するために、送電レベルを変更することも可能である。例えば、Qi規格は、異なる電力プロファイルを可能にする。いくつかの実現態様では、無線送電器は、例えば、ベースの又は拡張的な電力プロファイルのもとで、動作するかどうかを決定する際に飽和を考慮してもよい。
【0042】
別の例として、制御回路系は任意で、飽和を軽減するために非対称スイッチングスキームを使用してインバータ60を動作させることができる(ステップ212)。図7は、コンデンサ70と直列に接続されたコイル42を有する共振タンク回路72を駆動するインバータ60を示す。図7に示すように、インバータ60(例えば、フルブリッジインバータ)は、Vin供給と接地との間で直列に接続されたスイッチS1及びS2を含んでもよく、Vin供給と接地との間で直列に接続されたスイッチS3及びS4を含んでもよい。共振タンクは、インバータスイッチS1とS2との間に介在する第1のスイッチノードN1に接続された1つの端子を有し、インバータスイッチS3とS4との間に介在する第2のスイッチノードN2に接続された別の端子を有する。
【0043】
図8Aは、180°位相シフト及び対称スイッチングデューティサイクルによるインバータ出力の挙動を示すタイミング図である。図8Aに示すように、ノードN1は、インバータスイッチング周期の半分Ts/2に等しい持続時間T1にわたって電圧Vinを供給するようにハイに駆動される。N1の立ち上がりエッジとN2の立ち上がりエッジとの間の時間遅延が、位相シフトとして定義され、この実施例では180°に等しい。180°の位相遅延後に、ノードN2は、Ts/2に等しい持続時間T2にわたって電圧Vinを供給するようにハイに駆動される。第3の波形は、N1-N2の結果を示し、これは、共振タンク72に印加される駆動電圧である。結果としては、持続時間T1の正のVinに、持続時間T2の負のVinが続くことになる。図8Aは、N1とN2の両方が等しい持続時間を有し、よって、N1-N2の対称的なスイッチング波形(対称的なデューティサイクル)をもたらし、+Vinの持続時間が、-Vinの持続時間に等しくなる、方法を示す。
【0044】
インバータによる対称的な励起は典型的に、対称的な共振波形をもたらす。特に、直列コンデンサ70の両端間の電圧波形は、2つのスイッチング半周期で対称であり、平均でゼロに近づくであろう。しかし、デバイス24内のフェライト構造又は他の磁気透過性材料が近傍のDC磁石によって飽和される場合、そのような材料の透磁率は、共振電流が一方向に移動するにつれて減少し、共振電流が他の方向に移動するにつれて増加するであろう。これにより、2つのスイッチング半周期で異なる共振インダクタンス値が生じる。コンデンサ70の両端間の電圧が2つのスイッチング半周期で最初は対称なままであると仮定した場合、コイル42の両端間の電圧は、2つのスイッチング半周期で対称なままであり、よって、コイル42の変化するインダクタンスが、2つのスイッチング半周期で等しくない電流を引き起こすであろう。等しくない電流は、コンデンサ70の平均電圧をゼロから遠ざけるであろう。コンデンサ70の両端間の電圧(本明細書ではVctxと呼ばれることもある)が、コンデンサ70の電荷バランス状態を復元する平均電圧レベル(本明細書ではDCバイアスと呼ばれることもある)に達すると、新たな平衡状態が確立されるであろう。結果として、インバータ励起が対称である場合でも、磁気飽和(例えば、フェライト飽和)が、VctxのDCバイアスを引き起こす。
【0045】
実施形態によれば、そのようなVctxのDCバイアスの除去は、飽和によって引き起こされる発振を除去するのに役立つことができる。測定回路系41(図2を参照)を使用して検出されるようなVctxの非ゼロDCバイアスにより、平均Vctxをゼロに向けるようにインバータ60を調整するフィードバック制御メカニズムを作動させることができる。例として、測定回路系41を使用して、Vctxの非ゼロDCバイアスを検出することに応じて、制御回路系16M(図2を参照)は、インバータ60によって出力されるAC駆動信号のデューティサイクルを低下させるように、インバータ60を調整することができる。インバータ出力信号のデューティサイクルの低下は、平均Vctxをゼロに向けるのに役立って、飽和を軽減するのに役立つことができる。平均Vctxを低下させるようにインバータ60を調整する他の方法も使用することができる。
【0046】
別の例として、Vctxの不要なDCバイアスは、ノードN1及びN2のデューティサイクルに互いに反対のオフセットを適用することによって除去することができる。図8Bは、180°位相シフト及び非対称スイッチングデューティサイクルによるインバータ出力を示すタイミング図である。図8Aと比較して、ノードN1は、オフセットToffsetだけ延長した変更された持続時間T1’にわたってVinを供給するようにハイに駆動される一方、ノードN2は、オフセットToffsetだけ短縮した変更された持続時間T2’にわたってVinを供給するように(位相’の位相シフト後に)ハイに駆動される。ノードN2の位相シフト時間(位相’で示す)は、事実上(Ts/2+Toffset)になる。ここで、Toffsetは正の値として示しているが、Toffestはまた、負の値でもよい。これにより、持続時間T1’の+Vin及び持続時間T2’の-Vinを有する異なる波形(例えば、N1-N2)がもたらされる。ノードN1及びN2のデューティサイクルが異なるこの挙動は、本明細書では、非対称デューティサイクルによるインバータスイッチング動作と呼ばれることもある。
【0047】
図8Cは、90°位相シフト及び非対称スイッチングデューティサイクルによるインバータ出力を示すタイミング図である。図8Bと比較して、ノードN1は、オフセットToffsetだけ延長した変更された持続時間T1’にわたってVinを供給するようにハイに駆動される一方、ノードN2は、オフセットToffsetだけ再び短縮した変更された持続時間T2’にわたってVinを供給するように(位相”の位相シフト後に)ハイに駆動される。ノードN2の位相シフト時間(位相”で示す)は、事実上(Ts/4+Toffset)になる。ここで、Toffsetは正の値として示しているが、Toffestはまた、負の値でもよい。これにより、持続時間T1”の+Vin及び持続時間T2”の-Vinを有する異なる波形(例えば、N1-N2)がもたらされる。ノードN1及びN2のデューティサイクルが異なるこの挙動は、本明細書では、非対称デューティサイクルによるインバータスイッチング動作と呼ばれることもある。
【0048】
オフセットToffsetは、Vctx DCバイアス値を負のフィードバック入力としてとる、制御回路系16(図1)内の補償ブロックによって計算することができる。(図7に示すVctx極性によって定義されるように)DCバイアスが負である場合、オフセットは、T1を延長し、T2を短縮する正の値になるであろう。DCバイアスが正である場合、オフセットは、T1を短縮し、T2を延長する負の値になるであろう。この補償ブロックは、比例・積分・微分(PID)コントローラ、比例・積分(PI)コントローラ又は単純な積分器などの様々な形態をとることができる。補償ブロックは、DCバイアスがゼロにされる場合でも、飽和軽減ループがToffet値を保持する必要があるので、積分コンポーネントを含むべきである。
【0049】
図6の例に示すように、位相は、いくらかの最小位相量、そして電圧Vinが低下するまで減少される。別の例として、制御回路系は、飽和が検出されるとすぐにVinの電圧レベルをロック又は固定してもよい。これにより、供給電圧Vinがさらに増加するのを防ぎ、それによって飽和の原因の1つを抑える。飽和によって引き起こされた飽和の検出に応じて飽和を軽減するための本明細書の例は、単なる例示である。一般に、飽和を軽減するための様々な実施形態はまた、磁気透過性材料がその磁気飽和レベルを超えたときを検出することに応じて適用することができる。
【0050】
実施形態によれば、無線送電デバイスであって、無線受電デバイスに無線電力を伝送するように構成された無線送電コイルを有する共振回路と、無線送電コイル上にスイッチング周波数で交流信号を駆動するように構成されたインバータと、共振回路内のエネルギーレベルを表す値を測定するように構成された測定回路と、制御回路系であって、測定された値を閾値と比較することによって共振回路内の飽和を検出し、飽和の検出に応じて無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成された制御回路系とを含む無線送電デバイスが提供される。
【0051】
別の実施形態によれば、測定された値は、測定された電流レベルを含む。
【0052】
別の実施形態によれば、測定された値は、測定された電圧レベルを含む。
【0053】
別の実施形態によれば、測定回路は、スイッチング周波数の低調波範囲にある測定周波数で値を測定するように構成される。
【0054】
別の実施形態によれば、測定周波数は、スイッチング周波数の半分である。
【0055】
別の実施形態によれば、測定回路は、スイッチング周波数の高調波である測定周波数で値を測定するように構成される。
【0056】
別の実施形態によれば、測定周波数は、スイッチング周波数の偶数倍である。
【0057】
別の実施形態によれば、測定回路は、スイッチング周波数での共振回路内のエネルギーレベルを表す追加の値を測定するように構成され、閾値は、追加の値のある割合である。
【0058】
別の実施形態によれば、測定された値は、測定された電流レベル又は測定された電圧レベルを含み、制御回路系は、測定された値の変動を閾値と比較することによって飽和を検出する。
【0059】
別の実施形態によれば、測定された値は、ピークと谷の差を含み、制御回路系は、ピークと谷の差の分散を閾値と比較することによって飽和を検出する。
【0060】
別の実施形態によれば、測定された値は、ピークと谷の差を含み、制御回路系は、ピークと谷の差を閾値と比較することによって飽和を検出する。
【0061】
別の実施形態によれば、測定された値は、測定された電流レベル又は測定された電圧レベルを含み、制御回路系は、連続する2つのサイクルにおける測定された値の比を閾値と比較することによって飽和を検出する。
【0062】
別の実施形態によれば、制御回路系は、飽和の検出に応じて、無線送電コイル上に駆動される交流信号のデューティサイクルを低下させることにより、無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成される。
【0063】
別の実施形態によれば、制御回路系は、飽和の検出に応じて、インバータに電力供給する電源電圧を低下させることにより、無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成される。
【0064】
別の実施形態によれば、制御回路系は、飽和の検出に応じて、飽和を軽減する予め決定された電力レベルに無線電力を制限することにより、無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成される。
【0065】
別の実施形態によれば、制御回路系は、飽和の検出に応じて、インバータのスイッチング周波数を調整することにより、無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成される。
【0066】
別の実施形態によれば、共振回路は、無線送電コイルと直列に接続されたコンデンサをさらに含み、制御回路系は、飽和の検出に応じて、非対称デューティサイクルを使用してインバータを動作させて、コンデンサの両端間のDCバイアス電圧を除去することにより、無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成される。
【0067】
別の実施形態によれば、制御回路系は、飽和を検出しないことに応じて、無線電力を増加させるように構成される。
【0068】
別の実施形態によれば、無線送電は、無線送電デバイス上に異物が存在するかどうかを検出するように構成された異物検出回路を更に含み、異物検出回路は、制御回路系が無線電力を増加させている間に停止される。
【0069】
別の実施形態によれば、制御回路系は、飽和を検出した後に、無線電力を増加させる要求を無線受電デバイスから受信し、飽和が検出されなくなるまで、要求を無視するように構成される。
【0070】
実施形態によれば、無線送電デバイスであって、無線受電デバイスに無線電力を伝送するように構成された無線送電コイルと、無線送電コイル上に交流信号を駆動するように構成されたインバータと、制御回路系であって、無線受電デバイスの磁気透過性構造の特徴的状態を検出し、無線受電デバイスの磁気透過性構造の特徴的状態の検出に応じて、インバータを調整するように構成される制御回路系とを含む無線送電デバイスが提供される。
【0071】
別の実施形態によれば、磁気透過性構造はフェライト構造を含み、特徴的状態は、フェライト構造のフェライト飽和を含む。
【0072】
別の実施形態によれば、制御回路系は、電流又は電圧レベルを測定し、測定された電流又は電圧レベルを閾値と比較することにより、特徴的状態を検出するように構成される。
【0073】
別の実施形態によれば、制御回路系は、特徴的状態の検出に応じて、無線送電コイル上に駆動される交流信号のデューティサイクルを低下させることにより、インバータを調整するように構成される。
【0074】
別の実施形態によれば、インバータは、電源電圧を受信するように構成され、制御回路系は、特徴的状態の検出に応じて電源電圧を低下させることにより、インバータを調整するように構成される。
【0075】
別の実施形態によれば、インバータは、電源電圧を受信するように構成され、制御回路系は、特徴的状態の検出に応じて電源電圧を固定するように構成される。
【0076】
別の実施形態によれば、インバータは、交流信号をスイッチング周波数で駆動するように構成され、制御回路系は、スイッチング周波数を調整することにより、インバータを調整するように構成される。
【0077】
別の実施形態によれば、無線送電デバイスは、無線送電デバイス上に異物が存在するかどうかを検出するように構成された異物検出回路を含み、インバータは、電源電圧を受信するように構成され、異物検出回路は、制御回路系が電源電圧を上昇させている間に停止される。
【0078】
実施形態によれば、無線充電システムであって、磁気透過性材料を有する無線受電器と、無線受電器に無線電力を伝送するように構成された無線送電器とを含み、無線送電器が、無線受電器に無線電力を伝送するように構成された無線送電コイルを備えたタンク回路と、無線送電コイル上にスイッチング周波数で交流信号を駆動するように構成されたインバータと、制御回路系であって、無線受電デバイス内の磁気透過性材料の特徴的状態を検出し、特徴的状態の検出に応じて、無線送電コイルによる無線送電を制御するように構成される制御回路系とを有する、無線充電システムが提供される。
【0079】
別の実施形態によれば、特徴的状態は、磁気透過性材料の飽和を含む。
【0080】
別の実施形態によれば、磁気透過性材料はフェライトを含み、特徴的状態は、フェライトのフェライト飽和を含む。
【0081】
別の実施形態によれば、特徴的状態は、タンク回路内の発振を引き起こす。
【0082】
別の実施形態によれば、無線送電器は、スイッチング回路系の関数である測定周波数でタンク回路内のエネルギーレベルを表す値を測定するように構成された測定回路を含み、制御回路系は、測定された値を閾値と比較することにより、特徴的状態を検出するように構成される。
【0083】
別の実施形態によれば、無線送電器は、ピーク値を測定するように構成された測定回路を含み、制御回路系は、測定されたピーク値の関数であるメトリックを閾値に比較することにより、特徴的状態を検出するように構成される。
【0084】
別の実施形態によれば、無線送電器は、異物が無線送電デバイス上に存在するかどうかを検出するように構成された異物検出回路を含み、異物検出回路は、制御回路系が特徴的状態を検出している間に停止される。
【0085】
前述は、単なる例示に過ぎず、説明された実施形態に対して多様な変更を行うことができる。前述の実施形態は、個別に又は任意の組み合わせで実現されてもよい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
【外国語明細書】