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  • 特開-受信機 図1
  • 特開-受信機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011752
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】受信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H04B1/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113096
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】今里 康二郎
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061CC52
5K061CD04
5K061JJ24
(57)【要約】
【課題】 過入力によるデバイスの損傷を防止可能で、かつ、応答性が良好な受信機を提供する。
【解決手段】 デジタル変換された受信信号の信号レベルに応じてデジタル変換前の受信信号の利得を減衰させる外部AGC3と、減衰を打ち消すタイミングで、外部AGC3による減衰量の逆数を減衰された受信信号に乗算することで、該受信信号の利得を減衰前の値に補正する外部AGC補正部5と、補正された受信信号の不要周波数成分を除去するチャネルフィルタ6と、チャネルフィルタ6を通過した受信信号の利得を所定範囲に調整する内部AGC7と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル変換された受信信号の信号レベルに応じてデジタル変換前の受信信号の利得を減衰させる第1の自動利得制御回路と、
前記減衰を打ち消すタイミングで、前記第1の自動利得制御回路による減衰量の逆数を前記減衰された受信信号に乗算することで、該受信信号の利得を減衰前の値に補正する利得補正部と、
前記補正された受信信号の不要周波数成分を除去するチャネルフィルタと、
前記チャネルフィルタを通過した受信信号の利得を所定範囲に調整する第2の自動利得制御回路と、
を備えることを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記利得補正部は、遅延を調整して前記逆数を乗算することで前記減衰を打ち消す、
ことを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信した信号から所望の音声周波数信号を抽出して音声を再生する受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
音声を再生する受信機には従来から、受信信号レベルに応じて利得・出力音声を適切な範囲に調整する自動利得制御回路(内部AGC)が設けられている。一方、受信機のアンテナ入力に過入力があった場合、電力増幅部などのデバイスが損傷、あるいは、飽和するおそれがある。このため、入力側において受信電力を監視して受信信号を減衰させる機能として、別の自動利得制御回路(外部AGC)が必要となる。この場合、例えば、図2に示すように、デジタル部で受信電力を監視し、デジタル部の前段で受信信号を減衰させる構成が考えられる。
【0003】
しかしながら、2つの自動利得制御回路を備え、前段の外部AGCの収束後に後段の内部AGCが収束する、という動作、挙動を示すため、収束に時間を要し、応答性能が低下・劣化してしまう。特に上記の構成の場合、瞬間的に受信電力が大きくなった際に、外部AGCの収束前にRF_ADC(アナログ/デジタル変換器)で取り込む信号が飽和・オバーフローして、外部AGCにおける電力検出値が低く見積もられてしまい、受信信号が徐々に減衰することになる。この結果、後段の内部AGCにおける収束、応答が遅くなり、応答性が低下する。
【0004】
このような問題を解決するために、内部AGCと外部AGCとの時定数を別の値に設定する、という技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、内部AGCの時定数を大きく設定し、外部AGCの時定数を小さく設定することで、出力信号のオーバーシュートやアンダーシュートを抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53-72441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、内部AGCと外部AGCとの時定数を別の値に設定するだけであるため、前段の外部AGCが後段の内部AGCに与える影響を抑制するには不十分で、応答性が低下する場合がある。
【0007】
そこで本発明は、過入力によるデバイスの損傷を防止可能で、かつ、応答性が良好な受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、デジタル変換された受信信号の信号レベルに応じてデジタル変換前の受信信号の利得を減衰させる第1の自動利得制御回路と、前記減衰を打ち消すタイミングで、前記第1の自動利得制御回路による減衰量の逆数を前記減衰された受信信号に乗算することで、該受信信号の利得を減衰前の値に補正する利得補正部と、前記補正された受信信号の不要周波数成分を除去するチャネルフィルタと、前記チャネルフィルタを通過した受信信号の利得を所定範囲に調整する第2の自動利得制御回路と、を備えることを特徴とする受信機である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の受信機において、前記利得補正部は、遅延を調整して前記逆数を乗算することで前記減衰を打ち消す、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、第1の自動利得制御回路によって受信信号の利得が減衰されるため、過入力があってもデバイスの損傷を防止することが可能となる。また、前段の第1の自動利得制御回路で減衰された受信信号の利得が、利得補正部によって減衰前の利得に補正されるため、後段の第2の自動利得制御回路において第1の自動利得制御回路による影響が抑制、削減される。しかも、減衰を打ち消すタイミングで補正されるため、第1の自動利得制御回路による影響をより抑制、削減することが可能となる。この結果、第2の自動利得制御回路における収束時間が第1の自動利得制御回路に依存することなく独立して速くなり、応答性が向上する。
【0011】
また、利得補正部において、第1の自動利得制御回路による減衰量の逆数を減衰された受信信号に乗算するため、受信信号の減衰を補正することが可能になる。しかも、減衰量の逆数を乗算するだけであるため、簡易に構成することが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、遅延を調整して逆数を乗算するため、より適正に減衰を打ち消すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態に係る受信機を示す概略構成ブロック図である。
図2】内部AGCと外部AGCを備えた従来の受信機を示す概略構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係る受信機1を示す概略構成ブロック図である。この受信機1は、受信した信号から所望の音声周波数信号を抽出して音声を再生する装置であり、主として、A/D変換部(RF_ADC)2と、外部AGC(第1の自動利得制御回路)3と、デジタルダウンコンバータ(DDC)4と、外部AGC補正部(利得補正部)5と、チャネルフィルタ6と、内部AGC(第2の自動利得制御回路)7と、復調部8と、を備える。
【0016】
A/D変換部2は、アンテナで受信して入力されたアナログの受信信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器である。
【0017】
外部AGC3は、A/D変換部2でデジタル変換された受信信号の信号レベルに応じて、デジタル変換前の受信信号の利得を減衰させる自動利得制御回路であり、A/D変換部2の上流側に配設されたアナログの可変アッテネータ31を備える。すなわち、A/D変換部2から出力された受信信号の信号レベル・強度を検出し、この信号レベルに応じた減衰量を可変アッテネータ31に出力する。そして、アンテナで受信した受信信号を可変アッテネータ31でこの減衰量だけ減衰させてA/D変換部2に入力することで、出力信号が飽和するのを防止する。ここで、外部AGC3から可変アッテネータ31に出力される減衰量は、後述する外部AGC補正部5にも出力される。
【0018】
デジタルダウンコンバータ4は、A/D変換部2から出力された受信信号の周波数・サンプリングレートを下げるコンバータであり、これにより、チャネルフィルタ6などにおける処理時間を確保するものである。
【0019】
外部AGC補正部5は、外部AGC3による減衰を打ち消すタイミングで、外部AGC3による減衰量の逆数を減衰された受信信号に乗算することで、該受信信号の利得を減衰前の値に補正する回路部である。すなわち、外部AGC3から伝送された減衰量の逆数となる補正値を時系列・伝送順に逆テーブル51から参照する。例えば、外部AGC3からの減衰量が-1dBの場合、+1dBに相当する振幅補正値1.122を逆テーブル51から出力する。
【0020】
そして、逆テーブル51から出力された補正値を順次、デジタルダウンコンバータ4から出力された受信信号に乗算器53で乗算することで、デジタルダウンコンバータ4からの受信信号のレベルを増幅させて、減衰を補正する。この際、外部AGC3による減衰を打ち消すタイミングで増幅するように、遅延回路52で遅延させながら補正値を乗算する。すなわち、可変アッテネータ31の制御遅延、および、A/D変換部2、デジタルダウンコンバータ4による信号遅延だけ、遅延回路52で遅延、調整しながら、外部AGC3で減衰されたタイミング・信号部を増幅、補正するように補正値を乗算する。このようにして、外部AGC3による減衰を打ち消すタイミングでその減衰量の逆数を乗算することで、受信信号の利得を減衰前の状態に戻す。
【0021】
チャネルフィルタ6は、外部AGC補正部5で補正された受信信号の不要周波数成分を除去するフィルタである。例えば、高周波数帯域および低周波数帯域において利得が急激に低下する特性を備えたフィルタで構成することで、受信信号から不要な周波数成分を除去して受信に必要な周波数成分のみを残す。
【0022】
内部AGC7は、チャネルフィルタ6を通過した受信信号の利得を所定範囲に調整する自動利得制御回路である。すなわち、スピーカ(図示せず)から再生される音声レベルを安定化させるために、チャネルフィルタ6からの信号レベルに応じてその出力レベルを上げ下げする。具体的には、従来の自動利得制御回路と同様に、チャネルフィルタ6から出力された受信信号の信号レベル・強度を検出し、この信号レベルに応じて減衰器(乗算器)でチャネルフィルタ6からの受信信号のレベルを調整する。
【0023】
復調部8は、内部AGC7から出力された受信信号を音声信号に復調する復調器であり、この復調部8で復調された音声信号が、デジタル/アナログ変換器(図示せず)などを介してスピーカから出力、再生される。
【0024】
このような構成の受信機1によれば、外部AGC3によって受信信号の利得が減衰されるため、過入力があってもデバイスの損傷を防止することが可能となる。また、前段の外部AGC3で減衰された受信信号のレベルが、外部AGC補正部5によって減衰を打ち消すように補正されるため、後段の内部AGC7において外部AGC3による影響が抑制、削減される。しかも、補正するタイミングを調整することで、外部AGC3による影響をより抑制、削減することが可能となる。この結果、内部AGC7における収束時間が外部AGC3に依存することなく独立して速くなり、応答性が向上する。
【0025】
また、外部AGC補正部5において、外部AGC3により減衰された受信信号に減衰量の逆数を乗算することで、受信信号のレベルを補正することが可能になる。減衰量の逆数を乗算するだけであるため、簡易に構成することが可能となる。
【0026】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 受信機
2 A/D変換部
3 外部AGC(第1の自動利得制御回路)
4 デジタルダウンコンバータ
5 外部AGC補正部(利得補正部)
51 逆テーブル
52 遅延回路
6 チャネルフィルタ
7 内部AGC(第2の自動利得制御回路)
8 復調部
図1
図2