(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117543
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】光透過性コンクリート構造体
(51)【国際特許分類】
E04C 2/54 20060101AFI20220804BHJP
E04B 1/04 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
E04C2/54 C
E04B1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014080
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柳坂 祥希
(72)【発明者】
【氏名】道越 真太郎
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162AA01
2E162BA10
2E162CA11
(57)【要約】
【課題】透光性を有する部材の配置自由度を高めることができる、光透過性コンクリート構造体を提供する。
【解決手段】光透過性コンクリート構造体10は、光透過性を有する光透過性コンクリート構造体10であって、コンクリート部11と、当該コンクリート部11の内部に配置された、光透過部14及びセパレータ13を備え、光透過部14は、透光性を有する材料により、セパレータ13の表面13f上に、セパレータ13の両端部13a、13b間で連続するように形成され、光透過部14の端面14a、14bは、セパレータ13の両端部13a、13bにおいて、コンクリート部11の表面11f、11g、16aから露出している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する光透過性コンクリート構造体であって、
コンクリート部と、
当該コンクリート部の内部に配置された、光透過部及びセパレータを備え、
前記光透過部は、透光性を有する材料により、前記セパレータの表面上に、前記セパレータの両端部間で連続するように形成され、
前記光透過部の端面は、前記セパレータの前記両端部において、前記コンクリート部の表面から露出していることを特徴とする光透過性コンクリート構造体。
【請求項2】
前記光透過部の前記端面は、前記コンクリート部の前記表面に形成された凹部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の光透過性コンクリート構造体。
【請求項3】
前記光透過部は、前記セパレータを覆うように筒状に形成され、前記セパレータの長さ方向に直交するように断面視したときの外側の輪郭形状が円形または多角形であることを特徴とする請求項1または2に記載の光透過性コンクリート構造体。
【請求項4】
前記光透過部は、前記セパレータの長さ方向に直交するように断面視したときに、一部が光を遮断する材料によって形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光透過性コンクリート構造体。
【請求項5】
光透過性を有する光透過性コンクリート構造体であって、
互いに反対側を向く表面の各々に凹部が形成されたコンクリート部と、
当該コンクリート部の内部に配置された、光透過部を備え、
前記光透過部は、透光性を有する材料により筒状に形成され、前記光透過部には、両端面間を連通する内部空間が形成され、
前記光透過部の前記両端面は、前記凹部の底面の少なくとも一部を形成するように、前記コンクリート部の表面から露出していることを特徴とする光透過性コンクリート構造体。
【請求項6】
前記内部空間に、光を透過する材料あるいは光を遮断する材料のいずれかにより形成された補充部材が、前記内部空間を閉塞するように設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の光透過性コンクリート構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性コンクリート構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば建物の採光等を目的として、壁等を形成するコンクリート製の部材の内部に、当該部材の一方の側面から反対側の側面まで貫通するように、光を透過させる、透過性を有する部材を、埋設させて設けることがある。
例えば特許文献1には、入光端、及び出光端を有する光伝導ユニットと、光伝導ユニットを被覆し、入光端と出光端を露出させるコンクリート構造と、を備える透光性のあるコンクリート建材が開示されている。
また、特許文献2には、光伝送ファイバが埋め込まれた建築用ブロックが開示されている。ファイバは建築用ブロックの第1側面から反対側の第2側面へと配置構成され、ファイバそれぞれによって、側面のいずれかの背後に配置構成された光源から放射した光が、建築用ブロック内を通して伝送される。
更に、特許文献3には、セメント系モルタルから作った複合パネルの厚さ全体を貫通する複数の通し開口部と、通し開口部に充填された光に対して透明な材料と、を備える構成が開示されている。
【0003】
通常、壁などの内側には鉄筋が配設される。このため、特許文献1~3に開示された構造を、例えば建物の壁に適用して、壁の内部に透過性を有する光透過部材を埋設させる場合には、光透過部材は、鉄筋と干渉しないように配置する必要がある。
また、建物の壁等をコンクリートにより製造する場合においては、一対の型枠板を対向するように配置し、これら型枠板の間隔を所定の間隔に規制するために、型枠板の間にセパレータを設けたうえで、型枠板の間にコンクリートを打設する。コンクリートが硬化した後に、型枠板は撤去されるが、セパレータはコンクリートの内部に残される。すなわち、光透過部材をコンクリート内に埋設して設ける場合においては、上記のような鉄筋に加えて、セパレータの位置をも考慮して、セパレータと干渉しないように、光透過部材を配置する必要がある。
このように、光透過部材を配置することができる配置可能領域は、実際には大きく制限される。配置可能領域は、壁の内部構造、すなわち鉄筋やセパレータの配置等に依存した、人間の美観から考えると不自然な形状となっている。したがって、例えば採光性を高めるために配置可能領域の全域にわたって光透過部材を配置すると、透過した光の全体の形状は、人間の美観にそぐわない、意匠性の低いものとなり得る。特にセパレータは、壁の全面にわたって設けられるため、配置可能領域への制限が大きく、光透過部材の配置設計の自由度が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-85155号公報
【特許文献2】特表2005-526196号公報
【特許文献3】特表2012-511645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、透光性を有する部材の配置自由度を高めることができる、光透過性コンクリート構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、光透過性を有する光透過性コンクリート構造体であって、コンクリート部と、当該コンクリート部の内部に配置された、光透過部及びセパレータを備え、前記光透過部は、透光性を有する材料により、前記セパレータの表面上に、前記セパレータの両端部間で連続するように形成され、前記光透過部の端面は、前記セパレータの前記両端部において、前記コンクリート部の表面から露出している、光透過性コンクリート構造体を提供する。
このような構成によれば、透光性を有する材料により形成された光透過部がコンクリート部の内部に配置されている。光透過部の端面は、セパレータの両端部において、コンクリート部の表面から露出しているため、光透過部によってコンクリート部に光を透過させることができる。これにより、採光性が確保される。
このような光透過部は、セパレータの表面上に、セパレータの両端部間で連続するように形成されている。すなわち、セパレータが設けられる部分においても、このセパレータの表面上に設けられた光透過部により、光を透過させることができる。このように、セパレータが設けられる部分にも光透過部を設けることができるため、透光性を有する部材の配置自由度を高めることができる。
【0007】
本発明の一態様においては、前記光透過部の前記端面は、前記コンクリート部の前記表面に形成された凹部に露出している。
このような構成は、セパレータを使用してコンクリート部を形成する通常の手順により形成され得る。すなわち、セパレータの両端部に、光透過性コンクリート構造体の厚さ方向における型枠の位置を固定するための型枠位置決め部材を取り付ける。型枠位置決め部材に型枠を取り付け、型枠間にセメント系固化材を打設する。セメント系固化材を養生させた後に、型枠位置決め部材を取り外すと、コンクリート部の互いに反対側を向く表面の各々に凹部が形成され、光透過部の端面はこの凹部に露出することになる。
このようにして、光透過性コンクリート構造体を容易に製造することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記光透過部は、前記セパレータを覆うように筒状に形成され、前記セパレータの長さ方向に直交するように断面視したときの外側の輪郭形状が円形または多角形である。
このような構成によれば、例えば光透過部を予め筒状に形成しておけば、筒状の内側にセパレータを挿入させることで、光透過部を容易に設置することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記光透過部は、前記セパレータの長さ方向に直交するように断面視したときに、一部が光を遮断する材料によって形成されている。
このような構成によれば、光透過部を、透光性を有する材料と光を遮断する材料を組み合わせて使用し形成することにより、透光性を有する材料により形成された部分の形状を複雑にすることができる。これにより、意匠性が向上する。
【0010】
また、本発明は、光透過性を有する光透過性コンクリート構造体であって、互いに反対側を向く表面の各々に凹部が形成されたコンクリート部と、当該コンクリート部の内部に配置された、光透過部を備え、前記光透過部は、透光性を有する材料により筒状に形成され、前記光透過部には、両端面間を連通する内部空間が形成され、前記光透過部の前記両端面は、前記凹部の底面の少なくとも一部を形成するように、前記コンクリート部の表面から露出している、光透過性コンクリート構造体を提供する。
このような構成によれば、透光性を有する材料により形成された光透過部がコンクリート部の内部に配置されている。光透過部の端面は、コンクリート部に形成された凹部の底面の少なくとも一部を形成するように、コンクリート部の表面から露出しているため、光透過部によってコンクリート部に光を透過させることができる。これにより、採光性が確保される。
このような構成は、セパレータを使用してコンクリート部を形成する通常の手順により形成され得る。すなわち、光透過部の内部空間にセパレータを挿入し、光透過部の端面から突出したセパレータの両端部に、光透過性コンクリート構造体の厚さ方向における型枠の位置を固定するための型枠位置決め部材を取り付ける。型枠位置決め部材に型枠を取り付け、型枠間にセメント系固化材を打設する。セメント系固化材を養生させた後に、型枠位置決め部材を取り外し、更にセパレータを光透過部から抜き出して撤去する。すると、コンクリート部の互いに反対側を向く表面の各々に凹部が形成され、光透過部の端面はこの凹部に露出することになる。
このような光透過部は、光透過性コンクリート構造体の施工時にセパレータが設けられる部分に配置されている。すなわち、施工時にセパレータが設けられる部分においても、上記のような光透過部により、光を透過させることができる。このように、セパレータが設けられる部分にも光透過部を設けることができるため、透光性を有する部材の配置自由度を高めることができる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記内部空間に、光を透過する材料あるいは光を遮断する材料のいずれかにより形成された補充部材が、前記内部空間を閉塞するように設けられている。
このような形態によれば、セパレータを撤去したとしても、コンクリート部の一方の表面側の空間と、これとは反対側の空間との間の空気の連通を抑制可能である。
補充部材として、特に光を透過する材料を用いた場合には、採光性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透光性を有する部材の配置自由度を高めることができる、光透過性コンクリート構造体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る光透過性コンクリート構造体からなる壁を備えた建物の一例を示す図である。
【
図4】上記の光透過性コンクリート構造体の製造方法の流れを示す図である。
【
図5】
図4の光透過性コンクリート構造体の製造方法における型枠組み立て工程で、型枠を組み立てた状態を示す断面図である。
【
図6】
図4の光透過性コンクリート構造体の製造方法におけるセメント系固化材の打設工程で、セメント系固化材を型枠に打設した状態を示す断面図である。
【
図7】本実施形態に係る光透過性コンクリート構造体の、セパレータ部分の変形例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る光透過性コンクリート構造体の、セパレータ部分の変形例を示す図である
【
図9】本実施形態に係る光透過性コンクリート構造体の、セパレータ部分の変形例を示す図である
【
図10】本実施形態に係る光透過性コンクリート構造体の、セパレータ部分の変形例を示す図である
【
図11】本実施形態に係る光透過性コンクリート構造体の変形例を示す図である
【
図12】本実施形態に係る光透過性コンクリート構造体の変形例を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明による光透過性コンクリート構造体を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る光透過性コンクリート構造体からなる壁を備えた構造物の一例を示す図を
図1に示す。
図2は、
図1のA矢視部分の拡大図である。
図3は、
図2のB-B部分の断面図である。
図1に示されるように、光透過性コンクリート構造体10からなる壁2は、建物1に備えられている。壁2は、柱3と梁4とを備えた建物1の躯体に設けられている。壁2は、互いに隣り合う柱3と、互いに上下する梁4とに囲まれた部分に設けられている。
図2、
図3に示されるように、この壁2を構成する光透過性コンクリート構造体10は、光透過性を有している。光透過性コンクリート構造体10は、コンクリート部11と、セパレータ部12と、を備えている。コンクリート部11は、コンクリート、モルタル、繊維補強コンクリート等のセメント系固化材Cを固化させて形成され、壁2として所定の厚みを有している。
【0015】
光透過性コンクリート構造体10のコンクリート部11には、壁2の表面を形成する、互いに反対側を向く主表面11f、11gから、光透過性コンクリート構造体10の厚み方向内側に窪んだ凹部16が、複数形成されている。この凹部16は、光透過性コンクリート構造体10の厚み方向において、主表面11f、11gに対して所定寸法内方に、主表面11f、11gと平行な底面16aを有している。底面16aを含む凹部16の表面は、主表面11f、11gと同様に、コンクリート部11の表面を形成する。凹部16は、底面16aの外周部から、光透過性コンクリート構造体10の厚み方向の外方(主表面11f、11gに近づく側)に向かうにつれ、その内径が漸次拡径するように形成されている。
凹部16は、コンクリート部11の両側の主表面11f、11gに沿って間隔をあけて複数個所に設けられている。本実施形態において、凹部16は、主表面11f、11gに沿って、上下方向および水平方向にほぼ等間隔で、グリッド状に配置されている。
【0016】
セパレータ部12は、セパレータ13と光透過部14を備えている。セパレータ13と光透過部14は、複数の凹部16の各々に対応した位置に、コンクリート部11の内部に配置されている。
セパレータ13は、棒状の鋼材である。セパレータ13の双方の端部13a、13bには、雄ねじ部13cが形成されている。セパレータ13は、
図2に示されるように、長さ方向に直交するように断面視したときの形状が、円形となるように形成されている。
【0017】
光透過部14は、本実施形態においては、セパレータ13より短尺に、かつ中空に、すなわち筒状に形成されている。光透過部14には、双方の端面14a、14b間を連通するような内部空間が形成されている。光透過部14は、長さ方向に直交するように断面視したときに、外側表面14cと、内部空間の壁面を形成する内側表面14dの、各々の輪郭形状が円形となるように形成されている。内側表面14dの直径すなわち光透過部14の内径は、セパレータ13の断面の直径と略同等か、これより僅かに大きい値となるように、光透過部14は形成されている。
光透過部14は、本実施形態においては、光透過性を有した樹脂製である。このような光透過部14を形成する樹脂材料としては、例えば、高い光透過性を有する、アクリル樹脂を用いるのが好適である。光透過部14を形成する樹脂材料としては、特に、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:光透過率92%)を用いるのが好ましい。光透過部14には、他の樹脂材料として、透明セラミックス(光透過率84%)、ポリカーボネート(光透過率93%)、硬質塩化ビニル樹脂(光透過率87%)、セルロースナノファイバー(光透過率95%)、ポリスチレン等を用いることができる。また、光透過部14として、石英やガラス(光透過率90%)を用いることもできる。
【0018】
本実施形態においては、セパレータ部12は、光透過部14の内部空間に、セパレータ13を挿入させることによって形成されている。このため、光透過部14の内側表面14dと、セパレータ13の、長さ方向に延在する表面13f(
図3参照)とは、基本的には当接している。しかし、内側表面14dの直径とセパレータ13の直径の間に設けられるクリアランスのために、両者の間には僅かに離間している部分があってもよい。あるいは、光透過部14の内側表面14dとセパレータ13の表面13fとの間に、両者を接着するための接着剤等の、他の部材により形成された薄い層が設けられていてもよい。
セパレータ13の双方の端部13a、13bの雄ねじ部13cは、セパレータ13が光透過部14の内部に挿入されたときに、光透過部14の端面14a、14bの各々から突出するように、セパレータ13と光透過部14は互いに位置づけられている。
このように、光透過部14は、透光性を有する材料により、セパレータ13の表面13f上に、セパレータ13の両端部13a、13bの間で連続するように形成されている。また、光透過部14は、セパレータ13を覆うように筒状に形成されている。
【0019】
セパレータ部12は、コンクリート部11の凹部16に対応する位置で、コンクリート部11内に埋設されている。光透過部14は、コンクリート部11の厚み方向に貫通して設けられている。光透過部14は、コンクリート部11の厚み方向に直線状に延びている。
図3に示されるように、光透過部14の長さは、コンクリート部11の双方の主表面11f、11gに形成された凹部16の底面16a間の間隔と略同等となっている。光透過部14は、全長にわたってコンクリート部11に埋設されている。
光透過部14の端面14a、14bの各々は、コンクリート部11の双方の主表面11f、11gに形成された凹部16に露出し、凹部16の底面16aの少なくとも一部を形成している。このように、光透過部14の端面14a、14bは、セパレータ13の両端部13a、13bにおいて、コンクリート部11の表面の一部となる底面16aから露出している。
セパレータ部12は凹部16に対応して設けられているため、光透過部14は、凹部16に対応するように、コンクリート部11の両側の主表面11f、11gに沿って間隔をあけて複数個所に設けられている。
各凹部16の内側には、セパレータ13の端部13a、13b、及びこれら端部13a、13bに形成された雄ねじ部13cが、底面16aから突出して設けられている。
【0020】
本実施形態においては、
図1に示されるように、例えば2つのセパレータ部12の間の位置などの、セパレータ部12が設けられていない部分に、光透過部材17が設けられている。光透過部材17は、光透過部14と同様な、光透過性を有する部材により、中実に、例えば円柱状に形成されている。光透過部材17は、コンクリート部11の双方の主表面11f、11g間の幅と略同等の長さとなるように形成されている。光透過部材17は、全長にわたってコンクリート部11に埋設されている。
光透過部材17の端面の各々は、コンクリート部11の双方の主表面11f、11gに露出し、コンクリート部11の主表面11f、11gを部分的に形成している。
【0021】
このような光透過性コンクリート構造体10においては、例えば
図3における右側、すなわち主表面11gの側から光が照射されると、光は、主表面11gの凹部16の底面16aに露出している端面14bから、光透過部14内に入る。光透過部14内に入った光は、内部で反射を繰り返しながら光透過部14内を通過することで、コンクリート部11内を通過する。光が光透過部14の、端面14bとは反対側の端面14aに到達すると、この端面14aから、端面14aが位置する左側、すなわち主表面11f側の空間へと、光が照射される。
同様に、光は、主表面11gに露出している光透過部材17の端面から光透過部材17内に入り、光透過部材17内を通過することでコンクリート部11内を通過する。光が光透過部材17の、主表面11f側の端面に到達すると、この端面から主表面11f側の空間へと、光が照射される。
【0022】
次に、上記したような光透過性コンクリート構造体10の製造方法について説明する。
図4は、
図3の光透過性コンクリート構造体の製造方法の流れを示す図である。
図5は、
図4の光透過性コンクリート構造体の製造方法における型枠組み立て工程で、型枠を組み立てた状態を示す断面図である。
図6は、
図4の光透過性コンクリート構造体の製造方法におけるセメント系固化材の打設工程で、セメント系固化材を型枠に打設した状態を示す断面図である。
図3に示されるように、光透過性コンクリート構造体10の製造方法は、セパレータ部作成工程S1と、型枠組み立て工程S2と、セメント系固化材の打設工程S3と、脱型工程S4と、を備えている。
セパレータ部作成工程S1では、例えば建築現場で、光透過部14の内部にセパレータ13を挿入し、セパレータ13に光透過部14を取り付けて、セパレータ部12を作成する。
【0023】
型枠組み立て工程S2では、
図5に示されるように、光透過性コンクリート構造体10を形成するための型枠20を組み立てる。型枠20は、一対の型枠板21A、21Bを備えている。一対の型枠板21A、21Bは、光透過性コンクリート構造体10のコンクリート部11の厚みに合わせた所定の間隔を空けて対向するように配置される。セパレータ13は、一対の型枠板21A、21Bの間隔を、コンクリート部11の厚みに合わせた所定の間隔に規制する。
セパレータ13の両端部13a、13bには、それぞれ、型枠位置決め部材23を取り付ける。型枠位置決め部材23は、基端部23aから先端部23bに向かって外径寸法が漸次小さくなる円錐台形状に形成されている。型枠位置決め部材23の先端部23bには、セパレータ13の雄ねじ部13cに噛み合う雌ねじ穴23hが形成されている。セパレータ13の両端部13a、13bの雄ねじ部13cを、型枠位置決め部材23の雌ねじ穴23hに、先端部23bが光透過部14の端面14a、14bと当接する位置までねじ込むことで、型枠位置決め部材23がセパレータ13に装着される。
一対の型枠板21A、21Bは、セパレータ13の両端に装着された型枠位置決め部材23の基端部23aに当接するように配置される。型枠位置決め部材23の基端部23aには、基端部23aから突出するように、雄ねじが設けられたねじ軸23sが接合されている。一対の型枠板21A、21Bを設置する際に、ねじ軸23sは、一対の型枠板21A、21Bに形成された貫通孔21hに挿入される。一対の型枠板21A、21Bの外側にそれぞれ突出したねじ軸23sに、ナット24を締結することで、一対の型枠板21A、21Bは、所定の間隔を空けて対向配置される。
次に、一対の型枠板21A、21Bの間に、光透過部材17を、光透過部材17の両端面がこれら一対の型枠板21A、21Bの各々の内側の表面に当接するように固定する。
【0024】
セメント系固化材の打設工程S3では、
図6に示されるように、上記のようにして組み立てられた型枠20の一対の型枠板21A、21Bの間に、コンクリート部11を形成するためのセメント系固化材Cを打設する。所定の養生期間を経て、セメント系固化材Cが硬化して所定の強度を発現することで、一対の型枠板21A、21Bの間にコンクリート部11が形成される。その後、脱型工程S4に移行する。
脱型工程S4では、型枠20を撤去する。これには、一対の型枠板21A、21Bの外側に設けられたナット24を、ねじ軸23sから取り外す。その後、一対の型枠板21A、21Bを、形成されたコンクリート部11から取り外す。続いて、セパレータ13の両端部13a、13bに装着された型枠位置決め部材23を取り外す。これにより、コンクリート部11には、上記の凹部16が形成される。凹部16の内部には、光透過部14の端面14a、14bが露出している。また、コンクリート部11の主表面11f、11gには、光透過部材17の端面が露出している。
このようにして、壁2を構成する光透過性コンクリート構造体10が形成される。
【0025】
次に、上記の光透過性コンクリート構造体10の効果について説明する。
上述したような光透過性コンクリート構造体10は、光透過性を有する光透過性コンクリート構造体10であって、コンクリート部11と、当該コンクリート部11の内部に配置された、光透過部14及びセパレータ13を備え、光透過部14は、透光性を有する材料により、セパレータ13の表面13f上に、セパレータ13の両端部13a、13b間で連続するように形成され、光透過部14の端面14a、14bは、セパレータ13の両端部13a、13bにおいて、コンクリート部11の表面(凹部16の底面16a)から露出している。
このような構成によれば、透光性を有する材料により形成された光透過部14がコンクリート部11の内部に配置されている。光透過部14の端面14a、14bは、セパレータ13の両端部13a、13bにおいて、コンクリート部11の表面(凹部16の底面16a)から露出しているため、光透過部14によってコンクリート部11に光を透過させることができる。これにより、採光性が確保される。
このような光透過部14は、セパレータ13の表面13f上に、セパレータ13の両端部13a、13b間で連続するように形成されている。すなわち、セパレータ13が設けられる部分においても、このセパレータ13の表面13f上に設けられた光透過部14により、光を透過させることができる。このように、セパレータ13が設けられる部分にも光透過部14を設けることができるため、透光性を有する部材の配置自由度を高めることができる。
【0026】
コンクリート部11内に光を透過させるために、中実で柱状の光透過部材17のみを用いる従来の構成においては、セパレータ13が設けられる位置に光透過部材17を配置することができない。このため、セパレータ13が設けられる部分については光が透過せず、コンクリートを透過した光の全体の形状が、人間の美観にそぐわない、意匠性の低いものとなり得る。
これに対し、本実施形態においては、上記のように、セパレータ13の表面13f上に、セパレータ13の両端部13a、13b間で連続するように光透過部14が形成されている。これによって、セパレータ13が設けられる部分においても光を透過させることができる。このため、上記のように透光性を有する部材の配置自由度が高まり、意匠性を容易に向上させることができる。
【0027】
特に本実施形態においては、セパレータ13が設けられる部分においても光を透過させるために、セパレータ13を特殊な形状なものとしておらず、セパレータ13として、通常市販されているものを使用することができる。
このため、セパレータ13を容易に調達することができる。
また、一対の型枠板21A、21Bの間にセメント系固化材Cを打設する際に、セメント系固化材Cにより、一対の型枠板21A、21Bに側圧が作用する。セパレータ13には、この側圧に対抗可能な十分な耐力が求められる。ここで、セパレータ13を特殊な形状とした場合においては、当該形状のセパレータが十分な耐力を有しているのか検証する必要がある。しかし、本実施形態においては、セパレータ13として、通常市販されているものを使用することができるため、このような耐力の検証が不要であり、設計が容易となる。
【0028】
また、光透過部14の端面14a、14bは、コンクリート部11の表面11f、11gに形成された凹部16に露出している。
このような構成は、例えば、セパレータ13を使用してコンクリート部11を形成する通常の手順により形成され得る。すなわち、セパレータ13の両端部13a、13bに、光透過性コンクリート構造体10の厚さ方向における型枠20の位置を固定するための型枠位置決め部材23を取り付ける。型枠位置決め部材23に型枠20を取り付け、型枠20間にコンクリートを打設する。セメント系固化材Cを養生させた後に、型枠位置決め部材23を取り外すと、コンクリート部11の互いに反対側を向く表面11f、11gの各々に凹部16が形成され、光透過部14の端面14a、14bはこの凹部16に露出することになる。
このようにして、光透過性コンクリート構造体10を容易に製造することができる。
【0029】
特に本実施形態においては、凹部16は、外方に向けて拡径するように形成されている。
このような構成によれば、光透過部14の端面14a、14bが露出する凹部16は、外方に向けて拡径するように形成されているため、光透過部14の端面14a、14bが主表面11f、11gから内側に凹んだ凹部16の中に露出していたとしても、凹部16を構成する壁面が、光透過部14を透過しようとする光の進行を妨げにくい。
【0030】
また、光透過部14は、セパレータ13を覆うように筒状に形成され、セパレータ13の長さ方向に直交するように断面視したときの外側の輪郭形状が円形である。
このような構成によれば、例えば光透過部14を予め筒状に形成しておけば、筒状の内側にセパレータ13を挿入させることで、光透過部14を容易に設置することができる。
【0031】
また、光透過性を有する光透過性コンクリート構造体10の製造方法は、透光性を有する材料により形成された、円筒状の光透過部14の内部に、光透過部14がセパレータ13の両端部13a、13b間で連続するように、セパレータ13を挿入する工程S1と、セパレータ13の両端部13a、13bに型枠位置決め部材23を装着し、セパレータ13の両側に、型枠位置決め部材23に当接するように一対の型枠板21A、21Bを設置する工程S2と、一対の型枠板21A、21Bの間にセメント系固化材Cを打設する工程S3と、セメント系固化材Cを養生させた後、型枠20を撤去する工程S4と、を備えている。
このような光透過性を有する光透過性コンクリート構造体10の製造方法により、上記光透過性コンクリート構造体10を製造することができる。
【0032】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の光透過性コンクリート構造体は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
図7は、光透過性コンクリート構造体のセパレータ部分の、特に光透過部の変形例を示す図である。例えば
図7(a)、(b)に示されるように、光透過部14A、14Bの直径は様々な値を有するように設計されてよい。また、
図7(c)、(d)に示されるように、光透過部14C、14Dは、断面視したときに、輪郭形状が、円形が部分的に直線状に切り欠かれた形状となるように、形成されてもよい。また、
図7(e)、(f)に示されるように、光透過部14E、14Fは、セパレータ13の長さ方向に直交するように断面視したときの外側の輪郭形状が、三角形、四角形等の多角形であるように形成されていてもよい。また、
図7(g)に示されるように、光透過部14Gは、断面視したときに、多角形の角部が切り欠かれたような形状とされていてもよい。あるいは、
図7(h)に示されるように、光透過部14Hは、複数の弧を組み合わせたような形状としてもよい。
【0033】
図8に、光透過性コンクリート構造体のセパレータ部分の、特に光透過部の更に別の変形例を示す。
図8各図においては、光透過部14I、14J、14K、14Lは、光を透過する材料により形成された透過部分30と、光を遮断する材料により形成された遮断部分31を備えている。
図8各図において、遮断部分31は模様をつけて表示されている。
図8(a)に示される光透過部14Iにおいては、透過部分30は、セパレータ13の長さ方向に直交するように断面視したときの外側の輪郭形状が四角形に形成されている。透過部分30の外側は、遮断部分31により覆われている。
また、
図8(b)、(c)に示される光透過部14J、14Kにおいては、透過部分30は、セパレータ13の長さ方向に直交するように断面視したときの外側の輪郭形状が、多角形の各辺を内側に切り欠いたような形状に形成されている。透過部分30の外側は、遮断部分31により覆われている。
これら光透過部14I、14J、14Kにおいては、最も外側に位置する遮断部分31は、断面の輪郭形状が円形となるように形成されている。
また、
図8(d)に示される光透過部14Lにおいては、複数の透過部分30と、遮断部分31が、セパレータ13の周りに、交互に層を成すように形成されている。
上記のような遮断部分31は、例えば光を透過しない樹脂やゴム等により形成され得る。
このように、光透過部14I、14J、14K、14Lは、セパレータ13の長さ方向に直交するように断面視したときに、一部が光を遮断する材料によって形成されている。
このような構成によれば、光透過部14I、14J、14K、14Lを、透光性を有する材料と光を遮断する材料を組み合わせて使用し形成することにより、透光性を有する材料により形成された部分の形状を複雑にすることができる。これにより、意匠性が向上する。
【0034】
図9に、光透過性コンクリート構造体のセパレータ部分の、特に光透過部の更に別の変形例を示す。
図9(a)に示される光透過部14Mは、各々が断面半円状に形成された複数の透過部分30を備え、透過部分30の各々が、セパレータ13の円周上の互いに異なる位置に、周方向に離間して設けられている。
図9(b)に示される光透過部14Nにおいては、
図9(a)に示される構成の更に外側が、遮断部分31により覆われている。
図7~
図9を用いて説明したような、上記実施形態よりも複雑な形状の光透過部14を用いる場合においては、例えば、セパレータ13の周りを、光透過部14(あるいはこれを構成する透過部分30)を形成するための金型で囲い、金型内に樹脂等を射出し、あるいは押し出して、光透過部14を形成してもよい。
【0035】
図10に、光透過性コンクリート構造体のセパレータ部分の、特に光透過部の更に別の変形例を示す。
図10に示される光透過部14Oは、例えば光ファイバ等の、可撓性を有するひも状の部材である。光透過部14Oは、セパレータ13の周りに、螺旋状に巻き付けられている。
図10においては、1本の光透過部14Oがセパレータ13に巻き付けられているが、複数本の光透過部14Oが同一のセパレータ13に巻き付けられていてもよい。この場合においては、複数の光透過部14Oどうしが、互いに重なり合うように巻き付けられていてもよいし、互いに同じピッチの螺旋を形成するようにして、セパレータ13の長さ方向に互いに離間するように設けてもよい。
【0036】
また、上記の実施形態及び各変形例の、光透過部14がコンクリート部11に直接接する形態においては、セメント系固化材Cの打設の際にセメント系固化材Cの例えば骨材等により、光透過部14が破損する可能性がある。これを抑制するために、光透過部14の更に外側を覆う保護層を、光透過部14よりも強固な材料によって形成してもよい。
【0037】
また、
図11に示されるように、凹部16の内部に、光透過性を有した透明な、光透過部14と同様な材料からなる、凹部16に対応する形状をなすように形成された詰栓32を設けてもよい。この場合には、詰栓32は、凹部16に嵌まり込むよう、凹部16を補形する円錐台形状に形成するとよい。詰栓32の先端部32aには、セパレータ13の雄ねじ部13cに噛み合う雌ねじ穴32hを形成する。詰栓32は、この雌ねじ穴32hに雄ねじ部13cをねじ込むように螺着させることで、凹部16内に設置される。
詰栓32は光透過性を有しているため、光透過部14を介した光透過性コンクリート構造体10内の光の透過を遮らない。
また、詰栓32が、コンクリート部11の表面(凹部16の底面16a)から露出する光透過部14の端面14a、14bや、セパレータ13の両端部13a、13bを保護するため、建物1の運用に伴う光透過部14の劣化やセパレータ13の錆等を抑制可能である。
【0038】
上記実施形態においては、筒状に形成された光透過部14の内部空間に、セパレータ13を挿入させることによって、セパレータ部12を作成していた。この際に、セパレータ13と光透過部14を接着しない場合においては、上記実施形態の光透過性コンクリート構造体10を製造した後に、セパレータ13を光透過部14から抜き出して撤去し、光透過部14のみによりセパレータ部12Aを構成してもよい。
図12に、
図3に示される光透過性コンクリート構造体10から、セパレータ13を撤去した状態の光透過性コンクリート構造体10Aを示す。
図12に示されるように、光透過部14からセパレータ13を撤去した結果、光透過部14の内部空間Sは空洞となっている。
このように、光透過性を有する光透過性コンクリート構造体10Aは、互いに反対側を向く表面11f、11gの各々に凹部16が形成されたコンクリート部11と、当該コンクリート部11の内部に配置された、光透過部14を備え、光透過部14は、透光性を有する材料により筒状に形成され、光透過部14には、両端面14a、14b間を連通する内部空間Sが形成され、光透過部14の両端面14a、14bは、凹部16の底面16aの少なくとも一部を形成するように、底面16a(コンクリート部11の表面)から露出している。
このような構成によれば、透光性を有する材料により形成された光透過部14がコンクリート部11の内部に配置されている。光透過部14の端面14a、14bは、コンクリート部11に形成された凹部16の底面16aの少なくとも一部を形成するように、コンクリート部の表面(底面16a)から露出しているため、光透過部14によってコンクリート部11に光を透過させることができる。これにより、採光性が確保される。
このような構成は、
図4~6に示されるような、セパレータ13を使用してコンクリート部11を形成する通常の手順により形成され得る。すなわち、光透過部14の内部空間Sにセパレータ13を挿入し、光透過部14の端面14a、14cから突出したセパレータ13の両端部13a、13bに、光透過性コンクリート構造体10Aの厚さ方向における型枠20の位置を固定するための型枠位置決め部材23を取り付ける。型枠位置決め部材23に型枠20を取り付け、型枠20間にセメント系固化材Cを打設する。セメント系固化材Cを養生させた後に、型枠位置決め部材23を取り外し、更にセパレータ13を光透過部14から抜き出して撤去する。すると、コンクリート部11の互いに反対側を向く表面11f、11gの各々に凹部16が形成され、光透過部14の端面14a、14bはこの凹部16に露出することになる。
このような光透過部14は、光透過性コンクリート構造体10Aの施工時にセパレータ13が設けられる部分に配置されている。すなわち、施工時にセパレータ13が設けられる部分においても、上記のような光透過部14により、光を透過させることができる。このように、セパレータ13が設けられる部分にも光透過部14を設けることができるため、透光性を有する部材の配置自由度を高めることができる。
また、特に本変形例のような構成においては、光透過性コンクリート構造体10Aの施工においてセパレータ13を撤去するため、セパレータ13を再利用することができる。
【0039】
また、
図12に示される光透過性を有する光透過性コンクリート構造体10Aの製造方法は、透光性を有する材料により形成された、円筒状の光透過部14の内部に、光透過部14がセパレータ13の両端部13a、13b間で連続するように、セパレータ13を挿入する工程S1と、セパレータ13の両端部13a、13bに型枠位置決め部材23を装着し、セパレータ13の両側に、型枠位置決め部材23に当接するように一対の型枠板21A、21Bを設置する工程S2と、一対の型枠板21A、21Bの間にセメント系固化材Cを打設する工程S3と、セメント系固化材Cを養生させた後、型枠20を撤去する工程S4と、セパレータ13を光透過部14から抜き出して撤去する工程と、を備えている。
このような光透過性を有する光透過性コンクリート構造体10Aの製造方法により、上記光透過性コンクリート構造体10Aを製造することができる。
【0040】
図12に示されるような光透過性コンクリート構造体10Aの構成においては、施工後にセパレータ13を撤去するため、コンクリート部11の主表面11f側の空間と主表面11g側の空間が、光透過部14の内部空間Sを介して互いに連通する。
したがって、セパレータ13を撤去した後に、光透過部14の内部空間Sの形状に対応するように、円柱状に形成された補充部材を、内部空間S内に挿入し、内部空間Sを閉塞するのが望ましい。この補充部材は、光を透過する材料か、光を透過せず遮断する材料の、いずれによって形成されてもよい。
すなわち、内部空間Sに、光を透過する材料あるいは光を遮断する材料のいずれかにより形成された補充部材が、内部空間Sを閉塞するように設けられている。
このような形態によれば、セパレータ13を撤去したとしても、コンクリート部11の主表面11f側の空間と主表面11g側の空間との間の空気の連通を抑制可能である。
補充部材として、特に光を透過する材料を用いた場合には、採光性をより向上させることができる。
あるいは、補充部材の挿入に代えて、あるいは補充部材の挿入とともに、
図11を用いて説明したような詰栓32を凹部16に設けるようにしてもよい。
【0041】
上記したような光透過性コンクリート構造体10、10Aは、施工現場で施工して製造するものに限らず、予め工場などで所定形状に形成する、いわゆるプレキャストコンクリート造とすることもできる。
更に、上記光透過性コンクリート構造体10、10Aは、壁2に限らず、柱3や梁4、その他の各種の部材として使用することもできる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10、10A 光透過性コンクリート構造体 16 凹部
11 コンクリート部 16a 底面(コンクリート部の表面)
11f、11g 主表面(コンクリート部の表面)
12、12A セパレータ部 17 透過部材
13 セパレータ 30 透過部分
13a、13b 端部 31 遮断部分(光を遮断する材料)
13f 表面 32 詰栓
14、14A~14O 光透過部 S 内部空間
14a、14b 端面