(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117571
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/08 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
B66B7/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014137
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】土居ノ内 遼
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BB02
3F305BC11
3F305BC18
(57)【要約】
【課題】ロープの長さを効率良く調整することができるエレベータ装置を提供する。
【解決手段】本発明によるエレベータ装置は、乗りかご2と、釣合いおもり3と、乗りかご2と釣合いおもり3とを接続するロープ1と、乗りかご2と釣合いおもり3の両方または一方である昇降体に設置されているロープ調整装置20を備える。ロープ調整装置20は、上部が昇降体2、3に固定されており、下部がロープ1に組み合わされており、上下方向に伸縮可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、
釣合いおもりと、
前記乗りかごと前記釣合いおもりとを接続するロープと、
前記乗りかごと前記釣合いおもりの両方または一方である昇降体に設置されているロープ調整装置と、
を備え、
前記ロープ調整装置は、上部が前記昇降体に固定されており、下部が前記ロープに組み合わされており、上下方向に伸縮可能である、
ことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記ロープ調整装置は、
前記昇降体に固定されている第1の支持部材と、
前記第1の支持部材に固定されて前記第1の支持部材の下方に設置されている可変装置と、
前記可変装置に固定されて前記可変装置の下方に設置されている第2の支持部材と、
を備え、
前記可変装置は、上下方向に伸縮可能であり、
前記第2の支持部材は、前記ロープに組み合わされており、
前記可変装置は、上下方向に伸縮することで、前記第2の支持部材と前記第1の支持部材との距離を変化させる、
請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記昇降体は、前記ロープが掛けられたそらせ車を備え、
前記第2の支持部材には、前記そらせ車の軸が固定されており、
前記可変装置は、上下方向に伸縮することで、前記そらせ車と前記第1の支持部材との距離を変化させる、
請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記第2の支持部材には、前記ロープの端部が固定されており、
前記可変装置は、上下方向に伸縮することで、前記ロープの端部と前記第1の支持部材との距離を変化させる、
請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記ロープを駆動して前記乗りかごと前記釣合いおもりを昇降させる巻上機と、
前記乗りかごが沿って昇降するためのかご側ガイドレールと、
前記釣合いおもりが沿って昇降するためのおもり側ガイドレールと、
を備える、
請求項3または4に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
前記可変装置は、ジャッキで構成されている、
請求項2から4のいずれか1項に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
前記可変装置は、ジャッキで構成されている、
請求項5に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置では、乗りかごと釣合いおもりがロープにより互いに連結されており、巻上機によりロープが駆動されると、乗りかごと釣合いおもりが昇降路の内部を昇降する。ロープには、エレベータ装置の使用により経年的に伸びが発生する。このため、ロープの長さを調整する必要がある。
【0003】
エレベータ装置においてロープの長さを調整する従来の装置の例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたエレベータのロープ長さ調整装置は、複数のロープの少なくともいずれか一方のそれぞれの端部に配設されているロッドと、ロッドを内部に挿通した状態で配設されているばねと、ばねの自由端部に配設されているばね固定ナットと、ロッドが挿通する支持プレートと、支持プレートと対向して配設され、ロッドが挿通するジャッキプレートと、ジャッキプレートに形成された雌ねじ部材(ナット)と、雌ねじ部材と螺合してジャッキプレートを貫通し、支持プレートに一端部が当接しているジャッキボルトと、ロッドのジャッキプレートの下方への移動を規制するロッド規制ナットを備える。このロープ長さ調整装置では、ジャッキボルトが雌ねじ部材に螺合していくと、ジャッキプレートが支持プレートと近接する方向または離接する方向に移動して、ジャッキプレートと支持プレートとの距離を調節することで、複数のロープの長さをまとめて調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたロープ長さ調整装置では、作業者が、ロッド規制ナットを螺合させ、ジャッキボルトを回転させて締め込み、ばね固定ナットを締め込むなどの作業を実施することで、ロープの長さを調整する。このように、従来のエレベータ装置では、ロープの長さを調整するには作業者の実施する作業が多く、より効率良くロープの長さを調整できることが望まれている。また、ロープの本数が多いエレベータ装置では、ロッド規制ナットやばね固定ナットなどの、ロープ長さ調整装置の部品の数が多くなり、ロープの長さを調整する作業効率が低下することが懸念される。
【0006】
本発明の目的は、ロープの長さを効率良く調整することができるエレベータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるエレベータ装置は、乗りかごと、釣合いおもりと、前記乗りかごと前記釣合いおもりとを接続するロープと、前記乗りかごと前記釣合いおもりの両方または一方である昇降体に設置されているロープ調整装置とを備える。前記ロープ調整装置は、上部が前記昇降体に固定されており、下部が前記ロープに組み合わされており、上下方向に伸縮可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ロープの長さを効率良く調整することができるエレベータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例によるエレベータ装置の構成を示す概略図。
【
図2A】ローピング方式が2:1ローピングであるエレベータ装置に設置されたロープ調整装置の正面図。
【
図2B】ローピング方式が2:1ローピングであるエレベータ装置に設置されたロープ調整装置の側面図。
【
図3A】ローピング方式が1:1ローピングであるエレベータ装置に設置されたロープ調整装置の正面図。
【
図3B】ローピング方式が1:1ローピングであるエレベータ装置に設置されたロープ調整装置の側面図。
【
図4A】ロープの長さを調整するときのロープ調整装置の例を示す図で、ロープの長さを調整する前のロープ調整装置の例を示す図。
【
図4B】ロープの長さを調整するときのロープ調整装置の例を示す図で、ロープの長さを調整した後のロープ調整装置の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるエレベータ装置は、上下方向に伸縮可能なロープ調整装置を備え、ロープ調整装置が上下方向に伸縮することでロープに発生した伸縮を調整する。本発明によるエレベータ装置は、ロープ調整装置により、ロープの本数によらずにロープの長さを効率良くかつ容易に調整することができる。
【0011】
以下、本発明の実施例によるエレベータ装置を、図面を用いて説明する。以下では、エレベータ装置のローピング方式が2:1ローピングである場合について主に説明するが、本発明によるエレベータ装置は、ローピング方式が1:1ローピングなどの2:1ローピング以外の方式であってもよい。
【実施例0012】
図1は、本発明の実施例によるエレベータ装置の構成を示す概略図である。
図1には、一例として、ローピング方式が2:1ローピングであるエレベータ装置を示している。
【0013】
本実施例によるエレベータ装置は、乗りかご2と、釣合いおもり3と、ロープ1と、巻上機9と、そらせ車10と、ロープ調整装置20を備える。
【0014】
乗りかご2は、昇降路14の内部を昇降する昇降体であり、ロープ1が掛けられたかご側そらせ車7を上部に備える。
【0015】
釣合いおもり3は、昇降路14の内部を昇降する昇降体であり、ロープ1が掛けられたおもり側そらせ車8を上部に備える。
【0016】
ロープ1は、かご側そらせ車7、巻上機9、そらせ車10、及びおもり側そらせ車8を介して、乗りかご2と釣合いおもり3とを互いに接続する。
【0017】
巻上機9は、ロープ1を駆動し、乗りかご2と釣合いおもり3を昇降させる。巻上機9によりロープ1が駆動されると、乗りかご2は、かご側ガイドレール11に沿って、釣合いおもり3は、おもり側ガイドレール12に沿って、それぞれ昇降路14の内部を昇降する。
【0018】
そらせ車10は、ロープ1が掛けられている。そらせ車10は、巻上機9とともに機械室13に設置されている。
【0019】
ロープ調整装置20は、乗りかご2と釣合いおもり3に設置されている。
図1に示すエレベータ装置では、ロープ調整装置20は、かご側そらせ車7とおもり側そらせ車8に設置されている。ロープ調整装置20は、ロープ1に発生した伸縮を調整して、ロープ1の張力を一定に保つための装置である。ロープ調整装置20は、作業者に操作されて、ロープ1が伸びた場合にはロープ1の伸びを調整し、ロープ1が縮んだ場合にはロープ1の縮みを調整して、ロープ1の張力を一定に保つことができる。
【0020】
ロープ調整装置20は、乗りかご2と釣合いおもり3(
図1では、かご側そらせ車7とおもり側そらせ車8)の両方ではなく、乗りかご2と釣合いおもり3の一方だけに設置することもできる。
【0021】
なお、
図1には、かご側そらせ車7とおもり側そらせ車8がそれぞれ乗りかご2と釣合いおもり3の上部に設置されている構成を示しているが、かご側そらせ車7とおもり側そらせ車8は、それぞれ乗りかご2と釣合いおもり3の下部に設置されてもよい。かご側そらせ車7とおもり側そらせ車8がそれぞれ乗りかご2と釣合いおもり3の下部に設置されていても、ロープ調整装置20は、乗りかご2と釣合いおもり3(
図1では、かご側そらせ車7とおもり側そらせ車8)の両方または一方に設置することができる。
【0022】
図2Aと
図2Bは、ロープ調整装置20の構成を示す図である。
図2Aは、ロープ調整装置20の正面図である。
図2Bは、ロープ調整装置20の側面図である。
図2Aと
図2Bには、一例として、乗りかご2のかご側そらせ車7に設置されているロープ調整装置20を示している。ロープ調整装置20は、上述したように、釣合いおもり3のおもり側そらせ車8に設置することもできる。
【0023】
以下では、ロープ調整装置20が乗りかご2のかご側そらせ車7に設置されている構成について説明する。以下の説明において、乗りかご2を釣合いおもり3と読み替え、かご側そらせ車7をおもり側そらせ車8と読み替えると、ロープ調整装置20が釣合いおもり3のおもり側そらせ車8に設置されている構成についての説明になる。
【0024】
ロープ調整装置20は、上部に位置する第1の支持部材5と、可変装置4と、下部に位置する第2の支持部材6を備え、上下方向に伸縮可能である。
【0025】
第1の支持部材5は、鋼材で構成されており、乗りかご2に固定されていて、可変装置4と第2の支持部材6とかご側そらせ車7を支持する。
【0026】
可変装置4は、ロープ1に発生した伸縮を調整するための装置であり、第1の支持部材5の下方に設置されていて、上下方向に伸縮可能である。可変装置4は、上部部材4aと、下部部材4bと、伸縮部材4cを備える。上部部材4aは、可変装置4の上部に位置し、第1の支持部材5に固定されている。下部部材4bは、可変装置4の下部に位置し、第2の支持部材6に固定されている。伸縮部材4cは、上部部材4aと下部部材4bを接続し、作業者に操作されて上下方向に伸縮する。
【0027】
第2の支持部材6は、鋼材で構成されており、可変装置4に支持されて可変装置4の下方に設置されている。第2の支持部材6は、乗りかご2のかご側そらせ車7の軸7aが固定されている。すなわち、第2の支持部材6は、かご側そらせ車7を介してロープ1に組み合わされている(第2の支持部材6とロープ1は、互いに連係している)。
【0028】
可変装置4は、上部部材4aが第1の支持部材5を介して乗りかご2に固定されており、下部部材4bが第2の支持部材6を介してかご側そらせ車7に固定されている。すなわち、可変装置4は、上部が第1の支持部材5を介して乗りかご2に固定されており、下部が第2の支持部材6を介してロープ1に組み合わされている。
【0029】
可変装置4の下部部材4bは、伸縮部材4cが上下方向に伸縮することで、上部部材4aに対して上下方向に移動可能である。可変装置4は、伸縮部材4cが上下方向に伸縮して下部部材4bが上下方向に移動することで、第2の支持部材6を第1の支持部材5と乗りかご2に対して上下方向に移動させ、かご側そらせ車7を第1の支持部材5と乗りかご2に対して上下方向に移動させる。すなわち、可変装置4は、伸縮部材4cが上下方向に伸縮することで、第2の支持部材6と第1の支持部材5との上下方向の距離を変化させ、かご側そらせ車7と第1の支持部材5との上下方向の距離を変化させて、かご側そらせ車7と乗りかご2との上下方向の距離を変化させる。
【0030】
可変装置4は、作業者の操作によって上下方向に伸縮できる伸縮部材4cを備えれば、任意の構成を備えることができる。例えば、可変装置4は、ボルトの回転や油圧の力を用いて上下方向に伸縮するジャッキで構成することができる。ボルトの回転を用いて上下方向に伸縮するジャッキを可変装置4に用いると、ジャッキの高さを調整するボルトを回すだけで、可変装置4を上下方向に伸縮させて、第2の支持部材6を第1の支持部材5に対して上下方向に移動させることが容易にできる。
【0031】
ロープ調整装置20は、可変装置4の伸縮部材4cが上下方向に伸縮することで、第2の支持部材6を第1の支持部材5に対して上下方向に移動させ(すなわち、第2の支持部材6と第1の支持部材5の上下方向の距離を変え)、かご側そらせ車7を乗りかご2に対して上下方向に移動させる。ロープ調整装置20は、ロープ1が掛けられているかご側そらせ車7を乗りかご2に対して上下方向に移動させることで、ロープ1が通る(存在する)範囲を伸ばしたり縮めたりして変化させて、ロープ1に発生した伸縮を調整してロープ1の長さを調整し、ロープ1の張力を一定に保つ。
【0032】
例えば、ロープ1が伸びた場合には、作業者は、可変装置4の伸縮部材4cを伸ばす。すると、ロープ調整装置20は、作業者の操作によって可変装置4の伸縮部材4cが下方向に伸び、第2の支持部材6を第1の支持部材5に対して下方向に移動させ、かご側そらせ車7を乗りかご2に対して下方向に移動させることで、ロープ1が伸びた分だけロープ1が通る範囲を長くする。ロープ調整装置20は、このようにしてロープ1が通る範囲を長くすることで、ロープ1の伸びを調整し、ロープ1の張力をロープ1が伸びる前と同じ張力に保つ。
【0033】
また、例えば気温の変化によりロープ1が縮んだ場合には、作業者は、可変装置4の伸縮部材4cを縮める。すると、ロープ調整装置20は、作業者の操作によって可変装置4の伸縮部材4cが上方向に縮み、第2の支持部材6を第1の支持部材5に対して上方向に移動させ、かご側そらせ車7を乗りかご2に対して上方向に移動させることで、ロープ1が縮んだ分だけロープ1が通る範囲を短くする。ロープ調整装置20は、このようにしてロープ1が通る範囲を短くすることで、ロープ1の縮みを調整し、ロープ1の張力をロープ1が縮む前と同じ張力に保つ。
【0034】
本実施例によるエレベータ装置では、ロープ調整装置20の可変装置4が上下方向に伸縮して、第2の支持部材6が第1の支持部材5に対して上下方向に移動する(すなわち、第2の支持部材6と第1の支持部材5の上下方向の距離が変わる)ことで、ロープ1の伸縮を調整する。このため、本実施例によるエレベータ装置は、簡易な構成で、ロープ1の本数によらずに、ロープ1の長さを効率良くかつ容易に調整することができる。本実施例によるエレベータ装置では、ロープ1を切り詰めたり締め上げたりすることなく、ロープ1の長さを調整することができる。
【0035】
ロープ調整装置20は、ローピング方式が2:1ローピングの場合には、第2の支持部材6を乗りかご2に対して上下方向に移動させるだけで、ロープ1が掛けられているかご側そらせ車7を乗りかご2に対して上下方向に移動させて、ロープ1に発生した伸縮を調整してロープ1の長さを調整することができる。ロープ調整装置20は、ロープ1の端部でではなく、ロープ1の中間部(すなわち、ロープ1が掛けられているかご側そらせ車7)でロープ1を調整する。
【0036】
ここで、本実施例によるエレベータ装置が1:1ローピングのローピング方式を備える場合の、ロープ調整装置20の構成について説明する。ローピング方式が1:1ローピングでのロープ調整装置20は、第2の支持部材6にロープ1の端部が固定されており、この点が2:1ローピングでのロープ調整装置20と異なる。以下では、主に2:1ローピングでのロープ調整装置20と異なる点について、1:1ローピングでのロープ調整装置20を説明する。
【0037】
図3Aと
図3Bは、ローピング方式が1:1ローピングであるエレベータ装置に設置されたロープ調整装置20の構成を示す図である。
図3Aは、ロープ調整装置20の正面図である。
図3Bは、ロープ調整装置20の側面図である。
【0038】
ロープ調整装置20は、第1の支持部材5と、可変装置4と、第2の支持部材6を備える。
【0039】
第1の支持部材5は、乗りかご2に固定されていて、可変装置4と第2の支持部材6を支持する。
【0040】
可変装置4は、上部部材4aと、下部部材4bと、伸縮部材4cを備える。上部部材4aは、第1の支持部材5に固定されている。下部部材4bは、第2の支持部材6に固定されている。伸縮部材4cは、上部部材4aと下部部材4bを接続し、作業者に操作されて上下方向に伸縮する。
【0041】
第2の支持部材6は、可変装置4に支持されて可変装置4の下方に設置されており、ロープ1の端部が固定されている。すなわち、第2の支持部材6は、ロープ1に組み合わされている(第2の支持部材6とロープ1は、互いに連係している)。
【0042】
可変装置4は、上部部材4aが第1の支持部材5を介して乗りかご2に固定されており、下部部材4bが第2の支持部材6を介してロープ1の端部に固定されている。すなわち、可変装置4は、上部が第1の支持部材5を介して乗りかご2に固定されており、下部が第2の支持部材6を介してロープ1に組み合わされている。
【0043】
可変装置4の下部部材4bは、伸縮部材4cが上下方向に伸縮することで、上部部材4aに対して上下方向に移動可能である。可変装置4は、伸縮部材4cが上下方向に伸縮して下部部材4bが上下方向に移動することで、第2の支持部材6を第1の支持部材5と乗りかご2に対して上下方向に移動させ、ロープ1の端部を第1の支持部材5と乗りかご2に対して上下方向に移動させる。すなわち、可変装置4は、伸縮部材4cが上下方向に伸縮することで、第2の支持部材6と第1の支持部材5との上下方向の距離を変化させ、ロープ1の端部と第1の支持部材5との上下方向の距離を変化させて、ロープ1の端部と乗りかご2との上下方向の距離を変化させる。
【0044】
ロープ調整装置20は、可変装置4の伸縮部材4cが上下方向に伸縮することで、第2の支持部材6を第1の支持部材5に対して上下方向に移動させ(すなわち、第2の支持部材6と第1の支持部材5の上下方向の距離を変え)、第2の支持部材6を乗りかご2に対して上下方向に移動させる。ロープ調整装置20は、ロープ1が固定されている第2の支持部材6を乗りかご2に対して上下方向に移動させることで、ロープ1が通る(存在する)範囲を伸ばしたり縮めたりして変化させて、ロープ1に発生した伸縮を調整してロープ1の長さを調整し、ロープ1の張力を一定に保つ。
【0045】
ロープ調整装置20は、ローピング方式が1:1ローピングの場合には、ロープ1が固定されている第2の支持部材6を乗りかご2に対して上下方向に移動させるだけで、ロープ1に発生した伸縮を調整してロープ1の長さを調整することができる。
【0046】
図4Aと
図4Bは、ロープ1の長さを調整するときのロープ調整装置20の例を示す図である。
図4Aは、ロープ1の長さを調整する前のロープ調整装置20の例を示している。
図4Bは、ロープ1の長さを調整した後のロープ調整装置20の例を示している。
図4Aと
図4Bには、一例として、ローピング方式が2:1ローピングの場合のロープ調整装置20の構成を示している。
【0047】
図4Aと
図4Bにおいて、第2の支持部材6に軸7aが固定されているかご側そらせ車7の直径をDとする。
図4A(ロープ1の長さを調整する前)において、第1の支持部材5とかご側そらせ車7の軸7aの中心との上下方向の距離をXとする。
【0048】
図4Aに示したロープ調整装置20において、作業者の操作によって可変装置4が下方向にD/2だけ伸び、第2の支持部材6が第1の支持部材5に対してD/2だけ下方向に移動すると、かご側そらせ車7が乗りかご2に対してD/2だけ下方向に移動する。
【0049】
図4Bに示したロープ調整装置20では、
図4Aに示したロープ調整装置20と比べて、第2の支持部材6が第1の支持部材5に対してD/2だけ下方向に移動しており、かご側そらせ車7が乗りかご2に対してD/2だけ下方向に移動している。ローピング方式が2:1ローピングであるので、第2の支持部材6とかご側そらせ車7のこの移動により、ロープ1は、長さD(=D/2+D/2)だけ通る範囲が長くなる。したがって、ローピング方式が2:1ローピングの場合には、第2の支持部材6とかご側そらせ車7の移動距離(D/2)の2倍の長さDだけ、ロープ1の長さの調整代を大きく確保することができる。
【0050】
ロープ調整装置20が乗りかご2と釣合いおもり3の両方に設置されていると、ローピング方式が2:1ローピングの場合には、乗りかご2と釣合いおもり3に設置されたロープ調整装置20の第2の支持部材6を移動させることで、かご側そらせ車7の移動距離の2倍の長さとおもり側そらせ車8の移動距離の2倍の長さの合計の長さだけ、ロープ1の長さの調整代を確保することができる。
【0051】
本実施例によるエレベータ装置は、ロープ調整装置20を備えることにより、ロープ1の長さの調整代が大きく、ロープ1の長さの調整可能範囲が大きいという利点がある。
【0052】
本実施例によるエレベータ装置が備えるロープ調整装置20は、ローピング方式が2:1ローピングや1:1ローピングのエレベータ装置に限らず、任意のローピング方式のエレベータ装置に設置することができる。かご側そらせ車7とおもり側そらせ車8を備えるローピング方式のエレベータ装置では、かご側そらせ車7とおもり側そらせ車8の数が多いほど、ロープ1の長さの調整代を大きく確保することができる。
【0053】
ロープ調整装置20は、第1の支持部材5の下方に可変装置4を備え、可変装置4の下方に第2の支持部材6を備える。このため、例えばローピング方式が2:1ローピングのエレベータ装置では、可変装置4に何らかの異常が発生しても、第2の支持部材6に軸が固定されているかご側そらせ車7とおもり側そらせ車8を保護することができる。例えば、第2の支持部材6を第1の支持部材5に対して上方向に移動させている(すなわち、第2の支持部材6を第1の支持部材5に近づけている)途中で、何らかの原因で可変装置4が破損したとしても、第1の支持部材5に第2の支持部材6が衝突して引っかかるため、かご側そらせ車7またはおもり側そらせ車8がロープ調整装置20から脱落するリスクは小さい。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
1…ロープ、2…乗りかご、3…釣合いおもり、4…可変装置、4a…上部部材、4b…下部部材、4c…伸縮部材、5…第1の支持部材、6…第2の支持部材、7…かご側そらせ車、7a…軸、8…おもり側そらせ車、9…巻上機、10…そらせ車、11…かご側ガイドレール、12…おもり側ガイドレール、13…機械室、14…昇降路、20…ロープ調整装置。