(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117592
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】誤り訂正システム、誤り訂正方法、および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
H04L1/00 B
H04L1/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014170
(22)【出願日】2021-02-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 靖行
(72)【発明者】
【氏名】池田 将之
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 公昭
【テーマコード(参考)】
5K014
【Fターム(参考)】
5K014BA05
5K014EA08
5K014FA11
5K014GA02
(57)【要約】
【課題】回路規模を抑えつつ伝送状況に応じて最適な誤り訂正特性が得られる誤り訂正システムを提供する。
【解決手段】本発明の誤り訂正システムは、クライアント側装置(200)から供給されたデータを送信装置から受信装置へ伝送するライン側通信システム(100)に使用する誤り訂正システムであり、ライン側通信システム(100)の通信状況に基づいて、クライアント側装置(200)からライン側通信システム(100)へのデータのフローを制御するフロー制御回路(300)と、フロー制御回路(300)におけるフローの状態に基づいて、変調方式及びボーレートは維持した状態で、誤り訂正の符号化率を変更する誤り訂正符号化回路(10)と、誤り訂正符号化回路(10)で設定された符号化率に基づいて誤り訂正を行う誤り訂正回路(40)を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント側装置から供給されたデータを送信装置から伝送路を介して受信装置へ伝送するライン側通信システムに使用する誤り訂正システムであって、
前記送信装置に設置され、前記ライン側通信システムの通信状況に基づいて、前記クライアント側装置から前記ライン側通信システムへのデータのフローを制御するフロー制御回路と、
前記送信装置に設置され、前記フロー制御回路から供給されたデータの誤り訂正符号化を行い、前記フローの状態に基づいて、変調方式及びボーレートは維持した状態で、誤り訂正の符号化率を変更する誤り訂正符号化回路と、
前記受信装置に設置され、前記誤り訂正符号化回路で設定された前記符号化率に基づいて誤り訂正を行う誤り訂正回路と
を有する誤り訂正システム。
【請求項2】
前記フロー制御回路は、
前記誤り訂正符号化回路に前記フローの状態を示す信号を送信するように構成され、
前記フローの状態を示す信号は、
前記フローの制御状態を示す信号、前記通信状況を示す信号、および前記データの送信レートの制御状況を示す信号の何れかであること
を特徴とする請求項1記載の誤り訂正システム。
【請求項3】
前記フローの制御状態を示す信号は、
前記フロー制御回路内のバッファのオーバーフローを示す信号、前記フロー制御回路から前記ライン側通信システムへのデータの供給停止の頻度を示す信号、及び前記フロー制御回路から前記クライアント側装置に対する再送要求の頻度を示す信号のうち少なくとも一つを含むこと
を特徴とする請求項2記載の誤り訂正システム。
【請求項4】
前記誤り訂正符号化回路で設定された前記符号化率の情報は、前記送信装置から前記受信装置に送信されること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の誤り訂正システム。
【請求項5】
前記誤り訂正符号化回路は、
符号化率が可変の第1の符号化部と、符号化率が固定の第2の符号化部とを備え、
前記第1の符号化部は、符号化後の総ビット数を一定に保ったまま符号化前の情報ビット数を可変にすることで前記符号化率を可変にするように構成され、
前記第2の符号化部は、前記第1の符号化部における符号化後の総ビットに対して常に所定の符号化率で符号化するように構成されること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の誤り訂正システム。
【請求項6】
前記誤り訂正回路は、
前記第2の符号化部によって符号化されたデータに対して誤り訂正処理を行う第1の誤り訂正部と、前記第1の符号化部によって符号化されたデータに対して誤り訂正処理を行う第2の誤り訂正部とを含み、
前記第1の誤り訂正部は、判定前の複素平面上の座標データを用いて誤り訂正処理を実行するように構成され、前記第2の誤り訂正部は、判定後のデジタルデータを用いて誤り訂正処理を実行するように構成されること
を特徴とする請求項5記載の誤り訂正システム。
【請求項7】
クライアント側装置から供給されたデータを送信装置から伝送路を介して受信装置へ伝送するライン側通信システムに使用する誤り訂正システムにおいて実行される誤り訂正方法であって、
前記送信装置に設置されたフロー制御回路が、前記ライン側通信システムの通信状況に基づいて、前記クライアント側装置から前記ライン側通信システムへのデータのフローを制御するステップと、
前記送信装置に設置された誤り訂正符号化回路が、前記フロー制御回路から供給されたデータの誤り訂正符号化を行い、前記フローの状態に基づいて、変調方式及びボーレートは維持した状態で、誤り訂正の符号化率を変更するステップと、
前記受信装置に設置された誤り訂正回路が、前記誤り訂正符号化回路で設定された前記符号化率に基づいて誤り訂正を行うステップと
を有する誤り訂正方法。
【請求項8】
請求項1~6の何れか1項に記載の誤り訂正システムを備えた通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路規模を抑えつつ伝送特性を向上することができる誤り訂正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント光通信では、伝送特性の向上のため、伝送途中に生じる歪及び周波数・位相変動をデジタル信号処理によって補償している。更なる伝送特性の向上のため、補償機能に加えて、送受信装置間に誤り訂正機能を設けて伝送特性におけるデータ誤りの低減を図っている。誤り訂正機能は、一般的に送信側でデータに対して誤り訂正符号化を行い、受信側でその符号化されたデータに対して誤り訂正処理を行う。
【0003】
誤り訂正方法としては、例えば、ハミング符号、BCH符号、及びリードソロモン符号、並びに、畳み込み符号/ビタビ復号等が一般的によく知られている。特に、近年の通信装置においては、CPUの計算能力の発展によって、複雑かつ大量の処理が可能となったため、LDPC(低密度パリティ検査符号:low-density parity-check code)のような高性能な誤り訂正方法が使用されている。
【0004】
また、誤り訂正処理は、”1”や”0”のデジタルデータに判定した結果をもとに訂正処理を行う硬判定による処理と、デジタルデータに判定する前の複素平面上での座標データをもとに訂正処理を行う軟判定による処理とがあり、後者の方法は前者の方法と比較して誤り訂正能力は上がるが、回路規模や処理時間が増え消費電力も大きくなる。
【0005】
誤り訂正処理は、一般的に情報ビットkを符号化することで符号化ビットnを生成する。符号化ビットnは、符号長を示す。情報ビットk/符号化ビットnは、符号化率として表される。また、符号化ビットn-情報ビットkは、冗長ビットとして表され、情報ビットkに対する冗長ビットの割合((n-k)/k×100%)は、冗長度として表される。
【0006】
符号化ビットnが同じ場合、冗長度が大きい程誤り訂正能力は上がるが、情報ビットkは減るため伝送効率は下がる。同様に、冗長度が小さい程、誤り訂正能力は下がるが、情報ビットkは増えるため伝送効率は上がる。なお、冗長度が大きい場合は、符号化率が小さいことを示し、冗長度が小さい場合は、符号化率が大きいことを示す。
【0007】
一般的に、光通信では、伝送距離が長いと、伝送特性が劣化する。この場合、変調方式をQPSK等の比較的伝送特性のよい(雑音に強い)ものに変更したり、1秒間の変復調の回数を示すボーレートを遅くしたり、場合によっては誤り訂正の冗長度を上げ誤り訂正能力を上げ、全体の伝送特性の改善を図る。一方、伝送距離が短い場合は、伝送特性が比較的良好なため、変調方式を64QAM等の多値度の高いものに変更したり、ボーレートを高くしたり、誤り訂正の冗長度を下げて伝送効率を上げることができる。
【0008】
上記の場合、伝送距離や伝送特性に応じて変調方式や符号化率を変えた光伝送装置を作る必要がある。特に、伝送距離や伝送特性に応じて、ボーレートを変更する場合、複数のクロックやそのクロックに対応した処理回路を必要とし、装置が大型化するという問題がある。特許文献1では、受信レベルに基づいて誤り訂正の符号化率を変える方式、特許文献2では、受信誤り率に基づいて誤り訂正の符号化率を変える方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-356665号公報
【特許文献2】特開2007-266702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これらの装置では、送信装置に併設した受信装置からの情報に基づいて符号化率を変化させている。これは、無線通信では、送信と受信の伝送特性はほぼ等しいことに基づいている。しかし、光通信では、送信側ファイバと受信側のファイバは物理的に異なり、送信と受信の伝送特性は無線通信のように等しいとは言えない。従って、受信側の伝送特性の情報に基づいて判断する方法は精度に欠け、送信装置に併設した受信装置が必須となり、装置も大型化するという問題があった。
【0011】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、回路規模を抑えつつ伝送状況に応じて最適な誤り訂正特性が得られる誤り訂正システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述したような課題を解決するために、本発明の誤り訂正システムは、クライアント側装置から供給されたデータを送信装置から伝送路を介して受信装置へ伝送するライン側通信システムに使用する誤り訂正システムであって、前記送信装置に設置され、前記ライン側通信システムの通信状況に基づいて、前記クライアント側装置から前記ライン側通信システムへのデータのフローを制御するフロー制御回路と、前記送信装置に設置され、前記フロー制御回路から供給されたデータの誤り訂正符号化を行い、前記フローの状態に基づいて、変調方式及びボーレートは維持した状態で、誤り訂正の符号化率を変更する誤り訂正符号化回路と、前記受信装置に設置され、前記誤り訂正符号化回路で設定された前記符号化率に基づいて誤り訂正を行う誤り訂正回路とを有する。
【0013】
上述したような課題を解決するために、本発明の誤り訂正方法は、クライアント側装置から供給されたデータを送信装置から伝送路を介して受信装置へ伝送するライン側通信システムに使用する誤り訂正システムにおいて実行される誤り訂正方法であって、前記送信装置に設置されたフロー制御回路が、前記ライン側通信システムの通信状況に基づいて、前記クライアント側装置から前記ライン側通信システムへのデータのフローを制御するステップと、前記送信装置に設置された誤り訂正符号化回路が、前記フロー制御回路から供給されたデータの誤り訂正符号化を行い、前記フローの状態に基づいて、変調方式及びボーレートは維持した状態で、誤り訂正の符号化率を変更するステップと、前記受信装置に設置された誤り訂正回路が、前記誤り訂正符号化回路で設定された前記符号化率に基づいて誤り訂正を行うステップとを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回路規模を抑えつつ伝送状況に応じて最適な誤り訂正特性が得られる誤り訂正システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正システムを含む通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化回路と誤り訂正回路の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化回路によって生成された符号化データの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正方法の動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に説明する実施の形態に限定して解釈されるものではない。
【0017】
<本発明の概要>
本発明では、クライアント側装置200からライン側通信システム100へ供給するデータのフローの状態に基づいて、ライン側通信システム100の誤り訂正の符号化率を自動的に変更する。変調方式やボーレートを維持した状態で、誤り訂正の符号化率だけ変更するので、従来技術のように伝送距離や伝送特性に応じた光伝送装置を作る必要がない。
【0018】
ライン側通信システム100へ供給するデータのフローは、ライン側通信システム100の通信状況に基づいて制御される。このライン側通信システム100の通信状況は、受信側装置における誤り訂正の状況、受信側装置からのデータの供給停止や再送要求の指示等により把握することができる。フローの状態を示す信号としては、以下のようなフローの制御状態を示す信号が考えられる。
(1)フロー制御回路内のバッファのオーバーフロー/アンダーフローを示す信号
(2)ライン側通信システムへのデータの供給停止の頻度を示す信号
(3)クライアント側装置に対する再送要求の頻度を示す信号
【0019】
フローの状態を示す信号としては、ライン側通信システム100における通信状況を示す信号、クライアント側装置200からライン側通信システム100へのデータの送信レートの制御状況を示す信号を用いてもよい。これらの情報に基づいて、符号化率を変更することもできる。
【0020】
誤り訂正の符号化率を変更する方法としては、例えば、誤り訂正符号化部を軟判定の固定符号化部12と硬判定の可変符号化部11で構成することができる。固定符号化部12を回路規模は比較的大きいが誤り訂正能力が高い軟判定誤り訂正とし、可変符号化部11を誤り訂正能力は標準的だが回路規模が比較的小さい硬判定誤り訂正とすることで、所望の誤り訂正能力を保ちつつ、より小さい回路規模で伝送距離や伝送特性に対応した可変符号化を実現することができる。
【0021】
<通信システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正システムを含む通信システムの構成例を示す図である。
図1の構成例は、本発明の誤り訂正システムをコヒーレント光通信システムに適用したものである。なお、本発明は、コヒーレント光通信システムに限定されず、従来の光通信システムやその他の無線を含む全ての通信システムに適用可能である。
【0022】
図1のコヒーレント光通信システムは、ライン側通信システムとも称され、クライアント側装置200からのデータを、光通信伝送路800を介して別のクライアント側装置へ伝送する。コヒーレント光通信システムの送信側装置は、フロー制御回路300、送信デジタル信号処理装置400、及び送信光モジュール500を含み、受信側装置は、受信光モジュール600及び受信デジタル信号処理装置700を含む。
【0023】
送信デジタル信号処理装置400は、誤り訂正符号化回路10、送信信号処理回路20を含み、受信デジタル信号処理装置700は、受信信号処理回路30及び誤り訂正回路40を含む。送信側装置のフロー制御回路300、誤り訂正符号化回路10、及び受信側装置の誤り訂正回路40で、本実施の形態の誤り訂正システムを構成することができる。
【0024】
クライアント側装置200から出力されたデータは、一般的にイーサネットワークを介して、ライン側通信システム100のフロー制御回路300に供給される。フロー制御回路300では、ライン側通信システム100の送受信装置間のデータの通信状況に応じて、クライアント側装置200から送信デジタル信号処理装置400へのデータのフローを制御する。より具体的には、クライアント側装置200から出力されるデータの送信レートに対して、送信デジタル信号処理装置400へ供給するデータの送信レートを制御するものである。供給するデータの送信レートは、通信状況に応じて種々の値を取り得る。通信状況は、受信側装置における誤り訂正の状況、受信側装置からのデータの供給停止や再送要求の指示等により把握することができる。
【0025】
フロー制御回路300から送信デジタル信号処理装置400へ供給されたデータは、誤り訂正符号化回路10において、誤り訂正符号化が行われる。誤り訂正符号化回路10では、フロー制御回路300におけるフローの状態に基づいて符号化率が変更される。送信光モジュール500は、誤り訂正符号化が行われた送信データによって光信号を生成する。
【0026】
フローの状態を示す信号としては、フローの制御状態を示す信号の他、ライン側通信システム100における通信状況を示す信号、クライアント側装置200からライン側通信システム100へのデータの送信レートの制御状況を示す信号が考えられるがこれらに限定されるものではない。符号化率に対応した情報であれば、種々の情報を用いることが可能である。
【0027】
なお、本実施の形態では、誤り訂正符号化において、符号化率は、「有用情報ビット数/符号化後の総ビット数」として定義する。以下の説明では、有用情報ビットは、「情報ビット」、符号化後の総ビット数は、「符号長」、符号化後の総ビット数-情報ビットは、「冗長ビット」と称する。冗長ビット数/情報ビット数を、「冗長度」と定義する。符号化率が小さい程、符号化後の総ビット数に対する冗長ビットの数は大きくなり、冗長度も増え、誤り訂正能力は高くなるが、伝送できる「情報ビット」の数は少なくなる。符号化後の総ビット数が一定の場合は、伝送する「情報ビット」の数を変えることで、符号化率を変えることができる。
【0028】
また、本実施の形態では、冗長ビットには、BCH符号のように、付加されるビットとして表される場合もあるが、ビタビ復号用畳み込み符号のように、付加されるビットとして明確化できないものも含まれる。本実施の形態では、情報ビットを符号化した後の総ビット数が、元の情報ビットから増えた分を冗長ビットとしてイメージ的に示すこととする。
【0029】
一般的なコヒーレント光通信システムでは、送信側装置では、クライアント側装置200から供給されたデータは、水平偏波光信号X用と垂直偏波光信号Y用に2系列に分けられた後、それぞれの系列の信号に対してデジタル信号処理が実行される。送信光モジュール500において、デジタル信号処理された2系列のデータによって、それぞれ水平偏波光信号Xと垂直偏波光信号Yが生成され、合成された後に光通信伝送路800を介して光信号として受信側装置に伝送される。
【0030】
受信側装置において、受信光モジュール600は、受信した光信号から受信データを生成する。受信光モジュール600では、受信した光信号が水平偏波光信号Xと垂直偏波光信号Yとに分離され、ベースバンド信号としてそれぞれ水平偏波光信号用データ(DX)と、垂直偏波光信号用データ(DY)が出力される。これらの受信データ(DX、DY)に対して、受信信号処理回路30において各種の補償処理が実行される。各種の補償処理では、受信データに対して、波長分散補償、偏波分散補償、及び周波数オフセット補償等が実行される。各種補償処理が行われたデータに対して、誤り訂正回路40において、誤り訂正処理が行われる。
【0031】
上述したコヒーレント光通信システムでは、送信データが、水平偏波光信号と垂直偏波光信号とによって送信される場合を説明したが、片方の偏波信号のみで送ることも可能である。その場合も、本実施の形態に係る誤り訂正システムを使用することができる。特に、一方の偏波信号のみが使用される場合が多い無線通信においても、本実施の形態の誤り訂正システムを使用することができる。
【0032】
<誤り訂正システムの構成>
図2は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正システムの構成例を示す図である。誤り訂正システムは、送信側装置に設置されたフロー制御回路300と誤り訂正符号化回路10、受信側装置に設置された誤り訂正回路40を備える。
【0033】
フロー制御回路300は、バッファメモリを含んでおり、クライアント側装置200からフロー制御回路300へデータが供給されると、このバッファメモリにバッファリングされていく。バッファリングされたデータは、誤り訂正符号化回路10に払い出される。送信デジタル信号処理装置400へ供給するデータの送信レートは、ライン側通信システム100における通信状況に応じて種々の値を取り得る。通信状況は、受信側装置における誤り訂正の状況、受信側装置からのデータの供給停止や再送要求の指示等により把握することができる。
【0034】
誤り訂正符号化回路10には、フロー制御回路300から送信データが供給されると共に、フロー制御回路300におけるフローの状態を示す信号が供給される。誤り訂正符号化回路10では、供給されたフローの状態に基づいて、変調方式やボーレートは維持した状態で符号化率が変更され、送信データに対して誤り訂正符号化が行われる。
【0035】
フローの状態を示す信号としては、以下のようなフローの制御状態を示す信号を用いることができる。
(1)フロー制御回路内のバッファのオーバーフロー/アンダーフローを示す信号
(2)ライン側通信システムへのデータの供給停止の頻度を示す信号
(3)クライアント側装置に対する再送要求の頻度を示す信号
【0036】
誤り訂正の符号化率を変更する際のフローの状態を示す信号としては、ライン側通信システム100における通信状況を示す信号、クライアント側装置200からライン側通信システム100へのデータの送信レートを示す信号等を用いてもよい。これらの情報に基づいて、符号化率を変更することもできる。
【0037】
ライン側コヒーレント光通信システムにおける伝送特性が良好でデータの誤りが少ない場合(低誤り率)は、クライアント側装置200からフロー制御回路300へ供給されるデータの送信レートと、フロー制御回路300から誤り訂正符号化回路10に払い出されるデータの送信レートとを等しくすることができ、フロー制御回路300内のバッファにバッファリングされたデータは、ほぼ一定に保たれる。その場合、誤り訂正符号化回路10における符号化率は大きくなるように制御される。即ち、冗長度が小さくなるように制御され、誤り訂正能力は比較的低く設定される。
【0038】
一方、ライン側通信システム100における伝送特性が劣化しデータの誤りが多い場合(高誤り率)は、フロー制御回路300から誤り訂正符号化回路10に払い出されるデータの送信レートは、クライアント側装置200からフロー制御回路300へ供給されるデータの送信レートよりも遅くなるように制御される。その結果、フロー制御回路300内のバッファは徐々に増えやがてオーバーフローし、フロー制御回路300からオーバーフロー信号が出力される。なお、伝送特性の劣化とは、データの雑音に対する耐性が劣化することを示す。
【0039】
このオーバーフローを示す信号が誤り訂正符号化回路10に伝えられると、誤り訂正符号化回路10における符号化率は小さくなるように制御される。即ち、冗長度が大きくなるように制御され、誤り訂正能力は比較的大きく設定される。
【0040】
また、フロー制御回路300では、受信側装置においてライン側通信システム100の伝送特性が劣化したことを検出した場合は、受信側装置からの指示に応じて、フロー制御回路300からライン側へのデータ供給を一時的に停止する制御を行う場合がある。
【0041】
このデータの供給停止の頻度を示す信号が誤り訂正符号化回路10に送信され、この供給停止の頻度を示す信号に応じて、誤り訂正符号化回路10は、符号化率を小さくし、冗長度を大きくし、誤り訂正能力が大きくなるように制御することもできる。
【0042】
さらに、受信側装置においてライン側通信システム100の伝送特性が劣化したことを検出した場合は、受信側装置からの指示に応じて、フロー制御回路300において、クライアント側装置200に対してデータの再送要求が行われる場合もある。
【0043】
この再送要求の頻度を示すが誤り訂正符号化回路10に送信され、その頻度が多い場合は、誤り訂正符号化回路10は、さらに符号化率を小さくし、冗長度を増やし、さらに誤り訂正能力が大きくなるように制御することもできる。
【0044】
このように、フロー制御回路300からのフロー制御内のバッファのオーバーフローを示す信号、ライン側通信システム100へのデータの供給停止の頻度を示す信号、クライアント側装置200に対する再送要求の頻度を示す信号に基づいて、誤り訂正符号化回路10の符号化率は変更される。
【0045】
ここで、具体的な符号化率の変更の方法は、光伝送路や通信システムの状況に応じて適宜定めることができる。例えば、一度でもオーバーフロー等が発生すれば、符号化率を小さくし、一定時間、オーバーフロー等が発生しなければ、符号化率を基に戻す、一方、さらに、オーバーフロー等の発生が継続すれば、符号化率をさらに小さくするような制御が可能である。供給停止の頻度を示す信号や再送要求の頻度を示す信号を用いた場合も同様である。
【0046】
誤り訂正の符号化率を変更する際のフローの状態を示す信号としては、ライン側通信システム100における通信状況を示す信号や、クライアント側装置200からライン側通信システム100へのデータの送信レートを示す信号等を用いてもよい。これらの情報に基づいて、符号化率を変更することもできる。
【0047】
ライン側通信システム100における通信状況を示す信号は、ライン側通信システム100の伝送特性の良否を示す信号であってもよい。例えば、通信状況の通知として、「正常/劣化」の2通りとした場合、「劣化」の場合は、符号化率を小さくし、「正常」の場合は、符号化率を大きくするように制御することができる。また、通信状況の通知として、「誤りゼロ/誤り小/誤り中/誤り多」の4通りとして、それぞれの状態に対して符号化率を割り当てるようにしてもよい。具体的な符号化率の変更の方法は、光伝送路や通信システムの状況に応じて適宜定めることができることは、フローの制御状態を示す信号を用いて、符号化率を制御した場合と同様である。
【0048】
ライン側通信システム100へのデータの送信レートの制御状況を示す信号は、予め符号化率との対応関係が定められた送信レートを上下させる数値を用いてもよいし、予め符号化率との対応関係が定められた送信レートの値を表す情報を用いてもよい。例えば、送信レートの制御状況を示す信号を、「増加/減少」の2通りとした場合、「減少」の場合は、符号化率を小さくし、「増加」の場合は、符号化率を大きくするように制御することができる。また、送信レートの制御状況の通知として、「レート高/レート中/レート低」の3通りとして、それぞれの状態に対して符号化率を割り当てるようにしてもよい。
【0049】
なお、ライン側通信システム100の伝送特性が良好な場合、コヒーレント光通信システムにおけるデータの送信レートは、クライアント側装置200からフロー制御回路300へ供給されるデータの送信レートよりも速くすることは可能である。この場合、フロー制御回路300のフロー制御の状態を示す信号として、アンダーフロー信号が発出される。アンダーフロー信号が発出された場合の符号化率は、コヒーレント光通信システムの伝送特性が良好な場合と同じ状態に設定すればよい。
【0050】
<誤り訂正符号化回路、誤り訂正回路>
図3は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化回路と誤り訂正回路の構成例を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化回路によって生成された符号化データの構成例を示す図である。
図4の構成例では、3種類の符号化率a~cで生成された符号化データが示されている。
【0051】
誤り訂正符号化回路10は、符号化率によって可変的な可変符号化用冗長ビットを生成する可変符号化部11(第1の符号化部)と、どの符号化率においても、固定的な固定符号化用冗長ビットを生成する固定符号化部12(第2の符号化部)とを含んでいる。
図4に示す可変符号化用冗長ビットは、可変符号化用情報ビットをもとに可変符号化部11において生成され、固定符号化用冗長ビットは、固定符号化用情報ビットをもとに固定符号化部12において生成される。
【0052】
誤り訂正回路40は、固定符号化部12で符号化されたデータ(固定符号化用情報ビット+固定符号化用冗長ビット)に対して誤り訂正処理を行う固定符号化用誤り訂正部13(第1の誤り訂正部)と、可変符号化部11で符号化されたデータ(可変符号化用情報ビット+可変符号化用冗長ビット)に対して誤り訂正処理を行う可変符号化用誤り訂正部14(第2の誤り訂正部)とを含む。
【0053】
固定符号化部12及びその誤り訂正部としては、高い誤り訂正能力を有する、例えばLDPCやリードソロモン符号等の方式が適用できる。この方式では、デジタルデータとして判定する前の複素平面上の座標データを用いて処理する軟判定方式を使用できる。一方、可変符号化部11及びその誤り訂正部としては、LDPCと比較して低い誤り訂正能力を有する、例えば、BCH符号やハミング符号等の方式が適用できる。この方式では、1及び0のように判定後のデジタルデータを用いて処理する硬判定方式を使用できる。
【0054】
一般的に、硬判定を伴うBCH符号やハミング符号は、軟判定を伴うLDPCやリードソロモン符号に比べて回路規模を大幅に低減できる。従って、上記の例では、複雑な実装を必要とする可変符号化部11及びその誤り訂正部を少ない回路規模の誤り訂正方式で実現し、比較的簡易な実装の固定符号化部12及びその誤り訂正部を回路規模の大きい誤り訂正方式で実現しているため、総合の回路規模を低減できる。また、固定符号化部12及びその誤り訂正部に高い誤り訂正能力を有する方式を採用しているため、総合の誤り訂正能力を高めることができる。
【0055】
誤り訂正システムでは、
図4に示すように、送信側装置では、フロー制御回路300から供給されたデータは、まず、誤り訂正符号化回路10の可変符号化部11において、可変符号化用情報ビットとみなされて、可変符号化用冗長ビットが付加される。この冗長ビットはゼロビットも取り得る。次に、可変符号化用冗長ビットが付加された可変符号化用情報ビットは、固定符号化部12において、固定符号化用情報ビットとみなされ、固定符号化用冗長ビットが付加され、最終的なフレームが形成される。
【0056】
一方、受信側装置では、受信されたデータは、まず固定符号化用誤り訂正部13において、固定符号化用冗長ビットを用いて固定符号化用情報ビットに対して誤り訂正処理が行われる。次に、可変符号化用誤り訂正部14において、可変符号化用冗長ビットを用いて可変符号化用情報ビットに対して誤り訂正処理が行われる。誤り訂正符号化回路10で設定した符号化率は、データの制御パラメータとして、受信装置の誤り訂正回路40へ送信することができる。
【0057】
<符号化率の変更>
図4を用いて具体的な符号化率の変更方法について説明する。
図4では、3種類の符号化率a~cで符号化された符号化データについて、それぞれのフレームフォーマットのイメージ図を示している。実際のフレームフォーマットは、これに限定されるものではない。このイメージ図では、情報ビットと冗長ビットとの割合を把握しやすくするように、複数のフレームをまとめて記載している。
【0058】
図4では、具体例として、クライアント側装置200からフロー制御回路300に供給されるデータの最大レートが800Gbpsの場合について説明する。実際には、複数のフレームが、並列的に800Gbpsよりも遅いレートで供給される。例えば、800並列で伝送する場合、1伝送あたり1Gbpsとなる。この場合、1フレームを100nsecとすると、フレーム毎に100ビットを伝送することができる。
図4は、800並列分をまとめて表示したイメージ図である。
【0059】
図4の3種類の符号化率a~cにおいて、変調方式及びボーレートは共通である。例えば、符号化率が変わった場合でも、変調方式は16QAM変調方式に、ボーレートは115Gシンボル/秒に共通化することができる。この例では920Gbpsデータを、2つの偏波で送ると、1偏波あたり460Gbpsとなり、16QAMではその1/4のボーレート115Gシンボル/秒となる。また、920Gbpsデータを、変調方式BPSKで1偏波のみで伝送した場合、ボーレートは920Gシンボル/秒となる。この場合、920ビットから成るフレームは、1n秒の時間長となる。従って、3種類の符号化率の実質的なフレーム長は、同じに設定されており、誤り訂正符号化の符号化率のみ変更されている。
【0060】
次に、ライン側通信システム100の伝送距離が異なる場合に、最適な符号化率が設定される動作について説明する。
【0061】
<送信デジタル信号処理装置>
ライン側通信システム100における伝送距離が短い場合、一般的に伝送特性は良好であり、ビット誤り率(BER)は小さくなる。この場合、フロー制御回路300からのフロー制御の状態を示す信号は、オーバーフロー信号は含まず、データの供給停止の頻度、及び再送要求の頻度の何れの情報も伝送特性が良好であることを示す範囲内である。
【0062】
このような状態では、符号化率aが選択される。符号化率aでは、800ビットの情報ビットに対して、可変符号化部11では、可変符号化用冗長ビットは生成されない。入力された800ビット全てが固定符号化用情報ビットとなり、それに基づいて120ビットの固定符号化用冗長ビット(情報ビットの15%)が生成され付加される。
【0063】
次に、ライン側の光通信の伝送距離がやや長くなった場合等で、ライン側通信システム100の伝送特性がやや劣化したと推定される場合には、フロー制御回路300において、クライアント側装置200から誤り訂正符号化回路10へのデータの送信レートを700Gbpsに下げる。そして、フロー制御回路300からのフローの状態を示す信号に基づいて、誤り訂正符号化回路10では、符号化率bが選択される。
【0064】
符号化率bでは、700ビットを可変符号化用情報ビットとみなして、その情報ビットに基づいて100ビットの可変符号化用冗長ビット(情報ビットの約14%)が生成され情報ビットに付加される。次に、700ビットの可変符号化用情報ビットに100ビットの可変符号化用冗長ビットが加えられた800ビットが固定符号化用情報ビットとみなされて、符号化率aと同様に、120ビットの固定符号化用冗長ビット(情報ビットの15%)が更に付加される。
【0065】
更に、ライン側の光通信の伝送距離がより長くなった場合等で、ライン側通信システム100の伝送特性が大きく劣化したと推定される場合には、フロー制御回路300において、クライアント側装置200から誤り訂正符号化回路10へのデータの送信レートを600Gbpsに下げる。そして、フロー制御回路300からのフロー制御の状態を示す信号に基づいて、誤り訂正符号化回路10では、符号化率cが選択される。
【0066】
符号化率cでは、600ビットを可変符号化用情報ビットとみなして、その情報ビットに基づいて200ビットの可変符号化用冗長ビット(情報ビットの約33%)が生成され情報ビットに付加される。次に、600ビットの可変符号化用情報ビットに200ビットの可変符号化用冗長ビットを加えた800ビットを固定符号化用情報ビットとみなして、符号化率a、bと同様に、120ビットの固定符号化用冗長ビット(情報ビットの15%)が更に付加される。
【0067】
上述した構成では、120ビットの固定符号化用冗長ビットは、どの符号化率においても、800ビットの固定符号化用情報ビットに対して固定的に付加される。ここで、誤り訂正符号化部を、軟判定の固定符号化部12と硬判定の可変符号化部11で構成することができる。固定符号化部12を回路規模は比較的大きいが誤り訂正能力が高い軟判定誤り訂正とし、可変符号化部11を誤り訂正能力は標準的だが回路規模が比較的小さい硬判定誤り訂正とすることで、所望の誤り訂正能力を保ちつつ、より小さい回路規模で伝送距離や伝送特性に対応した可変符号化を実現することができる。
【0068】
具体的な符号化率の変更の方法は、光伝送路や通信システムの状況に応じて適宜定めることができる。例えば、一度でもオーバーフロー等が発生すれば、「符号化率」を小さくし(a→b)、一定時間、オーバーフロー等が発生しなければ、「符号化率」を基に戻す(b→a)、一方、さらに、オーバーフロー等の発生が継続すれば、「符号化率」をさらに小さくする(b→c)というような制御が可能である。
【0069】
供給停止の頻度を示す信号や再送要求の頻度を示す信号を用いた場合、通信状況を示す信号やデータの送信レートの制御状況を示す信号を用いた場合も同様である。例えば、一度でも通信状況の劣化が発生すれば、「符号化率」を小さくし(a→b)、通信状況が正常となれば、「符号化率」を基に戻す(b→a)、一方、さらに、通信状況の劣化の発生が継続すれば、「符号化率」をさらに小さくする(b→c)というような制御が可能である。
【0070】
なお、上記では、伝送距離が異なる場合について説明したが、同じ伝送距離においても時間的に伝送特性が変化する場合においても、同様にして、最適な符号化率を選択できる。例えば、符号化率b及びcを選択していた場合でも、伝送特性が改善された場合は、符号化率aに動的に戻すことができる。本誤り訂正システムでは、変調方式やボーレートはどの符号化率に対しても変わらないため、符号化率のみを動的に簡易に変更できる。
【0071】
フロー制御としては、クライアント側装置200がイーサーネットでライン側通信装置と接続されている場合、イーサーネットのフロー制御を使用することもできる。また、フロー制御を固定化すれば、動的変更だけではなく、訂正能力の静的変更にも対応することができる。静的変更の場合は、適用装置の伝送距離に応じて設定値を変更するだけで対応可能である。
【0072】
<受信デジタル信号処理装置>
受信側では、受信装置の誤り訂正回路40において、誤り訂正処理が行われる。この誤り訂正処理では、
図3の例では、まず固定符号化用誤り訂正部13において、固定符号化用冗長ビット120ビットを用いて固定符号化用情報ビット800ビットに対して誤り訂正処理を行う。次に、送信装置から通知された符号化率に基づいて、可変符号化用誤り訂正部14において、可変符号化用冗長ビットを用いて可変符号化用情報ビットに対して誤り訂正処理を行う。
【0073】
符号化率がaの場合は、可変符号化用誤り訂正の処理は行わず、誤り訂正処理を行った固定符号化用情報ビット800ビットをそのまま最終の情報データとして出力する。符号化率がbの場合は、誤り訂正処理を行った可変符号化用情報ビット700ビットを、符号化率がcの場合は、誤り訂正処理を行った可変符号化用情報ビット600ビットを、それぞれ最終の情報データとして出力する。
【0074】
このように、本実施の形態における誤り訂正システム、及びそれを含む通信システムでは、光伝送装置の構成を変えることなく誤り訂正の符号化率を変えることで、種々の伝送特性に対応することが可能になる。更に、変調方式及びボーレートを変えないため、誤り訂正の符号化率をより簡易に動的に変更することができるので、伝送距離や伝送特性ごとに光伝送装置を作る必要がなくなる。
【0075】
更に、誤り訂正システムを固定符号化方式と可変符号化方式とで構成すれば、固定符号化方式の回路規模は比較的大きいが誤り訂正能力が高い軟判定誤り訂正とし、可変符号化方式を誤り訂正能力は標準的だが回路規模が比較的小さい硬判定誤り訂正とすることで、所望の誤り訂正能力を保ちつつ、少ない回路構成で伝送距離や伝送特性に対応した可変符号化を実現することができる。
【0076】
<誤り訂正方法の動作>
図5は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正方法の動作を説明するためのフロー図である。本実施形態の誤り訂正方法は、クライアント側装置200から供給されたデータを送信装置から光通信伝送路を介して受信装置へ伝送するライン側通信システム100に使用する誤り訂正システムにおいて実行される。
【0077】
フロー制御回路300には、受信側の誤り訂正回路40から誤り訂正の頻度等の通信状況を示す情報が通知されている(ステップS100)、フロー制御回路300では、クライアント側装置200から送信されたデータを受信しバッファリングが行われる(ステップS101)。
【0078】
フロー制御回路300では、ライン側通信システム100の通信状況に基づいて、クライアント側装置200からライン側通信システム100へのデータのフローを制御し、所定の送信レートでデータが送信される(ステップS102、103)。フロー制御回路300から誤り訂正符号化回路10に対して、フローの状態を示す信号が送信される(ステップS104)。
【0079】
誤り訂正符号化回路10では、フロー制御回路300から受信したフローの状態に基づいて、変調方式及びボーレートは維持した状態で、誤り訂正の符号化率を変更し、フロー制御回路300から供給されたデータの誤り訂正符号化を行う(ステップS105、106)。
【0080】
誤り訂正符号化回路10で符号化された符号化データは、受信側に送信される(ステップS107)。誤り訂正符号化回路10から誤り訂正回路40に対して、符号化率の情報が送信される(ステップS108)。
【0081】
誤り訂正回路40では、誤り訂正符号化回路10で設定された符号化率に基づいて誤り訂正が行われる(ステップS109)。フロー制御回路300には、受信側の誤り訂正回路40から誤り訂正の頻度等の通信状況を示す情報が通知され(ステップS100)、上記処理が繰り返される。
【0082】
<実施の形態の拡張>
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、光通信等における誤り訂正システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
11…可変符号化部、12…固定符号化部、13…固定符号化用誤り訂正部、14…可変符号化用誤り訂正部、10…誤り訂正符号化回路、20…送信信号処理回路、30…受信信号処理回路、40…誤り訂正回路、100…ライン側通信システム、200…クライアント側装置、300…フロー制御回路、400…送信デジタル信号処理装置、500…送信光モジュール、600…受信光モジュール、700…受信デジタル信号処理装置、800…光ファイバ(光通信伝送路)。