(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117595
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】振動溶着成形品、振動溶着装置、及び、振動溶着成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/06 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
B29C65/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014176
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】508309887
【氏名又は名称】森六テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 和彦
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211TA01
4F211TH17
4F211TH20
4F211TJ29
4F211TJ30
4F211TN14
4F211TQ04
(57)【要約】
【課題】内側部材を外側部材に高い強度で溶着させることができる技術を提供すること。
【解決手段】振動溶着成形品(10)は、略V字状に形成された部位を含む外側部材(20)と、外側部材(20)に振動溶着されている内側部材(30)と、を有する。外側部材(20)は、略板状のベース面部(21)と、ベース面部(21)に対して斜めに形成されている斜面部(22)と、を含む。斜面部(22)は、他の部品(Sl)を取り付け可能に開けられた外側部材開口部(22a)を有している。内側部材(30)は、ベース面部(21)に振動溶着されている第1接合面部(31)、及び、斜面部(22)に振動溶着されている第2接合面部(33)と、第2接合面部(33)からベース面部(21)に向かって突出する突起部(36)と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略V字状に形成された部位を含む外側部材と、この外側部材の略V字状に形成された部位の内側に配置されていると共に前記外側部材に振動溶着されている内側部材と、を有する振動溶着成形品であって、
前記外側部材は、略板状のベース面部と、このベース面部に対して斜めに形成され前記ベース面部に対向している斜面部と、を含み、
前記斜面部は、他の部品を取り付け可能に開けられた外側部材開口部を有し、
前記内側部材は、前記ベース面部に振動溶着されている第1接合面部、及び、前記斜面部に振動溶着されている第2接合面部と、この第2接合面部から前記ベース面部に向かって突出する突起部と、を含む、振動溶着成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の振動溶着成形品であって、
前記内側部材は、前記第1接合面部から前記第2接合面部まで立ち上げられた立壁部をさらに有し、
前記立壁部は、前記外側部材開口部に対向する位置に開けられた内側部材開口部を有する。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の振動溶着成形品であって、
前記外側部材開口部の縁のうち、前記第2接合面部に最も近い縁から前記ベース面部に平行な仮想面を基準面とした場合に、
前記突起部は、前記基準面よりも前記ベース面部に近い位置まで突出している。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の振動溶着成形品であって、
前記突起部の先端面は、前記第2接合面部と交差する面上に形成されている。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の振動溶着成形品であって、
前記突起部は、互いに平行に複数個所に形成されている。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の振動溶着成形品を製造するための振動溶着装置であって、
前記外側部材が載置される受け型と、
前記第1接合面部を前記ベース面部に向かって押圧すると共に、振動を発生させることにより前記第1接合面部を前記ベース面部に振動溶着させる加振型と、
前記斜面部を前記第2接合面部に向かって押圧する押圧型と、
前記外側部材開口部から前記突起部に向かって移動可能に設けられ、前記突起部に当接可能な移動型と、を有する、振動溶着装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の振動溶着成形品を製造する振動溶着成形品の製造方法であって、
前記内側部材を前記外側部材に溶着する際に、前記斜面部と前記突起部とを挟んだ状態に保っている、振動溶着成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の振動溶着成形品を製造する振動溶着成形品の製造方法であって、
前記外側部材及び前記内側部材を受け型の上面にセットする工程と、
前記第1接合面部が加振型に当接する位置まで前記受け型を上昇させる工程と、
前記外側部材開口部から移動型を進入させ、前記移動型の上面を突起部に当接可能に配置する工程と、
押圧型を前記斜面部に当接するまでスイングさせる工程と、
前記加振型を作動させ、前記内側部材を前記外側部材に振動溶着する工程と、を有する振動溶着成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の樹脂部品を振動溶着させた振動溶着成形品、振動溶着成形品を得るための振動溶着装置、及び、振動溶着成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の後部に設けられるテールゲートの上部には、テールゲートスポイラーと称する樹脂性の部品が設けられることがある。一例として、テールゲートスポイラーには、複数の樹脂部品を振動溶着させた振動溶着成形品が用いられる。このような振動溶着成形品に関する従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、振動溶着成形品は、略V字状に形成された部位を含む外側部材と、この外側部材の略V字状に形成された部位の内側に配置されていると共に外側部材に振動溶着されている内側部材と、を有する。
【0004】
外側部材は、略板状のベース面部と、このベース面部に対して斜めに形成されベース面部に対向している斜面部と、を有する。また、内側部材は、ベース面部に振動溶着されている第1接合面部、及び、斜面部に振動溶着されている第2接合面部と、を有する。
【0005】
振動溶着する際には、第1接合面部をベース面部に向かって押圧しながら振動を加えると共に、斜面部を第2接合面部に向かって押圧する。
【0006】
振動溶着により2部品を一体化することで、接着剤等を用いる必要がなく、また、高い外観性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示されたようなテールゲートスポイラーは、車両の後端上部に設けられるため、後続車からの視認性が高い。このため、一部の車両において外側部材の斜面部に開口を設け、この開口にブレーキランプを設けることが考えられる。
【0009】
このような場合において、特許文献1に開示されるように斜面部を治具(補助治具)で押圧すると、以下に説明するような問題が生じ得ることが分かった。斜面部の強度は、開口が形成されたことにより低下する。このため、斜面部を治具で押圧しながら溶着すると、斜面部が大きく撓むこと等により、内側部材を外側部材に十分に溶着できない虞がある。
【0010】
テールゲートスポイラーに限らず、開口を有する振動溶着成形品において、内側部材を外側部材に高い強度で溶着させることが望まれる。
【0011】
本発明は、内側部材を外側部材に高い強度で溶着させることができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示によれば、略V字状に形成された部位を含む外側部材と、この外側部材の略V字状に形成された部位の内側に配置されていると共に前記外側部材に振動溶着されている内側部材と、を有する振動溶着成形品であって、
前記外側部材は、略板状のベース面部と、このベース面部に対して斜めに形成され前記ベース面部に対向している斜面部と、を含み、
前記斜面部は、他の部品を取り付け可能に開けられた外側部材開口部を有し、
前記内側部材は、前記ベース面部に振動溶着されている第1接合面部、及び、前記斜面部に振動溶着されている第2接合面部と、この第2接合面部から前記ベース面部に向かって突出する突起部と、を含む、振動溶着成形品が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、内側部材を外側部材に高い強度で溶着させることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1による振動溶着成形品としてのテールゲートスポイラーの斜視図である。
【
図4】他の部品としてのブレーキランプが外された状態における、
図1の4矢視図である。
【
図5】
図2に示したテールゲートスポイラーを製造するための振動溶着装置について説明する図である。
【
図6】実施例2によるテールゲートスポイラーに用いられる内側部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0016】
<実施例1>
図1及び
図2を参照する。振動溶着成形品10としてのテールゲートスポイラー10(以下、スポイラー10と略記する。)は、車両Veの後端上部に設けられる。スポイラー10は、車両Veの空力特性を向上させると共に、意匠性を高める目的で車体Boに取り付けられる。
【0017】
スポイラー10は、車体Boの後端上部から連続するように後方に延びていると共に、車幅方向に亘って設けられている。スポイラー10の下方には、リヤガラスRgが設けられている。
【0018】
図2を参照する。スポイラー10は、略V字状に形成された部位を含む外側部材20と、この外側部材20の略V字状に形成された部位の内側に配置されていると共に外側部材20に振動溶着されている内側部材30と、を有する。
【0019】
スポイラー10には、他の部品SlとしてのストップランプSl(以下、単にランプSlと略記する。)が設けられている。ランプSlは、ブレーキが作動した際に点灯し、後続車に減速中であることを認識させるためのものである。
【0020】
外側部材20は、車両Veの外方から視認可能な樹脂製の意匠部材である。外側部材20は、車体Boの天井から連続して後方に延びる略板状のベース面部21と、このベース面部21に対して斜めに形成されベース面部21に対向している斜面部22と、これらのベース面部21及び斜面部22を接続している接続部23と、を有している。
【0021】
斜面部22には、ランプSlを取り付け可能に外側部材開口部22aが開けられている。斜面部22は、例えば、ベース面部21に対して、20°傾いている。この角度は、30°以下であることが好ましい。理由については後述する。
【0022】
斜面部22と接続部23とは、ベース面部21に対しての傾き角が異なる。また、接続部23を介さずにベース面部21の端部から斜面部22が延びる構成とすることもできる。
【0023】
内側部材30は、ベース面部21に振動溶着されている第1接合面部31と、この第1接合面部31から傾斜面部22に向かって立ち上げられている立壁部32と、この立壁部32から斜面部22に沿って延び斜面部22に振動溶着されている第2接合面部33と、この第2接合面部33からベース面部21に向かって延びている補助壁部34と、この補助壁部34からベース面部21に沿って延びている補助脚部35と、第2接合面部33からベース面部21に向かって突出している突起部36と、を有する。
【0024】
図3Aを参照する。内側部材30は、さらに、補助壁部34と補助脚部35とを繋ぐ複数のリブ37を有している。
【0025】
第1接合面部31は、左右の両端部が前方に張り出しており、その他の部分は、概ね同じ前後幅に形成されている。第1接合面部31のベース面部21(
図2参照)に当接する面には、振動溶着を促すために僅かな高さの多数の凸部(溶着リブ)を形成しても良い。
【0026】
図2を併せて参照する。立壁部32は、ベース面部21及び第1接合面部31から垂直に立ち上げられる面に対して、後方に向かって傾いている。立壁部32は、外側部材開口部22aに対向する位置に開けられた内側部材開口部32aを有する。
【0027】
内側部材開口部32aは、左右方向に長い略矩形状の開口である。内側部材開口部32aは、立壁部32のランプSlに対向している部位にのみ形成されている。内側部材開口部32aは、ベース面部21からの高さを基準とした場合に、少なくとも一部が外側部材開口部22aと同じ高さに形成されている。
【0028】
図2及び
図3Bを参照する。第2接合面部33は、ランプSlが配置される部位の前方部分の前後幅が他の部位の前後幅に比べて狭い。第2接合面部33の斜面部22に当接する面には、振動溶着を促すために僅かな高さの多数の凸部(溶着リブ)を形成しても良い。斜面部22に沿って形成されている第2接合面部33は、例えば、ベース面部21に対して20°傾いている。
【0029】
図2及び
図3Aを参照する。補助壁部34は、ランプSlが配置される部位が前方に向かって凹状に形成されている。
図4を参照し、補助壁部34には、形状の異なる複数の補助壁開口部34a、34bが開けられている。略矩形状に形成されている補助壁開口部34aからは、突起部36の先端を視認することができる。丸穴状に形成されている補助壁開口部34bは、例えば、ランプSl(
図2参照)に設けられた取付部を締結部材を用いて固定するための穴、及び、ランプSlに設けられた位置決め形状(十字ピン等)を挿入する穴である。
【0030】
補助壁開口部34aは、立壁部32のランプSlに対向している部位にのみ形成されている。補助壁開口部34aは、ベース面部21からの高さを基準とした場合に、少なくとも一部が外側部材開口部22a及び内側部材開口部32aと同じ高さに形成されている。
【0031】
図3A及び
図3Bを参照する。補助脚部35は、ランプSl(
図2参照)の上方に位置する部位のみ前後の幅が太く形成されている。
【0032】
なお、補助脚部35は、ベース面部21(
図2参照)に振動溶着されていても良いし、振動溶着されていなくても良い。補助壁部34及び補助脚部35によって、スポイラー10を補強することができる。
【0033】
突起部36は、前後方向に延びるように、互いに平行に形成されている。
図2を併せて参照する。突起部36は、ベース面部21から傾斜面部22が延びる方向に沿って複数形成されている、ということもできる。第2接合面部33と突起部36との接合部に、補助壁開口部34aから浸入した水滴などが溜まる心配がない。
【0034】
特に
図2に示されるように、突起部36の先端面36tは、ベース面部21に略平行に形成されている。一方、突起部36の先端面36tは、第2接合面部33に対しては傾いている。前述のとおり、第2接合面部33が、ベース面部33に対して20°傾いているとした場合、ベース面部21に略平行な先端面36tは、第2接合面部33に対して略20°傾いている。
【0035】
また、外側部材開口部22aの下縁22uからベース面部に略平行な仮想面を基準面Bsとした場合に、突起部36は、基準面Bsよりもベース面部21に近い位置まで突出している。換言すれば、外側部材開口部22aの縁のうち、第2接合面部33に最も近い縁からベース面部21に略平行な仮想面を基準面Bsとした場合に、突起部36は、基準面Bsよりもベース面部21に近い位置まで突出している、ということができる。
【0036】
なお、突起部36の形成される方向や、数、突起部36の形状は、任意に設定することができる。
【0037】
図3Aを併せて参照する。リブ37が形成されていることにより、ベース面部21や斜面部22を押圧した際の外側部材20及び内側部材30の変形を抑制することができる。
【0038】
次に、内側部材30の外側部材20への振動溶着方法について説明する。
【0039】
図5を参照する。振動溶着を行うための振動溶着装置40について説明する。なお、振動溶着を行う際には、外側部材20が下に載置され、内側部材30が上に配置される。つまり、
図2に示したのとは天地が逆になる。
【0040】
振動溶着装置40は、外側部材20が載置され上下に移動可能な受け型41と、第1接合面部31をベース面部21に向かって押圧すると共に、振動を発生させることにより第1接合面部31をベース面部21に振動溶着させる加振型42と、斜面部22に向かってスイング可能に設けられ斜面部22を第2接合面部33に向かって押圧する押圧型43と、外側部材開口部22aから突起部36に向かって直線的に移動可能に設けられ、突起部36に当接可能な移動型44と、を有する。
【0041】
振動溶着する際には、まず、外側部材20及び内側部材30を受け型41の上面にセットし、次に、受け型41を上昇させる。第1接合面部31が加振型42に当接する位置まで受け型41を上昇させる。次に、外側部材開口部22aから移動型44を進入させ、移動型44の上面を突起部36に対向する位置まで移動させる。このとき、移動型44は、受け型41の移動方向に略垂直に移動する。次に、押圧型43を斜面部22に当接するまでスイングさせる。
【0042】
なお、このとき、突起部36と移動型44との間には、僅かに隙間があっても良い。前述のとおり、第1接合面部31には、溶着リブが形成されることがある。このため、溶着リブの高さの分、内側部材30が浮き上がり、突起部36の先端面36tと移動型44との間には僅かに隙間が生ずることがある。また、ベース面部21と第1接合面部31とを密着させることにより、寸法誤差の分、突起部36の先端面36tと移動型44との間に僅かに隙間が生ずることがある。つまり、内側部材30を外側部材20に溶着する際に、斜面部22と突起部36とを挟んだ状態に保つとは、突起部36と移動型44との間に僅かに隙間がある状態も含む。
【0043】
ベース面部21及び第1接合面部31を受け型41及び加振型42によって挟み込み、斜面部22及び第2接合面部33を押圧型43及び移動型44によって挟み込んだ状態で、加振型42を作動させる。加振型42から伝わる振動によって、ベース面部21と第1接合面部31の当接部分、及び、斜面部22と第2接合面部33の当接部分に摩擦熱が生じる。この熱によりベース面部21と第1接合面部31の当接部分、及び、斜面部22と第2接合面部33の当接部分は、それぞれ溶着される。溶着されることにより、スポイラー10は、完成する。
【0044】
振動溶着時に、斜面部22及び第2接合面部33が下方に撓むことがある。このとき、突起部36の先端面36tは、移動型44に当接する。これにより、斜面部22及び第2接合面部33大きく撓むことを抑制することができる。
【0045】
また、第2接合面部33のベース面部21に対する傾きは、30°以下であることがより好ましい。30°を超えると、押圧型43による押圧力が斜面部22を第2接合面部33に押し付ける方向へ十分に伝わらなくなる虞がある。押圧力が十分に伝わらない場合には、第2接合面部33を斜面部22に溶着させることができない。
【0046】
なお、受け型41を上昇する前または上昇しながら外側部材開口部22aから移動型44を進入させても差し支えない。ベース面部21及び第1接合面部31を受け型41及び加振型42によって挟み込んだ状態で移動型44を進入させた方が、移動型44の挿入時に突起部36干渉してしまった場合の内側部材30のズレを防止することが出来る為、より好ましい。
【0047】
以上に説明したスポイラー10は、以下の効果を奏する。
【0048】
スポイラー10は、第2接合面部33からベース面部21に向かって突出する突起部36を有している。斜面部22を押圧する際に、第2接合面部33側からも押さえることを可能とすることで、外側部材20や内側部材30が撓むことを抑制することができる。ここで、突起部36を有しない場合には、直接第2接合面部33を押さえる必要がある。しかし、この場合には、外側部材開口部22aの縁等が干渉して第2接合面部33を十分に押さえることができない虞がある。スポイラー10によれば、突起部36を有していることにより、第2接合面部33側を容易に支持することができる。このため、内側部材30を外側部材20に高い強度で溶着させることができる。
【0049】
また、突起部36の外側部材開口部22a側にガイドとなるガイド面部36gを形成することが好ましい。つまり、突起部36は、第2接合面部33から先端面36tに向かって斜めに形成されているガイド面部36gを有している。ガイド面部36gは、先端面36tに垂直な面に対して、斜めに形成されている。これにより、移動型44を先端面36tに向けてガイドすることができる。
【0050】
なお、振動溶着装置40以外の装置を使用して振動溶着をする場合であっても、突起部36を有することにより、第2接合面部33側からの支持を容易に行うことができるようになる。このため、スポイラー10に突起部36が形成されていることにより、内側部材30を外側部材20に高い強度で溶着させることができる。
【0051】
図2を併せて参照する。立壁部32は、外側部材開口部22aに対向する位置に開けられた内側部材開口部32aを有する。内側部材開口部32a側からもランプSlの取り付け作業を行うことができることとなる。また、内側部材開口部32a側から移動型44を挿入することができるようになる。スポイラー10の組立作業を容易に行うことができる。また、振動溶着時の斜面部22に対する押圧を支える立壁部32の剛性が低下している場合でも内側部材30を外側部材20に高い強度で溶着させることができ、設計自由度が高められる。
【0052】
また、突起部36は、基準面Bsよりもベース面部21に近い位置まで突出している。これにより、振動溶着時により簡便に第2接合面部33側を支持することができる。内側部材30を外側部材20に高い強度で溶着させる観点から特に好ましい。
【0053】
また、突起部36の先端面36tは、第2接合面部と交差する面上に形成されている。ベース面部21及び第1接合面部31を受け型41及び加振型42によって挟み込む方向と略同一とすることで、第2接合面部33側を容易に支持可能とすることができる。また移動型44及び受け型41の簡素化及び設計自由度も高くなる。
【0054】
また、突起部36は、互いに平行に複数個所に形成されている。複数個所において支持することにより、外側部材20や内側部材30の変形をより抑制することができる。より高い強度で内側部材を外側部材に溶着させることができる。
【0055】
外側部材開口部22aから突起部36に向かって移動可能に設けられ、突起部36に当接可能な移動型44、を有する。移動型44を突起部36に当接可能とすることにより、斜面部22を押圧する際に、第2接合面部33側を支持することができる。これにより、内側部材30を外側部材20に高い強度で溶着させることができる。
【0056】
また、移動型44は、外側部材開口部22aから突起部36に向かって進入する。内側部材30と外側部材20との溶着強度低下の原因となり得る外側部材開口部22aを利用して、突起部36へ移動型44を進入させる。他の部位に開口等を開けることなく内側部材30を外側部材20に高い強度で溶着させることができ、好ましい。
【0057】
また、突起部36の先端面36tは、ベース面部21に略平行に形成されている。このため、移動型44を受け型41の移動方向に略垂直方向に移動させることにより、移動型44を突起部36に当接させることができる。受け型41が移動型44に干渉することを防止することができる。装置の簡素化及び設計自由度も高くなる。
【0058】
内側部材30を外側部材20に溶着する際に、斜面部22と突起部36とを挟んだ状態に保っている。振動溶着時における内側部材30や外側部材20の変形を抑制することができる。これにより、内側部材30を外側部材20に高い強度で溶着させることができる。
【0059】
<実施例2>
次に、実施例2によるスポイラー10Aを図面に基づいて説明する。
【0060】
図6は、実施例2のスポイラー10Aを示し、上記
図4Bに対応させて表している。実施例2によるスポイラー10Aにおいては、実施例1によるスポイラー10(
図2参照)とは、突起部51、52の形状が異なる。その他の基本的な構成については、実施例1によるダンパ機構と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0061】
一方の突起部51は、略H形状に形成されている。前後に延びる2つの縦突起部51aは、突起部36(
図4B参照)と同じ形状であり、これらの縦突起部51aの中央を繋ぐように横突起部51bが形成されている。移動型44との接触面積が多くなり、かつ振動溶着の振幅方向に対して縦突起部51aの剛性を上げられる為、より確実に支持することが可能となる。
【0062】
他方の突起部52は、左右方向に延びている。斜面部22(
図2参照)の延びる方向に垂直な方向に延びる突起部52ということもできる。移動型44との接触面積が多くなり、幅方向に均一に支持することが可能となる。
【0063】
以上に説明した突起部51、52を有するスポイラー10Aも、本発明所定の効果を奏する。
【0064】
尚、本発明による振動溶着成形品は、テールゲートスポイラーを例に説明したが、他の車両用部品であっても適用可能である。さらには、車両用部品以外にも適用可能であり、これらの形式のものに限られるものではない。
【0065】
また、振動溶着成形品の外側部材開口部に設けられる他の部品は、ストップランプ以外にカメラやダクト等も搭載することが可能であり、これらに限られるものではない。
【0066】
また、各実施例は、適宜組み合わせることができる。例えば、斜面部の延びる方向に沿った突起部と、斜面部の延びる方向に垂直な方向に延びる突起部とを1つの第2接合面部上に形成することも可能である。また、H型や左右に長い突起部の先端面をベース面部に略平行に形成することも可能である。
【0067】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の振動溶着成形品は、テールゲートスポイラーに好適である。
【符号の説明】
【0069】
10…テールゲートスポイラー(振動溶着成形品)
20…外側部材
21…ベース面部
22…斜面部、22a…外側部材開口部、22u…下縁(第2接合面部に最も近い縁)
30…内側部材
31…第1接合面部
32…立壁部、32a…内側部材開口部
33…第2接合面部
36、51、52…突起部、36t…先端面
40…振動溶着装置
41…受け型
42…加振型
43…押圧型
44…移動型
Sl…ストップランプ(他の部品)
Bs…基準面