(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117598
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】エレベータ及び振動検出装置
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20220804BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B66B3/00 P
B66B5/02 P
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014183
(22)【出願日】2021-02-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幡川 愛莉
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303CB45
3F304CA18
3F304EA01
3F304EA35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】かごの異常振動を確実に検出することができるエレベータを提供する。
【解決手段】エレベータ1は、かご2と、かご2に取り付けられる複数の振動検出装置4と、を備え、振動検出装置4は、バネ体と、バネ体に取り付けられる錘体と、錘体の振動を検出する検出部と、を備え、複数の振動検出装置の固有振動数は、互いに異なる。これにより、複数の動検出装置4によって、検出できる振動数の範囲を広くすることができるため、かご2の異常振動を確実に検出することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごと、
前記かごに取り付けられる複数の振動検出装置と、を備え、
前記振動検出装置は、バネ体と、前記バネ体に取り付けられる錘体と、前記錘体の振動を検出する検出部と、を備え、
前記複数の振動検出装置の固有振動数は、互いに異なる、エレベータ。
【請求項2】
前記バネ体は、上下方向に弾性変形するように配置される弦巻バネである、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記振動検出装置は、前記錘体を前記上下方向へ案内するために前記錘体に接する案内面をさらに備え、
前記案内面は、前記振動検出装置に対して、一つのみ備えられる、請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記錘体のうち、前記案内面よりも下方に配置される部分の重さは、前記錘体のうち、前記案内面よりも上方に配置される部分の重さよりも、重い、請求項3に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記振動検出装置は、前記錘体を前記上下方向へ案内する案内面をさらに備え、
前記錘体は、前記案内面に接して案内される被案内面を備え、
前記被案内面は、前記上下方向視において、前記弦巻バネの内部に配置される、請求項2~4の何れか1項に記載のエレベータ。
【請求項6】
エレベータのかごに取り付けられる振動検出装置であって、
バネ体と、
前記バネ体に取り付けられる錘体と、
前記錘体の振動を検出する検出部と、を備え、
前記バネ体は、上下方向に弾性変形するように配置される弦巻バネである、振動検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータ及び振動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータは、かごと、かごに取り付けられる一つの振動検出装置とを備えている(例えば、特許文献1)。振動検出装置は、板バネと、板バネに取り付けられる錘体と、錘体の振動を検出する検出部とを備えている。そして、例えば、かごに乗る人によって生じるかごの振動(以下、「異常振動」という)を、検出部によって検出することができる。
【0003】
ところで、かごの振動数が、振動検出装置の固有振動数に近い振動数である場合には、板バネが変形して錘体が振動するため、検出部で錘体の振動を検出することができる。しかしながら、かごの振動数が、振動検出装置の固有振動数から離れた振動数である場合には、板バネが変形せずに錘体が振動しないため、検出部で錘体の振動を検出することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、かごの異常振動を確実に検出することができるエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エレベータは、かごと、前記かごに取り付けられる複数の振動検出装置と、を備え、前記振動検出装置は、バネ体と、前記バネ体に取り付けられる錘体と、前記錘体の振動を検出する検出部と、を備え、前記複数の振動検出装置の固有振動数は、互いに異なる。
【0007】
また、エレベータにおいては、前記バネ体は、上下方向に弾性変形するように配置される弦巻バネである、という構成でもよい。
【0008】
また、エレベータにおいては、前記振動検出装置は、前記錘体を前記上下方向へ案内するために前記錘体に接する案内面をさらに備え、前記案内面は、前記振動検出装置に対して、一つのみ備えられる、という構成でもよい。
【0009】
また、エレベータにおいては、前記錘体のうち、前記案内面よりも下方に配置される部分の重さは、前記錘体のうち、前記案内面よりも上方に配置される部分の重さよりも、重い、という構成でもよい。
【0010】
また、エレベータにおいては、前記振動検出装置は、前記錘体を前記上下方向へ案内する案内面をさらに備え、前記錘体は、前記案内面に接して案内される被案内面を備え、前記被案内面は、前記上下方向視において、前記弦巻バネの内部に配置される、という構成でもよい。
【0011】
また、振動検出装置は、エレベータのかごに取り付けられる振動検出装置であって、バネ体と、前記バネ体に取り付けられる錘体と、前記錘体の振動を検出する検出部と、を備え、前記バネ体は、上下方向に弾性変形するように配置される弦巻バネである、という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るエレベータの概要図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るかごの斜視図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る振動検出装置の正面図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る振動検出装置の縦断面図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る振動検出装置の振動数と振幅との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係る振動検出装置の要部正面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、エレベータにおける一実施形態について、
図1~
図6を参照しながら説明する。なお、各図(
図7及び
図8も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
図1に示すように、エレベータ1は、ユーザが乗るためのかご2と、かご2に接続されるかごロープ1aと、かごロープ1aに接続される釣合錘1bと、かごロープ1aを駆動してかご2を走行させる巻上機1cとを備えている。巻上機1cは、例えば、かごロープ1aが巻き掛けられる綱車1dと、綱車1dを回転させる駆動源(図示及び採番していない)とを備えていてもよい。
【0015】
本実施形態に係るエレベータ1は、巻上機1cを、昇降路X1の上部に設けられる機械室X2の内部に配置する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ1は、巻上機1cを昇降路X1の内部に配置する、という構成でもよい。
【0016】
また、本実施形態においては、かごロープ1aの一端部がかご2に固定され、かごロープ1aの他端部が釣合錘1bに固定されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、かごロープ1aの両端部がそれぞれ昇降路X1の上部又は下部に固定され、かごロープ1aがかご2のシーブ及び釣合錘1bのシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、かごロープ1aがかご2及び釣合錘1bにそれぞれ接続されている、という構成でもよい。
【0017】
また、本実施形態に係るエレベータ1は、ロープ式の駆動方式である、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ1は、油圧式の駆動方式である、という構成でもよく、また、リニアモータ式の駆動方式である、という構成でもよい。
【0018】
エレベータ1は、例えば、かご2を案内するかごレール1eと、釣合錘1bを案内する錘レール1fと、エレベータ1の各部を制御する制御部1gと、かご2の走行速度を検出する調速機3とを備えていてもよい。そして、かご2は、例えば、かごレール1eを挟むことによってかご2を停止させる停止装置2aと、調速機3の動作を停止装置2aへ伝達する伝達部2bとを備えていてもよい。
【0019】
調速機3は、例えば、かご2に接続される無端環状のガバナロープ3aと、ガバナロープ3aに掛けられるガバナシーブ3b,3bと、ガバナロープ3aを把持する把持部3cとを備えていてもよい。これにより、かご2の速度が設定速度を超えた場合に、把持部3cがガバナロープ3aを把持し、ガバナロープ3aの走行が停止されることによって、停止装置2aは、作動する。
【0020】
ところで、例えば、人がかご2の内部で飛んだり走ったりすることによって、かご2に異常振動が発生する場合がある。これにより、調速機3が、かご2の走行速度を誤検出する(例えば、実際よりも高速と検出する)ことによって、停止装置2aが誤作動し、かご2を停止させてしまう虞がある。
【0021】
そこで、
図2に示すように、エレベータ1は、かご2に取り付けられる振動検出装置4を備えている。そして、振動検出装置4がかご2の異常振動を検出した場合に、例えば、かご2の走行速度は、制御部1gによって減速される。これにより、調速機3がかご2の走行速度を誤検出することを抑制することができる。
【0022】
例えば、本実施形態のように、振動検出装置4は、複数備えられ、かご2の上部に並ぶように配置されていてもよい。なお、振動検出装置4の個数は、特に限定されないが、本実施形態においては、エレベータ1は、振動検出装置4を二つ備えている。
【0023】
図3及び
図4に示すように、振動検出装置4は、例えば、かご2に固定される本体5を備えていてもよい。そして、振動検出装置4は、本体5に取り付けられるバネ体6と、バネ体6に取り付けられ、バネ体6が弾性変形することによって本体5に対して移動する錘体7と、錘体7の振動を検出する検出部8とを備えている。
【0024】
バネ体6は、弦巻バネ6aとしている。そして、弦巻バネ6aは、上下方向D3に弾性変形するように、即ち、上下方向D3に伸縮変形するように、配置されている。具体的には、弦巻バネ6aの軸線方向は、上下方向D3と平行(完全に平行だけでなく、上下方向D3に対する傾斜が5°以下である略平行も含む。以下同じ。)になっている。
【0025】
そして、例えば、上記特許文献1のように、バネ体6が、湾曲変形するように本体5に取り付けられる帯状の板バネである場合には、錘体7が円弧の軌跡で振動することに対して、本実施形態においては、バネ体6が、上下方向D3に弾性変形する弦巻バネ6aであるため、錘体7は、上下方向D3と平行な直線の軌跡で振動する。これにより、錘体7の振動方向D3が、かご2の振動方向D3と同じになるため、例えば、かご2の振動を正確に検出することができる。
【0026】
なお、かご2の異常振動には、上下方向D3の揺れだけでなく、横方向を軸として回動する揺れが少し含まれる場合がある。斯かる場合に、例えば、バネ体6の弾性変形のし易さに方向性が存在する(例えば、帯状の板バネにおいて、長手方向と短手方向とで弾性変形のし易さが異なる)構成では、回動する揺れの方向が、バネ体6の弾性変形の大きさに影響する。
【0027】
それに対して、本実施形態においては、バネ体6が、上下方向D3に弾性変形する弦巻バネ6aであるため、バネ体6の弾性変形のし易さに方向性があることを抑制することができる。したがって、例えば、かご2の異常振動に、横方向を軸として回動する揺れが含まれていた場合に、回動する揺れの方向がバネ体6の弾性変形の大きさに影響することを抑制することができる。
【0028】
なお、かご2の異常振動は、主として、かごロープ1aのばね定数及びかご2の重さ(かご2の内部の人を含めた重さ)によって定まる。一般的に、かご2の異常振動は、2.0Hz~5.0Hz(特に、2.5Hz~4.0Hz)になることが多い。そして、バネ体6のばね定数と錘体7の重さとによって定まる振動検出装置4の固有振動数は、当該範囲内にすることが好ましい。
【0029】
したがって、特に限定されないが、振動検出装置4の大きさ(錘体7の重さ)を考慮して、バネ体6のばね定数は、例えば、0.1N/mm~0.5N/mmとすることができ、また、例えば、0.2N/mm~0.4N/mmであることが好ましい。なお、このようなばね定数が小さいバネ体6は、弾性変形し易い柔らかいバネ体6である。
【0030】
本体5は、例えば、本実施形態のように、かご2に固定されるベース部5aと、ベース部5aよりも上方に配置され、弦巻バネ6aの下端部に取り付けられる下取付部5bと、上下方向D3に沿って延び、ベース部5aと下取付部5bとにそれぞれ固定される柱5c,5cとを備えていてもよい。また、本体5は、例えば、検出部8を支持する検出支持部5dを備え、検出支持部5dは、柱5c,5cに固定されている、という構成でもよい。
【0031】
錘体7は、例えば、本実施形態のように、弦巻バネ6aの上端部に取り付けられる上取付部7aと、上取付部7aよりも下方に配置される錘部7bと、上取付部7aと錘部7bとを接続する接続部7cとを備えていてもよい。そして、例えば、接続部7cは、上下方向D3に沿って延び、接続部7cの上方部は、弦巻バネ6aの内部に配置されている、という構成でもよい。
【0032】
上取付部7aは、例えば、弦巻バネ6aの上端部を保持する上保持部7dを備えていてもよく、また、下取付部5bは、例えば、弦巻バネ6aの下端部を保持する下保持部5eを備えていてもよい。そして、上保持部7dは、例えば、弦巻バネ6aの上端部が嵌め込められるように凹状に形成されていてもよく、また、下保持部5eは、例えば、弦巻バネ6aの下端部が嵌め込められるように凹状に形成されていてもよい。
【0033】
錘部7bは、例えば、本実施形態のように、接続部7cに着脱可能な複数の錘片7eを備えていてもよい。これにより、例えば、錘片7eの個数を変更することによって、錘部7bの重さを変更することができるため、振動検出装置4の固有振動数を変更することができる。
【0034】
また、本体5は、錘体7を上下方向D3へ案内する案内面5fを備えており、錘体7は、案内面5fに接して案内される被案内面7fを備えている。そして、例えば、案内面5fは、上下方向D3に延びており、被案内面7fは、案内面5fをスライドする、という構成でもよい。
【0035】
例えば、本実施形態のように、案内面5fは、錘体7の接続部7cが挿入される孔の内周面で構成されており、被案内面7fは、接続部7cの外周面で構成されている、という構成でもよい。なお、案内面5fは、例えば、本体5の他の部分と比較して、被案内面7fに対する摩擦係数が小さくなっていることが好ましい。
【0036】
そして、案内面5fは、振動検出装置4に対して、一つのみ備えられている。これにより、錘体7が上下方向D3に移動する場合に、錘体7が一つの案内面5fに接して案内されるため、一つの案内面5fによって、錘体7が移動する方向D3を定めることができる。
【0037】
したがって、例えば、複数の案内面5f,5fの案内方向を互いに平行にするような調整作業が必要ない。また、例えば、案内面5fと錘体7との間に発生する摩擦力が大きくなることを抑制することができる。これにより、例えば、ばね定数が小さいバネ体6を用いる振動検出装置4に対しても、所望の固有振動数を有する振動検出装置4に構成することができる。
【0038】
また、錘体7においては、案内面5fよりも下方部分の重さは、錘体7のうち、案内面5fよりも上方部分の重さよりも、重くなっている。即ち、本実施形態においては、接続部7cの下方部と錘部7bとの重さの合計は、接続部7cの上方部と上取付部7aとの重さの合計よりも、重くなっている。
【0039】
これにより、錘体7の重心が、案内面5fよりも下方に配置されているため、錘体7が案内面5fを支点として揺動することを抑制することができる。なお、上下方向D3に移動する錘体7の位置に関わらず、常に、錘体7の下方部分の重さは、錘体7の上方部分の重さよりも、重くなっている。例えば、錘部7bの重さは、錘体7の全体の重さの50%よりも、重くなっていてもよい。
【0040】
また、本体5は、例えば、本実施形態のように、弦巻バネ6aが横方向に弾性変形することを規制する規制部5gを備えていてもよい。例えば、柱5cが、上取付部7a及び錘部7bの孔に挿入され、上取付部7a及び錘部7bの孔の内周部が、柱5cの外周部に当たることによって、弦巻バネ6aが横方向に弾性変形することを規制してもよい。即ち、規制部5gは、柱5cの外周面で構成されていてもよい。
【0041】
これにより、弦巻バネ6aが横方向に弾性変形することを抑制することができるため、例えば、弦巻バネ6aが座屈するように変形することを抑制することができる。なお、弦巻バネ6aが上下方向D3に弾性変形している場合には、規制部5gである柱5cの外周面は、上取付部7a及び錘部7bの孔から離れている。
【0042】
検出部8は、例えば、各種のセンサを採用することができ、かご2の異常振動によってバネ体6が変形して錘体7が移動することを検出する。例えば、錘体7(例えば、接続部7cの上端)との距離が設定値よりも小さくなったことを検出することによって、弦巻バネ6aが閾値よりも大きく上下方向D3に変形して錘体7が振動したことを検出してもよい。
【0043】
なお、検出部8は、例えば、錘体7との距離(絶対値)を検出してもよい。また、検出部8が設置される位置は、特に限定されず、検出部8は、例えば、弦巻バネ6aとの距離を検出してもよく、また、例えば、ベース部5aに取り付けられて接続部7cの下端との距離を検出してもよい。
【0044】
また、
図5に示すように、被案内面7fは、上下方向D3視において、弦巻バネ6aの内部に配置されている。具体的には、被案内面7fは、上下方向D3視において、弦巻バネ6aの外周部6bで囲まれた領域に配置されている。これにより、上下方向D3視において、案内面5fと被案内面7fとの間で生じる摩擦力は、弦巻バネ6aの中心の近くで発生する。
【0045】
したがって、例えば、被案内面7fの周方向で摩擦力にバラツキがあった場合でも、上下方向D3に対して大きく傾斜する方向の力が弦巻バネ6aに加わることを抑制することができる。その結果、例えば、ばね定数が小さいバネ体6を用いる振動検出装置4に対しても、所望の固有振動数を有する振動検出装置4に構成することができる。
【0046】
このような、振動検出装置4において、
図6に示すように、かご2の異常振動が固有振動数F1,F2である場合に、錘体7は、最も大きく振動する。即ち、錘体7の基準位置に対する移動量(錘体7の相対振幅A1,A2)は、最大となる。そして、かご2の異常振動が固有振動数F1,F2から離れるにつれて、錘体7の相対振幅A1,A2は、小さくなる。
【0047】
例えば、本実施形態においては、錘体7の相対振幅A1,A2が設定値S1以上である場合に、検出部8は、錘体7の振動を検出する。即ち、かご2の異常振動が、検出可能振動数(最小検出振動数F1a,F2aから最大検出振動数F1b,F2bの振動数)である場合に、検出部8は、錘体7が設定値以上の大きさの振動をしたことを検出する。
【0048】
ところで、かご2の異常振動が、2.0Hz~5.0Hz(特に、2.5Hz~4.0Hz)になることが多いことに対して、例えば、一つの振動検出装置4の検出可能振動数の範囲が狭い場合がある。即ち、一つの振動検出装置4の検出可能振動数が2.0Hz~5.0Hzの全範囲を含むことができない場合がある。
【0049】
そこで、本実施形態においては、振動検出装置4が二つ備えられているため、第1振動検出装置4の第1固有振動数F1は、第2振動検出装置4の第2固有振動数F2と、異なっている。これにより、第1及び第2振動検出装置4,4によって、検出できる振動数の範囲を広くすることができるため、かご2の異常振動を確実に検出することができる。
【0050】
特に限定されないが、本実施形態においては、第1振動検出装置4の最小検出振動数F1aは、2.0Hzよりも小さくなっており、第2振動検出装置4の最大検出振動数F2bは、5.0Hzよりも大きくなっている。また、特に限定されないが、本実施形態においては、第1振動検出装置4の最大検出振動数F1bは、第2振動検出装置4の最小検出振動数F2aよりも大きくなっている。
【0051】
以上より、本実施形態のように、エレベータ1は、かご2と、前記かご2に取り付けられる複数の振動検出装置4,4と、を備え、前記振動検出装置4は、バネ体6と、前記バネ体6に取り付けられる錘体7と、前記錘体7の振動を検出する検出部8と、を備え、前記複数の振動検出装置4,4の固有振動数F1,F2は、互いに異なる、という構成が好ましい。
【0052】
斯かる構成によれば、複数の振動検出装置4,4の固有振動数F1,F2が、互いに異なっているため、それぞれの振動検出装置4,4の検出部8,8で検出できる振動数の範囲(F1a~F1b,F2a~F2b)は、異なっている。これにより、複数の振動検出装置4,4によって、検出できる振動数の範囲(F1a~F2b)を広くすることができる。したがって、かご2の異常振動を確実に検出することができる
【0053】
また、本実施形態のように、振動検出装置4は、エレベータ1のかご2に取り付けられる振動検出装置4であって、バネ体6と、前記バネ体6に取り付けられる錘体7と、前記錘体7の振動を検出する検出部8と、を備え、前記バネ体6は、上下方向D3に弾性変形するように配置される弦巻バネ6aである、という構成が好ましい。
【0054】
斯かる構成によれば、バネ体6は、弦巻バネ6aであり、弦巻バネ6aは、上下方向D3に弾性変形するように、配置されている。これにより、錘体7が、上下方向D3と平行な直線の軌跡で振動するため、錘体7の振動方向D3を、かご2の振動方向D3と同じにすることができる。
【0055】
また、本実施形態のように、エレベータ1においては、前記振動検出装置4は、前記錘体7を前記上下方向D3へ案内するために前記錘体7に接する案内面5fをさらに備え、前記案内面5fは、前記振動検出装置4に対して、一つのみ備えられる、という構成が好ましい。
【0056】
斯かる構成によれば、錘体7が上下方向D3に移動する場合に、錘体7は、一つの案内面5fに接して案内される。これにより、一つの案内面5fによって、錘体7が移動する方向D3を定めることができる。
【0057】
また、本実施形態のように、エレベータ1においては、前記錘体7のうち、前記案内面5fよりも下方に配置される部分の重さは、前記錘体7のうち、前記案内面5fよりも上方に配置される部分の重さよりも、重い、という構成が好ましい。
【0058】
斯かる構成によれば、案内面5fよりも下方に配置される錘体7の重さが、案内面5fよりも上方に配置される錘体7の重さよりも重くなっているため、錘体7の重心は、案内面5fよりも下方に配置されている。これにより、錘体7が案内面5fを支点として揺動することを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態のように、エレベータ1においては、前記振動検出装置4は、前記錘体7を前記上下方向D3へ案内する案内面5fをさらに備え、前記錘体7は、前記案内面5fに接して案内される被案内面7fを備え、前記被案内面7fは、前記上下方向D3視において、前記弦巻バネ6aの内部に配置される、という構成が好ましい。
【0060】
斯かる構成によれば、上下方向D3視において、被案内面7fが弦巻バネ6aの内部に配置されているため、被案内面7fと案内面5fとの間で生じる摩擦力は、上下方向D3視において、弦巻バネ6aの内部で発生する。これにより、上下方向D3視において、被案内面7fと案内面5fとの間で生じる摩擦力は、弦巻バネ6aの中心の近くで発生する。
【0061】
なお、エレベータ1及び振動検出装置4は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1及び振動検出装置4は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0062】
(1)上記実施形態に係るエレベータ1においては、バネ体6は、上下方向D3に弾性変形するように配置される弦巻バネ6aである、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、バネ体6は、湾曲変形するように本体5に取り付けられる板バネである、という構成でもよい。
【0063】
(2)また、上記実施形態に係るエレベータ1及び振動検出装置4においては、案内面5fは、振動検出装置4に対して、一つのみ備えられる、という構成である。しかしながら、エレベータ1及び振動検出装置4は、斯かる構成に限られない。例えば、案内面5fは、振動検出装置4に対して、複数備えられる、という構成でもよい。
【0064】
(3)また、上記実施形態に係るエレベータ1及び振動検出装置4においては、錘体7のうち、案内面5fよりも下方に配置される部分の重さは、錘体7のうち、案内面5fよりも上方に配置される部分の重さよりも、重い、という構成である。しかしながら、エレベータ1及び振動検出装置4は、斯かる構成に限られない。例えば、錘体7のうち、案内面5fよりも上方に配置される部分の重さは、錘体7のうち、案内面5fよりも下方に配置される部分の重さよりも、重い、という構成でもよい。
【0065】
(4)また、上記実施形態に係るエレベータ1及び振動検出装置4においては、被案内面7fは、上下方向D3視において、弦巻バネ6aの内部のみに配置される、という構成である。しかしながら、エレベータ1及び振動検出装置4は、斯かる構成に限られない。
【0066】
例えば、被案内面7fは、上下方向D3視において、弦巻バネ6aの外部に配置される、という構成でもよい。具体的には、被案内面7fは、例えば、上下方向D3視において、弦巻バネ6aの内部及び外部の両方に配置される、という構成でもよく、また、例えば、上下方向D3視において、弦巻バネ6aの外部のみに配置されている、という構成でもよい。
【0067】
(5)また、上記実施形態に係るエレベータ1及び振動検出装置4においては、案内面5fは、上下方向D3に延びており、被案内面7fは、案内面5fをスライドする、という構成である。しかしながら、エレベータ1及び振動検出装置4は、斯かる構成に限られない。
【0068】
例えば、
図7及び
図8に示すように、振動検出装置4は、複数の回転体9を備え、案内面9aは、回転体9の外周面で構成される、という構成でもよい。斯かる構成によれば、錘体7、即ち、被案内面7fが上下方向D3に移動することに伴って、回転体9が回転するため、被案内面7fと案内面9aとの間に摩擦力が発生することを抑制することができる。
【0069】
(6)また、本実施形態のように、バネ体6が上下方向D3に弾性変形するように配置される弦巻バネ6aである振動検出装置4は、例えば、かご2に一つのみ取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…エレベータ、1a…かごロープ、1b…釣合錘、1c…巻上機、1d…綱車、1e…かごレール、1f…錘レール、1g…制御部、2…かご、2a…停止装置、2b…伝達部、3…調速機、3a…ガバナロープ、3b…ガバナシーブ、3c…把持部、4…振動検出装置、5…本体、5a…ベース部、5b…下取付部、5c…柱、5d…検出支持部、5e…下保持部、5f…案内面、5g…規制部、6…バネ体、6a…弦巻バネ、6b…外周部、7…錘体、7a…上取付部、7b…錘部、7c…接続部、7d…上保持部、7e…錘片、7f…被案内面、8…検出部、9…回転体、9a…案内面、D3…上下方向、X1…昇降路、X2…機械室
【手続補正書】
【提出日】2022-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごと、
前記かごに取り付けられる複数の振動検出装置と、を備え、
前記振動検出装置は、バネ体と、前記バネ体に取り付けられる錘体と、前記錘体の振動を検出する検出部と、を備え、
前記複数の振動検出装置の固有振動数は、互いに異なる、エレベータ。
【請求項2】
前記バネ体は、上下方向に弾性変形するように配置される弦巻バネである、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記振動検出装置は、前記錘体を前記上下方向へ案内するために前記錘体に接する案内面をさらに備え、
前記案内面は、前記振動検出装置に対して、一つのみ備えられる、請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記錘体のうち、前記案内面よりも下方に配置される部分の重さは、前記錘体のうち、前記案内面よりも上方に配置される部分の重さよりも、重い、請求項3に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記振動検出装置は、前記錘体を前記上下方向へ案内する案内面をさらに備え、
前記錘体は、前記案内面に接して案内される被案内面を備え、
前記被案内面は、前記上下方向視において、前記弦巻バネの内部に配置される、請求項2に記載のエレベータ。
【請求項6】
エレベータのかごに取り付けられる振動検出装置であって、
バネ体と、
前記バネ体に取り付けられる錘体と、
前記錘体の振動を検出する検出部と、を備え、
前記バネ体は、上下方向に弾性変形するように配置される弦巻バネであり、
前記振動検出装置は、前記錘体を前記上下方向へ案内するために前記錘体に接する案内面をさらに備える、振動検出装置。
【請求項7】
前記案内面は、一つのみ備えられ、
前記錘体のうち、前記案内面よりも下方に配置される部分の重さは、前記錘体のうち、前記案内面よりも上方に配置される部分の重さよりも、重い、請求項6に記載の振動検出装置。
【請求項8】
前記錘体は、前記案内面に接して案内される被案内面を備え、
前記被案内面は、前記上下方向視において、前記弦巻バネの内部に配置される、請求項6又は7に記載の振動検出装置。