(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117635
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】電子時計
(51)【国際特許分類】
G04C 3/00 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
G04C3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014240
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 聡
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101AA00
2F101AC01
2F101AD02
2F101AD10
2F101AG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回路規模を大型化することなく、針位置検出の精度を確保可能な電子時計を提供する。
【解決手段】電子時計は、検出孔が形成される歯車と、歯車の間欠駆動に伴い、間欠運針する秒針と、内部時刻を保持しており、秒針の間欠運針を制御する駆動制御部と、光を出射する発光部と、歯車を介して発光部の反対側に配置されており、発光部から出射されて検出孔を通過した光を、検出孔の位置に応じて受光する受光部と、秒針が各運針位置にある間における、受光部による受光時間を制御する受光時間制御部と、を有し、駆動制御部は、受光部による総受光量に対応する検出電圧が閾値以上となるまでの受光時間が最も短い運針位置を、秒針の基準位置として取得し、基準位置と内部時刻とに基づいて針位置修正動作を行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通過部が形成される歯車と、
前記歯車の間欠駆動に伴い、間欠運針する指針と、
内部時刻を保持しており、前記指針の間欠運針を制御する駆動制御部と、
光を出射する発光部と、
前記歯車を介して前記発光部の反対側に配置されており、前記発光部から出射されて前記光通過部を通過した光を、前記光通過部の位置に応じて受光する受光部と、
前記指針が各運針位置にある間における、前記受光部による受光時間を制御する受光時間制御部と、
を有し、
前記駆動制御部は、
前記受光部による総受光量に対応する検出値が第1の閾値以上となるまでの前記受光時間が最も短い運針位置を、前記指針の基準位置として取得し、前記基準位置と前記内部時刻とに基づいて針位置修正動作を行う、
電子時計。
【請求項2】
前記指針は、範囲が予め設定された、前記基準位置を含む第1の運針領域と、該第1の運針領域以外の第2の運針領域と、含む運針領域を周回し、
共通の第1の受光時間における、前記検出値が第2の閾値未満である第1の運針位置から、前記検出値が前記第2の閾値以上である第2の運針位置へ、前記指針が到達したことを検出する運針領域検出部と、
前記第2の運針位置を前記第1の運針領域の開始位置として、前記第1の運針領域内の各運針位置における、前記検出値が前記第1の閾値以上となるまでの前記受光時間をそれぞれ記憶する受光時間記憶部と、
をさらに有し、
前記駆動制御部は、
前記受光時間記憶部に記憶される各運針位置の前記検出値が前記第1の閾値以上となるまでの前記受光時間のうち最も短い受光時間に対応する運針位置を、前記指針の基準位置として取得し、前記基準位置と前記内部時刻とに基づいて針位置修正動作を行う、
請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記第1の閾値と前記第2の閾値は共通である、
請求項2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記第2の運針領域は、第2-1の運針領域と、前記第1の運針領域の前であって前記第2-1の運針領域の後の第2-2の運針領域とを含み、
前記運針領域検出部は、共通の第2の受光時間において、前記検出値が第3の閾値未満である場合、前記指針が前記第2-1の運針領域にあることを検出し、前記検出値が前記第3の閾値以上である場合、前記指針が前記第2-2の運針領域にあることを検出する、
請求項2又は3に記載の電子時計。
【請求項5】
前記第2の運針領域は、前記第1の運針領域の後であって前記第2-1の運針領域の前の第2-3の運針領域をさらに含み、
前記運針領域検出部は、共通の前記第2の受光時間における、前記検出値が第4の閾値未満である場合、前記指針が前記第2-1の運針領域にあることを検出し、前記検出値が前記第4の閾値以上である場合、前記指針が前記第2-3の運針領域にあることを検出する、
請求項4に記載の電子時計。
【請求項6】
前記第3の閾値と前記第4の閾値は共通である、
請求項5に記載の電子時計。
【請求項7】
前記第1の受光時間は、前記第2の受光時間よりも長い、
請求項4又は5に記載の電子時計。
【請求項8】
前記第1の閾値は、前記第3の閾値及び前記第4の閾値よりも大きい、
請求項5~7のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項9】
前記受光時間をカウントする受光時間カウント部をさらに有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項10】
前記受光時間カウント部は、前記発光部から光が出射されてから所定時間経過後に、前記受光時間のカウントを開始する、
請求項9に記載の電子時計。
【請求項11】
前記受光部は、少なくとも、受光素子と、前記受光時間に応じて受光素子から供給される電荷を蓄積するコンデンサとを含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項12】
前記検出値の検出を開始した時点の領域が前記第1の運針領域である場合は、早送り運針回数分の秒針の早送りを行い前記第2の運針領域に移動させる、
請求項2~8のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項13】
前記早送り運針回数は、前記第1の運針領域に前記指針が存在する運針回数以上であり、前記指針の1周あたりの総運針回数の半分以下である、
請求項12に記載の電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、指針の位置を検出することにより、指針の位置ズレを修正する機能を有する電子時計が知られている。指針の位置は、LED等の発光素子から出射された光を指針の位置に応じて受光素子で受光し、受光素子における受光量に基づいて検出される。しかしながら、LED等の発光素子においては、個体差による輝度のばらつきがあり、受光素子において想定通りの受光量を検出できず、指針の位置を正確に検出できない場合があった。
【0003】
そこで、発光素子の個体差に依らず指針の位置検出の精度を上げるため、受光素子における受光量を一定水準とするための技術が知られている。例えば、特許文献1においては、発光素子を駆動する定電流回路の駆動電流を調整して発光量を最適化することにより、受光量を一定水準とする技術が開示されている。また、特許文献2には、発光素子に複数の抵抗を並列接続し、複数抵抗の接続を選択することで発光素子の発光量を切替えることにより、受光量を一定水準とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-85175号公報
【特許文献2】特開2004-279033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示されるように定電流回路を用いて駆動電流を変化可能とする技術においては、回路規模が大型化し、それに伴いコストが増大してしまうとの課題がある。また、特許文献2に開示されるように複数の抵抗を配置する構成においても同様に、回路規模が大型化し、それに伴いコストが増大してしまうとの課題がある。
【0006】
本発明の目的は、回路規模を大型化することなく、針位置検出の精度を確保可能な電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0008】
(1)光通過部が形成される歯車と、前記歯車の間欠駆動に伴い、間欠運針する指針と、内部時刻を保持しており、前記指針の間欠運針を制御する駆動制御部と、光を出射する発光部と、前記歯車を介して前記発光部の反対側に配置されており、前記発光部から出射されて前記光通過部を通過した光を、前記光通過部の位置に応じて受光する受光部と、前記指針が各運針位置にある間における、前記受光部による受光時間を制御する受光時間制御部と、を有し、前記駆動制御部は、前記受光部による総受光量に対応する検出値が第1の閾値以上となるまでの前記受光時間が最も短い運針位置を、前記指針の基準位置として取得し、前記基準位置と前記内部時刻とに基づいて針位置修正動作を行う、電子時計。
【0009】
(2)(1)において、前記指針は、範囲が予め設定された、前記基準位置を含む第1の運針領域と、該第1の運針領域以外の第2の運針領域と、含む運針領域を周回し、共通の第1の受光時間における、前記検出値が第2の閾値未満である第1の運針位置から、前記検出値が前記第2の閾値以上である第2の運針位置へ、前記指針が到達したことを検出する運針領域検出部と、前記第2の運針位置を前記第1の運針領域の開始位置として、前記第1の運針領域内の各運針位置における、前記検出値が前記第1の閾値以上となるまでの前記受光時間をそれぞれ記憶する受光時間記憶部と、をさらに有し、前記駆動制御部は、前記受光時間記憶部に記憶される各運針位置の前記検出値が前記第1の閾値以上となるまでの前記受光時間のうち最も短い受光時間に対応する運針位置を、前記指針の基準位置として取得し、前記基準位置と前記内部時刻とに基づいて針位置修正動作を行う、電子時計。
【0010】
(3)(2)において、前記第1の閾値と前記第2の閾値は共通である、電子時計。
【0011】
(4)(2)又は(3)において、前記第2の運針領域は、第2-1の運針領域と、前記第1の運針領域の前であって前記第2-1の運針領域の後の第2-2の運針領域とを含み、前記運針領域検出部は、共通の第2の受光時間において、前記検出値が第3の閾値未満である場合、前記指針が前記第2-1の運針領域にあることを検出し、前記検出値が前記第3の閾値以上である場合、前記指針が前記第2-2の運針領域にあることを検出する、電子時計。
【0012】
(5)(4)において、前記第2の運針領域は、前記第1の運針領域の後であって前記第2-1の運針領域の前の第2-3の運針領域をさらに含み、前記運針領域検出部は、共通の前記第2の受光時間における、前記検出値が第4の閾値未満である場合、前記指針が前記第2-1の運針領域にあることを検出し、前記検出値が前記第4の閾値以上である場合、前記指針が前記第2-3の運針領域にあることを検出する、電子時計。
【0013】
(6)(5)において、前記第3の閾値と前記第4の閾値は共通である、電子時計。
【0014】
(7)(5)又は(6)において、前記第1の受光時間は、前記第2の受光時間よりも長い、電子時計。
【0015】
(8)(5)~(7)のいずれかにおいて、前記第1の閾値は、前記第3の閾値及び前記第4の閾値よりも大きい、電子時計。
【0016】
(9)(1)~(8)のいずれかにおいて、前記受光時間をカウントする受光時間カウント部をさらに有する、電子時計。
【0017】
(10)(9)において、前記受光時間カウント部は、前記発光部から光が出射されてから所定時間経過後に、前記受光時間のカウントを開始する、電子時計。
【0018】
(11)(1)~(10)のいずれかにおいて、前記受光部は、少なくとも、受光素子と、前記受光時間に応じて受光素子から供給される電荷を蓄積するコンデンサとを含む、電子時計。
【0019】
(12)(2)~(8)のいずれかにおいて、前記検出値の検出を開始した時点の領域が前記第1の運針領域である場合は、早送り運針回数分の秒針の早送りを行い前記第2の運針領域に移動させる、電子時計。
【0020】
(13)(12)において、前記早送り運針回数は、前記第1の運針領域に前記指針が存在する運針回数以上であり、前記指針の1周あたりの総運針回数の半分以下である、電子時計。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の(1)~(13)の側面によれば、回路規模を大型化することなく、針位置検出の精度を確保可能な電子時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態に係る電子時計を示す平面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る電子時計の構成の概要を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における秒針の位置ズレの検出を行うための構造を模式的に示す図である。
【
図4】第1の実施形態の受光部を示す回路図である。
【
図5】第1の実施形態における、秒針の運針位置と、受光部における受光量に対応する積分器の出力電圧の関係を示すグラフである。
【
図6】第1の実施形態における秒針の運針領域を模式的に示す図である。
【
図7】第1の実施形態における、通常運針時の針位置検出動作を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態における、初期針位置検出動作を示すフローチャートである。
【
図9】第1の実施形態における、領域検出動作を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施形態における、光検出動作を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態における、基準位置検出動作を示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態における、受光時間取得動作を示すフローチャートである。
【
図13】第2の実施形態の受光部を示す回路図である。
【
図14】第2の実施形態における受光時間を示す図である。
【
図15】第2の実施形態における、秒針の運針位置と、受光量に対応する検出電圧の関係を示すグラフである。
【
図16】第2の実施形態における秒針の運針領域を模式的に示す図である。
【
図17】第2の実施形態における秒針の運針領域を模式的に示す図である。
【
図18】第2の実施形態における、通常運針時の針位置検出動作を示すフローチャートである。
【
図19】第2の実施形態における、初期針位置検出動作を示すフローチャートである。
【
図20】第2の実施形態における、第1の運針領域検出動作を示すフローチャートである。
【
図21】第2の実施形態における、第2-1の運針領域検出動作を示すフローチャートである。
【
図22】第2の実施形態における、第2-2の運針領域検出動作を示すフローチャートである。
【
図23】第2の実施形態における、基準位置検出動作を示すフローチャートである。
【
図24】第2の実施形態における、第2-3の運針領域検出動作を示すフローチャートである。
【
図25】第1の実施形態における、初期受光時間調整動作を示すフローチャートである。
【
図26】第2の実施形態における、第1の初期受光時間調整動作を示すフローチャートである。
【
図27】第2の実施形態における、第2の初期受光時間調整動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の各実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は、第1の実施形態に係る電子時計を示す平面図である。
図2は、第1の実施形態に係る電子時計の構成の概要を示すブロック図である。
【0025】
電子時計1は、
図1に示すように、外装ケース10と、外装ケース10内に配置される文字板20と、時刻を示す指針である秒針31、分針32、時針33と、を有する。電子時計1は、指針により時刻を表示するアナログ式の腕時計である。
【0026】
秒針31、分針32、時針33は、文字板20の中央部に配置される指針軸35に取り付けられており、指針軸35を中心に回転する。文字板20には所定の位置に時字21が設けられている。秒針31、分針32、時針33が時字21を指し示すことにより、ユーザは時刻を認識することができる。
【0027】
図1においては、外装ケース10の3時位置側に操作部材である竜頭15が設けられる例について示すが、これに限られず、操作部材であるボタン等がさらに設けられていてもよい。また、電子時計1の外観は丸形であるものに限られず、角形であっても構わない。
【0028】
電子時計1は、
図2に示すように、水晶振動子(不図示)によって所定の基準信号を出力する発振回路30と、基準信号を入力して時刻の歩進を行う制御回路40と、駆動機構50と、針位置検出部60と、時刻情報受信回路70とを有する。
【0029】
制御回路40は、駆動制御部41と、運針領域検出部42と、受光時間制御部43と、受光時間カウント部44と、受光時間記憶部45とを含む。
【0030】
駆動制御部41は、内部時刻を保持すると共に、駆動機構50を制御することにより、指針を駆動させる。
【0031】
駆動機構50は、ステップモータ51や各種輪列を含み、駆動制御部41により、その動作が制御される。ステップモータ51は、コイルと、ロータとを含む。ロータは、2極磁化された円盤状の回転体であり、その回転に伴い秒針31を駆動させる。なお、
図2においては、分針32、時針33を駆動させるための駆動機構については省略する。
【0032】
第1の実施形態においては、駆動制御部41により出力される駆動パルスにより、駆動機構50に含まれるステップモータ51が駆動されると共に、ステップモータ51に連結する歯車が間欠駆動し、その歯車の間欠駆動に伴い秒針31が間欠運針(ステップ運針)する。
【0033】
時刻情報受信回路70は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星等から送信される衛星信号を受信するように構成されてもよい。電子時計1は、時刻情報受信回路70が受信した衛星信号に含まれる日付や時刻に関する情報に基づいて、駆動制御部41により内部時刻を修正する機能を有する。ただし、時刻情報受信回路70が受信する信号は、時刻情報を含むものであればよく、GPS衛星から送信される衛星信号に限られるものではない。なお、時刻情報受信回路70は必須の構成ではない。
【0034】
針位置検出部60は、秒針31に位置ズレが生じているか否かを検出する。ここで、
図3を参照して、秒針31の位置ズレの検出について説明する。
図3(a)は、第1の実施形態における秒針の位置ズレの検出を行うための構造を模式的に示す断面図である。
図3(b)は、第1の実施形態における秒針の位置ズレの検出を行うための構造を模式的に示す平面図である。
【0035】
第1の実施形態においては、秒針31が0秒(12時)を指し示す位置を「基準位置」と呼ぶこととする。
【0036】
秒針31は、ステップモータ51が備えるロータの回転が輪列を介して伝達されることにより駆動する。当該輪列は、
図3(a)、
図3(b)に示す歯車61を含むように構成されるとよい。歯車61は、中心軸61aを中心に回転し、光通過部である検出孔61bが形成されている。歯車61は、秒針31が60回動作(60秒分)するのに伴って1回転する。
【0037】
針位置検出部60は、発光素子であるLED等を含む発光部62と、歯車61を介して発光部62の反対側に設けられる受光部63とを含む。受光部63は、発光部62が出射した光Lを、検出孔61bを介して受光する。受光部63における受光量は、検出孔61bの位置により変動する。すなわち、平面視において、検出孔61bが受光部63に近い位置にある場合、受光部63における受光量は大きくなり、検出孔61bが受光部63から遠い位置にある場合、受光部63における受光量は小さくなる。
【0038】
第1の実施形態においては、秒針31が基準位置にある場合、受光部63における受光量が最大となるように検出孔61bを形成した。すなわち、秒針31が基準位置にある場合、平面視において、検出孔61bが受光部63と重なる位置にくるように検出孔61bを形成した。
【0039】
なお、第1の実施形態においては、光通過部として貫通穴である検出孔61bを例に挙げるが、これに限られない。光通過部は、例えば、光透過性を有する透明部材で構成されていてもよい。
【0040】
電子時計1に衝撃等が生じることにより秒針31に位置ズレが生じた場合、
図3を参照して説明したように、受光部63における受光量に基づいて秒針31の位置を検出し、そのズレを修正すればよい。しかしながら、発光部62に含まれるLEDには固体差があり、受光部63において想定通りの受光量を検出できない場合がある。また、受光量を一定水準とするために、発光部62の回路構成においてLEDに電流を供給する抵抗を複数用意し、スイッチで抵抗を切り替えることにより駆動電流を調整する構成も考えられるが、抵抗の数だけスイッチが必要であることに加えて抵抗素子は集積回路において大きな面積を占有するため、回路規模が大型化し、コストが増大してしまうという課題がある。
【0041】
そこで、第1の実施形態においては、受光時間制御部43により受光時間を制御すると共に、当該受光時間内における受光部63による総受光量に基づいて、秒針31の位置を検出する構成を採用した。
【0042】
以下、第1の実施形態における、受光部63の構成と、制御回路40の動作について説明する。
【0043】
図4は、第1の実施形態の受光部を示す回路図である。受光部63は、受光素子63aと、積分器63bと、比較器63cとを含む。
【0044】
積分器63bは、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、コンデンサCと、増幅器Aとを含む。第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、受光時間制御部43によりON/OFFが制御される。第2のスイッチSW2がONである状態において、受光素子63aの受光に応じた電流IがコンデンサCに供給され、コンデンサCに電荷が蓄積される。すなわち、第2のスイッチSW2がONである状態において、積分器63bにおいて受光量に応じた電流の積分が行われる。
【0045】
比較器63cは、受光部63における受光量に対応する検出電圧が予め設定された所定の閾値以上となった場合、制御回路40に対して光検出信号を出力する。第1の実施形態においては、受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)以上となった場合、受光部63が、制御回路40に対して光検出信号を出力することとした。なお、閾値th(第1の閾値)の値は、電子時計1の出荷前に、発光部62に含まれるLEDの性能に応じて、電子時計1毎に予め設定されているとよい。
【0046】
なお、
図4に示す回路図は一例であり、これに限られるものではない。
【0047】
図5は、第1の実施形態における、秒針の運針位置と、受光部63における受光量に対応する積分器63bの出力電圧の関係を示すグラフである。
図5においては、受光部63における受光時間が経過するのに伴い、受光部63における総受光量は大きくなることを示している。また、
図5においては、秒針31が基準位置に近い位置にある程、受光部63における受光量が大きいことを示している。
【0048】
なお、
図5に示す「秒針が基準位置に近い位置」は
図6に示す第1の運針領域に含まれるいずれかの運針位置(基準位置を除く)に対応し、
図5に示す「秒針が基準位置から遠い位置」は
図6に示す第2の運針領域に含まれるいずれかの運針位置に対応する。
【0049】
図5に示すように、第1の実施形態においては、発光部62に含まれるLEDをONとし光を出射してから、所定期間が経過した後、受光量の検出を行うこととした。ここで、受光量の検出を行っている時間を、受光時間と呼ぶ。また、LEDをONとした後、受光時間を開始する前の期間を予備発光期間と呼ぶ。
【0050】
予備発光期間を受光時間に含めない理由は、LEDはONとなった直後においては発光状態が安定しない場合があるためである。このように、予備発光期間を受光時間に含めないことより、受光部63において、受光時間に応じた受光量を精度良く検出することが可能となる。
【0051】
図5に示すように、受光時間制御部43は、まず、スイッチSW1とスイッチSW2をONとする。そして、予備発光期間の経過後、受光時間制御部43は、スイッチSW1をOFFとする。そして、受光時間制御部43がスイッチSW2をOFFとすることにより、受光時間が終了する。
【0052】
なお、第1の実施形態においては、受光時間は1秒よりも短い時間であり、受光量の検出は、秒針31がある運針位置から次の運針位置へ移動する前に、運針位置毎に行われる。なお、ここで、運針位置とは、間欠運針する秒針31が一時的に停止する位置であり、秒針31は、60カ所の運針位置を含む運針領域を周回するものである。本発明の実施形態の説明では、秒針31が1秒間隔で間欠運針する場合を例示しているが、秒針31の運針間隔は1秒に限定されず、受光時間が運針間隔よりも短くなっていればよい。秒針31の運針間隔が1秒より短い場合には、1周あたりの秒針の運針停止位置は60ケ所よりも多くなる。
【0053】
次に、
図6を参照して、運針領域検出部42により検出される秒針31の運針位置について説明する。
図6は、第1の実施形態における秒針の運針領域を模式的に示す図である。
【0054】
運針領域検出部42は、秒針31が、第1の運針領域又は第2の運針領域のいずれに位置しているかを検出する。ここで、第1の運針領域は、基準位置を含む領域である。第1の実施形態においては、第1の運針領域を、秒針31が10秒分移動する範囲の領域とした。第2の運針領域は、第1の運針領域以外の領域である。すなわち、第1の運針領域は、秒針31が基準位置又は基準位置に近い運針位置にある領域であり、第2の運針領域は、秒針31が基準位置から遠い運針位置にある領域である。なお、第1の運針領域は、第2の運針領域よりも狭い範囲の領域であるとよい。
【0055】
秒針31が第1の運針領域に含まれるいずれかの運針位置にある場合、所定の受光時間内における受光部63による総受光量は大きく、秒針31が第1の運針領域のうち基準位置にある場合、所定の受光時間内における受光部63による総受光量が最大となる。秒針31が基準位置にある場合に、検出孔61bは受光部63の直上にあるため受光部63における受光量が最大となるが、検出孔61bが受光部63の直上からずれて位置しても、LEDが発光した光の広がりがあるため、光の一部が検出孔61bを通過し、受光部63で検出することができる。つまり、秒針31が第1の運針領域にあれば、検出孔61bを通過したLEDの光の全部または一部を受光部63で検出可能である。
【0056】
一方、秒針31が第2の運針領域に含まれるいずれかの運針位置にある場合、所定の受光時間内における受光部63による総受光量は小さい。これは、秒針31が第2の運針領域に位置する場合は、検出孔61bが受光部63の直上から遠く位置しているため、LEDの光が検出孔61bに届かず、受光部63で検出することができないためである。
【0057】
また、秒針31が第1の運針領域に含まれるいずれかの運針位置にある場合、受光部63における総受光量に対応する検出電圧が所定の閾値th(第1の閾値)以上となるまでの受光時間は短い。そして、秒針31が第1の運針領域のうち基準位置にある場合、受光部63における総受光量に対応する検出電圧が所定の閾値th(第1の閾値)以上となるまでの受光時間は最短となる。一方、秒針31が第2の運針領域に含まれるいずれかの運針位置にある場合、受光部63における総受光量に対応する検出電圧が所定の閾値th(第1の閾値)以上となるまでの受光時間は長い。なお、秒針31が第2の運針領域に含まれるときに、受光時間において検出電圧が若干量上昇するのは、文字板20側から入射した外部光のうち文字板下の機構部品により遮蔽しきれなかった微量の光が、受光部63で検出されるためである。
【0058】
なお、第1の実施形態においては、総受光量を検出電圧の検出値として検出し、閾値と比較する例について説明するが、総受光量を、検出電流等他の検出値として検出しても構わない。
【0059】
第1の実施形態においては、運針領域検出部42は、所定の受光時間内における受光部63による総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第2の閾値)未満の場合、秒針31が第2の運針領域にあることを検出する。そして、秒針31が1秒分運針する毎に、所定の受光時間内における受光部63による総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第2の閾値)以上であるか否かを検出することにより、第2の運針領域の最後の運針位置(第1の運針位置)から第1の運針領域の開始位置(第2の運針位置)へ到達したことを検出する。
【0060】
さらに、秒針31が1秒分運針する毎に、受光時間記憶部45が、第1の運針領域における各運針位置において、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)以上となるまでの受光時間を記憶する。すなわち、受光時間記憶部45は、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)以上となるまでの受光時間を、秒針31の運針位置と対応付けて記憶する。
【0061】
制御回路40は、総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)以上となるまでの受光時間が最も短い運針位置を、秒針31の基準位置として検出する。
【0062】
そして、制御回路40は、検出した基準位置と、内部時刻とを比較し、秒針31に位置ズレが生じているか否かを検出する。秒針31に位置ズレが生じている場合、駆動制御部41により、針位置修正動作を行い、秒針31の位置ズレを修正する。
【0063】
以上説明した第1の実施形態の構成においては、回路規模を大型化することなく、発光部62に含まれるLEDの個体差に関わらず、秒針31の位置ズレを精度良く検出することができる。
【0064】
なお、第1の実施形態においては、第2の運針領域から第1の運針領域への移動を検出する際に用いる検出電圧Vの閾値である第2の閾値と、第1の運針領域において受光時間を記憶する際に用いる検出電圧Vの閾値である第1の閾値とを、共通に閾値thと設定するものとして説明したが、これらは異なる値でもよい。
【0065】
例えば、第2の運針領域から第1の運針領域への移動を検出する際に用いる検出電圧Vの閾値th(第2の閾値)は、検出電圧Vと閾値th(第2の閾値)を比較して第1の運針領域に移行したことを判定することに用いられるのに対して、第1の運針領域において受光時間を記憶する際に用いる検出電圧Vの閾値th(第1の閾値)は、検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)を超えるまでの受光時間をカウント回路がカウントし、カウント値により秒針が基準位置にあるか判定するのに用いられる。カウント回路の分解能が低い場合に閾値th(第1の閾値)が低ければ、各受光時間(カウント値)に差が出にくく、カウント回路の分解能が高く閾値th(第1の閾値)が高ければ、各カウント数が大きくなりカウンタ回路の規模が大きくなってしまう。つまり、閾値th(第1の閾値)を閾値th(第2の閾値)と同じにせず、カウント回路や受光部の特性に応じて閾値th(第1の閾値)を調整すれば、より最適な指針位置検出動作が可能になる。
【0066】
また、第1の実施形態においては、受光時間制御部43が受光部63に含まれるスイッチを切り替えることにより受光時間を制御する例について説明したが、受光時間の制御は、発光部62の発光時間を調整することにより行ってもよい。また、受光時間は、ある期間内における総受光時間であればよく、当該ある期間において常に受光を行っている必要はなく、例えば、発光部62に含まれるLEDが所定の間隔を空けて断続的に発光するものであってもよい。
【0067】
また、第1の実施形態においては、秒針31が各運針位置にある状態において、常に針位置検出動作を行うこととしたが、これに限られない。例えば、通常運針時においては、第1の運針領域を通過後、第2の運針領域に入ってから40秒間程度、針位置検出動作を停止してもよい。これは、第1の運針領域通過直後の40秒間程度の間に衝撃等が生じて秒針31に位置ズレが生じた場合であっても、秒針を回転駆動させる歯車群が負荷になり、位置ズレが第1の運針領域の範囲に収まる可能性が高く、第2の運針領域での針位置検出動作を省略しても、第1の運針領域、さらには第1の運針領域の10秒分前から行う針位置検出動作で、秒針31の位置ズレを検出可能なためである。このように、針位置検出動作を常には行わない構成を採用することにより、発光部62及び受光部63を駆動させる頻度が下がり、消費電力を低減することが可能となる。
【0068】
さらに、
図7~12に示すフローチャートを参照して、第1の実施形態における制御回路40の動作フローについて説明する。
【0069】
図7は、第1の実施形態における、通常運針時の針位置検出動作を示すフローチャートである。
図8は、第1の実施形態における、初期針位置検出動作を示すフローチャートである。
図9は、第1の実施形態における、領域検出動作を示すフローチャートである。
図10は、第1の実施形態における、光検出動作を示すフローチャートである。
図11は、第1の実施形態における、基準位置検出動作を示すフローチャートである。
図12は、第1の実施形態における、受光時間取得動作を示すフローチャートである。
図25は、第1の実施形態における、初期受光時間調整動作を示すフローチャートである。
【0070】
まず、電子時計1の出荷時、すなわち、制御回路40が秒針31の運針位置を認識していない状態において、制御回路40により、初期受光時間調整動作(
図7のステップS1、
図25)、初期針位置検出動作(
図7のステップS2、
図8)の順に初期動作を行う。
【0071】
初期受光時間調整動作を
図25に示す。最初に受光時間制御部43により基準受光時間tnを仮設定する(ステップS61)が、基準受光時間tnの初期値は秒針31の運針間隔の半分の時間を仮設定するのが好ましい。設定されている基準受光時間tnが0秒からtmax秒の範囲内であるか、判定する(ステップS62)。ここで、tmax秒は受光時間制御部43で設定可能な最大時間であり、例えば運針間隔(1秒)からステップモータ51の駆動時間分(数十ミリ秒程度)を減算した値でよい。基準受光時間tnが0秒以下、あるいはtmax秒以上となった場合は(ステップS62のNo)、エラーと判断し、
図7に示したフローチャートの全ての動作を停止する(ステップS614)。基準受光時間tnが0秒からtmax秒の範囲内にある場合は(ステップS62のYes)、受光時間制御部43において初期受光時間調整動作中に利用される秒針31の総運針回数Naの値と、総運針回数Naのうち秒針31が第1の運針領域に存在した回数N1の値とを、0に初期化する(ステップS63)。
【0072】
続いて、駆動制御部41により秒針31を1秒分運針させて(ステップS64)、領域検出動作を行う(ステップS65、
図9)。
【0073】
図9に示すように、領域検出動作においては、まず、光検出動作を行う(ステップS21、
図10)。
【0074】
図10に示すように、光検出動作においては、まず、受光時間制御部43により、受光部63に含まれるスイッチSW1及びスイッチSW2をONとする(ステップS31)。その状態において、受光時間制御部43により、発光部62に含まれるLEDを発光させる(ステップS32)。
【0075】
予備発光期間の経過後(ステップS33のYes)、受光時間制御部43により、受光部63に含まれるスイッチSW1をOFFとする(ステップS34)。このように、スイッチSW1をOFF、スイッチSW2をONとした状態で、受光時間カウント部44により、受光部63における受光時間のカウントを開始する(ステップS35)。
【0076】
予め設定された基準受光時間tnの経過後(ステップS36のYes)、受光時間制御部43により、発光部62に含まれるLEDの発光を停止し(ステップS37)、スイッチSW1及びスイッチSW2をOFFとする(ステップS38)。
【0077】
図9に示すように、光検出動作(ステップS21、
図10)において検出された受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第2の閾値)未満であった場合(ステップS22のNo)、運針領域検出部42は、秒針31が第2の運針領域に存在することを検出し、第2の運針領域フラグを立てる。(ステップS23)。すなわち、運針領域検出部42は、秒針31が基準位置から遠い運針位置に存在することを検出する。一方、検出電圧Vが閾値th(第2の閾値)以上であった場合(ステップS22のYes)、運針領域検出部42は、秒針31が第1の運針領域に存在することを検出し、第1の運針領域フラグを立てる(ステップS24)。すなわち、運針領域検出部42は、秒針31が基準位置に近い運針位置に存在することを検出する。
【0078】
図25に示すように、領域検出動作(ステップS65、
図9)において、第1の運針領域フラグが立っている場合(ステップS66のYes)、総運針回数Na値と第1の運針領域に存在した回数N1値とを、1加算する(ステップS67)。第1の運針領域フラグが立っていなかった場合には(ステップS66のNo)、運針回数Na値のみを1加算する(ステップS68)。
【0079】
次に、総運針回数Naと秒針31の1周あたりの運針回数(=60)とを比較し、総運針回数Naが1周あたりの運針回数まで到達していない場合は(ステップS69のNo)、ステップS64~S69の処理を繰り返す。総運針回数Naが1周あたりの運針回数に到達した場合は(ステップS69のYes)、秒針31が第1の運針領域に存在していることを検出した回数N1値を判定する。回数N1の値が9未満の場合(ステップS610のYes)は、基準受光時間tnを受光時間の最小調整時間単位Δt分だけ長くし(ステップS612)、ステップS62~S610の処理を繰り返す。回数N1が9未満ということは、受光時間が短いために検出電圧Vが低くなり、閾値th(第2の閾値)を超える回数が少なくなっていると考えられる。従って、基準受光時間tnに対し受光時間の最小調整時間単位Δt分だけ長くし検出電圧Vを若干量高くすることで、回数N1を増加させている。回数N1値が9以上の場合(ステップS610のNo)は、回数N1値が大きすぎないか確認を行う。
【0080】
回数N1の値が11を超える場合(ステップS611のYes)は、基準受光時間tnに対し受光時間の最小調整時間単位Δt分だけ短くし(ステップS613)、ステップS62~S611の処理を繰り返す。第1の運針領域として検出できた秒針31の運針回数が11回を超えるということは、受光時間が長すぎるために検出電圧Vが高くなり、閾値th(第2の閾値)を超える回数が多くなっていると考えられる。従って、基準受光時間tnに対して時間を増量する処理を行い、検出電圧Vを低くしている。
【0081】
回数N1値が9以上11以下の場合(ステップS611のNo)は、第1の運針領域に存在することを検出できた秒針31の運針回数が9~11回ということになる。
図6に示したように、第1の運針領域は10秒分に設定しているので、回数N1値が9~11回であれば、設定値に近い回数N1値を得ることができているので、初期受光時間調整処理は終了する。
図25の初期受光時間調整動作では、例として、回数N1値の判定範囲を10秒分に対して±1秒分の余裕を持たせるよう設定した。この余裕分を大きくすると
図25におけるS612、S613の受光時間の調整回数が少なくなり、短時間に初期受信時間調整が完了できるので出荷時組立行程内の作業性が良くなるが、その一方で検出電圧Vから基準位置を検出する精度が若干低下し、生産歩留まりが悪化する可能性がある。従って、例えば余裕分を±2秒分にするなど、出荷時の生産歩留まりと製造効率のバランスが良くなるように余裕分を調整しても良い。
【0082】
初期受光時間調整動作が終了すると、初期針位置検出動作(
図7のステップS2、
図8)を実施する。
図8に初期位置検出動作のフローを示す。初期位置検出動作が開始されると、運針領域検出部42により領域検出動作を行う(
図8のステップS11)。この領域検出動作は、
図25のステップS65の動作と同じである。
【0083】
図8に示すように、領域検出動作(ステップS11、
図9)の検出開始時点において、第2の運針領域フラグが立っていない場合(ステップS12のNo)、すなわち、秒針31が第1の運針領域に存在することを検出した場合、駆動制御部41により、秒針31を10秒分運針させる(ステップS13)。そして、さらに領域検出動作を行う(ステップS11)。駆動制御部41により、秒針31を10秒分運針させるのは、秒針31を第2の運針領域へ早送り移動させるためである。
【0084】
本実施形態では、秒針31を1秒分運針させて光検出動作による受光量検出を行うことで、各領域のいずれに秒針31が存在しているかを識別し、特に第1の運針領域では領域範囲内の全運針位置での受光時間を記憶し比較することで、基準位置を検出している。しかし、初期動作として針位置検出を開始したときに、秒針31が第2の運針領域に存在していないことが検出された場合は、第1の運針領域に秒針31が存在することになるが、第1の運針領域の中でどこに秒針31が存在しているかは分からず、領域の切り替わりが判定できない。従って、正確な基準位置の検出もできない。その場合には、10秒分運針して第1の運針領域での秒針31の検出動作をスキップして、第2の運針領域に秒針31を進め、改めて第2の運針領域から第1の運針領域への切り替わりを検出するように動作する。
【0085】
ここでは
図6に基づき、第1の運針領域に秒針31が存在する運針数である10秒分を早送り運針回数に適用したが、出荷時組み立て工程の作業性が良くなるように最適に設定してよい。好ましくは、第1の運針領域に秒針31が存在する運針数以上で、秒針31の1周あたりの総運針回数の半分以下の範囲で早送り運針回数を選ぶのが良い。
【0086】
領域検出動作(ステップS11)を行った後、第2の運針領域フラグが立っている場合(ステップS12のYes)は、秒針31を1秒分運針した(ステップS14)後に、改めて領域検出動作(ステップS15)を行う。
【0087】
更に、第2の運針領域フラグが立っているか否かを確認し(ステップS16)、第2の運針領域フラグが立っている場合(ステップS16のYes)、秒針31を1秒分運針させ(ステップS14)、領域検出動作(ステップS15)を繰り返す。ステップS15の領域検出動作は、
図9を参照して説明した
図25のステップS65の動作と同じである。領域検出動作を行った後(ステップS15)、第2の運針領域にあるか否かを示す第2の運針領域フラグが立っているか判定を行う。(ステップS16)。
【0088】
ステップS14~S16の処理を繰り返し、第2の運針領域フラグが立たなくなると(ステップS16のNo)、秒針31が第2の運針領域から第1の運針領域に移動したことになる。この状態では、運針領域検出部42により、すべてのフラグをリセットした後に第1の運針領域通過フラグが立てられる。
【0089】
第1の運針領域フラグが立っている場合(ステップS16のNo)、第1の運針領域に秒針31が存在していることになるため、制御回路40に含まれる第1の運針領域における運針ステップ数を管理する為の第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)のカウント値を0に初期化(ステップS17)した後、基準位置検出動作が行われる(ステップS18、
図11)。
【0090】
図11に示すように、基準位置検出動作においては、まず、受光時間取得動作が行われる(ステップS41、
図12)。
【0091】
図12に示すように、受光時間取得動作においては、まず、受光時間制御部43により、受光部63に含まれるスイッチSW1及びスイッチSW2をONとする(ステップS51)。その状態において、受光時間制御部43により、発光部62に含まれるLEDを発光させる(ステップS52)。
【0092】
予備発光期間の経過後(ステップS53のYes)、受光時間制御部43により、受光部63に含まれるスイッチSW1をOFFとする(ステップS54)。このように、スイッチSW1をOFF、スイッチSW2をONとした状態で、受光時間カウント部44により、受光部63における受光時間のカウントを開始する(ステップS55)。
【0093】
受光時間カウント部44は、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)以上となるまで、受光時間のカウントを継続する(ステップS56)。すなわち、受光時間カウント部44は、受光部63に含まれる比較器63cから光検出信号が出力されるまで受光時間のカウントを継続する。
【0094】
受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)未満の場合(ステップS56のNo)、受光時間が所定の時間を経過したか否か、すなわち、タイムアップしたか否かが判定される(ステップS57)。タイムアップの時間は、例えば、運針間隔(1秒)からステップモータ51の駆動時間分(数十ミリ秒程度)を減算した時間であるとよい。
【0095】
受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)以上となる前にタイムアップした場合(ステップS57のYes)、受光時間カウント部44は受光時間のカウントを停止し、制御回路40はエラーフラグを立てる(ステップS58)。
【0096】
タイムアップする前に、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th(第1の閾値)以上となった場合(ステップS56のYes)、受光時間カウント部44は、受光時間のカウントを停止する(ステップS59)。
【0097】
その後、受光時間制御部43により、発光部62に含まれるLEDの発光を停止し(ステップS510)、スイッチSW1及びスイッチSW2をOFFとする(ステップS511)。
【0098】
さらに、
図11に示すように、基準位置検出動作において、受光時間記憶部45により、現在の運針位置に対応付けて、受光時間取得動作において受光時間カウント部44によりカウントされた受光時間を記憶する(ステップS42)。
【0099】
このような、秒針31の現在の運針位置に対応付けて、受光時間取得動作において取得した受光時間を記憶する処理(基準位置検出動作、
図8のステップS18)を、秒針31が第1の運針領域を通過するまで繰り返し行う。第1の実施形態においては、10秒分、繰り替えし行うこととした。
【0100】
図8に示すように、制御回路40に含まれる第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)を1加算し(ステップS19)、第1の運針領域内運針カウンタのカウント値が10となったか否かを判定する(ステップS110)。
【0101】
第1の運針領域内運針カウンタのカウント値が10未満である場合(ステップS110のNo)、秒針31を1秒分運針させて(ステップS111)、ステップS18~S110の処理を繰り返す。
【0102】
第1の運針領域内運針カウンタのカウント値が10となった場合(ステップS110のYes)、すなわち、秒針31が第1の運針領域に入った後10秒分運針した場合、制御回路40はエラーフラグの有無を判定する(ステップS112)。
【0103】
エラーフラグが立っている場合(ステップS112のYes)、エラーが発生したことを制御回路40に伝達し、
図7に示されたフローチャートの全ての動作を停止する(ステップS118)。全ての動作を停止することにより、発光部62又は受光部63等が故障している可能性がある旨を、ユーザに対して報知する。
【0104】
エラーフラグが立っていない場合(ステップS112のNo)、制御回路40は、受光時間記憶部45が記憶する秒針31の各運針位置に対応付けて記憶される受光時間に基づいて、秒針31の基準位置を取得する(ステップS113)。具体的には、制御回路40は、受光時間記憶部45に記憶される運針位置のうち、受光時間が最も短い運針位置を秒針31の基準位置として取得する。
【0105】
基準位置検出動作は、第1の運針領域において常に運針位置ごとの受光時間を記憶するものとして説明したが、初回のみ運針位置ごとの受光時間を記憶して、記憶した受光時間を比較することで、最も少ない受光時間を閾値時間として保持し、初回以降は、受光時間と閾値時間とを比較して、閾値時間と同等の受光時間のときに秒針31が基準位置に位置していると判定しても良い。これにより、常に運針位置ごとの受光時間を記憶することもなく、記憶した全受光時間データ同士を比較する必要もないため、レジスターや比較器の数を最小限にすることができる。
【0106】
そして、制御回路40は、取得された基準位置と内部時刻とに基づいて、秒針31に位置ズレの有無を判定する(ステップS114)。位置ズレが生じていた場合(ステップS114のYes)、駆動制御部41により、位置ズレを修正する針位置修正動作を行い(ステップS115)、制御回路40に含まれる第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)を0に初期化する(ステップS116)。位置ズレが生じていなかった場合(ステップS114のNo)、針位置修正動作を行わずに第1の運針領域内運針カウンタを初期化する(ステップS116)。第1の運針領域内運針カウンタの初期化が終わった後は、全フラグをリセットし第2の運針領域フラグを立てる(ステップS117)。
【0107】
以上により、初期針位置検出動作が終了し、秒針31は通常運針を開始する。
図7のステップS3以降を参照して、秒針31の通常運針時における針位置検出動作について説明する。
【0108】
制御回路40の内部時刻が運針タイミングとなった場合(ステップS3のYes)、駆動制御部41により、秒針31を運針させる(ステップS5)。内部時刻が運針タイミングではなかった場合(ステップS3のNo)は、ユーザから要求された運針以外の他の処理を行った後(ステップS4)、再度、運針タイミングの判定に戻る(ステップS3)。なお、運針以外の他の処理とは、電子時計1が備える種々の機能に関する処理であって、例えば、衛星信号など時刻情報の受信動作等である。
【0109】
ステップS5で秒針31が運針する量は、駆動制御部41により電子時計1の電池電圧の状態等に応じて決定される。例えば、電池電圧が高く維持されている場合は1秒間隔で1秒分の運針量とし、電池電圧が満充電電圧の8割を下回った場合は2秒間隔で2秒分の運針量としても良い。秒針31の運針が終了した後は、第1の運針領域フラグが立っているか否かを判定する(ステップS6)。ここでは秒針31が運針する前に、第1の運針領域、あるいは第2の運針領域のフラグが立っているかにより、何れの領域に秒針31が存在しているのかを判定し、運針をした後の処理を切り替えている。
【0110】
秒針31が第1の運針領域に存在することを示す為の第1の運針領域フラグが立っていない場合(ステップS6のNo)、制御回路40に含まれる第1の運針領域における運針ステップ数を管理する為の第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)のカウント値を0に初期化し(ステップS7)、運針領域検出部42により、領域検出動作を行う(ステップS8)。その後、ユーザから針位置修正を要求する操作が行われたか否か確認する(ステップS9)。ステップS8の領域検出動作は、既に説明済みであるため省略する。
【0111】
秒針31が第1の運針領域に存在することを示す第1の運針領域フラグが立っている場合は(ステップS6のYes)、制御回路40に含まれる第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)のカウント値を1加算する(ステップS90)。その後、基準位置検出動作が行われる(ステップS91)。基準位置検出動作は、既に説明済みであるため省略する。その後、第1の運針領域内運針カウンタのカウント値が10まで到達したか否かを判定する(ステップS92)。第1の運針領域内運針カウンタのカウント値が10まで到達していない場合は(ステップS92のNo)、ユーザから針位置修正を要求する操作が行われたか否か確認する(ステップS9)。なお、ステップS90は、秒針31が1秒間隔で1秒分の運針をしている場合であり、秒針31が2秒間隔で2秒分運針をしている場合は、加算する値を2とする。
【0112】
ステップS9で、竜頭15やボタンを操作することによるユーザからの針位置修正の要求が行われた場合(ステップS9のYes)、改めて初期針位置検出動作を行う(ステップS1)。ユーザから針位置検出の要求が行われなかった場合は(ステップS9のNo)、ユーザから要求された運針以外の他の処理を行った後(ステップS4)、運針タイミングにおいて(ステップS3のYes)、駆動制御部41により、秒針31を運針させる(ステップS5)。
【0113】
ステップS91の基準位置検出動作は、秒針31が第1の運針領域に進入後に1回分運針した位置から開始されている。本来であれば、第1の運針領域に秒針31が進入した後に直ちに基準位置検出動作に入ることが理想的であるが、運針領域検出動作に加えて基準位置検出動作も実施しなければならず、処理時間が長引き発光素子の点灯回数が増えるため、消費電力悪化の原因となる。そこで、上記のように運針領域検出動作と基準位置検出動作の処理時期をずらす処理方法とした。基準位置検出動作の処理開始場所に運針1回分の進みが生じるものの、消費電力の悪化するリスクを小さくできる。
【0114】
ステップS92で第1の運針領域内運針カウンタのカウント値が10まで到達した場合は(ステップS92のYes)、エラーフラグの有無を判定する(ステップS93)。エラーフラグが立っている場合(ステップS93のYes)、すべての処理を停止する(ステップS118)。
図12で説明したようにエラーフラグが立つのは、検出電圧Vが閾値thを上回ることができずにタイムアップしたためである。この場合、閾値thが固定値に設定しているならシステム異常と判断しすべての動作を停止させるが、閾値thを下げることが可能な場合は、閾値thを下げた上で、初期受光時間調整動作(ステップS1)に戻るとよい。
【0115】
エラーフラグが立っていない場合(ステップS93のNo)、制御回路40は、受光時間記憶部45が記憶する秒針31の各運針位置に対応付けて記憶される受光時間に基づいて、秒針31の基準位置を取得する(ステップS94)。具体的には、受光時間記憶部45に記憶されるもののうち、受光時間が最も短い運針位置を秒針31の基準位置として取得する。
【0116】
そして、制御回路40は、取得された基準位置と内部時刻とに基づいて、秒針31の位置ズレの有無を判定する(ステップS95)。位置ズレが生じていた場合(ステップS95のYes)、駆動制御部41により、位置ズレを修正する針位置修正動作を行い(ステップS96)、制御回路40に含まれる第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)のカウント値を0に初期化する(ステップS97)。位置ズレが生じていなかった場合(ステップS95のNo)、針位置修正動作は行わずに第1の運針領域内運針カウンタのカウント値を0に初期化し(ステップS97)、その後に全てのフラグをリセットし、第2の運針領域フラグを立てる(ステップS98)。
【0117】
その後、制御回路40は、さらにステップS3に戻って、通常運針及び針位置検出動作を繰り返す。
【0118】
次に、
図13~
図24を参照して、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態に係る電子時計の基本的な構成は、
図1、
図2で示したものと同様である。第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を用いて、適宜説明を省略する。
【0119】
第1の実施形態においては、秒針31の運針位置を、第1の運針領域と第2の運針領域との2段階に分けて検出することにより、基準位置を検出する構成について説明したが、第2の実施形態においては、秒針31の運針位置を4段階に分けて検出することにより、基準位置を検出する構成について説明する。このような構成を採用することにより、第2の実施形態においては、第1の実施形態に比べて消費電力を抑制しつつ、秒針31の運針位置を精度良く検出することができる。
【0120】
図13は、第2の実施形態の受光部を示す回路図である。受光部63は、受光素子63aと、積分器63bと、比較器63cとを含む。第2の実施形態においては、比較器63cが光検出信号を出力する際に用いる検出電圧Vの閾値を、閾値th1と閾値th2(>th1)とで切り替え可能とする。
【0121】
図14は、第2の実施形態における受光時間を示す図である。第2の実施形態においては、出荷前の調整工程において、発光部62及び受光部63の性能に応じて、10段階(受光時間L1~10)にレベル分けされた受光時間から、運針領域検出動作に用いる受光時間を予め選択することとした。
図14に示すように、受光時間L1が最も短く、受光時間L10が最も長い。後述するように、第2の実施形態においては、第1の運針領域検出動作及び第2-1の運針領域検出動作においては受光時間L2、第2-2の運針領域検出動作においては受光時間L8を用いてもよい。なお、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、受光時間制御部43が受光部63に含まれるスイッチを切り替えることにより受光時間を制御する例について説明したが、受光時間の制御は、発光部62の発光時間を調整することにより行ってもよい。
【0122】
図15は、第2の実施形態における、秒針の運針位置と、受光量に対応する検出電圧の関係を示すグラフである。
図15においては、受光時間が経過するのに伴い、受光部63における総受光量は大きくなることを示している。また、
図15においては、秒針31が基準位置に近い位置にある程、受光部63における受光量が大きいことを示している。
【0123】
次に、
図16、
図17を参照して、運針領域検出部42により検出される秒針31の運針位置について説明する。
図16、
図17は、第2の実施形態における秒針の運針領域を模式的に示す図である。
【0124】
運針領域検出部42は、秒針31が、第1の運針領域、第2-1の運針領域、第2-2の運針領域、又は第2-3の運針領域のいずれに位置しているかを検出し、それぞれの領域に応じてフラグを立てる。ここで、第1の運針領域は、基準位置を含む領域である。第2の実施形態においては、第1の運針領域を、秒針31が10秒分移動する範囲の領域とした。
【0125】
第2-2の運針領域は、第1の運針領域の直前の領域である。第2-3の運針領域は、第1の運針領域の直後の領域である。第2-1の運針領域は、第2-2の運針領域と第2-3の運針領域の間の領域である。すなわち、第2-1の運針領域は、第2-2の運針領域及び第2-3の運針領域よりも、秒針31が基準位置から遠い運針位置にある領域である。ここでは、第2-2の運針領域、第2-3の運針領域ともに、秒針が5秒分移動する範囲としている。
【0126】
第2の実施形態においては、受光時間L8とした場合、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th2(第2の閾値)以上となる領域を、第1の運針領域とする。
【0127】
また、第2の実施形態においては、受光時間L2とした場合、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)未満となる領域を、第2-1の運針領域とする。
【0128】
また、第2の実施形態においては、受光時間L8とした場合、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th2(第2の閾値)未満であり、受光時間L2とした場合、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)以上となる領域を、第2-2の運針領域又は第2-3の運針領域とする。
【0129】
従って運針領域検出部42は、所定の受光時間内における受光部63による総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th2(第2の閾値)未満の場合に、秒針31が第2-1の運針領域、第2-2の運針領域、第2-3の運針領域のいずれかにあるかを検出する。そして、秒針31が1秒分運針する毎に、所定の受光時間内における受光部63による総受光量に対応する検出電圧Vが、閾値th2(第2の閾値)以上であるか否かを判定することで、第2-2の運針領域の最後の運針位置(第1の運針位置)から第1の運針領域の開始位置(第2の運針位置)へ到達したことを検出する。
【0130】
受光時間記憶部45は、第1の運針領域における各運針位置で、受光部63における総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th2(第1の閾値)以上となるまでの受光時間を、秒針31の運針位置と対応付けて記憶する。そして、受光時間記憶部45に記憶されるもののうち、受光時間が最も短い運針位置を秒針31の基準位置として取得する。
【0131】
ここでは、第2-2の運針領域から第1の運針領域への移動を検出する際に用いる検出電圧Vの閾値である第2の閾値と、第1の運針領域において受光時間を記憶する際に用いる検出電圧Vの閾値である第1の閾値とを、共通に閾値th2と設定するものとして説明したが、これらは異なる値でもよい。
【0132】
図18~
図24に示すフローチャートを参照して、第2の実施形態における制御回路40の動作フローについて説明する。
【0133】
図18は、第2の実施形態における、通常運針時の針位置検出動作を示すフローチャートである。
図19は、第2の実施形態における、初期針位置検出動作を示すフローチャートである。
図20は、第2の実施形態における、第1の領域検出動作を示すフローチャートである。
図21は、第2の実施形態における、第2-2の領域検出動作を示すフローチャートである。
図22は、第2の実施形態における、第2-2の運針領域検出動作を示すフローチャートである。
図23は、第2の実施形態における、基準位置検出動作を示すフローチャートである。
図24は、第2の実施形態における、第2-3の運針領域検出動作を示すフローチャートである。
図26は、第1の初期受光時間調整動作を示すフローチャートである。
図27は、第2の初期受光時間調整動作を示すフローチャートである。
【0134】
図18に示すように、まず、電子時計1の出荷時、すなわち、制御回路40が秒針31の位置を認識していない状態において、制御回路40により、第1の初期受光時間調整動作(SS1、
図26)、第2の初期受光時間調整動作(SS2、
図27)、初期針位置検出動作を行う(ステップSS3、
図19)を順次行う。
【0135】
第1の初期受光時間調整動作は
図26に示すように、まず、比較器63cにおける検出電圧Vの閾値を閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)とし(ステップSS71)、受光時間制御部43により基準受光時間tnを仮設定する(ステップSS72)。基準受光時間tnの設定例としては、秒針31の運針間隔の半分の時間を初期値として用いてよく、0秒からtmax秒の範囲内にある値を設定する。続いて、設定されている基準受光時間tnが0秒からtmax秒の範囲内であるか判定する(ステップSS73)。ここで、tmax秒は受光時間制御部で設定可能な最大時間を表す。tmax秒の設定例としては、運針間隔(1秒)からステップモータ51の駆動時間分(数十ミリ秒程度)を減算した値でよい。基準受光時間が0秒以下、あるいはtmax秒以上となった場合は(ステップSS73のNo)、制御回路40全体のエラーが発生したと判定し(ステップSS998)、
図18に示されたフローチャートの全ての動作を停止する。
【0136】
基準受光時間tnが0秒からtmax秒の範囲内にある場合は(ステップSS73のYes)、秒針31の総運針回数Naの値と、総運針回数のうち第2-2の運針領域に存在した回数N22の値を、共に0に初期化する(ステップSS74)。続いて、駆動制御部41により、秒針31を1秒分運針させて(ステップSS75)、第2-1の運針領域検出動作を行う(ステップSS76、
図21)。
【0137】
図21に示すように第2-1の運針領域検出動作においては、比較器63cにおける検出電圧Vの閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)を設定し(ステップSS31)、光検出動作を行う(ステップSS32)。なお、光検出動作は、既に説明しているためここでは省略する。
【0138】
光検出動作(ステップSS32)において検出された総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値)以下であった場合(ステップSS33のNo)、秒針31が第2-1の運針領域に存在していることになるので、運針領域検出部42はすべてのフラグをリセットした後に第2-1の運針領域フラグを立てる(ステップSS34)。
【0139】
一方、検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値)を超えた場合(ステップSS33のYes)、秒針31が第2-2の運針領域に存在していることになるので、運針領域検出部42はすべてのフラグをリセットした後に第2-2の運針領域フラグを立てる(ステップSS35)。
【0140】
図26では、第1の初期受光時間調整動作における第2-1の運針領域検出動作(ステップSS76)が終了すると、第2-2の運針領域フラグが立っているか否かを確認する(ステップSS77)。第2-2の領域フラグが立っている場合(ステップSS77のYes)、総運針回数Na値と第2-2の運針領域における秒針31の運針の検出回数N22値とを1加算する(ステップSS78)。第2-2の運針領域フラグが立っていなかった場合は(ステップSS77のNo)、総運針回数Na値のみを1加算する(ステップSS79)。
【0141】
続いて、総運針回数Naと秒針31の1周あたり運針回数(=60)とを比較し(ステップSS710)、総運針回数Naが1周あたり運針回数に到達していない場合は(ステップSS710のNo)、ステップSS75~SS710の処理を繰り返す。総運針回数Naが1周あたり運針回数に到達した場合は(ステップSS710のYes)、第2-2の運針領域における秒針31の運針の検出回数N22値が19未満かどうか判定する。回数N22値が19未満の場合(ステップSS711のYes)は、受光時間が短いために検出電圧Vが低くなり、閾値thを超える回数が少なくなっていると考えられる。従って、第2-2の運針領域における秒針31の運針の検出回数を増加させる為に、基準受光時間tnに対し受光時間の最小調整時間単位Δt分だけ長くし(ステップSS713)、ステップSS73~SS711の処理を繰り返す。
【0142】
第2-2の運針領域における秒針31の運針の検出回数N22値が19以上の場合(ステップSS711のNo)は、回数N22値が大きすぎないか確認を行う。第2-2の運針領域における秒針31の運針の検出回数N22が21を超える場合(ステップSS712のYes)は、受光時間が長いために検出電圧Vが高くなり、閾値thを超える回数が多くなっていると考えられる。従って回数N22を減少させる為に基準受光時間tnに対し受光時間の最小調整時間単位Δt分だけ短くし(ステップSS714、ステップSS73~SS712の処理を繰り返す。
【0143】
第2-2の運針領域における秒針31の運針の検出回数N22値が19以上21以下の場合(ステップSS712のNo)は、基準受光時間tnを受光時間L2として設定し(ステップSS715)第1の初期受光時間調整動作は終了する(ステップSS1)。第2-2の運針領域における秒針31の運針の検出回数が19~21回であれば、
図17に示したように第2-1の運針領域を40秒分、第2-1の運針領域以外を20秒分に設定しており、設定値に近い回数N22値を得ることができているので、最適に基準受光時間tnを調整できたものとして、基準受光時間tnの値をL2として設定する。
図26に示したフローチャートの初期受光時間調整動作では、第2-1の運針領域以外における秒針31の運針の検出回数に対する許容範囲として、20秒分に対して±1秒分の余裕幅を持たせている例を示したが、この余裕分を大きくすれば受光時間の調整回数が少なくなり、短時間で初期受信時間調整が完了できるため出荷時組立行程内の作業性が良くなる。その一方で検出電圧Vから基準位置を検出する精度が若干低下し、生産歩留まりが悪化する可能性があるので、例えば±2秒分の余裕分を持たせることによって、出荷時の生産歩留まりと製造効率のバランスが良くなるのであれば、±2秒分の余裕分を持たせても構わない。
【0144】
第1の初期受光時間調整動作(
図18のステップSS1)が終了すると、第2の初期受光時間調整動作(
図18のステップSS2、
図27)に進む。以下、
図27のフローにより第2の初期受光時間調整動作について説明する。第2の初期受光時間調整動作が開始すると、比較器63cにおける検出電圧Vの閾値を閾値th2(第2の閾値)と設定する(ステップSS81)とともに、受光時間制御部43により基準受光時間tnを仮設定する(ステップSS82)。基準受光時間tnは、秒針31の運針間隔の半分の時間を初期値として設定してもよく、0秒からtmaxの範囲内で値を設定する。続いて、設定されている基準受光時間tnが0秒からtmaxの範囲内であるか判定を行う(ステップSS83)。なお、tmaxは
図26のtmaxと同一であるので、説明は省略する。基準受光時間が0秒以下、あるいはtmax以上となった場合は(ステップSS83のNo)、エラーが発生したと判定し
図18に示されたフローチャートの全ての動作を停止する(ステップSS816)。
【0145】
基準受光時間tnが0秒からtmaxの範囲内にある場合は(ステップSS83のYes)、第2の初期受光時間調整動作における秒針31の総運針回数Naの値と、総運針回数Naのうち第1の運針領域における秒針31の運針の検出回数N1の値とを0に初期化する(ステップSS84)。続いて、駆動制御部41により、秒針31を1秒分運針させて(ステップSS85)、第2-2の運針領域検出動作を行う(ステップSS86、
図22)。
【0146】
図22のフローを用いて第2-2の運針領域検出動作を説明する。第2-2の運針領域検出動作を開始すると、比較器63cにおける検出電圧Vの閾値を閾値th2(第2の閾値)に設定し(ステップSS41)、光検出動作を行う(ステップSS42)。なお、光検出動作は、
図10を参照して説明した動作と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0147】
光検出動作(
図22のステップSS42)において、検出された総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th2(第2の閾値)未満であった場合(ステップSS43のNo)、秒針31が第1の運針領域に存在していないことになるので、運針領域検出部42はすべてのフラグをリセットした後に第2-2の運針領域フラグを立て(ステップSS44)第2-2の運針領域検出動作を終了する。
【0148】
一方、検出電圧Vが閾値th2(第2の閾値)以上の場合(ステップSS43のYes)、秒針31が第1の運針領域に存在していることになるので、運針領域検出部42はすべてのフラグをリセットした後に第1の運針領域フラグを立て(ステップSS45)第2-2の運針領域検出動作を終了する。
【0149】
図27の第の初期受光時間調整動作における第2-2の運針領域検出動作(ステップSS86)が終了すると、第1の運針領域フラグが立っているか否かを判定する(ステップSS87)。第1の運針領域フラグが立っている場合は(ステップSS87のYes)、総運針回数Na値と第1の運針領域における秒針31の運針の検出回数N1値とを1加算する(ステップSS88)。第1の運針領域フラグが立っていなかった場合は(ステップS87のNo)、総運針回数Na値のみを1加算する(ステップSS89)。
【0150】
ステップSS89あるいはステップSS89の後は、総運針回数Naと秒針31の1周あたり運針回数(=60)とを比較し(ステップSS810)、総運針回数Naが1周あたりの運針回数まで到達していない場合は(ステップSS810のNo)、ステップSS85~SS810の処理を繰り返す。総運針回数Naが1周あたりの運針回数に到達した場合は(ステップSS810のYes)、第1の運針領域における秒針31の運針の検出回数N1値を判定する(ステップSS811以後)。
【0151】
第1の運針領域における秒針31の運針の検出回数N1の値が9未満の場合(ステップSS811のYes)は、基準受光時間tnに対して受光時間の最小調整時間単位Δt分だけ長くし(ステップSS813)、ステップSS83~SS811の処理を繰り返す。これは受光時間が短いために検出電圧Vが低くなり、第1の運針領域において秒針31の運針を検出した回数N1が9回未満になっていることから、受光時間を少し長く設定しなおすことで検出電圧Vを高めて、回数N1を増加させるように調整している。
【0152】
第1の運針領域において秒針31の運針を検出した回数N1の値が9以上の場合(ステップSS811のNo)は、回数N1値が11を超えるかを判定し、11を超える場合(ステップSS812のYes)は、基準受光時間tnに対し受光時間の最小調整時間単位Δt分だけ短くし(ステップSS814)、ステップSS83~SS812の処理を繰り返す。これは受光時間が長いために検出電圧Vが高くなり、第1の運針領域において秒針31の運針を検出した回数N1が11回を超えていることから、受光時間を少し短く設定しなおすことで検出電圧Vを下げて、回数N1を減少させるように調整している。
【0153】
第1の運針領域において秒針31の運針を検出した回数N1の値が9以上11以下の場合(ステップSS812のNo)は、基準受光時間tnを受光時間L8として設定する(ステップSS815)。これは第1の運針領域において秒針31の運針を検出した回数N1が9~11回であり、
図17に示したように第1の運針領域の10秒分の設定に近い回数を得ることができているので、最適に基準受光時間tnを調整できたとして、基準受光時間tnの値をL8として設定している。
【0154】
図27の初期受光時間調整動作では、第1の運針領域以外における秒針31の運針の検出の回数に対する許容範囲として、10秒分に対して±1秒分の余裕幅を持たせた例を示したが、この余裕分を大きくすれば受光時間の調整回数が少なくなり、短時間で初期受信時間調整が完了できるため出荷時組立行程内の作業性が良くなる。その一方で検出電圧Vから基準位置を検出する精度が若干低下し、生産歩留まりが悪化する可能性があるので、例えば±2秒分の余裕分を持たせることによって、出荷時の生産歩留まりと製造効率のバランスが良くなるのであれば、±2秒分の余裕分を持たせても構わない。
【0155】
第2の初期受光時間調整動作(
図18のステップSS2)が完了すると、初期針位置検出動作(
図18のステップSS3、
図19)に移行する。
図19に示すように、初期針位置検出動作を開始すると、受光時間を受光時間L2に設定し(ステップSS11)、運針領域検出部42により、第1の運針領域検出動作を行う(ステップSS12、
図20)。
【0156】
図20に示すように、第1の運針領域検出動作においては、比較器63cにおける検出電圧Vの閾値を閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)に設定する(ステップSS21)。その設定条件の下、光検出動作を行う(ステップSS22)。なお、光検出動作は、
図10で前述したため説明を省略する。
【0157】
光検出動作(
図20のステップSS22)において検出された総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)未満であった場合(ステップSS23のNo)、運針領域検出部42は、秒針31が第2-1の運針領域に存在することを示すために、すべてのフラグをリセットした後に第2-1の運針領域フラグを立てる(ステップSS24)。すなわち、運針領域検出部42は、秒針31が基準位置から遠い運針領域に存在することを検出する。
【0158】
一方、検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)以上であった場合(ステップSS23のYes)、運針領域検出部42は、秒針31が第2-1の運針領域には存在しないことになるので、第2-1の運針領域フラグを立てない。これは、秒針31が第2-2の運針領域、第2-3の運針領域、第1の運針領域のいずれの運針位置に存在するのか不明な状態である。
【0159】
図19に示すように、第1の運針領域検出動作(ステップSS12、
図20)において、秒針31が第2-1の運針領域に存在することを示す為の第2-1の運針領域フラグが立っていない場合(ステップSS13のNo)、すなわち、秒針31が第2-2の運針領域、第2-3の運針領域、第1の運針領域のいずれの運針領域に存在するのか不明である場合、駆動制御部41により、秒針31を10秒分運針させる(ステップSS14)。この動作を、第2-1の運針領域フラグが立っていることを検出するまで繰り返す。
【0160】
本実施形態では、秒針31を1秒分運針させて秒針31が存在する領域を検出し、更に運針する領域の切り替わりを検出することで、各領域の範囲を識別し、特に第1の運針領域では領域範囲内の全運針位置での受光時間を記憶し比較することで、基準位置を検出している。しかし、初期動作として針位置検出を開始したときに、秒針31が第2-1の運針領域に存在していないことが検出された場合は、第1の運針領域、第2-2の運針領域、第2-3の運針領域のいずれかに秒針31が存在することになるが、それぞれの領域の中でどこに秒針31が存在するかは分からず、運針する領域の切り替わりが判定できないため、正確な基準位置の検出ができない。従ってその場合には、10秒分早送り運針することで第1の運針領域、第2-2の運針領域、第2-3の運針領域での秒針31の検出動作をスキップして、第2-1の運針領域に秒針31を進め、改めて第2-1の運針領域から第2-1の運針領域以外の領域への切り替わりを検出するように動作する。
【0161】
図17に示したような第1の運針領域に設定した運針数である10秒分を、早送り運針回数に設定したが、出荷時組み立て工程の作業性が良くなるように最適に設定してよい。好ましくは、第1の運針領域に設定した運針数以上で、秒針31の1周あたりの総運針回数の半分以下が良い。
【0162】
秒針31が第2-1の運針領域に存在することを示す為の第2-1の運針領域フラグが立っている場合(ステップSS13のYes)、すなわち、光検出動作(
図20のステップSS22)において検出された総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)未満であった場合、秒針31を1秒分運針した(ステップSS15)後に、第2-1の運針領域検出動作を行う(ステップSS16、
図21)。ステップSS16の第2-1の運針領域検出動作は、
図26のステップSS76の第2の運針領域検出動作と同じなので、ここでの説明は省略する。
【0163】
図19に示すように、第2-1の運針領域検出動作(ステップSS16)を行った後、秒針31が第2-1の運針領域に存在することを示す為の第2-1の運針領域フラグが立っているか判定を行う。(ステップSS17)。第2-1の運針領域フラグが立っている場合(ステップSS17のYes)、まだ秒針31が第2-1の運針領域から外れていないことになるので、更に秒針31を進める為に秒針を1秒分運針させて(ステップSS15)、第2-1の運針領域フラグが立たなくなるまで、ステップSS15~SS17の処理を繰り返す。
【0164】
ステップSS15~SS17の処理を繰り返した後、第2-1の運針領域フラグが立っていない場合(ステップSS17のNo)、すなわち、秒針31が第2-1の運針領域から第2-2の運針領域に移動したことを検出した場合、受光時間を受光時間L8に設定し(ステップSS18)、運針領域検出部42により、第2-2の運針領域フラグが立っているか判定を行う(ステップSS19)。第2-2の運針領域フラグが立っている場合(ステップSS19のYes)、第2-2の運針領域検出動作を行う(ステップSS110、
図22)。
【0165】
図22に示すように、第2-2の運針領域検出動作においては、比較器63cにおける検出電圧Vの閾値を閾値th2(第2の閾値)と設定する(ステップSS41)。その設定条件の下、光検出動作を行う(ステップSS42)。なお、光検出動作は、第1の実施形態において
図10を参照して説明した動作と同じであるため、ここでは図示及び説明を省略する。
【0166】
光検出動作(
図22のステップSS42)において検出された総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th2(第2の閾値)未満であった場合(ステップSS43のNo)、運針領域検出部42は、すべてのフラグをリセットした後に、秒針31が第2-2の運針領域に存在することを示す第2-2の運針領域フラグを立てる(ステップSS44)。
【0167】
一方、検出電圧Vが閾値th2(第2の閾値)以上であった場合(ステップSS43のYes)、運針領域検出部42は、すべてのフラグをリセットした後に、秒針31が第1の運針領域に存在することを示す第1の運針領域フラグを立てる(ステップSS45)。
【0168】
図19に示すように、第2-2の運針領域検出動作(ステップSS110)を行った後、駆動制御部41により、秒針31を1秒分運針させて(ステップSS111)、さらに、運針領域検出部42が、第2-2の運針領域フラグが立っているか否かの判定を行う(ステップSS19)。
【0169】
ステップSS19~SS111の処理を繰り返し、秒針31が第2-2の運針領域に存在することを示す為の第2-2の運針領域フラグが立っていなかった場合(ステップSS19のNo)、すなわち、秒針31が第2-2の運針領域から第1の運針領域に移動したことを検出した場合、制御回路40に含まれる第1の運針領域における運針ステップ数を管理する為の第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)のカウント値を0に初期化(ステップSS112)した後、基準位置検出動作を実施する(ステップSS113、
図23)。
【0170】
図23に示すように、基準位置検出動作においては、比較器63cにおける検出電圧Vの閾値を閾値th2(第2の閾値)に設定する(ステップSS51)。その設定条件の下、受光時間取得動作を行う(ステップSS52)。なお、受光時間取得動作は、第1の実施形態において
図12を参照して説明した動作と、設定する検出電圧Vの閾値が異なることを除いて同じであるため、ここでは図示及び説明を省略する。
【0171】
図23に示すように、基準位置検出動作において、受光時間記憶部45により、現在の運針位置に対応付けて、受光時間取得動作において受光時間カウント部44によりカウントされた受光時間を記憶し(ステップSS53)、基準位置検出動作を終了する。
【0172】
図19にて、基準位置検出動作(ステップSS113)終了後、第1の運針領域内運針カウンタを1加算し(ステップSS114)、当該カウンタのカウント値が10となったか否かを判定する(ステップSS115)。当該カウンタのカウント値が10未満である場合(ステップSS115のNo)、秒針31を1秒分運針させて(ステップSS116)、ステップSS113~SS115の処理を繰り返す。
【0173】
第1の運針領域内運針カウンタのカウント値が10になった場合(ステップSS115のYes)、すなわち、秒針31が第1の運針領域に入った後10秒分運針した場合は、制御回路40はエラーフラグの有無を判定する(ステップSS117)。エラーフラグが立っている場合は(ステップS110のYes)、
図18に示されたフローチャートの全ての動作を停止し、発光部62又は受光部63等が故障している可能性がある旨ユーザに対して報知する。
【0174】
エラーフラグが立っていない場合(ステップSS117のNo)、制御回路40は、受光時間記憶部45が記憶する秒針31の各運針位置に対応付けて記憶される受光時間に基づいて、秒針31の基準位置を取得する(ステップSS118)。具体的には、制御回路40は、受光時間記憶部45に記憶される運針位置のうち、受光時間が最も短い運針位置を秒針31の基準位置として取得する。
【0175】
そして、制御回路40は、取得された基準位置と内部時刻とに基づいて、秒針31に位置ズレの有無を判定する(ステップSS119)。位置ズレが生じていた場合(ステップSS119のYes)、駆動制御部41により、位置ズレを修正する針位置修正動作を行い(ステップSS120)、第1の運針領域内運針カウンタのカウント値を0に初期化する(ステップSS121)。位置ズレが生じていなかった場合は(ステップSS119のNo)、位置ズレを修正する必要がないので、針位置修正動作を行わずに第1の運針領域内運針カウンタのカウント値を0に初期化する(ステップSS121)。第1の運針領域内運針カウンタの初期化が終わった後は、全てのフラグをリセットし、第2-3の運針領域フラグを立てる(ステップSS122)。
【0176】
初期針位置検出動作(
図18のステップSS3)の終了後は、秒針31は通常運針を開始する。
図18のステップSS4以降を参照して、秒針31の通常運針時における針位置検出動作について説明する。
【0177】
内部時刻が運針タイミングであった場合(ステップSS4のYes)、駆動制御部41により、秒針31を運針させる(ステップSS6)。内部時刻が運針タイミングではなかった場合(ステップSS4のNo)は、ユーザから要求された運針以外の他の処理を行った後に(ステップSS5)、運針タイミングの判定に戻る(ステップSS4)。なお、運針以外の他の処理とは、電子時計1が備える種々の機能に関する処理であって、例えば、衛星信号など時刻情報の受信動作等である。
【0178】
ステップSS6で運針する量は、駆動制御部41により電子時計1の電池電圧の状態等に応じて決定される。例えば、電池電圧が高く維持されている場合は1秒間隔で1秒分の運針量とし、電池電圧が満充電電圧の8割を下回った場合は2秒間隔で2秒分の運針量とする。秒針31の運針が終了した後、秒針31が第1の運針領域に存在することを示す為の第1の運針領域フラグが立っているか否かを判定する(ステップSS7)。
【0179】
ステップSS7で、第1の運針領域フラグが立っていない場合(ステップSS7のNo)、第1の運針領域における運針ステップ数を管理する為の第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)のカウント値を0に初期化する(ステップSS92)。第1の運針領域内運針カウンタのカウント値を初期化した後、秒針31が第2-1の運針領域に存在することを示す為の第2-1の運針領域フラグが立っているか否かを判定する(ステップSS93)。ステップSS7で、第1の運針領域フラグが立っている場合(ステップSS7のNo)、第1の運針領域内運針カウンタのカウント値を1加算し(ステップSS8)、受光時間を受光時間L8に設定する(ステップSS9)。なお、ステップSS8は、秒針31が1秒間隔で1秒分の運針をしている場合の説明であり、秒針31が2秒間隔で2秒分運針をしている場合は、加算する値を2とする。その後、基準位置検出動作を実施する(ステップSS90)。基準位置検出動作については、既に説明済であるため省略する。
【0180】
ステップSS93で、第2-1の運針領域フラグが立っていない場合(ステップSS93のNo)、秒針31が第2-2の運針領域に存在することを示す為の第2-2の運針領域フラグが立っているか否かを判定する(ステップSS96)。ステップSS93で、第2-1の運針領域フラグが立っている場合(ステップSS93のYes)、受光時間を受光時間L2に設定し(ステップSS94)、第2-1の運針領域検出動作を実施する(ステップSS95)。ステップSS95の第2の運針領域検出動作は、既に説明済であるため省略する。
【0181】
ステップSS96で、第2-2の運針領域フラグが立っている場合は(ステップSS96のYes)、受光時間をL8に設定し(ステップSS97)、第2-2の運針領域検出動作を実施する(ステップSS98)。ステップSS96で、第2-2の運針領域フラグが立っていない場合は(ステップSS96のNo)、受光時間をL2に設定し(ステップSS99)、第2-3の運針領域検出動作を実施する(ステップSS990、
図24)。なお、ステップSS98の第2-2の運針領域検出動作は、既に説明済であるため省略する。
【0182】
図24のフローを用いて第2-3の運針領域検出動作について説明する。第2-3の運針領域検出動作が開始されると、比較器63cにおける検出電圧Vの閾値を閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)に設定し(ステップSS61)、光検出動作を行う(ステップSS62)。なお、光検出動作は、既に説明済であるため省略する。
【0183】
光検出動作(
図24のステップSS62)において検出された総受光量に対応する検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)未満であった場合(ステップSS63のNo)、秒針31が第2-3の運針領域に存在していないことになるので、運針領域検出部42はすべてのフラグをリセットした後に第2-1の運針領域フラグを立てる(ステップSS65)。
【0184】
検出電圧Vが閾値th1(第3の閾値、第4の閾値)以上の場合(ステップSS63のYes)、秒針31が第2-3の運針領域に存在していることになるので、運針領域検出部42はすべてのフラグをリセットした後に第2-3の運針領域フラグを立てる(ステップSS64)。ステップSS64、ステップSS65が実行された後に第2-3の運針領域検出動作が終了する。
【0185】
ステップSS7、ステップSS93、ステップSS96は、秒針31が第1の運針領域、第2-1の運針領域、第2-2の運針領域、第2-3の運針領域の何れに存在しているかを判定する処理である。これは秒針31が運針する前に、いずれの運針領域フラグが立っているかにより、第2-1の運針領域、第2-2の運針領域、第2-3の運針領域の何れに秒針31が存在しているのかを判定し、運針をした後の処理を切り替えている。
【0186】
ステップSS90の基準位置検出動作、ステップSS95の第2-1の運針領域検出動作、ステップSS98の第2-2の運針領域検出動作、ステップSS990の第2-3の運針領域検出動作は、秒針31が、第1の運針領域、第2-1の運針領域、第2-2の運針領域、第2-3の運針領域のいずれかに存在する場合に、秒針31の存在している領域の切り替わりを判定する為の動作である。これらの秒針31の存在している領域の切り替わりを判定する為の動作は、上述のステップSS991、ステップSS93、ステップSS96の各判定結果を受けて実施されるので、秒針31の存在位置判定結果よりも運針回数にして1回分進んだ位置にて実施されている。
【0187】
本来であれば、秒針31が運針したところで、秒針31の存在している領域の切り替わりを判定する為の動作、即ちステップSS7、ステップSS93、ステップSS96、といった処理が直ちに実施され、秒針31の存在している領域が切り替わった場合は、秒針31の存在している領域の判定動作をやりなおすことが理想的である。しかしこの場合、秒針31の存在する運針領域の切り替わりが判明すると、再度秒針31の存在している領域の判定動作を行わなくてはならず、処理が煩雑になってしまい、処理時間が長くなり発光素子の点灯回数が増えることで、消費電力が悪化する可能性がある。上記の方法によれば、長い処理時間を要したり消費電力が悪化するリスクを少なくできる。
【0188】
ステップSS90の基準位置検出動作の実施後は、第1の運針領域内運針カウンタのカウント値が10まで到達したか否かを判定する(ステップSS91)。第1の運針領域内運針カウント値が10まで到達していない場合は(ステップSS91のNo)、ユーザから針位置修正を要求する操作が行われたか否か判定する(ステップSS991)。第1の運針領域内運針カウント値が10まで到達していた場合は(ステップSS91のYes)、エラーフラグの有無を判定する(ステップSS992)。
【0189】
ステップSS95の第2の領域検出動作、ステップSS98の第2-2の運針領域検出動作、ステップSS990の第2-3の運針領域検出動作、の後には、ユーザから針位置修正を要求する操作が行われたか否か確認する(ステップSS991)。
【0190】
ステップSS991で、ユーザから竜頭15やボタンを操作することによる針位置修正の要求が行われた場合(ステップSS991のYes)、改めて初期針位置検出動作を行う(ステップSS3)。ユーザから針位置検出の要求が行われなかった場合は(ステップSS991のNo)、ユーザから要求された運針以外の他の処理を行った後(ステップSS5)、運針タイミングにおいて(ステップSS4のYes)、駆動制御部41により、秒針31を運針させる(ステップSS6)。
【0191】
ステップSS992のエラーフラグの有無を判定し、エラーフラグが立っている場合は(ステップSS992のYes)、すべての処理を停止する。
図12で説明したように、エラーフラグが立つ状況は、検出電圧Vが閾値th1あるいはth2を上回ることができずにタイムアップした状態である。閾値をth1あるいはth2以外に変更できない場合は、システム異常と判断しすべての動作を停止させ、閾値th1あるいはth2を変更可能な場合は、閾値をth1あるいはth2よりも下げて、第1の初期受光時間調整動作(SS1)や第2の初期受光時間調整動作(SS2)を実施するとよい。
【0192】
エラーフラグが立っていない場合(ステップSS992のNo)、制御回路40は、受光時間記憶部45が記憶する秒針31の各運針位置に対応付けて記憶される受光時間に基づいて、秒針31の基準位置を取得する(ステップSS993)。具体的には、受光時間記憶部45に記憶される受信時間データのうち、受光時間が最も短い運針位置を秒針31の基準位置として取得する。
【0193】
そして制御回路40は、取得された基準位置と内部時刻とに基づいて、秒針31の位置ズレの有無を判定する(ステップSS994)。位置ズレが生じていた場合(ステップSS994のYes)、位置ズレを修正する針位置修正動作を行い(ステップSS995)、制御回路40における第1の運針領域内運針カウンタ(不図示)のカウント値を0に初期化する(ステップSS996)。位置ズレが生じていなかった場合(ステップSS994のNo)、位置ズレを修正する必要がないので、針位置修正動作は行わずに第1の運針領域内運針カウンタのカウント値を0に初期化する(ステップSS996)。第1の運針領域内運針カウンタの初期化処理が終わると、全てのフラグをリセットし第2-3の運針領域フラグを立て(ステップSS997)、ステップSS4に戻って、通常運針及び針位置検出動作を繰り返す。
【0194】
上記のように第2の実施形態では、第1の実施形態における第2の運針領域を、第2-1の運針領域、第2-2の運針領域、第2-3の運針領域、のように複数に分け、それぞれの運針領域に応じて受光時間を変更することで、第1の運針領域の検出精度、ひいては基準位置の検出精度を高めることができる。更に、基準位置を検出する可能性の低い運針領域(第2-1の運針領域、第2-3の運針領域)の受光時間を、基準位置を有する第1の運針領域を検出するための領域(第2-2の運針領域)の受光時間よりも短く設定するので、LEDの発光に伴う消費電力を抑制することができ、時計の電池寿命を長く保つことが可能になる。特に、第1の運針領域の直前の領域である第2-2の運針領域では、基準位置を検出する可能性の低い第2-1の運針領域よりも受光時間を長め(L8)に設定することにより、受光部63における総受光量が多くし、確実に指針が第2-2の運針領域に存在することを検知できるようにしている。これにより、第2-2の運針領域から第1の運針領域に指針が移動することの検知、つまり第2-2の運針領域の最後の運針位置(第1の運針位置)から第1の運針領域の開始位置(第2の運針位置)へ到達したことの検知も、より確実に精度良く行えるようになる。
【0195】
以上、本発明に係る各実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0196】
1 電子時計、10 外装ケース、15 竜頭、20 文字板、21 時字、30 発振回路、31 秒針、32 分針、33 時針、35 指針軸、40 制御回路、41 駆動制御部、42 運針領域検出部、43 受光時間制御部、44 受光時間カウント部、45 受光時間記憶部、50 駆動機構、51 ステップモータ、60 針位置検出部、61 歯車、61b 検出孔、62 発光部、63 受光部、63a 受光素子、63b 積分器、63c 比較器、70 時刻情報受信回路、SW1,SW2 スイッチ、C コンデンサ。