(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117646
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】エマルション粒子含有水性分散体
(51)【国際特許分類】
C08F 2/30 20060101AFI20220804BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20220804BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220804BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20220804BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20220804BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C08F2/30
C08K5/29
C08L101/00
C08K5/01
C08K5/10
C08F2/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014257
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】坂元 芳峰
(72)【発明者】
【氏名】今泉 洋平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BC031
4J002BG051
4J002ER006
4J002FD146
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GK02
4J002HA07
4J011AA10
4J011KA04
4J011KA10
4J011KA23
4J011KB02
4J011KB30
4J011PA23
4J011PA30
4J011PA39
4J011PC06
(57)【要約】
【課題】本発明は、長期保管可能な分散安定性に優れたエマルション粒子含有水性分散体およびエマルション粒子含有水性分散体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
イソシアネート含有化合物と水性媒体とを混合し、得られた混合物を攪拌下で当該混合物の転相開始温度以上であって水性媒体の沸点未満の温度に加熱した後、前記混合物を当該混合物の転相開始温度よりも低い温度に冷却するエマルション粒子含有水性分散体の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有化合物を含むエマルション粒子含有水性分散体であって、エマルション粒子の固形分(不揮発分)に対するイソシアネート基の含有量が1mol%以上50mol%以下であり、平均粒子径が10~300nmであるエマルション粒子含有水性分散体。
【請求項2】
炭化水素化合物および/又はエステル系化合物を含む請求項1記載のエマルション粒子含有水性分散体。
【請求項3】
さらに単量体成分を含有する請求項1又は2記載のエマルション粒子含有水性分散体。
【請求項4】
さらに重合体を含有する請求項1~3記載のエマルション粒子含有水性分散体。
【請求項5】
イソシアネート基含有化合物と、ノニオン性界面活性剤と、炭化水素化合物および/又はエステル系化合物と、水性媒体とを混合して混合物を得る工程と、該混合物を当該混合物の転相開始温度以上であって水性媒体の沸点未満の温度に加熱した後、前記混合物を当該混合物の転相開始温度よりも低い温度に冷却する工程とを含む、エマルション粒子含有水性分散体の製造方法。
【請求項6】
前記エマルション粒子の平均粒子径が10~300nmである請求項5に記載のエマルション粒子含有水性分散体の製造方法。
【請求項7】
前記エマルション粒子含有水性分散体中の固形分100質量部中に含まれる前記ノニオン性界面活性剤が10質量部以上60質量部以下である請求項5又は6に記載のエマルション粒子含有水性分散体の製造方法。
【請求項8】
前記エマルション粒子含有水性分散体の固形分100質量部中に含まれるイソシアネート基含有化合物が1質量部以上50質量部以下である請求項5~7のいずれかに記載のエマルション粒子含有水性分散体の製造方法。
【請求項9】
前記エマルション粒子が単量体成分を含有する請求項5~8のいずれかに記載のエマルション粒子含有水性分散体の製造方法。
【請求項10】
前記エマルション粒子含有水性分散体中の固形分100質量部中に含まれる前記エステル系化合物が5質量部以上50質量部以下である請求項5~9のいずれかに記載のエマルション粒子含有水性分散体の製造方法。
【請求項11】
アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレン系モノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を含有する請求項5~10のいずれかに記載のエマルション粒子含有水性分散体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション粒子含有水性分散体に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、塗料、コーティング剤、インク、粘着剤、接着剤、粘接着剤、繊維、プライマー、架橋剤などの用途に有用なエマルション粒子含有水性分散体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護、作業上の安全衛生の観点から、塗料、コーティング剤において無公害化が望まれ、溶剤型塗料の水性化が行われつつある。水性塗料の塗膜性能を向上するにあたり、種々の架橋性水性樹脂分散体が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1にはイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネート、および、分散剤を含有する水分散型ブロックイソシアネート組成物であって、前記分散剤は、保護コロイド剤を含有せず、界面活性剤を含有し、前記界面活性剤は、分子末端にヒドロキシ基を有するHLB16以上の芳香族ノニオン界面活性剤を、含有することを特徴とする、水分散型ブロックイソシアネート組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イソシアネート化合物は塗膜の硬度、耐擦り傷性、耐薬品性等の塗膜物性を向上するなど、架橋剤として有用であるが、空気中の水分やアミノ基含有化合物、水酸基含有化合物の他、水系溶媒と反応して失活してしまうため、イソシアネート基を活性な状態で維持したまま安定な水分散体を得る事に課題があった。この失活を防ぐ手法としてイソシアネート基をブロック化剤で保護する技術が一般的に用いられるものの、塗膜形成時には100℃以上の高温に加熱しブロック化剤を解離させてイソシアネート基を発生させる必要がある。よって、加熱により着色が起こったり、好ましくない反応が起こったりするなどして、用途によっては適用が困難な場合があった。
【0006】
本発明の目的は、イソシアネート基をブロック化剤などにて変性することなく、かつ環境保護、安全性に優れるイソシアネート基含有化合物を有する水性分散体において、長期保管可能な分散安定性に優れ、かつ100℃未満でも硬化が可能なエマルション粒子含有水性分散体およびエマルション粒子含有水性分散体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記のような問題点に鑑み検討を行い、イソシアネート基含有化合物と水性媒体とを混合し、得られた混合物を攪拌下で当該混合物の転相開始温度以上であって水性媒体の沸点未満の温度に加熱した後、前記混合物を当該混合物の転相開始温度よりも低い温度に冷却するエマルション粒子含有水性分散体の製造方法が、長期保管可能な分散安定性に優れたエマルション粒子含有水性分散体として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イソシアネート基をブロック化剤などにて変性することなく、かつ環境保護、安全性に優れるイソシアネート基含有化合物を有する水性分散体において、長期保管可能な分散安定性に優れ、かつ100℃未満でも硬化が可能なエマルション粒子含有水性分散体およびエマルション粒子含有水性分散体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。
【0011】
[本開示のエマルション粒子]
本開示のエマルション粒子は、イソシアネート基含有化合物を含む。
【0012】
本開示のエマルション粒子が含有するイソシアネート基含有化合物としては、
1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンやグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
また、3官能以上のイソシアネート化合物が、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であり、特にヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
イソシアネート基含有化合物は、例えば、「コロネートL」、「コロネートL-55E」、「コロネートL-45E」「コロネートHXR」「コロネートHX」、「コロネートHXLV」、「コロネートHK」、「コロネート2715」、「コロネートHXR90」、「コロネートHXR90B」、「コロネートMPAX-75」、「コロネートHX-T」、「コロネート2770」、「コロネート2785」、「コロネート2793」、「コロネートHL」、「コロネートHL-S」、「コロネート2234」、「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、東ソー(株)製、「コロネート」および「アクアネート」は登録商標〕、「デスモジュールN3400」、「デスモジュールN3200」〔住友バイエルウレタン(株)(現バイエルA.G.社)製、「デスモジュール」は登録商標)、「デュラネートD-101」「デュラネートD-201」、「デュラネートTSE-100」、「デュラネートTSS-100」、「デュラネートTSA-100」、「デュラネート24A-100」、「デュラネート24A-100」、「デュラネート22A-75P」、「デュラネート21S-75E」、「デュラネートTPA-100」、「デュラネートTKA-100」、「デュラネートMFA-75B」、「デュラネートMHG-80B」、「デュラネートTUL-100」、「デュラネートTLA-100」、「デュラネートE-402-80B」、「デュラネートE-405-70B」、「デュラネートA201H」〔以上、旭化成ケミカルズ(株)製、「デュラネート」は登録商標〕、「タケネートD-110N」、「タケネートD-120N」、「タケネートM-631N」、「MTERT-オレスターNP1200」〔以上、三井化学ポリウレタン(株)製、「タケネート」および「オレスター」は登録商標)などとして商業的に容易に入手することができる。これらのポリイソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0013】
本開示のエマルション粒子は、イソシアネート基含有化合物をエマルション粒子に含ませる観点から、単量体成分を含んでいても良い。単量体成分には、1または2以上の単量体を含む。単量体としては、単官能単量体および/または多官能単量体が例示される。上記単官能単量体および多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0014】
単官能単量体としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合含有単量体などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0016】
本開示のエマルション粒子に用いる単官能単量体としては、アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレン系モノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーを用いることが好ましい。
【0017】
アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明においては、前記アルキル(メタ)アクリレートは、脂環構造を有する(メタ)アクリレートを包含する概念のものである。
【0018】
前記アルキル(メタ)アクリレートのなかでは、エマルション粒子含有水性分散体中のイソシアネート基を失活させずに安定化させ、かつ、の分散安定性を向上させる観点から、炭素数が1~10であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が4~8であるアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、tert-メチルスチレン、o-tert-ブチルスチレン、m-tert-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレンなどのアルキル基の炭素数が1~4であるアルキルキルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-エトキシスチレン、m-エトキシスチレン、p-エトキシスチレン、o-tert-ブトキシスチレン、m-tert-ブトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレンなどのアルコキシ基の炭素数が1~4であるアルコキシスチレン、o-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、p-フルオロスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレンなどのハロゲン原子含有スチレン、o-アセトキシスチレン、m-アセトキシスチレン、p-アセトキシスチレンなどのアセトキシスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
スチレン系モノマーのなかでは、エマルション粒子含有水性分散体中のイソシアネート基を失活させずに安定化させ、かつ、分散安定性を向上させる観点から、スチレン好ましい。
【0021】
スチレン系モノマーは、ベンゼン環にニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの置換基が存在していてもよい。
【0022】
エマルション粒子含有水性分散体中のイソシアネート基を失活させずに安定化させ、かつ、の分散安定性を向上させる観点から、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびスチレンからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーが好ましく、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーがより好ましく、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0023】
エマルション粒子含有水性分散体に用いる単官能単量体としては、アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレン系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび/または2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが必須成分として用いられており、n-ブチル(メタ)アクリレートおよびイソブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーが任意で用いられていることがさらに好ましい。
【0024】
エマルション粒子含有水性分散体に用いる単官能単量体の含有率は、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、エマルション粒子含有水性分散体中の固形分100質量部に対して好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに一層好ましくは25質量%以上であり、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0025】
多官能単量体としては、例えば、炭素数1~10の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート、炭素数2~4のアルキレンオキシド基の付加モル数が2~50であるアルキルジ(メタ)アクリレート、炭素数1~10の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、炭素数1~10の多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート、炭素数1~10の多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレート、炭素数1~10の多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
エマルション粒子含有水性分散体に用いる多官能単量体の含有率は、本発明の効果を損なわない範囲で含有していても良く、エマルション粒子含有水性分散体中の固形分100質量部に対して好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらに一層好ましくは2質量%以上であり、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0027】
本開示のエマルション粒子は、水不溶または水難溶性化合物を含有する。水不溶または水難溶性化合物として炭化水素化合物、エステル系化合物等が挙げられる。本開示のエマルション粒子としては、水不溶または水難溶性化合物として、エステル系化合物が好ましい。
【0028】
本開示のエマルション粒子に用いる炭化水素化合物としては、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ヘキサン、ケロシン、軽油、ミネラルオイル、スクワラン、流動パラフィンおよび軽質イソパラフィン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカンなどが挙げられる。
【0029】
本開示のエマルション粒子に用いるエステル系化合物としては、脂肪酸エステルや、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS-12 JNC社製)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(商品名:CS-16 JNC社製)などが挙げられる。
【0030】
本開示のエマルション粒子に用いる脂肪酸エステルとしては、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルであることが好ましい。脂肪酸エステルを形成する脂肪酸残基の炭素数は1~25の脂肪酸であってもよく、一価アルコール由来のアルキルエステル部の炭素数は5~25であっても良い。
【0031】
本開示の脂肪酸エステルは、炭素数が13以上である脂肪酸エステルであってよく、具体的には脂肪酸残基の炭素数が13以上であっても、アルキルエステル部の炭素数が13以上であってもよく、化合物全体の炭素数が15以上であることがより好ましい。炭素数が13以上である脂肪酸エステルの炭素数の下限値は、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、13以上、好ましくは15以上、より好ましくは18以上であり、その上限値は、特に限定されないが、原料の入手が容易であることから、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下である。
【0032】
炭素数が13以上である脂肪酸エステルは、重合性不飽和二重結合を有していてもよい。当該重合性不飽和二重結合を有する炭素数が13以上である脂肪酸エステルは、重合性不飽和二重結合を有しているが、前記単官能単量体には含まれない。
【0033】
炭素数が13以上である脂肪酸エステルとしては、例えば、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和二重結合を有するアルキルエステル部の炭素数が14以上である脂肪酸エステル、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸ステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリルなどのアルキルエステル部の炭素数が14以上である脂肪酸エステル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸2-エチルヘキシルなどの炭素数14以上のアルキル基を有する脂肪酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脂肪酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。炭素数が15以上である脂肪酸エステルのなかでは、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、アルキルエステル部の炭素数が14以上である脂肪酸エステルが好ましく、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸ステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリルがより好ましい。
本開示のエステル系化合物としては、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS-12 JNC社製)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(商品名:CS-16 JNC社製)、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸ステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリルが好ましい。
【0034】
本開示のエマルション粒子含有水性分散体中の固形分100質量部中に含まれる炭化水素化合物および/又はエステル系化合物としては、5質量部以上が好ましく、7質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましくが特に好ましい。
【0035】
エマルション粒子に用いるイソシアネート基含有化合物に対する炭化水素化合物及び/又はエステル系化合物の合計量(イソシアネート基含有化合物/(炭化水素化合物及び/又はエステル系化合物))は重量比として10/90~90/10が好ましく、15/85~85/15がより好ましく、20/80~80/20がさらに好ましい。
【0036】
エマルション粒子に用いるイソシアネート基含有化合物に対する単官能単量体および/または多官能単量体と炭化水素化合物及び/又はエステル系化合物の合計量(イソシアネート基含有化合物/(単官能単量体および/または多官能単量体と炭化水素化合物及び/又はエステル系化合物の合計量))は重量比として10/90~90/10が好ましく、15/85~85/15がより好ましく、20/80~80/20がさらに好ましい。
【0037】
本開示のエマルション粒子は、界面活性剤を用いて水性溶媒に分散しても良く、その際のエマルション粒子は、界面活性剤を含んでいても良い。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤などが挙げられ、これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよいが、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0038】
本開示のノニオン性界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0039】
本開示のエマルション粒子は、さらにアニオン性界面活性剤を含んでいてもよい。アニオン性界面活性剤を含むことでエマルション粒子の長期保管可能な分散安定性を向上することが期待できる。
【0040】
本開示のアニオン性界面活性剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル-アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0041】
本開示の界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤を含む際には、ノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤の合計量はエマルション粒子固形分100質量部に対し、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。
【0042】
本開示の界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤を含む際には、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の質量比は50/50~99/1が好ましく、60/40~99/1がより好ましく、70/30~99/1がさらに好ましい。
【0043】
本開示のエマルション粒子において、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他のモノマーが含まれていてもよい。前記他のモノマーとしては、酸基含有モノマー、水酸基含有(メタ)アクリレート、ピペリジル基含有モノマー、オキソ基含有モノマー、フッ素原子含有モノマー、窒素原子含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アジリジニル基含有モノマー、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
本開示のエマルション粒子においてイソシアネート基の失活を抑制する観点から、エマルション粒子の固形分に対する酸基含有モノマー、水酸基含有(メタ)アクリレート、窒素含有モノマーの含有量は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0045】
本開示のエマルション粒子含有水性分散体に含まれているエマルション粒子の平均粒子径としては、水性分散体の分散安定に寄与し、塗膜とした際の透明性に寄与する観点から、10nm以上であることが好ましく、15nm以上がさらに好ましく、20nm以上が特に好ましく、300nm以下であることが好ましく、250nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましい。本発明のエマルション粒子の平均粒子径は
動的光散乱法による粒子径測定装置である多検体ナノ粒子径測定システム〔大塚電子(株)製、商品名:nanoSAQLA〕を用い、光子相関法で自己相関関数を求め、キュムラント解析によって求めた平均粒子径(流体力学的径)である。
【0046】
本開示のエマルション粒子は、重合体を含んだポリマーエマルション粒子であっても良い。重合体としては、上記単量体成分が重合した重合体が例示される。本開示の重合体エマルション粒子の好ましい粒径、組成、固形分、pHなど、本開示のポリマーエマルション粒子の好ましい形態は、矛盾が無い限り本開示のモノマーエマルション粒子の好ましい形態と同様である。
[エマルション粒子含有水性分散体]
本開示エマルション粒子含有水性分散体は、水性媒体とを混合して得られる。本開示の水性媒体としては、例えば、水をはじめ、水と水溶性有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどの多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水性媒体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。水性媒体における水の含有率は、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに一層好ましくは80質量%以上であり、当該含有率の上限値は100質量%である。水性媒体のなかでは水が好ましい。
【0047】
本開示エマルション粒子含有水性分散体の固形分量としては、エマルション粒子含有水性分散体の用途などに応じて適宜調整することが好ましいが、生産性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。したがって、エマルション粒子含有水性分散体における不揮発分量は、好ましくは20~70質量%、より好ましくは25~60質量%である。
【0048】
なお、本明細書において、水性樹脂分散体における固形分量(不揮発分量)は、水性樹脂分散体1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で10分間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔水性樹脂分散体における固形分(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔水性樹脂分散体1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
【0049】
本開示のエマルション粒子含有水性分散体におけるイソシアネート基の含有量としては、エマルション粒子含有水性分散体の固形分に対して、1mol%以上であることが好ましく、3mol%以上がより好ましく、5mol%以上がさらに好ましい。50mol%以下が好ましく、45mol%以下がより好ましく、40mol%以下がさらに好ましい。
【0050】
本開示エマルション粒子含有水性分散体におけるイソシアネート基含有化合物の含有量としては、エマルション粒子含有水性分散体の固形分100質量部に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上が特に好ましい。80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0051】
本開示エマルション粒子含有水性分散体における界面活性剤の含有量としては、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、エマルション粒子含有水性分散体の固形分100質量部に対して、下限値は10質量部以上が好ましく、12質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましく、20質量部以上が特に好ましく、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、上限値は60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。
【0052】
なお、本発明のエマルション粒子含有水性分散体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えば、添加剤などが含まれていてもよい。前記添加剤としては、例えば、顔料などの着色剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、抗酸化剤、重合禁止剤、充填剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌剤、金属不活性化剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防曇剤、防食剤、顔料分散剤、流動調整剤、過酸化物分解剤、鋳型脱色剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤、防藻剤、防カビ剤、難燃剤、スリップ剤、金属キレート剤、アンチブロッキング剤、耐熱安定剤、加工安定剤、分散剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、発泡剤、老化防止剤、防腐剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、成膜助剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
[エマルション粒子含有水性分散体の製造方法]
本開示のエマルション粒子含有水性分散体は、イソシアネート基含有化合物と、ノニオン性界面活性剤と、水不溶または水難溶性化合物、水性媒体とを混合して混合物を得る工程と、該混合物を当該混合物の転相開始温度以上であって水性媒体の沸点未満の温度に加熱した後、前記混合物を当該混合物の転相開始温度よりも低い温度に冷却することによって調製することができる。
【0053】
本開示のエマルション粒子含有水性分散体を調製する際には、まずイソシアネート基含有化合物と、水不溶または水難溶性化合物、ノニオン性界面活性剤と、水性媒体とを混合する。
【0054】
本開示のイソシアネート基含有化合物は上記の通りである。
【0055】
本開示のノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0056】
また、本開示のノニオン性界面活性剤のHLB(親水性-親油性バランス)は、コア粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上であり、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは17以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは15以下である。また、ノニオン性界面活性剤のHLBは、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、好ましくは14以下、より好ましくは13.5以下、さらに好ましくは13以下である。したがって、ノニオン性界面活性剤のHLBは、好ましくは8~17、より好ましくは9~16、より一層好ましくは9~15、さらに好ましくは10~14、さらに一層好ましくは10~13.5、特に好ましくは10~13である。なお、ノニオン性界面活性剤のHLBは、Griffin法に基づき、式:
[ノニオン性界面活性剤のHLB]=20×[(親水部の分子量)/(界面活性剤の分子量)]
によって求められた値である。
【0057】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型ノニオン性界面活性剤、エチレン-プロピレンブロックコポリマー型ノニオン性界面活性剤、アルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤、フェノール型ノニオン性界面活性剤、アミド型ノニオン性界面活性剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ノニオン性界面活性剤は、商業的に容易に入手することができる。商業的に容易に入手することができるノニオン性界面活性剤としては、例えば、花王(株)製、商品名:ラテムルPD-420(HLB:12.6)、(株)日本触媒製、商品名:ソフタノール120(HLB:14.5)、(株)日本触媒製、商品名:ソフタノール90(HLB:13.3)、(株)日本触媒製、商品名:ソフタノール70(HLB:12.1)、等のソフタノールシリーズ、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER-10(HLB:12.1)、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER-20(HLB:15.1)、(株)第一工業製薬、商品名:アクアロンAN-10(HLB:12.7)、(株)第一工業製薬、商品名:アクアロンAN-20(HLB:15.7)、(株)第一工業製薬、商品名:アクアロンKN-10(HLB:13)、などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0059】
ノニオン性界面活性剤のなかでは、エマルション粒子中にノニオン性界面活性剤を取り込む観点から、反応性を有するノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。反応性を有するノニオン性界面活性剤は、商業的に容易に入手することができる。商業的に容易に入手することができる反応性を有するノニオン性界面活性剤としては、例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER-10(HLB:12.1)、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER-20(HLB:15.1)、(株)第一工業製薬、商品名:アクアロンAN-10(HLB:12.7)、(株)第一工業製薬、商品名:アクアロンAN-20(HLB:15.7)、(株)第一工業製薬、商品名:アクアロンKN-10(HLB:13)、花王(株)製、商品名:ラテムルPD-420(HLB:12.6)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0060】
本開示のノニオン性界面活性剤の含有量としては、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、イソシアネート基含有化合物100質量部に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに一層好ましくは50質量部以上であり、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは500質量部以下であり、より好ましくは400質量部以下である。
【0061】
なお、工程1において界面活性剤を用いる際には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの他の界面活性剤が含まれていてもよい。
【0062】
本開示の水不溶または水難溶性化合物としては、炭化水素化合物、エステル系化合物等が挙げられる。本開示のエマルション粒子としては、水不溶または水難溶性化合物としてエステル系化合物が好ましい。
【0063】
本開示のエマルション粒子に用いる炭化水素化合物としては、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ヘキサン、ケロシン、軽油、ミネラルオイル、スクワラン、流動パラフィンおよび軽質イソパラフィンなどが挙げられる。
【0064】
本開示のエマルション粒子に用いるエステル系化合物としては、脂肪酸エステルや、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS-12 JNC社製)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(商品名:CS-16 JNC社製)などが挙げられる。
【0065】
本開示のエマルション粒子に用いる脂肪酸エステルとしては、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルであることが好ましい。脂肪酸エステルを形成する脂肪酸残基の炭素数は1~25の脂肪酸であってもよく、一価アルコール由来のアルキルエステル部の炭素数は5~25であっても良い。
【0066】
本開示の脂肪酸エステルは、炭素数が13以上である脂肪酸エステルであってよく、具体的には脂肪酸残基の炭素数が13以上であっても、アルキルエステル部の炭素数が13以上であってもよく、化合物全体の炭素数が15以上であることがより好ましい。炭素数が13以上である脂肪酸エステルの炭素数の下限値は、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、13以上、好ましくは15以上、より好ましくは18以上であり、その上限値は、特に限定されないが、原料の入手が容易であることから、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下である。
【0067】
炭素数が13以上である脂肪酸エステルは、重合性不飽和二重結合を有していてもよい。当該重合性不飽和二重結合を有する炭素数が13以上である脂肪酸エステルは、重合性不飽和二重結合を有しているが、前記単官能単量体には含まれない。
【0068】
炭素数が13以上である脂肪酸エステルとしては、例えば、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和二重結合を有するアルキルエステル部の炭素数が14以上である脂肪酸エステル、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸ステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリルなどのアルキルエステル部の炭素数が14以上である脂肪酸エステル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸2-エチルヘキシルなどの炭素数14以上のアルキル基を有する脂肪酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脂肪酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。炭素数が15以上である脂肪酸エステルのなかでは、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、アルキルエステル部の炭素数が14以上である脂肪酸エステルが好ましく、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸ステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリルがより好ましい。
本開示のエステル系化合物としては、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS-12 JNC社製)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(商品名:CS-16 JNC社製)、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸ステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリルが好ましい。
【0069】
本開示の水不溶または水難溶性化合物の含有量としては、エマルション粒子含有水性分散体に用いる化合物100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、7質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましく特に好ましい。
【0070】
エマルション粒子に用いるイソシアネート基含有化合物と水不溶または水難溶性化合物の重量比は、10/90~90/10が好ましく、12/88~85/15がより好ましく、15/75~80/20がさらに好ましい。
【0071】
本開示の水性媒体としては、例えば、水をはじめ、水と水溶性有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどの多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水性媒体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
本開示の水性媒体における水の含有率は、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに一層好ましくは80質量%以上であり、当該含有率の上限値は100質量%である。水性媒体のなかでは水が好ましい。
【0073】
本開示におけるイソシアネート基含有化合物と水性媒体との質量比(イソシアネート基含有化合物/水性媒体)は、イソシアネート基含有化合物と水性媒体と均一に分散させる観点から、好ましくは1/99~50/50、より好ましくは2/98~45/55である。
【0074】
イソシアネート基含有化合物と水性媒体とを混合する際の温度は、後述する転相温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは5~45℃、より好ましくは5~40℃、さらに好ましくは5~35℃である。イソシアネート基含有化合物と水性媒体とを混合する際には、イソシアネート基含有化合物を水性媒体中で均一に分散させるために、攪拌下でイソシアネート基含有化合物を水性媒体に添加することが好ましい。水性媒体を攪拌させる手段として、従来使用されている高粘度塗料用混合機、高圧ホモジナイザーなどの特殊な装置を用いる必要がなく、例えば、攪拌棒、マグネチックスターラーなどの簡単な攪拌装置でイソシアネート基含有化合物を水性媒体中に均一に分散させることができる。
【0075】
次に、イソシアネート基含有化合物と水性媒体とを混合した後、得られた混合物を攪拌下で当該混合物の転相開始温度以上であって水性媒体の沸点未満の温度に加熱した後、撹拌下で転相開始温度よりも低い温度に冷却する。本発明では、当該操作が採られているので、イソシアネート基含有化合物を含有する分散安定性に優れたエマルション粒子含有水性分散体が得られる。
【0076】
前記混合物の転相温度は、反応容器内の電気伝導率を用いて判断でき、転相開始温度とは、昇温とともに電気伝導率が継続して下がり始めたときの温度であり、転相終了温度とは、電気伝導率が1.00μS以下になったときの温度である。なお、導電率計の測定可能温度の上限を超えても電気伝導率が1.00μS以下にならなかった場合、撹拌下にて転相開始温度よりも高い温度に到達して3分間以上経過しても前記混合物の外観に変化が生じないときの温度を転相温度の終点とする。具体的には実施例記載の方法によって測定することができる。
【0077】
転相温度のうち転相開始温度は、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、35℃以上であることが好ましく、45℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、転相終了温度は、エマルションの安定性を向上させる観点から、98℃以下であることが好ましく、97℃以下であることがより好ましく、96℃以下であることがさらに好ましい。
【0078】
前記混合物を加熱する際の雰囲気は、特に限定されないが、空気中に含まれている酸素による影響を回避する観点から、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0079】
前記混合物の加熱温度(加熱したときの最高温度)の下限値は、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、前記混合物の転相開始温度以上の温度であるが、前記混合物の転相開始温度よりも0.5℃以上高い温度であることが好ましく、前記混合物の転相開始温度よりも1℃以上高い温度であることがより好ましい。また、前記混合物の加熱温度(加熱したときの最高温度)の下限値は、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、前記混合物の転相終了温度以上の温度であることが好ましく、前記混合物の転相終了温度の0.5℃以上であることがより好ましい。
【0080】
前記混合物の加熱温度(加熱したときの最高温度)の上限値は、通常、水性媒体の沸点未満の温度、好ましくは水性媒体の沸点の温度よりも3℃以上低い温度、より好ましくは水性媒体の沸点の温度よりも5℃以上低い温度である。
【0081】
次に、前記混合物の温度が当該混合物の転相開始温度以上であって水性媒体の沸点未満の温度に到達した後、前記混合物を当該混合物の転相温度以下の温度に冷却する。
【0082】
前記混合物の冷却手段には特に限定がない。前記混合物は、例えば、放冷することによって冷却してもよく、空冷によって冷却してもよい。前記混合物は、当該混合物の転相開始温度以下の温度にまで冷却する。前記混合物は、好ましくは当該混合物の転相開始温度よりも10℃以上低い温度、より好ましくは当該混合物の転相開始温度よりも20℃以上低い温度、さらに好ましくは当該混合物の転相開始温度よりも25℃以上低い温度、さらに一層好ましくは当該混合物の転相開始温度よりも30℃以上低い温度にまで冷却する。
【0083】
本開示のエマルション粒子の製造方法において、冷却後にアニオン性界面活性剤を追加する事で、エマルション粒子含有水性分散体の長期貯蔵安定性を高める事が出来るだけでなく、その後のポリマー化反応を行う際にも凝集物等の発生が無く安定にポリマーエマルション粒子含有水性分散体を得る事が出来る。用いるアニオン性界面活性剤としては、前述に記載の化合物を用いることができる。
【0084】
アニオン性界面活性剤の添加量は特に制限されないが、長期貯蔵安定性に優れ、その後のポリマー化反応を安定に行う観点からエマルション粒子含有水性分散体の固形分(不揮発分)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~9.0質量部、さらに好ましくは1.0~8.0質量部である。
【0085】
アニオン性界面活性剤の添加量はイソシアネート基含有化合物と、ノニオン性界面活性剤と、水不溶または水難溶性化合物の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましく、10質量部以下が好ましく、9質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
【0086】
アニオン性界面活性剤の添加量はイソシアネート基含有化合物と、ノニオン性界面活性剤と、水不溶または水難溶性化合物の合計100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0087】
以上の操作により、本発明のエマルション粒子含有水性分散体が得られる。
【0088】
本開示のエマルション粒子の製造方法では、イソシアネート基含有化合物をエマルション粒子に含ませる観点から、単量体成分を含んでいても良い。単量体成分には、1または2以上の単量体を含む。単量体としては、単官能単量体および/または多官能単量体が例示される。上記単官能単量体および多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。本開示の単量体を含むエマルション粒子はモノマーエマルション粒子と記載することもある。単量体成分を含む事で得られるモノマーエマルション粒子を重合させポリマーエマルション粒子含有水性分散体を得る事が出来る。
【0089】
単官能単量体としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合含有単量体などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0090】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0091】
本開示のエマルション粒子に用いる単官能単量体としては、アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレン系モノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーを用いることが好ましい。
【0092】
アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明においては、前記アルキル(メタ)アクリレートは、脂環構造を有する(メタ)アクリレートを包含する概念のものである。
【0093】
前記アルキル(メタ)アクリレートのなかでは、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、炭素数が2~10であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が4~8であるアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、tert-メチルスチレン、o-tert-ブチルスチレン、m-tert-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレンなどのアルキル基の炭素数が1~4であるアルキルキルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-エトキシスチレン、m-エトキシスチレン、p-エトキシスチレン、o-tert-ブトキシスチレン、m-tert-ブトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレンなどのアルコキシ基の炭素数が1~4であるアルコキシスチレン、o-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、p-フルオロスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレンなどのハロゲン原子含有スチレン、o-アセトキシスチレン、m-アセトキシスチレン、p-アセトキシスチレンなどのアセトキシスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系モノマーのなかでは、エマルション粒子含有水性分散体中のイソシアネート基を失活させずに安定化させ、かつ、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、スチレンおよびアルキル基の炭素数が1~4であるアルキルキルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0095】
スチレン系モノマーは、ベンゼン環にニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの置換基が存在していてもよい。
【0096】
エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびスチレンからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーが好ましく、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーがより好ましく、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0097】
エマルション粒子含有水性分散体に用いる単官能単量体としては、アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレン系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび/または2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが必須成分として用いられており、n-ブチル(メタ)アクリレートおよびイソブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーが任意で用いられていることがさらに好ましい。
【0098】
エマルション粒子含有水性分散体に用いる単官能単量体の含有率は、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、エマルション粒子含有水性分散体中の固形分100質量部に対して好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに一層好ましくは25質量%以上であり、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0099】
多官能単量体としては、例えば、炭素数1~10の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート、炭素数2~4のアルキレンオキシド基の付加モル数が2~50であるアルキルジ(メタ)アクリレート、炭素数1~10の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、炭素数1~10の多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート、炭素数1~10の多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレート、炭素数1~10の多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0100】
エマルション粒子含有水性分散体に用いる多官能単量体の含有率は、微細粒子径を有するエマルション粒子を含有するエマルション粒子含有水性分散体を得る観点から、エマルション粒子含有水性分散体中の固形分100質量部に対して好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、さらに一層好ましくは0.5質量%以上であり、エマルション粒子含有水性分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0101】
脂肪酸エステルとしては、イソシアネート基含有化合物100質量部に対し、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、100質量部以上が特に好ましく、1000質量部以下が好ましく、900質量部以下がより好ましく、800質量部以下がさらに好ましく、700質量部以下が特に好ましい。
【0102】
本開示のエマルション粒子含有水性分散体が単官能単量体および/または多官能単量体を含有する場合は、エマルション粒子に含まれる単官能単量体および/または多官能単量体を重合させて得られる重合体を含んでいても良い。重合させる方法としては、乳化重合であり、前記エマルション粒子含有水性分散体に界面活性剤を溶解させ、得られた溶液に重合開始剤を添加する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。本開示の重合体を含むエマルション粒子はポリマーエマルション粒子と記載することもある。
【0103】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤などが挙げられ、これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0104】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル-アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0105】
ノニオン性界面活性剤としては、前述に記載の化合物があげられる。
【0106】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0107】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタインエステル型界面活性剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0108】
高分子界面活性剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらのポリマーを構成するモノマーのうちの1種類以上を共重合成分とする共ポリマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0109】
また、前記界面活性剤のなかでは、耐候性を向上させる観点から重合性基を有する界面活性剤、すなわち、いわゆる反応性界面活性剤が好ましく、環境保護の観点から非ノニルフェニル型の界面活性剤が好ましい。
【0110】
反応性界面活性剤としては、例えば、プロペニル-アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS-30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC-10、アクアロンHS-10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH-10など〕、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンAR-10、アクアロンAR-20など〕、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンAN-10、アクアロンAN-20、アクアロンAN-30など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE-10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10、SR-20、SR-30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS-60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER-10、アデカリアソープER-20、アデカリアソープER-30、アデカリアソープER-40など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN-20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE-10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0111】
エマルション粒子に含まれる単官能単量体および/または多官能単量体を重合させる際には、重合安定性を向上させる観点から、エマルション粒子含有水性分散体100質量部中に含まれる界面活性剤の量は、0.3質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、耐候性、耐擦り傷性、耐ブロッキング性、硬度を向上させる観点から、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0112】
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0113】
重合開始剤の量は、前記エマルション粒子含有水性分散体100質量部あたり、重合速度を高め、未反応の単官能単量体および/または多官能単量体の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.04質量部以上であり、耐候性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
【0114】
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。
【0115】
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
【0116】
また、ポリマーの重量平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、tert-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトエタノール、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。単官能単量体および/または多官能単量体100質量部あたりの連鎖移動剤の量は、エマルション粒子に含まれているポリマーの重量平均分子量を調整する観点から、0.01~10質量部であることが好ましい。
【0117】
また、単官能単量体および/または多官能単量体を乳化重合させるとき、耐候性を向上させる観点から、シランカップリング剤を適量で用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0118】
また、単官能単量体および/または多官能単量体を乳化重合させる際には、必要により、キレート剤、造膜助剤、pH緩衝剤などの添加剤を反応系内に適量で添加してもよい。
【0119】
単官能単量体および/または多官能単量体を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0120】
単官能単量体および/または多官能単量体を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~85℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
【0121】
単官能単量体および/または多官能単量体の重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2~9時間程度である。
【0122】
本開示のエマルション粒子含有水性分散体は、いずれも、例えば、水性塗料等のコーティング液に好適に用いることができる。水性塗料は、前記水性樹脂分散体を含有するものである。
【0123】
水性塗料は、水性樹脂分散体のみで構成されていてもよく、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、成膜助剤、可塑剤、抑泡剤、消泡剤、破泡剤、顔料、増粘剤、艶消し剤、分散剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、安定剤、顔料、染料、酸化防止剤、防腐剤などの1種類または2種類以上を含有していてもよい。水性塗料としては、例えば、エナメル塗料、クリヤー塗料などが挙げられる。
【0124】
水性塗料は、それ単独で1層で塗工してもよく、2層以上に重ね塗りすることによって塗工してもよい。2層以上に重ね塗りすることによって塗工する場合、その一部の層のみが当該水性塗料によって形成されてもよく、全部の層が当該水性塗料で形成されてもよい。重ね塗りは、例えば、プライマー処理やシーラー処理などを施した被塗物に、第1層(例えば、下塗り層)用塗料を塗布して乾燥させた後、第2層(例えば、上塗り層)用塗料を上塗りし、乾燥させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。
【0125】
水性塗料を塗布する方法としては、例えば、刷毛、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いた塗布方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0126】
水性塗料は、例えば、建築物の外壁、自動車の車体などに塗装する際に好適に使用することができるほか、窯業系建材などの無機質建材にも好適に使用することができる。窯業系建材としては、例えば、瓦、外壁材などが挙げられる。窯業系建材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。建築物の外装を構成する無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられる。
【実施例0127】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0128】
なお、以下の実施例および比較例において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0129】
以下の実施例および比較例において、各化合物の略号は、以下の化合物を意味する。
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
・St:スチレン
・エキセパールHO:
・CS-12:2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート
実施例および比較例に用いた、イソシアネート基含有化合物の詳細は以下の通りである。
・コロネートHX:東ソー社製、NCO量21mol%
・コロネート2270:東ソー社製、NCO量19mol%
・コロネート2793:東ソー社製、NCO量16mol%
<エマルション粒子の固形分測定>
水性樹脂分散体における固形分量(不揮発分量)は、水性樹脂分散体1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で10分間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、下記式に基づいて求められた。
〔水性樹脂分散体における固形分(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔水性樹脂分散体1g〕)×100
<エマルション粒子水性分散体のpH測定>
pH測定装置〔(株)堀場製作所製、商品名:カスタニーLAB pH/イオンメータ〕で調べたところ
<エマルション粒子の粒子径測定>
水性樹脂分散体における粒子径は、動的光散乱法による粒子径測定装置である多検体ナノ粒子径測定システム〔大塚電子(株)製、商品名:nanoSAQLA〕を用い、光子相関法で自己相関関数を求め、キュムラント解析によって求めた平均粒子径(流体力学的径)である。
<イソシアネート基の測定方法>
イソシアネート基の含有量の測定は、イソシアネート基含有エマルション(不揮発分中)のFT-IRを測定し、イソシアネート基の伸縮振動に起因する吸収ピークと、カルボキシル基の伸縮振動に起因する吸収ピークとのピーク強度比から求めた。
【0130】
また、イソシアネート基の含有量の測定は、イソシアネート基含有エマルションのC13-NMRを測定し、イソシアネートに起因するピークとメチレンに起因するC13のピーク比から求める事も可能である。
<安定性試験>
常温で6か月保管した際の以下の経時変化を確認する事で安定性を評価した。
イソシアネート基の残存率:
(経過日数後のイソシアネート基含有量)/(初期のイソシアネート基含有量)×100(%)
〇・・・残存率80~100%
△・・・残存率50~80%
×・・・残存率50%未満
〔エマルション粒子含有水性分散体の作製例〕
実施例1
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器内に脱イオン水1990部、ノニオン性乳化剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル〔花王(株)製、商品名:ラテムルPD-420、HLB:12.6〕330部、CHMA430部、エキセパールHO120部およびイソシアネート基含有化合物(東ソー社製、商品名:コロネートHX、イソシアネート基含有量(NCO量)21mol%)120部を仕込み、得られた混合物の一部を取り出し、当該混合物の転相温度を以下の方法に基づいて測定した。その結果、転相温度は75℃~88℃であった。
【0131】
〔転相温度の測定方法〕
2L(リットル)容の反応容器に撹拌装置および温度センサーを取り付け、前記混合物1000gを当該反応容器内に入れて撹拌した。
【0132】
前記反応容器をウォーターバスで昇温させながら当該反応容器内の混合物の温度が1℃上昇する毎に導電率計〔ユーテック(EUTECH)社製、商品名:ラコムテスターPC450〕で電気伝導率を測定した。
【0133】
昇温したときの温度毎に電気伝導率をプロットし、昇温とともに電気伝導率が継続して下がり始めたときの温度を転相開始温度とし、電気伝導率が1.00μS以下になったときの温度を転相終点温度とした。
【0134】
なお、導電率計の測定可能温度の上限を超えても電気伝導率が1.00μS以下にならなかった場合、撹拌下にて転相開始温度よりも高い温度に到達して3分間以上経過しても前記混合物の外観に変化が生じないときの温度を転相温度の終点とした。
【0135】
前記混合物の転相温度を測定した後、窒素ガスを反応容器内に導入しながら撹拌下でウォーターバスを用いて反応容器を加熱した。
【0136】
反応容器内の混合物の温度が90℃に到達した後、当該反応容器をウォーターバスから取り出し、撹拌下で内温が40℃以下となるまで冷却することにより、イソシアネート基含有化合物を含むエマルション粒子含有水性分散体を得た。
【0137】
得られたエマルション粒子含有水性分散体の平均粒子径は60nmであった。
NCO量は2.4mol%であった。
【0138】
〔ポリマーエマルション粒子含有水性分散体の作製例〕
次に、室温~40℃以下の温度で前記で得られたエマルション粒子含有水性分散体299部を反応容器内に入れ、当該反応容器内にアニオン性乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10〕の25%水溶液8部を添加し、窒素ガスを反応容器内に導入しながら室温~40℃以下の温度で30分間撹拌した後、当該反応容器をウォーターバスに入れ、撹拌下で当該反応容器の内温が80℃となるまでウォーターバスで昇温した。
【0139】
その後、反応容器内に5%過硫酸カリウム水溶液3部を添加し、80℃で6時間反応容器の内容物を攪拌下で加熱した。6時間経過後フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過し、イソシアネート基含有化合物を含むポリマーエマルション粒子含有水性分散体を得た。
【0140】
前記で得られたポリマーエマルション粒子含有水性分散体の平均粒子径を前記と同様にして測定した。その結果、ポリマーエマルション粒子含有水性分散体の平均粒子径は、70nmであった。
【0141】
実施例2~8、比較例1、2に関し、用いる化合物を表1記載の化合物および組成に変更した以外は、実施例1同様に製造した。実施例1~8、比較例1、2の評価結果を表1、表2に記載する。
【0142】
実施例9
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器内に脱イオン水199部、ノニオン性乳化剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル〔花王(株)製、商品名:ラテムルPD-420、HLB:12.6〕33部、エキセパールHO12部、CS-12を43質量部およびイソシアネート基含有化合物(東ソー社製、商品名:コロネートHX、NCO量21mol%)12部を仕込み、得られた混合物の一部を取り出し、当該混合物の転相温度を測定した。その結果、転相温度は75℃~88℃であった。
【0143】
反応容器内の混合物の温度が90℃に到達した後、当該反応容器をウォーターバスから取り出し、撹拌下で内温が40℃以下となるまで冷却することにより、イソシアネート基含有化合物を含むエマルション粒子含有水性分散体を得た。
【0144】
得られたエマルション粒子含有水性分散体の平均粒子径は70nmであった。
NCO量は2.5mol%であった。
【0145】
実施例10
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器内に脱イオン水199部、ノニオン性乳化剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル〔花王(株)製、商品名:ラテムルPD-420、HLB:12.6〕33部、CS-12 43部、エキセパールHO12部およびイソシアネート基含有化合物(東ソー社製、商品名:コロネートHX、NCO量21mol%)12部を仕込み、得られた混合物の一部を取り出し、当該混合物の転相温度を以下の方法に基づいて測定した。その結果、転相温度は75℃(下限の温度は転相開始温度、以下同様)~88℃(上限の温度は転相終点温度、以下同様)であった。
【0146】
反応容器内の混合物の温度が90℃に到達した後、当該反応容器をウォーターバスから取り出し、撹拌下で内温が40℃以下となるまで冷却することにより、イソシアネート基含有化合物を含むエマルション粒子含有水性分散体を得た。
【0147】
得られたエマルション粒子含有水性分散体の平均粒子径は70nmであった。
NCO量は2.5mol%であった。
【0148】
次に、室温~40℃以下の温度で前記で得られたエマルション299部を反応容器内に入れ、当該反応容器内にアニオン性乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10〕の25%水溶液8部を添加し、室温~40℃以下の温度で30分間撹拌した。
【0149】
その後、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整した。得られた反応液を300メッシュの金網で濾過し、イソシアネート基含有化合物を含むエマルション粒子含有水性分散体を得た。
【0150】
実施例11に関し、用いる化合物を表2記載の化合物および組成に変更した以外は、実施例9同様に製造した。
【0151】
実施例12
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器内に脱イオン水100部、ノニオン性乳化剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル〔花王(株)製、商品名:ラテムルPD-420、HLB:12.6〕33部、エキセパールHO12部、CS-12を43質量部およびイソシアネート基含有化合物(東ソー社製、商品名:コロネートHX、NCO量21mol%)12部を仕込み、得られた混合物の一部を取り出し、当該混合物の転相温度を測定した。その結果、転相温度は75℃~88℃であった。
【0152】
反応容器内の混合物の温度が90℃に到達した後、当該反応容器をウォーターバスから取り出し、撹拌下で内温が40℃以下となるまで冷却することにより、イソシアネート基含有化合物を含むエマルション粒子含有水性分散体を得た。
【0153】
得られたエマルション粒子含有水性分散体の平均粒子径は70nmであった。
NCO量は2.5mol%であった。
【0154】
実施例9-12の評価結果を表2に記載する。
【0155】
【0156】