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特開2022-117666解像度測定方法、解像度測定システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117666
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】解像度測定方法、解像度測定システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20220804BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20220804BHJP
   G03B 7/00 20210101ALI20220804BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20220804BHJP
   H04N 17/00 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
G01M11/02 A
G03B17/02
G03B7/00
G06T3/00 710
H04N17/00 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014283
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000115603
【氏名又は名称】リーダー電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 浩一
【テーマコード(参考)】
2H002
2H100
5B057
5C061
【Fターム(参考)】
2H002ZA05
2H100BB01
5B057CD12
5B057DA17
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC30
5C061BB03
5C061CC01
5C061EE15
(57)【要約】
【課題】撮影視野に歪みが生じるカメラの解像度測定方法を提供すること。
【解決手段】コンピュータ装置によって実行されるカメラの解像度測定方法であって、第1テストチャートの全画素の座標と撮影視野に歪みが生じるカメラによって撮影された撮影画像における第1テストチャートの全画素の座標との対応関係を表すディストーションマップを生成するステップ(S104)と、ディストーションマップによって表される対応関係に応じて、撮影画像中の第1テストチャート内における特定エリアにおいて解像度の測定を行うための第2テストチャートの歪曲した画像である歪曲テストチャートを生成するステップ(S106、S108)と、歪曲テストチャートを用いて特定エリアに対応するカメラの撮影視野の一部においてコントラスト法による解像度の測定を実行するステップ(S110)と、を含む解像度測定方法。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置によって実行されるカメラの解像度測定方法であって、
第1テストチャートの全画素の座標と、撮影視野に歪みが生じるカメラによって撮影された撮影画像における前記第1テストチャートの全画素の座標と、の対応関係を表すディストーションマップを生成するステップと、
前記ディストーションマップによって表される前記対応関係に応じて、前記撮影画像中の前記第1テストチャート内における特定エリアにおいて解像度の測定を行うための第2テストチャートの歪曲した画像である歪曲テストチャートを生成するステップと、
前記歪曲テストチャートを用いて前記特定エリアに対応する前記カメラの撮影視野の一部においてコントラスト法による解像度の測定を実行するステップと、
を含む解像度測定方法。
【請求項2】
前記第1テストチャートは格子状の画像であり、
前記ディストーションマップを生成するステップにおいて、前記撮影画像における前記第1テストチャートの各格子点の座標から前記撮影画像における前記第1テストチャートの全画素の座標を補間処理によって算出する、請求項1に記載の解像度測定方法。
【請求項3】
前記解像度の測定を実行するステップにおいて、前記歪曲テストチャートが外部のディスプレイ装置に出力される、請求項1または2に記載の解像度測定方法。
【請求項4】
前記歪曲テストチャートを生成するステップにおいて、複数の空間周波数に対応した複数の前記第2テストチャートの歪曲した画像である複数の前記歪曲テストチャートが生成され、
前記解像度の測定を実行するステップにおいて、前記複数の歪曲テストチャートを用いて前記解像度の測定を実行する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の解像度測定方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の解像度測定方法を実行するコンピュータ装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の解像度測定方法を実行するコンピュータ装置と、撮影視野に歪みが生じるカメラと、ディスプレイ装置と、を含む解像度測定システムであって、
前記ディスプレイ装置は、前記コンピュータ装置が生成する前記歪曲テストチャートを表示し、
前記コンピュータ装置は、前記ディスプレイ装置によって表示される前記歪曲テストチャートを前記カメラが撮影することによって、前記解像度の測定を実行するステップを実行する、
解像度測定システム。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の解像度測定方法をコンピュータ装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの解像度測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタルカメラの解像度(MTF:Modulation Transfer Function)の測定方法は、主に傾斜エッジ法とコントラスト法に分類できる。傾斜エッジ法はテストパターンがコントラスト法と比較して小さく、魚眼カメラのような歪曲収差があるカメラにも対応できる等、様々なカメラに適用可能な測定方法である。しかしながら、画像処理(エッジ強調処理)が加わることで、再現性の低下や、限界解像度の値が目視評価より良い値になるという現象があった。
【0003】
一方、コントラスト法は傾斜エッジ法のような問題は少ない。コントラスト法によるMTF測定においては、振幅が一定の異なる周波数のパターンを撮影し、撮影した画像の周波数毎の輝度振幅を測定してMTFを求める(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-281626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コントラスト法においては、テストパターンに歪みがあると波形形状が変化して高調波成分が発生し、さらには周波数間隔が変化するため、正確なMTF測定が出来ない。すなわち、コントラスト法はテストパターンに歪みが無いことを前提としたMTF測定法である。そのため、従来のコントラスト法では、魚眼カメラのような撮影視野に歪みの生じるカメラには対応できない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、コンピュータ装置によって実行されるカメラの解像度測定方法であって、第1テストチャートの全画素の座標と、撮影視野に歪みが生じるカメラによって撮影された撮影画像における前記第1テストチャートの全画素の座標と、の対応関係を表すディストーションマップを生成するステップと、前記ディストーションマップによって表される前記対応関係に応じて、前記撮影画像中の前記第1テストチャート内における特定エリアにおいて解像度の測定を行うための第2テストチャートの歪曲した画像である歪曲テストチャートを生成するステップと、前記歪曲テストチャートを用いて前記特定エリアに対応する前記カメラの撮影視野の一部においてコントラスト法による解像度の測定を実行するステップと、を含む解像度測定方法である。
【0008】
また、本発明の他の態様は、上記の解像度測定方法を実行するコンピュータ装置である。
また、本発明の他の態様は、上記の解像度測定方法を実行するコンピュータ装置と、撮影視野に歪みが生じるカメラと、ディスプレイ装置と、を含む解像度測定システムであって、前記ディスプレイ装置は、前記コンピュータ装置が生成する前記歪曲テストチャートを表示し、前記コンピュータ装置は、前記ディスプレイ装置によって表示される前記歪曲テストチャートを前記カメラが撮影することによって、前記解像度の測定を実行するステップを実行する、解像度測定システムである。
【0009】
また、本発明の他の態様は、上記の解像度測定方法をコンピュータ装置に実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る解像度測定システムの外観の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る解像度測定システムの構成の一例を示す図である。
図3】カメラの撮影視野の一例を示す図である。
図4】チェッカーボード画像の画素と、歪曲したチェッカーボード画像の画素との対応関係の一例を表す図である。
図5】ディストーションマップのデータ構造の一例を示す図である。
図6】撮影画像におけるチェッカーボード画像領域に対応する白色のテストチャート画像と、その後に描画された測定用テストチャートの歪みの無い画像の一例を示す図である
図7】測定用テストチャートの歪みの無い画像を逆投影して生成された歪みのある測定用テストチャート画像の一例を示す図である。
図8】ステップチャートの歪みの無い画像を逆投影して生成された歪みのあるステップチャート画像の一例を示す図である。
図9】歪みのある測定用テストチャート画像をカメラで撮影した際の撮影視野の一例を示す図である。
図10】複数の空間周波数に対応した複数の測定用テストチャートの一例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る解像度測定システムのコンピュータ装置における処理の一例を示すフロー図である。
図12】本発明の一実施形態に係る解像度測定システムのコンピュータ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(解像度測定システムの構成)
図1は、本実施形態に係る解像度測定システムの外観の一例である。本実施形態に係る解像度測定システム1は、魚眼カメラのような撮影視野に歪みが発生するカメラの解像度を測定するためのシステムである。本実施形態の解像度測定システム1は、再現性の良いコントラスト法を採用し、被検カメラに合わせてテストチャートに対して歪み補正を行う。図1に示されるように、解像度測定の対象であるカメラ10は、ディスプレイ20に表示されるテストチャート50をその画角内で撮影するように配置される。より具体的には、カメラ10の画角内のうち解像度を測定しようとする任意の箇所がテストチャートがディスプレイ20の画面範囲内に含まれるようにカメラ10とディスプレイ20とが配置される。
【0012】
図2は、本実施形態に係る解像度測定システムの構成の一例を示す図である。図2に示されるように、解像度測定システム1は、カメラ10と、ディスプレイ20と、コンピュータ装置30とを含んで構成される。カメラ10は、解像度測定の対象となる被検カメラであり、魚眼カメラのような撮影視野に歪みが発生するカメラである。なお、図2においてカメラ10から延びる破線矢印は、カメラ10の画角範囲の一例を示している。ディスプレイ20は、テストチャートなどの画像を表示し、当該画像はカメラ10によって撮影される。コンピュータ装置30は、カメラ10の撮影画像データを取得して、ディスプレイに表示されるテストチャートの画像データとともに用いて、テストチャートに対する歪み補正のための処理を実行する。ディスプレイ20(テストチャート)は、カメラ10の画角内のうち解像度を測定しようとする任意の箇所を含むようにしてテストチャートが撮影されるように配置されればよく、特定の位置に限定されない。ただし、当該箇所の解像度の測定を行う間は、カメラ10とディスプレイ20との相対位置は変化しないように固定される。
【0013】
コンピュータ装置30は、データ入出力部302と、ディストーションマップ生成部304と、逆投影画像生成部306と、解像度測定部308とを備える。
データ入出力部302は、カメラ10またはディスプレイ20との各種データの入出力処理を行う。例えば、データ入出力部302は、カメラ10の撮影画像データをカメラ10から有線または無線のネットワークを介して取得する。また、データ入出力部302は、当該撮影画像データを取り外し可能なリムーバブルメモリを介して取得するようになっていてもよい。また、データ入出力部302は、ディスプレイ20にテストチャートなどの画像を表示するための表示データを出力する。
【0014】
ディストーションマップ生成部304は、第1テストチャート(後述するチェッカーボード画像50など)の全画素の座標と、撮影視野に歪みが生じるカメラ10によって撮影された撮影画像における第1テストチャート(後述する歪みのあるチェッカーボード画像50dなど)の全画素の座標と、の対応関係を表すディストーションマップを生成する。また、第1テストチャートは、例えば後述するチェッカーボード画像50などのように格子状の画像である。ディストーションマップ生成部304は、例えば、カメラ10の撮影画像における歪みの生じたチェッカーボード画像50(第1テストチャート)の各格子点の座標から、撮影画像における歪みの生じた第1テストチャートの全画素の座標を3次スプライン補間のような補間処理によって算出する。
【0015】
逆投影画像生成部306は、ディストーションマップ生成部304によって生成されたディストーションマップによって表される対応関係に応じて、撮影画像中の第1テストチャート内(画像範囲内)における特定エリアにおいて解像度の測定を行うための第2テストチャート(後述する測定用テストチャートの歪みの無い画像62など)の歪曲した画像である歪曲テストチャート(後述する歪みのある測定用テストチャート62dなど)を生成する。生成された歪曲テストチャートは、その画像データがディスプレイ20に出力され、ディスプレイ20にて表示出力される。または、生成された歪曲テストチャートの画像データがプリンタ(図示しない)に出力されて紙に印刷出力されてもよい。
【0016】
解像度測定部308は、逆投影画像生成部306において生成された歪曲テストチャートを用いて上記特定エリアに対応するカメラ10の撮影視野の一部においてコントラスト法による解像度の測定を実行する。また、解像度測定を実行する際には、逆投影画像生成部306によって生成された歪曲テストチャートはディスプレイ20に出力される。なお、本実施形態において、逆投影画像生成部306によって生成された歪曲テストチャートは、カメラ10によって撮影される際には歪みが補正された(歪みの無い)画像として撮影されるため、コントラスト法による解像度の測定は従来のコントラスト法と同様に実行されうる。
【0017】
また、逆投影画像生成部306においては、複数の空間周波数に対応した複数の第2テストチャートの歪曲した画像である複数の歪曲テストチャートが生成され、解像度測定部308においては、当該複数の歪曲テストチャートを用いて解像度の測定を実行するようになっていてもよい。
(ディストーションマップの生成方法)
以下、ディストーションマップ生成部304におけるディストーションマップの生成方法の具体例について詳述する。本実施形態においてはディストーションマップを生成するために、カメラ10の画角内の任意の位置(解像度を測定しようとする部分を含むエリア)において、ディスプレイ20に表示されるチェッカーボードの画像が撮影される。そして、得られた当該チェッカーボードの撮影画像の座標点に基づいて、チェッカーボード画像の全画素の歪みが補間処理により求められる。なお、補間処理としては、例えば、3次スプライン補間処理などが挙げられるが、これに限定されない。他の補間方法を用いてもよい。この元のチェッカーボード画像の画素と撮影されて歪曲したチェッカーボード画像の画素との対応関係を示すデータがディストーションマップとして保存される。そして、このディストーションマップに基づいて撮影視野に歪みが生じるカメラ10であってもコントラスト法による解像度測定が可能となるように測定用テストチャートが生成される。
【0018】
図3は、カメラ10の撮影視野の一例を示す図である。図3に示されるように、まず、ディスプレイ20にはテストチャートとしてチェッカーボード画像50が表示される。このチェッカーボード画像50が、カメラ10の画角内の解像度を測定しようとする領域を含むようにして写されるようにディスプレイ20とカメラ10との相対位置が調整される。また、コンピュータ装置30のデータ入出力部302は、図3のようなカメラ10の撮影画像のデータをカメラ10から取得する。
【0019】
次に図4を参照し、図4は、チェッカーボード画像50の画素と、カメラ10から取得した撮影画像における歪曲したチェッカーボード画像50dの画素との対応関係の一例を表す図である。図4の例においては、チェッカーボード画像50は、2560画素×1664画素の大きさであるとする。
【0020】
図5は、ディストーションマップのデータ構造の一例を示す図である。図5に示されるように、本実施形態においてディストーションマップデータは、テストチャート50の全画素の座標(x,y)と、カメラ10の撮影画像における歪曲したテストチャート50dの全画素の座標(x,y)とを対応させる2次元配列として実現されうる。本例においてテストチャート(チェッカーボード画像)50は2560画素×1664画素であるため、ディストーションマップデータは、サイズ2560(画素)×1664(画素)×2(x座標、y座標)の2次元配列として表されうる(ただし本例は一例でありこれに限定されない)。より具体的には、本例においてはチェッカーボードの格子点の各座標を測定する。そして、測定された各座標は、xy座標ごとに行列に保存されうる。これら処理は既存のソフトウェアを用いて行うことができる。例えば、MathWorks(登録商標)社の製品である「MATLAB」(登録商標)のDetectCheckerboardPoints関数を使用してカメラ10の撮影画像におけるチェッカーボード50dの各格子点の座標が求められうる。
【0021】
そして、求められたチェッカーボード画像50dの各格子点の座標に基づいて、チェッカーボード画像50dの全画素の座標が補間処理によって求められうる。この処理は、例えば、チェッカーボード画像50の全画素に対するチェッカーボード画像50dのx座標とy座標とが、それぞれ、MathWorks社の製品である「MATLAB」のgriddedInterpolant関数によって2次元補間され、ディストーションマップに保存されることで実現されうる。
(逆投影画像の生成方法)
ディストーションマップ生成部304においてディストーションマップが生成されると、次に、逆投影画像生成部306において、解像度測定を行う際に用いられる測定用テストチャートの逆投影画像が生成される。図6は、カメラの撮影画像におけるチェッカーボード画像領域に対応する白色のテストチャート画像50wと、その後に描画された測定用テストチャートの歪みの無い画像62の一例を示す図である。より具体的には、歪みのあるチェッカーボード画像50dの画像範囲を示す白色のテストチャート画像50wにおいて、例えばコンピュータ装置30のユーザがマウス等の入力装置を用いて解像度を測定しようとする箇所を示す矩形61を指定する(描画する)。そして、この矩形61が指定された箇所において、測定用テストチャートの歪みの無い画像62が描画される。
【0022】
次に、ディストーションマップに基づいて、測定用テストチャートの歪みの無い画像62を逆投影して、歪みのある測定用テストチャート画像を生成する。より具体的には、測定用テストチャートの歪みの無い画像62の全画素の座標が、図5に示されるディストーションマップのチェッカーボード画像50のいずれの座標(x,y)に対応するかに応じて、歪みの無い画像62の各画素の座標(x,y)を逆変換することで歪みのある測定用テストチャート画像が生成されうる。図7は、測定用テストチャートの歪みの無い画像62が逆投影されて生成された歪みのある測定用テストチャート62dの一例を示す図である。
【0023】
また、解像度測定では輝度の変化を周波数特性に変換するため、輝度データの線形性を確保する必要がある。しかしながら、一般的にデジタルカメラの輝度特性は様々な理由により線形ではないため、輝度が既知であるテストチャート(ここでは「ステップチャート」という)を使用して、輝度データの線形性を補正する必要がある。そのため、測定用テストチャートと同様に、図8に示されるようにステップチャートについても、その歪みの無い画像63が逆投影されて歪みのあるステップチャート63dが生成される。
【0024】
また、図9は、以上のようにして生成された歪みのある測定用テストチャート画像62dがディスプレイ20に表示され、当該測定用テストチャート画像62dをカメラ10で撮影した際の撮影視野10aの一例を示す図である。撮影視野10aにおいては、測定用テストチャート画像62aは図7の歪みの無い画像62と同様に歪みの無い状態で写し出されていることが分かる。これにより、カメラ10の撮影視野のうち測定用テストチャート画像62aが写し出されている箇所においてコントラスト法による解像度の測定が可能となる。この解像度の測定は、従来のコントラスト法の手法により行うことができる。また、同じ白色のテストチャート画像50wにおける他の箇所においても同様に解像度測定を行うことができる。なお、図8で説明された輝度データの線形性を補正するためのステップチャートについても、図9と同様に、歪みのあるステップチャート画像63dがディスプレイ20に表示され、当該ステップチャート画像63dをカメラ10で撮影することにより、カメラ10の撮影視野10aにおいては歪みのないステップチャートが写し出される。そして、解像度測定が実行される際に、ステップチャート画像63、63dに応じて生成される輝度線形化LUT(Look-Up Table)に基づいて輝度データが補正される。
【0025】
また、カメラ10の撮影視野の中でチェッカーボード画像50の範囲外において解像度測定を行う場合には、ディスプレイ20(テストチャート)とカメラ10との相対位置を変化させ、解像度測定を行う箇所をチェッカーボード画像が含み、かつ当該チェッカーボード画像50の全体がカメラ10の撮影視野に収まるようにして、上述したディストーションマップの生成から測定用テストチャートの逆投影画像の生成までの処理を繰り返すことでカメラの撮影視野における複数箇所において解像度の測定を行うことができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、ディスプレイ20に各種のテストチャートが表示されることとしたが、これに限定されない。例えば、テストチャートは紙に印刷されたものであってもよい。例えば屋外などディスプレイの輝度が不足するような環境においてはテストチャートを紙に印刷する等の方法が有効である。いずれの方法においても、(ディスプレイ20に表示される、または紙に印刷される)テストチャートは、カメラ10の画角内のうち解像度を測定しようとする任意の箇所を当該テストチャートが含むように配置されればよい。また、チェッカーボード画像50からディストーションマップが生成され、歪みのあるテストチャート62dが生成されて解像度の測定が行われるまでの間は、カメラ10とテストチャートとの相対位置は、変化しないように固定される必要がある。
【0027】
以上のようにディストーションマップを生成し、当該ディストーションマップに基づいて歪みのあるテストチャートを生成することによって、カメラ10の画角内の特定箇所においてコントラスト法を用いた解像度測定を行うことが可能となる。また、本実施形態に係る解像度測定方法においては、ディストーションマップを生成して解像度測定が行われるまでの間、カメラ10とディスプレイ20(テストチャート50、50d、62d、62a)との相対位置が変化しないことが求められるだけであり、カメラ10とディスプレイ20(テストチャート50、50d、62d、62a)との間の検査距離や、カメラ10およびディスプレイ20(テストチャート50、50d、62d、62a)の位置は特定のものに限定されない(解像度測定の度に変更することが可能である)。また、チェッカーボード画像50の画素の座標と、カメラ画像における歪みのあるチェッカーボード50dの画素の座標との対応関係に基づいて、歪みのあるテストチャート画像62dが生成されてコントラスト法による解像度測定が実行される。そのため、歪曲特性式が未知であるカメラであっても解像度測定を行うことが可能である。
【0028】
ところで、従来のコントラスト法においては、複数の空間周波数について解像度測定が可能なテストチャート62のような比較的大きなテストパターンが用いられるのが一般的である。このため、従来のコントラスト法においては、カメラ10の画角内において狭い範囲で解像度を測定するのは困難であった。これに対し、本実施形態においては、図10に示されるように、複数の空間周波数に対応した複数の測定用テストチャート(バーチャート)62dを作成した。これらの測定用テストチャートも上述したようにディストーションマップが生成され、当該ディストーションマップに基づいて歪みのあるテストチャート62dが生成される。そして、これらの歪みのある複数の測定用テストチャート62dが時分割でディスプレイ20の同じ箇所(カメラ10の画角内のうち解像度測定を実行しようとする位置に対応)に表示され、これをカメラ10が撮影する。これにより、撮影画像中においては測定用テストチャート62dは歪みの無い測定用テストチャートとして撮影されるため、複数の空間周波数について解像度測定を行うことが可能となる。このような測定用テストチャート62dの採用により、従来のコントラスト法において狭い範囲での解像度測定が困難であるという問題は解消されうる。
(処理フロー)
図11は、本実施形態に係る解像度測定システム1のコンピュータ装置30における処理の一例を示すフロー図である。
【0029】
ステップS100において、カメラ10およびディスプレイ20が配置される。カメラ10とディスプレイ20との相対位置は、本処理フローが終了するまで固定される。
ステップS102において、データ入出力部302は、ディスプレイ20に表示されたチェッカーボード画像50について、カメラ10で撮影された歪曲したチェッカーボード画像50dの撮影画像データを取得する。
【0030】
ステップS104において、ディストーションマップ生成部304は、チェッカーボード画像50と、ステップS102において取得された歪曲したチェッカーボード画像50dの撮影画像データとによって、ディストーションマップを生成する。
【0031】
ステップS106において、逆投影画像生成部306は、白色のテストチャート画像50wにおいてユーザによってマウス等によって指定された特定箇所(矩形61)において測定用テストチャートの歪みの無い画像62を生成する。また、この時、図10に示されるような複数の測定用テストチャート画像の歪みの無い画像が生成されてもよい。また同様に、ステップS108において、逆投影画像生成部306は、輝度データの線形性の補正のためのステップチャートの歪みの無い画像63を生成する。なお、ステップS106とS108の処理の順番は逆であってもよいし、並列に処理されてもよい。
【0032】
ステップS110において、逆投影画像生成部306は、ディストーションマップに基づいて、測定用テストチャートの歪みの無い画像62を逆投影して、歪みのある測定用テストチャート画像62dを生成する。また、この時、図10に示されるような複数の測定用テストチャート画像62dが生成されてもよい。また、生成された歪みのある測定用テストチャート画像62dの画像データは、ディスプレイ20に出力される。ディスプレイ20は、当該画像データを取得して表示出力する。(または歪みのある測定用テストチャート画像62dが紙に印刷されてもよい。)同様に、逆投影画像生成部306は、ステップチャートの歪みの無い画像63についても逆投影を実行し、歪みのあるステップチャート63dを生成する。生成された歪みのあるステップチャート画像63dの画像データは、ディスプレイ20に出力される。
【0033】
ステップS112において、カメラ10で(ディスプレイ20に表示された、または紙に印刷された)歪みのある測定用テストチャート画像62dを撮影することにより、歪みの無い測定用テストチャート画像62aを用いたコントラスト法による解像度測定を実行する。また、解像度測定を実行する際に、ステップチャート画像63、63dに応じて生成される輝度線形化LUTに基づいて輝度データが補正される。また、この時、ディスプレイ20において複数の測定用テストチャート画像62dが時分割で表示出力されることで、複数の空間周波数について解像度測定が実行されてもよい。
【0034】
なお、カメラ10が撮影した歪みのあるチェッカーボード画像50dの画像範囲の他の箇所において解像度測定を行う場合には、ステップS106~S110の処理が繰り返される。
【0035】
さらに、カメラ10の撮影視野のうち、チェッカーボード画像50dの画像範囲以外の箇所の解像度測定を行う場合には、解像度測定を行う箇所がチェッカーボード画像50dに含まれるように、ステップS100の処理が実行される。そして、当該解像度測定を行う箇所について、ステップS102以降の処理が実行される。
【0036】
なお、本処理フローによる解像度測定方法は、コンピュータ装置に実行させるためのコンピュータプログラムとしても実現可能である。また、このようなコンピュータプログラムをコンピュータ装置が読出し可能な記録媒体に記録することも可能である。
(ハードウェア構成)
上記説明されたコンピュータ装置30の構成は、一般的なコンピュータ装置と同様のハードウェア構成によって実現可能である。図12は、コンピュータ装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。図12に示されるコンピュータ装置40は、一例として、プロセッサ41と、RAM(Random Access Memory)42と、ROM(Read Only Memory)43と、内蔵のハードディスク装置44と、外付けハードディスク装置、CD、DVD、USBメモリ、メモリスティック、SDカード等のリムーバブルメモリ45と、ユーザがコンピュータ装置40とデータのやり取りを行うための入出力ユーザインタフェース46(キーボード、マウス、タッチパネル、スピーカ、マイク、ランプ等)と、カメラ10、ディスプレイ20、またはその他の装置と通信可能な有線/無線の通信インタフェース47と、ディスプレイ48(ディスプレイ20と兼用であってよい)と、を備える。本実施形態に係るコンピュータ装置30の機能は、例えば、プロセッサ41が、ハードディスク装置44やROM43、リムーバブルメモリ45等にあらかじめ格納されたプログラムをRAM42等のメモリに読み出し、処理に必要な上述したデータを、ハードディスク装置44やROM43、リムーバブルメモリ45等から適宜読み出しながらプログラムを実行することで実現されうる。なお、図12に示されるハードウェア構成はあくまで一例であって、これに限定されるものではない。
【0037】
ここまで、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0038】
また、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0039】
1 解像度測定システム
10 被検カメラ
20 ディスプレイ(テストチャート)
30 コンピュータ装置
302 データ入出両部
304 ディストーションマップ生成部
306 逆投影画像生成部
308 解像度測定部
40 コンピュータ装置
41 プロセッサ
42 RAM
43 ROM
44 ハードディスク装置
45 リムーバブルメモリ
46 入出力ユーザインタフェース
47 通信インタフェース
48 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12