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特開2022-117716情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117716
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16Z 99/00 20190101AFI20220804BHJP
【FI】
G16Z99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014359
(22)【出願日】2021-02-01
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】川崎 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】矢野 伸二郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 希
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049DD02
(57)【要約】
【課題】従来の情報処理装置においては、対象地域について、分布型水循環モデルを用いて定量化された水収支を得るにあたって、高い精度で不確実性評価を行うことが求められているという課題があった。
【解決手段】各パラメータのサンプル値を含むサンプル値群を2組以上作成するサンプル作成部143と、パラメータ群を用いて構成され所定領域における水資源の循環状態がモデル化された分布型水循環モデルに各サンプル値群を適用して水資源の収支に関するサンプル算定値を取得するサンプル算定部145と、サンプル算定値に基づいて分布型水循環モデルを用いて得られる水収支算定値の不確かさに関する情報を取得する不確実性評価部149とを備える、情報処理装置1により、対象地域について、分布型水循環モデルを用いて定量化された水収支を得るにあたって、高い精度で不確実性評価を行うことができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のパラメータを含むパラメータ群を用いて構成され所定領域における水資源の循環状態がモデル化された分布型水循環モデルを用いて、各パラメータについて適用された値に基づいて取得される水資源の収支に関する水収支算定値の不確かさに関する情報を取得するために用いられる情報処理装置であって、
前記各パラメータが取りうる範囲内のサンプル値を含むサンプル値群を、少なくとも一のパラメータのサンプル値が互いに異なるようにして2組以上作成するサンプル作成部と、
前記サンプル作成部が作成した2組以上のサンプル値群のそれぞれを前記分布型水循環モデルに適用して、水資源の収支に関するサンプル算定値を取得するサンプル算定部と、
前記サンプル算定部が取得した前記各サンプル値群に対応するサンプル算定値に基づいて、前記分布型水循環モデルを用いて得られる前記水収支算定値の不確かさに関する情報を取得する不確実性評価部とを備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記各パラメータが前記水収支算定値に及ぼす影響に関する感度分析を行って、前記水収支算定値に及ぼす影響が大きい高影響パラメータを抽出する抽出部をさらに備え、
前記サンプル作成部は、前記抽出部が抽出した高影響パラメータのうち少なくとも一の高影響パラメータのサンプル値が互いに異なるようにして、前記2組以上のサンプル値群を作成する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記抽出部は、
1以上のパラメータ及び前記水資源の収支に関する観測データを取得し、前記水収支算定値が取得した前記水資源の収支に関する観測データに対応するように、取得した観測データに対応する各パラメータの値とその他のパラメータの値とを設定するパラメータ設定部と、
前記各パラメータについて、前記パラメータ設定部が設定した当該パラメータの値を変化させて水資源の収支に関する変化後算定値を取得する変化後算定部とを有し、
前記各パラメータについて前記変化後算定部が算定した変化後算定値に基づいて、前記高影響パラメータを抽出する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記変化後算定部は、前記各パラメータについて、前記パラメータ設定部が設定した当該パラメータの値を所定率だけ変化させて前記変化後算定値を取得し、
前記抽出部は、前記各パラメータについて、前記パラメータ設定部が設定した値を用いて取得された水収支算定値と前記変化後算定値との差又は比率が所定の閾値以上である場合に、当該パラメータを前記高影響パラメータとして抽出する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記変化後算定部は、前記各パラメータについて、前記パラメータ設定部が設定した当該パラメータの値を、取りうる範囲の最大値と最小値とのそれぞれに変化させて、2つの前記変化後算定値を取得し、
前記抽出部は、前記各パラメータについて、前記2つの変化後算定値の差又は比率が所定の閾値以上である場合に、当該パラメータを前記高影響パラメータとして抽出する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記不確実性評価部は、1以上のパラメータ及び前記水資源の収支に関する観測データを取得し、前記サンプル値群及びそれに対応する前記サンプル算定値を前記観測データに照合させて再現性が確保されていることを確認し、再現性が確保されていることが確認された前記サンプル算定値を用いて統計処理を行って得た前記サンプル算定値のばらつきに関する値を、前記不確かさに関する情報として取得する、請求項1から5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記分布型水循環モデルを用いて、各パラメータについて適用された値に基づいて前記水収支算定値を取得する算定部と、
前記算定部が取得した水収支算定値と、前記不確実性評価部により取得された前記不確かさに関する情報とを対応付けて、出力データを構成する構成部とをさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記水収支算定値は、前記所定領域における水資源の流動量、貯留量、又はこれらの変動量に関するものである、請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記水収支算定値は、前記所定領域における地下水の流動量、貯留量、又はこれらの変動量に関するものである、請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記水収支算定値は、前記所定領域における地下水の涵養量に関するものである、請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項11】
2以上のパラメータを含むパラメータ群を用いて構成され所定領域における水資源の循環状態がモデル化された分布型水循環モデルを用いて算定される水資源の収支に関する水収支算定値の不確かさに関する情報を取得する情報処理方法であって、
前記各パラメータのうち、前記算定値に対する影響度が高い高影響パラメータを抽出するステップと、
前記各パラメータの値としてそのパラメータが取りうる範囲内のサンプル値を含むサンプル値群を、少なくとも一のパラメータのサンプル値が互いに異なるようにして2組以上作成するステップと、
前記2組以上のサンプル値群のそれぞれを前記分布型水循環モデルに適用して水資源の収支に関するサンプル算定値を取得するステップと、
取得した前記各サンプル値群に対応するサンプル算定値に基づいて前記分布型水循環モデルを用いて得られる前記水収支算定値の不確かさに関する情報を取得するステップとを含む、情報処理方法。
【請求項12】
2以上のパラメータを含むパラメータ群を用いて構成され所定領域における水資源の循環状態がモデル化された分布型水循環モデルを用いて、各パラメータについて適用された値に基づいて取得される水資源の収支に関する水収支算定値の不確かさに関する情報を取得するために用いられる情報処理装置のプログラムであって、
前記情報処理装置のコンピュータを、
前記各パラメータが取りうる範囲内のサンプル値を含むサンプル値群を、少なくとも一のパラメータのサンプル値が互いに異なるようにして2組以上作成するサンプル作成部と、
前記サンプル作成部が作成した2組以上のサンプル値群のそれぞれを前記分布型水循環モデルに適用して、水資源の収支に関するサンプル算定値を取得するサンプル算定部と、
前記サンプル算定部が取得した前記各サンプル値群に対応するサンプル算定値に基づいて、前記分布型水循環モデルを用いて得られる前記水収支算定値の不確かさに関する情報を取得する不確実性評価部として機能させるための、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定範囲の空間的広がりを持つ空間単位における水資源の循環状態を再現する分布型水循環モデルによって水資源の収支に関する量を取得する情報処理装置、情報処理方法、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば工場等の施設を稼働させる際には、各施設単位や当該施設を含む流域単位など、一定範囲の空間的広がりを持つ地域の空間単位における水資源量を意識することが求められている。例えば、対象領域における水資源量をモニタリングし、モニタリング結果の分析を行ったうえで、分析結果を、生産活動、水資源の運用管理、又は水資源の保護活動等に活用することが行われている。このような活動については、時間スケールも考慮に入れた将来予測を行うことで、有効な将来計画を策定して適切な運用管理が遂行されようにすることが望ましい。
【0003】
すなわち、従来、例えば、工場等で生産活動が行われる場合において、生産される製品の種類にかかわらず、例えばボイラー用、原料用、製品処理用、機器洗浄用、機器冷却用、温度調節用機器洗浄水、などの用途で、水資源が大量に使用される。水資源を使用する施設としては、井戸を自己保有し取水している施設や、国や自治体などから購入した水道水や工業用水を使用している施設などがある。いずれの取水方法においても、その施設の周辺の流域内の水資源や、その近傍の水資源が利用される。
【0004】
施設を継続して稼働させることができるかどうかは、施設周辺の流域における水資源確保の持続可能性に左右される。水資源確保の持続可能性を高めるためには、施設における水資源利用の効率化だけではなく、施設周辺の流域における水資源への影響が小さくなるように施設の運用計画を立てることが重要となる。具体的には、例えば、施設の運用計画の策定にあたっては、河川の水位、地下水の水位、及び湧水量というような、水に関連した各種指標について注視することが必要となる。また、もしも、その施設周辺の流域内の水資源確保の持続可能性が低く見積もられる場合には、水資源を保護するために、例えば水田涵養活動や森林保全活動等の実施計画を立てる必要がある。
【0005】
ところで、ある広がりを持った一定範囲の地圏環境において、水の挙動を正確に把握するのは簡単ではない。水は、大気、地表さらには地下といった様々な系の間で、蒸発、降雨、河川の流れ、浸透、地下水流動、湧水など様々な挙動を繰り返して、地下水として涵養され貯水されたり、その地域から流出したりしている。
【0006】
そのため、施設単位及び施設を含む流域単位において、水資源確保の持続性を確認するためには、当該流域内の水資源の収支を監視対象とする必要がある。そして、施設単位及び当該施設を含む流域単位における水資源の流動量、貯留量、及び変動量(以下、対象地域の水収支と呼ぶ)を適切に管理する必要がある。
【0007】
しかしながら、対象地域の水収支に関わる全てのパラメータを、流域内のすべての地点において把握することは現実的ではない。特に、山岳地域等のアクセスが困難な地点の涵養量や、地下水流動量のように直接に観測することが困難である量を管理対象とする場合に、これらの観測値を得ることはできないため、適切に管理を行うことは困難である。
【0008】
このような問題を背景として、従来、水資源管理を行うために水循環モデルが用いられることがある。水循環モデルを用いることで、直接観測することが困難である場所における水収支を定量化することが可能となり、任意の場所で、水資源管理を行うことが可能となっている。
【0009】
水循環モデルには、いわゆる集中型モデルと分布型モデルとがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0010】
集中型モデルは、計算に必要な降雨データ数が少なく、比較的簡単に計算でき、システム化が容易であるとい特徴がある。しかしながら、集中型モデルでは、水循環を再現したり予測したりする精度を高くすることが困難である。そのため、集中型モデルは、施設における生産能力の管理等を行うことを目的とする場合には適さない。
【0011】
一方、分布型モデルでは、対象とする空間を細かいメッシュに区切り、各メッシュでの水循環の物理則に従って水循環を再現することができる。そのため、現実の水循環に近い現象を比較的高精度に再現することができる。すなわち、分布型モデルは、施設における生産能力の管理等を行うことを目的とする場合に適している(非特許文献2及び非特許文献3参照)。このような分布型水循環モデルとして、例えば特許文献1や非特許文献4に記載されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011-13753号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】株式会社日水コン、“分布型洪水予測モデル | 株式会社日水コン-潤いある未来へ”、[online]、[2020年6月12日検索]、インターネット<URL:http://www.nissuicon.co.jp/jigyou/kasen/kouzui-yosoku/>
【非特許文献2】登坂博行,小島圭二,三木章生,千野剛司,地表流と地下水流を結合した3次元陸水シミュレーション手法の開発,地下水学会誌,1996,38巻,4号,p.253-267
【非特許文献3】森康二,多田和広,佐藤壮,柿澤展子,内山佳美,横山尚秀, 山根正伸,神奈川県水源エリアの3次元水循環モデル,神自環保セ報10(2013)215-223.
【非特許文献4】McDonald,Michael G.and Arlen W. Harbaugh.“A modular three-dimensional finite-difference ground-water flow model.” Techniques of water-resources investigations(1984)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のような分布型水循環モデルでは、各メッシュにパラメータを適用する特性上、計算に必要なデータ量が多くなる。すなわち、計算量とのトレードオフにより、メッシュサイズが規定されることとなる。また、例えば地下の内部構造や降水量の全空間分布など、直接観測を行うことができない要素がある地点のメッシュに関しては、適用するパラメータの値として、推定値を適用せざるを得ない。換言すると、分布型水循環モデルにおいて、全てのメッシュについてすべてのパラメータの値として実際の観測値に基づく値を適用することは不可能である。これらの問題から、分布型水循環モデルにおいて定量することができる対象地域の水収支は、実際の水収支に対して不確かさを有するものとなる。
【0015】
分布型水循環モデルを利用した計算を行うことにより、任意の場所における、定量化された水収支を知ることができる。しかしながら、このようにして定量化された水収支に基づいて事業者が意思決定を行うためには、定量化された水収支の不確かさについての評価(以下において、不確実性評価ということがある)を、高い精度で行うことが求められている。
【0016】
本発明は、分布型水循環モデルを用いて定量化された水収支を得るにあたって、高い精度で不確実性評価を行うことができる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本第一の発明の情報処理装置は、2以上のパラメータを含むパラメータ群を用いて構成され所定領域における水資源の循環状態がモデル化された分布型水循環モデルを用いて、各パラメータについて適用された値に基づいて取得される水資源の収支に関する水収支算定値の不確かさに関する情報を取得するために用いられる情報処理装置であって、各パラメータが取りうる範囲内のサンプル値を含むサンプル値群を、少なくとも一のパラメータのサンプル値が互いに異なるようにして2組以上作成するサンプル作成部と、サンプル作成部が作成した2組以上のサンプル値群のそれぞれを分布型水循環モデルに適用して、水資源の収支に関するサンプル算定値を取得するサンプル算定部と、サンプル算定部が取得した各サンプル値群に対応するサンプル算定値に基づいて、分布型水循環モデルを用いて得られる水収支算定値の不確かさに関する情報を取得する不確実性評価部とを備える、情報処理装置である。
【0018】
かかる構成により、対象地域について、分布型水循環モデルを用いて定量化された水収支を得るにあたって、高い精度で不確実性評価を行うことができる。
【0019】
また、本第二の発明の情報処理装置は、第一の発明に対して、各パラメータが水収支算定値に及ぼす影響に関する感度分析を行って、水収支算定値に及ぼす影響が大きい高影響パラメータを抽出する抽出部をさらに備え、サンプル作成部は、抽出部が抽出した高影響パラメータのうち少なくとも一の高影響パラメータのサンプル値が互いに異なるようにして、2組以上のサンプル値群を作成する、情報処理装置である。
【0020】
かかる構成により、不確かさの評価を容易に行うことができる。
【0021】
また、本第三の発明の情報処理装置は、第二の発明に対して、抽出部は、1以上のパラメータ及び水資源の収支に関する観測データを取得し、水収支算定値が取得した水資源の収支に関する観測データに対応するように、取得した観測データに対応する各パラメータの値とその他のパラメータの値とを設定するパラメータ設定部と、各パラメータについて、パラメータ設定部が設定した当該パラメータの値を変化させて水資源の収支に関する変化後算定値を取得する変化後算定部とを有し、各パラメータについて変化後算定部が算定した変化後算定値に基づいて、高影響パラメータを抽出する、情報処理装置である。
【0022】
かかる構成により、水収支算定値に対して高い感度を有するパラメータを確実に抽出することができる。
【0023】
また、本第四の発明の情報処理装置は、第三の発明に対して、変化後算定部は、各パラメータについて、パラメータ設定部が設定した当該パラメータの値を所定率だけ変化させて変化後算定値を取得し、抽出部は、各パラメータについて、パラメータ設定部が設定した値を用いて取得された水収支算定値と変化後算定値との差又は比率が所定の閾値以上である場合に、当該パラメータを高影響パラメータとして抽出する、情報処理装置である。
【0024】
かかる構成により、水収支算定値に対して高い感度を有するパラメータを確実に抽出することができる。
【0025】
また、本第五の発明の情報処理装置は、第三の発明に対して、変化後算定部は、各パラメータについて、パラメータ設定部が設定した当該パラメータの値を、取りうる範囲の最大値と最小値とのそれぞれに変化させて、2つの変化後算定値を取得し、抽出部は、各パラメータについて、2つの変化後算定値の差又は比率が所定の閾値以上である場合に、当該パラメータを高影響パラメータとして抽出する、情報処理装置である。
【0026】
かかる構成により、水収支算定値に対して高い感度を有するパラメータを確実に抽出することができる。
【0027】
また、本第六の発明の情報処理装置は、第一から五のいずれかの発明に対して、不確実性評価部は、1以上のパラメータ及び水資源の収支に関する観測データを取得し、サンプル値群及びそれに対応するサンプル算定値を観測データに照合させて再現性が確保されていることを確認し、再現性が確保されていることが確認されたサンプル算定値を用いて統計処理を行って得たサンプル算定値のばらつきに関する値を、不確かさに関する情報として取得する、情報処理装置である。
【0028】
かかる構成により、より高い精度で不確実性評価を行うことができる。
【0029】
また、本第七の発明の情報処理装置は、第一から六のいずれかの発明に対して、分布型水循環モデルを用いて、各パラメータについて適用された値に基づいて水収支算定値を取得する算定部と、算定部が取得した水収支算定値と、不確実性評価部により取得された不確かさに関する情報とを対応付けて、出力データを構成する構成部とをさらに備える、情報処理装置である。
【0030】
かかる構成により、不確かさが評価されて定量化された水収支算定値を出力することができる。
【0031】
また、本第八の発明の情報処理装置は、第一から七のいずれかの発明に対して、水収支算定値は、所定領域における水資源の流動量、貯留量、又はこれらの変動量に関するものである、情報処理装置である。
【0032】
かかる構成により、不確かさが評価されて定量化された水資源の流動量、貯留量、又はこれらの変動量を得ることができる。
【0033】
また、本第九の発明の情報処理装置は、第一から七のいずれかの発明に対して、水収支算定値は、所定領域における地下水の流動量、貯留量、又はこれらの変動量に関するものである、情報処理装置である。
【0034】
かかる構成により、不確かさが評価されて定量化された地下水の流動量、貯留量、又はこれらの変動量を得ることができる。
【0035】
また、本第十の発明の情報処理装置は、第一から七のいずれかの発明に対して、水収支算定値は、所定領域における地下水の涵養量に関するものである、情報処理装置である。
【0036】
かかる構成により、不確かさが評価されて定量化された地下水の涵養量を得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明による情報処理装置によれば、対象地域について、分布型水循環モデルを用いて定量化された水収支を得るにあたって、高い精度で不確実性評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本実施の形態における分布型水循環モデルの一例について説明する図
図2】同分布型水循環モデルの利用に関して説明するフローチャート
図3】本実施の形態における情報処理装置のブロック図
図4】同情報処理装置の不確実性評価の流れを示すフローチャート
図5】同情報処理装置が行うスクリーニング評価について説明するフローチャート
図6】同情報処理装置が行う定量評価について説明するフローチャート
図7】上記実施の形態におけるコンピュータシステムの概観図
図8】同コンピュータシステムのブロック図
図9】本実施の形態の一実施例において感度分析の対象となったパラメータと各パラメータの取りうる範囲とを示す表
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、情報処理装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0040】
なお、以下において用いる用語は、一般的には次のように定義される。なお、これらの用語の語義は常にここに示されるように解釈されるべきではなく、例えば以下において個別に説明されている場合にはその説明も踏まえて解釈されるべきである。
【0041】
水資源とは、例えば、地下水、河川水、湖等の貯留水、湧水などをいうが、これに限られない。
【0042】
ある事項について識別子とは、当該事項を一意に示す文字又は符号等である。符号とは、例えば英数字やその他記号等であるが、これに限られない。識別子は、例えば、それ自体が特定の意味を示すものではない符号列であるが、対応する事項を識別しうる情報であれば種類は問わない。すなわち、識別子は、それが示すものそのものの名前であってもよいし、一意に対応するように符号を組み合わせたものであってもよい。2以上の情報(例えば、データベースに記録されているレコードの属性値など)の組合せが識別子として用いられてもよい。
【0043】
取得とは、ユーザ等により入力された事項を取得することを含んでいてもよいし、自装置又は他の装置に記憶されている情報(予め記憶されている情報であってもよいし当該装置において情報処理が行われることにより生成された情報であってもよい)を取得することを含んでいてもよい。他の装置に記憶されている情報を取得するとは、他の装置に記憶されている情報をAPI経由などで取得することを含んでいてもよいし、他の装置により提供されている文書ファイルの内容(ウェブページの内容なども含む)を取得することを含んでいてもよい。
【0044】
また、情報の取得には、いわゆる機械学習の手法を利用するようにしてもよい。機械学習の手法の利用については、例えば次のようにすることができる。すなわち、特定の種類の入力情報を入力とし、取得したい種類の出力情報を出力とする分類器を、機械学習の手法を用いて構成する。例えば、予め、入力情報と出力情報との組を2以上用意し、当該2組以上の情報を機械学習の分類器を構成するためのモジュールに与えて分類器を構成し、構成した分類器を格納部に蓄積する。なお、分類器は学習器ということもできる。なお、機械学習の手法としては、例えば、深層学習、ランダムフォレスト、SVR等、問わない。また、機械学習には、例えば、fastText、tinySVM、random forest、TensorFlow等の各種の機械学習フレームワークにおける関数や、種々の既存のライブラリを用いることができる。
【0045】
なお、分類器は、機械学習により得られるものに限られない。分類器は、例えば、入力情報等に基づく入力ベクトルと、出力情報との対応関係を示すテーブルであってもよい。この場合、入力情報に基づく特徴ベクトルに対応する出力情報をテーブル中から取得するようにしてもよいし、テーブル中の2以上の入力ベクトルと各入力ベクトルの重み付けなどを行うパラメータとを用いて入力情報に基づく特徴ベクトルに近似するベクトルを生成し、生成に用いた各入力ベクトルに対応する出力情報とパラメータとを用いて、最終的な出力情報を取得するようにしてもよい。また、分類器は、例えば、入力情報等に基づく入力ベクトルと、出力情報を生成するための情報との関係を表す関数などであってもよい。この場合、例えば、入力情報に基づく特徴ベクトルに対応する情報を関数により求めて、求めた情報を用いて出力情報を取得するなどしてもよい。
【0046】
情報を出力するとは、ディスプレイへの表示、プロジェクタを用いた投影、プリンタでの印字、音出力、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である。具体的には、例えば、情報のウェブページへの表示を可能とすることや、電子メール等として送信することや、印刷するための情報を出力することなどを含む。
【0047】
情報の受け付けとは、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力デバイスから入力された情報の受け付け、他の装置等から有線もしくは無線の通信回線を介して送信された情報の受信、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなどの記録媒体から読み出された情報の受け付けなどを含む概念である。
【0048】
(実施の形態)
【0049】
本実施の形態において、情報処理装置は、一定範囲の空間的広がりを持つ空間単位における水資源の循環状態を再現する分布型水循環モデルによって水資源の流動量や貯留量変動量などを計算する機能を有している。情報処理装置は、分布型水循環モデルを構成する各パラメータの値のうち、水資源の流動量や貯留量変動量に影響度の高いパラメータの値のみを抽出し、抽出された複数のパラメータの取りうる範囲からランダムにサンプリングした変数を組み合わせて水資源の流動量が取りうる不確かさを定量的に計算する。ここで、パラメータを抽出する場合には、観測データと観測データに相当する水循環モデルの算定値との照合によって再現性が確認された水循環モデルのパラメータ設定値を中心にして、全パラメータをそれぞれ変動させたうえで水資源の流動量や貯留量変動量などを算定し、その結果に基づいてパラメータを抽出してもよい。例えば、算定値が一定比率以上変動した場合に、そのパラメータを抽出してもよい。また、例えば、観測データを用いて再現性が確認された水循環モデルで算定された水資源の流動量や貯留量変動量について、あるパラメータの値が取りうる範囲の最大値と最小値とで計算された水資源の流動量や貯留量変動量の幅が所定値以上(例えば、1パーセント以上)である場合に、そのパラメータを抽出してもよい。以下、このように構成された情報処理装置1について説明する。
【0050】
図1は、本実施の形態における分布型水循環モデルの一例について説明する図である。
【0051】
図1に示されるように、本実施の形態において、分布型水循環モデルは、森林、河川、その他の種類の土地が含まれる所定領域において、水資源の循環状態がモデル化されたものである。2以上の所定領域は、例えば、工場単位や工場を含む流域単位で設定されうるものである。すなわち、所定領域は、一定範囲の空間的広がりを持つ空間単位で設定されうるものである。本実施の形態において、分布型水循環モデルとしては、例えば、「GETFLOWS(登録商標)」や「MODFLOW」などの公知のモデルを採用することができ、本発明においては「GETFLOWS(登録商標)」がより好ましい。
【0052】
分布型水循環モデルは、2以上のパラメータを含むパラメータ群を用いて構成されている。分布型水循環モデルの各メッシュについて、パラメータの値が設定されていることにより、モデルにおける水資源の循環状態のシミュレーションを行うことが可能となっている。パラメータは、例えば気象、地表、浅層、及び深層などの要素に関連するもの(例えば、降水、気温、表土、堆積物、透水層など)や、その地点特有の性質等に関連するものなどが設定されうる。本実施の形態においては、分布型水循環モデルを構成するパラメータ群には、降水量、蒸発散量、気温、風速、日照時間、相対湿度、樹冠被覆率、樹冠貯留量、リター被覆率、リター貯留量、積雪・融雪温度、アルベド、バルク輸送係数、土壌蒸発効率、地下水流れ、等価粗度係数、地下水流れ、透水係数、有効間隙率、固相圧縮率、相対浸透率、毛細管圧力、流体物性、流体密度、空気密度、流体の粘性係数、空気の粘性係数などのパラメータが含まれる。なお、パラメータはこれに限られず、種々設定されていればよい。
【0053】
図2は、同分布型水循環モデルの利用に関して説明するフローチャートである。
【0054】
このような分布型水循環モデルを利用して、事業者等の利用者は、対象地域についての水収支に関する情報を把握することができる。分布型水循環モデルは、例えば以下のような流れで利用することができる。なお、下記は一例であり、分布型水循環モデルの構成や用途により、種々の変形があり得る。
【0055】
(ステップS1)すなわち、まず、水収支に関する情報を把握するべき対象領域を決定する。具体的には、例えば水資源を利用する工場の周囲の水収支について把握する場合には、工場の上流の山林等の涵養域、その下流において工場が地下水や河川水を取水する領域、さらにはその下流の領域などが、対象領域として選択されうる。
【0056】
(ステップS2)対象領域について、踏査を行い、地形、地質、植生等の情報を収集する。
【0057】
(ステップS3)踏査により収集した情報を用いて、対象領域を分布型水循環モデルとしてモデル化する。
【0058】
(ステップS4)作成した分布型水循環モデルについて、観測データを用いて、モデルの再現性を確認する。
【0059】
(ステップS5)踏査とモデルの調整とを繰り返し、再現性を向上させる。これにより、利用可能な分布型水循環モデルが完成する。
【0060】
(ステップS6)分布型水循環モデルに地下水面を発生させ、定義通りの水収支を計算する。かかる計算は、採用する分布型水循環モデルの構成により、公知の方法で計算機を用いて行うことができる。
【0061】
(ステップS7)所定期間の気候等のパラメータ値を分布型水循環モデルに入力して、当該期間における水収支を積算して求める。
【0062】
(ステップS8)これにより、算定された水収支の情報(水収支算定値)を用いて、当該対象領域における所定期間の生産活動等について、計画することができる。
【0063】
ここで、以下に説明するように、本実施の形態では、情報処理装置1を用いて、分布型水循環モデルによって得られた対象地域の水収支算定値に対し、分布型水循環モデルを構成する各パラメータの不確かさに起因する不確かさを定量化することができる。このような不確かさの定量化は、大まかに、スクリーニング評価と定量評価という二つの流れで行うことができる。そして、利用者は、定量化された水収支の不確かさを利用して、環境や事業等の持続可能性を確実に確保できるように、水資源の利用に関して計画することができる。具体的には、例えば、定量化により得られた、水収支の算定結果の取りうる幅の最下限の値を利用することにより、水収支の算定誤差により生じるリスクを小さく抑えることができる。
【0064】
なお、本実施の形態において、水収支算定値は、所定領域における水資源の流動量、貯留量、又はこれらの変動量に関するものである。より具体的には、水収支算定値は、所定領域における地下水の流動量、貯留量、又はこれらの変動量に関するものである。すなわち、水収支とは、例えば、対象地域についての水資源の流動量、貯留量、及び変動量などを指す概念である。
【0065】
なお、水資源の流動量には、例えば、涵養量が含まれうる。ここで涵養とは、主に地表から地下水面への水の供給をいい、涵養量とは、その水の供給量をいう。換言すると、本実施の形態において、水収支算定値は、所定領域における地下水の涵養量に関するものであるといえる。なお、水収支算定値はこれに限られず、水収支を把握する目的等に応じて、適宜、水資源に関する量について定義することができる。
【0066】
本実施の形態において、水収支算定値の算定は、後述するように、情報処理装置1の処理部140の算定部151により行うことができるが、これに限られない。水収支算定値の不確かさの定量化が情報処理装置1により行われる一方で、水収支算定値の算定が情報処理装置1とは異なる装置により行われるようにしてもよい。
【0067】
まず、情報処理装置1の構成について説明する。
【0068】
図3は、本実施の形態における情報処理装置1のブロック図である。
【0069】
図3に示されるように、情報処理装置1は、格納部110、受付部130、処理部140、及び出力部160を備える。情報処理装置1は、例えばパーソナルコンピュータであるが、これに限られず、サーバ装置や携帯情報端末などであってもよい。情報処理装置1は、1つのサーバにより構成されていてもよいし、互いに連携して動作する複数のサーバにより構成されていてもよいし、その他の機器に内蔵された電子計算機等であってもよい。なお、サーバは、いわゆるクラウドサーバでも、ASPサーバ等でも良く、その種類は問わないことは言うまでもない。
【0070】
格納部110は、モデル情報格納部111、観測データ格納部113、及び抽出情報格納部115を備える。格納部110は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。格納部110の各部には、例えば受付部130により受け付けられた情報や処理部140によって取得された情報などが格納されるが、格納部110の各部に記憶される情報等や、その情報等が記憶される過程は、これに限られない。例えば、記録媒体を介して情報等が格納部110で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された情報等が格納部110で記憶されるようになってもよく、あるいは、入力デバイスを介して入力された情報等が格納部110で記憶されるようになってもよい。
【0071】
モデル情報格納部111には、分布型水循環モデルに関する情報が格納されている。分布型水循環モデルに関する情報には、例えば、モデルを構成する各メッシュに関する情報が含まれる。各メッシュについて適用されている各パラメータの値などが、モデル情報格納部111に記憶されている。また、各メッシュの位置を特定可能な情報などが、モデル情報格納部111に記憶されている。
【0072】
観測データ格納部113には、対象領域の各種指標に関する観測データが格納されている。観測データは、例えば、踏査により得られたデータや、観測機関等から取得したデータ等であるが、これらに限られない。各観測データは、例えば、対応するパラメータを識別する識別子に対応付けて格納されている。例えば、降水量に関する観測データは、降水量を示すパラメータの識別子に対応付けて格納されている。なお、水資源の収支に関する観測データは、水資源の収支についてのものであることを識別する識別子に対応付けて格納されていればよい。観測データは、例えば、観測地点に対応する位置情報と対応付けられているが、これに限られない。位置情報は、位置を示す情報であってもよいし、対応するメッシュを特定可能な情報であってもよい。また、観測データは、例えば、観測されたタイミングを示す時間情報と対応付けられているが、これに限られない。観測データとしては、例えば、地下水位や河川流量等、各パラメータについてのものに限られない。例えば、湧水地点の空間分布等、地理空間情報も含まれるようにしてもよい。
【0073】
抽出情報格納部115は、スクリーニング評価により抽出されたパラメータを特定する抽出情報が格納される。抽出情報は、例えば、抽出されたパラメータ(高影響パラメータ)を識別する識別子と、分布型水循環モデルを識別する識別子とが対応付けられたものであるが、これに限られない。
【0074】
受付部130は、例えば、情報処理装置1に接続された入力手段を用いて入力された情報や、情報処理装置1に接続された読み取り装置(例えば、コードリーダなど)を用いて行われた入力操作(例えば、装置により読み取られた情報も含む)により入力された情報を受け付ける。受け付けられた情報は、例えば、格納部110に記憶される。受付部130により受付可能な情報の入力に用いられうる入力手段は、テンキーやキーボードやマウスやメニュー画面によるものなど、何でもよい。受付部130は、テンキーやキーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現されうる。なお、受付部130は、例えば、マイクにより入力された音声などの情報を受け付けるようにしてもよい。
【0075】
処理部140は、通常、MPUやメモリ等から実現されうる。処理部140の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現してもよい。処理部140は、各種の処理を行う。各種の処理とは、例えば、以下のように処理部140の各部が行う処理である。
【0076】
本実施の形態において、処理部140は、抽出部141、サンプル作成部143、サンプル算定部145、不確実性評価部149、算定部151、及び構成部155を備える。
【0077】
抽出部141は、スクリーニング評価を行って、水収支算定値に及ぼす影響が大きい高影響パラメータを抽出する。高影響パラメータは、分布型水循環モデルに用いられているパラメータ群から抽出される。高影響パラメータは、1つであっても、2以上であってもよい。抽出部141は、抽出した高影響パラメータを特定可能な抽出情報を、抽出情報格納部115に記憶させる。
【0078】
本実施の形態において、スクリーニング評価は、各パラメータが水収支算定値に及ぼす影響に関する感度分析を行うことにより行われる。抽出部141は、パラメータ設定部1411、変化後算定部1412を備える。
【0079】
パラメータ設定部1411は、1以上のパラメータに関する観測データを、観測データ格納部113から取得する。また、パラメータ設定部1411は、水資源の収支に関する観測データを、観測データ格納部113から取得する。パラメータ設定部1411は、パラメータや水収支を識別する識別子を用いて、対応する観測データを取得することができる。
【0080】
パラメータ設定部1411は、取得した観測データに対応する各パラメータの値とその他のパラメータの値とを用いて処理部140で算定される水収支算定値が、取得した水資源の収支に関する観測データに対応するように、各パラメータの値を設定する。すなわち、パラメータ設定部1411は、各パラメータの値を、観測データに照らして合理的な値となるように設定する。例えば、対応する観測データがあるパラメータについては、当該観測データに対応する値が設定されればよく、その他のパラメータの値は、水収支の観測データと水収支算定値との差が所定値内となるように、例えばニュートン法などの解析方法を用いて、当該パラメータの取りうる値の範囲内において設定されればよい。
【0081】
変化後算定部1412は、各パラメータについて、パラメータ設定部1411が設定したパラメータの値を変化させて、水収支を算定する。これにより算定される水収支の算定値を、変化後算定値と呼ぶ。すなわち、変化後算定部1412は、変化後算定値を取得する。
【0082】
本実施の形態において、変化後算定部1412は、各パラメータについて、パラメータ設定部1411が設定したパラメータの値を所定率だけ変化させて変化後算定値を取得する。具体的には、例えば、一のパラメータについて、設定された値を1パーセントだけ増加又は減少させて、変化後の値を用いて、変化後算定値を算定する。なお、変化させる割合はこれに限られない。また、各パラメータについて予め設定された変化量を設定値に加減することにより、変化後算定値の算定に用いる値を得るようにしてもよい。
【0083】
抽出部141は、各パラメータについて、変化後算定部1412が算定した変化後算定値に基づいて、高影響パラメータを抽出する。本実施の形態においては、抽出部141は、各パラメータについて、パラメータ設定部1411が設定したパラメータ群を用いて水収支算定値を取得する。そして、取得した水収支算定値と、変化後算定部1412が算定した変化後算定値との差を求める。求めた差が、所定の閾値以上である場合には、当該パラメータを高影響パラメータとして抽出する。なお、抽出部141は、水収支算定値と変化後算定値との比率が所定の閾値以上である場合に、当該パラメータを高影響パラメータとして抽出するようにしてもよい。
【0084】
抽出部141は、各パラメータについてこのような値を変動させて感度分析を行うことで、水収支算定値に及ぼす影響が大きい高影響パラメータ、すなわち水収支に対して応答性が高いパラメータを抽出することができる。感度分析は、パラメータ設定部1411が設定した値から変動させた値を用いて行われるので、当該パラメータが実際にとる可能性が高いと考えられる値の近傍における、当該パラメータの感度を確認することができる。
【0085】
なお、抽出部141により抽出候補とされるパラメータ(感度分析の対象とするパラメータ)は限定されていてもよい。例えば、対応する観測データが取得可能であるパラメータについては、感度分析の対象とはしないようにしてもよい。
【0086】
例えば、感度分析は、平均的な気象条件から得られる有効降水量を与えた平衡状態(定常状態)を仮定することで、対象地域の水収支に対して影響が大きいパラメータを迅速に抽出するようにしてもよい。なお、実現象である気象条件が変化する状態(非定常状態)に関与するパラメータとして、例えば有効間隙率が挙げられる。この有効間隙率のようなパラメータについての感度は、定常状態において他のパラメータの感度が評価された後に、非定常状態で感度分析を行うことで評価することができる。
【0087】
なお、抽出部141は、例えば以下のようにして高影響パラメータの抽出を行うようにしてもよい。すなわち、変化後算定部1412は、各パラメータについて、パラメータ設定部1411が設定した当該パラメータの値を、取りうる範囲の最大値と最小値とのそれぞれに変化させて、2つの変化後算定値を取得するようにしてもよい。この場合、抽出部141は、各パラメータについて、2つの変化後算定値の差又は比率が所定の閾値以上である場合に、当該パラメータを高影響パラメータとして抽出するようにしてもよい。具体的には、例えば、2つの変化後算定値の比率が1パーセント以上である場合に、当該パラメータを高影響パラメータとして抽出することができるが、閾値や、2つの変化後算定値を用いた判定方法は、これに限られない。また、例えば、パラメータの取りうる最大値と最小値とのいずれか一方を用いて算出した変化後算定値と、パラメータ設定部1411が設定したパラメータ群を用いて得た水収支算定値とに基づいて、感度分析を行うようにしてもよい。
【0088】
サンプル作成部143は、各パラメータが取りうる範囲内のサンプル値を含むサンプル値群を、少なくとも一のパラメータのサンプル値が互いに異なるようにして2組以上作成する。本実施の形態において、サンプル作成部143は、抽出部141が抽出した高影響パラメータのうち少なくとも一の高影響パラメータのサンプル値が互いに異なるようにして、2組以上のサンプル値群を作成する。サンプル値群の作成は、例えば、定量評価方法であるモンテカルロ法やラテン超方格サンプリング法等の手法が用いられうる。より好ましくは、ラテン超方格サンプリング法が用いられることで、効率的に定量化を行うためのサンプル値群を作成することができる。なお、サンプル値群の作成は、異なる値とする各パラメータについて、値を取りうる範囲の最小値から最大値まで、所定の差分毎に値を変更しながらサンプル値群を作成することなどにより行うようにしてもよいし、種々の方法を用いることができる。
【0089】
サンプル算定部145は、サンプル作成部143が作成した2組以上のサンプル値群のそれぞれを分布型水循環モデルに適用して、水収支を算定する。これにより算定される水収支の算定値を、サンプル算定値と呼ぶ。すなわち、サンプル算定部145は、各サンプル値群に対応するサンプル算定値を取得する。取得されたサンプル算定値は、例えば、格納部110に格納される。
【0090】
不確実性評価部149は、サンプル算定部145が取得した各サンプル値群に対応するサンプル算定値に基づいて、分布型水循環モデルを用いて得られる水収支算定値の不確かさに関する情報を取得する。換言すると、不確実性評価部149は、サンプル算定値を用いて水収支算定値の不確実性評価を行う。例えば、不確実性評価部149は、2組以上のサンプル値群を用いて取得された2以上のサンプル算定値について、統計処理を行うことによりサンプル算定値のばらつきに関する値を算出し、これを水収支算定値の不確かさに関する情報として取得する。具体的には、例えば、統計処理により算出した標準偏差の値や、それを用いて算出した値や信頼区間等が不確かさに関する情報として取得されればよいが、これに限られない。
【0091】
ここで、本実施の形態においては、不確実性評価部149は、例えば、1以上のパラメータ及び水資源の収支に関する観測データを観測データ格納部113から取得する。観測データの取得は、上述のパラメータ設定部1411による方法と同様にして行うことができるが、これに限られない。そして、不確実性評価部149は、サンプル値群及びそれに対応するサンプル算定値を観測データに照合させて、サンプル値群からのサンプル算定値の算定について、観測データとの再現性が確保されていることを確認する。再現性が確保されているとの判断は、例えば、各観測データとサンプル値及びサンプル算定値のそれぞれとの差が所定値以内であると判断することなどにより行うことができるが、これに限られない。そして、不確実性評価部149は、再現性が確保されていることが確認されたサンプル算定値を用いて統計処理を行って得たサンプル算定値のばらつきに関する値を、不確かさに関する情報として取得する。このように、観測データに照合させることにより信頼性が確認されたサンプル算定値を用いることで、より高い精度で、水収支算定値の不確かさに関する情報を取得することができる。
【0092】
なお、対象領域の水収支算定値の不確実性評価を行う際、再現性が確認された水循環モデルによる対象地域のサンプル算定値が不足する場合には、サンプル値群の生成すなわちサンプリング数を増やし、再現性が確保されていることが確認された十分な数のサンプル算定値が得られるようにすることが好ましい。これにより、高精度な不確かさに関する情報を取得することができる。
【0093】
算定部151は、分布型水循環モデルを用いて、適用されたパラメータ群の値に基づいて、水収支算定値を取得する。
【0094】
構成部155は、算定部151が取得した水収支算定値と、不確実性評価部149により取得された不確かさに関する情報とを対応付けて、出力データを構成する。例えば、不確かさに関する情報として95%の信頼区間が不確実性評価部149により取得されているとき、構成部155により構成された出力データによれば、算出した水収支算定値と、その95%信頼区間とが得られる。出力データが出力部160等により出力されることにより、情報処理装置1の利用者は、信頼区間を含めて定量化された水収支算定値を得ることができる。
【0095】
出力部160は、本実施の形態において、例えば情報処理装置1に設けられたディスプレイデバイスに情報を表示することなどにより情報を出力する。なお、出力部160は、例えば、図示しない送信部等を用いて、ネットワーク等を介して他の装置に情報を送信することにより情報を出力するように構成されていてもよい。
【0096】
なお、出力部160は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えてもよい。出力部160は、出力デバイスのドライバーソフト又は、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現されうる。
【0097】
次に、情報処理装置1が行う、不確実性評価の動作の流れについて説明する。
【0098】
図4は、同情報処理装置1の不確実性評価の流れを示すフローチャートである。
【0099】
図4に示されるように、情報処理装置1は、パラメータについてのスクリーニング評価を行い(ステップS11)、その結果を用いて不確かさの定量評価を行うことにより(ステップS12)、不確実性評価を行う。
【0100】
図5は、同情報処理装置1が行うスクリーニング評価について説明するフローチャートである。
【0101】
(ステップS21)処理部140は、カウンタiにゼロをセットする。
【0102】
(ステップS22)処理部140は、カウンタiをインクリメントする。
【0103】
(ステップS23)処理部140は、感度分析を行うi番目のパラメータを選択する。
【0104】
(ステップS24)処理部140は、選択したパラメータの取りうる値の幅を取得する。
(ステップS25)処理部140は、選択したパラメータの値を変動させて感度解析を実施する。
(ステップS26)処理部140は、感度解析の結果が、所定の抽出条件を満たすものであるか否かを判断する。抽出条件としては、例えば、上述のように、変動前後の水収支の算定値の比率が所定の閾値以上であることなどを設定することができる。抽出条件が満たされる場合にはステップS27に進み、そうでない場合にはステップS28に進む。
【0105】
(ステップS27)処理部140は、選択しているパラメータを抽出対象としてセットする。すなわち、処理部140は、選択しているパラメータが高影響パラメータとして抽出されるようにする。
【0106】
(ステップS28)処理部140は、カウンタiが、感度分析を行うパラメータの総数に一致するか否かを判断する。一致する場合にはスクリーニング評価が終了する。一致しない場合には、ステップS22に戻る。
【0107】
図6は、同情報処理装置1が行う定量評価について説明するフローチャートである。
【0108】
(ステップS31)処理部140は、例えばラテン超方格サンプリング法等を用いることにより、2組以上のサンプル値群を作成する。
【0109】
(ステップS32)処理部140は、作成した各サンプル値群について、分布型水循環モデルを用いた解析を実行し、サンプル算定値を取得する。
【0110】
(ステップS33)処理部140は、各サンプル値群とサンプル算定値との組み合わせについて、観測データに基づいて、再現性指標に適合しているか否かを確認する。
【0111】
(ステップS34)処理部140は、再現性に関する確認結果に基づいて、不確実性評価に用いるサンプル算定値の数を絞り込む。
【0112】
(ステップS35)処理部140は、再現性指標に適合することが確認されたサンプル算定値を用いて、水収支算定値の不確かさ、すなわち水収支算定値が取りうる幅を算出する。その後、定量評価が終了する。
【0113】
このように不確実性評価が行われることにより、水収支算定値に不確かさを表す情報を付加して出力することが可能となる。
【0114】
以上説明したように、本実施の形態では、情報処理装置1は、2以上のパラメータを含むパラメータ群を用いて構成され所定領域における水資源の循環状態がモデル化された分布型水循環モデルを用いて算定される水資源の収支に関する水収支算定値の不確かさに関する情報を取得する情報処理方法を実行可能である。すなわち、情報処理装置1は、各パラメータのうち、算定値に対する影響度が高い高影響パラメータを抽出するステップと、各パラメータの値としてそのパラメータが取りうる範囲内のサンプル値を含むサンプル値群を、少なくとも一のパラメータのサンプル値が互いに異なるようにして2組以上作成するステップと、2組以上のサンプル値群のそれぞれを分布型水循環モデルに適用して水資源の収支に関するサンプル算定値を取得するステップと、取得した各サンプル値群に対応するサンプル算定値に基づいて分布型水循環モデルを用いて得られる水収支算定値の不確かさに関する情報を取得するステップとを実行することができる。
【0115】
情報処理装置1は、以上のように構成されているので、対象地域について、分布型水循環モデルを用いて定量化された水収支を得るにあたって、高い精度で不確実性評価を行うことができる。
【0116】
ここで、分布型水循環モデルにおいて、現実の水循環に近い現象を再現するために割り当てられた各メッシュにおける複数のパラメータのそれぞれについて不確実性評価のための計算処理を行う方法では、計算量が膨大になる。大規模計算が必要となるため、スーパーコンピュータレベルの高い計算性能を有する計算機を用いたり、計算機を長時間稼働させたりする必要がある。
【0117】
これに対して、本実施の形態では、水収支算定値に及ぼす影響に関する感度分析を行うことにより、算定に用いるパラメータのスクリーニングを行い、抽出された高影響パラメータの値を変動させたパラメータ群を用いることによって、不確実性評価が行われる。したがって、不確実性評価を行うために必要な計算量が少なくて済み、不確かさの評価を容易に行うことができる。具体的には、いわゆるスーパーコンピュータ等の計算機を用いることなく、単独のパーソナルコンピュータや小規模の計算機ネットワークなどの簡素な構成の機器を情報処理装置1として用いて、比較的短時間の計算処理を行うことで、不確実性評価を行うことができる。
【0118】
以上のようにして、情報処理装置1を用いることで水収支算定値を定量化することができるので、各事業者は、自ら、いつでも、監視指標(対象地域の水収支)を得て、適時に必要な判断を行って、水資源管理を実現することが可能となる。具体的には、変数の数が多い分布型水循環モデルにおける不確かさの評価が可能となることで、各事業者は、監視指標(対象地域の水収支)に不確かさの評価結果が加わった情報を、必要な判断を下すために得ることができる。これにより、各事業者では、例えば、得られた監視指標に関する情報と、自己の水利用量や地域の水利用状況とを鑑みて、生産活動計画の策定や調整等を行うことができる。
【0119】
なお、本実施の形態における処理は、ソフトウェアで実現してもよい。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布してもよい。また、このソフトウェアをCD-ROMなどの記録媒体に記録して流布してもよい。なお、本実施の形態における、情報処理装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、2以上のパラメータを含むパラメータ群を用いて構成され所定領域における水資源の循環状態がモデル化された分布型水循環モデルを用いて、各パラメータについて適用された値に基づいて取得される水資源の収支に関する水収支算定値の不確かさに関する情報を取得するために用いられる情報処理装置1のコンピュータで実行されるプログラムであって、情報処理装置1のコンピュータを、各パラメータが取りうる範囲内のサンプル値を含むサンプル値群を、少なくとも一のパラメータのサンプル値が互いに異なるようにして2組以上作成するサンプル作成部と、サンプル作成部が作成した2組以上のサンプル値群のそれぞれを分布型水循環モデルに適用して、水資源の収支に関するサンプル算定値を取得するサンプル算定部と、サンプル算定部が取得した各サンプル値群に対応するサンプル算定値に基づいて、分布型水循環モデルを用いて得られる水収支算定値の不確かさに関する情報を取得する不確実性評価部として機能させるための、プログラムである。
【0120】
(その他)
【0121】
図7は、上記実施の形態におけるコンピュータシステム800の概観図である。図8は、同コンピュータシステム800のブロック図である。
【0122】
これらの図においては、本明細書で述べたプログラムを実行して、上述した実施の形態の情報処理装置1等を実現するコンピュータの構成が示されている。上述の実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムで実現されうる。
【0123】
コンピュータシステム800は、CD-ROMドライブを含むコンピュータ801と、キーボード802と、マウス803と、モニタ804とを含む。
【0124】
コンピュータ801は、CD-ROMドライブ8012に加えて、MPU8013と、CD-ROMドライブ8012等に接続されたバス8014と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM8015と、MPU8013に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶するとともに一時記憶空間を提供するためのRAM8016と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するためのハードディスク8017とを含む。ここでは、図示しないが、コンピュータ801は、さらに、LANへの接続を提供するネットワークカードを含んでもよい。
【0125】
コンピュータシステム800に、上述した実施の形態の情報処理装置等の機能を実行させるプログラムは、CD-ROM8101に記憶されて、CD-ROMドライブ8012に挿入され、さらにハードディスク8017に転送されてもよい。これに代えて、プログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ801に送信され、ハードディスク8017に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM8016にロードされる。プログラムは、CD-ROM8101またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
【0126】
プログラムは、コンピュータ801に、上述した実施の形態の情報処理装置等の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティープログラム等を、必ずしも含まなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいればよい。コンピュータシステム800がどのように動作するかは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0127】
なお、上記プログラムにおいて、情報を送信する送信ステップや、情報を受信する受信ステップなどでは、ハードウェアによって行われる処理、例えば、送信ステップにおけるモデムやインターフェースカードなどで行われる処理(ハードウェアでしか行われない処理)は含まれない。
【0128】
また、上記プログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0129】
また、上記実施の形態において、一の装置に存在する2以上の構成要素は、物理的に一の媒体で実現されてもよい。
【0130】
また、上記実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい(この場合、分散処理を行う複数の装置により構成されるシステム全体を1つの「装置」として把握することが可能である)。
【0131】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、又は、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、又は長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、又は、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、又は、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0133】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、又は、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0134】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。また、上述の実施の形態のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【0135】
本発明は、上記実施形態のような、水資源に関する算定値の不確かさの評価に関係する用途に限定されるものではない。本発明は、例えば、資源、汚染物質、あるいは熱量など、様々な量の不確かさの評価を行う際に用いることができる。
【実施例0136】
以下、実験例を示して本発明の一実施例について詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0137】
この実施例では、一定範囲の空間的広がりを持つ空間単位における水資源の循環状態を再現する水循環モデルから算出された地下水涵養量について、パラメータのスクリーニング評価、定量評価を行うことで、地下水涵養量に不確かさが評価された結果が得られることを示している。
【0138】
(実験方法)
【0139】
一定範囲の空間的広がりを持つ空間単位における水資源の循環状態を再現する水循環モデルとして、山梨県北杜市白州町の流域モデル(以下、南アルプス水循環モデル)を使用した。
【0140】
南アルプス水循環モデルを構成するパラメータは、降水量、蒸発散量、気温、風速、日照時間、相対湿度、アルベド、バルク輸送係数、等価粗度係数、毛細管圧力、相対浸透率、発達した黒色土壌の透水係数、表土(マサ)の透水係数、山腹斜面堆積物の透水係数、沖積砂礫の透水係数、土石流堆積物の透水係数、低位段丘堆積物(神宮川等支川)の透水係数、低位段丘堆積物(釜無川本川)の透水係数、扇状地堆積物の透水係数、中位段丘堆積物の透水係数、韮崎泥流堆積物の透水係数、桃ノ木層群の透水係数、鳳凰型花崗岩(風化・緩みゾーン)の透水係数、鳳凰型花崗岩(新鮮部低透水部)の透水係数、鳳凰型花崗岩(新鮮部不透水部)の透水係数、甲斐駒型花崗岩(風化・緩みゾーン)の透水係数、甲斐駒型花崗岩(新鮮部)の透水係数、鳳凰型・甲斐駒型花崗岩変質部(風化・緩みゾーン)の透水係数、鳳凰型・甲斐駒型花崗岩変質部(新鮮部)の透水係数、甲斐駒型花崗岩(風化・緩みゾーン)の透水係数、甲斐駒型花崗岩(新鮮部)の透水係数、赤石層群(風化・緩みゾーン)の透水係数、赤石層群(新鮮部)の透水係数、リニアメント(浅部)の透水係数、リニアメント(深部)透水係数の35項目からなる。このモデルで定量評価を行う際、1パラメータの変動数を10と仮定しても、10の35乗もの回数の計算が必要となる。そのため、定量評価を行うことは現実的ではない。
【0141】
そこで、南アルプス水循環モデルにおいて、多数あるパラメータのスクリーニングを感度分析によって行った。各パラメータの取りうる範囲を設定し、その取りうる範囲の最大値、最小値で計算を行い、涵養量の変化を評価した。
【0142】
図9は、本実施の形態の一実施例において感度分析の対象となったパラメータと各パラメータの取りうる範囲とを示す表である。
【0143】
図9に示されるように、南アルプス水循環モデルで計算された涵養量に対する、各パラメータの最大値、最小値で計算された涵養量の幅が、1パーセント以上であれば、当該パラメータは感度がある(高影響パラメータである)とした。
【0144】
そして、感度分析によって感度が認められたパラメータについて、ラテン超方格サンプリング法を用いて値を100回程度ランダムに割り振った計算を行い、観測値を再現する範囲での取りうる値の幅を検討した。
【0145】
(実験結果)
【0146】
南アルプス水循環モデルにおいて、感度分析により、35項目のパラメータのうち、地下水涵養量に感度があると判断されたパラメータは、以下の8項目であった。
【0147】
有効降水量、表土(マサ)の透水係数、沖積砂礫の透水係数、山腹斜面堆積物の透水係数、リニアメントの透水係数、鳳凰型花崗岩低透水部の透水係数、鳳凰型花崗岩不透水部の透水係数、甲斐駒型花崗岩の透水係数
【0148】
これら8項目のパラメータに対し、ラテン超方格サンプリング法を用いて、定量評価を行った。サンプリング数は100である。サンプリングされたパラメータ群で計算された個々の水循環モデルに対し、河川流量と湧水点の場所を指標として、水循環モデルの対象空間単位の再現性の確認を行った結果、19ケースを再現性が確認されたモデルとして抽出できた。19ケースの水循環モデルが算出した地下水涵養量は、平均1798mm、標準偏差235mm、最大値2080mm、最小値1208mmとなり、不確かさを考える上で十分な結果を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0149】
以上のように、本発明にかかる情報処理装置は、対象地域について、分布型水循環モデルを用いて定量化された水収支を得るにあたって、高い精度で不確実性評価を行うことができるという効果を有し、情報処理装置等として有用である。
【符号の説明】
【0150】
1 情報処理装置
110 格納部
111 モデル情報格納部
113 観測データ格納部
115 抽出情報格納部
130 受付部
140 処理部
141 抽出部
143 サンプル作成部
145 サンプル算定部
149 不確実性評価部
151 算定部
155 構成部
160 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9