(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117724
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】接着剤用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 226/06 20060101AFI20220804BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20220804BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220804BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220804BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C08F226/06
C09J133/06
B32B7/12
B32B27/00 D
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014377
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】野田 信久
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB17
4F100AB17C
4F100AB33
4F100AB33C
4F100AK01C
4F100AK25
4F100AK25B
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4F100AK49B
4F100AL06B
4F100BA03
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4F100GB41
4F100JA05
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4J040NA19
4J100AB02P
4J100AL08P
4J100AL08Q
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4J100AQ05Q
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4J100BC04S
4J100BC07P
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4J100BC28P
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA25
4J100FA19
4J100JA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、銅箔などの金属シートや樹脂シート、特に低誘電特性を有する樹脂シートへの接着性を有すると共に、耐熱性や折り曲げ性の優れる接着剤層を形成する共重合体を提供することを目的とする。
【解決手段】
オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有する共重合体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位とを有する共重合体。
【請求項2】
マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、芳香族ビニル単量体由来の構造単位より選択される少なくとも1つの構造単位を有する請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
ガラス転移温度が110℃以上である請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
請求項1~3に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項5】
金属シートと金属シート、あるいは金属シートと樹脂シートとの間に請求項4に記載の接着剤樹脂組成物からなる接着剤層を有し、当該接着剤層が硬化されてなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、電子機器に使用されるプリント配線板などの用途に好適に使用することができる接着剤用樹脂組成物、当該接着剤用樹脂組成物を含有する接着剤、当該接着剤が用いられた金属張積層体、および当該積層体を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、及び多層化等の実装技術が急速に進展している。各種電子機器において用いられるプリント配線板等の絶縁材料には、信号の伝送速度を高め、信号伝送時の損失を低減させるために、誘電率及び誘電正接が低いことが求められている。また各種電子機器は様々な環境下で使用されることから、プリント配線板は、高湿環境下においても接着性および低誘電率性を維持し、耐熱性や折り曲げ性の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、プリント配線板に使用される接着性樹脂組成物として、(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂、(B)エポキシ供与モノマー及び当該モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合してなるエポキシ含有共重合体、(C)熱可塑性樹脂、および(D)硬化剤を含む接着性樹脂組成物が提案されている。
【0004】
また更なる低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の向上のために、FPCに用いられる基材フィルムとして、従来のポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、低誘電特性を有する液晶ポリマー(LCP)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などの基材フィルムが提案されている。
【0005】
特許文献2には、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂(A)、カルボキシル基含有スチレン樹脂(B)、カルボジイミド樹脂(C)、エポキシ樹脂(D)および難燃性フィラー(E)を含む低誘電難燃性接着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-260925号公報
【特許文献2】特開2021-3886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1記載の接着性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を使用した場合、トリメリット酸などの硬化剤との硬化後には水酸基を発生するために、硬化後の組成物の誘電率は高くなってしまい、高湿環境下において誘電正接や銅箔との接着性が低下する課題があった。
【0008】
また、特許文献2記載の接着剤組成物は、低誘電特性を有する基材への接着性は改善されているものの、エポキシ樹脂を使用しているため、硬化後に水酸基を発生するために、高湿環境下において誘電正接や銅箔との接着性が低下する課題があり、また耐熱性や折り曲げ性にもまだ課題があった。
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、例えば、本発明の接着剤用樹脂組成物は、LCPのような低誘電特性を有する基材を使用しても高湿環境下でも優れた接着性を維持し、耐熱性、折り曲げ性に優れた接着剤層を形成する接着剤用樹脂組成物、当該接着剤用樹脂組成物を含有する接着剤、当該接着剤が用いられてなる金属張積層体、および当該積層体を有するプリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記のような問題点に鑑み検討を行い、オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位とを有する共重合体が、低誘電特性を有する基材を使用しても高湿環境下でも優れた接着性を維持し、耐熱性、折り曲げ性に有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高湿環境下でも銅箔などの金属シートや樹脂シート、特に低誘電特性を有する樹脂シートへの接着性を有すると共に、耐熱性、折り曲げ性の優れた接着剤層を形成する接着剤用樹脂組成物、当該接着剤用樹脂組成物を含有する接着剤、当該接着剤が用いられてなる金属張積層体、および当該積層体を有するプリント配線板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
なお、これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味し、範囲を示す「A~B」は、A以上B以下であることを示す。また、本発明において、「(メタ)アクリレ-ト」は、「アクリレ-ト」または「メタクリレ-ト」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0014】
本明細書において、「樹脂」の語は、重合体よりも広い概念を示す。樹脂は、1種又は2種以上の重合体を含んでいてもよく、必要に応じて、重合体以外の材料をさらに含んでいてもよい。
【0015】
本発明の接着剤用樹脂組成物は、前記したようにオキサゾリン基含有単量体由来の構造単位と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位とを有する共重合体を含有する。本発明の共重合体を含有する接着剤用樹脂組成物は、前記構成要件を有することから、高湿環境下においても接着性を維持し、優れた耐熱性、折り曲げ性に優れた接着剤層を形成する。
【0016】
本開示のオキサゾリン基含有単量体由来の構造単位と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位とを有する共重合体は、すなわちオキサゾリン基含有単量体と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合してなる共重合体である。
【0017】
本開示のオキサゾリン基含有単量体としては、ビニルオキサゾリン(2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-エチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-プロピル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-ブチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-プロピル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-ブチル-2-オキサゾリンなどのC1-20アルキル-ビニルオキサゾリン、好ましくはC1-10アルキル-ビニルオキサゾリン、さらに好ましくはモノ又はジC1-4アルキル-ビニルオキサゾリン)などのビニルオキサゾリン類、また2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-プロピル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-ブチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-プロピル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-ブチル-2-オキサゾリンなどのC1-20アルキル-イソプロペニルオキサゾリン、好ましくはC1-10アルキル-イソプロペニルオキサゾリン、さらに好ましくはモノ又はジC1-4アルキル-イソプロペニルオキサゾリン)などのイソプロペニルオキサゾリン類などが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、イソプロペニルオキサゾリン類が好ましく、特に2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが後述する脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体との重合性の点から好ましい。またオキサゾリン基含有単量体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0019】
本開示のオキサゾリン基含有単量体由来の構造単位の含有割合は、湿熱試験後の接着性及び折り曲げ性を向上させる観点から、全単量体由来の構造単位100質量部に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、湿熱試験後の接着性及び折り曲げ性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0020】
本開示の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体は、脂環式化合物であるモノマーであり、即ち、分子内に非芳香族性環を有するモノマーである。上記非芳香族性環としては、非芳香族性脂環式環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などのシクロアルカン環;シクロヘキセン環などのシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネンなどにおける二環式炭化水素環;アダマンタンなどにおける三環式炭化水素環の他、四環式炭化水素環などの橋かけ式炭化水素環など)などが挙げられる。
【0021】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどの二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートなどの三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0022】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、湿熱接着性及び折り曲げ性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸イソボルニルやジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが好ましく、メタクリル酸イソボルニルやジシクロペンタニルメタクリレートが更に好ましい。
【0024】
本開示の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構造単位の含有割合は、接着性や折り曲げ性を向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましく、折り曲げ性を向上させる観点から、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0025】
本開示の共重合体は、オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位以外の構造単位を有していてもよい。
【0026】
他の構造単位とは、オキサゾリン基含有単量体と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の他の単量体を意味する。
【0027】
他の単量体としては、例えば、アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有単量体、芳香族ビニル単量体、不飽和ニトリル単量体、マレイミド基含有単量体、アミド基含有単量体、N-置換(メタ)アクリルアミド単量体、オレフィン系単量体、ハロゲン含有単量体などが挙げられる。
【0028】
この中でも接着性や折り曲げ性を向上させる観点から、芳香族ビニル単量体やマレイミド基含有単量体の使用が好ましい。
【0029】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、ジメチルスチレン、tert-メチルスチレン、α-クロロスチレン、β-クロロスチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。芳香族ビニル単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert-ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの官能基が存在していてもよい。
【0030】
芳香族ビニル単量体の中では、接着性や折り曲げ性を向上させる観点から、スチレンが好ましい。なお、芳香族ビニル単量体には、本発明の目的が阻害されない範囲内で芳香族ビニル単量体のオリゴマーが含まれていてもよい。
【0031】
またマレイミド基含有単量体としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-sec-ブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-アミルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-ヘプチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ノニルマレイミド、N-デシルマレイミド、N-デシルマレイミド、N-ウンデシルマレイミド、N-ドデシルマレイミド(N-ラウリルマレイミド)、N-トリデシルマレイミド、N-テトラデシルマレイミド、N-ペンタデシルマレイミド、N-ヘキサデシルマレイミド、N-ヘプタデシルマレイミド、N-オクタデシルマレイミド(N-ステアリルマレイミド)、N-ノナデシルマレイミド、N-アリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ジメチルフェニルマレイミド、N-エチルフェニルマレイミド、N-ジエチルフェニルマレイミド、N-フェニルメチルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-ジクロロフェニルマレイミド、N-トリクロロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのマレイミド基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
接着性や折り曲げ性を向上させる観点から、N-フェニルマレイミドやN-シクロヘキシルマレイミドが好ましく、N-シクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。
【0033】
アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、炭素数が1~20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体などが挙げられる。
【0034】
アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどが挙げられる。前記アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独で、又は2種以上組み合せて用いてもよい。
【0035】
本開示の芳香族ビニル単量体由来の構造単位またはマレイミド基含有単量体由来構造単位の全単量体における含有割合は、接着性や折り曲げ性を向上させる観点から、3質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、接着性や折り曲げ性を向上させる観点から、98質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
【0036】
本開示の共重合体の(不揮発分)ガラス転移温度は、接着性、耐熱性および折り曲げ性を向上させる観点から、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。なお、前記接着剤用共重合体のガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、折り曲げ性を向上させる観点から、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。
【0037】
本開示の共重合体の(不揮発分)のガラス転移温度は、当該共重合体の原料として用いられる単量体成分に含まれる単量体を重合させてなる単独重合体のガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)と単量体の質量分率から、式(II):
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・+Wn/Tgn (II)
〔式中、Tgは、求めようとしている本開示の共重合体のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各単量体の質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各単量体の質量分率に対応する単量体を重合させてなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。なお、本開示の共重合体(不揮発分)のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定装置)、DTA(示差熱分析装置)、TMA(熱機械測定装置)によって測定することもできる。
【0038】
本発明においては、本開示の共重合体(不揮発分)のガラス転移温度は、式(II)に基づいて求められたガラス転移温度である。したがって、以下の実施例においては、本開示の共重合体(不揮発分)のガラス転移温度は、重合させる際に用いられる単量体成分における各単量体の質量分率とこれに対応する単量体の単独重合体のガラス転移温度から求められたガラス転移温度を意味する。
【0039】
なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計含有率が10質量%以下である場合には、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。また、単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計含有率が10質量%を超える場合には、単量体成分を重合させることによって得られた共重合体のガラス転移温度を示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などで測定することによって求められる。
【0040】
なお、本願の共重合体を得るために使用する単量体のガラス転移温度が不明の単量体の場合、単量体成分を重合させることによって得られた共重合体のガラス転移温度を示差走査熱量分析(DSC)により、以下の方法により求めることもできる。
【0041】
装置 :パーキンエルマー(株)製、品番:DSC8000
測定方法:共重合体溶液を100℃で2日乾燥した試料を10mgを秤量し、
窒素50ml/分下で、昇温プログラム
〔室温から0℃(2分保持)→150℃、30℃/min昇温)させ、
JIS K 7121-1987に基づいてガラス転移温度を求めることができる。
【0042】
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンの単独重合体では100℃、スチレンの単独重合体では100℃、N-シクロヘキシルマレイミドの単独重合体では267℃、N-フェニルマレイミドの単独重合体では337℃、グリシジルメタクリレートの単独重合体では41℃、ジシクロペンタニルメタクリレートの単独重合体では175℃、イソボルニルメタクリレートの単独重合体では180℃である。
【0043】
本開示の共重合体(不揮発分)のガラス転移温度は、単量体成分に用いられる単量体の種類およびその量を適宜調整することにより、容易に調節することができる。
【0044】
本開示の共重合体は、前記単量体を重合することにより得ることができる。
【0045】
重合に用いる全単量体におけるオキサゾリン基含有単量体の含有率は、湿熱試験後の接着性及び折り曲げ性を向上させる観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、湿熱試験後の接着性及び折り曲げ性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0046】
重合に用いる全単量体における脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率は、接着性、耐熱性および折り曲げ性を向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましく、折り曲げ性を向上させる観点から、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0047】
その他単量体としては、例えば、アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有単量体、芳香族ビニル単量体、不飽和ニトリル単量体、マレイミド基含有単量体、アミド基含有単量体、N-置換(メタ)アクリルアミド単量体、オレフィン系単量体、ハロゲン含有単量体などが挙げられ、この中でも折り曲げ性を向上させる観点から、芳香族ビニル単量体やマレイミド基含有単量体の使用が好ましい。
【0048】
重合に用いる全単量体における芳香族ビニル単量体またはマレイミド基含有単量体の含有率は、接着性および折り曲げ性を向上させる観点から、3質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、接着性や折り曲げ性を向上させる観点から、98質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
【0049】
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤の量を適宜調整することにより、得られる共重合体の分子量を容易に調整することができる。一般に、重合開始剤の量を少なくすると重合反応時間が長くなる傾向にあるが、得られる共重合体の分子量を高くすることができ、重合開始剤の量を多くすると重合反応時間が短くなる傾向にあるが、得られる共重合体の分子量が低くなる。
【0050】
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパ-オキサイド、パラクロロベンゾイルパ-オキサイド、ラウロイルパ-オキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させるとともに、得られる共重合体の分子量を制御する観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、得られる共重合体の分子量を高める観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0052】
重合開始剤を単量体成分に含有させる方法は、特に限定されない。その含有方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。
【0053】
また、共重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコ-ル酸2-エチルヘキシル、tert-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトエタノ-ル、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマ-などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
単量体成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、共重合体を含む接着剤用樹脂組成物を容易に調製することができることから、溶液重合法が好ましい。
【0055】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合に使用される溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n-ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの溶媒のなかでは、接着剤樹脂組成物を容易に調製することができることから、トルエン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンが好ましい。溶媒の量は、単量体成分および重合開始剤を十分に溶解させるとともに、単量体成分を効率よく反応させることができる量であればよく、特に限定されないが、通常、全単量体成分100質量部あたり、50~500質量部程度である。
【0056】
単量体成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0057】
単量体成分を重合させる際の重合反応温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50~200℃、より好ましくは60~150℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
【0058】
単量体成分の重合反応時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2~20時間程度である。
【0059】
以上のようにして単量体成分を重合させることにより、共重合体を含有する反応溶液が得られる。
【0060】
前記共重合体の重量平均分子量は、接着性と折り曲げ性を向上させる観点から、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、8000以上が特に好ましい。接着性と折り曲げ性を向上させる点から、18万が好ましく、10万以下がより好ましく、5万以下が特に好ましい。
【0061】
なお、本発明において、共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC、カラム:TSKgel Super Multipore HZ-Mの2本を直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
【0062】
本発明においては、前記で得られた共重合体を含有する反応溶液をそのままの状態で接着剤用樹脂組成物として使用することもできるほか、当該反応溶液に、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の樹脂、添加剤、有機溶媒などを添加したものを接着剤用樹脂組成物として使用することができる。
【0063】
前記他の樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、低誘電エステル系樹脂、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、シアネート系樹脂等が挙げられ、特に低誘電率、接着性、耐熱性を向上させる観点から、フェノール性水酸基、もしくはカルボキシル基を含有する樹脂が好ましく、具体的にはフェノール性水酸基含有ポリフェニレンエーテル系樹脂、カルボキシル基含有オレフィン系樹脂、カルボキシル基含有スチレン系樹脂が好ましい。
【0064】
フェノール性水酸基含有ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、市販品としては、例えばSABIC社製のNoryl SA90などの末端にフェノール基を有する化合物が挙げられる。
【0065】
カルボキシル基含有オレフィン系樹脂は、具体的には、ポリオレフィン樹脂にα,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等に例示されるオレフィンモノマーの単独重合、もしくはその他のモノマーとの共重合、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。すわなち、カルボキシル基含有ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニルなどを1種又は数種用いるこができる。これらのα-オレフィンの中では、エチレン、1-ブテンが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のプロピレン成分とα-オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0066】
カルボキシル基含有スチレン系樹脂としては、芳香族ビニル化合物単独もしくは、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック及び/又はランダム構造を主体とする共重合体、並びにその水素添加物を、不飽和カルボン酸で変性したものであることが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えばスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p-第3ブチルスチレン等が挙げられる。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。これら芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の具体例としては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などが挙げられる。具体的には、タフテックM1913(旭化成ケミカルズ社製)、タフテックM1943(旭化成ケミカルズ社製)がある。
【0067】
本開示の接着剤用樹脂組成物における共重合体の配合量は、通常、フェノール性水酸基、もしくはカルボキシル基を含有する樹脂100質量部あたり、接着性樹脂組成物の接着性および耐熱性を向上させる観点から、3質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、接着性および折り曲げ性を向上させる観点から、200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、50質量部以下が特に好ましい。共重合体の量は、例えば、共重合体が1分子中に有するオキサゾリン基の数に応じて適宜調整してもよい。
【0068】
また本開示の添加剤としては、例えば、粘着性付与剤、フィラー、シランカップリング剤、難燃剤、ガラス繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。有機溶媒としては、前記単量体成分を溶液重合法によって重合させる際に用いられる有機溶媒を例示することができる。
【0069】
本開示の接着性樹脂組成物に配合する粘着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられる。
【0070】
本開示の接着性樹脂組成物に配合するフィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシ ウム、酸化チタン、マイカ、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等の無機系フィラー、また誘電率の低いフッ素系の有機系フィラーが挙げられる。
【0071】
本開示の接着性樹脂組成物に配合する難燃剤としては、例えば、ホスフィン酸塩系難燃剤、及びトリアジン骨格を有するポリリン酸塩系難燃剤等のリン含有化合物が挙げられる。
【0072】
なお、本明細書において、接着剤用樹脂組成物における不揮発分量は、接着剤用樹脂組成物1gを秤量し、熱風乾燥機で150℃の温度で15分乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔接着剤用樹脂組成物における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔接着剤用樹脂組成物1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
【0073】
本開示の接着剤用樹脂組成物は、接着剤に好適に使用することができる。本開示の接着剤は、前記接着剤用樹脂組成物および当該接着剤用樹脂組成物に含まれるオキサゾリン基と反応する官能基を含有する樹脂を含有するものであり、例えば、フェノール性水酸基含有ポリフェニレンエーテル系樹脂、カルボキシル基含有オレフィン系樹脂、カルボキシル基含有スチレン系樹脂とを混合することにより、容易に調製することができる。
【0074】
本開示の接着剤は、当該接着剤の用途、硬化剤の種類などに応じて種々の硬化条件で硬化させることができる。接着剤は、常温硬化型、加熱硬化型、紫外線硬化型または電子線硬化型として用いることができる。
【0075】
接着剤には、接着剤における不揮発分量を調整するために有機溶媒を適量で含有させてもよい。有機溶媒としては、前記単量体成分を溶液重合法によって重合させる際に用いられる有機溶媒を例示することができる。
【0076】
本開示の接着剤における不揮発分量は、接着剤組成物の流動性の観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、また70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0077】
なお、本明細書において、接着剤における不揮発分量は、接着剤1gを秤量し、熱風乾燥機で150℃の温度で15分間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔接着剤における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔接着剤1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
【0078】
本発明において、接着剤層とは、接着剤組成物を樹脂シートもしくは金属シートに塗布し、乾燥させた後の接着剤組成物の層をいう。接着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは、10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。また、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下ある。厚さが薄すぎる場合には、接着性能が十分に得られないことがあり、厚すぎる場合には、乾燥が不十分で残留溶剤が多くなりやすくなり、プリント配線板製造のプレス時にフクレを生じるという問題点が挙げられる。
【0079】
本発明の接着剤用樹脂組成物を樹脂シートもしくは金属シート上にコーティングする方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。もしくは、必要に応じて、プリント配線板構成材料である圧延銅箔、またはポリイミドフィルムに直接もしくは転写法で接着剤層を設けることもできる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は1質 量%以下が好ましい。1質量%超では、プリント配線板プレス時に残留溶剤が発泡して、フクレを生じるという問題点が挙げられる。
【0080】
前記積層体は、金属シートと金属シートまたは金属シートと樹脂シートとの間に前記接着剤からなる接着剤層を有し、当該接着剤層が硬化されている。
【0081】
前記積層体は、例えば、金属シートまたは樹脂シートの上に接着剤を塗布し、必要により半乾燥状態にして接着剤層を形成させ、形成された接着剤層上に金属シートを積層した後、当該接着剤層を硬化させることによって作製することができる。
【0082】
金属シートは、金属箔を包含する概念のものである。金属シートとしては、例えば、アルミニウムシート、銅シートなどが挙げられる。これらの金属シートのなかでは、銅シートが好ましい。
【0083】
樹脂シートは、樹脂フィルムを包含する概念のものである。樹脂シートの原料として使用される樹脂としては、例えば、LCP、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のなかでは、接着剤の接着性、耐熱性および折り曲げ性を向上させる観点から、LCPおよびポリイミド系樹脂が好ましい。
【0084】
以上のようにして得られる積層体は、接着剤層が樹脂シートおよび金属シートに対する接着性、耐熱性および折り曲げ性に優れていることから、例えば、フレキシブル印刷用配線板、カバーレイフィルム、ボンディングシートなどにも好適に使用することができる。カバーレイフィルムは、絶縁フィルムの少なくとも一方の表面に接着剤層が形成されているものであり、絶縁フィルムと接着剤層との剥離が困難な積層体である。また、ボンディングシートは、離型性フィルム(基材フィルム)の表面に接着剤層が形成されているものであり、2枚の離型性フィルムの間に接着剤層が形成避けていてもよい。なお、ボンディングシートを使用する際には、離形性フィルムを剥離する。
【0085】
本発明の接着剤樹脂組成物により、プリプレグを製造する際には、プリプレグを形成するための基材(繊維質基材)に含浸する目的でワニス状に調製しても用いられる。得られたワニス状の接着剤樹脂組成物を用いてプリプレグを製造する方法としては、例えば、前記接着剤樹脂組成物を繊維質基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。
【0086】
前記繊維質基材としては、具体的には、例えば、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、及びリンター紙等が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、機械強度が優れた積層板が得られ、特に偏平処理加工したガラスクロスが好ましい。偏平処理加工としては、具体的には、例えば、ガラスクロスを適宜の圧力でプレスロールにて連続的に加圧してヤーンを偏平に圧縮することにより行うことができる。なお、前記繊維質基材の厚みとしては、例えば、0.04~0.3mmのものを一般的に使用できる。
【0087】
前記含浸は、浸漬(ディッピング)、及び塗布等によって行われる。前記含浸は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0088】
前記接着剤樹脂組成物が含浸された繊維質基材は、所望の加熱条件、例えば、80~170℃で1~10分間加熱されることにより半硬化状態(Bステージ)のプリプレグが得られる。
【0089】
このようにして得られたプリプレグを用いて金属張積層板を作製する方法としては、前記プリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層体を作製することができるものである。加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みやプリプレグの樹脂組成物の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度を170~220℃、圧力を3~4MPa、時間を60~150分間とすることができる。
【実施例0090】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
〔不揮発分量〕
合成例にて合成したオキサゾリン基含有共重合体溶液1gを秤量し、熱風乾燥機で150℃の温度で15分間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔接着剤における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔接着剤1g〕)×100
に基づいて求めた。
【0091】
〔重量平均分子量の測定〕
共重合体の重量平均分子量は、以下の測定条件で測定した。
装置:東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC
検出器:RI
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-M{東ソー(株)製}
2本を直列に使用
カラム温度:40℃
流速:0.18ml/分
検量線:標準ポリスチレン
溶離液:トリエチルアミン1重量%含有テトラヒドロフラン
【0092】
〔ガラス転移温度〕
共重合体の(不揮発分)のガラス転移温度は、当該共重合体の原料として用いられる単量体成分に含まれる単量体を重合させてなる単独重合体のガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)と単量体の質量分率から、式(II):
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・+Wn/Tgn (II)
〔式中、Tgは、求めようとしている本開示の共重合体のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各単量体の質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各単量体の質量分率に対応する単量体を重合させてなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求める。
【0093】
2-イソプロペニル-2-オキサゾリンの単独重合体:100℃
ジシクロペンタニルメタクリレートの単独重合体:175℃
イソボルニルメタクリレートの単独重合体:180℃
スチレンの単独重合体:100℃
N-シクロヘキシルマレイミドの単独重合体:267℃
【0094】
〔接着剤用樹脂組成物の調製〕
合成例1
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、イソボルニルメタクリレート90gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0095】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A1)の不揮発分は49.9質量%であり、重量平均分子量は18000であり、ガラス転移温度は170℃であった。
【0096】
合成例2
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン3g、ジシクロペンタニルメタクリレート97gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0097】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A2)の不揮発分は50.0質量%であり、重量平均分子量は23000であり、ガラス転移温度は172℃であった。
【0098】
合成例3
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン40g、イソボルニルメタクリレート60gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0099】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A3)の不揮発分は49.9質量%であり、重量平均分子量は35000であり、ガラス転移温度は144℃であった。
【0100】
合成例4
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン1g、ジシクロペンタニルメタクリレート99gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を1還流温度(約112℃)に調整した。
【0101】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A4)の不揮発分は50.0質量%であり、重量平均分子量は25000であり、ガラス転移温度は174℃であった。
【0102】
合成例5
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン50g、イソボルニルメタクリレート50gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0103】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A5)の不揮発分は49.9質量%であり、重量平均分子量は30000であり、ガラス転移温度は132℃であった。
【0104】
合成例6
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、イソボルニルメタクリレート30g、スチレン60gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0105】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A6)の不揮発分は50.0質量%であり、重量平均分子量は25000であり、ガラス転移温度は114℃であった。
【0106】
合成例7
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50gを仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約110℃)に調整した。
【0107】
次に2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、イソボルニルメタクリレート30g、スチレン60gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート20gを含有するプレミックス単量体混合物を反応器内に5時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A7)の不揮発分は50.0質量%であり、重量平均分子量は8000であり、ガラス転移温度は114℃であった。
【0108】
合成例8
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、イソボルニルメタクリレート30g、スチレン60gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート0.1gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0109】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A8)の不揮発分は49.9質量%であり、重量平均分子量は100000であり、ガラス転移温度は114℃であった。
【0110】
合成例9
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50gを仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約110℃)に調整した。
【0111】
次に2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、イソボルニルメタクリレート30g、スチレン60gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート20gを含有するプレミックス単量体混合物を反応器内に6時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A9)の不揮発分は50.0質量%であり、重量平均分子量は5000であり、ガラス転移温度は114℃であった。
【0112】
合成例10
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、イソボルニルメタクリレート30g、スチレン60gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート0.05gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0113】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有重合体(A10)の不揮発分は49.9質量%であり、重量平均分子量は180000であり、ガラス転移温度は114℃であった。
【0114】
合成例11
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、イソボルニルメタクリレート30g、N―シクロヘキシルマレイミド10g、スチレン50g、トルエン10gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0115】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン40gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A11)の不揮発分は49.9質量%であり、重量平均分子量は30000であり、ガラス転移温度は134℃であった。
【0116】
合成例12
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、イソボルニルメタクリレート5g、スチレン85gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0117】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン50gを加えた。生成したオキサゾリン基含有重合体(A12)の不揮発分は50.0質量%であり、重量平均分子量は28000であり、ガラス転移温度は103℃であった。
【0118】
合成例13
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン50g、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン10g、N-シクロヘキシルマレイミド20g、スチレン70g、トルエン10gおよび重合開始剤としてtert-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート2gを含有するプレミックス単量体混合物の30%を仕込み、反応器の内容物の温度を還流温度(約112℃)に調整した。
【0119】
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの70%を反応器内に3時間かけて滴下させた。滴下が終了した時点から7時間維持することにより、重合反応を終了させ、トルエン40gを加えた。生成したオキサゾリン基含有共重合体(A13)の不揮発分は49.9質量%であり、重量平均分子量は40000であり、ガラス転移温度は123℃であった。
【0120】
【0121】
【0122】
〔接着剤の調製〕
ポリフェニレンエーテル樹脂(SABICジャパン合同会社製、商品名Noryl SA90)100質量部に対して、実施例1、実施例6~12、比較例1では本発明の共重合体溶液A1、A6~13を60質量部、実施例2および実施例4では、本発明の共重合体溶液A2、A4を200質量部、実施例3および実施例5では、本発明の共重合体溶液A3、A5を20質量部に配合して得られた接着剤用樹脂組成物をトルエンで不揮発分含量が30質量%となるように希釈することにより、接着剤を調製した。
【0123】
またカルボキシル基含有スチレン系樹脂(旭化成ケミカルズ社製、商品名タフテックM-1913)100質量部に対して、実施例13及び比較例2では本発明の共重合体溶液A6とA13を700質量部に配合して得られた接着剤用樹脂組成物をトルエンで不揮発分含量が30質量%となるように希釈することにより、接着剤を調製した。
【0124】
次に、前記で得られた接着剤を用いて、接着性、耐熱性および折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表3に示す。
【0125】
〔接着性〕
前記で得られた接着剤をポリイミド(PI)フィルム〔(株)カネカ製、商品名:アピカル、厚さ:12.5μm〕または液晶重合体(LCP)フィルム〔(株)クラレ製、商品名:ベクスター、厚さ:25μm〕に乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥させて接着剤層を形成させることにより、接着性フィルムを作製した。
【0126】
前記で得られた接着性フィルムの接着剤層を銅箔(厚さ:18μm)の光沢面に重ね合わせ、160℃で40kgf/cm2(約3.92MPa)の加圧下で30秒間プレスすることにより、両者を貼り合わせて積層体を作製した。
次に、前記で得られた積層体を用いて以下の方法に基づいて初期剥離強度および湿熱試験後の剥離強度を調べた。
【0127】
(1)初期の剥離強度(常温での接着強度)
前記で得られた積層体を180℃で30分間熱処理することにより、接着剤層を硬化させた後、当該積層体を縦50mm、横25mmの長方形に切断し、得られた試験片を25℃の雰囲気中にて銅箔側から引張速度50mm/minにて90°剥離を行ない、剥離強度を調べ、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。
(評価基準)
◎:剥離強度が1.0N/mm以上
○:剥離強度が0.8N/mm以上1.0N/mm未満
△:剥離強度が0.5N/mm以上0.8N/mm未満
×:剥離強度が0.5N/mm未満
(2)湿熱試験後の剥離強度(湿熱試験後の接着強度)
前記で得られた積層体を180℃で30分間熱処理することにより、接着剤層を硬化させた後、さらに85℃であり、相対湿度が85%である雰囲気中で500時間、及び1000時間湿熱加熱し、次いで室温中で3時間放冷した後、当該積層体を縦50mm、横25mmの長方形に切断し、得られた試験片を25℃の雰囲気中にて銅箔側から引張速度50mm/minにて90°剥離を行ない、剥離強度を調べ、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。
(評価基準)
◎:剥離強度が1.0N/mm以上
○:剥離強度が0.8N/mm以上1.0N/mm未満
△:剥離強度が0.5N/mm以上0.8N/mm未満
×:剥離強度が0.5N/mm未満
【0128】
〔耐熱性〕
前記接着性の評価の際に作製したポリイミドフィルムまたは液晶重合体(LCP)フィルムと銅箔との積層体を用い、当該積層体のポリイミドフィルム面または液晶重合体(LCP)フィルム面に260℃の温度で30秒間加熱するリフロー処理を3回行なった後、当該積層体のポリイミドフィルム面または液晶重合体(LCP)フィルム面の外観を目視にて観察し、異状がないかどうかを観察し、以下の評価基準に基づいて耐熱性を評価した。
(評価基準)
◎:3回のリフロー処理後に異状が認められない。
○:2回のリフロー処理後に異状が認められないが、3回目のリフロー処理後に剥離、膨れなどの異状が認められる。
△:1回のリフロー処理後に異状が認められないが、2回目のリフロー処理後に剥離や膨れなどの異状が認められる。
×:1回のリフロー処理で剥離、膨れなどの異状が認められる。
【0129】
〔折り曲げ性〕
前記で得られた接着剤をポリイミドフィルムまたは液晶重合体(LCP)フィルムに、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、140℃で4時間加熱することによって接着剤層を形成させて折り曲げ性評価用フィルムを作製した。前記で得られた折り曲げ性評価用フィルムを長さ60mm、幅25mmの長方形に切断することにより、試験片を作製した。
【0130】
前記で得られた試験片を用い、JIS K5600-5-1に規定の円筒形マンドレル法に準じ、試験片の長さ方向に当該試験片の接着剤層がマンドレル(心棒)とは反対面に位置するようにし、直径が4mm、5mm、6mm、8mm、10mmまたは12mmであるマンドレルを用いて試験片をマンドレルに沿って折り曲げ、亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径を調べ、以下の評価基準に基づいて折り曲げ性を評価した。
なお、マンドレルの直径が小さいほど、塗膜に亀裂および剥がれが生じがたく、折り曲げ性に優れている。
(評価基準)
◎:亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が5mm以下である。
○:亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が6mmまたは8mmである。
△:亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が10mmである。
×:亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が12mmである。
【0131】
<総合評価>
各試験項目において、◎の評価を100点、○の評価を80点、△の評価を60点、×の評価を0点として評価得点を合計することにより、総合得点を求めた。なお、評価項目に×が1つでも存在する接着剤は、不合格であるため、表3、表4の総合評価の欄に×を付した。
【0132】
【0133】
【0134】
表3、表4に示された結果から、各実施例で得られた接着剤は、ポリイミドフィルムだけでなく、LCPなどの低誘電特性を有する低極性基材と銅箔などの金属基材に対して優れた接着性を有しており、しかも湿熱密着後でも接着性を維持し、耐熱性および折り曲げ性に総合的に優れていることがわかる。
【0135】
尚、比較例2においては、初期の剥離強度が×のため、湿熱試験後の剥離強度は中止した。
【0136】
また、近年、接着剤には、はんだ使用時における耐熱性が要求されているが、各実施例で得られた接着剤は、いずれも耐熱性に優れていることがわかる。
【0137】
さらに、近年、フレキシブル回路基板の材料であるフレキシブル銅張積層板においても折り曲げ性の向上が求められているが、各実施例で得られた接着剤は、いずれも折り曲げ性にも優れていることがわかる。
【0138】
以上のことから、本発明の接着剤は、接着性および耐熱性を具備しつつ、折り曲げ性に優れているので、プリント配線基板を作製する際の接着剤としても有用であることがわかる。