(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117739
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20220804BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B23Q11/00 N
B23Q11/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014402
(22)【出願日】2021-02-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 聖
(72)【発明者】
【氏名】稲住 幸弘
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB13
3C011EE02
(57)【要約】
【課題】クーラントを用いた洗浄作業を効率的に行なうことが可能な工作機械、を提供する。
【解決手段】工作機械は、ポンプ37からクーラントが供給され、クーラントを加工エリア110に向けて吐出する第1クーラント吐出部31と、第1クーラント吐出部31から離れた位置に設けられ、クーラントを加工エリア110に向けて吐出する第2クーラント吐出部51と、第1クーラント吐出部31から吐出されたクーラントを受けるクーラント受け口42が設けられ、第2クーラント吐出部51が接続され、クーラント受け口42により受けたクーラントを第2クーラント吐出部51に向けて案内するクーラント案内部41とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプからクーラントが供給され、クーラントを空間に向けて吐出する第1クーラント吐出部と、
前記第1クーラント吐出部から離れた位置に設けられ、クーラントを前記空間に向けて吐出する第2クーラント吐出部と、
前記第1クーラント吐出部から吐出されたクーラントを受けるクーラント受け口が設けられ、前記第2クーラント吐出部が接続され、前記クーラント受け口により受けたクーラントを前記第2クーラント吐出部に向けて案内するクーラント案内部とを備える、工作機械。
【請求項2】
前記クーラント案内部は、前記クーラント受け口が設けられ、クーラントを貯留可能なタンク部を含む、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記クーラント案内部は、前記クーラント受け口に設けられるメッシュ体を含む、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記空間を区画形成するカバー体をさらに備え、
前記第1クーラント吐出部は、前記カバー体の天井部に設けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
クーラントを加工エリア内に向けて吐出する主軸クーラント機構を有し、工具を回転させるための工具主軸を備え、
前記第1クーラント吐出部は、前記主軸クーラント機構を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
複数の前記第2クーラント吐出部を備え、
前記クーラント案内部は、前記クーラント受け口により受けたクーラントを複数の前記第2クーラント吐出部の各々に向けて案内する、請求項1から5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第2クーラント吐出部が接続され、ワークを保持するためのワーク保持具を備え、
前記ワーク保持具には、前記クーラント受け口により受けたクーラントを前記第2クーラント吐出部に向けて案内する第1クーラント流路が設けられ、
前記クーラント案内部は、前記ワーク保持具を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項8】
前記ワーク保持具には、ワークに当接することによって、ワークを位置決めするためのロケート部材が接続され、
前記ロケート部材には、前記第1クーラント流路と連通し、前記空間に開口する第2クーラント流路が設けられ、
前記第2クーラント吐出部は、前記ロケート部材を含む、請求項7に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2007-30142号公報(特許文献1)には、シャワークーラント装置を備える工作機械が開示されている。シャワークーラント装置は、クーラントポンプ等のクーラント液供給源と、クーラント液供給源からのクーラントが供給されるクーラント配管と、クーラント配管に取り付けられ、加工領域で開口する複数個のクーラントノズルとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、クーラント吐出部(クーラントノズル)を備えた工作機械が知られている。このような工作機械においては、クーラント吐出部から吐出されるクーラントを用いて、ワークまたはワークを保持するワーク保持具などから切屑を取り除く洗浄作業が行なわれる。
【0005】
しかしながら、工作機械に具備されるクーラント吐出部の位置は、予め定まっている。このため、クーラント吐出部から吐出されるクーラントを所望の箇所に供給することができず、ワークまたはワーク保持具などに切屑等の異物が残存する可能性がある。特に、ロボットアーム等を用いてワーク保持具に対してワークを自動交換する場合、ワークの着脱に人手を介さないため、切屑等の異物が残存する可能性が高まる。この場合、切屑等の異物がワークおよびワーク保持具の間に挟まって、ワークの正確な位置決めが妨げられるといった問題が生じる。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、クーラントを用いた洗浄作業を効率的に行なうことが可能な工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った工作機械は、ポンプからクーラントが供給され、クーラントを空間に向けて吐出する第1クーラント吐出部と、第1クーラント吐出部から離れた位置に設けられ、クーラントを空間に向けて吐出する第2クーラント吐出部と、第1クーラント吐出部から吐出されたクーラントを受けるクーラント受け口が設けられ、第2クーラント吐出部が接続され、クーラント受け口により受けたクーラントを第2クーラント吐出部に向けて案内するクーラント案内部とを備える。
【0008】
このように構成された工作機械によれば、第1クーラント吐出部から空間に向けて吐出されたクーラントを一旦クーラント受け口で受け、そのクーラントを、クーラント案内部により第2クーラント吐出部に向けて案内し、第2クーラント吐出部から空間に向けて吐出する。これにより、第2クーラント吐出部の位置を適切に定めることによって、空間内の所望の箇所にクーラントを供給することが可能となる。このため、クーラントを用いた洗浄作業を効率的に行なうことができる。
【0009】
また好ましくは、クーラント案内部は、クーラント受け口が設けられ、クーラントを貯留可能なタンク部を含む。
【0010】
このように構成された工作機械によれば、第1クーラント吐出部から吐出されたクーラントがタンク部に一時的に貯留される。このため、第1クーラント吐出部からクーラントが吐出されないタイミングであっても、第2クーラント吐出部からクーラントを吐出させることができる。
【0011】
また好ましくは、クーラント案内部は、クーラント受け口に設けられるメッシュ体を含む。
【0012】
このように構成された工作機械によれば、第2クーラント吐出部に向けて案内されるクーラントに切屑等の異物が混入することを防止できる。
【0013】
また好ましくは、工作機械は、空間を区画形成するカバー体をさらに備える。第1クーラント吐出部は、カバー体の天井部に設けられる。
【0014】
このように構成された工作機械によれば、第1クーラント吐出部から吐出されたクーラントが、カバー体の天井部から下方に向けて落下するため、クーラントを効率的にクーラント受け口により受けることができる。
【0015】
また好ましくは、工作機械は、クーラントを加工エリア内に向けて吐出する主軸クーラント機構部を有し、工具を回転させるための工具主軸を備える。第1クーラント吐出部は、主軸クーラント機構部を含む。
【0016】
このように構成された工作機械によれば、主軸クーラント機構部から高圧のクーラントが吐出されるため、クーラントを効率的にクーラント受け口により受けることができる。
【0017】
また好ましくは、工作機械は、複数の第2クーラント吐出部を備える。クーラント案内部は、クーラント受け口により受けたクーラントを複数の第2クーラント吐出部の各々に向けて案内する。
【0018】
このように構成された工作機械によれば、複数の第2クーラント吐出部の各位置を適切に定めることによって、空間内の所望の複数箇所にクーラントを供給することができる。
【0019】
また好ましくは、工作機械は、第2クーラント吐出部が接続され、ワークを保持するためのワーク保持具を備える。ワーク保持具には、クーラント受け口により受けたクーラントを第2クーラント吐出部に向けて案内する第1クーラント流路が設けられる。クーラント案内部は、ワーク保持具を含む。
【0020】
このように構成された工作機械によれば、ワーク保持具により保持されるワーク、または、ワーク保持具から、切屑等の異物をより確実に取り除くことができる。
【0021】
また好ましくは、ワーク保持具には、ワークに当接することによって、ワークを位置決めするためのロケート部材が接続される。ロケート部材には、第1クーラント流路と連通し、空間に開口する第2クーラント流路が設けられる。第2クーラント吐出部は、ロケート部材を含む。
【0022】
このように構成された工作機械によれば、ワークおよびロケート部材の間に切屑等の異物が付着することを防止できる。これにより、ワーク保持具におけるワークの位置決めをより高精度に行なうことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上に説明したように、この発明に従えば、クーラントを用いた洗浄作業を効率的に行なうことが可能な工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施の形態1における工作機械を示す斜視図である。
【
図2】
図1中の工作機械の加工エリア内を示す斜視図である。
【
図3】
図1中の工作機械の加工エリア内を示す断面図である。
【
図4】
図2中のクーラント案内部の要部と、第2クーラント吐出部とを示す斜視図である。
【
図5】
図2中のワーク保持具にワークが保持された状態を示す斜視図である。
【
図6】この発明の実施の形態2の工作機械において、第1クーラント吐出部およびクーラント案内部を示す斜視図である。
【
図7】
図6中のVII-VII線上の矢視方向に見た第1クーラント吐出部およびクーラント案内部を示す断面図である。
【
図8】
図6および
図7中のクーラント案内部の変形例を示す断面図である。
【
図9】この発明の実施の形態3の工作機械において、クーラント案内部および第2クーラント吐出部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における工作機械を示す斜視図である。
図1を参照して、本実施の形態における工作機械10は、ワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうマシニングセンタであり、より特定的には、工具の回転中心軸101が水平方向に延びる横形マシニングセンタである。工作機械10は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)工作機械である。
【0027】
図1および後出の図面には、互いに直交する「X軸」、「Y軸」および「Z軸」が適宜示されている。「X軸」は、水平方向に平行で、かつ、工具の回転中心軸101に直交する軸であり、「Y軸」は、鉛直方向に平行な軸であり、「Z軸」は、水平方向に平行で、かつ、工具の回転中心軸101に平行な軸である。
【0028】
工作機械10は、カバー体21を有する。カバー体21は、加工エリア110および段取りステーション120を区画形成するとともに、工作機械10の外観をなしている。
【0029】
加工エリア110は、ワークの加工が行なわれる空間であり、ワーク加工に伴う切屑または切削油等の異物が加工エリア110の外部に漏出しないように密閉されている。段取りステーション120は、Z軸方向において加工エリア110と隣り合って設けられている。段取りステーション120は、ワークの取り付けが行なわれる空間である。工作機械10は、加工エリア110および段取りステーション120の間において、ワークが取り付けられるパレット18(後出の
図3を参照)を交換するための自動パレット交換装置(APC:Automatic Pallet Changer)をさらに有する。
【0030】
カバー体21は、正面カバー23と、正面扉25と、天井カバー22とを有する。正面カバー23、正面扉25および天井カバー22は、加工エリア110を区画形成している。
【0031】
正面カバー23には、カバー開口部26が設けられている。カバー開口部26は、加工エリア110を外部空間に開放している。正面扉25は、カバー開口部26に設けられている。正面扉25は、カバー開口部26を開状態とする開位置と、カバー開口部26を閉状態とする閉位置(
図1中に示される正面扉25の位置)との間において、スライド動作可能である。天井カバー22は、カバー体21の天井部を構成している。天井カバー22は、加工エリア110の上方に配置されている。
【0032】
カバー体21は、段取りステーションカバー27と、段取りステーション扉28とをさらに有する。段取りステーションカバー27および段取りステーション扉28は、段取りステーション120を区画形成している。
【0033】
段取りステーションカバー27には、カバー開口部29が設けられている。カバー開口部29は、段取りステーション120を外部空間に開放している。段取りステーション扉28は、カバー開口部29に設けられている。段取りステーション扉28は、カバー開口部29を開状態とする開位置と、カバー開口部29を閉状態とする閉位置(
図1中に示される段取りステーション扉28の位置)との間において、回動動作可能である。
【0034】
工作機械10は、工具主軸12と、テーブル15(後出の
図3を参照)とをさらに有する。工具主軸12およびテーブル15は、加工エリア110に設けられている。
【0035】
工具主軸12は、X軸方向およびY軸方向に移動可能に設けられている。工具主軸12は、Z軸に平行な回転中心軸101を中心に、モータ駆動により回転可能に設けられている。工具主軸12には、工作機械10におけるワーク加工のための工具が保持される。工具主軸12の回転に伴って、工具主軸12に保持された工具が回転中心軸101を中心に回転する。
【0036】
テーブル15は、ワークを保持するための装置である。テーブル15は、Z軸方向において工具主軸12と対向する位置にワークを保持する。テーブル15は、Z軸方向に移動可能に設けられている。テーブル15は、Y軸方向に延びる旋回中心軸106(後出の
図3を参照)を中心に旋回可能に設けられている。
【0037】
なお、本発明における工作機械は、横形マシニングセンタに限られず、たとえば、旋盤、立形マシニングセンタ、旋削機能と、ミーリング機能とを有する複合加工機、または、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機にも適用可能である。
【0038】
図2は、
図1中の工作機械の加工エリア内を示す斜視図である。
図3は、
図1中の工作機械の加工エリア内を示す断面図である。
図2および
図3を参照して、工作機械10は、ポンプ37と、第1クーラント吐出部31とを有する。
【0039】
ポンプ37は、加工エリア110外に設置されたクーラントタンク(不図示)に設けられている。ポンプ37は、クーラントタンクに貯留されたクーラントを第1クーラント吐出部31に向けて供給する。第1クーラント吐出部31は、ポンプ37から供給されたクーラントを加工エリア110に向けて吐出する。
【0040】
第1クーラント吐出部31は、加工エリア110に設けられている。第1クーラント吐出部31は、カバー体21の天井部(天井カバー22)に設けられている。第1クーラント吐出部31は、加工エリア110の上方からクーラントを落下させるシャワークーラントを構成している。
【0041】
より具体的には、工作機械10は、クーラント配管36と、複数の第1クーラント吐出部31とを有する。
【0042】
クーラント配管36は、クーラントが流通可能なパイプ材からなる。クーラント配管36は、加工エリア110に設けられている。クーラント配管36は、天井カバー22に取り付けられている。クーラント配管36は、Z軸方向に延びている。天井カバー22には、X軸方向に互いに離れた位置に2本のクーラント配管36が取り付けられている。
【0043】
第1クーラント吐出部31は、樹脂製のノズル体からなる。第1クーラント吐出部31は、クーラント配管36に接続されている。複数の第1クーラント吐出部31は、互いに間隔を開けてZ軸方向に並んでいる。複数の第1クーラント吐出部31は、互いに間隔を開けて、テーブル15の移動方向に並んでいる。
【0044】
第1クーラント吐出部31は、ノズル先端部33と、複数のホース部34と、コネクタ部35とを有する。
【0045】
コネクタ部35には、ネジが設けられており、コネクタ部35は、そのネジ部を介してクーラント配管36に接続されている。ホース部34は、コネクタ部35に対して回動可能に接続されている。複数のホース部34は、コネクタ部35からノズル先端部33に向けて連なっている。複数のホース部34は、互いに回動可能なように接続されている。ノズル先端部33は、ホース部34に対して回動可能に接続されている。ノズル先端部33は、先細りの筒形状を有する。ノズル先端部33には、クーラントを吐出するための吐出口32が設けられている。
【0046】
コネクタ部35およびホース部34の接続部、複数のホース部34同士の接続部、または、ホース部34およびノズル先端部33の接続部を回動動作させることによって、吐出口32の位置(クーラントの吐出位置)、および、吐出口32が開口する方向(クーラントの吐出方向)を調節することができる。
【0047】
なお、以上に説明した第1クーラント吐出部31の構造および配置は、一例であり、本発明において特に限定されるものではない。たとえば、第1クーラント吐出部は、金属製のノズル体から構成されてもよいし、クーラント配管36に直接、クーラントの吐出口が設けられる構成であってもよい。複数の第1クーラント吐出部は、Y軸方向またはX軸方向に互いに間隔を開けて配置されてもよい。
【0048】
工作機械10は、第2クーラント吐出部51と、クーラント案内部41とをさらに有する。
【0049】
第2クーラント吐出部51は、加工エリア110に設けられている。第2クーラント吐出部51は、第1クーラント吐出部31から離れた位置に設けられてる。第2クーラント吐出部51は、第1クーラント吐出部31よりも下方に設けられている。第2クーラント吐出部51は、クーラントを加工エリア110に向けて吐出する。第2クーラント吐出部51は、クーラントを第1クーラント吐出部31よりも低い位置で吐出する。
【0050】
クーラント案内部41は、加工エリア110に設けられている。クーラント案内部41には、クーラント受け口42が設けられている。クーラント受け口42は、第1クーラント吐出部31から吐出されたクーラントを受ける。クーラント受け口42は、第1クーラント吐出部31からクーラントが吐出される空間(加工エリア110)で開口する開口部からなる。クーラント受け口42は、第1クーラント吐出部31よりも下方に設けられている。クーラント受け口42は、第2クーラント吐出部51よりも上方に設けられている。
【0051】
クーラント案内部41には、第2クーラント吐出部51が接続されている。クーラント案内部41は、クーラント受け口42により受けたクーラントを第2クーラント吐出部51に向けて案内する。クーラント案内部41により案内されるクーラントは、重力によって、クーラント受け口42から第2クーラント吐出部51に向けて流れる。
【0052】
図4は、
図2中のクーラント案内部の要部と、第2クーラント吐出部とを示す斜視図である。
図5は、
図2中のワーク保持具にワークが保持された状態を示す斜視図である。
【0053】
図2から
図5を参照して、クーラント案内部41は、ワーク保持具61を有する。ワーク保持具61は、ワークを保持するための装置である。ワーク保持具61は、テーブル15上に設けられている。ワーク保持具61は、テーブル15に装着されたパレット18に固定されている。
【0054】
ワーク保持具61は、金属製のブロック体からなる。ワーク保持具61は、ベース部62と、ワーク保持部63とを有する。ベース部62は、水平方向に平行に配置される板形状を有する。ベース部62は、ボルト等を用いて、パレット18に締結されている。
【0055】
ワーク保持部63は、ベース部62から上方に向けて立ち上がる板形状を有する。ワーク保持部63には、ワークを着脱可能に保持するためのクランプ機構部71、および、ワークを位置決めするためのロケート部材76などが設けられている。
【0056】
ワーク保持部63は、頂面63aと、側面63bとを有する。頂面63aは、X軸-Z軸平面に平行な平面からなり、上方を向いている。頂面63aは、上下方向において、カバー体21の天井部(天井カバー22)と対向している。側面63bは、Y軸に平行な平面からなり、水平方向を向いている。旋回中心軸106を中心とするテーブル15の旋回動作に伴って、側面63bが向く方向が変化する。クランプ機構部71およびロケート部材76は、側面63b上に設けられている。
【0057】
ワーク保持具61には、第1クーラント流路66が設けられている。ワーク保持部63には、クーラントが流通可能な孔が設けられており、第1クーラント流路66は、その孔から構成されている。第1クーラント流路66は、直線状に延びる複数本の孔が繋がって構成されている。
【0058】
第1クーラント流路66は、クーラント受け口42により受けたクーラントが第2クーラント吐出部51に向けて流れる流路をなしている。第1クーラント流路66は、頂面63aおよび側面63bに開口している。第1クーラント流路66は、側面63bの複数箇所に開口している。
【0059】
クーラント案内部41は、タンク部43をさらに有する。タンク部43は、クーラントを貯留可能な筐体からなる。タンク部43は、上方を向いて開口している。クーラント受け口42は、タンク部43がなす開口部から構成されている。タンク部43は、ワーク保持具61(ワーク保持部63)に固定されている。タンク部43は、頂面63a上に載置されている。クーラントを貯留するタンク部43内の空間は、頂面63aに開口する第1クーラント流路66と連通している。
【0060】
タンク部43は、ワーク保持具61よりも上方で、かつ、第1クーラント吐出部31よりも下方に設けられている。タンク部43は、第2クーラント吐出部51よりも上方に設けられている。
【0061】
工作機械10は、複数の第2クーラント吐出部51を有する。ワーク保持具61には、複数の第2クーラント吐出部51が接続されている。複数の第2クーラント吐出部51は、互いに離れた位置に設けられている。クーラント案内部41は、クーラント受け口42により受けたクーラントを複数の第2クーラント吐出部51の各々に向けて案内する。
【0062】
第2クーラント吐出部51は、コネクタ部54と、パイプ53とを有する。コネクタ部54には、ネジ部が設けられており、コネクタ部54は、そのネジ部を介してワーク保持具61(ワーク保持部63)に接続されている。コネクタ部54は、側面63bに接続されている。コネクタ部54は、側面63bに開口する第1クーラント流路66と連通している。
【0063】
パイプ53は、コネクタ部54に接続されている。パイプ53は、たとえば、銅パイプ等の金属製パイプからなる。パイプ53の先端部には、クーラントを吐出するための吐出口52が設けられている。パイプ53を折り曲げることによって、吐出口52の位置(クーラントの吐出位置)、および、吐出口52が開口する方向(クーラントの吐出方向)を調節することができる。
【0064】
吐出口52は、複数の第2クーラント吐出部51の間において、互いに異なる方向を向いて開口している。吐出口52は、複数の第2クーラント吐出部51のうちの少なくとも2つの第2クーラント吐出部51の間において、同一方向を向いて開口してもよい。吐出口52は、ワークW、クランプ機構部71またはロケート部材76を向いて開口してもよい。
【0065】
通常、機内クーラントとして用いられる第1クーラント吐出部31は、ワーク保持具61から離れた位置に設けられているため、第1クーラント吐出部31からのクーラントを、ワーク保持具61におけるワークW、クランプ機構部71またはロケート部材76といった細部に供給して、これらを効率よく洗浄することは難しい。
【0066】
これに対して、本実施の形態では、第1クーラント吐出部31から加工エリア110に向けて吐出されたクーラントを一旦クーラント受け口42で受ける。そして、そのクーラントを、クーラント案内部41(ワーク保持具61)における第1クーラント流路66を通じて複数の第2クーラント吐出部51の各々に向けて案内し、各第2クーラント吐出部51からワークW、クランプ機構部71またはロケート部材76に向けて吐出する。これにより、クーラントをワーク保持具61における所望の箇所に供給することが可能となるため、クーラントを用いた洗浄作業を効率的に行なうことができる。
【0067】
また、クーラント案内部41は、クーラント受け口42が設けられたタンク部43を有する。このような構成により、第1クーラント吐出部31から加工エリア110に向けて吐出されたクーラントは、一時的にタンク部43に貯留される。これにより、第1クーラント吐出部31からクーラントが吐出されないタイミングにおいても、第2クーラント吐出部51からのクーラントの吐出が可能となるため、クーラントを用いた洗浄作業をさらに効率的に行なうことができる。
【0068】
また、第1クーラント吐出部31は、カバー体21の天井部に設けられている。このような構成により、第1クーラント吐出部31から吐出され、加工エリア110内を落下するクーラントを効率的にクーラント受け口42で受けることができる。
【0069】
なお、クーラント受け口42で受けたクーラントを第2クーラント吐出部51に向けて案内する第1クーラント流路は、上記のワーク保持部63に設けられる孔に限られず、ワーク保持部63の周囲に配索される配管部材から構成されてもよい。
【0070】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における工作機械10の構造についてまとめると、本実施の形態における工作機械10は、ポンプ37からクーラントが供給され、クーラントを空間としての加工エリア110に向けて吐出する第1クーラント吐出部31と、第1クーラント吐出部31から離れた位置に設けられ、クーラントを加工エリア110に向けて吐出する第2クーラント吐出部51と、第1クーラント吐出部31から吐出されたクーラントを受けるクーラント受け口42が設けられ、第2クーラント吐出部51が接続され、クーラント受け口42により受けたクーラントを第2クーラント吐出部51に向けて案内するクーラント案内部41とを備える。
【0071】
このように構成された、この発明の実施の形態1における工作機械10によれば、クーラントをワーク保持具61における所望の箇所に供給することによって、クーラントを用いた洗浄作業を効率的に行なうことができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、第1クーラント吐出部31が、加工エリア110に向けてクーラントを吐出する機内クーラントである場合を説明したが、本発明は、これに限られない。本発明における第1クーラント吐出部は、たとえば、段取りステーション120内にクーラントを吐出するものであってもよい。
【0073】
(実施の形態2)
図6は、この発明の実施の形態2の工作機械において、第1クーラント吐出部およびクーラント案内部を示す斜視図である。
図7は、
図6中のVII-VII線上の矢視方向に見た第1クーラント吐出部およびクーラント案内部を示す断面図である。本実施の形態における工作機械は、実施の形態1における工作機械10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0074】
図6および
図7を参照して、本実施の形態では、クーラント受け口42がワーク保持具61(ワーク保持部63)に設けられている。
【0075】
クーラント受け口42は、水平方向を向いて開口している。クーラント受け口42は、側面63bに開口している。クーラント受け口42は、クーラント受け口42の開口面積が側面63bから遠ざかるほど大きくなるように設けられている。クーラント受け口42は、第1クーラント流路66と連通している。第1クーラント流路66は、ワーク保持部63に設けられ、クーラント受け口42から第2クーラント吐出部51に向けて延びる孔からなる。
【0076】
工具主軸12は、主軸クーラント機構81を有する。主軸クーラント機構81は、クーラントを工具主軸12を通じて加工エリア110に向けて吐出する。第1クーラント吐出部31は、主軸クーラント機構81から構成されている。
【0077】
主軸クーラント機構81は、工具主軸12に保持された工具Tの刃先から、回転中心軸101の軸方向にクーラントを吐出する。工具主軸12には、主軸内クーラント流路82が設けられている。主軸内クーラント流路82は、回転中心軸101の軸上で延びている。工具主軸12により保持される工具Tには、工具内クーラント流路86が設けられている。工具内クーラント流路86は、回転中心軸101の軸上で延び、主軸内クーラント流路82と連通している。クーラントは、主軸内クーラント流路82および工具内クーラント流路86を順に流れて、加工エリア110に吐出される。クーラント受け口42がなす開口面は、工具Tからのクーラントの吐出方向と交差する方向に延在することが好ましい。
【0078】
工具主軸12をX軸方向およびY軸方向に移動させ、テーブル15をZ軸方向に移動させることによって、工具主軸12に保持された工具Tを、クーラント受け口42がなす開口部と対向配置する。第1クーラント吐出部31(主軸クーラント機構81)により工具Tの刃先からクーラントを吐出させる。工具Tから吐出されたクーラントがクーラント受け口42を通じて第1クーラント流路66に導入される。
【0079】
このような構成によれば、工具Tの刃先から高圧で吐出されるクーラントを、ワーク保持部63に設けられたクーラント受け口42で効率的に受けることができる。
【0080】
図8は、
図6および
図7中のクーラント案内部の変形例を示す断面図である。
図8を参照して、本変形例では、クーラント案内部41が、カバー部46を有する。カバー部46は、水平方向を向いて開口している。クーラント受け口42は、カバー部46がなす開口部から構成されている。カバー部46は、(ワーク保持具61)ワーク保持部63に固定されている。カバー部46は、頂面63a上に載置されている。クーラントが供給されるカバー部46内の空間は、頂面63aに開口する第1クーラント流路66と連通している。
【0081】
クーラント案内部41は、メッシュ体48をさらに有する。メッシュ体48は、クーラント受け口42に設けられている。メッシュ体48は、カバー部46がなす開口部を覆うように設けられている。メッシュ体48は、微細な孔が並ぶ網目状のシートからなる。
【0082】
このような構成によれば、工具Tの刃先から高圧で吐出されるクーラントを、カバー部46に設けられたクーラント受け口42で効率的に受けることができる。この際、クーラント受け口42に設けられたメッシュ体48によって、クーラント受け口42を通じて第2クーラント吐出部51に向けて案内されるクーラントから切屑等の異物を除去することができる。
【0083】
このように構成された、この発明の実施の形態2における工作機械によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0084】
なお、本発明におけるメッシュ体は、
図2中のタンク部43がなすクーラント受け口42に設けられてもよいし、
図6および
図7中のワーク保持具61がなすクーラント受け口42に設けられてもよい。
【0085】
(実施の形態3)
図9は、この発明の実施の形態3の工作機械において、クーラント案内部および第2クーラント吐出部を示す斜視図である。本実施の形態における工作機械は、実施の形態1における工作機械10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0086】
図9を参照して、ワーク保持具61(ワーク保持部63)には、ロケート部材76が接続されている。ロケート部材76は、ワークWに当接することによって、ワークWを位置決めする。ロケート部材76は、金属製のピンからなる。
【0087】
ロケート部材76は、当接面76cを有する。当接面76cは、ロケート部材76のその軸方向の一方端に配置される端面に対応している。当接面76cは、ワークWと当接する。ロケート部材76には、第2クーラント流路91が設けられている。ロケート部材76には、その軸方向に延びる貫通孔が設けられており、第2クーラント流路91は、その孔から構成されている。
【0088】
第2クーラント流路91は、加工エリア110に開口している。第2クーラント流路91は、当接面76cに開口している。当接面76cにおける第2クーラント流路91の開口部が、クーラントを吐出するための吐出口92を構成している。第2クーラント流路91は、側面63bに開口する第1クーラント流路66と連通している。第2クーラント吐出部51は、ロケート部材76により構成されている。
【0089】
このような構成によれば、クーラントが、ロケート部材76に設けられた第2クーラント流路91を通って加工エリア110に吐出されため、ワークWおよびロケート部材76の接点となる部位に的確にクーラントを供給することができる。これにより、ワークWおよびロケート部材76の間に切屑等の異物が介在することを防ぎ、ワーク保持具61におけるワークWの位置決めをより高精度に行なうことができる。
【0090】
なお、ロケート部材76の外周面がワークWと当接する当接面に対応する構成であってもよい。この場合に、第2クーラント流路91は、ロケート部材76の外周面に開口してもよい。
【0091】
このように構成された、この発明の実施の形態3における工作機械によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明は、マシニングセンタまたは旋盤等の工作機械に適用される。
【符号の説明】
【0094】
10 工作機械、12 工具主軸、15 テーブル、18 パレット、21 カバー体、22 天井カバー、23 正面カバー、25 正面扉、26,29 カバー開口部、27 段取りステーションカバー、28 段取りステーション扉、31 第1クーラント吐出部、32,52,92 吐出口、33 ノズル先端部、34 ホース部、35,54 コネクタ部、36 クーラント配管、37 ポンプ、41 クーラント案内部、42 クーラント受け口、43 タンク部、46 カバー部、48 メッシュ体、51 第2クーラント吐出部、53 パイプ、61 ワーク保持具、62 ベース部、63 ワーク保持部、63a 頂面、63b 側面、66 第1クーラント流路、71 クランプ機構部、76 ロケート部材、76c 当接面、81 主軸クーラント機構、82 主軸内クーラント流路、86 工具内クーラント流路、91 第2クーラント流路、101 回転中心軸、106 旋回中心軸、110 加工エリア、120 段取りステーション。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプからクーラントが供給され、クーラントを空間に向けて吐出する第1クーラント吐出部と、
前記第1クーラント吐出部から離れた位置に設けられ、クーラントを前記空間に向けて吐出する第2クーラント吐出部と、
前記第1クーラント吐出部から吐出されたクーラントを受けるクーラント受け口が設けられ、前記第2クーラント吐出部が接続され、前記クーラント受け口により受けたクーラントを前記第2クーラント吐出部に向けて案内するクーラント案内部と、
前記第2クーラント吐出部が接続され、ワークを保持するためのワーク保持具と、
前記空間を区画形成するカバー体とを備え、
前記ワーク保持具には、前記クーラント受け口により受けたクーラントを前記第2クーラント吐出部に向けて案内する第1クーラント流路が設けられ、
前記クーラント案内部は、前記ワーク保持具を含む、工作機械。
【請求項2】
前記クーラント案内部は、前記クーラント受け口が設けられ、クーラントを貯留可能なタンク部を含む、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記クーラント案内部は、前記クーラント受け口に設けられるメッシュ体を含む、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第1クーラント吐出部は、前記カバー体の天井部に設けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
クーラントを加工エリア内に向けて吐出する主軸クーラント機構を有し、工具を回転させるための工具主軸を備え、
前記第1クーラント吐出部は、前記主軸クーラント機構を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
複数の前記第2クーラント吐出部を備え、
前記クーラント案内部は、前記クーラント受け口により受けたクーラントを複数の前記第2クーラント吐出部の各々に向けて案内する、請求項1から5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記ワーク保持具には、ワークに当接することによって、ワークを位置決めするためのロケート部材が接続され、
前記ロケート部材には、前記第1クーラント流路と連通し、前記空間に開口する第2クーラント流路が設けられ、
前記第2クーラント吐出部は、前記ロケート部材を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の工作機械。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
この発明の1つの局面に従った工作機械は、ポンプからクーラントが供給され、クーラントを空間に向けて吐出する第1クーラント吐出部と、第1クーラント吐出部から離れた位置に設けられ、クーラントを空間に向けて吐出する第2クーラント吐出部と、第1クーラント吐出部から吐出されたクーラントを受けるクーラント受け口が設けられ、第2クーラント吐出部が接続され、クーラント受け口により受けたクーラントを第2クーラント吐出部に向けて案内するクーラント案内部と、第2クーラント吐出部が接続され、ワークを保持するためのワーク保持具と、空間を区画形成するカバー体とを備える。ワーク保持具には、クーラント受け口により受けたクーラントを第2クーラント吐出部に向けて案内する第1クーラント流路が設けられる。クーラント案内部は、ワーク保持具を含む。
この発明の別の局面に従った工作機械は、ポンプからクーラントが供給され、クーラントを空間に向けて吐出する第1クーラント吐出部と、第1クーラント吐出部から離れた位置に設けられ、クーラントを空間に向けて吐出する第2クーラント吐出部と、第1クーラント吐出部から吐出されたクーラントを受けるクーラント受け口が設けられ、第2クーラント吐出部が接続され、クーラント受け口により受けたクーラントを第2クーラント吐出部に向けて案内するクーラント案内部とを備える。