(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117785
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】既設管の弁設置工法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
F16L55/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014479
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】津崎 将人
(57)【要約】
【課題】穿孔機材の小型化、軽量化を図りながら、管切断工程を能率良く、且つ、施工不良を抑制した状態で実行する。
【解決手段】既設管1の弁体挿入部位を切断分離する管切断工程を備えた既設管の弁設置工法であって、管切断工程は、既設管1の管軸芯Xを通る中心平面Yに対して管横断方向の一側方に偏位した第1穿孔中心位置P1でのホールソーの切削回転により、ホールソーの穿孔領域H1が、中心平面Yよりも他方側に越え、且つ、既設管1の一側端の穿孔開口幅W1が弁挿入設定幅となる状態で切断する第1管切断工程と、中心平Y面に対して他側方に偏位した第2穿孔中心位置P2でのホールソーの切削回転により、ホールソーの穿孔領域H2が、中心平面Yよりも一方側に越え、且つ、既設管1の他側端の穿孔開口幅W2が弁挿入設定幅となる状態で切断する第2管切断工程と、を備える。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の弁設置領域に弁箱を外装する弁箱外装工程と、前記弁箱側に、前記既設管の弁体挿入部位を切断分離するホールソーを有する切断装置を取付ける切断装置取付け工程と、前記ホールソーの切削回転により、不断流状態で前記既設管の弁体挿入部位を切断分離する管切断工程と、前記切断装置を前記弁箱側から撤去する切断装置撤去工程と、前記弁箱に弁体を装着する弁体装着工程と、を備えた既設管の弁設置工法であって、
前記切断装置取付け工程では、前記既設管の半径よりも大きな刃径の前記ホールソーを前記切断装置に装着し、
前記管切断工程は、前記既設管の管軸芯を通る中心平面に対して管横断方向の一側方に偏位した第1穿孔中心位置での前記ホールソーの切削回転により、前記ホールソーの穿孔領域が、前記中心平面よりも管横断方向の他方側に越え、且つ、前記既設管の管横断方向の一側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で切断分離する第1管切断工程と、
前記既設管の管軸芯を通る前記中心平面に対して管横断方向の他側方に偏位した第2穿孔中心位置での前記ホールソーの切削回転により、前記ホールソーの穿孔領域が、前記既設管の前記中心平面よりも管横断方向の一方側に越え、且つ、前記既設管の管横断方向の他側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で切断分離する第2管切断工程と、を備える既設管の弁設置工法。
【請求項2】
前記ホールソーの刃径は、前記既設管の半径よりも大で、且つ、前記既設管の外径よりも小に設定されている請求項1記載の既設管の弁設置工法。
【請求項3】
前記既設管の管横断方向両側端における前記穿孔開口幅である弁挿入設定幅を分母とし、前記ホールソーの刃径を分子とする比率が1.1~1.5に設定されている請求項1又は2記載の既設管の弁設置工法。
【請求項4】
前記第1穿孔中心位置での前記ホールソーの回転軌跡と前記第2穿孔中心位置での前記ホールソーの回転軌跡とが交差する二つの交差点間における管軸芯方向での穿孔中央幅が、前記既設管の管横断方向両側端の前記穿孔開口幅と同一又は略同一に設定されている請求項1~3のいずれか1項に記載の既設管の弁設置工法。
【請求項5】
前記切断装置取付け工程においては、前記弁箱の弁体装着部に接合した作業用開閉弁と前記切断装置との間に、前記作業用開閉弁に対して前記切断装置の取付け位置を管横断方向で変更可能な位置変更アタッチメントが脱着自在に設けられ、前記管切断工程において、前記作業用開閉弁に対して前記位置変更アタッチメントを付け替えることにより、前記切断装置を、前記ホールソーの回転軸芯が前記第1穿孔中心位置に対応する第1取付け位置と、前記ホールソーの回転軸芯が前記第2穿孔中心位置に対応する第2取付け位置に変更自在に構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の既設管の弁設置工法。
【請求項6】
前記切断装置取付け工程においては、前記弁箱の弁体装着部と前記切断装置側の作業用開閉弁との間に、前記弁体装着部にフランジ接合可能な形態の第1フランジと、前記作業用開閉弁にフランジ接合可能な形態の第2フランジとを備えた作業弁アタッチメントが設けられている請求項1~5のいずれか1項に記載の既設管の弁設置工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管の弁設置領域に弁箱を外装する弁箱外装工程と、前記弁箱側に、前記既設管の弁体挿入部位を切断分離するホールソーを有する切断装置を取付ける切断装置取付け工程と、前記ホールソーの切削回転により、不断流状態で前記既設管の弁体挿入部位を切断分離する管切断工程と、前記切断装置を弁箱側から撤去する切断装置撤去工程と、前記弁箱に弁体を装着する弁体装着工程と、を備えた既設管の弁設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設管の弁設置工法として、特許文献1に示すように、既設管の外径よりも大きな刃径のホールソーを用いる弁設置工法と、特許文献2に示すように、既設管の半径よりも小さな刃径のホールソーを用いる弁設置工法が提案されている。
【0003】
特許文献1に示す弁設置工法では、管切断工程において、ホールソーの回転軸芯を既設管の管軸芯を通る中心平面(鉛直平面)に配置する。中心平面上の穿孔中心位置でのホールソーの切削回転により、既設管の管横断方向の両側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で切断分離する。
【0004】
特許文献2に示す弁設置工法の管切断工程は、既設管の管軸芯を通る中心平面に対して管横断方向の一側方に偏位した第1穿孔中心位置でのホールソーの切削回転により、ホールソーの穿孔領域が前記中心平面よりも管横断方向の一方側に偏位し、且つ、既設管の管横断方向の一側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で切断分離する第1管切断工程と、
既設管の管軸芯を通る中心平面に対して管横断方向の他側方に偏位した第2穿孔中心位置での前記ホールソーの切削回転により、ホールソーの穿孔領域が既設管の中心平面よりも管横断方向の他方側に偏位し、且つ、既設管の管横断方向の他側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で切断分離する第2管切断工程と、
既設管の管軸芯を通る中心平面上の第3穿孔中心位置でのホールソーの切削回転により、第1穿孔及び第2穿孔に連通する状態で、且つ、各連通箇所の管軸芯方向での穿孔中間幅が弁挿入設定幅となる状態で切断分離する第3管切断工程と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4503036号公報
【特許文献2】特許第4086838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す弁設置工法では、既設管の外径よりも大きな刃径のホールソーを用いるため、管切断工程が1回の穿孔作業工程で済む。反面、既設管の切断面積が大きく、且つ、ホールソーの切断時の駆動トルクが大きくなるため、切断装置の駆動部やハウジング等の穿孔機材が大型化、重量化する不都合がある。
【0007】
特許文献2に示す弁設置工法では、既設管の半径よりも小さな刃径のホールソーを用いるため、既設管の切断面積が小さく、且つ、ホールソーの切断時の駆動トルクも小さくなるため、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。反面、管切断工程が3回の穿孔作業工程となり、しかも、ホールソーの穿孔位置を管横断方向の3位置に変更する必要があるため、管切断工程に多くの作業時間を要する。
また、ホールソーにはセンタードリルが備えられているが、このセンタードリルの先端が既設管の管壁面に接触したとき、センタードリルの先端が管壁面に沿って周方向に位置ズレする傾向にある。そのため、三つの穿孔作業工程でセンタードリルの位置ズレが発生する可能性があり、施工不良の要因になる不都合がある。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、穿孔機材の小型化、軽量化を図りながら、管切断工程を能率良く、且つ、施工不良を抑制した状態で実行することのできる既設管の弁設置工法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、既設管の弁設置領域に弁箱を外装する弁箱外装工程と、前記弁箱側に、前記既設管の弁体挿入部位を切断分離するホールソーを有する切断装置を取付ける切断装置取付け工程と、前記ホールソーの切削回転により、不断流状態で前記既設管の弁体挿入部位を切断分離する管切断工程と、前記切断装置を前記弁箱側から撤去する切断装置撤去工程と、前記弁箱に弁体を装着する弁体装着工程と、を備えた既設管の弁設置工法であって、
前記切断装置取付け工程では、前記既設管の半径よりも大きな刃径の前記ホールソーを前記切断装置に装着し、
前記管切断工程は、前記既設管の管軸芯を通る中心平面に対して管横断方向の一側方に偏位した第1穿孔中心位置での前記ホールソーの切削回転により、前記ホールソーの穿孔領域が前記中心平面よりも管横断方向の他方側に越え、且つ、前記既設管の管横断方向の一側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で切断分離する第1管切断工程と、
前記既設管の管軸芯を通る前記中心平面に対して管横断方向の他側方に偏位した第2穿孔中心位置での前記ホールソーの切削回転により、前記ホールソーの穿孔領域が前記既設管の前記中心平面よりも管横断方向の一方側に越え、且つ、前記既設管の管横断方向の他側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で切断分離する第2管切断工程と、を備える点にある。
【0010】
本構成によれば、既設管の半径よりも大きな刃径のホールソーを用いて、管切断工程を、既設管の管軸芯を通る中心平面に対して管横断方向の一側方に偏位した第1穿孔中心位置での第1管切断工程と、既設管の管軸芯を通る中心平面に対して管横断方向の他側方に偏位した第2穿孔中心位置での第2管切断工程との2回の穿孔作業を実行する。
第1管切断工程では、中心平面に対して管横断方向の一側方に偏位した第1穿孔中心位置でのホールソーの切削回転により、ホールソーの穿孔領域が中心平面よりも管横断方向の他方側に越え、且つ、既設管の管横断方向の一側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で既設管を切断することができる。
次の第2管切断工程では、中心平面に対して管横断方向の他側方に偏位した第2穿孔中心位置でのホールソーの切削回転により、ホールソーの穿孔領域が既設管の中心平面よりも管横断方向の一方側に越え、一回目の管切断工程で形成された穿孔に管横断方向で連通形成することができる。さらに、既設管の管横断方向の他側端の管周面における管軸芯方向での穿孔開口幅が弁挿入設定幅となる状態で既設管を切断分離することができる。
これにより、既設管の外径よりも大きな刃径のホールソーを用いた1回の穿孔作業と比較して、既設管の切断面積が小さく、且つ、ホールソーの切断時の駆動トルクも小さくなるため、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
また、既設管の半径よりも小さな刃径のホールソーを用いた3回の穿孔作業と比較して、切断工程を能率良く、且つ、施工不良を抑制した状態で実行することができる。
しかも、既設管の半径よりも大きな刃径のホールソーを用いるので、既設管の管横断方向両側端の穿孔開口幅を、弁体の管軸芯方向での挿入幅に対応した任意の弁挿入設定幅に設定することができる。これにより、既設管の半径よりも小さな刃径のホールソーを用いた3回の穿孔作業と比較して、弁挿入設定幅の設定範囲の拡大を図ることができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記ホールソーの刃径は、前記既設管の半径よりも大で、且つ、前記既設管の外径よりも小に設定されている点にある。
【0012】
本構成によれば、ホールソーの刃径の最大が既設管の外径よりも小に設定されているので、穿孔機材の小型化、軽量化を図りながら、弁挿入設定幅の設定範囲の拡大を図ることができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、前記既設管の管横断方向両側端における前記穿孔開口幅である弁挿入設定幅を分母とし、前記ホールソーの刃径を分子とする比率が1.1~1.5に設定されている点にある。
【0014】
本構成によれば、既設管の半径よりも大きな刃径のホールソーを用いた2回の穿孔作業において、弁挿入設定幅を分母とし、ホールソーの刃径を分子とする比率が1.1~1.5に設定してあるので、弁挿入設定幅の設定範囲の拡大を図りながら、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記第1穿孔中心位置での前記ホールソーの回転軌跡と前記第2穿孔中心位置での前記ホールソーの回転軌跡とが交差する二つの交差点間における管軸芯方向での穿孔中央幅が、前記既設管の管横断方向両側端の前記穿孔開口幅と同一又は略同一に設定されている点にある。
【0016】
本構成によれば、第1穿孔中心位置及び第2穿孔中心位置でのホールソーの回転軌跡の交差点間における管軸芯方向での穿孔中央幅が、例えば、既設管の管横断方向両側端の穿孔開口幅よりも大に設定されている場合と比較して、既設管の切断面積が小さく、且つ、ホールソーの切断時の駆動トルクも小さくなるため、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記切断装置取付け工程においては、前記弁箱の弁体装着部に接合した作業用開閉弁と前記切断装置との間に、前記作業用開閉弁に対して前記切断装置の取付け位置を管横断方向で変更可能な位置変更アタッチメントが脱着自在に設けられ、前記管切断工程において、前記作業用開閉弁に対して前記位置変更アタッチメントを付け替えることにより、前記切断装置を、前記ホールソーの回転軸芯が前記第1穿孔中心位置に対応する第1取付け位置と、前記ホールソーの回転軸芯が前記第2穿孔中心位置に対応する第2取付け位置に変更自在に構成されている点にある。
【0018】
本構成によれば、作業用開閉弁に対して位置変更アタッチメントを付け替えることにより、ホールソーの回転軸芯が第1穿孔中心位置に対応する第1取付け位置と、ホールソーの回転軸芯が第2穿孔中心位置に対応する第2取付け位置に変更することができる。そのため、第1穿孔中心位置に対応するアタッチメントと第2穿孔中心位置に対応するアタッチメントとの二種類を準備する必要がなく、穿孔機材数の削減を図ることができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、前記切断装置取付け工程においては、前記弁箱の弁体装着部と前記切断装置側の作業用開閉弁との間に、前記弁体装着部にフランジ接合可能な形態の第1フランジと、前記作業用開閉弁にフランジ接合可能な形態の第2フランジとを備えた作業弁アタッチメントが設けられている点にある。
【0020】
本構成によれば、既設管の半径よりも大きな刃径のホールソーを用いた2回の穿孔作業の採用によって、例えば、弁箱の弁体装着部のフランジが長方環状に形成される可能性がある。このとき、弁体装着部にフランジ接合可能な形態の第1フランジと作業用開閉弁にフランジ接合可能な形態の第2フランジとを備えた作業弁アタッチメントを用いることにより、フランジが円環状に形成されている汎用品の作業用開閉弁であっても使用することができる。そのため、作業用開閉弁のフランジを、弁箱の弁体装着部にフランジ接合可能な形態に改造する必要がなく、穿孔機材のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の既設管の弁設置工法を示す弁箱取付け時の正面図
【
図6】弁箱に作業弁アタッチメント及び作業用開閉弁を取付けたときの部分断面図
【
図7】第1管切断工程での穿孔作業開始前の横断側面図
【
図8】第1管切断工程の穿孔開始位置での横断側面図
【
図9】第1管切断工程の穿孔終了位置での横断側面図
【
図10】切断後のホールソーを収納空間に復帰させたときの横断側面図
【
図11】第1管切断工程が終了したときの既設管の平面図
【
図12】第2管切断工程の穿孔終了位置での横断側面図
【
図13】第2管切断工程が終了したときの第1実施例の説明図
【
図14】切断装置撤去工程及び弁体装着工程を示す弁体装着工程
【
図16】内弁箱に取付けられた弁体の流路遮状態と流路開放状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
本実施形態では、既設管の一例である既設水道管1の弁設置箇所に、弁の一例であるバタフライ弁2を不断水状態(不断流状態)で設置する既設管の弁設置工法について説明する。
この既設管の弁設置工法では、
図1~
図5に示すように、既設水道管1の弁設置領域にバタフライ弁2の弁箱20を外装する弁箱外装工程と、
図6、
図7に示すように、弁箱20側に、作業用開閉弁3と、既設水道管1の弁体挿入部位を切断分離するホールソー40を有する切断装置4を取付ける切断装置取付け工程と、
図8~
図13に示すように、ホールソー40の切削回転により、不断流状態で既設水道管1の弁体挿入部位を切断分離する管切断工程と、
図14に示すように、切断装置4を弁箱20側から撤去する切断装置撤去工程と、
図14~
図16に示すように、弁箱20にバタフライ弁2の弁体24を装着する弁体装着工程と、を主要工程として備える。
【0023】
既設管の弁設置工法に用いられるバタフライ弁2は、
図14~
図16に示すように、既設水道管1の弁設置領域の外周面に水密状態で外装固定される弁箱20と、弁箱20の上側に形成された筒状の弁体装着部21の弁体挿入口22を密閉し、且つ、弁箱20内の弁体装着空間を流路横断姿勢で遮断可能な弁体保持枠としての内弁箱23と、内弁箱23の弁体保持部23Aに貫通形成された管軸芯Xと同心円の流路口23aを開閉する弁体24と、弁体24の弁軸24Aを管軸芯Xと直交する鉛直軸芯周りで回動操作する弁軸操作機構部25と、を有する。
【0024】
弁箱20は、
図1~
図5に示すように、既設水道管1の弁設置領域の外周面に対して下方から覆う上向き開口の下側弁箱部20Aと、既設水道管1の弁設置領域の外周面に対して上方から覆う下向き開口の上側弁箱部20Bとを有する。下側弁箱部20Aと上側弁箱部20Bは、既設水道管1の管軸芯Xを通る水平面で二分割され、且つ、その分割合わせ面20a同士を接合した状態でボルト・ナット26にて締付け固定される。
【0025】
内弁箱23は、
図14~
図16に示すように、弁箱20の弁体装着部21の弁体挿入口22を密閉する弁蓋部23Bと、弁蓋部23Bの下面にT字状に一体形成される弁体保持部23Aとを備える。弁蓋部23Bは、弁箱20の弁体装着部21の上端に形成の弁箱フランジ21Aにボルト・ナット(図示省略)で上下方向から固定連結される。そのため、弁体装着部21の弁箱フランジ21Aの上面には、
図14に示すように、ボルト・ナットの締付け操作に伴って弁蓋部23Bのフランジ接合面との間を密封するOリング27が設けられている。
また、内弁箱23の弁体保持部23Aの外周側面には、
図14,
図16に示すように、弁箱20における管横断方向で対向する一対の側壁部20bの内面(弁座面)及び底壁部20cの内面(弁座面)との間を密封する弾性パッキン28が装着されている。この弾性パッキン28は、内弁箱23の弁蓋部23Bが弁箱20の弁体装着部21の弁箱フランジ21Aに締結されたとき、水密状態に圧縮される。
【0026】
特に、本発明の管切断工程では、
図8~
図13に示すように、既設水道管1の半径よりも大で、且つ、既設水道管1の外径よりも小なる刃径(刃先径)D1に設定されたホールソー40を用いて、既設水道管1の横断方向の二位置で穿孔する。そのため、弁箱20の弁体装着部21は、
図2に示すように、平面視において長方形に構成される。これに伴って、内弁箱23の弁蓋部23Bの輪郭形状も平面視において長方形に構成される。
【0027】
この形態の内弁箱23の弁蓋部23Bを弁箱20の弁体装着部21に固定する方法として、例えば、弁箱20の弁体装着部21内に内弁箱23の弁蓋部23Bを挿入配置し、弁箱20の弁体装着部21の外側面から水平方向に螺合した複数のボルトにより、内弁箱23を弁箱20の内底面側に押圧固定する固定方法が考えられる。しかし、この固定方法では、平面視において長方形の内弁箱23の止水性が懸念される。そのため、本実施形態では、上述のように、弁箱20の弁体装着部21の弁箱フランジ21Aと内弁箱23の弁蓋部23Bを上下方向から接合してボルト・ナットで水密に固定する固定方法を採用したことにより、平面視において長方形の内弁箱23であっても優れた止水性を確保することができる。
【0028】
また、
図1~
図5に示すように、弁箱20の管軸芯X方向両側の管保持部29の端部に形成された連結フランジ29Aの各々には、管保持部29のテーパー状内周面と既設水道管1の外周面との間に介装された第3弾性パッキン31を管軸方向から水密状態に圧縮する二分割構造の押輪30がT字ボルト、ナット32で締付け固定されている。
【0029】
次に、既設管の弁設置工法について詳述する。
[1]弁箱外装工程
図1~
図5に示すように、弁箱20の下側弁箱部20A及び上側弁箱部20Bを、既設水道管1の弁設置領域の外周面に対して外装する。下側弁箱部20Aと上側弁箱部20Bとを、
図5に示すように、既設水道管1の管軸芯Xを通る分割合わせ面20a同士を接合した状態でボルト・ナット26にて締付け固定する。その後、下側弁箱部20Aと上側弁箱部20Bとの分割合わせ面20aを水密状態に溶接で一体的に接合する。
図1~
図5に示すように、弁箱20の管軸芯X方向両側の管保持部29の端部に形成された連結フランジ29Aの各々に、既設水道管1に外装された二分割構造の押輪30をT字ボルト、ナット32で締付け固定する。この押輪30の締付け固定操作により、
図4に示すように、管保持部29のテーパー状内周面と既設水道管1の外周面との間に介装された第3弾性パッキン31が水密状態に圧縮される。
【0030】
[2]切断装置取付け工程
図6、
図7に示すように、弁箱20の弁体装着部21の弁箱フランジ21Aに、切断装置4のホールソー40及び内弁箱23が通過可能な筒状の作業弁アタッチメント5をフランジ接合する。この作業弁アタッチメント5の下端には、弁体装着部21の弁箱フランジ21Aとボルト・ナット51にて締結可能な形態の第1フランジ5Aが設けられている。
図2に示すように、弁体装着部21の弁箱フランジ21Aが環状長方形であるため、第1フランジ5Aの形態も環状長方形に構成されている。
また、
図6に示すように、作業弁アタッチメント5の上端には、作業用開閉弁3の作業弁ケース3Aの下端に形成された下側フランジ3Bとボルト・ナット52にて締結可能な形態の第2フランジ5Bが設けられている。本実施形態では、下側フランジ3Bが環状円形に形成されている汎用品の作業用開閉弁3が用いられているため、第2フランジ5Bの形態も、作業用開閉弁3の下側フランジ3Bに対応した環状円形(図示省略)に構成されている。
そのため、作業用開閉弁3の下側フランジ3Bを、弁箱20の弁体装着部21にフランジ接合可能な形態に改造する必要がなく、穿孔機材のコストダウンを図ることができる。
なお、弁体装着部21の弁箱フランジ21Aの上面には、
図4、
図5、
図6、
図8に示すように、ボルト・ナット51の締付け操作に伴って作業弁アタッチメント5の第1フランジ5Aとの接合面間を密封するOリング35が設けられている。
【0031】
さらに、
図6に示すように、作業弁アタッチメント5の第1フランジ5Aと第2フランジ5Bとの上下方向での対向面間は、第1フランジ5Aと弁箱フランジ21Aとを締結するボルトを上方から差し入れて螺合操作するためのボルト操作空間53に構成されている。そのため、例えば、弁箱20の弁箱フランジ21Aに作業用開閉弁3の下側フランジ3Bを直接締結する場合のように、弁箱20の管保持部29の外周面と弁箱フランジ21Aとの対向面間に、締結ボルトを下方から差し入れて螺合操作するためのボルト操作空間を確保する必要がない。これにより、弁箱20の管軸芯X相当位置から弁箱フランジ21Aまでの高さ寸法を抑えることができる。
【0032】
図6、
図7に示すように、作業弁ケース3Aの上端に形成された上側フランジ3Cには、作業用開閉弁3に対して切断装置4の取付け位置を管横断方向で変更可能な位置変更アタッチメント6及び穿孔作業ケース41を介して切断装置4の切断ケーシング42を取付ける。位置変更アタッチメント6及び穿孔作業ケース41は、ホールソー40が昇降可能な大きさの内部空間を備えている。
【0033】
後述する本発明の管切断工程は、
図8~
図11に示すように、既設水道管1の管軸芯Xを通る鉛直方向の中心平面Yに対して管横断方向の一側方(
図8では右側)に偏位した第1穿孔中心位置P1でのホールソー40の切削回転を実行する第1管切断工程と、
図12、
図13に示すように、既設水道管1の管軸芯Xを通る鉛直方向の中心平面Yに対して管横断方向の他側方(
図12では左側)に偏位した第2穿孔中心位置P2でのホールソー40の切削回転を実行する第2管切断工程と、を備える。
第1管切断工程では、
図8~
図11に示すように、ホールソー40の第1穿孔領域(平面視での第1穿孔面積)H1が、中心平面Yよりも管横断方向の他方側(
図8では左側)に越える。且つ、
図11に示すように、既設水道管1の管横断方向の一側端の管周面における管軸芯X方向での第1穿孔開口幅W1が弁挿入設定幅となる状態で、既設水道管1を切断する。
第2管切断工程では、
図12、
図13に示すように、ホールソー40の第2穿孔領域(平面視での第2穿孔面積)H2が、既設水道管1の中心平面Yよりも管横断方向の一方側(
図12では右側)に越える。且つ、
図13に示すように、既設水道管1の管横断方向の他側端の管周面における管軸芯X方向での第2穿孔開口幅W2が弁挿入設定幅となる状態で、既設水道管1を切断分離する。
【0034】
そのため、位置変更アタッチメント6は、
図7に示すように、鉛直方向の中心平面Y上に上下方向中心線が位置する大径の本体ケース部61と、第1穿孔中心位置P1及び第2穿孔中心位置P2上に上下方向中心線を選択配置可能な小径の偏芯ケース部62とを一体化して構成されている。本体ケース部61の下端には、作業弁ケース3Aの上側フランジ3Cにボルト・ナット63で締結される下側フランジ61Aが設けられている。偏芯ケース部62の上端には、穿孔作業ケース41の下側フランジ41Aにボルト・ナット64で締結される上側フランジ62Aが設けられている。
【0035】
そして、第1管切断工程では、
図7、
図8に示すように、位置変更アタッチメント6を、偏芯ケース部62の上下方向中心線が第1穿孔中心位置P1上に位置する向き姿勢で作業用開閉弁3にフランジ接合する。第2管切断工程では、
図12に示すように、位置変更アタッチメント6を、偏芯ケース部62の上下方向中心線が第2穿孔中心位置P2上に位置する向き姿勢で作業用開閉弁3にフランジ接合する。
上述のように、作業用開閉弁3に対して位置変更アタッチメント6を180度反転して付け替えることにより、ホールソー40の回転軸芯が第1穿孔中心位置P1に対応する第1取付け位置と、ホールソー40の回転軸芯が第2穿孔中心位置P2に対応する第2取付け位置に変更することができる。そのため、第1穿孔中心位置P1に対応するアタッチメントと第2穿孔中心位置P2に対応するアタッチメントとの二種類を準備する必要がなく、穿孔機材数の削減を図ることができる。
【0036】
図7に示すように、位置変更アタッチメント6の内部空間と穿孔作業ケース41の内部空間は、作業用開閉弁3が閉弁状態にあるとき、切断装置4のホールソー40を収納する収納空間43に構成されている。穿孔作業ケース41の上端には、切断ケーシング42の下端の連結フランジ42Aにボルト・ナット65で締結される上側フランジ41Bが設けられている。
【0037】
切断装置4は、電動モータやエンジン等の原動部の駆動により、切断ケーシング42に支承された駆動回転軸44に対して駆動回転力と穿孔軸芯方向の移動力を付与する。駆動回転軸44の先端部に連結された円筒状のホールソー40は、
図8~
図13に示すように、既設水道管1の半径よりも大で、且つ、既設水道管1の外径よりも小なる刃径(刃先径)D1に設定されている。ホールソー40の回転軸芯方向の長さは、既設水道管1の外径よりも大なる長さに設定されている。
【0038】
また、ホールソー40の内底中心位置には、
図7~
図10に示すように、回転軸芯方向に沿ってホールソー40の先端よりも外部に突出するセンタードリル45が延設されている。このセンタードリル45の突出代は、
図8に示すように、ホールソー40の先端が既設水道管1の外周面に接触した切断開始時点で、既設水道管1の管壁を貫通した切削位置決め状態となる突出寸法に設定されている。センタードリル45の回転軸芯方向に間隔をおいた二箇所の各々には、ホールソー40内に入り込んだ切片1Aの抜け落ちを防止する起伏自在な二組の係止体46が設けられている。各係止体46は、既設水道管1の管壁を貫通するときには非係止姿勢に格納され、管壁通過後に遠心力で係止姿勢に突出する。
また、二組の係止体46は、ホールソー40が穿孔終了位置にまで送り込まれたとき、切片1Aの上側管壁部の内面側と外面側に係止姿勢で配置される。
【0039】
[3]管切断工程
尚、管切断工程を説明する
図8~
図13のうち、
図7、
図9、
図10、
図12においては、穿孔機材の断面ハッチングは省略する。
[3-1]第1管切断工程
図7に示す第1管切断工程の初期設定では、位置変更アタッチメント6は、偏芯ケース部62の上下方向中心線が第1穿孔中心位置P1(
図7では右側)上に位置する向き姿勢で作業用開閉弁3にフランジ接合されている。この状態で、
図8に示すように、作業用開閉弁3の作業弁体3Dを開弁操作し、切断装置4のホールソー40及びセンタードリル45を駆動回転させながら下方に送り込む。
ホールソー40のセンタードリル45は、
図8に示すように、既設水道管1の管軸芯Xを通る鉛直方向の中心平面Yに対して管横断方向の一側方(
図8では右側)に偏位した第1穿孔中心位置P1を穿孔する。この第1穿孔中心位置P1を穿孔するセンタードリル45を中心にホールソー40が切削回転し、既設水道管1の管壁を穿孔する。
【0040】
ホールソー40の第1穿孔領域(平面視での第1穿孔面積)H1は、
図11に示すように、既設水道管1の中心平面Yよりも管横断方向の一方側(
図11では下側)に越え、且つ、既設水道管1の管横断方向の他側端の管周面における管軸芯X方向での第1穿孔開口幅W1が弁挿入設定幅となる領域に設定されている。また、第1穿孔中心位置P1でのホールソー40の第1回転切削軌跡(第1穿孔内周面)R1と既設水道管1の中心平面Yとが交差する二つの交差点間における管軸芯X方向での穿孔中央幅W3が、既設水道管1の管横断方向の他側端の第1穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1と同一又は略同一に設定されている。
【0041】
図9に示すように、第1穿孔中心位置P1で穿孔するホールソー40が穿孔終了位置にまで送り込まれたとき、既設水道管1から切断分離された一側方の切片1Aはホールソー40内に入り込んだ状態にある。この状態では既設水道管1の外径より大きなホールソーで切断する場合と比べると、既設水道管1内の流路横断面積の約半分を確保している。そのため、既設水道管1内の水の流れを阻害しにくい。ホールソー40内の切片1Aの上側管壁部は、センタードリル45の二箇所の係止体46で係止保持されている。そのため、
図10に示すように、切断完了位置にあるホールソー40を、位置変更アタッチメント6の内部空間と穿孔作業ケース41の内部空間とで形成される収納空間43に引き上げても、ホールソー40内の切片1Aは脱落することなく回収することができる。
【0042】
[3-2]第2管切断工程
図10に示すように、ホールソー40が収納空間43内の所定収納位置に復帰したとき、作業用開閉弁3の作業弁体3Dを閉弁操作する。その後、作業弁ケース3Aの上側フランジ3Cと位置変更アタッチメント6の下側フランジ61Aとのボルト・ナット63による締結を解除する。締結解除された位置変更アタッチメント6と穿孔作業ケース41と切断装置4とが一体的に組付けられている穿孔機材をクレーン等で切片回収作業場に吊下げ搬送し、ホールソー40内の切片1Aを撤去する。
【0043】
その後、穿孔機材の位置変更アタッチメント6を作業弁ケース3Aに対応するフランジ接合位置に吊下げ搬送する。このとき、
図12に示すように、位置変更アタッチメント6を、偏芯ケース部62の上下方向中心線が第2穿孔中心位置P2上に位置する向き姿勢で作業用開閉弁3の上側フランジ3Cにフランジ接合する。つまり、作業用開閉弁3に対して位置変更アタッチメント6を180度反転して付け替えることにより、ホールソー40の回転軸芯が第1穿孔中心位置P1に対応する第1管切断工程の第1取付け位置から、ホールソー40の回転軸芯が第2穿孔中心位置P2に対応する第2管切断工程の第2取付け位置に変更する。
【0044】
この状態で、
図12に示すように、作業用開閉弁3の作業弁体3Dを開弁操作し、切断装置4のホールソー40を駆動回転させながら下方に送り込む。
ホールソー40のセンタードリル45は、既設水道管1の管軸芯Xを通る中心平面Yに対して管横断方向の他側方(
図12では左側)に偏位した第2穿孔中心位置P2を穿孔する。この第2穿孔中心位置P2を穿孔するセンタードリル45を中心にホールソー40が切削回転し、既設水道管1の管壁を穿孔する。
【0045】
ホールソー40の第2穿孔領域(平面視での第2穿孔面積)H2は、
図13に示すように、既設水道管1の中心平面Yよりも管横断方向の他方側(
図13では上側)に越え、且つ、既設水道管1の管横断方向の一側端の管周面における管軸芯X方向での第2穿孔開口幅W2が弁挿入設定幅となる領域に設定されている。また、第1穿孔中心位置P1でのホールソー40の第1回転切削軌跡(第1穿孔内周面)R1と第2穿孔中心位置P2でのホールソー40の第2回転切削軌跡(第2穿孔内周面)R2とが交差する二つの交差点間における管軸芯X方向での穿孔中央幅W3が、既設水道管1の管横断方向両側端の第1穿孔開口幅W1及び第2穿孔開口幅W2と同一又は略同一に設定されている。
【0046】
上述のように、本実施形態では、既設水道管1の半径よりも大で、且つ、既設水道管1の外径よりも小なる刃径(刃先径)D1のホールソー40を用いて、管切断工程を、既設水道管1の管軸芯Xを通る鉛直方向の中心平面Yに対して管横断方向の一側方に偏位した第1穿孔中心位置P1での第1管切断工程と、既設水道管1の管軸芯Xを通る鉛直方向の中心平面Yに対して管横断方向の他側方に偏位した第2穿孔中心位置P2での第2管切断工程との2回の穿孔作業を実行する。
【0047】
第1管切断工程では、中心平面Yに対して管横断方向の一側方に偏位した第1穿孔中心位置P1でのホールソー40の切削回転により、ホールソー40の第1穿孔領域(平面視での第1穿孔面積)が中心平面Yよりも管横断方向の他方側に越え、且つ、既設水道管1の管横断方向の一側端の管周面における管軸芯X方向での第1穿孔開口幅W1が弁挿入設定幅となる状態で、既設水道管1を切断することができる。
次の第2管切断工程では、中心平面Yに対して管横断方向の他側方に偏位した第2穿孔中心位置P2でのホールソー40の切削回転により、ホールソー40の第2穿孔領域(平面視での第2穿孔面積)H2が既設水道管1の中心平面Yよりも管横断方向の一方側に越え、第1管切断工程で形成された穿孔に管横断方向で連通する。さらに、既設水道管1の管横断方向の他側端の管周面における管軸芯X方向での第2穿孔開口幅W2が弁挿入設定幅となる状態で、既設水道管1を切断分離することができる。
【0048】
これにより、既設水道管1の外径よりも大きな刃径のホールソー40を用いた1回の穿孔作業と比較して、既設水道管1の切断面積が小さく、且つ、ホールソー40の切断時の駆動トルクも小さくなるため、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
また、既設水道管1の半径よりも小さな刃径のホールソー40を用いた3回の穿孔作業と比較して、切断工程を能率良く、且つ、施工不良を抑制した状態で実行することができる。
しかも、既設水道管1の半径よりも大きな刃径D1のホールソー40を用いるので、既設水道管1の管横断方向両側端の第1穿孔開口幅W1及び第2穿孔開口幅W2を、弁体24を備えた内弁箱23の管軸芯X方向での挿入幅に対応した任意の弁挿入設定幅に設定することができる。これにより、既設水道管1の半径よりも小さな刃径のホールソー40を用いた3回の穿孔作業と比較して、弁挿入設定幅の設定範囲の拡大を図ることができる。
【0049】
さらに、第1穿孔中心位置P1及び第2穿孔中心位置P2でのホールソー40の回転軌跡の交差点間における管軸芯X方向での穿孔中央幅W3が、例えば、既設水道管1の管横断方向両側端の第1穿孔開口幅W1及び第2穿孔開口幅W2よりも大に設定されている場合と比較して、既設水道管1の切断面積が小さく、且つ、ホールソー40の切断時の駆動トルクも小さくなるため、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
【0050】
尚、第1管切断工程及び第2管切断工程では、ホールソー40の切削回転に伴って発生した切粉(切削屑)を外部に排出する切粉排出作業工程が実行される。
【0051】
[4]切断装置撤去工程
図12に示すように、第2穿孔中心位置P2で穿孔するホールソー40が穿孔終了位置にまで送り込まれたとき、既設水道管1から切断分離された他側方の切片1Aはホールソー40内に入り込んだ状態にある。この状態では既設水道管1の外径より大きなホールソーで切断する場合と比べると、既設水道管1内の流路横断面積の約半分を確保している。そのため、1回目の穿孔作業時と同様に、既設水道管1内の水の流れを阻害しにくい。
ホールソー40内の切片1Aの上側管壁部は、センタードリル45の二箇所の係止体46で係止保持されている。そのため、穿孔終了位置にあるホールソー40を、切片1Aと一緒に位置変更アタッチメント6及び穿孔作業ケース41内の収納空間43に確実に引き上げることができる。
【0052】
ホールソー40が収納空間43内の所定収納位置に復帰したとき、作業用開閉弁3の作業弁体3Dを閉弁操作する。その後、作業弁ケース3Aの上側フランジ3Cと位置変更アタッチメント6の下側フランジ61Aとのボルト・ナット63による締結を解除する。締結解除された位置変更アタッチメント6と穿孔作業ケース41と切断装置4とが一体的に組付けられている穿孔機材を作業用開閉弁3から撤去する。
【0053】
[5]弁体装着工程
作業用開閉弁3に、図示は省略するが、内弁箱23を収納可能な作業ハウジング及び作業ハウジング内の内弁箱23を昇降自在に支持する昇降機構を備えた弁挿入機を取付ける。その後、作業用開閉弁3の作業弁体3Dを開弁操作し、弁挿入機の昇降機構を駆動して内弁箱23を下方に送り込む。内弁箱23は、
図14に示すように、弁箱20の弁体装着部21の弁体挿入口22を通して既設水道管1の切断端面1aに触れない状態で所定の弁体装着位置まで挿入される。
この時、弁体装着部21の弁箱フランジ21Aには、内弁箱23の弁蓋部23Bに形成されているボルト挿通孔23bに上下方向で相対向するネジ孔21aが形成されている。この弁箱フランジ21Aのネジ孔21aに、弁蓋部23Bのボルト挿通孔23bに下方から係入して、内弁箱23の挿入位置を確定する挿入ガイドボルト33が脱着自在に螺合されている。
弁箱20の弁体装着部21の弁箱フランジ21Aと内弁箱23の弁蓋部23Bとの締結は、弁蓋部23Bのボルト挿通孔23bに対して上方から差し入れた締結ボルト(図示省略)を弁箱フランジ21Aのネジ孔21aに螺合することにより実行される。
尚、管切断工程では、弁箱フランジ21Aのネジ孔21aに止水ボルト34が脱着自在に装着される。
【0054】
そして、
図14、
図15に示すように、弁箱20の弁体装着部21の弁箱フランジ21Aと内弁箱23の弁蓋部23Bとの締結が完了すると、弁体装着部21の弁箱フランジ21Aから作業弁アタッチメント5及び作業用開閉弁3を撤去する。
【0055】
次に、本実施形態の第1実施例を、
図13に基づいて説明する。
この第1実施例では、既設水道管1の一例である鋳鉄管の口径DがΦ600(外径630.8mm)、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2が300mm、穿孔中央幅W3が300mmとする。
そして、第1管切断工程と第2管切断工程との2回の穿孔作業の場合は、ホールソー40の刃径D1は440mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が440/300≒1.47となる。
この第1実施例では、既設水道管1の半径よりも大きな刃径D1のホールソー40を用いた2回の穿孔作業において、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1.1~1.5の範囲内にあるので、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2の設定範囲の拡大を図りながら、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
しかし、1回の穿孔作業の場合は、
図13に示すように、ホールソー40の刃径D2は700mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D2を分子とする比率が700/300≒2.33となる。
また、
図13の斜線で示すように、2回の穿孔作業の方が1回の穿孔作業よりも既設水道管1の切断面積が小さなり、ホールソー40の切断時の駆動トルクも小さくなる。
【0056】
次に、本実施形態の第2実施例を、
図17(a)に基づいて説明する。
この第2実施例では、既設水道管1の一例である鋳鉄管の口径DがΦ1500(外径1554mm)、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2が700mm、穿孔中央幅W3が700mmとする。
そして、第1管切断工程と第2管切断工程との2回の穿孔作業の場合は、ホールソー40の刃径D1は1050mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1050/700=1.5となる。
この第2実施例では、既設水道管1の半径よりも大きな刃径D1のホールソー40を用いた2回の穿孔作業において、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1.1~1.5の範囲内にあるので、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2の設定範囲の拡大を図りながら、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
しかし、1回の穿孔作業の場合は、
図17(a)に示すように、ホールソー40の刃径D2は1710mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D2を分子とする比率が1710/700≒2.44となる。
また、
図17(a)の斜線で示すように、2回の穿孔作業の方が1回の穿孔作業よりも既設水道管1の切断面積が小さなり、ホールソー40の切断時の駆動トルクも小さくなる。
【0057】
次に、本実施形態の第3実施例を、
図17(b)に基づいて説明する。
この第3実施例では、既設水道管1の一例である鋳鉄管の口径DがΦ1500(外径1554mm)、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2が1000mm、穿孔中央幅W3が1000mmとする。
そして、第1管切断工程と第2管切断工程との2回の穿孔作業の場合は、ホールソー40の刃径D1は1280mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1280/1000=1.28となる。
この第3実施例では、既設水道管1の半径よりも大きな刃径D1のホールソー40を用いた2回の穿孔作業において、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1.1~1.5の範囲内にあるので、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2の設定範囲の拡大を図りながら、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
しかし、1回の穿孔作業の場合は、
図17(b)に示すように、ホールソー40の刃径D2は1860mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D2を分子とする比率が1860/1000=1.86となる。
また、
図17(b)の斜線で示すように、2回の穿孔作業の方が1回の穿孔作業よりも既設水道管1の切断面積が小さなり、ホールソー40の切断時の駆動トルクも小さくなる。
【0058】
次に、本実施形態の第4実施例を、
図17(c)に基づいて説明する。
この第4実施例では、既設水道管1の一例である鋳鉄管の口径DがΦ1500(外径1554mm)、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2が1300mm、穿孔中央幅W3が1300mmとする。
そして、第1管切断工程と第2管切断工程との2回の穿孔作業の場合は、ホールソー40の刃径D1は1520mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1520/1300≒1.17となる。
この第4実施例では、既設水道管1の半径よりも大きな刃径D1のホールソー40を用いた2回の穿孔作業において、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1.1~1.5の範囲内にあるので、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2の設定範囲の拡大を図りながら、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
しかし、1回の穿孔作業の場合は、
図17(c)に示すように、ホールソー40の刃径D2は2030mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D2を分子とする比率が2030/1300=1.56となる。
また、
図17(c)の斜線で示すように、2回の穿孔作業の方が1回の穿孔作業よりも既設水道管1の切断面積が小さなり、ホールソー40の切断時の駆動トルクも小さくなる。
【0059】
次に、本実施形態の第5実施例を、
図18に基づいて説明する。
この第5実施例では、既設水道管1の一例である鋳鉄管の口径DがΦ2000(外径2061mm)、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2が1400mm、穿孔中央幅W3が1400mmとする。
そして、第1管切断工程と第2管切断工程との2回の穿孔作業の場合は、ホールソー40の刃径D1は1740mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1740/1400≒1.24となる。
この第5実施例では、既設水道管1の半径よりも大きな刃径D1のホールソー40を用いた2回の穿孔作業において、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D1を分子とする比率が1.1~1.5の範囲内にあるので、第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2の設定範囲の拡大を図りながら、穿孔機材の小型化、軽量化を図ることができる。
しかし、1回の穿孔作業の場合は、
図18に示すように、ホールソー40の刃径D2は2500mmとなる。
既設水道管1の管横断方向両側端における第1・第2穿孔開口幅(弁挿入設定幅)W1、W2を分母とし、ホールソー40の刃径D2を分子とする比率が2500/1400≒1.78となる。
また、
図18の斜線で示すように、2回の穿孔作業の方が1回の穿孔作業よりも既設水道管1の切断面積が小さなり、ホールソー40の切断時の駆動トルクも小さくなる。
【0060】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、弁の一例としてバタフライ弁2を用いたが、本発明の技術は、水道用ソフトシール仕切弁等の他の形態の弁の設置工法にも適用することができる。
【0061】
(2)上述の実施形態では、ホールソー40の回転軸芯が第1穿孔中心位置P1に対応する第1取付け位置と、ホールソー40の回転軸芯が第2穿孔中心位置P2に対応する第2取付け位置に変更自在に構成するにあたって、作業用開閉弁3に対して位置変更アタッチメント6を180度反転して付け替える方法を採用した。しかしながら、この構成に限定されるものではない。例えば、作業用開閉弁3に対して位置変更アタッチメント6を管横断方向にスライド移動させて、第1取付け位置と第2取付け位置に選択的に変更可能に構成しても良い。
【0062】
(3)上述の実施形態では、
図4、
図5に示すように、弁体装着部21の弁箱フランジ21Aに、弁蓋部23Bのフランジ接合面との間を密封する内側のOリング27と、作業弁アタッチメント5の第1フランジ5Aとの接合面間を密封する外側のOリング35を設けたが、この配置構成に限定されない。例えば、内側のOリング27を、内弁箱23の弁蓋部23Bのフランジ接合面に設けてもよい。また、外側のOリング35を、作業弁アタッチメント5の第1フランジ5Aのフランジ接合面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 既設管(既設水道管)
3 作業用開閉弁
4 切断装置
5 作業弁アタッチメント
5A 第1フランジ
5B 第2フランジ
6 位置変更アタッチメント
20 弁箱
21 弁体装着部
24 弁体
40 ホールソー
D1 刃径
P1 第1穿孔中心位置
P2 第2穿孔中心位置
W1 穿孔開口幅(第1穿孔開口幅)
W2 穿孔開口幅(第2穿孔開口幅)
W3 穿孔中央幅
H1 穿孔領域(1穿孔領域)
H2 穿孔領域(2穿孔領域)
X 管軸芯
Y 中心平面