(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117803
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 11/14 20060101AFI20220804BHJP
F16D 1/02 20060101ALI20220804BHJP
B21D 5/08 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
F16D11/14
F16D1/02 100
B21D5/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014508
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博文
(72)【発明者】
【氏名】住貞 健次
(72)【発明者】
【氏名】吉村 一八
【テーマコード(参考)】
3J056
4E063
【Fターム(参考)】
3J056AA03
3J056CB03
3J056DA02
3J056FA17
3J056GA26
4E063BB05
4E063EA06
(57)【要約】
【課題】成形スタンドを交換する作業効率を改善する。
【解決手段】複数の成形スタンド111,112を並び方向Fに互いに連結するクラッチ装置であって、ロールフォーミング成形機における成形順において上流側の成形スタンド111の軸部111aに取り付けられるクラッチ部材10と、下流側の成形スタンド112の軸部112aに取り付けられクラッチ部材10と係合自在なクラッチ部材20と、クラッチ部材10及びクラッチ部材20同士の離間移動を規制するように一方の軸部112aに相対回動不能に取り付けられる規制部材30とを備え、成形スタンド112の交換時に、規制部材30は、軸部112aから取り外し可能であり、クラッチ部材10,20の一方は、軸部111aに固定された状態において、クラッチ部材10,20の他方は、クラッチ部材10,20の一方に対して軸部112aに沿って離間自在であることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成形スタンドを有するロールフォーミング成形機において、前記成形スタンドを並び方向に互いに連結するクラッチ装置であって、
互いに隣接する前記成形スタンドのうち、前記ロールフォーミング成形機における成形順において上流側に位置する上流側成形スタンドの軸部に取り付けられて該軸部と共に回転する第1クラッチ部材と、
前記上流側成形スタンドに対して下流側に位置する下流側成形スタンドの軸部に取り付けられて該軸部と共に回転する、前記第1クラッチ部材と係合自在な第2クラッチ部材と、
前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材同士の離間移動を規制するように、前記上流側成形スタンド及び前記下流側成形スタンドの少なくとも一方の前記軸部に相対回動不能に取り付けられる規制部材と、
を備え、
前記成形スタンドの交換時に、
前記規制部材は、前記軸部から取り外し可能であり、かつ
前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の一方は、前記軸部に固定された状態において、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の他方は、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の一方に対して前記軸部に沿って離間自在である
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材は、互いに面する側において互いに係合するようになっており、
前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の一方は、前記互いに面する側に他方に向かって突出する少なくとも1つの凸部を有し、
前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の他方は、前記互いに面する側に前記凸部を収容する凹部を有し、
前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の係合方向における前記規制部材の厚さは、前記凸部との前記凹部との係合長さよりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記規制部材は、2つの半割部材により形成されており、
前記2つの半割部材は、前記軸部に取り付けられた状態において、互いに分離不能に連結されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチ装置。
【請求項4】
前記軸部に取り付けられた状態において、前記規制部材の外周面は、前記第1クラッチ部材又は前記第2クラッチ部材の外周面に対して、
面一を形成している、又は、
前記軸部の側に位置する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のクラッチ装置。
【請求項5】
前記第1クラッチ部材は、前記上流側成形スタンドの軸部に沿って移動不能に取り付けられ、
前記第2クラッチ部材は、前記下流側成形スタンドの前記軸部に沿って移動可能に取り付けられており、
前記規制部材は、第2クラッチ部材と前記下流側成形スタンドとの間で前記軸部に相対回動不能に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のクラッチ装置。
【請求項6】
前記第2クラッチ部材は、前記成形スタンドを並び方向において最も下流側に位置する成形スタンドに取り付けられることを特徴とする請求項5に記載のクラッチ装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のクラッチ装置により連結された前記成形スタンドを交換する方法であって、
前記規制部材を前記軸部から取り外す工程と、
前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の一方を移動させて互いの係合を解除する工程と、
前記下流側成形スタンドを吊り上げる工程と、
新たな成形スタンドを設置する工程と、
を有することを特徴とする成形スタンドを交換する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ装置、特に、複数の成形スタンドを有するロールフォーミング成形機において、成形スタンドを並び方向に互いに連結するクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の板材に所定の断面形状を付与するように曲げ成形するロールフォーミング成形機が知られている。ロールフォーミング成形機は、成形スタンドを長手方向に複数段、タンデムに配置して、金属製の板材に順次曲げ成形を施す(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ロール成形機の駆動方式には、例えば、リンクギヤ方式がある。リンクギヤ方式において各成形スタンドは、直列に配設したウォーム軸にチェーンカップリング等の軸継手により互いに動力が伝達されるように連結されている。これにより、各成形スタンドのロール軸に駆動力が伝達されるようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-184453号公報
【特許文献2】特開昭54-109058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成形する製品に応じてロールフォーミング成形機に設置されている成形スタンドを適宜、交換する必要がある。例えば、リンクギヤ方式の駆動型のロールフォーミング成形機における成形スタンドを交換する場合、ロールと共に動力を伝達する軸を交換する必要がある。
【0006】
この場合、成形スタンドの軸同士を連結する軸継手から、成形スタンドの軸を抜く作業が必要になる。つまり、成形スタンドを並び方向に移動させて軸継手から軸を抜いた上で、高さ方向に吊り上げる必要があるため、作業効率を改善したいという需要があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、成形スタンドを交換する作業効率を改善する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るクラッチ装置は、複数の成形スタンドを有するロールフォーミング成形機において、前記成形スタンドを並び方向に互いに連結するクラッチ装置であって、互いに隣接する前記成形スタンドのうち、前記ロールフォーミング成形機における成形順において上流側に位置する上流側成形スタンドの軸部に取り付けられて該軸部と共に回転する第1クラッチ部材と、前記上流側成形スタンドに対して下流側に位置する下流側成形スタンドの軸部に取り付けられて該軸部と共に回転する、前記第1クラッチ部材と係合自在な第2クラッチ部材と、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材同士の離間移動を規制するように、前記上流側成形スタンド及び前記下流側成形スタンドの少なくとも一方の前記軸部に相対回動不能に取り付けられる規制部材と、を備え、前記成形スタンドの交換時に、前記規制部材は、前記軸部から取り外し可能であり、かつ前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の一方は、前記軸部に固定された状態において、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の他方は、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の一方に対して前記軸部に沿って離間自在であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るクラッチ装置において、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材は、互いに面する側において互いに係合するようになっており、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の一方は、前記互いに面する側に他方に向かって突出する少なくとも1つの凸部を有し、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の他方は、前記互いに面する側に前記凸部を収容する凹部を有し、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の係合方向における前記規制部材の厚さは、前記凸部との前記凹部との係合長さよりも大きい。
【0010】
本発明の一態様に係るクラッチ装置において、前記規制部材は、2つの半割部材により形成されており、前記2つの半割部材は、前記軸部に取り付けられた状態において、互いに分離不能に連結されている。
【0011】
本発明の一態様に係るクラッチ装置において、前記軸部に取り付けられた状態において、前記規制部材の外周面は、前記第1クラッチ部材又は前記第2クラッチ部材の外周面に対して、面一を形成している、又は、前記軸部の側に位置する。
【0012】
本発明の一態様に係るクラッチ装置において、前記第1クラッチ部材は、前記上流側成形スタンドの軸部に沿って移動不能に取り付けられ、前記第2クラッチ部材は、前記下流側成形スタンドの前記軸部に沿って移動可能に取り付けられており、前記規制部材は、第2クラッチ部材と前記下流側成形スタンドとの間で前記軸部に相対回動不能に取り付けられる。
【0013】
本発明の一態様に係るクラッチ装置において、前記第2クラッチ部材は、前記成形スタンドを並び方向において最も下流側に位置する成形スタンドに取り付けられる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る成形スタンドを交換する方法は、クラッチ装置により連結された前記成形スタンドを交換する方法であって、前記規制部材を前記軸部から取り外す工程と、前記第1クラッチ部材及び前記第2クラッチ部材の一方を移動させて互いの係合を解除する工程と、前記下流側成形スタンドを吊り上げる工程と、新たな成形スタンドを設置する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、成形スタンドを交換する作業効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ロールフォーミング成形機を示す概略図である。
【
図2】成形スタンドの駆動軸部同士を連結する軸継手による従来の連結形態を示す概略図である。
【
図3】成形スタンドの駆動軸部を互いに連結した状態における本実施の形態に係るクラッチ装置を示す図である。
【
図4A】第1クラッチ部材を第2クラッチ部材と係合する側から見た斜視図である。
【
図4B】第1クラッチ部材を軸線に直交する方向から見た側面図である。
【
図4C】第1クラッチ部材を軸線の延び方向において第2クラッチ部材と係合する側から見た正面図である。
【
図5A】第2クラッチ部材を第1クラッチ部材と係合する側から見た斜視図である。
【
図5B】第2クラッチ部材を軸線に直交する方向から見た側面図である。
【
図5C】第2クラッチ部材を軸線の延び方向において第1クラッチ部材と係合する側から見た正面図である。
【
図6A】規制リングを一方の側から見た斜視図である。
【
図6B】規制リングを軸線に直交する方向から見た側面図である。
【
図6C】規制リングを軸線の延び方向において一方の側から見た正面図である。
【
図7A】上流側成形スタンド及び下流側成形スタンドそれぞれの駆動軸部がクラッチ装置により連結された状態を示す図である。
【
図7B】規制リングを駆動軸部から取り外す工程を示す図である。
【
図7C】第1クラッチ部材と第2クラッチ部材との係合状態が解除する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、ロールフォーミング成形機100を示す概略図である。本実施の形態に係るクラッチ装置1は、例えば、リンクギヤ方式による駆動型のロールフォーミング成形機100に直列に配置された一部の成形スタンド110の駆動軸部を互いに連結させるものである。なお、成形スタンド自体は、公知のものであり、特に限定されない。
【0019】
ロールフォーミング成形機100は、平板状の鋼板Sを製品形状にロールフォーミング加工するものである。
図1に示すように、ロールフォーミング成形機100には、複数の成形スタンド110が鋼板Sの流れ方向Fに沿って複数段配置されている。なお、流れ方向Fは、成形スタンド110の並び方向に一致し、鋼板Sの成形順に相当する。
【0020】
図2は、成形スタンド111,112の駆動軸部111a,112a同士を連結する軸継手120による従来の連結形態を示す概略図である。例えば、ロールフォーミング成形機100の流れ方向Fにおいて直列に配置された成形スタンド110のうち、最も下流側における成形スタンド112を交換したい場合がある。流れ方向Fにおいて成形スタンド112の上流側において一つ前に位置する成形スタンド111の駆動軸部111aと成形スタンド112の駆動軸部112aとが、例えば、軸継手120により連結されている場合、成形スタンド112を流れ方向Fにおいて下流側に移動して、軸継手120から成形スタンド112における駆動軸部112aを抜く必要がある。
【0021】
しかしながら、ロールフォーミング成形機100が設置されている周辺の状況によっては、成形スタンド112の下流側には、他の設備置等が設置されていることがある。そのため、成形スタンド112を下流側に移動させるスペースがないことがある。
【0022】
図3は、成形スタンド111,112の駆動軸部111a,112aを互いに連結した状態における本実施の形態に係るクラッチ装置1を示す図である。本実施の形態に係るクラッチ装置1は、複数の成形スタンド110を有するロールフォーミング成形100において、成形スタンド111,112を並び方向Fに互いに連結し、互いに隣接する成形スタンド110のうち、ロールフォーミング成形機100における成形順において上流側に位置する上流側成形スタンド111の軸部(駆動軸部)111aに取り付けられて該軸部111aと共に回転する第1クラッチ部材10と、上流側成形スタンド111に対して下流側に位置する下流側成形スタンド112の軸部(駆動軸部)112aに取り付けられて該軸部112aと共に回転する、第1クラッチ部材10と係合自在な第2クラッチ部材20と、第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20同士の離間移動を規制するように、上流側成形スタンド111及び下流側成形スタンド112の少なくとも一方の軸部111a,112aに相対回動不能に取り付けられる規制部材(規制リング)30と、を備える。成形スタンド111,112の交換時に、規制部材30は、軸部111a,112aから取り外し可能であり、かつ第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20の一方は、軸部111a,112aに固定された状態において、第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20の他方は、第1クラッチ部材及び第2クラッチ部材の一方に対して軸部111a,112aに沿って離間自在であることを特徴とする。以下に、本実施の形態に係るクラッチ装置1について具体的に説明する。
【0023】
クラッチ装置1は、第1クラッチ部材10と、第2クラッチ部材20と、規制リング30と、を備える。クラッチ装置1の使用状態において、第1クラッチ部材10、第2クラッチ部材20及び規制リング30は、互いに同軸的に配置される。
図4Aは、第1クラッチ部材10を第2クラッチ部材20と係合する側から見た斜視図である。
図4Bは、第1クラッチ部材10を軸線xに直交する方向から見た側面図である。
図4Cは、第1クラッチ部材10を軸線xの延び方向において第2クラッチ部材20と係合する側から見た正面図である。
【0024】
第1クラッチ部材10は、ロールフォーミング成形機100における成形順において他の成形スタンド110に対して相対的に上流側に位置する上流側成形スタンド111の駆動軸部111aに取り付けられる。第1クラッチ部材10は、例えば、キー及びキー溝(図示せず)の関係において駆動軸部111aに相対回動不能に取り付けられる。
【0025】
上流側成形スタンド111の駆動軸部111aは、縮径部分111bと拡径部分111cとを有する(
図3参照)。縮径部分111bは、駆動軸部111aの先端の側、つまり、後述する下流側成形スタンド112の駆動軸部112aに対向する側の部分である。拡径部分111cは、下流側成形スタンド112とは反対の側で、縮径部分111bに連続する部分であり、縮径部分111bよりも径が大きく形成されている。第1クラッチ部材10は、縮径部分111bに取り付けられるようになっている。
【0026】
第1クラッチ部材10は、円筒形状の金属製の部材である。第1クラッチ部材10は、貫通孔11を有する。第1クラッチ部材10が駆動軸部111aに取り付けられた状態において、第2クラッチ部材20に面する面12と、この面12とは反対の側に面する面13との間で、中心を延在する軸線xに沿って第1クラッチ部材10を延在している。つまり、貫通孔11は、駆動軸部111aの縮径部分111bが挿通されるように形成されている。
【0027】
第1クラッチ部材10は、駆動軸部111aの縮径部分111bに取り付けられた状態において、面13が駆動軸部111aの拡径部分111cに接触しており、軸線xに沿った上流側成形スタンド111に向かう第1クラッチ部材10の移動は規制されている。
【0028】
貫通孔11は、凹部11aを有する。凹部11aは、貫通孔11の内周面において軸線xから離れる方向に径方向外側に凹に形成されている。凹部11aは、面12と面13との間で軸線xに沿って延在している。凹部11aは、駆動軸部111aの外周面に形成されたキー溝に嵌まり込んだキーを収容するように形成されている。これにより、駆動軸部111aに対する軸線xを中心とした第1クラッチ部材10の回動は防がれる。
【0029】
第1クラッチ部材10は、さらに貫通孔14を有する。貫通孔14は、径方向において凹部11aに対応する位置で、第1クラッチ部材10の外周面から凹部11aに向かって延在する。貫通孔14の内周面にはネジ山が形成されている。第1クラッチ部材10が駆動軸部111aに取り付けられた状態において、貫通孔14には、例えば、ボルト(図示せず)が螺合するように挿入される。ボルトは、挿入された状態において、径方向からキーに接触する。これにより、駆動軸部111aに対する軸線xに沿った第1クラッチ部材10の移動及び軸線xを中心とした第1クラッチ部材10の回動はより防がれる。
【0030】
第1クラッチ部材10は、後述する第2クラッチ部材20との係合の用に供される2つの係合凹部15を有する。係合凹部15はそれぞれ、面12の側で外縁部に形成されている。係合凹部15それぞれは、軸線xを挟んで対称的に配置されている。具体的には、係合凹部15は、凹部11aを挟んで対称的に配置されている。
【0031】
係合凹部15は、貫通孔11の周の一部に亘って形成されている。係合凹部15は、面12の側から面13の側に向かって凹状に形成されている。係合凹部15の軸線xに沿った延び量は、後述する第2クラッチ部材20における係合凸部25の突出量tと同じ又は係合凸部25の突出量より僅かに大きくなっている。係合凹部15は、軸線xに沿って面12の側及び径方向において外側に開口するように形成されている。
【0032】
図5Aは、第2クラッチ部材20を第1クラッチ部材10と係合する側から見た斜視図である。
図5Bは、第2クラッチ部材20を軸線xに直交する方向から見た側面図である。
図5Cは、第2クラッチ部材20を軸線xの延び方向において第1クラッチ部材10と係合する側から見た正面図である。
【0033】
第2クラッチ部材20は、ロールフォーミング成形機100における成形順において下流側に位置する下流側成形スタンド112の駆動軸部112aに取り付けられる。第2クラッチ部材20は、例えば、キー及びキー溝(図示せず)の関係において駆動軸部112aに相対回動不能に取り付けられる。
【0034】
下流側成形スタンド112の駆動軸部112aは、縮径部分112bと拡径部分112cとを有する(
図3参照)。縮径部分112bは、駆動軸部112aの先端の側、つまり、上流側成形スタンド111の駆動軸部111aに対向する側の部分である。拡径部分112cは、上流側成形スタンド111とは反対の側で、縮径部分112bに連続する部分であり、縮径部分112bよりも径が大きく形成されている。第2クラッチ部材20は、縮径部分112bに取り付けられるようになっている。
【0035】
第2クラッチ部材20は、円筒形状の金属製の部材である。第2クラッチ部材20は、貫通孔21を有する。第2クラッチ部材20が駆動軸部112aに取り付けられた状態において、第1クラッチ部材10に面する面22と、この面22とは反対の側に面する面23との間で、中心を延在する軸線xに沿って第2クラッチ部材20を延在している。つまり、貫通孔21は、駆動軸部112aの縮径部分112bが挿通されるように形成されている。
【0036】
第2クラッチ部材20は、駆動軸部112aの縮径部分112bに取り付けられた状態において、面23が後述する規制リング30に接触しており、下流側成形スタンド112に向かう軸線xに沿った第2クラッチ部材20の移動は規制されている。
【0037】
貫通孔21は、凹部21aを有する。凹部21aは、貫通孔の内周面において軸線xから離れる方向に径方向外側に凹に形成されている。凹部21aは、面22と面23との間で軸線xに沿って延在している。凹部21aは、駆動軸部112aの外周面に形成されたキー溝に嵌まり込んだキーを収容するように形成されている。これにより、駆動軸部112aに対する軸線xを中心とした第2クラッチ部材20の回動は防がれる。
【0038】
第2クラッチ部材20は、さらに貫通孔24を有する。貫通孔24は、径方向において凹部21aに対応する位置で、第2クラッチ部材20の外周面から凹部21aに向かって延在する。貫通孔24の内周面にはネジ山が形成されている。第2クラッチ部材20が駆動軸部112aに取り付けられた状態において、貫通孔24には、例えば、ボルト(図示せず)が螺合するように挿入される。ボルトは、挿入された状態において、径方向からキーに接触する。これにより、駆動軸部112aに対する軸線xに沿った第2クラッチ部材20の移動及び軸線xを中心とした第2クラッチ部材20の回動はより防がれる。
【0039】
第2クラッチ部材20は、第1クラッチ部材10との係合の用に供される2つの係合凸部25を有する。係合凸部25はそれぞれ、面22の側で外縁部に形成されている。係合凸部25それぞれは、軸線xを挟んで対称的に配置されている。具体的には、係合凸部25は、凹部21aを挟んで対称的に配置されている。
【0040】
係合凸部25は、貫通孔21の周の一部に亘って形成されている。係合凸部25は、面22から面23とは反対の側に向かって凸に形成されている。軸線xに沿った係合凸部25の突出量tは、第1クラッチ部材10における係合凹部15の凹み量と同じ又は係合凹部15の凹み量より僅かに小さくなっている。
【0041】
第1クラッチ部材10と第2クラッチ部材20とが係合した状態において、係合凸部25は、第1クラッチ部材10の係合凹部15に嵌まり込んでいて、第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20は、互いに相対回転不能に連結される。これにより、上流側成形スタンド111の駆動軸部111a及び下流側成形スタンド112の駆動軸部112aは、ロールフォーミング成形機100における駆動力を伝達するように連結されている。なお、第2クラッチ部材20の外径R2は、第1クラッチ部材10の外径R1と同じ又は略同じである。
【0042】
図6Aは、規制リング30を一方の側から見た斜視図である。
図6Bは、規制リング30を軸線xに直交する方向から見た側面図である。
図6Cは、規制リング30を軸線xの延び方向において一方の側から見た正面図である。
【0043】
規制リング30は、ロールフォーミング成形機100における成形順において下流側に位置する下流側成形スタンド112の駆動軸部112aに取り付けられる。規制リング30は、例えば、キー及びキー溝(図示せず)の関係において駆動軸部112aの縮径部分112bに相対回動不能に取り付けられる。規制リング30は、駆動軸部112aに取り付けられた状態において、第2クラッチ部材20と駆動軸部112aの拡径部分112cとの間で駆動軸部112aの縮径部分112bに取り付けられる。
【0044】
規制リング30は、例えば、平面視円形のリング状の金属製の部材である。規制リング30は、駆動軸部112aの縮径部分112bに取り付けられた状態において、第2クラッチ部材20に面する面30aは第2クラッチ部材20に接触し、この面30aとは反対の側に面する面30bが駆動軸部112aの拡径部分112cに接触している。これにより、規制リング30は、下流側成形スタンド112に向かう軸線xに沿った第2クラッチ部材20の移動を規制している。なお、規制リング30は、駆動軸部112aに取り付けられた状態において、面30bにおいて駆動軸部112aの拡径部分112cとの間に僅かな隙間をもって接触していなくてもよい。
【0045】
規制リング30は、2つの半割部材31,33を有する。半割部材31,33は、それぞれリング状の円形部材を半分に割った形状を有する。半割部材31,33はそれぞれ、平面視半円形状に形成されている。規制リング30には、半割部材31,33を互いに連結させた状態において、孔32が形成されている。規制リング30は、孔32の内周面で、駆動軸部112aの外周面に接触するように取り付けられる。
【0046】
半割部材31は、内周面に凹部31aを有する。凹部31aは、半割部材31の内周面において軸線xから離れる方向に径方向外側に凹に形成されている。凹部31aは、面30aと面30bとの間で軸線xに沿って延在している。凹部31aは、駆動軸部112aの外周面に形成されたキー溝に嵌まり込んだキーを収容するように形成されている。これにより、駆動軸部112aに対する軸線xを中心とした規制リング30の回動は防がれる。
【0047】
半割部材31は、凹部31aを挟んで対称的に2つの孔31dを有する。孔31dは、半割部材31の周方向に延在する外周面から径方向に、他方の半割部材33と接触する部分に向かって延在している。孔31dにはそれぞれ、半割部材31と他方の半割部材33とを連結するための、例えば、ボルトが挿通される。
【0048】
半割部材33は、軸線xを挟んで対称的に2つの孔33aを有する。孔33aは、半割部材33の周方向に延在する外周面から径方向に、半割部材31と接触する部分に向かって延在している。孔33aにはそれぞれ、半割部材33と半割部材31とを連結するための、例えば、ボルトが挿通される。孔33aの内周面には、例えば、ネジ山が形成されている。2つの半割部材31,33が互いに連結された状態において、半割部材31の孔31d及び半割部材33の孔33aは、互いに連通している。
【0049】
規制リング30の軸線xに沿って延びる厚さdは、第2クラッチ部材20の係合凸部25の軸線xに沿った延び量よりも大きく形成されている(t<d)。また、規制リング30の外径R3は、第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20の外径R1,R2よりも小さい(R1=R2>R3)。
【0050】
次に、下流側成形スタンド112の交換方法について説明する。
図7Aは、規制リング30を駆動軸部112aから取り外す工程を示す図である。
図7Bは、第1クラッチ部材10と第2クラッチ部材20との係合状態を解除する工程を示す図である。
図7Cは、下流側成形スタンド112を吊り上げる工程を示す図である。
【0051】
ロールフォーミング成形機100において成形する製品に応じて、成形スタンド110を交換する必要がある。ロールフォーミング成形機100が設置されている現場によっては、成形スタンド110の並び方向F(成形順)において最も下流側にある下流側成形スタンド112周辺に他の設備等が設置されていることがある。このため、下流側成形スタンド112の交換時には、並び方向Fにおいて下流側成形スタンド112を移動させるスペースがないことがある。
【0052】
例えば、従来の軸継手120(
図2参照)を介して2つの成形スタンド111,112を連結する場合、下流側成形スタンド112を並び方向Fに移動させて軸継手120から抜く作業が必要になるため、下流側成形スタンド112周辺の他の設備も移動させる必要があった。
【0053】
これに対して、本実施の形態に係るクラッチ装置1によれば、下流側成形スタンド112の並び方向Fにおける移動は不要になる。まず、規制リング30を駆動軸部112aから外す。2つの半割部材31,33を互いに連結しているボルトを外して、2つの半割部材31,33に分解し、駆動軸部112aから規制リング30を外す(
図7A参照)。
【0054】
規制リング30を取り外すことにより、第2クラッチ部材20と、駆動軸部112aの拡径部分112cとの間に隙間Sが確保される。隙間Sは、少なくとも規制リング30の厚さd以上に相当するスペースである。
【0055】
次いで、第2クラッチ部材20の貫通孔24に挿通されているボルトを抜き、第2クラッチ部材20を軸線xに沿って、第1クラッチ部材10から離れる方向に移動させる。第2クラッチ部材20は、少なくとも規制リング30の厚さdより大きい隙間Sの分だけ移動する。これにより、第2クラッチ部材20の係合凸部25は、第1クラッチ部材10の係合凹部15から外れる(
図7B参照)。
【0056】
第1クラッチ部材10と第2クラッチ部材20との係合が解除された状態において、上流側成形スタンド111と下流側成形スタンド112との間の機械的な連結は全て解除される。次いで、下流側成形スタンド112を所定の機械により高さ方向Hに吊り上げて撤去する(
図7C参照)。
【0057】
新たな下流側成形スタンド112を設置する場合、駆動軸部112aに取り付けられた第2クラッチ部材20は、隙間Sを埋めるように、例えば、拡径部分112cに面23が接触するようになっている。上流側成形スタンド111に対して下流側成形スタンド112を所定の位置に設置した後、第1クラッチ部材10に対して第2クラッチ部材20を軸線xに沿って接近させるように移動させる。
【0058】
第2クラッチ部材20の係合凸部25を第1クラッチ部材10の係合凹部15に嵌め込んだ後に貫通孔24にボルトを挿通する。次いで、第2クラッチ部材20と駆動軸部112aの拡径部分112cとの間の隙間Sに規制リング30を設置する。半割部材31,33をそれぞれ縮径部分112bを挟むように接近させて、互いにボルトにより連結する。これにより、新たな下流側成形スタンド112の設置、及び上流側成形スタンド111との連結が完了する。
【0059】
以上のようなロールフォーミング成形機100の成形順において最も下流側に位置する下流側成形スタンド112の駆動軸部112a及び1つ上流側の上流側成形スタンド111の駆動軸部111aをクラッチ装置1により連結することにより、例えば、ロールフォーミング成形機100の下流側成形スタンド112の交換作業を迅速に行うことができる。下流側成形スタンド112を並び方向Fに移動させなくても、クラッチ装置1の第2クラッチ部材20を軸線xに沿って移動させることにより、上流側成形スタンド111との連結を解除することができる。これにより、下流側成形スタンド112を設置状態において高さ方向Hに吊り上げるだけで交換作業を実施することができる。
【0060】
さらに、規制リング30により、クラッチ装置1における係合状態は、ロールフォーミング成形機100の稼働中には確実に維持することができる。規制リング30の厚さdは、第2クラッチ部材20の係合凸部25の突出量tよりも大きく設定されている(d>t)ので、規制リング30を駆動軸部112aから取り外せば、第2クラッチ部材20の係合凸部25が第1クラッチ部材10の係合凹部15から外れる距離だけ移動することができるようになる。
【0061】
さらに、規制リング30は、2つの半割部材31,33を互いに連結することにより形成されているので、駆動軸部112aに対する規制リング30の脱着を容易に行うことができる。
【0062】
さらに、規制リング30の外径R3が、第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20の外径R1,R2よりも小さく形成されている。これにより、少なくとも第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20と設置面との間のスペースよりも大きなスペースが確保されることになっており、駆動軸部112aからの規制リング30の取外しが容易になる。
【0063】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。上記実施の形態において規制リング30は、下流側成形スタンド112に設けられていたが、上流側成形スタンド111に設けてもよい。この場合、第1クラッチ部材10を軸線xに沿って移動させる。
【0064】
また、上記実施の形態において規制リング30は、下流側成形スタンド112の駆動軸部112aにのみ取り付けられていたが、上流側成形スタンド111の駆動軸部111a及び下流側成形スタンド112の駆動軸部112aの両方に取り付けられていてもよい。この場合、2つの規制リング30のいずれか一方を選択して取り外せばよい。
【0065】
また、上記実施の形態において規制リング30の外径R3は、第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20の外径R1,R2よりも小さく形成されていたが、規制リング30の外周面が、第1クラッチ部材10及び第2クラッチ部材20の外周面と面一を形成するようになっていてもよい(R1=R2=R3)。
【符号の説明】
【0066】
1…クラッチ装置、10…第1クラッチ部材、11…貫通孔、11a…凹部、12,13…面、14…貫通孔、15…係合凹部、20…第2クラッチ部材、21…貫通孔、21a…凹部、22,23…面、24…貫通孔、25…係合凸部、30…規制リング(規制部材)、30a,30b…面、31,33…半割部材、31a…凹部、31d…孔、32…孔、33a…孔、100…ロールフォーミング成形機、110…成形スタンド、111…上流側成形スタンド、111a…駆動軸部(軸部)、111b…縮径部分、111c…拡径部分、112…下流側成形スタンド、112a…駆動軸部(軸部部)、112b…縮径部分、112c…拡径部分、120…軸継手