(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117804
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】ファン付き上着
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20220804BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20220804BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
A41D27/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014509
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】516327457
【氏名又は名称】株式会社バートル
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】大崎 敬一
【テーマコード(参考)】
3B011
3B035
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC03
3B011AC17
3B011AC18
3B011AC21
3B035AA03
3B035AA04
3B035AA05
3B035AB03
3B035AC02
(57)【要約】
【課題】
本発明は、刈払機を使用する際、ファン付き上着を着用しても快適に作業ができる上着を提供することを目的とする。
【解決手段】
ファン付き上着1は、空気取り込み口8が開口した後身頃3を有し、脇身頃4は上脇身頃4a、下脇身頃4bに分かれており、上脇身頃4aが外側に配置されて下脇身頃4bと重なる重ね合わせ箇所11が形成され、重ね合わせ箇所11内において外側伸縮性生地10aと内側伸縮性生地10bが配置されている。外側伸縮性生地10aと内側伸縮性生地10bの間を通して、刈払機を肩にかけるベルトの連結部が通される。また、肩ヨーク7には、外部へ空気を出す通風路9が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と、後身頃と前記前身頃と後身頃との間に脇身頃を縫合されたファン付き上着であって、
前記後身頃は空気を取り込むファンが取り付け可能な空気取り込み口が設けられており、
前記脇身頃は上脇身頃、下脇身頃に分かれており、前記上脇身頃と前記下脇身頃は前記上脇身頃が外側に配置されて前記脇身頃の中央で重なり合う重ね合わせ箇所が設けられており、
前記重ね合わせ箇所の範囲内に、前記脇身頃と同じ大きさの幅を持つ外側伸縮性生地と内側伸縮性生地とが配置され、
前記外側伸縮性生地は前記重ね合わせ箇所の上側で前記上脇身頃と縫合されており、
前記内側伸縮性生地は前記重ね合わせ箇所の上側で前記下脇身頃と縫合されており、また、
前記外側伸縮性生地と内側伸縮性生地同士は、前記重ね合わせ箇所の下側において、中央を残して、左右両端から縫合されており、
かつ、前記外側伸縮性生地と内側伸縮性生地は、重ね合わせ箇所の上側において、中央を残して前記上脇身頃と、下脇身頃に縫合されており、
さらに、前記上脇身頃、外側伸縮性生地、内側伸縮性生地、下脇身頃の一方の脇は、前記前身頃の脇線に沿って縫合され、前記上脇身頃、外側伸縮性生地、内側伸縮性生地、下脇身頃の他方の脇は前記後身頃の脇線に沿って縫合されており、
前記外側伸縮性生地と内側伸縮性生地の縫合されていない中央が、内側に装着した肩掛けベルトの連結部を取り出す取り出し口になっていることを特徴とするファン付き上着。
【請求項2】
請求項1のファン付き上着において、
右肩部、左肩部、中央上部、中央下部の各生地からなる肩ヨークを有し、
前記中央上部は内側、前記中央下部は外側が互いに一部が重なり合って、夫々の両脇が前記右肩部、左肩部に縫合され、互いに横幅方向には縫合されておらず、内外を連通する通風路が形成され、かつ
前記中央下部の横幅は、前記中央上部の横幅より長く形成されており、前記中央下部に弛みが形成されていることを特徴とするファン付き上着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からファンにより衣服内に空気を取り込み、身体を冷却するファン付き上着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業員を保護する熱中症対策の一つとして最近はファン付き上着が利用されている。ファンは、上着の後身頃の腰付近に設けられた開口、若しくは、背中の裾部の位置に脱着自在に取付けられており、取り込まれた外気は首回りの襟口、若しくは袖口から排出され、身体を冷却する。首回りの襟口に大きな排出口を設ける機構として、襟近辺に調節紐を設けている。内側から襟の左右の間隔を短縮して襟を弛ませる調節紐を有し、襟と調節との間に排出口が確保され、この排出口を利用して背中から上に向かって流れた空気を排出する。
【0003】
刈払機を使用する際、ファン付き上着の上から肩掛けベルトを掛けると上着内に空気がうまく流れないため、肩掛けベルトを上着の下で掛けて、刈払機を取り付ける連結部を上着の外部に出す取り出し口を設けた上着が考えられている。特許文献1には、前身頃若しくは使用者の側面側に取り出し口が設けられているものが開示されている。また、特許文献2においても、前面に取り出し口が設けられているものが開示されている。そして、特許文献3には、前身頃にあるポケットの横に、取り出し口が設けられているものが開示されている。特許文献1~3のいずれの技術においても、取り出し口には、前身頃に開口を開き、その縁に務歯を取り付け、若しくは開口の縁を別の布でくるむ玉縁仕上げにしている。
【0004】
特許文献4は、肩掛けベルトの連結部を通す穴では無いが、作業着の脇に空気を通すための穴を設ける技術が開示されている。この作業着では、服地のうち、脇部に相当する部分の領域が切除され、切除された領域を覆うように脇地が、身頃の服地に縫合されている。脇地は、脇部において前身頃と後身頃に亘るように、また、前身頃および後身頃に亘るように配置されている。各脇地は、その前後部(前身頃側、および後身頃側)、および上部(肩口側)において、作業着本体の服地に縫合され、脇地の下部は作業着本体の服地に縫合されない。このため、服地の一部である胴地の上部と脇地の下部との間に、隙間が形成されている。さらに、胴地の上部が内側に配置され、脇地の下部が外側に配置されて、胴地の上部と脇地の下部とが作業着本体の内外方向で重なっている。胴地の上部と脇地の下部との間の前記隙間が、脇部開口である。なお、胴地の上端辺、および脇地の下端辺は、胴周り方向に沿うよう互いに平行に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6766288号公報
【特許文献2】実用新案登録第3212889号公報
【特許文献3】意匠登録第1635232号公報
【特許文献4】特開2017-150120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
刈払機の一般的な構造は、シャフト棒の先にカッターを、シャフト棒の後にエンジンを取り付け、シャフト棒の途中(エンジン側寄り)に作業者の操作部を設けている。右きき仕様の場合、左肩から肩掛けベルトをたすき掛けし、肩掛けベルトの連結部に刈払機をつって操作部を持ち、左右に振って草刈作業を行う。
【0007】
特許文献1及び3の技術によれば、肩掛けベルトの連結部を取り出す取り出し口は縦に開いており、刈払機を左右に振ったときには、肩掛けベルトの連結部は取り出し口の務歯若しくは玉縁を左右に圧迫し、これらを摩擦する。刈払機は、草刈作業中は常に左右に振られており、務歯若しくは玉縁は左右に振られた連結部による圧迫、摩擦を受け続ける。特許文献3においては、筒状のカバー部をさらに設けて、連結部を包むことにより、直接的に玉縁が擦れないようにしている。このように、特許文献1においては連結部による務歯への摩擦、特許文献3においては玉縁への摩擦若しくは、筒状のカバー部の取り付け工数が増加する。
【0008】
一方、特許文献2の技術によれば、取り出し口は左右方向に開いている。このため、肩掛けベルトの左右の揺動は直接的に取り出し口の玉縁を圧迫するものではないが、振り切れた連結部が取り出し口の両脇に切り込み状に突き当たるため、玉縁の両脇の強度を高くして置く必要がある。上記に加え、特許文献1、2及び3のいずれも、取り出し口の存在がデザイン的に目立つ外観になっている。
【0009】
特許文献4の技術は、作業着の脇に空気を通すための穴を設ける技術であり、穴を通るものが空気であるため、刈払機を左右に振ることによる肩掛けベルトの連結部による摩耗は考慮されていない。連結部を通す穴は、特許文献4の技術とは逆に、空気を漏らさないようにしておく必要がある。
【0010】
そこで、本発明は、取り出し口をデザイン的にも存在を目立たなくするとともに、刈払機の左右揺動に対しても耐性のあるファン付き上着を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明のファン付き上着は、前身頃と、後身頃と前記前身頃と後身頃との間に脇身頃を縫合されたファン付き上着であって、
前記後身頃は空気を取り込むファンが取り付け可能な空気取り込み口が設けられており、
前記脇身頃は上脇身頃、下脇身頃に分かれており、前記上脇身頃と前記下脇身頃は前記上脇身頃が外側に配置されて前記脇身頃の中央で重なり合う重ね合わせ箇所が設けられており、
前記重ね合わせ箇所の範囲内に、前記脇身頃と同じ大きさの幅を持つ外側伸縮性生地と内側伸縮性生地とが配置され、
前記外側伸縮性生地は前記重ね合わせ箇所の上側で前記上脇身頃と縫合されており、
前記内側伸縮性生地は前記重ね合わせ箇所の上側で前記下脇身頃と縫合されており、また、
前記外側伸縮性生地と内側伸縮性生地同士は、前記重ね合わせ箇所の下側において、中央を残して、左右両端から縫合されており、
かつ、前記外側伸縮性生地と内側伸縮性生地は、重ね合わせ箇所の上側において、中央を残して前記上脇身頃と、下脇身頃に縫合されており、
さらに、前記上脇身頃、外側伸縮性生地、内側伸縮性生地、下脇身頃の一方の脇は、前記前身頃の脇線に沿って縫合され、前記上脇身頃、外側伸縮性生地、内側伸縮性生地、下脇身頃の他方の脇は前記後身頃の脇線に沿って縫合されており、
前記外側伸縮性生地と内側伸縮性生地の縫合されていない中央が、内側に装着した肩掛けベルトの連結部を取り出す取り出し口になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、重ね合わせ箇所に設けられた、外側伸縮性生地、内側伸縮性生地により、ファン付き上着内部からの空気の漏れは殆ど生じない。また、肩掛けベルトを挿通した際には、肩掛けベルトの連結部により外側伸縮性生地、内側伸縮性生地の中央は、その弾性によりこれに追随することにより空気の漏れは殆ど生じない。また、刈払機を左右に振ったときにも外側伸縮性生地、内側伸縮性生地がこれに追従して動き、空気の漏れは殆ど生じない。取り出し口は左右方向に開いているため、肩掛けベルトの左右揺動に対して上脇身頃、下脇身頃は外側伸縮性生地、内側伸縮性生地に守られて直接的を圧迫されることはない。また、連結部が振り切れて外側伸縮性生地、内側伸縮性生地に大きな力が加わったとしても、外側伸縮性生地、内側伸縮性生地の左右の両端は、その縦方向の全域に渡って、夫々上脇身頃、下脇身頃に加えて、前身頃と後身頃にも固定されるため引き裂き、ほつれによる破損が生じることは少ない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】上着の使用方法の説明図で、
図4Aは上着を着用して草刈り機を使用する状態で、
図4Bは脇身頃の部分拡大説明図で草刈り機の肩掛けベルトを取り出し口から出した状態である。
【
図5】肩ヨークの通風路の説明図で、
図5Aは肩ヨークの表側の説明図、
図5Bは肩ヨークの裏側の説明図、
図5Cは
図5BのX-X線一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るファン付き上着の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1において、ファン付き上着1は前身頃2、後身頃3、脇身頃4、袖5、襟6、肩ヨーク7を有し、前身頃2は前面を開閉できるファスナーが備えられている。後身頃3には、内部に空気を取り込むファンを取り付け可能な空気取り込み口8が設けられている(図では2箇所)。ファン付き上着1は、ファンを用いて、外気を衣服内に取り込むことにより、身体を冷却するもので、ファンより取り込まれた空気は、衣服内側を介して襟口、袖口より排出される。ファン付き上着1の右側の脇身頃4には、刈払機を取り付ける連結部を上着の外部に出す取り出し口10が設けられている。左利き仕様の場合には、ファン付き上着1の左側の脇身頃に取り出し口10が設けられる。
【0015】
図2を用いて脇身頃4の取り出し口10についてさらに説明する。脇身頃4は腋下側の上脇身頃4aと、裾側の下脇身頃4bに分かれており、上脇身頃4aと下脇身頃4bは脇身頃の中央で重なり合い、上脇身頃4aが外側に下脇身頃4bが内側に配置されている。上脇身頃4aと下脇身頃4bとが重なり合う箇所を重ね合わせ箇所11とする。脇身頃4は前身頃2の脇線と縫合線2aの位置で、また、後身頃3の脇線と縫合線3aの位置で縫合されているが、上脇身頃4aの下縁と下脇身頃4bの上縁同士は互いに縫合されていない。上脇身頃4aの下縁と下脇身頃4bの上縁の間が、ファン付き上着1の内側と外側を連絡しており、肩掛けベルトの連結部を取り出す取り出し口10になっている。取り出し口10は、前身頃2と後身頃3との間をほぼ水平に結ぶ方向に開口幅を有している(図では、取り出し口10はやや斜めに口を開いている。)
【0016】
図2E及び
図2Fにおいて、上脇身頃4aの下端部11aは折り返して重ね合わせ箇所11に相当する大きさの別布4cを縫合し、別布4cの上端を縫合線4dで上脇身頃4aに縫合している。別布4cを用いるかわりに、その分だけ長く上脇身頃4aを裁断し、長くした分を折りかえしてもよい。本実施例においては、取り出し口10がやや斜めに口を開くデザインであるため、別布4cにしているのである。
【0017】
取り出し口10の奥側の重ね合わせ箇所11の内側には外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bが縫合されている。外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの幅(横の長さ)は脇身頃4と同じ大きさである。外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの縦の長さは重ね合わせ箇所11の範囲とほぼ同等の大きさであって、本実施例においては帯状のものを用いた。外側伸縮性生地10aは、重ね合わせ箇所11の上側において上脇身頃4aの幅全域を横切る縫合線4dの位置で縫合されている。また、内側伸縮性生地10bは、重ね合わせ箇所11の上側において下脇身頃4bの幅全域を横切る縫合線4eの位置で下脇身頃4bに縫合されている。
【0018】
外側伸縮性生地10aと内側伸縮性生地10b同士は、重ね合わせ箇所11の下側において、中央を残して、左右両端から中央に延びる縫合線10c、10dの位置で縫い合わせている。また、外側伸縮性生地10aと、内側伸縮性生地10bは、重ね合わせ箇所11の上側において、左右両端から中央に延びる縫合線11c、11dの位置で中央を残して外側伸縮性生地10aと内側伸縮性生地10b同士及び上脇身頃4aと、下脇身頃4bに縫合されている。縫合線10c、10dの位置では、上脇身頃4aと、下脇身頃4bに縫合されていない点で、縫合線11c、11dの位置と異なる。
【0019】
図2Dにおいて、取り出し口10の上側の上脇身頃4aをめくり上げると、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bを見ることができる。外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bは、上脇身頃4aのやや内側に隠れている。外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bは、縫合線10c、10d及び縫合線11c、11dの各位置で、中央を残して、左右両端から中央に向けて縫合されているので、中央の部分のみが縫合されずに、ファン付き上着1の内外を連通する通路になっている。よって、取り出し口10において、肩掛けベルトの連結部が通過する箇所は、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの間でかつ、縫合線10c、10d及び縫合線11c、11dにより縫い残された中央の位置である。なお、縫合線11c及び縫合線11dは、重ね合わせ箇所11上端の線より1cm程度とした。縫合されていない外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの中央の幅は、おおよそ連結部12で外形の大きな部分である取り付けフック(
図4B参照)が通り抜けられる大きさである。
【0020】
重ね合わせ箇所11は、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bと上脇身頃4a、下脇身頃4bが縦方向に多重に重なり合う箇所で有り、縫合されていない箇所は外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの中央に限定されているため、ファン付き上着1からの空気の漏れは殆ど生じない。また、肩掛けベルトを挿通した際には、肩掛けベルトの連結部により外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの中央は、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの弾性によりこれに追随することにより、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bから空気の漏れは殆ど生じない。また、刈払機を左右に振ったときにも外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bがこれに追従して動き、空気の漏れは殆ど生じない。
【0021】
図3は、取り出し口10を形成する工程を示している。なお、以下の説明では、上脇身頃4aと下脇身頃4bの布の端の処理、および別布4cの処理については説明の簡略化のために省略する。
【0022】
図3A、3Bにおいて、上脇身頃4aの裏側に外側伸縮性生地10aを縫合する。縫合する位置は、縫合線4dの位置である。一方、
図3C、3Dにおいて、下脇身頃4bの裏側にも内側伸縮性生地10bを縫合する。縫合する位置は、縫合線4eの位置である。
【0023】
図3Eにおいて、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bを互いに縫合する。縫合する位置は、縫合線10c、10dの位置である。上脇身頃4aと下脇身頃4bは、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bを介して連結される。
図3Fにおいて、そして、縫合線11c、11dの位置において、上脇身頃4a、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10b、下脇身頃4bを通して縫合する。尚、図中、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bが下脇身頃4bの下側に配置されているため、点線により示している。
【0024】
図3Gにおいて、上脇身頃4a、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10b、下脇身頃4bが一体となった脇身頃4の一方の脇を、前身頃2の脇線に沿って延びる縫合線2aの位置で前身頃2と縫合する。そして、同様に上脇身頃4a、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10b、下脇身頃4bが一体となった脇身頃4の他方の脇を、後身頃3の右側脇線に沿って延びる縫合線3aの位置で後身頃3に縫合する。外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの左右の両端は、その縦方向の全域に渡って、夫々上脇身頃4a、下脇身頃4bに加えて、前身頃2と後身頃3にも固定され、強度を高めている。また、製品化するに当たって、
図2に示されるように、上脇身頃4a、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10b、下脇身頃4b及び前身頃2の折り返し代13、上脇身頃4a、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10b、下脇身頃4b及び後身頃3の折り返し代14を夫々縫合線2b、3bの位置で更に縫い付けることにより、強度を増加させている。縫合線2b、3bは、縫合線2a、3aと同様の長さであり、縫合線2a、3aに沿って延びている。
【0025】
図1に戻り、このようにして作成された取り出し口10は、上脇身頃4aの上部から続く生地で、その横幅も前身頃2と後身頃3の間に直線状に設けられるため、存在を目立たせないものとなっている。
【0026】
図4は上着の使用方法の説明図で、
図4Aは上着を着用して草刈り機を使用する状態で、
図4Bは脇身頃の部分拡大説明図で肩掛けベルトの連結部12を取り出し口10から出した状態である。使用者は肩掛けベルトを肩に掛けて、ファン付き上着1を着用し、肩掛けベルトの連結部12を上着の取り出し口10の内側から入れ外に出す。
【0027】
取り出し口10は左右方向に開いているため、肩掛けベルトの左右揺動に対して上脇身頃4a、下脇身頃4bは外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bに守られて直接的に圧迫されることはない。また、連結部12が振り切れて外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bに大きな力が加わったとしても、外側伸縮性生地10a、内側伸縮性生地10bの左右の両端は、その縦方向の全域に渡って、夫々上脇身頃4a、下脇身頃4bに加えて、前身頃2と後身頃3にも固定されるため、破損が生じることは少ない。
【0028】
次に、ファン付き上着1の後身頃3について説明する。
刈払機は、近年、バッテリ式のものが普及し始めているが、今なお、ガソリンエンジン式のものが主流である。しかも、軽量化のために混合油を用いたエンジン(例えば、2サイクルエンジン)が用いられている。2サイクルエンジンは、エンジンオイルを混合した混合油を燃焼させるため、排気ガスはエンジンオイルが燃えた特有のにおいを有している。ファン付き上着1は、空気取り込み口8が後身頃3に設けられているため、排気ガスを服の内部に取り込みやすい。
【0029】
首回りの襟口に大きな空気の排出口を設けておくと、服の内部に取り込まれた排気ガスは、首の後から頭にかけて汚染する事になる。従って、本実施例のファン付き上着1においては、これを避ける構造を持たせている。
【0030】
図5において、肩ヨーク7の通風路9の構造の説明図で、
図5Aは肩ヨーク7の表側、
図5Bは肩ヨーク7の裏側、
図5Cは
図5AのX-X線部分断面図である。肩ヨーク7は、右肩部7a、左肩部7b、中央上部7c、中央下部7dの各生地からなる。
【0031】
中央上部7cは内側、中央下部7dは外側が互いに一部が重なり合って、夫々の両脇が右肩部7a、左肩部7bに縫合されている。中央上部7cと中央下部7dとは、互いに横幅方向には縫合されておらず、内外が連通して通風路9が形成されている。また、肩ヨーク7の中央下部7dの横幅は、肩ヨーク7の中央上部7cの横幅より長く形成されており、肩ヨーク7の中央下部7dに弛みをもつことになり、通風路9に空気が流される際に膨らみ多くの空気を流すことが可能になる(
図5C)。
【0032】
通風路9において、肩ヨーク7と後身頃3の切り替え部分の中央が風の流入口、肩ヨーク7の中央下部7dの上端が排出口になる。襟6の外側に排出口があることにより、首周りから排出される空気が減り、草刈り作業で排気ガスを吸い込んでも、ゴミが首周りに付くのを防ぐことができる。
空気取り込み口8が高い位置にあり、草刈り作業により、排気ガスを取り込む量を少なくすることができる。肩ヨーク7に設けられた通風路から空気を排出することができ、首周りから出る量を少なくし、首周りに排気ガスによるオイルや煤の汚れが付くことを抑えることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ファン付き上着
2 前身頃
3 後身頃
2a、2b、3b、4d、4e、10c、10d、11c、11d 縫合線
4 脇身頃
4a 上脇身頃
4b 下脇身頃
4c 別布
5 袖
6 襟
7 肩ヨーク
7a 右肩部
7b 左肩部
7c 中央上部
7d 中央下部
8 空気取り込み口
9 通風路
10 取り出し口
10a 外側伸縮性生地
10b 内側伸縮性生地
11 重ね合わせ箇所
11a 下端部
12 連結部
13、14 折り返し代