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特開2022-117836機能性材料成形体の製造方法、機能性材料成形体及び反応器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117836
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】機能性材料成形体の製造方法、機能性材料成形体及び反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20220804BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20220804BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220804BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20220804BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20220804BHJP
   C07C 1/12 20060101ALI20220804BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20220804BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220804BHJP
【FI】
B01J37/02 301D
B01J19/24 A
B01J35/02 H
B01J35/10 301Z
B01J23/46 301Z
B01J35/02 311B
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014563
(22)【出願日】2021-02-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、研究領域「再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤技術の創出」における研究課題「再生可能エネルギー利用による水素製造とエネルギーキャリアとしてのメタン製造技術の研究」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】597103023
【氏名又は名称】株式会社 ケミックス
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島 明日香
(72)【発明者】
【氏名】曽根 理嗣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝之
(72)【発明者】
【氏名】井上 光浩
【テーマコード(参考)】
4G075
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA65
4G075BA06
4G075CA02
4G075CA54
4G075DA02
4G075EB21
4G075FA14
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB12
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01B
4G169BA04B
4G169BA05B
4G169BA13A
4G169BA17
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC70B
4G169CB02
4G169CC22
4G169EA04X
4G169EA11
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB14Y
4G169EB18Y
4G169EB19
4G169EC02X
4G169EC22Y
4G169EE07
4G169FA03
4G169FB02
4G169FB06
4G169FB15
4G169FB30
4G169FC08
4G169FC10
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC29
4H006BA10
4H006BA23
4H006BA30
4H006BA61
4H006BA81
4H006BD81
4H039CB20
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】機能性材料の機能を損なうことなく機能性材料を成形する技術を提供する。
【解決手段】本開示の機能性材料成形体の製造方法は、機能性材料を水-アルコール混合液に分散させて分散液を得ることと、前記分散液を多孔質成形母材に含浸させ、含浸体を得ることと、前記含浸体を乾燥することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料を水-アルコール混合液に分散させて分散液を得ることと、
前記分散液を多孔質成形母材に含浸させ、含浸体を得ることと、
前記含浸体を乾燥することと、を含む、機能性材料成形体の製造方法。
【請求項2】
前記機能性材料が二酸化炭素の水素還元用触媒である、請求項1に記載の機能性材料成形体の製造方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素の水素還元用触媒は、
担体に、触媒金属ナノ粒子と前記触媒金属ナノ粒子の粒成長を抑制するための金属酸化物とが分散担持された構造を有する、請求項2に記載の機能性材料成形体の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質成形母材の材質がセラミックス又は金属である、請求項1に記載の機能性材料成形体の製造方法。
【請求項5】
前記多孔質成形母材の気孔率が10~90%である、請求項1に記載の機能性材料成形体の製造方法。
【請求項6】
前記多孔質成形母材の比表面積が0.5~10m/gである、請求項1に記載の機能性材料成形体の製造方法。
【請求項7】
前記分散液における前記水-アルコール混合液と前記機能性材料との混合比は、重量比で20:80~80:20である、請求項1に記載の機能性材料成形体の製造方法。
【請求項8】
前記水-アルコール混合液における水とアルコールとの混合比は、体積比で5:95~95:5である、請求項1に記載の機能性材料成形体の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質成形母材が板状、円盤状、直方体状、立方体状、球体状、半球体状、角錐状、円錐状、円柱状又はこれらの組み合わせの形状である、請求項1に記載の機能性材料成形体の製造方法。
【請求項10】
多孔質成形母材の細孔中に機能性材料が保持された機能性材料成形体であって、
前記機能性材料の保持量が50~300mg/cmである、機能性材料成形体。
【請求項11】
前記機能性材料が二酸化炭素の水素還元用触媒である、請求項10に記載の機能性材料成形体。
【請求項12】
前記二酸化炭素の水素還元用触媒は、
担体に、触媒金属ナノ粒子と前記触媒金属ナノ粒子の粒成長を抑制するための金属酸化物とが分散担持された構造を有する、請求項11に記載の機能性材料成形体。
【請求項13】
前記多孔質成形母材の材質がセラミックス又は金属である、請求項10に記載の機能性材料成形体。
【請求項14】
板状、円盤状、直方体状、立方体状、球体状、半球体状、角錐状、円錐状、円柱状又はこれらの組み合わせの形状である、請求項10に記載の機能性材料成形体。
【請求項15】
請求項10に記載の機能性材料成形体が充填された反応槽を備える、反応器。
【請求項16】
前記反応槽中の前記機能性材料の保持量に勾配がある、請求項15に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能性材料成形体の製造方法、機能性材料成形体及び反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの用途拡大が期待される中で、再生可能エネルギーを使用して貯蔵、輸送が可能なエネルギーキャリアを生成する技術が盛んに検討されている。例えば、再生可能エネルギーを使用して水を電気分解して水素を生成させ、これを熱エネルギー源あるいは燃料電池の燃料として活用することが検討されている。また、水素をメタンあるいはアンモニアに転換して活用することも検討されている。特に、メタンは、天然ガスの主成分であり、既存のインフラを利用できるという利点があることから、エネルギーキャリアとしての活用が期待されている。
【0003】
水素をメタンに転換する手法として、サバチエ反応が知られている。このサバチエ反応は、水素と二酸化炭素とを触媒反応させて、メタンと水とを生成させる手法である。サバチエ反応は、350℃の温度で二酸化炭素の水素による還元率が100%近くに達する反応であり、高効率で二酸化炭素を水素還元できる。また、サバチエ反応は発熱を伴う自律反応であり、外部からの熱エネルギー等の供給なしに反応を持続することが可能である。
【0004】
サバチエ反応用の触媒として、特許文献1には、粉末状の担体に、触媒金属ナノ粒子及び金属酸化物粒子を分散担持させた二酸化炭素の水素還元用触媒が開示されている。このような粉末触媒を二次成形する方法の確立が望まれている。
【0005】
触媒等の機能性材料の粉末を成形してより大きな構造体を形成する方法として、機能性材料を圧縮する方法、バインダ等の接着剤と混合して造粒する方法、予め接着剤等を塗布した構造体へ機能性材料を接着する方法などが知られている。
【0006】
特許文献2には、触媒成分を貫通型多孔性材質からなる担体に担持させた、アルデヒド類を製造するための担体担持型固体触媒の製造方法が開示されている。特許文献2の方法では、触媒を水に混合し多孔質体に含浸させ、乾燥及び焼成を行うことにより成形体が得られる(特許文献2の実施例1参照)。
【0007】
特許文献3には、モリブデンを必須成分とする複合金属酸化物を含有する触媒粉末を転動造粒法により不活性担体に担持する方法が開示されている。特許文献3の方法では、バインダが用いられる(特許文献3の実施例1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-048249号公報
【特許文献2】特開2017-047377号公報
【特許文献3】国際公開第2013/161703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のサバチエ触媒は、機能の性質上、焼成による過熱により性能が劣化するため、特許文献2のような焼成工程を経た成形方法は適用が難しい。また、特許文献3のようなバインダを用いた成形は、触媒などの機能性材料の表面を覆うことになるため、機能性材料の機能が低下することがある。
【0010】
そこで、本開示は、機能性材料の機能を損なうことなく機能性材料を成形する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の機能性材料成形体の製造方法は、機能性材料を水-アルコール混合液に分散させて分散液を得ることと、前記分散液を多孔質成形母材に含浸させ、含浸体を得ることと、前記含浸体を乾燥することと、を含む。
【0012】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本開示の技術によれば、機能性材料の機能を損なうことなく機能性材料を成形することができる。上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施形態に係る機能性材料成形体の製造方法を示すフローチャートである。
図2】機能性材料分散液の含浸前の多孔質成形母材及び機能性材料成形体の模式図である。
図3】機能性材料成形体を有する反応器の一部の構成を示す断面模式図である。
図4】アルミナ板の拡大写真である。
図5】アルミナ板及び粉末触媒成形体の写真である。
図6】実施例1に係る粉末触媒成形体の拡大写真である。
図7】15枚の粉末触媒成形体を反応槽に充填した状態の反応器の写真である。
図8】実施例1及び比較例1に係る粉末触媒成形体の触媒性能を示すグラフである。
図9】実施例3に係る平板構造の反応器の写真である。
図10】実施例1及び実施例3に係る粉末触媒成形体の触媒性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[機能性材料成形体の製造方法]
図1は、本開示の実施形態に係る機能性材料成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【0016】
<ステップS11>
製造者は、成形目的の機能性材料を準備する。機能性材料は粉末又は粒子の形態である。機能性材料としては、例えば、触媒及び吸着剤などが挙げられる。触媒となる物質としては、例えば触媒活性を示す金属及び金属酸化物などが挙げられる。吸着剤となる物質としては、例えばシリカゲル、活性炭、ゼオライト、樹脂、鉱物などが挙げられる。
【0017】
触媒は粒子状であってもよいし、触媒粒子が担体粒子に担持された粉末触媒であってもよい。さらに、担体粒子には、触媒粒子の他に、触媒の機能を維持するための他の物質の粒子が担持されていてもよい。特許文献1には、二酸化炭素の水素還元用触媒(サバチエ触媒)として、担体上に触媒金属ナノ粒子と、触媒金属ナノ粒子の粒成長を抑制する金属酸化物粒子とが分散担持された粉末触媒が記載されている。
【0018】
二酸化炭素の水素還元用粉末触媒の触媒金属ナノ粒子として、例えば、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Pd、Ag、Ir及びPtからなる群より選択される少なくとも一種の金属を含むナノ粒子である。触媒金属ナノ粒子は、触媒機能を損なわない範囲で金属酸化物を含有していてもよい。
【0019】
二酸化炭素の水素還元用粉末触媒の金属酸化物粒子は、水素存在下での加熱によって変化しにくく、耐還元性が高い金属酸化物から形成される。金属酸化物は、例えば、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属酸化物を含む。金属酸化物は、耐還元性を損なわない範囲で触媒金属を含有していてもよい。これらの金属酸化物は、それぞれ単独で使用してもよいし、二種を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
二酸化炭素の水素還元用粉末触媒の担体としては、例えば、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二ニオブ、ゼオライト、リン酸カルシウムを用いることができる。これらは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。担体の形状は、球状、多面体状、不定形、薄片状、鱗片状であってもよい。また、担体の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.01~30μm又は0.02~2.0μmとすることができる。
【0021】
粉末触媒は、上記の金属と金属酸化物とを含むターゲットを用い、担体を転動させながら、スパッタリングを行うことにより作製することができる。これにより、担体の表面に、金属を含むナノ粒子と金属酸化物を含むナノ粒子とを分散担持させることができる。担体を転動させながらスパッタリングを行う装置としては、例えば、多角バレルスパッタ装置を用いることができる。
【0022】
<ステップS12>
製造者は、多孔質成形母材を準備する。多孔質成形母材の形状に特に限定はなく、例えば板状、円盤状、直方体状、立方体状、球体状、半球体状、角錐状、円錐状、円柱状又はこれらの組み合わせの形状とすることができる。多孔質成形母材の形状は、機能性材料の成形後の形状に応じて選択することができる。特にサバチエ触媒を成形する場合、多孔質成形母材を板状として反応エリアを薄型化することにより、熱安定性を向上することができる。
【0023】
多孔質成形母材の材質として、例えば、多孔質セラミックス及び多孔質金属などが挙げられる。多孔質成形母材の材質として、機能性材料と親和性を有するものを用いることにより、機能性材料の固定化を容易にすることができる。
【0024】
多孔質セラミックスの原料となるセラミックスとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウムなどの酸化物系;ハイドロキシアパタイトなどの水酸化物系;炭化ケイ素などの炭化物系;窒化ケイ素などの窒化物系;蛍石などのハロゲン化物系;リン酸塩系;炭酸塩系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
多孔質金属の原料となる金属としては、金属単体及び合金を用いることができ、例えば、チタン、銅、SUSなどが挙げられる。
【0026】
多孔質成形母材の細孔の孔径は、機能性材料の粒径以上とすることができる。これにより、多孔質成形母材の有する細孔に機能性材料を侵入させ、保持させることができる。
【0027】
多孔質成形母材の気孔率を調整することにより、多孔質成形母材に保持される機能性材料の単位体積当たりの量を調整することができ、反応性を制御することができる。多孔質成形母材の気孔率に限定はないが、例えば10~90%、20~80%又は30~70%とすることができる。
【0028】
多孔質成形母材の比表面積は、例えば0.5~10m/g又は1.0~5.0m/gとすることができる。
【0029】
<ステップS13>
製造者は、機能性材料を水-アルコール混合液に添加し、分散させ、分散液(スラリー状のものを含む)を得る。水及びアルコールの混合比(体積比)は、例えば5:95~95:5、10:90~90:10、20:80~80:20又は30:70~70:30とすることができる。
【0030】
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に、水-アルコール混合液が共沸混合物となるようなアルコールを用いることにより、後述する乾燥工程において水-アルコール混合液の組成が変化せずに蒸発するため、機能性材料を多孔質成形母材に安定して保持させることができる。
【0031】
水-アルコール混合液と機能性材料との混合比(重量比)は、例えば20:80~80:20、30:70~70:30又は40:60~60:40とすることができる。機能性材料の種類及び水-アルコール混合液の濃度にもよるが、特に、70:30~80:20とすることにより、含浸時の作業性に優れる。
【0032】
水-アルコール混合液には、機能性材料の機能を損なわない範囲で、任意の添加剤が添加されていてもよい。
【0033】
<ステップS14>
製造者は、分散液を多孔質成形母材に含浸させ、含浸体を得る。分散液は多孔質成形母材の細孔に対し毛細管現象により侵入するため、多孔質成形母材の内部まで分散液を行きわたらせることができる。含浸方法として特に限定はなく、例えば、多孔質成形母材上に分散液を滴下する方法や、分散液で満たした容器に多孔質成形母材を浸漬させる方法が挙げられる。
【0034】
分散液の含浸量は、例えば50~300mg/cm、100~250mg/cm又は150~200mg/cmとすることができる。
【0035】
なお、分散液は、多孔質成形母材の全体に均一に含浸させてもよいし、偏りがあってもよい。すなわち、多孔質成形母材に保持される機能性材料の量に勾配があってもよい。例えば、多孔質成形母材の一端から他端に向かって機能性材料の量が変化するようにしてもよいし、同心円状に機能性材料の量が変化するようにしてもよい。
【0036】
<ステップS15>
製造者は、分散液を含浸させた多孔質成形母材を乾燥し、水-アルコール混合液を除去することで、機能性材料成形体を得る。乾燥は自然乾燥により行ってもよいし、乾燥機により行ってもよい。乾燥温度は、機能性材料の機能を損なわない温度であればよく、例えば常温~300℃とすることができる。例えば、後述する実施例で用いるサバチエ触媒は220℃で高い触媒活性を示すことから、それ以上の加熱による性能劣化を防ぐため、乾燥温度は220℃以下とすることができる。機能性材料を高温で加熱しても機能が低下しない場合は、機能性材料の使用温度以上の温度で乾燥してもよい。
【0037】
本実施形態の機能性材料成形体の製造方法によれば、機能性材料が多孔質成形母材の細孔に保持される。多孔質成形母材の全体に分散液を含浸させた場合は、細孔内に満遍なく機能性材料が保持され、高い保持量を実現できる。このことは、機能性材料成形体を用いた反応の反応性の向上に有効である。機能性材料成形体の機能性材料の保持量は、機能性材料の重量及び多孔質成形母材の気孔率にもよるが、例えば50~300mg/cm、80~250mg/cm又は100~230mg/cmとすることができる。
【0038】
ステップS14及びS15は、複数回繰り返し実施してもよい。得られた機能性材料成形体は、機能性材料の機能を損なわない範囲で焼成してもよい。焼成温度は、機能性材料の種類に応じて設定できる。ただし、機能性材料がサバチエ触媒である場合は、サバチエ触媒が220℃以下の温度でも活性を示すため、焼成を行わないことにより触媒性能を維持することができる。
【0039】
図2は、機能性材料分散液の含浸前の多孔質成形母材10及び機能性材料成形体20の模式図である。図2の左側に示すように、多孔質成形母材10は一例として板状である。また、図2の右側に示すように、得られる機能性材料成形体20は、多孔質成形母材10の形状と略同一に成形される。機能性材料成形体20は、例えば切削加工などにより、他の形状に加工してもよい。
【0040】
<まとめ>
以上のように、本実施形態に係る機能性材料成形体の製造方法は、機能性材料を水-アルコール混合液に分散させて分散液を得ることと、分散液を多孔質成形母材に含浸させ、含浸体を得ることと、含浸体を乾燥することと、を含む。このように、バインダを用いずに機能性材料を成形することができるので、バインダが機能性材料を覆うことがない。したがって、機能性材料の表面積を維持したまま機能性材料を成形することができるので、機能性材料の機能の低下を防止することができる。また、水-アルコール混合液を共沸混合物とすることで、混合液が水の沸点よりも低い温度で蒸発するので、乾燥温度を低くすることができる。したがって、機能性材料への熱負荷を低減することができるので、熱による機能低下を防止することができる。さらに、焼成を行わなくとも機能性材料を成形することができるので、機能性材料の過熱による非可逆の劣化を未然に防止することができる。
【0041】
[反応器]
図3は、機能性材料成形体20を有する反応器100の一部の構成を示す断面模式図である。図3に示すように、反応器100は、機能性材料成形体20、反応槽101及び多孔質材102を備える。
【0042】
反応槽101は両端が開口しており、内部に機能性材料成形体20が充填される。反応槽101に充填される機能性材料成形体20の数は1つのみであってもよいし、複数であってもよい。反応槽101の開口のうち一方は原料供給管(不図示)に接続され、反応目的の原料(気体又は液体)が供給される。他方の開口には排出管(不図示)に接続され、反応生成物(気体又は液体)が排出される。反応槽101の形状は、特に制限はなく、例えば、円筒形状、楕円筒形状、多角筒形状とすることができる。反応槽101の材料は、供給される原料及び排出される反応生成物に対して反応性を有さず、反応温度に耐性のあるものであれば、特に制限はない。反応槽101の材料としては、例えば、プラスチック、金属、セラミックス、ガラスなどを用いることができる。
【0043】
多孔質材102は、機能性材料成形体20を透過させず、二酸化炭素、水素、メタン、水(水蒸気)などの気体及び液体を通過させるものである。多孔質材102としては、例えば、金属繊維フィルタ、セラミックフィルタ、ガラスフィルタ、発泡金属、グラスウールを用いることができる。
【0044】
反応器100は、反応温度を調整するためのヒータを有していてもよい。また、反応器100は、反応槽101の内部の温度を測定するための温度計を有していてもよい。
【0045】
機能性材料が触媒である場合、反応器100は、触媒反応装置として用いることができる。特に、機能性材料がサバチエ触媒である場合、反応器100は、二酸化炭素の水素還元装置として用いることができる。この場合、反応槽101には原料ガスとして二酸化炭素及び水素が供給され、反応生成物としてメタンと水が排出される。
【0046】
機能性材料が吸着剤である場合、反応器100は、吸着反応装置として用いることができる。
【実施例0047】
以下、本開示の技術の実施例を説明する。
【0048】
実験例1:粉末触媒成形体の製造
[実施例1]
<粉末触媒の製造>
機能性材料として、二酸化炭素の水素還元用の粉末触媒(サバチエ触媒)を準備した。粉末触媒は以下の手順で製造した。
【0049】
多角バレルスパッタ装置のターゲットホルダーに、金属ターゲットとしてRuターゲットを、金属酸化物ターゲットとしてZrOターゲットを配置した。ターゲットホルダーに配置したRuターゲットとZrOターゲットのスパッタ面の面積比は1:0.5とした。その際、ターゲットホルダーを、RuターゲットとZrOターゲットのスパッタ面が下を向くように傾けた。
【0050】
多角バレルスパッタ装置の八角型バレル内に、担体として3.0gのTiO粉末(アナターゼ型)を投入した。TiO粉末は、平均粒子径が100nmのものを使用した。
【0051】
次いで、ロータリーポンプ、油拡散ポンプを用いて八角型バレル内を8.0×10-4Pa以下に減圧した。その後、アルゴンガス導入機構により八角型バレル内にArガスを導入して、八角型バレル内の圧力を0.8Paとした。そして、回転機構により八角型バレルを角度75°、4.3rpmで振り子動作させて、八角型バレル内のTiO粉末を撹拌しながら、高周波印加機構(RF発振器)に100Wの高周波を12時間印加して、Ru-ZrO担持TiO粒状物(Ru-ZrO/TiO)を得た。このRu-ZrO担持TiO粒状物を「粉末触媒」とした。粉末触媒は、二酸化チタン(TiO)の担体上にルテニウム(Ru)及び酸化ジルコニウム(ZrO)が分散担持された構造を有し、黒色であった。
【0052】
粉末触媒に担持されたRuの量をX線蛍光分析により確認したところ、23.3wt%であった。粉末触媒に担持されたZrOの量は推測値で約3.5wt%であった。また、粉末触媒に担持されたRu粒子の粒径は0.4~3.0nmであり、平均粒径は1.3nm(n=142)であった。
【0053】
<粉末触媒スラリーの調製>
体積比で25%の水と75%のイソプロパノール(IPA)とを混合し、水-IPA混合液を得た。水-IPA混合液と、粉末触媒とを、混合比率(重量比)10:1で混合して粉末触媒を分散させ、スラリーを得た。
【0054】
<セラミックス多孔体の準備>
多孔質成形母材として、セラミックス多孔体を用いた。セラミックス多孔体として、多孔質アルミナ(Al)板(株式会社レプトン製)を15枚用意した。当該アルミナ板の寸法は縦1.9cm×横1.2cm×厚さ0.2cmであり、気孔率は30~60%であり、比表面積は1~3m/gである。図4は、アルミナ板の拡大写真である。図4に示すように、多孔質アルミナ板は白色であり、微細孔を有することが確認できる。
【0055】
<成形体の製造>
粉末触媒のスラリーの一部をアルミナ板上に滴下して毛細管現象により含浸させ、オーブン(恒温乾燥炉)内で100℃以下(30~50℃)の温度で、30~60分間乾燥した。この工程を数回繰り返し、粉末触媒成形体を得た。なお、15枚のアルミナ板について同様にスラリーを含浸させて乾燥し、15個の粉末触媒成形体を得た。アルミナ板に含浸させた粉末触媒のスラリーの量は、150~200mg/cmとした。得られた粉末触媒成形体による粉末触媒の保持量は、42~51mgであった。
【0056】
図5は、アルミナ板及び粉末触媒成形体の写真である。図5に示すように、スラリー含浸前のアルミナ板(左側)は白色であり、スラリーを含浸させ乾燥して得られた粉末触媒成形体(右側)はグレーであった。また、粉末触媒成形体の形状は、アルミナ板の形状とほぼ変化はないことから、粉末触媒を多孔質成形母材の形状に成形可能であることが分かった。図6は、粉末触媒成形体の拡大写真である。図6に示すように、アルミナ板の微細孔に黒色の粉末触媒が固定化され、保持されていることが分かる。
【0057】
[比較例1]
<成形体の製造>
2gのガラスウール(成形母材)に対し、実施例1と同様にして作製した粉末触媒を0.7g混合することにより分散させ、比較例1に係る粉末触媒成形体を得た。
【0058】
[成形性の評価]
実施例1及び比較例1に係る粉末触媒成形体の成形性を以下のように評価した。
【0059】
<母材への固定中の作業性>
実施例1…スラリーの含浸中に問題なく作業できた。
比較例1…ガラスウールに分散する間、粉末触媒が脱離し作業性は実施例1に劣った。
【0060】
<成形体の粉末触媒の固定状態>
実施例1…アルミナ板の全体に粉末触媒が固定化されており、粉末触媒の脱離や粉化は見られなかった。
比較例1…粉末触媒が一部脱離した。
【0061】
<まとめ>
以上のように、実施例1に係る粉末触媒成形体の製造方法により、粉末触媒を容易にアルミナ板に固定化して成形することができた。本方法はバインダを用いておらず、粉末触媒がバインダにより被覆されることがないため、粉末触媒の触媒機能が維持されるといえる。
【0062】
[触媒性能の評価]
実施例1及び比較例1に係る粉末触媒成形体を用いて二酸化炭素の水素還元反応を実施し、触媒性能を以下のように評価した。
【0063】
<反応器への粉末触媒成形体の充填>
実施例1に係る粉末触媒成形体を15枚積層し、1.9cm×1.2cm×2.8cmの柱状触媒層として反応器の反応槽に充填した。反応槽の内部空間の体積は断面積6cm×高さ3.2cm=19.2cmであった。柱状触媒層の粉末触媒の保持量は0.67gであった。反応槽の内寸と柱状触媒層との若干の隙間はアルミナが主成分の充填材で埋めた。図7は、15枚の粉末触媒成形体を反応槽に充填した状態の反応器の写真である。図7に示すように、粉末触媒成形体は、それぞれ反応槽のガスの進行方向に垂直であり、ガスの進行方向に沿って積層されている。
【0064】
充填した柱状触媒層の3カ所に熱電対を配置した。反応器をヒータに配置し、反応槽の上側の開口部を、質量流量計(MFC)を備えたガス供給管と接続し、下側の開口部を排気管と接続した。
【0065】
比較例1に係る粉末触媒成形体を反応器の反応槽に充填した。反応槽の内部空間の体積は19.2cmであり、ガラスウールの粉末触媒の保持量は0.7gであったことから、ガラスウールの粉末触媒の保持量は0.036g/cmであった。その他の点は上記の実施例1と同様にして、反応器を準備した。
【0066】
<二酸化炭素の水素還元反応>
実施例1及び比較例1のそれぞれについて、CO 10mL/minとH 40mL/minの混合ガスを反応器に流しつつ、ヒータを駆動して所定の温度まで粉末触媒成形体を加熱した。粉末触媒成形体の温度を熱電対で計測し、その値が各熱電対でほぼ一定になったところで粉末触媒成形体通過後のガスをサンプリングした。
【0067】
サンプリング終了後はヒータ設定温度を変更し、上記と同様にして反応槽にCO/H混合ガスを供給し、粉末触媒成形体通過後のガスをサンプリングした。実施例1のヒータ設定温度は160℃、180℃、200℃、220℃とした。比較例1のヒータ設定温度は160℃、180℃、200℃、220℃、240℃とした。
【0068】
サンプリングしたガスをガスクロマトグラフ分析し、分析チャート中のCH(生成物)とCO(未反応原料)のピークから反応転化率を算出した。なお、他条件の結果とグラフ等で比較する際は、得られた転化率を計測された触媒の最高温度の関数として表した。
【0069】
<結果>
図8は、実施例1及び比較例1に係る粉末触媒成形体の触媒性能を示すグラフである。横軸は測定温度を示し、縦軸はCHの収率を示す。実施例1の測定温度は、163℃、183℃、203℃、222℃であった。比較例1の測定温度は、155℃、174℃、190℃、210℃、234℃であった。図8に示すように、実施例1におけるCHの収率は、反応温度が163℃のとき40.4%であり、反応温度を上げるにつれて収率も上がり、183℃のとき72.3%、202℃のとき94.5%、222℃のとき99.4%であった。比較例1におけるCHの収率は、155°Cのとき31.3%であり、反応温度を上げるにつれて収率も上がり、210℃のとき90.5%であり、234℃のとき97.2%であった。図8に示す実施例1及び比較例1の近似曲線は同様である。したがって、実施例1に係る粉末触媒成形体の触媒性能は、各反応温度において比較例1と同等であり、実施例1の方法で粉末触媒成形体は触媒としての機能を維持していることが分かる。
【0070】
[実施例2]
実施例1と同様にして、アルミナ板に粉末触媒が保持された粉末触媒成形体を作製した。実施例2において得られた粉末触媒成形体による粉末触媒の保持量は、70mgであった。このように、1.9cm×1.2cm×0.2cm=0.456cmのアルミナ板に対し70mgの粉末触媒を保持することができた。すなわち、153.5mg/cmの保持量を達成できた。
【0071】
実験例2:触媒層の形状の変更
[実施例3]
実施例1に係る粉末触媒成形体を平面上に縦3枚×横4枚(計12枚)並べ、平板構造の反応器を作製した。図9は、実施例3に係る平板構造の反応器の写真である。
【0072】
実施例1と同様にして、実施例3に係る反応器を用いて、CO/H混合ガスを供給し、触媒層通過後のガスをサンプリングした。
【0073】
図10は、実施例1及び実施例3に係る粉末触媒成形体の触媒性能を示すグラフである。図10に示すように、実施例3は、実施例1と比較してCHの収率が若干低下しているものの、ほぼ同等の収率が得られている。したがって、粉末触媒成形体を積層した場合(実施例1)も平面上に配置した場合(実施例3)も、触媒性能は維持されることが分かった。
【0074】
実験例3:水-アルコール混合液の濃度の変更
[実施例4]
水-IPA混合液の混合比を、体積比で水50%:IPA50%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る粉末触媒成形体を作製した。
【0075】
[実施例5]
水-IPA混合液の混合比を水80%:IPA20%としたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5に係る粉末触媒成形体を作製した。
【0076】
[実施例6]
水-IPA混合液の混合比を水20%:IPA80%としたこと以外は実施例4と同様にして、実施例6に係る粉末触媒成形体を作製した。
【0077】
[比較例2]
水-IPA混合液の混合比を水100%:IPA0%としたこと以外は実施例4と同様にして、比較例2に係る粉末触媒成形体を作製した。
【0078】
[比較例3]
水-IPA混合液の混合比を水0%:IPA100%としたこと以外は実施例4と同様にして、比較例3に係る粉末触媒成形体を作製した。
【0079】
[成形性の評価]
実施例4~6、並びに比較例2及び3に係る粉末触媒成形体の成形性を以下のように評価した。
【0080】
<母材へのスラリー含浸中の作業性>
実施例4…スラリーの含浸中に問題なく作業できた。
実施例5…スラリーの含浸中に問題なく作業できた。
実施例6…スラリーの含浸中に問題なく作業できたが、作業性は実施例4及び5より若干劣った。
比較例2…スラリー(粉末触媒の水分散液)がほとんどアルミナ板に付着しなかった。
比較例3…スラリー(粉末触媒のIPA分散液)の乾燥が早すぎて作業できなかった。
【0081】
<成形体の粉末触媒の固定状態>
実施例4…アルミナ板の全体に粉末触媒が固定化されており、粉末触媒の脱離や粉化は見られなかった。
実施例5…アルミナ板の全体に粉末触媒が固定化されており、粉末触媒の脱離や粉化は見られなかった。
実施例6…アルミナ板の全体に粉末触媒が固定化されており、粉末触媒の脱離や粉化は見られなかった。
比較例2…固定化された粉末触媒が少なかった。
比較例3…固定化された粉末触媒が少なかった。
【0082】
<反応後の粉末触媒の固定状態>
実施例4~6の粉末触媒成形体を用いて、実施例1と同様にして二酸化炭素の水素還元を行った。その後、粉末触媒の固定状態を確認した。
実施例4…アルミナ板の全体に粉末触媒が固定化されており、粉末触媒の脱離や粉化は見られなかった。
実施例5…アルミナ板の全体に粉末触媒が固定化されており、粉末触媒の脱離や粉化は見られなかった。
実施例6…アルミナ板の全体に粉末触媒が固定化されており、粉末触媒の脱離や粉化は見られなかった。
【0083】
実験例4:バインダの使用及び金属製成形母材使用
[比較例4]
<粉末触媒成形体の製造>
多孔質成形母材として、SUS多孔質体(株式会社長峰製作所製、MF-55)を用意した。SUS多孔質体の材質はSUS316Lであり、セル密度は55PPIであり、平均気孔径は0.20mmであり、平均気孔率は86%であった。
【0084】
実験例1で作製した粉末触媒と、バインダとしてのアルミナ系接着剤とを混合し、スラリーを得た。当該スラリーを多孔質SUSに塗布し、120℃以下で30分乾燥させて、比較例4に係る粉末触媒成形体を得た。
【0085】
[比較例5]
多孔質成形母材として、チタン多孔質体(材質:Ti)を用いたこと以外は比較例4と同様にして、比較例5に係る粉末触媒成形体を得た。
【0086】
[比較例6]
多孔質成形母材として、銅多孔質体(材質:Cu)を用いたこと以外は比較例4と同様にして、比較例6に係る粉末触媒成形体を得た。
【0087】
[触媒性能の評価]
実施例1と同様にして、比較例4~6に係る粉末触媒成形体を用いて二酸化炭素の水素還元反応を実施し、触媒性能を評価した。その結果、比較例4~6のいずれにおいてもCHの収率が低く、ほとんど反応しなかったことが分かった。これは、バインダが粉末触媒を覆い、粉末触媒の露出面積が低くなったためだと考えられる。
【0088】
実験例5:粉末触媒成形体の焼成
<焼成条件>
実施例1~6及び比較例2~6の粉末触媒成形体のそれぞれを焼成した。焼成条件は以下の4つの条件とし、実施例1~6及び比較例2~6の粉末触媒成形体を4つずつ作製して、各粉末触媒成形体をそれぞれの条件で焼成した。
条件1…30℃、8h
条件2…80℃、1h
条件3…120℃、30分
条件4…150℃、10分
【0089】
<焼成後の粉末触媒の固定状態>
焼成後の粉末触媒成形体を固定し、エアガンで負荷を与えた後、粉末触媒の固定状態を確認した。実施例1~6のすべてにおいて、条件1~4の焼成後、温度依存性はなく粉末触媒が固定化されていた。このことから、粉末触媒成形体を焼成しても粉末触媒の固定状態に変化はなく、焼成を行っても問題ないことが示された。また、サバチエ触媒の使用温度(約220℃)より低い温度で焼成を行ったため、触媒性能も維持されると言える。
【0090】
実験例6:粉末触媒の他の成形方法
[比較例7]
粉末触媒の担体となるTiO粒子と水とを、1:10で混合し、スラリーを得た。スラリーをペレット状(大きさ:5mm)に成形し、80℃で30分間乾燥した。
【0091】
水-IPA混合液(体積比で水25%:IPA75%)と、実験例1と同様の方法で調製したRu担持TiO触媒で作製した粉末触媒とを、混合比率(重量比)10:1で混合して粉末触媒を分散させ、スラリーを得た。当該スラリーを、上記ペレット表面に塗布し、80℃で30分間乾燥した。これにより、比較例7に係る粉末触媒ペレットを作製した。
【0092】
[比較例8]
粉末触媒の担体となるTiO粒子と、実験例1と同様の方法で調製したRu担持TiO触媒で作製した粉末触媒とを、25:75で混合し、混合粉末を得た。水-IPA混合液(体積比で水25%:IPA75%)と、上記の混合粉末とを、混合比率(重量比)10:1で混合し、スラリーを得た。当該スラリーをペレット状(大きさ:5mm)に成形し、80℃で乾燥した。これにより、比較例8に係る粉末触媒ペレットを作製した。
【0093】
[比較例9]
TiO粒子と粉末触媒の混合比を75:25としたこと以外は比較例8と同様にして、比較例9に係る粉末触媒ペレットを作製した。
【0094】
[成形性の評価]
比較例7に係る粉末触媒のペレットを目視で確認したところ、乾燥後にペレット表面から粉末触媒が脱離してしまい、取り扱いが難しくなった。比較例8及び9に係る粉末触媒のペレットを目視で確認したところ、乾燥後にペレットは崩れていた。このように、比較例7~9のようにペレットを形成し乾燥するという方法では、粉末触媒の成形性が優れず、このような粉末触媒の成形体を反応器に充填する際に詰まりの原因となる。
【符号の説明】
【0095】
10…多孔質成形母材
20…機能性材料成形体
100…反応器
101…反応槽
102…多孔質材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10