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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117862
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/70 20180101AFI20220804BHJP
   F21S 41/24 20180101ALI20220804BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20220804BHJP
   F21S 41/47 20180101ALI20220804BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20220804BHJP
   F21S 41/176 20180101ALI20220804BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20220804BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220804BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20220804BHJP
【FI】
F21S45/70
F21S41/24
F21S41/16
F21S41/47
F21S41/32
F21S41/176
F21W102:00
F21Y115:30
F21W102:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014615
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 孝幸
(57)【要約】
【課題】レーザー光源に有する蛍光体が破損した場合、レンズ体の出射面から青色レーザー光が出射するのを抑制できる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】灯具ユニットAは、レーザー光源12と、レーザー光源12の前方位置に配置されるレンズ体22と、を備える。レーザー光源12は、青色レーザー光を放出する半導体レーザー素子17と、青色レーザー光が通過することにより白色拡散光Wを出射する蛍光体18と、を有する。レンズ体22は、レーザー光源12から出射される光を入射する入射部23と、入射部23からの光をレンズ外部へ出射する出射面28と、を有する。入射部23にレーザー光源12からの入射光を内側で反射する外周光学面25を有する。外周光学面25に、半導体レーザー素子17からレンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面29を有する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源と、前記レーザー光源の前方位置に配置されるレンズ体と、を備える車両用灯具において、
前記レーザー光源は、青色レーザー光を放出する半導体レーザー素子と、青色レーザー光が通過することにより白色拡散光を出射する蛍光体と、を有し、
前記レンズ体は、前記レーザー光源から出射される光を入射する入射部と、前記入射部からの光をレンズ外部へ出射する出射面と、を有し、
前記入射部に前記レーザー光源からの入射光を内側で反射する外周光学面を有し、
前記外周光学面に、前記半導体レーザー素子からレンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面を有する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用灯具において、
前記レンズ体を、前記入射部からの入射光を内方に導いて前記出射面からレンズ外部へ出射光を出す1つの複合光学レンズによる構成とし、
前記レンズ体は、前記レーザー光源から出射される光をレンズ内部に入射する入射部と、当該入射部からレンズ内部に入射された光を内面反射する反射面と、当該反射面で内面反射した光をレンズ外部へ出射する出射面と、を有する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された車両用灯具において、
前記レーザー光源は、前記半導体レーザー素子からの出射光が、前記レーザー光源の向きである出射方向から外側へ傾斜する傾斜方向に向かって青色レーザー光路領域を形成する設定とし、
前記屈折光学面を、前記外周光学面において前記青色レーザー光路領域と重なり合う位置に配置する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載された車両用灯具において、
前記レンズ体に有する前記入射部の外周位置に、レンズ外部に放出される青色レーザー光を遮光する遮光部材を設ける
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載された車両用灯具において、
前記入射部は、前記レーザー光源からの出射光を入射する導光入射面と、前記外周光学面と、を有し、
前記導光入射面は、全体形状が前記レンズ体の内側に凹んで光を導入する形状であり、湾曲入射面部と環状入射面部とを有し、
前記レーザー光源の発光中心点を、前記レーザー光源から前記環状入射面部へ入射して前記外周光学面で反射する反射光線が、前記外周光学面により形成される仮想焦点から引かれる仮想光線に一致する位置に配置する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
請求項5に記載された車両用灯具において、
前記レンズ体は、前記入射部と前記出射面との間に反射面を有し、
前記反射面は、前記入射部からの入射光を反射する面を、前記外周光学面により形成される前記仮想焦点と、前記出射面の焦点との2つを焦点とする楕円を基調とする光学面により形成し、
前記出射面は、前記反射面での反射後に前記出射面の焦点付近に集光させた光を、少なくとも光軸方向に直交する水平方向に偏向させる光学面により形成する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項7】
請求項6に記載された車両用灯具において、
前記反射面を第1反射面としたとき、前記第1反射面と前記出射面との間の位置に第2反射面を有し、
前記第2反射面は、前記第1反射面からの反射光の一部を、前記出射面の焦点付近に反射させる光学面により形成し、
前記出射面は、前記第1反射面で反射された光、及び、前記第1反射面と前記第2反射面で反射された光を、少なくとも光軸方向に直交する水平方向に偏向させる光学面により形成する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項8】
請求項1に記載された車両用灯具において、
前記レンズ体を、前記レーザー光源からの入射光を内方に導く前記入射部を有する第1レンズ体と、レンズ外部へ出射光を出す前記出射面を有する第2レンズ体と、による構成とし、
前記第1レンズ体と前記第2レンズ体との間に、前記第1レンズ体から出射される光を前記第2レンズ体に向けて反射するリフレクタを配置する
ことを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用灯具は、レーザー光源と、レーザー光源の前方に配置されるレンズ体と、レーザー光源を保持するヒートシンクと、を備える。レーザー光源は、青色レーザー光を放出する半導体レーザー素子と、青色レーザー光を集光する集光レンズと、集光された青色レーザー光を白色光に波長変換する波長変換部材(以下、「蛍光体」という。)と、を有する。そして、白色光を放出する蛍光体が、レンズ体の入射面の近接位置に配置される車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-10634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用灯具は、例えば、レンズ体が前方から重度の衝撃力等を受けて光軸方向に後退し、レーザー光源との干渉により蛍光体が破損した場合、青色レーザー光がレンズ体の出射面からヘッドランプ外に出射して、人体の目に悪影響を与えるおそれがある。
【0005】
本開示は、上記課題に着目してなされたもので、レーザー光源に有する蛍光体が破損した場合、レンズ体の出射面から青色レーザー光が出射するのを抑制できる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の車両用灯具は、レーザー光源と、レーザー光源の前方位置に配置されるレンズ体と、を備える。レーザー光源は、青色レーザー光を放出する半導体レーザー素子と、青色レーザー光が通過することにより白色拡散光を出射する蛍光体と、を有する。レンズ体は、レーザー光源から出射される光を入射する入射部と、入射部からの光をレンズ外部へ出射する出射面と、を有する。入射部にレーザー光源からの入射光を内側で反射する外周光学面を有する。外周光学面に、半導体レーザー素子からレンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面を有する。
【発明の効果】
【0007】
よって、レーザー光源に有する蛍光体が破損した場合、レンズ体の出射面から青色レーザー光が出射するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の灯具ユニット(車両用灯具)を示す斜視図である。
図2】実施例1の灯具ユニットを示す分解斜視図である。
図3】実施例1の灯具ユニットを示す正面図である。
図4】実施例1の灯具ユニットを示す図3のI―I線による断面図である。
図5図4のII部を示す拡大断面図である。
図6】正常時のレーザー光源及び白色拡散光を示す説明図である。
図7】異常時のレーザー光源及び青色レーザー光路領域を示す説明図である。
図8】実施例1における青色レーザー光路領域と4箇所の屈折光学面との位置関係を示す概要説明図である。
図9】実施例1の灯具ユニットに備えるレンズ体を示す縦断側面図である。
図10】実施例1の灯具ユニットに備えるレンズ部材を入射側から視たときを示す斜視図である。
図11図10のIII部を示す入射部拡大斜視図である。
図12】屈折光学面を有さない比較例の灯具ユニットにおいて蛍光体が破損したときの作用を示す作用説明図である。
図13】実施例1の灯具ユニットにおいて蛍光体が破損したときの作用を示す作用説明図である。
図14】実施例2の灯具ユニット(車両用灯具)を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による車両用灯具を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例0010】
実施例1における車両用灯具は、自動車等の車両での灯具ユニットとして用いられるものであり、例えば、ヘッドランプやフォグランプ等に適用される。灯具ユニットは、車両の前部の左右両側に配置され、ランプハウジングの開放された前端がアウターレンズで覆われて形成される灯室に、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して設けられる。以下の説明では、灯具ユニットにおいて、車両の前方直進時における進行方向であって光を照射する方向を光軸方向(図面ではZ)とし、車両に搭載された状態で上下をあらわす方向を上下方向(図面ではY)とし、光軸方向及び上下方向に直交する方向を幅方向(図面ではX)とする。以下、実施例1の構成を、「灯具ユニットの全体構成」、「レーザー光源の詳細構成」、「レンズ体の詳細構成」に分けて説明する。
【0011】
まず、図1図4を参照して灯具ユニットAの全体構成を説明する。
【0012】
灯具ユニットAは、図2に示すように、光源部材1と、レンズ部材2と、ヒートシンク部材3と、遮光部材4と、を備える。灯具ユニットAは、図1に示すように、各部材1,2,3,4を集約して一体に組み付けたユニット構成とされている。
【0013】
光源部材1は、レンズ部材2の後方位置に配置され、レンズ部材2への入射光になる光源が設けられる部材である。光源部材1は、熱伝達部材11と、熱伝達部材11上に配置されたレーザー光源12と、を有する構成としている。
【0014】
熱伝達部材11は、ヒートシンク部材3のベース部31に形成された光源固定面33に固定される。熱伝達部材11は、レーザー光源12で発生する熱を速やかに広い範囲に拡散しつつ、熱を効率よくヒートシンク部材3に伝達させる部材である。熱伝達部材11は、熱伝導率の高い金属材料や樹脂材料で板状に形成されていて、実施例1ではアルミニウム材を用いている。熱伝達部材11には、一対の第1位置決め孔13と、一対の第1ネジ通し孔14とが設けられている。
【0015】
第1位置決め孔13は、光源固定面33から突出する一対の第1位置決め突起34に対応して設けられる。即ち、一対の第1位置決め孔13を一対の第1位置決め突起34に嵌め入れることにより、ヒートシンク部材3に対して光源部材1の取り付け位置を決める位置決め機能を発揮する。
【0016】
第1ネジ通し孔14は、光源固定面33に形成された一対の第1ネジ孔35に対応する位置に設けられる。即ち、一対の第1ネジ通し孔14に一対の光源用ネジ15を通し、一対の光源用ネジ15を一対の第1ネジ孔35へねじ込みながら締め付けることにより、ヒートシンク部材3に対して光源部材1を固定する固定機能を発揮する。
【0017】
レーザー光源12は、発光チップ等が内蔵された基体16が、接着剤等により熱伝達部材11の中央部位置に固定されている。なお、レーザー光源12の詳細構成については後述する。
【0018】
レンズ部材2は、光源部材1の前方位置に配置され、光源部材1からの入射光に基づいて配光パターンを形成するものであり、透明な樹脂(例えば、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂等)で形成される。レンズ部材2は、レンズフランジ部21と、レンズ体22と、を有する構成としている。
【0019】
レンズフランジ部21は、一対の平板フランジ部21aと、一対の固定フランジ部21bと、を有して構成される。一対の平板フランジ部21aは、レンズ体22の前端部両側から後端部両側へ向かう方向に延出する。一対の固定フランジ部21bは、一対の平板フランジ部21aの途中位置からレーザー光源12の出射方向M(図9を参照)に直交する方向に突出する。一対の固定フランジ部21bには、一対の第2位置決め孔21cと、一対の第2ネジ通し孔21dとが設けられている。
【0020】
第2位置決め孔21cは、ヒートシンク部材3のベース部31に設けられた一対のレンズ支柱36のレンズ支持面36aから突出する一対の第2位置決め突起37の対応位置に設けられる。即ち、一対の第2位置決め孔21cを一対の第2位置決め突起37に嵌め入れることにより、ヒートシンク部材3に対してレンズ部材2の取り付け位置を決める位置決め機能を発揮する。
【0021】
第2ネジ通し孔21dは、一対のレンズ支柱36のレンズ支持面36aに形成された一対の第2ネジ孔38の対応位置に設けられる。即ち、一対の第2ネジ通し孔21dに一対のレンズ用ネジ20を通し、一対のレンズ用ネジ20を一対の第2ネジ孔38へねじ込みながら締め付けることにより、ヒートシンク部材3に対してレンズ部材2を固定する固定機能を発揮する。
【0022】
レンズ体22は、レーザー光源12からの入射光を内方に導いて配光パターンを形成する1つの複合光学レンズによる構成とされている。なお、レンズ体22の詳細構成については後述する。
【0023】
ヒートシンク部材3は、光源部材1を固定する位置に配置され、光源部材1で発生する熱を外部に逃がす(放射させる)部材であり、熱伝導率の高い金属材料や樹脂材料により形成されている。実施例1のヒートシンク部材3は、アルミダイカストにより形成されている。ヒートシンク部材3は、ベース部31と、複数の放熱フィン32と、一対のレンズ支柱36と、を有する構成としている。
【0024】
ベース部31は、レーザー光源12の出射方向Mに直交する平板状とされ、ベース表面31aの中央部に光源固定面33が設けられている。光源固定面33は、光源部材1の取り付け固定位置になる面であり、ベース表面31aから僅かに突出した平坦な段差面とされる。光源固定面33には、一対の第1位置決め突起34と、一対の第1ネジ孔35とが設けられている。一対の第1位置決め突起34は、光源固定面33における上下方向の上側において、第1ネジ孔35を挟む位置関係で幅方向の両端部から突出させて設けられている。一対の第1ネジ孔35は、光源固定面33における上下方向の両端部の位置にそれぞれ設けられている。ベース表面31aのうち光源固定面33の外周部位置には、遮光部材4をネジ止め固定する一対の第3ネジ孔39が、上下方向の上側位置と下側位置という対角関係の位置に分けて設けられている。
【0025】
放熱フィン32は、ベース部31のベース表面31aとは反対の面から、反対の面に直交する方向に突出して設けられる。各放熱フィン32は、幅方向(X軸方向)に直交する板状とされ、幅方向に所定の間隔を開けて複数枚が並列に設けられている。
【0026】
レンズ支柱36は、ベース表面31aのうち光源固定面33の外周部位置であって、光源固定面33を幅方向で挟む両側位置に、ベース表面31aから光軸方向の前方側に突出して一対形成されている。一対のレンズ支柱36は、レンズ部材2を支持する支持機能と共に、光源部材1とレンズ部材2との距離を確保することにより、光源部材1からの熱をレンズ部材2に伝わりにくくする機能を持たせて設けられている。レンズ支柱36の長円筒形状によるレンズ支持面36aには、一対の第2位置決め突起37と、一対の第2ネジ孔38とが設けられている。第2位置決め突起37は、レンズ支持面36aの上下方向の上部位置に設けられており、光軸方向の前方側に突出されている。第2ネジ孔38は、レンズ支持面36aの上下方向の下部位置に設けられている。なお、レンズ支柱36は、基本的にベース部材31と一体にアルミダイカストにより形成される。しかし、レンズ支柱36をベース部材31と別体の断熱性素材により形成し、ベース表面31aに固定するようにしても良い。
【0027】
遮光部材4は、レンズ体22に有する入射部23の外周位置に配置され、屈折によってレンズ外部に放出される青色レーザー光を遮光する部材である。遮光部材4の材料としては、青色レーザー光を遮光する表面処理が施された金属材料、青色レーザー光の遮光機能を有する樹脂材料、等が用いられる。遮光部材4は、円筒状遮光部41と、遮光フランジ部42と、固定脚部43と、を有する構成としている。
【0028】
円筒状遮光部41は、レンズ体22に有する入射部23から所定の隙間を介在させた外周位置に配置され、入射部23の全周を覆っている。入射部23の全周を覆う場合、円筒状遮光部41の出射方向Mの円筒長を、入射部23の出射方向長に余裕長さを加えた長さに設定している。円筒状遮光部41のうち幅方向の二箇所の円筒前端位置には、半円形状による切り欠き部41aを設けている。
【0029】
遮光フランジ部42は、円筒状遮光部41の基端から垂直方向外側に屈曲させることにより一体に形成されている。遮光フランジ部42は、円筒状遮光部41の基端から全周方向に延びて外形形状が方形状とされている。
【0030】
固定脚部43は、遮光フランジ部42の4つの方形状角部の位置からそれぞれヒートシンク部材3のベース表面31aに向かって屈曲させ、さらに、ベース表面31aに沿う方向へ屈曲させている。4つの固定脚部43のうち対角配置の2つの固定脚部43には、ヒートシンク部材3に設けられた一対の第3ネジ孔39に符合する位置に、第3ネジ通し孔44を形成している。即ち、遮光用ネジ45を第3ネジ通し孔44に通し、第3ネジ孔39へねじ込みながら締め付けることにより、ヒートシンク部材3に対して遮光部材4がネジ止め固定される。なお、4つの固定脚部43のうち残りの2つの固定脚部43には、第3ネジ通し孔44を形成していなく、ヒートシンク部材3に対して遮光部材4をネジ止め固定した状態で、2つの固定脚部43をベース表面31aに密着させている。
【0031】
次に、図5図7を参照してレーザー光源12の詳細構成を説明する。
【0032】
レーザー光源12は、基体16の内部に、青色レーザー光を放出する半導体レーザー素子17と、青色レーザー光が通過することにより白色拡散光Wを出射する蛍光体18と、を有する。なお、レーザー光源12は、半導体に電流を流してレーザー発振させる半導体レーザー素子17を光源とするため、LD光源(LD:「Laser Diode」の略称)とも呼ばれる。
【0033】
半導体レーザー素子17は、基体16に配置され、図7に示すように、青色レーザー光がレーザー光源12の向きである出射軸Bから外側へ傾斜する外側傾斜方向に向かって2つの青色レーザー光路領域Cを形成する設定としている。例えば、半導体レーザー素子17を2個設け、2個の半導体レーザー素子17のそれぞれに対応する図外の2つの光反射部を基体16に配置する構成とすることで、2つの青色レーザー光路領域Cに分かれる設定としている。なお、2つの光反射部には、2個の半導体レーザー素子17からの青色レーザー光を、2つの青色レーザー光路領域Cにそれぞれ分ける反射面を有する。
【0034】
蛍光体18は、半導体レーザー素子17の前方位置であって、レンズ体22に近接する位置に配置され、図6に示すように、半導体レーザー素子17から出射される青色レーザー光が通過することにより、蛍光体18を通過した光を白色拡散光Wにする。ここで、青色レーザー光は、発光ダイオードからのLED光に比べて指向性(直進性)の強い光であり、蛍光体18の下面に対し2つの領域に分けて照射される。白色拡散光Wは、青色レーザー光を蛍光体18(黄色)において白色光に波長変換したもので、レーザー光源12の向きである出射軸Bを中心として全体に拡散される。蛍光体18が黄色である理由は、青色レーザー光との混色により疑似白色光が得られることによる。
【0035】
ここで、レーザー光源12において蛍光体18を有しないときは、半導体レーザー素子17からの2つに分かれ青色レーザー光路が、2つの青色レーザー光路領域Cを形成する(図7を参照)。この2つの青色レーザー光路領域Cは、レーザー光源12からの出射直後の位置であって、出射光軸に直交する面上において、上下に分かれた長方形状による領域である(図8を参照)。そして、2つの青色レーザー光路領域Cは、図8の左右両側領域でそれ以外の中間部領域よりも光量が高くなる。なお、半導体レーザー素子17には、図外のコネクタ接続部を介して外部コネクタが接続されることにより、電力が供給されて適宜点灯される。
【0036】
次に、図8図11を参照してレンズ体22の詳細構成を説明する。
【0037】
レンズ体22は、入射部23と、導光入射面24と、外周光学面25と、第1反射面26と、第2反射面27と、出射面28と、屈折光学面29と、を有する。
【0038】
入射部23は、レーザー光源12から出射される光をレンズ内部に入射するもので、レーザー光源12からの出射光を入射する導光入射面24と、内側で反射する外周光学面25と、を有する。
【0039】
導光入射面24は、全体形状がレンズ体22の内側に凹んで光を導入する形状であり、その中央部で外側に凸形状の湾曲入射面部24aと、湾曲入射面部24aを取り巻く周囲の円錐面形状による環状入射面部24bと、を有する。そして、図9に示すように、レーザー光源12の発光中心点Dを、導光入射面24に向かう近接位置に配置することで、レーザー光源12からの出射光を、湾曲入射面部24aと環状入射面部24bとに入射する点にしている。
【0040】
外周光学面25は、コリメータの原理を応用して内側で反射する回転放物面もしくは回転放物面を基調とする光学面である。よって、レーザー光源12の発光中心点Dは、図9に示すように、レーザー光源12から環状入射面部24bへ入射して外周光学面25で反射する反射光線が、外周光学面25により形成される仮想焦点Eから引かれる仮想光線Fに一致する位置への配置としている。
【0041】
ここで、「コリメータの原理」とは、レンズは無限遠(∞)からの光をその焦点位置に結像するという性質を逆方向に利用したもので、レンズの焦点位置に点光源を置けば、その光はレンズから無限遠(∞)を目指して平行光として出射する原理をいう。
【0042】
第1反射面26は、レンズ体22の上面位置に配置され、入射部23からの入射光を反射する光学面により形成している。第1反射面26の光学面は、図9に示すように、外周光学面25により形成される仮想焦点Eと、出射面28の焦点Gとの2つを焦点とする楕円Hを基調として形成している。なお、第1反射面26や第2反射面27は、蒸着や塗装等によりアルミや銀等をレンズ体22に接着させることで光を反射させるものとしてもよい。
【0043】
第2反射面27は、第1反射面26と出射面28との間であって、レンズ体22の下面位置に配置され、第1反射面26からの反射光の一部を、出射面28の焦点G付近に反射させる光学面により形成されている。第2反射面27の光学面は、図9に示すように、すれ違いビーム配光パターンにおけるカットオフラインの形状に合わせ、レンズ体22の表面から内側に窪んでエッジを有する方形窪み形状に形成されている。つまり、第2反射面27のうち、出射面28の焦点Gの近傍に有するエッジ(縁部)により第1反射面26からの反射光を遮光することでカットオフラインを形成する。なお、図9の仮想線Jに示すように、方形窪み形状による第2反射面27を無くして、第1反射面26のみを有するレンズ体22の構成にすると、走行ビーム配光パターンを形成することになる。
【0044】
出射面28は、内面反射した光をレンズ外部へ出射する面であり、第1反射面26での反射後に出射面28の焦点G付近に反射させた光を、少なくとも水平方向に偏向させる光学面により形成している。又は、第1反射面26及び第2反射面27での反射後に出射面28の焦点G付近に反射させた光を、少なくとも水平方向に偏向させる光学面により形成している。ここで、「水平方向」とは、光軸方向Lに直交するX軸方向をいう。そして、「少なくとも水平方向に偏向させる」とは、光軸方向Lへの出射光のうち水平方向(=X軸方向)に対し、配光パターンの設定形状にしたがって偏向させるように出射面28の光学面を形成することを意味する。
【0045】
屈折光学面29は、入射部23の外周光学面25の中間部位置に複数個形成される。屈折光学面29は、半導体レーザー素子17からレンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する光学面である。屈折光学面29は、図10及び図11に示すように、外部放出面29aを円形状又は楕円形状とし、導光入射面24側を外周光学面25から突出させ、出射方向Mに向かうにしたがって突出量を小さくし、外周光学面25に滑らかに繋がる面に形成されている。実施例1での屈折光学面29は、入射部23の外周光学面25において、2つの青色レーザー光路領域Cと重なり合う90度等角の4箇所位置に限定して部分的に配置している。
【0046】
ここで、2つの青色レーザー光路領域Cのうち出射方向Mから視たとき、図8に示すように、上側の領域を青色レーザー光路領域CUとし、下側の領域を青色レーザー光路領域CDとする。一方、4箇所の屈折光学面29を出射方向Mから視たとき、図8に示すように、左上の光学面を屈折光学面29-1とし、右上の光学面を屈折光学面29-2とし、右下の光学面を屈折光学面29-3とし、左下の光学面を屈折光学面29-4とする。このとき、青色レーザー光路領域CUと2箇所の屈折光学面29-1、29-2とが上部両側領域で重なり合い、青色レーザー光路領域CDと2箇所の屈折光学面29-3、29-4とが下部両側領域で重なり合う。つまり、蛍光体18の破損によりレーザー光源12から青色レーザー光が出射された場合、互いに重なり合う領域を通過する高い光量の青色レーザー光を、屈折光学面29での屈折によってレンズ外部に放出する位置関係の構成としている。
【0047】
次に、実施例1における作用を、「灯具ユニットの組付け作用」、「灯具ユニットの特徴作用」に分けて説明する。
【0048】
図2を参照して灯具ユニットAの組付け作用を説明する。
【0049】
先ず、光源部材1の一対の第1位置決め孔13を、ヒートシンク部材3の一対の第1位置決め突起34に嵌め入れる。これにより、ヒートシンク部材3に対して光源部材1の取り付け位置が決められる。そして、一対の光源用ネジ15を、一対の第1ネジ通し孔14に通し、一対の第1ネジ孔35へねじ込みながら締め付けられる。これにより、ヒートシンク部材3に対して光源部材1が位置決め固定される。
【0050】
次に、一対の遮光用ネジ45を、遮光部材4の固定脚部43に形成された第3ネジ通し孔44に通し、ヒートシンク部材3のベース部31に形成された第3ネジ孔39へねじ込みながら締め付けられる。これにより、ヒートシンク部材3に対して遮光部材4がネジ止め固定される。
【0051】
続いて、レンズ部材2に形成された第2位置決め孔21cを、一対のレンズ支柱36のレンズ支持面36aから突出する一対の第2位置決め突起37に嵌め入れる。これにより、ヒートシンク部材3に対してレンズ部材2の取り付け位置を決められる。そして、一対のレンズ用ネジ20を一対の第2ネジ通し孔21dに通し、一対のレンズ用ネジ20を一対の第2ネジ孔38へねじ込みながら締め付けられる。これにより、ヒートシンク部材3に対してレンズ部材2が位置決め固定される。
【0052】
以上の手順を経過して灯具ユニットAとして組付けられる。この灯具ユニットAは、灯室に設けられて、コネクタ接続部を介して光源部材1に外部コネクタを接続することで、車両への組付けを完了する。よって、灯具ユニットAは、外部コネクタ及びコネクタ接続部を介する点灯制御回路から光源部材1の半導体レーザー素子17へと電力を供給することで、レーザー光源12を適宜点灯したり消灯したりすることができる。
【0053】
次に、図12及び図13を参照して灯具ユニットの特徴作用を説明する。
【0054】
実施例1では、入射部23に入射された光を内側で反射する外周光学面25に、半導体レーザー素子17からレンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面29を有する構成を採用している。
【0055】
例えば、レンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面を有さないものを比較例とする。この比較例の場合、レーザー光源に有する蛍光体が破損により存在しなくなると、図12に示すように、青色レーザー光が、白色光と同様の光路を描いて出射面からヘッドランプ外に出射する。このため、ヘッドランプ外に出射される青色レーザー光が持つ光エネルギーにより、人体の目に悪影響を与えるおそれがある。
【0056】
これに対し、実施例1の場合、半導体レーザー素子17からレンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面29を有する。このため、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損により一部又は全部が存在しなくなると、図13に示すように、半導体レーザー素子17からレンズ内部に入射された青色レーザー光の大部分を、屈折光学面29からレンズ外部に放出させることができる。よって、出射面28からヘッドランプ外に出射する青色レーザー光の出射量が、人体の目に悪影響を与えないレベルまで低く抑えられる。この結果、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損した場合、レンズ体22の出射面28から青色レーザー光が出射するのを抑制できる。
【0057】
さらに、青色レーザー光を屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面29を、レンズ体22の第1反射面26等に有するのではなく、入射部23の外周光学面25に有する構成を採用している。このため、半導体レーザー素子17から屈折光学面29までの距離が、第1反射面26等に屈折光学面を有する場合に比べて短い距離になる。半導体レーザー素子17から屈折光学面29までの距離が短くなると、青色レーザー光路領域Cの拡大幅が小さくなることで、屈折光学面29の設定面積を狭い面積に抑えても青色レーザー光の放出効率として所望の効率を得ることができる。この結果、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損していない正常時において、レーザー光源12から出射される白色拡散光Wのうち、屈折光学面29からレンズ外部へ放出されることになる光量を低く抑えることができる。つまり、レーザー光源12の正常時において、異常時対策として設けた屈折光学面29による影響を小さく抑えることができる。
【0058】
実施例1では、レーザー光源12は、半導体レーザー素子17からの出射光が、レーザー光源12の向きである出射方向Mから外側へ傾斜する傾斜方向に向かって青色レーザー光路領域Cが形成される設定としている。そして、屈折光学面29を、外周光学面25において青色レーザー光路領域Cと重なり合う位置に配置している。
【0059】
即ち、レーザー光源12の設定を、出射方向Mから外側へ傾斜する傾斜方向に向かって青色レーザー光路領域Cが形成される設定としている。このため、屈折光学面29へ青色レーザー光が入射する角度が、出射方向Mからの傾斜角度により大きくなり、青色レーザー光を屈折によってレンズ外部に放出させやすくなる。加えて、実施例1では、屈折光学面29を、外周光学面25において青色レーザー光路領域Cと重なり合う位置に配置している。よって、屈折光学面29から青色レーザー光を屈折によってレンズ外部への放出効率が向上することになる。この結果、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損した場合、レンズ体22の屈折光学面29から屈折によって青色レーザー光を効率良くレンズ外部に放出できる。特に、実施例1では、屈折光学面29を青色レーザー光路領域Cのうち、光量が高い左右両側領域と重なり合う位置に配置している。このため、蛍光体18の破損時、屈折光学面29を4箇所のみに設けても青色レーザー光を効率良くレンズ外部に放出できると共に、蛍光体18の正常時、出射される白色拡散光Wの光量損失も抑制できる。
【0060】
実施例1では、レンズ体22に有する入射部23の外周位置に、レンズ外部に放出される青色レーザー光を遮光する遮光部材4を設けている。
【0061】
即ち、レンズ体22に有する入射部23の外周位置に青色レーザー光を遮光する遮光部材4を設けているため、屈折光学面29から屈折等によってレンズ外部に放出された青色レーザー光が遮光部材4の位置で遮光される。よって、例えば、屈折光学面29から屈折等によってレンズ外部に放出された青色レーザー光が、灯室に設けられている反射部材等に反射し、光路を変えてヘッドランプ外に出射することが抑制される。この結果、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損した場合、屈折光学面29からレンズ外部に放出させた青色レーザー光が灯室での反射によって灯具外部へ出射するのを抑制できる。
【0062】
実施例1では、レーザー光源12の発光中心点Dを、レーザー光源12から環状入射面部24bへ入射して外周光学面25で反射する反射光線が、外周光学面25により形成される仮想焦点Eから引かれる仮想光線Fに一致する位置に配置している。
【0063】
即ち、レーザー光源12からの出射光が湾曲入射面部24aに入射されると、レンズ体22の内部を第1反射面26等に向かって進む白色光の光路が形成される。そして、レーザー光源12からの出射光が環状入射面部24bに入射されると、レンズ体22の内部を外周光学面25に向かって進み、外周光学面25において反射する。反射後、第1反射面26等に向かって進む白色光の光路が形成される(図9の矢印を参照)。このため、レーザー光源12から出射される白色拡散光Wのうち、真っ直ぐ進行するものを湾曲入射面部24aで入射させるだけではなく、広がって進行するものを環状入射面部24bから入射させることができる。この結果、レーザー光源12が正常なとき、レーザー光源12から出射される白色拡散光Wを、有効にレンズ体22の内部に入射させることができる。
【0064】
実施例1では、レンズ体22の入射部23と出射面28の間に第1反射面26を有し、第1反射面26を、外周光学面25により形成される仮想焦点Eと、出射面28の焦点Gとの2つを焦点とする楕円を基調とする光学面により形成する。そして、出射面28を、第1反射面26での反射後に出射面28の焦点G付近に集光させた光を、少なくとも水平方向に偏向させる光学面により形成している。
【0065】
即ち、レーザー光源12からの出射光が湾曲入射面部24aに入射されると、レンズ体22の内部を第1反射面26に向かって進み、第1反射面26で反射した後、出射面28の焦点Gに向かって進む白色光の光路が形成される。そして、レーザー光源12からの出射光を環状入射面部24bが入射すると、レンズ体22の内部を外周光学面25に向かって進み、外周光学面25において反射する。反射後、第1反射面26に向かって進み、第1反射面26で反射した後、出射面28の焦点Gに向かって進む白色光の光路が形成される。このように、第1反射面26で反射した光を、出射面28の焦点G付近に集光させた後に出射面28に到達させると、出射面28に到達した光は垂直方向Kにおいて分散した光になる。このように、第1反射面26のみを有するレンズ体22の構成を想定すると、第1反射面26で反射した光がシェード(第2反射面27のエッジ)によりカットされない結果、出射面28から出射される光により“走行ビーム配光パターン”を形成することができる。
【0066】
実施例1では、第1反射面26と出射面28との間の位置に第2反射面27を有し、第2反射面27は、第1反射面26からの反射光の一部を、出射面28の焦点G付近に反射させる光学面により形成する。そして、出射面28は、第1反射面26で反射された光、及び、第1反射面26と第2反射面27で反射された光を、少なくとも水平方向に偏向させる光学面により形成する。
【0067】
即ち、レーザー光源12からの出射光が湾曲入射面部24aに入射されると、レンズ体22の内部を第1反射面26に向かって進み、第1反射面26で反射した後、出射面28の焦点Gに向かって進む白色光の光路が形成される。そして、レーザー光源12からの出射光を環状入射面部24bが入射すると、レンズ体22の内部を外周光学面25に向かって進み、外周光学面25において反射する。反射後、第1反射面26に向かって進み、第1反射面26で反射した後、出射面28の焦点Gに向かって進む白色光の光路が形成される。さらに、第1反射面26からの反射光の一部が第2反射面27により反射されると、反射した光は、配光パターンのカットオフラインの近傍に付加される。また、焦点Gにおいては、第2反射面27のエッジ(縁部)にて出射面28に向かう第1反射面26からの光が遮光されることで、カットオフラインが形成される(図9を参照)。このように、第1反射面26からの反射光の一部を第2反射面27により反射させると、出射面28に到達した光は垂直方向Kにおいて所定範囲に集中し、配光パターンのカットオフラインを作る光になる。この結果、出射面28から出射される光により、カットオフラインを有する“すれ違いビーム配光パターン”を形成することができる。
【0068】
以上説明したように、実施例1の車両用灯具(灯具ユニットA)にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0069】
(1)レーザー光源12と、レーザー光源12の前方位置に配置されるレンズ体22と、を備える。車両用灯具(灯具ユニットA)において、レーザー光源12は、青色レーザー光を放出する半導体レーザー素子17と、青色レーザー光が通過することにより白色拡散光Wを出射する蛍光体18と、を有する。レンズ体22は、レーザー光源12から出射される光を入射する入射部23と、入射部23からの光をレンズ外部へ出射する出射面28と、を有する。入射部23にレーザー光源12からの入射光を内側で反射する外周光学面25を有する。外周光学面25に、半導体レーザー素子17からレンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面29を有する。このため、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損した場合、レンズ体22の出射面28から青色レーザー光が出射するのを抑制できる。
【0070】
(2)レンズ体22を、入射部23からの入射光を内方に導いて出射面28からレンズ外部へ出射光を出す1つの複合光学レンズによる構成とする。レンズ体22は、レーザー光源12から出射される光をレンズ内部に入射する入射部23と、入射部23からレンズ内部に入射された光を内面反射する反射面(第1反射面26、第2反射面27)と、反射面で内面反射した光をレンズ外部へ出射する出射面28と、を有する。このため、灯具ユニットAによるコンパクトな構成を可能としながら、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損した場合、第2レンズ体7の出射面28から青色レーザー光が出射するのを抑制できる。
【0071】
(3)レーザー光源12は、半導体レーザー素子17から出射される青色レーザー光が、レーザー光源12の向きである出射方向Mから外側へ傾斜する傾斜方向に向かって青色レーザー光路領域Cが形成される設定とする。屈折光学面29を、外周光学面25において青色レーザー光路領域Cと重なり合う位置に配置する。このため、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損した場合、レンズ体22の屈折光学面29から屈折によって青色レーザー光を効率良くレンズ外部に放出できる。
【0072】
(4)レンズ体22に有する入射部23の外周位置に、レンズ外部に放出される青色レーザー光を遮光する遮光部材4を設ける。このため、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損した場合、屈折光学面29からレンズ外部に放出させた青色レーザー光が灯室での反射によって灯具外部へ出射するのを抑制できる。
【0073】
(5)入射部23は、レーザー光源12からの出射光を入射する導光入射面24と、回転放物面による外周光学面25と、を有する。導光入射面24は、全体形状がレンズ体22の内側に凹んで光を導入する形状であり、湾曲入射面部24aと環状入射面部24bとを有する。レーザー光源12の発光中心点Dを、レーザー光源12から環状入射面部24bへ入射して外周光学面25で反射する反射光線が、外周光学面25により形成される仮想焦点Eから引かれる仮想光線Fに一致する位置に配置する。このため、レーザー光源12が正常なとき、レーザー光源12から出射される白色拡散光Wを、有効にレンズ体22の内部に入射させることができる。
【0074】
(6)レンズ体22は、入射部23と出射面28との間に反射面(第1反射面26)を有する。反射面(第1反射面26)は、入射部23からの入射光を反射する面を、外周光学面25により形成される仮想焦点Eと、出射面28の焦点Gとの2つを焦点とする楕円を基調とする光学面により形成する。出射面28は、反射面(第1反射面26)での反射後に出射面28の焦点G付近に集光させた光を、少なくとも光軸方向Lに直交する水平方向に偏向させる光学面により形成する。このため、反射面として第1反射面26のみを有するレンズ体22の構成とした場合、出射面28から出射される光により“走行ビーム配光パターン”を形成することができる。なお、“すれ違いビーム配光パターン”が形成されるか“走行ビーム配光パターン”が形成されるかの違いは、シェードになる第2反射面27のエッジの有無により決まる。
【0075】
(7)反射面を第1反射面26としたとき、第1反射面26と出射面28との間の位置に第2反射面27を有する。第2反射面27は、第1反射面26からの反射光の一部を、出射面28の焦点G付近に反射させる光学面により形成する。出射面28は、第1反射面26で反射された光、及び、第1反射面26と第2反射面27で反射された光を、少なくとも光軸方向Lに直交する水平方向に偏向させる光学面により形成する。このため、反射面として第1反射面26と第2反射面27とを有するレンズ体22の構成とした場合、出射面28から出射される光により、カットオフラインを有する“すれ違いビーム配光パターン”を形成することができる。
【実施例0076】
実施例2は、実施例1がレンズ体22を1つの複合光学レンズによる構成としたのに対し、レンズ体を2つのレンズ体により構成とし、2つのレンズ体の間にリフレクタを配置する例である。
【0077】
図14を参照して実施例2の車両用灯具A’の構成を説明する。
【0078】
車両用灯具A’は、図14に示すように、第1レンズ体6と、第2レンズ体7と、リフレクタ8と、を有する。
【0079】
第1レンズ体6は、レーザー光源12からの入射光を内方に導く入射部23を有し、レーザー光源1からの入射光を、外周光学面25による反射によりリフレクタ8に向けて出射する。つまり、第1レンズ体6は、実施例1のレンズ体22から入射部23のみを分離させたのと同様の構成としている。よって、第1レンズ体6には、実施例1の入射部23と同様に、導光入射面24と、外周光学面25と、屈折光学面29と、を備える。
【0080】
第2レンズ体7は、リフレクタ8からの反射光を入射し、レンズ外部へ出射光を出す出射面28を有する投影レンズによる構成としている。なお、第2レンズ体7とリフレクタ8は、図外の灯具ハウジング等に支持固定することにより所望の位置に配置される。
【0081】
リフレクタ8は、第1レンズ体6と第2レンズ体7との間の位置に配置され、第1レンズ体6から出射される光を第2レンズ体7に向けて反射する反射面81を有する。なお、他の構成は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
上記のように、実施例2では、第1レンズ体6と第2レンズ体7との間に、第1レンズ体6から出射される光を第2レンズ体7に向けて反射するリフレクタ8を配置している。
【0083】
即ち、実施例2の場合、第1レンズ体6に、半導体レーザー素子17からレンズ内部に入射された青色レーザー光を、屈折によってレンズ外部に放出する屈折光学面29を有する。このため、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損により一部又は全部が存在しなくなると、半導体レーザー素子17から第1レンズ体6のレンズ内部に入射された青色レーザー光の大部分を、第1レンズ体6の屈折光学面29からレンズ外部に放出させることができる。
【0084】
よって、実施例2の車両用灯具A’にあっては、実施例1の(1)、(3)、(4)、(5)の効果に加え、下記の効果が得られる。
【0085】
(8)レンズ体を、レーザー光源12からの入射光を内方に導く入射部23を有する第1レンズ体6と、レンズ外部へ出射光を出す出射面28を有する第2レンズ体7と、による構成とする。第1レンズ体6と第2レンズ体7との間に、第1レンズ体6から出射される光を第2レンズ体7に向けて反射するリフレクタ8を配置する。このため、第1レンズ体6と第2レンズ体7との間にリフレクタ8を配置する形態の灯具において、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損した場合、第2レンズ体7の出射面28から青色レーザー光が出射するのを抑制できる。
【0086】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1,2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0087】
実施例1,2では、レーザー光源12として、半導体レーザー素子17から出射される青色レーザー光が、レーザー光源12の向きである出射方向Mから外側へ傾斜する傾斜方向に向かって2つに分かれる青色レーザー光路領域Cが形成される設定とする例を示した。しかし、レーザー光源としては、半導体レーザー素子から出射される青色レーザー光が1つの青色レーザー光路領域を形成する例としても良いし、また、3以上に分かれる青色レーザー光路領域を形成する例としても良い。
【0088】
実施例1,2では、屈折光学面29として、外周光学面25において2つの青色レーザー光路領域Cと重なり合う4箇所位置に配置する例を示した。しかし、屈折光学面としては、実施例1の4箇所配置に限られるものではなく、青色レーザー光路領域と重なり合う配置であれば、1箇所~3箇所に配置する例や5箇所以上の箇所に配置する例としても良い。
【0089】
実施例1,2では、レーザー光源12に有する蛍光体18が破損したときの対策として、レンズ体22に有する入射部23の外周位置に、屈折によってレンズ外部に放出される青色レーザー光を遮光する遮光部材4を設ける例を示した。しかし、レーザー光源に有する蛍光体が破損した場合の対策としては、レンズ体に屈折光学面を有するだけで、遮光部材を設けない例としても良い。例えば、灯室においてレンズ外部に放出される青色レーザー光の反射によって前方に向かう光路が形成されない場合、又は、青色レーザー光の反射によって前方に向かう光路が形成されにくい場合は、遮光部材を設けなくても、屈折光学面を有することにより十分に蛍光体18が破損したときの対策となり得る。
【0090】
実施例1では、レンズ体22の入射部23として、レーザー光源12からの出射光を入射する導光入射面24と、回転放物面による外周光学面25と、を有する例を示した。実施例2では、第1レンズ体6の入射部23として、レーザー光源12からの出射光を入射する導光入射面24と、回転放物面による外周光学面25と、を有する例を示した。しかし、レンズ体の入射部としては、実施例1の構成に限られるものではなく、例えば、用途等に応じて適切な導光入射面や外周光学面を有する構成であっても良い。
【0091】
実施例1では、レンズ体22として、レーザー光源12からの入射光を内方に導いて内面反射により“すれ違いビーム配光パターン”を形成する1つの複合光学レンズとする例を示した。実施例2では、レンズ体として、2つの第1レンズ体6と第2レンズ体7を有し、第1レンズ体6と第2レンズ体7の間にリフレクタ8を配置する例を示した。しかし、レンズ体としては、実施例1に記載の複合光学レンズに限られるものではなく、上記配光パターン以外の配光パターンを形成する例としても勿論良い。さらに、光学レンズにシェード等を組み合わせることにより配光パターンを形成する例としても良い。さらに、実施例2に記載の2つのレンズ体とリフレクタの組み合わせる例に限られるものではなく、2以上のレンズ体とリフレクタやシェード等による光学部材とを組み合わせる例としても良い。
【0092】
実施例1では、車両用灯具として、光源部材1と、レンズ部材2と、ヒートシンク部材3と、遮光部材4と、を集約して一体に組み付けた構成による灯具ユニットAを用いる例を示した。実施例2では、車両用灯具A’の例を示した。しかし、車両用灯具としては、これらに限られるものではなく、レーザー光源とレンズ体を備える車両用灯具であれば様々な態様の灯具を用いても良い。
【符号の説明】
【0093】
A 灯具ユニット(車両用灯具)
1 光源部材
12 レーザー光源
17 半導体レーザー素子
18 蛍光体
2 レンズ部材
22 レンズ体
23 入射部
24 導光入射面
24a 湾曲入射面部
24b 環状入射面部
25 外周光学面
26 第1反射面(反射面)
27 第2反射面
28 出射面
29 屈折光学面
3 ヒートシンク部材
4 遮光部材
A’ 車両用灯具
6 第1レンズ体(レンズ体)
7 第2レンズ体(レンズ体)
8 リフレクタ
C 青色レーザー光路領域
D レーザー光源12の発光中心点
E 外周光学面25により形成される仮想焦点
F 仮想光線
G 出射面28の焦点
K 垂直方向
L 光軸方向
M 出射方向
W 白色拡散光
X 幅方向(左右方向)
Y 上下方向(鉛直方向)
Z 光軸方向(前後方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14