(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117865
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】路面標示の施工装置
(51)【国際特許分類】
E01C 23/20 20060101AFI20220804BHJP
E01F 9/582 20160101ALI20220804BHJP
【FI】
E01C23/20
E01F9/582
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014620
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000101477
【氏名又は名称】アトミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 崇之
(72)【発明者】
【氏名】東 弘一朗
(72)【発明者】
【氏名】小川 博巳
【テーマコード(参考)】
2D053
2D064
【Fターム(参考)】
2D053AA28
2D053AD03
2D053EA14
2D053EA22
2D064AA05
2D064CA01
2D064CA09
2D064EB26
(57)【要約】
【課題】粉末状の乾燥促進剤を路面標示用水性塗料に混合させる混合器が小型でありながら、両者を均質に混合させて路面に塗布し得る路面標示の施工装置の提供。
【解決手段】塗布スプレー19と、路面標示用水性塗料が進行する経路Aの周囲を囲うとともに、路面に対向する開口18aを有する混合器18と、混合器18内に前記乾燥促進剤を略鉛直方向から供給する乾燥促進剤供給口14aと、水平方向Lにおける乾燥促進剤供給口14aの位置から塗布スプレー19の位置に向かう方向L1であって、供給された前記乾燥促進剤に向けて、圧縮空気を吐出するエアノズル16と、を備え、塗布スプレー19の吐出口19aより乾燥促進剤供給口14aの方が高い位置にあり、混合器18内には、前記圧縮空気の進行方向Cであって、供給された前記乾燥促進剤の進行方向Bと交差する箇所CBの下流に、下方に傾けられた状態でエアノズル16と対向する衝突面185を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の乾燥促進剤を供給しつつ路面標示用水性塗料を路面に塗布して乾燥することにより路面標示を形成する路面標示の施工装置であって、
前記路面標示用水性塗料を略鉛直方向から前記路面に塗布する塗布スプレーと、
前記塗布スプレーから吐出された前記路面標示用水性塗料が進行する経路の周囲を囲うとともに、前記路面に対向し、かつ、前記経路が通過する開口を有する混合器と、
水平方向において、前記塗布スプレーとは離間した位置で、前記混合器内に前記乾燥促進剤を略鉛直方向から供給する乾燥促進剤供給口と、
水平方向における前記乾燥促進剤供給口の位置から前記塗布スプレーの位置に向かう方向であって、前記乾燥促進剤供給口から供給された前記乾燥促進剤に向けて、圧縮空気を吐出するエアノズルと、
を備え、
前記塗布スプレーの吐出口より前記乾燥促進剤供給口の方が高い位置にあり、
前記混合器内には、前記圧縮空気の進行方向であって、供給された前記乾燥促進剤の進行方向と交差する箇所の下流に、下方に傾けられた状態で前記エアノズルと対向する衝突面を有することを特徴とする路面標示の施工装置。
【請求項2】
前記混合器が、前記経路の周囲を四方から囲う4つの壁面を有し、当該4つの壁面が、
水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置とを結ぶ線と平行方向に延在し、これらを挟んで対向する第1の壁面及び第2の壁面と、
水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置の内、前記塗布スプレーの位置に近い側で、前記第1の壁面及び前記第2の壁面の両端部を連結する第3の壁面と、
水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置の内、前記乾燥促進剤供給口の位置に近い側で、前記第1の壁面及び前記第2の壁面の両端部を連結するとともに、前記エアノズルの吐出口が設けられた第4の壁面と、
からなる、請求項1に記載の路面標示の施工装置。
【請求項3】
前記第4の壁面の全面、または、前記エアノズルの吐出口が設けられた位置よりも下方の領域の少なくとも一部が、上方を向くように傾斜した傾斜領域となっており、前記乾燥促進剤供給口の直下に前記傾斜領域がある、請求項2に記載の路面標示の施工装置。
【請求項4】
前記塗布スプレーが、水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置とを結ぶ線に対して垂直の方向に広がって扇状に進行するように、前記路面標示用水性塗料を吐出すし、
前記エアノズルが、略水平方向に広がって扇状に進行するように、圧縮空気を吐出する、請求項2または3に記載の路面標示の施工装置。
【請求項5】
前記第1の壁面及び前記第2の壁面が、ともに、下方を向くように傾斜している、請求項4に記載の路面標示の施工装置。
【請求項6】
全体が、前記路面に対して、水平方向における前記塗布スプレーの位置から前記乾燥促進剤供給口の位置に向かう方向に移動しながら、前記乾燥促進剤を供給しつつ路面標示用水性塗料を前記路面に塗布するように構成され、
前記水性塗料塗布手段によって形成された塗布膜上にガラスビーズを散布する、ガラスビーズ散布手段が、全体の移動方向における前記混合器の下流に配されている、請求項1~5の何れかに記載の路面標示の施工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路面に水性の路面標示用塗料を塗布する際に用いる路面標示の施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、舗装道路の路面には、道路交通に関する規則、警戒、規制、案内、指示等の情報を適切に車両の運転手や歩行者に与えるために、各種の区画線、道路標示、カラーリング(以下、これらを「路面標示」という。)が、塗料を用いて路面に施されている(以下、このような塗料を「路面標示用塗料」という。)。
【0003】
共用道路に於ける路面標示の施工作業は、道路交通を規制して行われるが、路面標示用塗料は、道路交通を規制してから通行を可能とするまでの時間(交通規制時間)を短縮するために、塗料塗布後の乾燥が可能な限り速いことが要求される。また、交通規制からの開放(交通開放)直後の走行車両のタイヤに対する塗膜の耐汚れ性に優れることが求められる。そのような塗料として、従前、蒸発速度の速いケトン系、エステル系、芳香族系、脂肪族系等の有機溶剤を用いた塗料が使用されてきた。
【0004】
しかしながら、これら蒸発性有機溶剤は、塗布後迅速に大気中に揮散することから、環境汚染の要因のひとつとなっており、近年では、より環境汚染の少ない路面標示用水性塗料が使用されている。従前の有機溶剤を使用した路面標示用塗料(有機溶剤系路面標示用塗料)の場合、塗布後通常約10分程度で交通開放が可能である。
【0005】
一方、路面標示用水性塗料の乾燥時間は、塗布後の雰囲気温度や湿度に大きく依存する。JIS K5600に規定されている塗料一般試験条件である気温23℃湿度50%の雰囲気下では、路面標示用水性塗料でも有機溶剤系路面標示用塗料と同等の乾燥時間である。しかし、路面標示用水性塗料では、低温時や多湿時に乾燥時間が長くなり、交通開放が遅くなってしまうことがある。
【0006】
また、乾燥時間が長いことから、降雨に遭遇する確率が上がってしまう。路面標示用水性塗料の塗膜が十分に乾燥・硬化していない状態で降雨に遭遇すると、当該塗膜が溶出、剥離することがある。更に、路面標示用水性塗料の塗膜が、一見、乾燥に至ったとしても、塗膜に粘着が残ってしまえば、タイヤによる汚れが発生するなどの不具合を生ずる懸念があり、一般に、安全を見た乾燥時間が確保される。
【0007】
路面標示用水性塗料を路面標示に用いる場合の上記の如き問題を解決するために、いくつかの試みがなされている。例えば、特許文献1には、路面標示用水性塗料(当該文献中においては、「水性組成物」。「背景技術」の項において、以下同様に、括弧内は文献中表現。)の塗布前、塗布中、塗布後に酸あるいは塩水溶液、または酸あるいは塩固形粒子の状態で塗料と接触させ乾燥を促進する方法を開示している。
【0008】
また、特許文献2には、酸との接触によって凝集する水希釈可能な路面標示用水性塗料(水分散塗料)を路面に標示する方法と装置が開示されている。詳しくは、当該文献には、路面標示用水性塗料を路面に塗布する際に、その塗料上に、または塗料中に反射粒子粉を散布した後に、酸水溶液をスプレー散布する方法、または塗料の上または塗料中に酸で処理した粒子粉を散布、更に水溶液の形で酸をスプレー散布することによって、数分で乾燥させる方法および装置が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、水を吸収できる固形ポリマー粒子または無機化合物であって水を配位結合により吸収できるものを、路面標示用水性塗料(水性塗料)とともにまたは塗布された塗料の上にスプレーし、水性道路マーキング塗料の乾燥を促進する方法が開示されている。そして、固形ポリマーまたは無機化合物の粒子として、イオン交換樹脂ビーズ、超吸水性ゲル、中空球状粒子およびタルクを挙げている。
【0010】
さらに、特許文献4には、水と反応することで発熱可能な非水溶性の無機化合物粒子を、路面標示用水性塗料とともに路面に塗布するか、あるいは、路面に塗布された乾燥前の路面標示用水性塗料の塗布膜上に散布することで、塗布膜の乾燥を促進させる技術が開示されている。
【0011】
特許文献1に記載の技術、及び、特許文献2の記載の技術は、水分散型塗料と水溶性塩との接触によって瞬時に凝集を起こさせ乾燥を促進する方法である。塗料をスプレーした後、または、塗料と同時に粒子を適用すると、塗料に対するガラスビーズの固着性が悪くなり夜間視認性に問題を来すことになる。また、瞬時に凝集を起こさせるため、塗布した塗料表面のみが固化し塗料内部に塗料中の水分を含むことになる。そのため形成された塗膜は中膿の状態となって、塗膜のずり応力に問題が生じる懸念がある。また、車両通過によって塗膜が汚染されやすいという問題や、瞬時に塗料に凝集を起こさせるため粒子を塗料散布前に散布した場合、路面への塗料の付着・凝集力が劣るという課題もある。
【0012】
特許文献3に記載の技術は、水を吸収できる固形ポリマー、超吸水性ゲルは、塗膜の乾燥促進には有効であるが、乾燥塗膜が降雨等に水を再吸収して塗膜強度に問題を生ずる。イオン交換樹脂は、乾燥を促進する効果があるが、その効果は水溶性塩で処理した場合より少なく、イオン交換樹脂は高価であり、コスト上、実用性に乏しい。
【0013】
特許文献4に記載の技術は、水と反応することで発熱可能な非水溶性の無機化合物粒子を散布するもので、塗膜表面および内部まで乾燥を促進できるが、無機化合物粒子が粉末粒子であるため、周囲への粉末粒子の飛散の懸念がある。
【0014】
これら従来技術の問題点を解消するための技術として、特許文献5には、路面標示用水性塗料の乾燥を促進させる水性塗料乾燥促進剤、及び、スプレーから吐出される路面標示用水性塗料が通過する囲い(以下、「混合器」と称する。)内に、移送された水性塗料乾燥促進剤(水性塗料定着剤)を散布させることで、路面標示用水性塗料と水性塗料乾燥促進剤とを混合させる技術が開示されている。特許文献5に記載の技術によれば、容器外に水性塗料乾燥促進剤が飛散せずに効率よく水性塗料乾燥促進剤を路面標示用水性塗料に混合することができる。
【0015】
しかし、特許文献5に記載の技術における混合器は、液体状の路面標示用水性塗料と粉末状の水性塗料乾燥促進剤とを均質に混合させるために、塗料スプレーガンに比して大きい外形寸法が必要だった。そのため、作業者(いわゆるマーカー車の運転者)にとって、大型の混合器が目視確認の邪魔になり、スプレー状態の確認がし難いといった問題があった。
【0016】
また、路面標示用水性塗料の塗布後の塗面には、視認性を付与するためのガラスビーズを散布する場合があるが、ガラスビーズを散布するための装置は、路面標示用水性塗料の塗布後、乾燥前に速やかに散布することが求められるため、外形寸法の大きな混合器と干渉してしまいやすく、装置の設計上の制約になっていた。
【0017】
そこで、混合器を小型化しようとすると、路面標示用水性塗料と水性塗料乾燥促進剤とを混合させるための内容積のスペースを確保することができず、混合にムラが生じかねない。路面標示用水性塗料と水性塗料乾燥促進剤との混合にムラがあると、路面標示用水性塗料の乾燥にも勿論ムラが生じてしまい、乾燥に時間がかかってしまう箇所や、塗膜に粘着が残ってしまう箇所が生じ易い。
【0018】
僅かでも乾燥していない箇所や粘着が残ってしまう箇所が生ずると、当該箇所による不具合が解消されないため、交通開放までの時間が長くなってしまう。そのため、従来、混合器の小型化には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特公平6-76684号公報
【特許文献2】国際公開第94/29391号パンフレット
【特許文献3】特開平9-235489号公報
【特許文献4】特開2004-244467号公報
【特許文献5】特開2007-107278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みて検討されたものである。詳しくは、粉末状の乾燥促進剤を供給しつつ路面標示用水性塗料を路面に塗布して乾燥することにより路面標示を形成する路面標示の施工装置であって、乾燥促進剤を路面標示用水性塗料に混合させる混合器が小型でありながら、両者を均質に混合させて路面に塗布することが可能な路面標示の施工装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的は、以下の本発明によって解決される。即ち、本発明の施工装置は、粉末状の乾燥促進剤を供給しつつ路面標示用水性塗料を路面に塗布して乾燥することにより路面標示を形成する路面標示の施工装置であって、
前記路面標示用水性塗料を略鉛直方向から前記路面に塗布する塗布スプレーと、
前記塗布スプレーから吐出された前記路面標示用水性塗料が進行する経路の周囲を囲うとともに、前記路面に対向し、かつ、前記経路が通過する開口を有する混合器と、
水平方向において、前記塗布スプレーとは離間した位置で、前記混合器内に前記乾燥促進剤を略鉛直方向から供給する乾燥促進剤供給口と、
水平方向における前記乾燥促進剤供給口の位置から前記塗布スプレーの位置に向かう方向であって、前記乾燥促進剤供給口から供給された前記乾燥促進剤に向けて、圧縮空気を吐出するエアノズルと、
を備え、
前記塗布スプレーの吐出口より前記乾燥促進剤供給口の方が高い位置にあり、
前記混合器内には、前記圧縮空気の進行方向であって、供給された前記乾燥促進剤の進行方向と交差する箇所の下流に、下方に傾けられた状態で前記エアノズルと対向する衝突面を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の路面標示の施工装置としては、前記混合器が、前記経路の周囲を四方から囲う4つの壁面を有し、当該4つの壁面が、
水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置とを結ぶ線と平行方向に延在し、これらを挟んで対向する第1の壁面及び第2の壁面と、
水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置の内、前記塗布スプレーの位置に近い側で、前記第1の壁面及び前記第2の壁面の両端部を連結する第3の壁面と、
水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置の内、前記乾燥促進剤供給口の位置に近い側で、前記第1の壁面及び前記第2の壁面の両端部を連結するとともに、前記エアノズルの吐出口が設けられた第4の壁面と、
からなるものとすることができる。
【0023】
この場合に、前記第4の壁面の全面、または、前記エアノズルの吐出口が設けられた位置よりも下方の領域の少なくとも一部が、上方を向くように傾斜した傾斜領域となっており、前記乾燥促進剤供給口の直下に前記傾斜領域があることが好ましい。
また、この場合に、前記塗布スプレーが、水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置とを結ぶ線に対して垂直の方向に広がって扇状に進行するように、前記路面標示用水性塗料を吐出することが好ましい。
【0024】
また、この場合に、前記エアノズルが、略水平方向に広がって扇状に進行するように、圧縮空気を吐出することが好ましい。
さらに、この場合に、前記第1の壁面及び前記第2の壁面が、ともに、下方を向くように傾斜している。
【0025】
本発明の路面標示の施工装置は、全体が、前記路面に対して、水平方向における前記塗布スプレーの位置と前記乾燥促進剤供給口の位置とを結ぶ線の何れかの方向に移動しながら、前記乾燥促進剤を供給しつつ路面標示用水性塗料を前記路面に塗布するように構成され、
前記水性塗料塗布手段によって形成された塗布膜上にガラスビーズを散布する、ガラスビーズ散布手段が、全体の移動方向における前記混合器の下流に配されているものとすることができる。
この場合に、全体が、水平方向における前記乾燥促進剤供給口の位置から前記塗布スプレーの位置に向かう方向に移動することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、粉末状の乾燥促進剤を供給しつつ路面標示用水性塗料を路面に塗布して乾燥することにより路面標示を形成する路面標示の施工装置であって、乾燥促進剤を路面標示用水性塗料に混合させる混合器が小型でありながら、両者を均質に混合させて路面に塗布することが可能な路面標示の施工装置を提供することができる。
【0027】
また、本発明によれば、乾燥促進剤と路面標示用水性塗料との混合させる混合を均質にする効果が高いことから、混合器として大型の物を使用せずとも、乾燥促進剤と路面標示用水性塗料とをより一層均質に混合させることができ、路面標示の塗布膜を効率的に短時間で乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態にかかる路面標示の施工装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる路面標示の施工装置における塗料スプレーガン(塗布スプレー)から直下の路面までを抜き出した、装置移動方向Pの先から見た側面図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかる路面標示の施工装置から混合器及びその近傍を抜き出した、
図2におけるX-X断面の拡大断面図である。
【
図6】
図3と同じ拡大断面図であり、混合器の各部の寸法や角度を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の路面標示の施工装置について、好ましい例示的一態様である実施形態を挙げ、適宜、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明において「路面」とは、車両通行のための道路舗装面、飛行機の滑走路面、工場内の通行路、自転車道、歩道等の舗装路面、及び、屋内外の駐車場等の舗装面等を意味し、建造物の床面や屋上等作業スペース、その他生活空間となり得る床面についても概念に含まれる。
【0030】
また、本実施形態において「舗装」とは、アスファルト舗装、コンクリート舗装及び敷石舗装等を意味する。さらに、本実施形態において「路面標示」とは、特に限定されるものではないが、路面に各種の情報の表示を目的として塗装により形成されるマーク等であり、例えば、区画線、横断歩道、はみ出し禁止、制限速度、通行区分、行先表示等を線、文字、記号及び模様等で表した交通標示やその他の情報の標示を含み、さらには、路面をカラーリングする等、視覚により注意喚起する標示や意匠性を付与する標示等を挙げることができる。
【0031】
本実施形態において、「塗布膜」とは、路面標示用水性塗料(以下、単に「水性塗料」と略称する場合がある。)を塗布することで形成された乾燥前の塗料の層をいう。当該塗布膜を乾燥させることで、使用に供し得る「塗膜」が形成される。なお、「塗膜」といった場合には、ある程度硬化して塗膜としての層が構成された状態の全般を指し、使用に供し得る状態の他、いわゆる生乾き状態の塗料の層をも含む概念である。
【0032】
図1に、本実施形態にかかる路面標示の施工装置100の概略構成図を示す。
この施工装置100は、マーカー車と呼ばれる不図示の車両に搭載されて使用される。マーカー車に搭載された際の各構成要素の位置関係は、
図1に示された通りであり、路面標示の施工作業の際には、マーカー車が路面21上を走行することで、施工装置100が矢印Pの方向に移動する。
【0033】
装置の上方には、主として、乾燥促進剤を収容する乾燥促進剤貯蔵タンク1と、スクリュー状の回転羽根41を有する定量供給部4と、乾燥促進剤をエア搬送するための混合部5と、乾燥促進剤を搬送、拡散させるためのエア(圧縮空気)を後述するガラスビーズ17の吐出と同期させて吐出するためのエア制御用電磁弁7及び搬送エアノズル6と、そのエアの圧力を調整するエア調整機器8~11と、これら乾燥促進剤供給機構を構成する機器を制御する制御器12と、が配されている。
【0034】
乾燥促進剤貯蔵タンク1には、収容された乾燥促進剤を混合部5に安定供給する機能を有する撹拌棒3と、この撹拌棒3を駆動するモータ2が備えられている。また、定量供給部4には、回転羽根41を駆動するモータ13が備えられている。
回転羽根41は、制御器12の設定によって任意の回転数に制御して駆動することができ、貯蔵タンク1から任意の量の乾燥促進剤を定量供給することができるようになっている。
【0035】
貯蔵タンク1から混合部5に定量供給された乾燥促進剤は、搬送エアノズル6から吐出されるエアによって搬送、拡散される。エア調整機器(8~11)は、エア制御用電磁弁7により制御された圧縮空気を2系統(乾燥促進剤搬送用ホース14に接続された系統とエア供給管15に接続された系統)の配管に分岐して、それぞれの圧力を圧力計8,11で監視しつつ圧力調整弁9,10で制御できるようになっている。
【0036】
乾燥促進剤搬送用ホース14に接続された系統においては、圧力調整弁9を通過したエアが、搬送エアノズル6から吐出される。そして、混合部5に定量供給された乾燥促進剤が、前記エアにより吹き飛ばされるようにして、乾燥促進剤搬送用ホース14内を通って、乾燥促進剤供給口14aから混合器18内へと搬送されるようになっている。搬送エアノズル6により混合部5から搬送された乾燥促進剤は、接続口14aから下方(矢印B方向)に落下するように、混合器18の内部に供給される。
【0037】
乾燥促進剤搬送用ホース14に供給されるエアのエア圧としては、乾燥促進剤が、乾燥促進剤搬送ホース14内等で滞留することなく搬送されるようにするため、かつ、塗料スプレーガン22(後述)による水性塗料のスプレー状態に影響を及ぼさないようにするために、0.1~0.3MPa程度に調整することが望ましい。
【0038】
一方、エア供給管15に接続された系統においては、圧力調整弁10を通過したエアが上方からエア供給管15内に送られる。エア供給管15の下端部は、エア供給管接続部15aの上方接続口15cに接続されている。エア供給管接続部15a内には、上方接続口15cからエアノズル16のエア吐出口16aに連通する連通路15bが形成されており、エア供給管15内を通過したエアがエアノズル16のエア吐出口16aから混合器18内に吐出されるようになっている。吐出されるエアは、エア制御用電磁弁7により制御されている。
【0039】
エア供給管15に供給されるエア(圧縮空気)のエア圧は、乾燥促進剤を混合器18内に均一に分散させるため、かつ、塗料スプレーガン22(後述)による水性塗料のスプレー状態に影響を及ぼさないようにするために、0.1~0.3MPa程度に調整することが望ましい。
【0040】
乾燥促進剤供給機構の下方には、水性塗料を路面21に塗布する塗料スプレーガン(本発明における「塗布スプレー」に相当する。)22と、混合器18と、が配されている。
図2は、施工装置100における塗料スプレーガン22から直下の路面21までを抜き出した、装置移動方向Pの先から見た側面図である。
図1は、この
図2におけるX-X断面を示す概略構成図となっている。
塗料スプレーガン22は、直下方向に吐出口(
図3における19a)を向けた塗料吐出部19を有しており、水性塗料を略鉛直方向から路面21に向けて噴霧できるようになっている。
【0041】
塗料スプレーガン22としては、路面標示を施工する際に水性塗料を噴霧する従来公知の各種スプレーガンを特に制限されることなく用いることができる。塗料スプレーガン22のスプレー圧は、路面標示として良好な仕上がりを得るために、7~12MPa程度に調整されている。このことは、従来公知であり、本実施形態においても同様である。
【0042】
塗料スプレーガン22から噴霧された水性塗料が進行する経路は、
図1及び
図2において、符号Aで示されている。
図2に経路Aとして示されるように、塗料スプレーガン(塗布スプレー)22の吐出口19aから吐出された水性塗料は、水平方向(両矢印L方向)における塗料スプレーガン22の位置と乾燥促進剤供給口14aの位置とを結ぶ線(
図2の紙面における奥行方向)に対して垂直の方向(
図2における左右方向)に広がって扇状に進行する。
【0043】
本実施形態において特徴的な構成を備える混合器18は、塗料吐出部19の直下に設置されており、塗料吐出部19の吐出口19aは、混合器18の内部に向けられた状態になっている。この混合器18の詳細について、以下、詳述する。
図3は、施工装置100から混合器18及びその近傍を抜き出した、
図2におけるX-X断面の拡大断面図である。
【0044】
また、
図4は、
図3におけるY-Y断面の断面図であり、
図5は、
図3におけるZ-Z断面の断面図である。
さらに、
図6は、
図3と同じ拡大断面図であり、混合器18の各部の寸法や角度を説明するための説明図である。
【0045】
混合器18は、経路Aの周囲を四方から囲う4つの壁面、即ち、第1の壁面181、第2の壁面182、第3の壁面183、及び第4の壁面184を有する。
第1の壁面181及び第2の壁面182は、水平方向(両矢印L方向)における塗料スプレーガン(塗布スプレー)22の位置と乾燥促進剤供給口14aの位置とを結ぶ線と平行方向(
図3中の両矢印Lに相当)に延在し、これら(即ち、塗料スプレーガン22及び乾燥促進剤供給口14a)を挟んで対向している(
図2参照)。
【0046】
第3の壁面183は、水平方向(両矢印L方向)における塗料スプレーガン(塗布スプレー)22の位置と乾燥促進剤供給口14aの位置の内、塗料スプレーガン22の位置に近い側(矢印L1方向側)で、第1の壁面181及び第2の壁面182の両端部を連結している(
図3参照)。
【0047】
なお、第1の壁面181、第2の壁面182、第3の壁面183、及び第4の壁面184は、全て、混合器18の内壁面を意味するものである。外壁面に関しては、各符号に「´」を付して、第1の外壁面181´、第2の外壁面182´、第3の外壁面183´、及び第4の外壁面184´と表示する。以下、混合器18の他の壁面についても同様とする。
【0048】
第4の壁面184は、水平方向(両矢印L方向)における塗料スプレーガン(塗布スプレー)22の位置と乾燥促進剤供給口14aの位置の内、乾燥促進剤供給口14aの位置に近い側(矢印L2方向側)で、第1の壁面181及び第2の壁面182の両端部を連結している(
図3参照)。
【0049】
混合器18は、下方が開口された開口部18aとなっており、当該開口部18aは、路面21に対向し、かつ、水性塗料が進行する経路Aが通過する。
第1の壁面181及び第2の壁面182は、ともに、
図2に示されるように、下方を向くように(即ち、カタカナの「ハ」の字状に)傾斜している。なお、第1の壁面181及び第2の壁面182は、下端で鉛直方向に垂下するリブ部181a,182aに連なっており、開口部18aにおいて、リブ部を有しない第3の壁面183及び第4の壁面184に比して、下端が下方に延出している。
【0050】
乾燥促進剤供給口14aは、水平方向(両矢印L方向)において、塗料スプレーガン(塗布スプレー)22とは離間した位置(詳しくは、装置移動方向Pとは逆(L2)側)にあり、混合器18の天壁面187に設けられている。この乾燥促進剤供給口14aから混合器18内に乾燥促進剤を略鉛直方向に向けて供給できるようになっている。
【0051】
混合器18内に供給された乾燥促進剤は、矢印B方向に進行して、混合器18内を降下する。この乾燥促進剤供給口14aは、塗料スプレーガン22の吐出口19aよりも高い位置にある。なお、各図において、乾燥促進剤供給方向を示す矢印Bは、乾燥促進剤供給口14aの水平方向における中心に位置させている。
【0052】
第4の壁面184には、鉛直面になっている鉛直領域184aと、上方を向くように傾斜した傾斜面になっている傾斜領域184bと、がある。鉛直領域184aには、エアノズル16が設けられている。傾斜領域184bは、乾燥促進剤供給口14aの直下に位置している。
【0053】
エアノズル16は、水平方向(両矢印L方向)における乾燥促進剤供給口14aの位置から塗料スプレーガン(塗布スプレー)22の位置に向かう方向(矢印L1方向)であって、乾燥促進剤供給口14aから供給されて矢印B方向に進行する乾燥促進剤に向けて、エア吐出口16aからエア(圧縮空気)を吐出する。
図5に示されるように、エアノズル16から吐出されたエアは、略水平方向に広がって扇状に進行する。そして、当該エアは、
図3に示されるように、矢印C方向に進行して、乾燥促進剤進行方向Bと垂直に交差する。
【0054】
混合器18内には、エア(圧縮空気)の進行方向Cであって、供給された乾燥促進剤の供給方向Bと交差する箇所CBの下流に、下方に傾けられた状態でエアノズル16と対向する衝突面185がある。衝突面185は、上端で天壁面187に連なっており、かつ、下端で取付面186に連なっている。この取付面186の略中央には、吐出口19aが混合器18内に向くように、塗料スプレーガン22の塗料吐出部19が取り付けられている。
【0055】
天壁面187と取付面186とは、高さが異なっているが、その間には、既述の衝突面185の他、一対の鉛直壁面188,189が介在して、混合器18の連続した内壁面を構成している。よって、混合器18の内壁面は、第1の壁面181、第2の壁面182、第3の壁面183、第4の壁面184、衝突面185、取付面186、天壁面187、及び、一対の鉛直壁面188,189により構成されている。
【0056】
図3に示されるように、混合器18の内部は、側面視で、衝突面185と傾斜領域184bとが対向する空間E、及び、取付面186の下方の空間Fがあり、両空間EFが連続している。この連続する空間EFの内、空間E側の端部寄りに乾燥促進剤供給口14aから乾燥促進剤が供給され(矢印B)、空間F側の端部寄りに塗料スプレーガン22の吐出口19aから水性塗料が吐出される。
【0057】
乾燥促進剤供給口14aから混合器18内に供給された乾燥促進剤は、空間Eのやや上方の交差箇所CBで、矢印C方向に進行するエアに煽られ、その進行方向をマーカー車の進行方向P(矢印L1方向)に変えられる。そして、少なくともその一部が衝突面185に叩き付けられながら、空間E内で拡散される。そして、当該乾燥促進剤は、空間E内に拡散されながらも、
図3における乾燥促進剤進行方向Dに示される通り、全体としては空間Eを下方へと進行し、さらに空間Fへと移動する。
【0058】
空間Fは、乾燥促進剤が均一に分散して充満した状態になっており、この中を水性塗料が、経路A方向に高速で進行する。乾燥促進剤は、当該水性塗料に巻き込まれて取り込まれる。そして、水性塗料は、乾燥促進剤を均一に同伴し混合した状態となって、そのまま経路A方向に進行し、開口部18aを通過して、路面21に塗布される。水性塗料への乾燥促進剤の供給が、このように塗布の直前なので、乾燥促進効果の高い乾燥促進剤を用いることができ、塗布後の水性塗料を速やかに乾燥することができる。
【0059】
本実施形態においては、エア進行方向Cであって、乾燥促進剤供給方向Bとの交差箇所CBの下流に衝突面185があるため、供給された乾燥促進剤の少なくとも一部が、衝突面185に叩き付けられながら、空間E内に広がる。そのため、当該乾燥促進剤は、空間E内で均質に広がり、そのまま空間Fに移動する。
【0060】
そして、空間Fでも乾燥促進剤が均質に分散した状態を維持しつつ、経路Aを進行する水性塗料に接触し、水性塗料内に取り込まれる。乾燥促進剤が均質に分散した状態で水性塗料に接触するため、水性塗料内にも均質に取り込まれる。したがって、路面標示用水性塗料と乾燥促進剤とを均質に混合させることが可能になる。
【0061】
また、以上の如き衝突面185があるため、混合器18の内容積(空間Eと空間Fからなる空間の容積)が小さくても、空間E及び空間F内で乾燥促進剤を均質に分散させることができる。即ち、乾燥促進剤を路面標示用水性塗料に混合させる混合器18が小型の物でありながら、路面標示用水性塗料と乾燥促進剤とを均質に混合させることが可能になる。
【0062】
塗料スプレーガン(塗布スプレー)22の吐出口19aから吐出される水性塗料の吐出角θ
1(
図2参照)は、形成する路面標示の線の太さ等にもより、例えばセンターライン等の路面標示を形成する場合には小さく絞り、通行帯を示す場合等のベタの路面標示を形成する場合には最大限に広げる。吐出角θ
1の最大限としては、塗料スプレーガン22の仕様にもよるが、大略50~70°程度である。
【0063】
第1の壁面181と第2の壁面182との成す角θ
2(
図2参照)としては、40~80°程度にすることが好ましく、吐出角θ
1の最大限に対応して50~70°程度にすることがより好ましい。この成す角θ
2を適切な角度とすることで、混合器18内に乾燥促進剤を均一の拡散(充満)させることができる。
【0064】
衝突面185の鉛直方向に対する傾斜角θ
3(
図6参照)としては、40~80°程度にすることが好ましく、50~70°程度にすることがより好ましい。この傾斜角θ
3を適切な角度とすることで、衝突面185に乾燥促進剤が衝突することによる空間E内での乾燥促進剤の分散と、空間Fに向けての移動とをバランスさせることができる。
【0065】
第4の壁面184における傾斜領域184bの鉛直方向に対する傾斜角θ
4(
図6参照)としては、40~80°程度にすることが好ましく、50~70°程度にすることがより好ましい。この傾斜角θ
4を適切な角度とすることで、乾燥促進剤の混合領域と移動経路(乾燥促進剤進行方向D)とを確保しつつ、混合器18の内容積を削減することができ、混合器18を小型化することができる。また、後述するように、ガラスビーズ散布ガン23から吐出され、散布板27により路面21に向けて散布方向を変えられたガラスビーズ17が、混合器18に妨げられることなく、路面21に散布される。
【0066】
エアノズル16のエア吐出口16aから吐出されるエア(圧縮空気)の吐出角θ
5(
図5参照)としては、エア吐出口16aと乾燥促進剤供給口14aの中心との距離d
5や距離d
5と水性塗料(路面標示用水性塗料)が進行する経路Aとの距離d
4等にもよるが、30~60°程度にすることが好ましく、40~50°程度にすることがより好ましい。この吐出角θ
5を適切な角度とすることで、乾燥促進剤を空間E内で均質に分散することができる。
【0067】
なお、例えば、1つのエア吐出口16aから吐出されるエア(圧縮空気)の吐出角θ5が小さくても、それを水平方向に複数並べたり、開口部がより幅広なスリットの吐出口とする等、何らかの手段によってエアの幅を確保することで、乾燥促進剤供給方向Bとの交差箇所CBで、供給された乾燥促進剤に対して適切にエアが作用するようにしさえすれば、エアノズルの構成は特に限定されない。
【0068】
エアノズル16のエア吐出口16aと乾燥促進剤供給口14aの中心との距離d
5(
図6参照)としては、乾燥促進剤供給口14aの径や吐出角θ
5等にもよるが、おおよそ、4~8mm程度にすることが好ましく、5~6mm程度にすることがより好ましい。この距離d
5が長過ぎると、空間Eでの乾燥促進剤の拡散が均一になり難く、また、混合器18の、延いては路面標示の施工装置100の大型化を招来する。一方、距離d
5が短過ぎると、エアを乾燥促進剤に十分に作用させ難く、乾燥促進剤の均質な分散が為され難い。
【0069】
エアノズル16のエア吐出口16aと乾燥促進剤供給口14aの高さの差d
1(
図6参照)としては、特に制限はなく、装置の設計上や、部材の加工上の都合で適宜設定することができる。ただし、差d
1が大き過ぎると、混合器18の、延いては路面標示の施工装置100の大型化を招来するため好ましくない。
【0070】
塗料スプレーガン22の吐出口19aと混合器18の開口部18aの高さの差d
2(
図6参照)としては、水性塗料が進行する経路Aと乾燥促進剤供給口14aの中心との距離d
4等にもよるが、おおよそ、20~50mm程度にすることが好ましく、20~30mm程度にすることがより好ましい。この高さの差d
2が大き過ぎると、路面21から塗料スプレーガン22の吐出口19aまでのクリアランスを確保することが困難になる場合がある。一方、高さの差d
2が小さ過ぎると空間F中に分散した乾燥促進剤が経路Aを進行する水性塗料に取り込まれるための十分な時間と距離を確保し難く、乾燥促進剤の均質な分散が為され難い。
【0071】
水性塗料が進行する経路Aと乾燥促進剤供給口14aの中心との距離d
4(
図6参照)としては、衝突面185の傾斜角θ
3やその水平方向Lの長さ等にもよるが、各部材の取り回し(例えば、塗料スプレーガン22の上部と乾燥促進剤搬送用ホース14との干渉)等を考慮の上で、なるべく近付けることが、混合器18の、延いては路面標示の施工装置100の小型化の観点から好ましい。
【0072】
エアノズル16のエア吐出口16aと塗料スプレーガン22の吐出口19aの高さ方向の位置関係としては、エアノズル16のエア吐出口16aが塗料スプレーガン22の吐出口19aより高い位置(差d
3(
図6参照)が正の値)にあればよい。双方の位置関係が逆の場合には、エアノズル16から吐出されたエアで煽られた乾燥促進剤が、衝突面185に衝突しないため、均一な分散ができなくなり、かつ、スプレーガン22の吐出口19aから吐出された水性塗料に直接エアが当たってしまうため、スプレー状態に影響を与えてしまう可能性がある。
【0073】
本実施形態にかかる施工装置(路面標示の施工装置)100では、以上の如き構成を有することから、混合器18の内容積が小さくても、乾燥促進剤が均質に混合された状態の水性塗料を路面21に塗布することができる。そのため、例えば、混合器18の全幅a(
図2参照)を90mm~110mm、全高b(
図2参照)を50mm~70mm、水性塗料が進行する経路Aと装置移動方向Pの後端との距離c(
図6参照)を100mm~120mmと小型にすることが可能となった。勿論、これらの寸法範囲は、あくまでも一例であり、当該寸法範囲によって、本願発明が限定されるものではない。
【0074】
図1に示されるように、本実施形態にかかる施工装置100は、マーカー車の進行方向Pにおいて、混合器18の下流側に、ガラスビーズ散布機構(ガラスビーズ散布手段)が配されている。当該ガラスビーズ散布機構は、ガラスビーズ17を均等に拡散させながら案内する散布板27を備えたガラスビーズ散布ガン23を主な構成要素とする。ガラスビーズ散布ガン23から散布されたガラスビーズ17は、散布板27によって路面21上の適正な散布位置、即ち、塗料スプレーガン22によって路面21上に形成された塗布膜の上に案内されて散布される。
【0075】
図1に示されるように、塗布膜の上に散布されるガラスビーズ17の軌跡は、やや進行方向に傾いており、その斜めの軌跡の進行方向P側には、混合器18が位置している。混合器18の第4の外壁面184′における傾斜領域184bの裏面は、ガラスビーズ17の軌跡を避けるように、斜めに傾斜している。そのため、本実施形態にかかる施工装置100においては、ガラスビーズ散布機構を混合器18に、より近接させることができる。よって、混合器18の内容積低減に伴う小型化と相俟って、施工装置100のより一層の小型化を実現することができる。
【0076】
ガラスビーズ散布ガン23としては、路面標示を施工する際にガラスビーズを散布する従来公知の散布装置を特に制限されることなく用いることができる。なお、既述の回転羽根41の回転開始と、混合器18まで乾燥促進剤を搬送する搬送エアノズル6からのエア吐出開始は、ガラスビーズ散布ガン23からのガラスビーズ17の散布開始時と同期するように、制御器12によって制御される。
【0077】
本実施形態において、乾燥促進の対象となる路面標示用水性塗料とは、車両の運転者及び歩行者等に道路交通に関する規制、警戒、案内、指示等の情報を路面に表示するために用いられるものである。当該水性塗料とは、溶剤として、主として水や水系の液体を用い、有機溶剤を含まないか、含んでも少量であり、水系媒体が溶剤のメインの材料である路面標示用塗料をいう。使用可能な水性塗料としては、特に制限はなく、一般的な路面標示用水性塗料を問題なく用いることができる。
【0078】
当該水性塗料の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、スチレン等のエチレン性不飽和基を有する化合物を重合または共重合してなる樹脂成分、例えば、アクリル酸樹脂成分をビヒクル成分とするものが挙げられる。
【0079】
更に、樹脂成分は、カルボキシル基、エポキシド基、カルボニル基、アミノ基、炭素-炭素二重結合等の反応性官能基または結合を分子内に導入した重合体であってもよい。水性のビヒクル成分は、分散ポリマーであってもよいし、水溶性ポリマーとの混合物であってよい。
【0080】
また、水性塗料は、塗布作業性、着色や塗料物性、塗膜物性を改善するために、添加される各種の添加剤や顔料、フィラーを、適宜、必要に応じて、種類、含有量等を所望の特性に合わせて適宜選択し、それぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0081】
例えば、添加剤としては、塗料に一般的に使用されている分散剤、湿潤剤、沈降防止剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。また、添加可能な顔料としては、二酸化チタンや酸化鉄などの無機顔料、アゾ顔料やフタロシアニン顔料などの有機顔料等、各種着色顔料および体質顔料が挙げられる。添加可能なフィラーとしては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、二酸化珪素、珪石粉などが挙げられる。
【0082】
また、水性塗料は、溶媒または分散媒として、主として水を有するが、必要に応じて単独または2種類以上の有機溶剤を含んでいてもよく、特に水溶性の有機溶剤が好ましいが、水性塗料の安定性を阻害するものでなければ限定されるものではない。
このような路面標示用水性塗料の具体例としては、JIS K 5665 1種A及びJIS K 5665 2種Aなどに記載されたものが挙げられる。
【0083】
本実施形態において使用可能な乾燥促進剤としては、粉末状のものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、特許文献1に記載された固体状の水溶性塩、特許文献2に記載された酸で処理した粒子粉(成形化粒子)、特許文献3に記載された固形ポリマー粒子や無機化合物の粒子、特許文献4に記載された、水と反応することで発熱可能な非水溶性の無機化合物粒子、及び、特許文献5に記載された粉末状の水性塗料乾燥促進剤の何れをも使用することができる。
【0084】
本発明において、特に好適に使用可能な乾燥促進剤は、酸化カルシウム、酸化バリウム及び酸化ストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物粒子を含む。当該乾燥促進剤は、粉体状のものであることが好ましい。これらは、2種以上や3種全てを含んでも構わないし、いずれか1種のみでも構わない。これら中でも、市場からの入手容易性やコストを考慮すると、酸化カルシウムを含むことが好ましい。
【0085】
以上、本発明の路面標示の施工装置について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の路面標示の施工装置は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、矢印P方向にマーカー車が進行する態様としたが、逆方向に進行させても構わない。その場合、ガラスビーズ散布機構(ガラスビーズ散布手段)は、混合器18に対して矢印P方向側に配することになる。ただし、既述の通り、本実施形態における配置が施工装置の小型化の観点から好ましいため、矢印P方向にマーカー車が進行することが好ましい。
【0086】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の路面標示の施工装置を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の路面標示の施工装置は、路面以外の被塗装対象、例えば、床や陸屋根等を塗装する際にも、塗装の施工装置として利用乃至適用することができる。これらについても、勿論、全て、本願発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1…乾燥促進剤貯蔵タンク、2…モータ、3…撹拌棒、4…定量供給部、5…混合部、6…搬送エアノズル、7…エア制御用電磁弁、8,11…圧力計、9,10…圧力調整弁、12…制御器、13…モータ、14…乾燥促進剤搬送用ホース、14a…乾燥促進剤供給口、15…エア供給管、15a…エア供給管接続部、15b…連通路、15c…上方接続口、16…エアノズル、16a…エア吐出口、17…ガラスビーズ、18…混合器、18a…開口部、19…塗料吐出部、19a…吐出口、21…路面、22…塗料スプレーガン(塗布スプレー)、23…ガラスビーズ散布ガン、27…散布板、41…回転羽根、100…施工装置(路面標示の施工装置)、181…第1の壁面、181′…第1の外壁面、181a…リブ部、182…第2の壁面、182′…第2の外壁面、182a…リブ部、183…第3の壁面、183′…第3の外壁面、184…第4の壁面、184′…第4の外壁面、185…衝突面、186…取付面、187…天壁面、188,189…鉛直壁面、A:水性塗料(路面標示用水性塗料)が進行する経路、B…乾燥促進剤供給方向、C…エア(圧縮空気)進行方向、CB…交差箇所、D…乾燥促進剤進行方向、E…空間、F…空間、P…装置移動方向