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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117896
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】縦型加熱炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/14 20060101AFI20220804BHJP
   C30B 35/00 20060101ALI20220804BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20220804BHJP
   F27B 9/30 20060101ALI20220804BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20220804BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20220804BHJP
   F27B 17/02 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
F27B9/14
C30B35/00
F27B9/04
F27B9/30
F27D7/06 B
F27D9/00
F27B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014668
(22)【出願日】2021-02-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】大河内 賢次
(72)【発明者】
【氏名】岡島 上士
【テーマコード(参考)】
4G077
4K050
4K063
【Fターム(参考)】
4G077EG15
4G077EG24
4G077EG25
4G077EG29
4G077FE12
4K050AA01
4K050CA15
4K050CA19
4K050CC02
4K050CG01
4K050CG28
4K063AA05
4K063AA06
4K063AA07
4K063AA16
4K063CA05
4K063DA22
4K063EA01
(57)【要約】
【課題】支持棒が速やかに引き下げられてもシール装置の破損が抑制される縦型加熱炉を提供する。
【解決手段】炉室16内が上下方向の複数の加熱領域H1~H5に分割される縦型の炉体14と、被搬送物Kを炉室16内において上下方向に移動させる支持棒28と、支持棒28の外周面に摺接して炉室16内を気密に封止するシール装置34とを有する縦型加熱炉10であって、支持棒28は、外周側金属管66と外周側金属管66内に挿入された内周側金属管68との2重構造により構成され、支持台60は、断熱材64を介して外周側金属管66により支持され、外周側金属管66内には、内周側金属管68の内周側流通路72と、外周側金属管66の内周面と内周側金属管68の外周面との間の外周側流通路74とを有し、内周側流通路72と外周側流通路74とが内周側金属管68の上端において連通する冷媒流通路70が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉室内が上下方向の複数の加熱領域に分割される縦型の炉体と、支持台が上端部に固定され、前記支持台により支持された被搬送物を前記炉室内において上下方向に移動させる支持棒と、前記支持棒の外周面に摺接して前記炉室内を気密に封止するシール装置とを有し、前記被搬送物を前記複数の加熱領域のいずれかに位置させることが可能な縦型加熱炉であって、
前記支持棒は、外周側金属管と前記外周側金属管内に挿入された内周側金属管との2重構造により構成され、
前記支持台は、断熱材を介して前記外周側金属管により支持され、
前記外周側金属管内には、前記内周側金属管の内周側流通路と、前記外周側金属管の内周面と前記内周側金属管の外周面との間の外周側流通路とを有し、前記内周側流通路と前記外周側流通路とが前記内周側金属管の上端において連通する冷媒流通路が、設けられている
ことを特徴とする縦型加熱炉。
【請求項2】
前記冷媒は、前記内周側流通路の下部へ流入させられるとともに、前記外周側流通路の下部から流出させられ、
前記外周側金属管と前記内周側金属管との間には、前記内周側流通路から前記外周側流通路の上部へ流入させられた前記冷媒の流通路を、周方向に形成する瀬切り板が、設けられている
ことを特徴とする請求項1の縦型加熱炉。
【請求項3】
前記外周側流通路における前記冷媒の流通断面積は、前記内周側流通路における前記冷媒の流通断面積よりも小さくされている
ことを特徴とする請求項1又は2の縦型加熱炉。
【請求項4】
前記炉体の下端面には、前記炉室が下向きに開く開口が形成されており、
前記炉体に形成された開口を開閉する開閉部材と、前記開閉部材を上下方向に駆動する開閉アクチュエータとを有する炉開閉装置が、備えられ、
前記支持棒は、前記開閉部材を上下方向に移動可能に貫通し、前記支持棒と前記開閉部材との間が前記シール装置により封止されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1の縦型加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物を昇降させることにより、被加熱物に対して加熱処理を行なう縦型加熱炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、被加熱物に対する加熱方法の開発試験などや、試験的な製造では、被加熱物に対して所望の焼成温度カーブを用いて加熱処理を行なうことが求められている。しかし、ローラハース炉などの横型炉では、被加熱物の搬送速度に限界があるため、被加熱物に対して急昇温加熱や急冷却を行なうには限界がある。このため、温度の変化速度を大きくした焼成温度カーブ(ヒートプロファイル)で加熱処理を行なうことが困難であった。
【0003】
これに対して、炉室内の熱は上方へ行く特性を利用して、気密状態たとえば真空状態の縦型の炉室内の上部において坩堝内の原料を溶解させ、炉室内の上部よりも温度が低い炉室内の下部へ坩堝を移動させつつ、坩堝内の原料を結晶化させる縦型加熱炉が知られている。たとえば、特許文献1および特許文献2に記載されている昇降式の縦型加熱炉がそれである。
【0004】
上記特許文献1および2に記載された縦型加熱炉では、坩堝内の被加熱物の熱処理を行なうために坩堝を支持する支持棒が備えられ、引き下げ速度が坩堝内の結晶成長速度となるようにゆっくりと支持棒が引き下げられるとともに、坩堝を支持する支持棒内には、坩堝の温度を制御するための冷媒が循環させられるとともに、支持棒を介して坩堝内の冷却が行なわれるようになっており、坩堝内の結晶成長が制御されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-272991号公報
【特許文献2】特開2006-321690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、所望の焼成温度カーブを用いて加熱処理を行なうために上記のような縦型加熱炉を、結晶成長ではなく、たとえば被加熱物に対して急激な温度変化(降下)を与えるために支持棒を速やかに引き下げる熱処理に用いる場合がある。このような場合には、炉室を気密に維持するために支持棒に摺動可能なシール装置が設けられているためシール装置に高熱が加えられるので、シール装置が破損して炉室の気密性が損なわれる場合があった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、支持棒が速やかに引き下げられてもシール装置の破損が抑制される縦型加熱炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、縦型の炉体内に入れられる坩堝とその坩堝を支持する支持棒との間に断熱材を介在させ、支持棒を内周側金属管と外周側金属管との二重構造から構成し、支持棒の外周側金属管の上部外周面の裏面に冷媒流通路を設けると、支持棒が速やかに引き下げられても、シール装置の破損が抑制されることを見いだした。本発明はその知見に基づいて為されたものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(a)炉室内が上下方向の複数の加熱領域に分割される縦型の炉体と、支持台が上端部に固定され、前記支持台により支持された被搬送物を前記炉室内において上下方向に移動させる支持棒と、前記支持棒の外周面に摺接して前記炉室内を気密に封止するシール装置とを有し、前記被搬送物を前記複数の加熱領域のいずれかに位置させることが可能な縦型加熱炉であって、(b)前記支持棒は、外周側金属管と前記外周側金属管内に挿入された内周側金属管との2重構造により構成され、(c)前記支持台は、断熱材を介して前記外周側金属管により支持され、(d)前記外周側金属管内には、前記内周側金属管の内周側流通路と、前記外周側金属管の内周面と前記内周側金属管の外周面との間の外周側流通路とを有し、前記内周側流通路と前記外周側流通路とが前記内周側金属管の上端において連通する冷媒流通路が、設けられていることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の縦型加熱炉によれば、前記外周側金属管内には、内周側流通路と外周側流通路とを有し、前記内周側流通路と前記外周側流通路とが前記内周側金属管の上端において連通する冷媒流通路が、設けられている。これにより、断熱材により支持台から外周側金属管への熱伝導が抑制されるとともに、外周側流通路と内周側流通路との間で冷媒が流通させられることから、外周側金属管の内周面には流通する冷媒が接触しているので、支持棒が速やかに引き下げられても、シール装置の破損が抑制される。
【0011】
ここで、好適には、(a)前記冷媒は、前記内周側流通路の下部へ流入させられるとともに、前記外周側流通路の下部から流出させられ、(b)前記外周側金属管と前記内周側金属管との間には、前記内周側流通路から前記外周側流通路の上部へ流入させられた前記冷媒の流通路を、周方向に形成する瀬切り板が、設けられている。これにより、内周側金属管内では、瀬切り板により、内周側流通路へ流入させられ冷媒を内周側金属管の少なくとも上部の内周面近傍を通るように流通路が長く形成されるため、相対的に密度の高い低温の冷媒が速やかに下降することが抑制され、支持棒の外周面の冷却効率が高められる。
【0012】
また、好適には、前記外周側流通路における前記冷媒の流通断面積は、前記内周側流通路における前記冷媒の流通断面積よりも小さくされている。これにより、外周側流通路へは内周側流通路よりも早い流速で冷媒が流通させられることから、支持棒を構成する外周側金属管の上端部の内側は、内周側流通路よりも早い流速の冷媒で冷却されるので、支持棒が速やかに引き下げられても、シール装置の破損が抑制される。
【0013】
また、好適には、(a)前記炉体の下端面には、前記炉室が下向きに開く開口が形成されており、(b)前記炉体に形成された開口を開閉する開閉部材と、前記開閉部材を上下方向に駆動する開閉アクチュエータとを有する炉開閉装置が、備えられ、(c)前記支持棒は、前記開閉部材を上下方向に移動可能に貫通し、前記支持棒と前記開閉部材との間が前記シール装置により封止されている。このように、シール装置により支持棒と開閉部材との間が封止されているので、炉室内の気密性が維持され、真空加熱処理或いは所定のガス雰囲気加熱処理が可能となる。また、炉開閉装置により炉室が開閉されるので、被搬送物の入れ出しが容易とされている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例の縦型加熱炉を示す縦断面図である。
図2図1の縦型加熱炉のII-II視断面図である。
図3図1の縦型加熱炉の附帯設備、および支持棒の上昇時の作動を説明する図である。
図4図1の縦型加熱炉に備えられた支持棒の構成を拡大して説明する断面図である。
図5図4に示す外周側流通路を展開して示す摸式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は発明に関連する要部を説明するものであり、寸法及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0016】
図1は、本発明の一実施例の縦型加熱炉10を示す縦断面図である。図2は、縦型加熱炉10のII-II視断面図である。図1に示すように、縦型加熱炉10は、機枠(フレーム)12によって支持された縦型の円柱状の炉体14を備えている。炉体14は、たとえばロックウール、耐火レンガ等の無機質の断熱材から構成されている。炉体14には、炉体14の下端面に開口する円柱状空間を形成する縦型の炉室16が、炉体14と同心に形成されている。
【0017】
炉室16の内周面には、内向きに突き出す複数個(本実施例では5個)の環状突部18が形成されている。また、炉室16の内周壁のうち、環状突部18が形成されていない部分には、1000℃、750℃、550℃、400℃、200℃などに独立して温度制御可能な複数個の円形のヒータ30がそれぞれ配設されている。これにより、炉室16内が上下方向の複数の第1加熱領域H1~第5加熱領域H5に分割される。そして、複数個の環状突部18のいずれかの内周側に、後述する支持棒28に支持された円形の仕切り板58が位置させられてその環状突部18の内周側の開口が閉じられたとき、複数の第1加熱領域H1~第5加熱領域H5のいずれかが仕切り板58の上側位置で機能させられるようになっている。図3は、縦型加熱炉10の附帯設備及び支持棒の上昇時の作動を説明する図であり、第1加熱領域H1が仕切り板58の上側位置で機能させられている状態を示す図である。
【0018】
円柱状空間である炉室16は、炉体14の下端面14aに開口している。炉体14に形成された5個の環状突部18のうちの最下段の環状突部18の内周縁18aが、炉体14の下端面14aに形成された開口に対応している。
【0019】
図2に示すように、機枠12には、炉体14の下端面14aに形成された開口すなわち最下段の環状突部18の内周縁18aを開閉する開閉部材20と、開閉部材20を上下方向に駆動する開閉アクチュエータ22と、を有する炉開閉装置24が備えられている。
【0020】
開閉部材20は、円盤状の部材であって、円環状の着座部20aを外周縁部に備えるとともに、支持棒28を貫通させる円筒部20bを中心部に備え、外周側へ突き出す突部20cを介して、開閉アクチュエータ22により支持されている。これにより、開閉アクチュエータ22は、開閉部材20の円環状の着座部20aが炉体14の下端面14aに当接する閉位置と、開閉部材20の円環状の着座部20aと炉体14の下端面14aとの間が最も開いた開位置との間で、開閉部材20を炉体14の中心軸線CL方向に上下駆動するようになっている。
【0021】
図4は、縦型加熱炉10に備えられた支持棒の構成を拡大して説明する断面図である。開閉部材20の円筒部20bには、円筒部20bと円筒部20bの内側を貫通する支持棒28との間を、支持棒28の上下方向の移動を許容しつつ気密に封止するためのシール装置34が設けられている。シール装置34は、支持棒28を通過させる環状のシール保持部材36と、シール保持部材36の内周面に嵌め着けられた摺接部材38とから構成されている。摺接部材38は、耐熱ゴム、ロックウール等により構成された環状の部材たとえばOリングである。シール装置34は、支持棒28を炉体14と同心となるように位置決めしつつ、支持棒28を上下方向へ案内する機能を有している。
【0022】
図1に示すように、支持棒28は、機枠12に設けられた上下駆動装置40によって上下方向に駆動され且つ位置決められるようになっている。上下駆動装置40は、電動機42と、電動機42によって回転駆動されるねじ軸44と、ねじ軸44に螺合されたナット部材46と、上下方向ガイドロッド48と、上下方向ガイドロッド48により上下方向に案内され且つナット部材46に連結された上下部材50と、上下部材50から突設され、支持棒28の下部に連結された連結部材52と、を備えている。
【0023】
図4に示すように、支持棒28の上端部28aには、耐火物等のセラミック材からなるホルダー56と、環状突部18の内周側の空間を閉じる円形の仕切り板58と、被加熱物Wを収容する甲鉢等の窯道具として知られる有底円筒状の被搬送物Kが載置されてそれを支持するセラミック材からなる円板の載置板54とを含む支持台60が、支持棒28と同心に固定されている。
【0024】
ホルダー56は、支持棒28の上端部28aをブランケットやヤーンロープ等の断熱材64を介して嵌め入れる円筒状嵌合部56aと、円筒状嵌合部56aの上端に固定された円形板部56bとを一体に有している。円形の仕切り板58は、環状突部18の内径よりも少し小径、且つホルダー56よりも大径であって、ホルダー56の円形板部56bに同心に嵌着されている。載置板54は、仕切り板58の外径よりは小径、且つ被搬送物Kの外径よりは大径であるセラミック材から成る円板である。
【0025】
図4に示すように、支持棒28は、外周側金属管66と、外周側金属管66内に挿入された外周側金属管66よりも小径の内周側金属管68との2重構造により構成されている。外周側金属管66の上端面は、断熱材64に対して所定距離の空間Sを隔てた金属板によって液密に閉じられており、内周側金属管68の上端は解放されている。外周側金属管66と内周側金属管68との間に形成された外周側流通路74と、内周側金属管68の内周側に形成された内周側流通路72とは、支持棒28の上端部28aすなわち内周側金属管68の上端縁を回って相互に連通させられており、冷媒流通路70として機能している。
【0026】
外周側金属管66および内周側金属管68の下端は、下蓋部材79により閉じられており、下蓋部材79には、内周側金属管68の内周側に形成された内周側流通路72に連通する冷媒入力ポート76と、外周側金属管66と内周側金属管68との間に形成された外周側流通路74に連通する冷媒出力ポート78と、が形成されている。
【0027】
外周側金属管66と内周側金属管68との間に形成された外周側流通路74の冷媒流通断面積は、内周側金属管68の内周側に形成された内周側流通路72の冷媒流通断面積よりも小さく設定されている。これにより、冷媒(本実施例では冷却水)Fが下蓋部材79の冷媒入力ポート76に供給されると、外周側流通路74内の冷媒Fは、内周側流通路72を流通する冷媒Fの速度よりも早い流速で流通させられ、下蓋部材79の冷媒出力ポート78から排出されるようになっている。図5は、図4に示す外周側流通路74の一部(上部)を展開して示す摸式図である。この図5では、外周側金属管66と瀬切り板68aとが、内周側金属管68を外して示されている。
【0028】
外周側金属管66と内周側金属管68との間には、それら外周側金属管66と内周側金属管68との間に形成された外周側流通路74を流れる冷媒Fが、図4の上部では破線の矢印で示され、図5では実線の矢印で示される流線のように、少なくとも外周側金属管66の内周面の上端部近傍を通る流線を中心軸線CLまわりの周方向とそれと反対方向の他の周方向とに交互に形成して流通路を長く形成するための複数個の瀬切り板68aが水平な姿勢で設けられている。
【0029】
複数個の瀬切り板68aは、外周側流通路74内において冷媒Fの中心線CL方向の流れを部分的に阻止するためにたとえば円環状の一部に切欠き68bが設けられることで半円環状或いは部分円環状とされた板材である。瀬切り板68aは、図5に示すように中心軸線CL方向に沿って切欠き68bが交互となるように配置されており、冷媒Fが積極的に外周側金属管66の少なくとも上部の内周面近傍を通るようにされている。上記複数個の瀬切り板68aは、所定の瀬切り板68aの切欠き68bとそれに隣接する瀬切り板68aの切欠き68bとの間が最も離間するように配置されることで、冷媒Fの流線が外周側金属管66の少なくとも上部の内周面近傍を通るようにされている。これにより、相対的に低温で密度が高い内周側金属管68からの冷媒Fが外周側流通路74の上部に到達した状態において、瀬切り板68aの存在による密度差により冷媒Fの速やかな下降が阻止され、外周側金属管66の少なくとも上部の冷却効率が高められている。
【0030】
そして、本実施例では、炉体14には、図3に示すように、空気、窒素ガス、酸素、水蒸気、水素ガス、アルゴンガスを炉室16に流量計94を通して選択的にそれぞれ供給するための、ガス供給配管80が設けられている。また、炉体14には、調節弁82および排気ガス処理装置84を介して炉体14内のガスを排出する排気ファン86が接続されている。さらに、炉体14には、並列接続されたオンオフ弁88および調節弁90を介して真空排気するための真空ポンプ92が設けられている。これにより、空気、窒素ガス、酸素、水蒸気、水素ガス、アルゴンガスの選択により、また、調節弁90および真空ポンプ92の作動により所望の加熱雰囲気が設定されるようになっている。また、各ヒータ30の温度設定と、支持棒28の上下駆動操作により、所望の焼成温度カーブを用いて加熱処理を行なうことができる。
【0031】
上述のように、本実施例の縦型加熱炉10によれば、上下方向の炉室16内が複数の加熱領域H1~H5に分割される縦型の炉体14と、支持台60が上端部28aに固定され、支持台60により支持された被搬送物Kを炉室16内において上下方向に移動させる支持棒28と、支持棒28の外周面に摺接して炉室16内を気密に封止するシール装置34とを有し、被搬送物Kを複数の加熱領域H1~H5のいずれかに位置させることが可能な縦型加熱炉10であって、支持棒28は、外周側金属管66と外周側金属管66内に挿入された内周側金属管68との2重構造により構成され、支持台60は、断熱材64を介して外周側金属管66により支持され、外周側金属管66内には、内周側金属管68の内周側流通路72と、外周側金属管66の内周面と内周側金属管68の外周面との間の外周側流通路74とを有し、内周側流通路72と外周側流通路74とが内周側金属管68の上端において連通する冷媒流通路70が、設けられている。これにより、断熱材64により支持台60から外周側金属管66への熱伝導が抑制されるとともに、外周側流通路74と内周側流通路72との間で冷媒Fが流通させられることから、外周側金属管66の内周面には流通する冷媒Fが常時接触しているので、支持棒28が速やかに引き下げられても、シール装置34の破損が抑制され、耐久性が高められる。
【0032】
また、本実施例の縦型加熱炉10によれば、冷媒Fは、内周側金属管68内の内周側流通路72の下部へ流入させられるとともに、外周側金属管66の内周面と内周側金属管68の外周面との間の外周側流通路74の下部から流出させられ、外周側金属管66と内周側金属管68との間の外周側流通路74には、内周側流通路72から外周側流通路74の上部へ流入させられ冷媒Fの流通路を、周方向に形成して長くする瀬切り板68aが、設けられている。これにより、外周側金属管68内では、瀬切り板68aにより、内周側流通路72の下部へ流入させられ冷媒Fを内周側流通路72の上部へ向う過程で、内周側金属管68の少なくとも上部の内周面近傍を長く通るように流通路が形成されているため、相対的に密度の高い低温の冷媒Fが速やかに下降することが抑制され、支持棒28の外周面の冷却効率が高められる。
【0033】
また、本実施例の縦型加熱炉10によれば、外周側流通路74における冷媒Fの流通断面積は、内周側流通路72における冷媒Fの流通断面積よりも小さくされている。これにより、外周側流通路74へは内周側流通路72よりも早い流速で冷媒Fが流通させられることから、支持棒28を構成する外周側金属管66の上端部の内側は、内周側流通路72よりも早い流速の冷媒Fで冷却されるので、支持棒28が速やかに引き下げられても、シール装置34の破損が抑制される。
【0034】
また、本実施例の縦型加熱炉10によれば、炉体14の下端面14aには、炉室16が下向きに開く開口(最下段の環状突部18の内周縁)18aが形成されており、炉体14に形成された開口18aを開閉する開閉部材20と、開閉部材20を上下方向に駆動する開閉アクチュエータ22とを有する炉開閉装置24が、備えられ、支持棒28は、開閉部材20を上下方向に移動可能に貫通し、支持棒28と開閉部材20との間がシール装置34により封止されている。このように、シール装置34により支持棒28と開閉部材20との間が封止されているので、炉室16内の気密性が維持され、真空加熱処理或いは所定のガス雰囲気加熱処理が可能となる。また、炉開閉装置24により炉室16が開閉されるので、被搬送物Kの炉室16への入れ出しが容易とされている。
【0035】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0036】
たとえば、前述の実施例において、縦型の炉体14および炉室16は円筒状であったが、角柱状であってもよい。この場合、被搬送物Kは、有底角筒状のものが好適に用いられる。
【0037】
また、前述の実施例において、炉室16内の上下方向には、5つの第1加熱領域H1~第5加熱領域H5が形成されていたが、少なくとも2つの加熱領域が形成されていればよい。
【0038】
また、前述の実施例において、瀬切り板68aは、支持棒28の上部に6枚設けられていたが、これに限られない。例えば、上部から下部にかけて6枚未満または7枚以上の瀬切り板68aが設けられていてもよい。要するに、瀬切り板68aは、外周側金属管66と内周側金属管68との間に設けられ、内周側流通路72から外周側流通路74の上部へ流入させられた冷媒Fの流通路を、周方向に形成するものであればよい。
【0039】
また、前述の縦型加熱炉10は、種々の焼成温度カーブを用いて加熱処理試験を行なう昇降式加熱試験機としても好適に用いられる。また、小量生産の製品の加熱処理を行なう加熱炉としても好適に用いられる。
【0040】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0041】
10:縦型加熱炉
14:炉体
16:炉室
18a:内周縁(開口)
20:開閉部材
22:開閉アクチュエータ
24:炉開閉装置
28:支持棒
28a:上端部
34:シール装置
60:支持台
64:断熱材
66:外周側金属管
68:内周側金属管
68a:瀬切り板
70:冷媒流通路
72:内周側流通路
74:外周側流通路
F:冷媒
H1~H5:第1加熱領域~第5加熱領域(複数の加熱領域)
K:被搬送物
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉室内が上下方向の複数の加熱領域に分割される縦型の炉体と、支持台が上端部に固定され、前記支持台により支持された被搬送物を前記炉室内において上下方向に移動させる支持棒と、前記支持棒の外周面に摺接して前記炉室内を気密に封止するシール装置とを有し、前記被搬送物を前記複数の加熱領域のいずれかに位置させることが可能な縦型加熱炉であって、
前記支持棒は、外周側金属管と前記外周側金属管内に挿入された内周側金属管との2重構造により構成され、
前記支持台は、断熱材を介して前記外周側金属管により支持され、
前記外周側金属管内には、前記内周側金属管の内周側流通路と、前記外周側金属管の内周面と前記内周側金属管の外周面との間の外周側流通路とを有し、前記内周側流通路と前記外周側流通路とが前記内周側金属管の上端において連通する冷媒流通路が、設けられている
ことを特徴とする縦型加熱炉。
【請求項2】
前記外周側金属管と前記内周側金属管との間には、前記冷媒の流通路を、周方向に形成する瀬切り板が、設けられている
ことを特徴とする請求項1の縦型加熱炉。
【請求項3】
前記外周側流通路における前記冷媒の流通断面積は、前記内周側流通路における前記冷媒の流通断面積よりも小さくされている
ことを特徴とする請求項1又は2の縦型加熱炉。
【請求項4】
前記炉体の下端面には、前記炉室が下向きに開く開口が形成されており、
前記炉体に形成された開口を開閉する開閉部材と、前記開閉部材を上下方向に駆動する開閉アクチュエータとを有する炉開閉装置が、備えられ、
前記支持棒は、前記開閉部材を上下方向に移動可能に貫通し、前記支持棒と前記開閉部材との間が前記シール装置により封止されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1の縦型加熱炉。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉室内が上下方向の複数の加熱領域に分割される縦型の炉体と、支持台が上端部に固定され、前記支持台により支持された被搬送物を前記炉室内において上下方向に移動させる支持棒と、前記支持棒の外周面に摺接して前記炉室内を気密に封止するシール装置とを有し、前記被搬送物を前記複数の加熱領域のいずれかに位置させることが可能な縦型加熱炉であって、
前記支持棒は、外周側金属管と前記外周側金属管内に挿入された内周側金属管との2重構造により構成され、
前記支持台は、断熱材を介して前記外周側金属管により支持され、
前記外周側金属管内には、前記内周側金属管の内周側流通路と、前記外周側金属管の内周面と前記内周側金属管の外周面との間の外周側流通路とを有し、前記内周側流通路と前記外周側流通路とが前記内周側金属管の上端において連通する冷媒流通路が、設けられており、
前記炉体の下端面には、前記炉室が下向きに開く開口が形成されており、
前記炉体に形成された開口を開閉する開閉部材と、前記開閉部材を上下方向に駆動する開閉アクチュエータとを有する炉開閉装置が、備えられ、
前記支持棒は、前記開閉部材を上下方向に移動可能に貫通し、前記支持棒と前記開閉部材との間が前記シール装置により封止されている
ことを特徴とする縦型加熱炉。
【請求項2】
前記外周側金属管と前記内周側金属管との間には、前記支持棒の中心線方向において交互に位置する切欠きがそれぞれ設けられた円環状或いは部分円環状の複数個の板材であって、前記外周側流通路内において冷媒の前記支持棒の中心線方向の流通を部分的に阻止して前記冷媒の流通路を周方向に形成する複数個の瀬切り板が、設けられている
ことを特徴とする請求項1の縦型加熱炉。
【請求項3】
前記外周側流通路における前記冷媒の流通断面積は、前記内周側流通路における前記冷媒の流通断面積よりも小さくされている
ことを特徴とする請求項1又は2の縦型加熱炉。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(a)炉室内が上下方向の複数の加熱領域に分割される縦型の炉体と、支持台が上端部に固定され、前記支持台により支持された被搬送物を前記炉室内において上下方向に移動させる支持棒と、前記支持棒の外周面に摺接して前記炉室内を気密に封止するシール装置とを有し、前記被搬送物を前記複数の加熱領域のいずれかに位置させることが可能な縦型加熱炉であって、(b)前記支持棒は、外周側金属管と前記外周側金属管内に挿入された内周側金属管との2重構造により構成され、(c)前記支持台は、断熱材を介して前記外周側金属管により支持され、(d)前記外周側金属管内には、前記内周側金属管の内周側流通路と、前記外周側金属管の内周面と前記内周側金属管の外周面との間の外周側流通路とを有し、前記内周側流通路と前記外周側流通路とが前記内周側金属管の上端において連通する冷媒流通路が、設けられており、(e)前記炉体の下端面には、前記炉室が下向きに開く開口が形成されており、(f)前記炉体に形成された開口を開閉する開閉部材と、前記開閉部材を上下方向に駆動する開閉アクチュエータとを有する炉開閉装置が、備えられ、(g)前記支持棒は、前記開閉部材を上下方向に移動可能に貫通し、前記支持棒と前記開閉部材との間が前記シール装置により封止されていることにある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の縦型加熱炉によれば、前記外周側金属管内には、内周側流通路と外周側流通路とを有し、前記内周側流通路と前記外周側流通路とが前記内周側金属管の上端において連通する冷媒流通路が、設けられている。これにより、断熱材により支持台から外周側金属管への熱伝導が抑制されるとともに、外周側流通路と内周側流通路との間で冷媒が流通させられることから、外周側金属管の内周面には流通する冷媒が接触しているので、支持棒が速やかに引き下げられても、シール装置の破損が抑制される。また、シール装置により支持棒と開閉部材との間が封止されているので、炉室内の気密性が維持され、真空加熱処理或いは所定のガス雰囲気加熱処理が可能となるとともに、炉開閉装置により炉室が開閉されるので、被搬送物の入れ出しが容易とされる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
ここで、好適には、(a)前記冷媒は前記外周側流通路の下部から流出させられ、(b)前記外周側金属管と前記内周側金属管との間には、前記支持棒の中心線方向において交互に位置する切欠きがそれぞれ設けられた円環状或いは部分円環状の複数個の板材であって、前記外周側流通路内において冷媒の前記支持棒の中心線方向の流通を部分的に阻止して前記冷媒の流通路を周方向に形成する複数個の瀬切り板が、設けられている。これにより、内周側金属管内では、瀬切り板により、内周側流通路へ流入させられ冷媒を内周側金属管の少なくとも上部の内周面近傍を通るように流通路が長く形成されるため、相対的に密度の高い低温の冷媒が速やかに下降することが抑制され、支持棒の外周面の冷却効率が高められる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】