(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011791
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】育成装置及び育成設備
(51)【国際特許分類】
A01G 9/12 20060101AFI20220107BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20220107BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A01G9/12 B
A01G22/05 Z
A01G7/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113150
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B022
2B023
【Fターム(参考)】
2B022AB11
2B022AB15
2B022DA01
2B023AA01
2B023AB10
2B023AD30
2B023AF10
2B023AH10
(57)【要約】
【課題】つる植物の育成スペースをコンパクトにしつつ、生育効率良くつる植物を育成することが可能な育成装置及び育成設備を提供する。
【解決手段】育成装置10は、つる植物の育成装置であって、一方向に延在する複数の照明部材11を有し、複数の照明部材11の照射面11aがそれぞれ複数の照明部材11によって囲まれた空間37側を向き、つる植物50の主幹51を複数の照明部材11に支持させながら螺旋状に伸長させてつる植物50を育成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
つる植物の育成装置であって、
一方向に延在する複数の照明部材を有し、
前記複数の照明部材の照射面がそれぞれ前記複数の照明部材によって囲まれた空間側を向き、つる植物の主幹を前記複数の照明部材に支持させながら螺旋状に伸長させてつる植物を育成する、育成装置。
【請求項2】
つる植物の主幹を前記複数の照明部材の外側で前記複数の照明部材に巻回させながらつる植物を育成する、請求項1に記載の育成装置。
【請求項3】
つる植物を保持する第一保持部を備え、
前記第一保持部は、前記照明部材の延在方向において移動可能な状態で前記照明部材に取り付けられる、請求項1又は2に記載の育成装置。
【請求項4】
つる植物を保持する第二保持部を備え、
前記第二保持部は、前記照明部材の延在方向において移動可能な状態で前記照明部材とは異なる部材に取り付けられる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の育成装置。
【請求項5】
前記照明部材の外側面に曲面を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の育成装置。
【請求項6】
つる植物の育成装置であって、
一方向に延在する照明部材と、
前記照明部材が延在する方向と略平行で、前記照明部材の外部に配置された、複数の棒状部材と、を有し、
つる植物の主幹を前記複数の棒状部材に支持させながら螺旋状に伸長させてつる植物を育成する、育成装置。
【請求項7】
つる植物の主幹を前記複数の棒状部材の外側で前記複数の棒状部材に巻回させながらつる植物を育成する、請求項6に記載の育成装置。
【請求項8】
つる植物を保持する第三保持部を備え、
前記第三保持部は、前記棒状部材の延在方向において移動可能な状態で前記棒状部材に取り付けられる、請求項6又は7に記載の育成装置。
【請求項9】
つる植物を保持する第四保持部を備え、
前記第四保持部は、前記棒状部材の延在方向において移動可能な状態で前記照明部材及び前記棒状部材とは異なる部材に取り付けられる、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の育成装置。
【請求項10】
前記棒状部材の外側面に曲面を有する、請求項6乃至9のいずれか1項に記載の育成装置。
【請求項11】
前記育成装置の本体部分を移動可能に支持する移動部材、を備える請求項1乃至10のいずれか1項に記載の育成装置。
【請求項12】
前記照明部材の照射範囲が、前記一方向において可変である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の育成装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の育成装置が、多段に配置された、育成設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育成装置及び育成設備に係り、特に、つる植物の育成に用いられる育成装置及び育成設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物には、自らの剛性で体を支持せずに、他の樹木又は物体等を支えにして茎等を上方へ伸ばしていく植物(つる植物)が存在する。例えば、トマト、きゅうり及びナス等の一般的に馴染みのある野菜もつる植物の一種である。上記の性質から、つる植物の育成又は栽培においては、茎等を支柱等に結び付けてその茎等の伸びる方向を整える誘引という作業が個体ごとに成長に合わせて必要であるが、従来から、その誘引作業の手間を解消するため、つる植物に適した育成方法又は栽培方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トマトの栽培において茎を誘引するトマト栽培誘引装置及びトマトの茎を誘引して栽培する方法が開示されている。この特許文献1では、トマトの茎を上方から垂れ下げた誘引紐に沿わせて誘引し、その誘引紐を斜めに巻きつけて回転可能に支持した回転棒を、誘引紐を巻き戻す方向に回転させることにより、茎の先端位置を斜め下方に移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような従来のトマト栽培誘引装置では、トマトを栽培する畝に沿ってある程度の長さの回転棒を配設する必要があるうえ、伸長したトマトの茎は斜め下方向に次々に蓄積されていくことになる。そのため、広大な栽培領域が必要となり、単位面積あたりの収穫量は多くを望めず、効率が悪いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解決し、つる植物の育成スペースをコンパクトにしつつ、生育効率良くつる植物を育成することが可能な育成装置及び育成設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の育成装置は、つる植物の育成装置であって、一方向に延在する複数の照明部材を有し、複数の照明部材の照射面がそれぞれ複数の照明部材によって囲まれた空間側を向き、つる植物の主幹を複数の照明部材に支持させながら螺旋状に伸長させてつる植物を育成する。
上記構成の育成装置によれば、つる植物の茎(主幹)を照射面がそれぞれ複数の照明部材によって囲まれた空間側を向いた複数の照明部材に支持させながら螺旋状に伸長させて育成する。そのため、つる植物を照明部材の延在方向に沿って成長させることができるので、つる植物が成長して様々な方向に拡がっていくことを防止し、育成スペースをコンパクトにすることができ、面積効率良くつる植物を育成することができる。しかも、つる植物の葉は、光合成をするために複数の照明部材によって囲まれた空間側(光が強い内側)に広がるので、その点においても、育成スペースをコンパクトにすることができる。また、つる植物は、複数の照明部材によって囲まれた空間側の周囲を覆うように伸長するため、つる植物の茎葉全体に満遍なく光を当てることができるので、照明部材からの光を効率的に使うことができ、生育効率も向上する。さらに、つる植物が結実した際には、その実は照明部材の外側方向に自ずとはみ出してくるので、収穫作業がし易くなり、収穫作業の作業性が向上する。
このように、本発明の育成装置では、つる植物の育成スペースをコンパクトにしつつ、生育効率良くつる植物を育成することができる。
【0008】
また、本発明の育成装置において、つる植物の主幹を複数の照明部材の外側で複数の照明部材に巻回させながらつる植物を育成する、こととしてもよい。
上記構成のように、つる植物の茎(主幹)を複数の照明部材の外側に巻回させることにより、つる植物が成長して様々な方向に拡がっていくことをさらに好適に防止することができる。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0009】
また、本発明の育成装置において、つる植物を保持する第一保持部を備え、第一保持部は、照明部材の延在方向において移動可能な状態で照明部材に取り付けられる、こととしてもよい。
上記構成のように、つる植物を保持する第一保持部を照明部材の延在方向において移動可能な状態で取り付けることにより、伸長したつる植物の主幹を効率良く手繰り寄せることができるので、作業性が向上する。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0010】
また、本発明の育成装置において、つる植物を保持する第二保持部を備え、第二保持部は、照明部材の延在方向において移動可能な状態で照明部材とは異なる部材に取り付けられる、こととしてもよい。
上記構成のように、つる植物を保持する第二保持部を照明部材の延在方向において照明部材とは異なる支柱等の部材に移動可能な状態で取り付けることにより、伸長したつる植物の主幹を効率良く手繰り寄せることができるので、作業性が向上する。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0011】
また、本発明の育成装置において、照明部材の外側面に曲面を有する、こととしてもよい。
上記構成のように、照明部材の外側面に曲面を有することにより、つる植物が巻回して照明部材と接触したり擦れたりした場合であっても、傷み難く切断され難い。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の育成装置は、つる植物の育成装置であって、一方向に延在する照明部材と、照明部材が延在する方向と略平行で、照明部材の外部に配置された、複数の棒状部材と、を有し、つる植物の主幹を複数の棒状部材に支持させながら螺旋状に伸長させてつる植物を育成する。
上記構成の育成装置によれば、照明部材を囲うように照明部材の外部に照明部材が延在する方向と略平行に配置された複数の棒状部材に、つる植物の茎(主幹)を支持させながら螺旋状に伸長させて育成する。そのため、つる植物を照明部材の延在方向に沿って成長させることができるので、つる植物が成長して様々な方向に拡がっていくことを防止し、育成スペースをコンパクトにすることができ、面積効率良くつる植物を育成することができる。しかも、つる植物の葉は、光合成をするために複数の棒状部材によって囲まれた空間側(光が強い内側)に広がるので、その点においても、育成スペースをコンパクトにすることができる。また、つる植物は、複数の棒状部材によって囲まれた空間側の周囲を覆うように伸長するため、つる植物の茎葉全体に満遍なく光を当てることができるので、照明部材からの光を効率的に使うことができ、生育効率も向上する。さらに、つる植物が結実した際には、その実は棒状部材の外側方向に自ずとはみ出してくるので、収穫作業がし易くなり、収穫作業の作業性が向上する。
このように、本発明の育成装置では、つる植物の育成スペースをコンパクトにしつつ、生育効率良くつる植物を育成することができる。
【0013】
また、本発明の育成装置において、つる植物の主幹を複数の棒状部材の外側で複数の棒状部材に巻回させながらつる植物を育成する、こととしてもよい。
上記構成のように、つる植物の茎(主幹)を複数の棒状部材の外側に巻回させることにより、つる植物が成長して様々な方向に拡がっていくことをさらに好適に防止することができる。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0014】
また、本発明の育成装置において、つる植物を保持する第三保持部を備え、第三保持部は、棒状部材の延在方向において移動可能な状態で棒状部材に取り付けられる、こととしてもよい。
上記構成のように、つる植物を保持する第三保持部を棒状部材の延在方向において移動可能な状態で取り付けることにより、伸長したつる植物の主幹を効率良く手繰り寄せることができるので、作業性が向上する。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0015】
また、本発明の育成装置において、つる植物を保持する第四保持部を備え、第四保持部は、棒状部材の延在方向において移動可能な状態で照明部材及び棒状部材とは異なる部材に取り付けられる、こととしてもよい。
上記構成のように、つる植物を保持する第四保持部を棒状部材の延在方向において照明部材及び棒状部材とは異なる支柱等の部材に移動可能な状態で取り付けることにより、伸長したつる植物の主幹を効率良く手繰り寄せることができるので、作業性が向上する。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0016】
また、本発明の育成装置において、棒状部材の外側面に曲面を有する、こととしてもよい。
上記構成のように、棒状部材の外側面に曲面を有することにより、つる植物が巻回して棒状部材と接触したり擦れたりした場合であっても、傷み難く切断され難い。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0017】
また、本発明の育成装置において、育成装置の本体部分を移動可能に支持する移動部材、を備える、こととしてもよい。
上記構成のように、育成装置の本体部分を移動可能に支持する自在車輪等の移動部材を備えることにより、つる植物の生育状況に応じて、育成装置自体を適切な場所に容易に移動させることができる。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0018】
また、本発明の育成装置において、照明部材の照射範囲が、一方向において可変である、こととしてもよい。
上記構成のように、照明部材の照射範囲を一方向、すなわち、照明部材の延在方向において可変とすることにより、つる植物の成長(大きさ)に合わせて照射範囲を変えて照明部材からの光を効率的に使うことができる。そのため、つる植物をより一層効率良く育成することができる。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、本発明の育成設備は、上記の育成装置が、多段に配置される。
上記構成の育成設備によれば、複数の育成装置を鉛直方向に多段に配置し、つる植物の育成空間を複数積層することにより、面積効率を向上させることができる。
このように、本発明の育成設備では、つる植物の育成スペースをコンパクトにしつつ、生育効率良くつる植物を育成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、つる植物の育成スペースをコンパクトにしつつ、生育効率良くつる植物を育成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る育成装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る育成装置の変形例を模式的に示す概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用態様の一例を示す説明図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る育成装置における保持部の説明図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る育成装置における保持部の説明図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【
図5C】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【
図5D】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【
図5E】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【
図5F】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【
図5G】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【
図5H】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用態様の他の一例を示す概略平面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用態様の他の一例を示す概略平面図である。
【
図6C】本発明の一実施形態に係る育成装置の使用態様の他の一例を示す概略平面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る育成装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る育成装置の変形例を模式的に示す概略構成図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態に係る育成装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図10】本発明の育成設備の一例を模式的に示す概略構成図である。
【
図11】本発明の育成設備の一例を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態(以下、本実施形態という。)に係る育成装置及び育成設備について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0023】
<育成装置10の基本構成>
先ず、育成装置10の基本構成について説明する。
育成装置10は、植物工場内の部屋等の中に設置されてつる植物(以下、植物50という。)を育成するための装置であり、
図1に示されるように、植物50に光を照射する複数の照明部材11と、複数の照明部材11を連結する連結部材31と、培地32が載置されたトレー33と、育成装置10の本体部分を移動可能に支持する移動部材34と、を備える装置である。なお、ここでいう「育成」には、栽培も含む。
【0024】
本実施形態の育成装置10にて育成可能な植物50としては、つる植物であれば適用可能であり、野菜、果樹及び花等を含む。例えば、トマト、キュウリ、ナス、豆類、ピーマン、オカワカメ、ツルムラサキ、メロン、スイカ、ウリ類、カボチャ等が好適であり、その中でも特に、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、豆類等がより好適である。なお、植物50は、食用であっても、観賞用であってもよい。
【0025】
照明部材11は、不図示の電源(電池)から電力の供給を受け、植物50に向けて光合成に必要な光(人工光)を照射する部材であって、一台の育成装置10に複数(本実施形態では四本)の照明部材11が設置されている。照明部材11としては、無機又は有機のLED(Light Emitting Diode)又はレーザー等の半導体発光素子、蛍光灯、水銀灯、希ガスランプ、無電極ランプ等の放電管、白熱灯等のフィラメント発光機、放射光又は蛍光等のエネルギー遷移によるもの等が利用可能である。
【0026】
これらの複数の照明部材11は、一方向(本実施形態では鉛直方向)に延在しており、照明部材11の照射面11aは、それぞれ、複数の照明部材11によって囲まれた空間37側を向くように配置されている。そのため、空間37には複数の照明部材11からの光が集まり、空間37は、光が強く明るい領域となる。一方、照明部材11の外側面11b(育成装置10の外側方向を向く面)は、照明部材11の裏面(LEDであれば基板の裏面)側となり、光を照射しない。また、照明部材11の側端等の角部は、丸みを有した滑らかな形状(R形状)となっている。
【0027】
それぞれの照明部材11の外側面11bの所定箇所(好ましくは、上方部分)には、フック35が備え付けられており、そのフック35には、鎖状に連結された長尺体であるチェーン36が取り外し可能に引っ掛けられている。これにより、チェーン36は、照明部材11の外側面11bに沿って吊り下げられている状態となる。すなわち、照明部材11の外側面11bには、その照明部材11の延在方向においてチェーン36が存在する構成となる。また、チェーン36が揺動したりずれたりすることを防止するため、照明部材11の下方部分等にも不図示のフック等の固定部材を取り付け、チェーン36の下部をその不図示のフックに引っ掛けて固定してもよい。
【0028】
なお、本実施形態では、照明部材11は、四本とも全て同一方向に延在しているが、これに限定されるわけではない。例えば、上方に向かうにつれて、各照明部材11の距離が離れていくように、外側に向けて傾斜を付けた状態で立設されていてもよい。また、本実施形態では、全ての照明部材11にフック35及びチェーン36が備え付けられているが、複数の照明部材11のうち数本の照明部材11に限定してフック35を備え付ける構成としてもよいし、全ての照明部材11にフック35を備えていたとしても、一部のフック35には、チェーン36を取り付けない構成としてもよい。
【0029】
上記のように配置された照明部材11は、その延在方向において、照射範囲が可変である。具体的には、LEDのように、一本の照明部材11中に複数の光源(不図示)を有する場合、点灯させる光源と消灯させる光源とを分ける、すなわち、所定範囲内に配置されている光源を点灯させ、それ以外の光源を消灯させることにより、照射範囲を変更する。また、複数の照明管を直列に連結して一本の照明部材11を構成している場合は、点灯させる照明管と消灯させる照明管とを分けることにより、照射範囲を変更する。なお、照射範囲の他、光の強度(照射強度)又は光の波長等を可変としてもよい。照射強度を変える構成としては、例えば、光源1個あたりの発光強度を変えてもよいし、単位面積あたりの光源の点灯数を変えてもよい。
【0030】
また、照明部材11は、少なくとも外側面11bに曲面を有していてもよい。例えば、
図2に示されるように、外側面11bを含め、全ての側面が曲面となるように、それぞれの照明部材11を円柱としてもよい。具体的には、照明部材11としてLEDを用いるのであれば、光源が載置された基板を少なくとも照射面11a側が透明な円筒状のカバーで覆うとよい。この場合であっても、照明部材11の照射面11a(基板上に載置された光源側)は、それぞれ、複数の照明部材11によって囲まれた空間37側を向くように配置されている。
【0031】
連結部材31は、合成樹脂又は金属等から成り、複数の照明部材11を連結して支持するための部材である。本実施形態では、それぞれの照明部材11の上方及び下方の所定の位置において、互いの照射面11aが空間37側を向く状態で照明部材11を固定する。連結部材31は、照明部材11から照射される光を遮ることがないように、なるべく簡易的な構成で植物50の成長の邪魔にならない位置に設置するとよい。また、連結部材31は、透光性を有する素材により構成してもよい。
【0032】
培地32は、植物50を保持し、且つ、トレー33上に溜められた養液(水でもよい)から植物50に養分及び水分を供給するためのものであり、本実施形態では、例えば、フェノール樹脂、ウレタン樹脂又はポリスチレン等の合成樹脂の発泡体を用いる。ただし、培地32は上記に限らず、ロックウール、パルプ、ピートモス、バーミキュライト又はヤシ殻等であってもよい。また、本実施形態では、水耕栽培方式を適用しているが、養液土耕栽培方式、土耕栽培方式、又はその他の方式であってもよい。なお、栽培方式を変更した場合は、培地32も適宜変更する。
【0033】
移動部材34は、育成装置10の本体部分を移動可能に支持するキャスター等の自在車輪であり、各照明部材11の下端にそれぞれ取り付けられている。本実施形態では、照明部材11が四本のため、四台の移動部材34を備えている。移動部材34は、その全部又は一部を、走行方向が旋回する自在車の他、走行方向が固定している固定車としてもよいし、ストッパー付きとしてもよい。また、動力付きで自走可能な構成としてもよい。また、車輪は、ゴム等の弾性のある素材であってもよいし、ナイロン等の剛性のある素材であってもよい。なお、移動部材34の許容荷重は、植物50が成長した場合を想定して設定される。
【0034】
<育成装置10の使用態様>
次に、上記構成の育成装置10において実際に植物50を育成する態様の一例について説明する。
図3に示されるように、植物50は、個体ごとに、茎(主幹51)の根元側をトレー33上に載置された培地32に保持された状態で育成される。
【0035】
本実施形態では、植物50は、つる状の茎(主幹51)と、葉52と、実53と、を有する。茎には、培地32から成長した主幹51の他、その主幹51から分岐した支幹54を有する。葉52及び実53は主に支幹54に付いており、支幹54の先には花(不図示)が咲いた後、実53が成る。なお、植物50の種類によっては、花を咲かせずに実53だけを付けるものもある。
【0036】
植物50は、自らの剛性で主幹51を支持することができない。そのため、主幹51は、複数の照明部材11の外側で複数の照明部材11に巻き付きながら、照明部材11に支持されつつ、照明部材11の延在方向に沿って上方に向かって伸長しつつ成長する。また、葉52は、光合成をするために、複数の照明部材11によって囲まれた光が強い空間37側に向かって広がり成長する。一方、実53は、主に照明部材11の外側にはみ出した支幹54の先に成り、自重によって支幹54の幹元(主幹51との分岐点)よりも下方に垂れ下がる。このとき、照明部材11の外側にはみ出した葉52がある場合であっても、実53は葉52よりも相対的に重いので、葉52よりもさらに下方に垂れ下がることとなる。なお、一般的に、植物50の成長点(細胞分裂が活発な部分)は、主幹51の先端に存在するため、主幹51はその先端部分が新たに形成されることにより伸長し、葉52及び実53は、先に成長している植物50の下部の方から順に形成される。
【0037】
図4A及び
図4Bに示されるように、植物50が、照明部材11の外側を好適に巻回しながら伸長するように、植物50は、所定の位置に取り付けられたクリップ38によって、照明部材11、厳密には、照明部材11の外側面11bに配置されたチェーン36に適宜取り付けられている。クリップ38は主幹51(例えば、主幹51から支幹54が分岐している位置等、クリップ38を引っ掛けることができる箇所)に複数取り付けられている。
【0038】
クリップ38は、第一保持部に相当し、照明部材11の延在方向において移動可能な状態で照明部材11に取り付けられている。具体的には、クリップ38はチェーン36にそのまま取り付けられた状態で、チェーン36のフック35に引っ掛ける位置を輪36a(
図4A)から輪36b(
図4B)に変更することにより、フック35とクリップ38との距離を変更する。これにより、クリップ38は、照明部材11の延在方向に移動することになる。なお、チェーン36はそのままフック35に引っ掛けた状態で、クリップ38を一旦チェーン36から取り外し、再度チェーン36の異なる位置に取り付けることにより、フック35とクリップ38との距離を変更することとしてもよい。
【0039】
<育成装置10の使用方法>
ここで、
図5A~
図5Hを参照しつつ、本実施形態の育成装置10を用いて、植物50を育成する方法の一例について説明する。
なお、
図5A~
図5Hにおいては、育成装置10及び植物50について、説明に必要な部分を中心に簡略的に図示し、葉52、実53、支幹54及びクリップ38等についは、適宜省略する。
【0040】
先ず、培地32に保持された植物50の主幹51を、複数の照明部材11の外側面11bを巻回するように添わせる(
図5A)。このとき、適宜、クリップ38により、照明部材11(厳密には、照明部材11の外側面11bに配置されたチェーン36)に固定する。
そして、植物50が成長して主幹51が伸長してくると、主幹51の先端部分は、複数の照明部材11の外側面11bに沿って、複数の照明部材11を巻回するように上方に向けて螺旋状に伸長する(
図5B)。このとき、葉52は自然と光の強い空間37側に向かって広がるが、外側に広がった葉52については、適宜葉かきを行い、内側の空間37にまとめるとよい。また、結実した実53は、適宜収穫する。
【0041】
植物50が成長して主幹51が伸長し過ぎた場合、すなわち、育成装置10が許容する高さを超えて植物50が成長した場合(
図5C)、図中矢印に示すように、クリップ38を照明部材11に沿って下方に移動させることにより、主幹51を全体的又は部分的に下方に下ろし、主幹51の一部を育成装置10の下部にまとめる(
図5D)。具体的には、前述のように、チェーン36をフック35から一旦外し、下方に引き込んだ状態で異なる位置でフック35に再度引っ掛けることにより、クリップ38によりチェーン36に取り付けられていた主幹51が下方に下がる。このとき、下方の主幹51は、複数の照明部材11を囲うように蜷局を巻いた状態で下方にまとめられる。なお、伸長して新たに形成された上方の主幹51は、適宜、クリップ38により、照明部材11に固定する。
【0042】
以降、植物50の成長に合わせて、図中矢印に示すように、クリップ38を照明部材11に沿って下方に移動させることにより、主幹51を下方に下げて主幹51の一部を下部にまとめる作業を繰り返す(
図5E~
図5H)。そして、上記作業をある程度繰り返すことにより、育成装置10の下方には、主幹51が螺旋状に積層されていくことになる(
図5H)。
【0043】
このように、本実施形態の育成装置10では、植物50を螺旋状に育成することができる。そして、成熟した実53を適宜収穫すると共に余分な葉52を取り除き、伸長し過ぎた主幹51は、照明部材11の延在方向に沿って下方に下げ、育成装置10の下部にまとめることができる。そのため、育成装置10では、植物50の育成スペースをコンパクトにしつつ、生育効率良く植物50を育成することができる。
【0044】
なお、上記の説明においては、主幹51は、複数の照明部材11の外側で複数の照明部材11に巻回されながら、照明部材11に支持される構成とした。ただし、主幹51を支持する構成はこれに限定されない。
例えば、
図6Aに示されるように、主幹51を照明部材11の内側と外側とによってランダムに支持させながら、伸長させてもよい。また、
図6Bに示されるように、特定の照明部材11については外側で支持され、他の特定の照明部材11については内側で支持されるように、伸長させてもよい。さらに、
図6Cに示されるように、照明部材11の内側に支持されつつ、複数の照明部材11によって囲まれた空間37内において螺旋状に伸長する構成であってもよい。
【0045】
<第二実施形態>
上記の実施形態(以下、第一実施形態という。)では、照明部材11を複数配置し、それらの複数の照明部材11の外側面11bに植物50を巻回させながら育成する育成装置10を例に挙げて説明した。ただし、本発明の構成は上記の第一実施形態に限らず、植物50を巻回するために、照明部材11とは別の部材を設けてもよい。
以下、この第二実施形態の育成装置20について説明する。
【0046】
第二実施形態に係る育成装置20は、
図7に示されるように、植物50に光を照射する照明部材21と、照明部材21の外部に配置された複数の棒状部材22と、複数の棒状部材22を連結する連結部材31と、培地32が載置されたトレー33と、育成装置10の本体部分を移動可能に支持する移動部材34と、を備える装置である。
【0047】
照明部材21は、植物50に向けて光合成に必要な光を照射する部材であり、第一実施形態と同様、LED等が利用可能である。第二実施形態では、一台の育成装置20に一本の照明部材21が、一方向(第二実施形態では鉛直方向)に延在した状態で設置されており、その周囲360度に対して光を照射する構成である。また、第一実施形態と同様、照明部材21は、その延在方向において、照射範囲が可変である。
【0048】
棒状部材22は、合成樹脂又は金属等から成り、植物50を支持できる程度の剛性を有する部材であって、一台の育成装置20に複数(本実施形態では四本)の棒状部材22が設置されている。棒状部材22は、なるべく簡易的な構成とし、照明部材21から照射される光を遮ることがないように、透光性を有する素材により構成してもよい。
【0049】
これらの複数の棒状部材22は、照明部材21が延在する方向と略平行に延在しており、照明部材21の外部において、棒状部材22の内側面22aが、それぞれ、複数の棒状部材22によって囲まれた領域であって照明部材21が存在する空間37側を向くように配置されている。すなわち、光が強く明るい領域である空間37の周囲を囲うように、配置されている。そのため、棒状部材22の内側面22aには、照明部材21により照射される光が当たり、棒状部材22の外側面22b(育成装置20の外側方向を向く面)には、照明部材21により照射される光がほとんど当たらない構成となっている。また、棒状部材22の側端等の角部は、丸みを有した滑らかな形状(R形状)となっている。
【0050】
それぞれの棒状部材22の外側面22bの所定箇所(好ましくは、上方部分)には、フック35が備え付けられており、そのフック35には、第一実施形態と同様、クリップ38を取り付けるためのチェーン36が取り外し可能に引っ掛けられている。これにより、チェーン36は、棒状部材22の外側面22bに沿って吊り下げられている状態となる。すなわち、棒状部材22の外側面22bに、その棒状部材22の延在方向においてチェーン36が存在する構成となる。また、チェーン36が揺動したりずれたりすることを防止するため、棒状部材22の下方部分等にも不図示のフック等の固定部材を取り付け、チェーン36の下部をその不図示のフックに引っ掛けて固定してもよい。なお、第二実施形態においては、クリップ38は、第三保持部に相当する。
【0051】
なお、本実施形態では、棒状部材22は、四本とも全て同一方向に延在しているが、照明部材21の延在方向と略平行であればよく、これに限定されるわけではない。例えば、上方に向かうにつれて、各棒状部材22の距離が離れていくように、外側に向けて傾斜を付けた状態で立設されていてもよい。また、本実施形態では、全ての棒状部材22にフック35及びチェーン36が備え付けられているが、複数の棒状部材22のうち数本の棒状部材22に限定してフック35を備え付ける構成としてもよいし、全ての棒状部材22にフック35を備えていたとしても、一部のフック35には、チェーン36を取り付けない構成としてもよい。
【0052】
また、棒状部材22は、少なくとも外側面22bに曲面を有していてもよい。例えば、
図8に示されるように、外側面22bを含め、全ての側面が曲面となるように、それぞれの棒状部材22を円柱としてもよい。
【0053】
なお、その他の部材、すなわち、連結部材31、培地32、トレー33、移動部材34の構成については、第一実施形態と概ね同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
上記構成の育成装置20では、植物50の主幹51は、複数の棒状部材22の外側で複数の棒状部材22に巻き付きながら、棒状部材22に支持されつつ、棒状部材22の延在方向に沿って上方に向かって伸長しつつ成長する。また、葉52は、棒状部材22によって囲まれた照明部材21が存在する光が強い空間37側に向かって広がり成長する。一方、実53は、主に棒状部材22の外側にはみ出した支幹54の先に成り、自重によって下方に垂れ下がる。このとき、第一実施形態と同様、主幹51はその先端部分が新たに形成されることにより伸長し、葉52及び実53は、先に成長している植物50の下部の方から順に形成される。
【0055】
また、上記構成の育成装置20を用いて、植物50を育成する方法については、第一実施形態における育成装置10の複数の照明部材11の代わりに、複数の棒状部材22を用いる。すなわち、培地32に保持された植物50の主幹51を、複数の棒状部材22の外側面22bを巻回するように添わせながら螺旋状に伸長させ、植物50の成長に合わせて、クリップ38を棒状部材22の延在方向に沿って下方に移動させることにより、主幹51の全部又は一部を下方に下ろし、主幹51の一部を育成装置10の下部にまとめる作業を繰り返す。
【0056】
なお、第二実施形態においても、第一実施形態と同様、主幹51を支持する構成はこれに限定されない。例えば、主幹51を棒状部材22の内側と外側とによってランダムに支持させながら、伸長させてもよいし、特定の棒状部材22については外側で支持され、他の特定の棒状部材22については内側で支持されるように、伸長させてもよい。また、棒状部材22の内側に支持されつつ、複数の棒状部材22によって囲まれた空間37内において螺旋状に伸長する構成であってもよい。
【0057】
<第三実施形態>
また、上記の第一実施形態及び第二実施形態では、クリップ38を照明部材11又は棒状部材22の延在方向に沿って移動可能とした。ただし、照明部材11又は棒状部材22の他に、クリップ38を移動可能な状態で取り付けることができる別の部材を設けてもよい。
以下、この別の部材を備えた第三実施形態の育成装置10について説明する。なお、ここでは、第一実施形態の育成装置10の変形例として説明するが、第二実施形態の育成装置20についても同様の構成とすることができる。
【0058】
第三実施形態に係る育成装置10は、
図9に示されるように、上記の第一実施形態の育成装置10の構成に加え、支柱39と、その支柱39を支持する固定部材40と、を備える。
【0059】
照明部材11とは異なる部材である支柱39は、合成樹脂又は金属等から成り、植物50を支持できる程度の剛性を有する部材であって、一台の育成装置20に複数(本実施形態では四本)の支柱39が設置されている。支柱39は、その上方及び下方において、固定部材40により、育成装置10に固定されている。
【0060】
これらの複数の支柱39は、照明部材21が延在する方向と略平行に延在しており、それぞれの支柱39の所定箇所(好ましくは、上方部分)には、フック35が備え付けられており、そのフック35には、クリップ38を取り付けるためのチェーン36が取り外し可能に引っ掛けられている。これにより、チェーン36は、支柱39の延在方向に沿って吊り下げられている状態となる。また、チェーン36が揺動したりずれたりすることを防止するため、支柱39の下方部分等にも不図示のフック等の固定部材を取り付け、チェーン36の下部をその不図示のフックに引っ掛けて固定してもよい。なお、第三実施形態においては、クリップ38は、第二保持部に相当する。
【0061】
上記構成により、照明部材11にフック35及びチェーン36を取り付けなくても、植物50の成長に合わせて、クリップ38を支柱39に沿って下方に移動させることにより、主幹51を下方に下げることができる。そして、植物50の主幹51は、複数の照明部材11の外側で複数の照明部材11に巻き付きながら、照明部材11に支持されつつ、照明部材11の延在方向に沿って、上方向に伸長しつつ成長する。
【0062】
なお、その他の部材、すなわち、照明部材11、連結部材31、培地32、トレー33、移動部材34の構成については、第一実施形態と概ね同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
なお、第二実施形態に係る育成装置20に、照明部材21及び棒状部材22とは異なる部材である支柱39及び固定部材40を備える場合も、上記の第三実施形態と概ね同様の構成となる。その場合は、クリップ38が第四保持部に相当する。
【0064】
<育成設備>
次に、植物工場内において、上記構成の育成装置10(育成装置20でもよい)を複数使用した育成設備100について説明する。
【0065】
本実施形態の育成装置10は、その外側に植物50の主幹51及び葉52等がはみ出したりしないので、一台あたりの設置面積を省スペース化することができる。そのため、隣り合う育成装置10同士の間隔を詰めて配置することができる。例えば、
図10に示されるように、育成設備100では、植物工場内の通路部分等にも育成装置10を敷き詰め、隣り合う育成装置10同士の間隔を狭くした状態で複数並べることができ、面積効率を向上させることができる。
【0066】
また、育成装置10では、主幹51を育成装置10の下部にまとめることができるので、育成装置10自体の高さを抑えることができる。そのため、植物工場の天井を敢えて高く設計しなくとも、例えば、
図11に示されるように、育成設備100では、育成装置10を多段に配置し、面積効率をより一層向上させることができる。
【0067】
図11に示される育成設備100では、上下に並ぶ複数の棚板101と、各棚板101を支持するフレーム102と、を有する多段式の構造物である棚103を用いて四段に配置する。棚板101は、
図11に示すケースでは3枚設けられ(最下段は棚板101なし)、各棚板101は、上下方向に一定の間隔でフレーム102に固定されている。そして、各棚板101によって区画された略矩形状の空間が鉛直方向に積層されており、鉛直方向に複数並んでいるその空間内に、育成装置10がそれぞれ配置されている。なお、本実施形態では、四段に配置する例を示したが、四段超でもよいし、四段未満でもよい。また、一枚の棚板101上に複数(本実施形態では六台)の育成装置10を載置しているが、複数に限定されず、一枚の棚板101につき一台の育成装置10を載置することとしてもよい。
【0068】
以上説明してきたとおり、育成装置10,20では、植物50を照明部材11又は棒状部材22に巻回させながら、照明部材11又は棒状部材22の延在方向に沿って成長させることができるので、植物50が成長して様々な方向に拡がっていくことを防止し、育成スペースをコンパクトにすることができ、面積効率良く植物50を育成することができる。
植物50の葉52は、光合成をするために複数の照明部材11又は棒状部材22によって囲まれた光が強い空間37側に広がるので、その点においても、育成スペースをコンパクトにすることができる。また、植物50は、その空間37を覆うように照明部材11又は棒状部材22に巻回されるため、植物50の茎葉全体に満遍なく光を当てることができるので、照明部材11又は照明部材21からの光を効率的に使うことができ、生育効率も向上する。特に、照明部材11又は照明部材21の照射範囲を、植物50の成長(大きさ)に合わせて変更することができるので、照明部材11又は照明部材21からの光をより一層効率的に使うことができる。
主幹51から枝分かれした支幹54に結実した実53は、照明部材11又は棒状部材22の外側に自ずとはみ出してくるので収穫し易くなり、特に収穫作業の作業性が向上する。また、クリップ38を移動させることにより、伸長した主幹51を効率良く手繰り寄せることができるので、収穫作業を含む育成全般における作業性が向上する。さらに、移動部材34により、育成装置10,20を自走させれば、植物50の育成状況に応じて自動で移動させて管理できるので、収穫作業を含む育成全般における作業性がより一層向上する。
照明部材11又は棒状部材22の側端は丸みを有しているため、植物50(主幹51、支幹54、葉52又は実53等)が照明部材11又は棒状部材22に接触したり擦れたりした場合であっても傷み難く切断され難い。
【符号の説明】
【0069】
10 育成装置
11 照明部材
11a 照射面
11b 外側面
20 育成装置
21 照明部材
22 棒状部材
22a 内側面
22b 外側面
31 連結部材
32 培地
33 トレー
34 移動部材
35 フック
36 チェーン
36a 輪
36b 輪
37 空間
38 クリップ
39 支柱
40 固定部材
50 つる植物
51 主幹
52 葉
53 実
54 支幹
100 育成設備
101 棚板
102 フレーム
103 棚