(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117924
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】精製水供給システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
C02F1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134925
(22)【出願日】2021-08-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2021014549
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】赤松 浩
(72)【発明者】
【氏名】中川 明郎
(57)【要約】
【課題】精製水が汚染される可能性を低減し、より確実に滅菌された精製水をユースポイ
ントに供給することができる精製水供給システムを提供する。
【解決手段】精製水製造装置10と、精製水をユースポイント60に循環供給する精製水供給装置20と、を備え、精製水供給装置20は、精製水製造装置10から供給される精製水が流通する供給ラインSと、供給ラインSから供給された精製水を貯留する精製水タンク30と、精製水タンク30に貯留された精製水をユースポイント60に供給するとともに、ユースポイント60から精製水タンク30に精製水を戻すための循環ラインLと、精製水を濾過するフィルター装置40と、を備え、フィルター装置40は、循環ラインLに設けられておらず、供給ラインSに設けられている。さらに精製水製造装置10を切り離して精製水供給装置20を洗浄及び滅菌するCIP/SIP装置50を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製水を製造する精製水製造装置と、
前記精製水製造装置で製造された精製水をユースポイントに循環供給する精製水供給装置と、
前記精製水供給装置に洗浄用液体を供給することで洗浄する洗浄装置、及び滅菌用流体を供給することで滅菌する滅菌装置と、を備え、
前記精製水供給装置は、
前記精製水製造装置から供給される精製水が流通する供給ラインと、
前記供給ラインから供給された精製水を貯留する精製水タンクと、
前記精製水タンクに貯留された精製水をユースポイントに供給するとともに、前記ユースポイントから前記精製水タンクに精製水を戻すための循環ラインと、
精製水を濾過するフィルター装置と、を備え、
前記フィルター装置は、前記循環ラインに設けられておらず、前記供給ラインに設けられ、
前記洗浄装置及び前記滅菌装置は、前記フィルター装置よりも上流側の第3分岐点で前記供給ラインに接続され、洗浄用液体及び滅菌用流体を前記供給ラインを介して前記フィルター装置、前記精製水タンク及び前記循環ラインに供給し、
前記循環ラインは、前記精製水タンクに貯留された精製水を前記ユースポイントに供給する第1循環ラインと、前記ユースポイントから前記精製水タンクに精製水を戻す第2循環ラインを含み、
前記第1循環ラインには、前記ユースポイントよりも上流側の第1分岐点で分岐した第1排出ラインが接続され、
前記第2循環ラインには、前記ユースポイントよりも下流側の第2分岐点で分岐した第2排出ラインが接続され、
前記第1循環ラインの前記第1分岐点と前記ユースポイントとの間に第1バルブが設けられ、
前記第2循環ラインの前記第2分岐点と前記ユースポイントとの間に第2バルブが設けられ、
前記第1排出ライン及び第2排出ラインのそれぞれに第3バルブ及び第4バルブが設けられ、
前記供給ラインには、前記第3分岐点よりも前記精製水製造装置側に第5バルブが設けられ、
前記洗浄装置及び前記滅菌装置は、前記第1バルブ、前記第2バルブ及び前記第5バルブが閉じられ、並びに、前記第3バルブ及び前記第4バルブが開けられた状態で、洗浄用液体及び滅菌用流体を前記供給ラインを介して前記フィルター装置、前記精製水タンク及び前記循環ラインに供給し、前記第1排出ライン及び前記第2排出ラインに排出させる
ことを特徴とする精製水供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載する精製水供給システムにおいて、
前記フィルター装置のフィルターを湿潤させるための水を供給する第1装置と、
前記フィルター装置の一次側に気体を供給し、圧力を付与する第2装置と、
前記第1装置に水を前記フィルター装置に供給させ、前記第2装置に前記フィルター装置の一次側に気体を供給させて前記気体をバブルポイント以下の圧力にさせ、一次側における気体の圧力低下に基づいてフィルターの機能が維持されているか否かを判断する完全性試験を実施する制御装置を備える
ことを特徴とする精製水供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環する配管を介してユースポントに精製水を供給する精製水供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精製水をユースポイントに供給するための精製水供給システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。精製水供給システムは、精製水製造装置及び精製水供給装置から構成されている。精製水供給装置は、精製水製造装置により製造された精製水を一時的にタンクに貯留するとともに、タンクとユースポイントとの間で精製水を循環供給させるための循環ラインを備えている。
【0003】
精製水は、例えば注射液などの製薬溶液に用いられるため、十分に滅菌されていることが求められる。特許文献1に記載の精製水供給システムでは、循環ラインにはフィルターが設けられており、ユースポイントで用いられずに循環してきた精製水を濾過し、除菌している。
【0004】
しかしながら、循環ラインは、精製水の汚染を防止する観点から、製薬溶液の製造に関する指針によってフィルター装置を設けることが禁止されている場合がある。
【0005】
一方、精製水製造装置において、フィルター装置で滅菌した精製水を製造し、その精製水を精製水供給装置に供給する構成がある。このような構成では、精製水製造装置から精製水供給装置に精製水を供給する間に汚染が生じるおそれがある。特に、精製水製造装置から精製水供給装置は物理的に離れて設置されることも多い。このため、配管は長くなり、その配管に付随するバルブや継手などの部品も多くなるので、精製水が汚染される可能性を踏まえた対策が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、精製水が汚染される可能性を低減し、より確実に滅菌された精製水をユースポイントに供給することができる精製水供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、精製水を製造する精製水製造装置と、前記精製水製造装置で製造された精製水をユースポイントに循環供給する精製水供給装置と、前記精製水供給装置に洗浄用液体を供給することで洗浄する洗浄装置、及び滅菌用流体を供給することで滅菌する滅菌装置と、を備え、前記精製水供給装置は、前記精製水製造装置から供給される精製水が流通する供給ラインと、前記供給ラインから供給された精製水を貯留する精製水タンクと、前記精製水タンクに貯留された精製水をユースポイントに供給するとともに、前記ユースポイントから前記精製水タンクに精製水を戻すための循環ラインと、精製水を濾過するフィルター装置と、を備え、前記フィルター装置は、前記循環ラインに設けられておらず、前記供給ラインに設けられ、前記洗浄装置及び前記滅菌装置は、前記フィルター装置よりも上流側の第3分岐点で前記供給ラインに接続され、洗浄用液体及び滅菌用流体を前記供給ラインを介して前記フィルター装置、前記精製水タンク及び前記循環ラインに供給し、前記循環ラインは、前記精製水タンクに貯留された精製水を前記ユースポイントに供給する第1循環ラインと、前記ユースポイントから前記精製水タンクに精製水を戻す第2循環ラインを含み、前記第1循環ラインには、前記ユースポイントよりも上流側の第1分岐点で分岐した第1排出ラインが接続され、前記第2循環ラインには、前記ユースポイントよりも下流側の第2分岐点で分岐した第2排出ラインが接続され、前記第1循環ラインの前記第1分岐点と前記ユースポイントとの間に第1バルブが設けられ、前記第2循環ラインの前記第2分岐点と前記ユースポイントとの間に第2バルブが設けられ、前記第1排出ライン及び第2排出ラインのそれぞれに第3バルブ及び第4バルブが設けられ、前記供給ラインには、前記第3分岐点よりも前記精製水製造装置側に第5バルブが設けられ、前記洗浄装置及び前記滅菌装置は、前記第1バルブ、前記第2バルブ及び前記第5バルブが閉じられ、並びに、前記第3バルブ及び前記第4バルブが開けられた状態で、洗浄用液体及び滅菌用流体を前記供給ラインを介して前記フィルター装置、前記精製水タンク及び前記循環ラインに供給し、前記第1排出ライン及び前記第2排出ラインに排出させることを特徴とする精製水供給システムにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精製水が汚染される可能性を低減し、より確実に滅菌された精製水をユースポイントに供給することができる精製水供給システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】プロセス液を処理する製造ラインを含む精製水供給システムの概略構成図である。
【
図2】精製水供給システムの供給プロセスを説明するための概略構成図である。
【
図3】精製水供給システムの循環供給プロセスを説明するための概略構成図である。
【
図4】精製水供給システムの洗浄滅菌プロセスを説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本実施形態に係る精製水供給システムの概略構成図である。本実施形態の精製水供給システム1は、精製水製造装置10と、精製水供給装置20とを備えている。
【0012】
精製水製造装置10は、特に図示しないが、フィルター装置、熱交換器、EDI装置などの装置群から構成され、常水から精製水を製造する。このような精製水製造装置10は公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0013】
精製水供給装置20は、供給ラインS、精製水タンク30、循環ラインL、フィルター装置40、CIP/SIP装置50を備え、ユースポイント60に精製水を供給する。ユースポイントとは、精製水が用いられる施設、装置、場所などである。
【0014】
精製水タンク30は、精製水を貯留するタンクである。供給ラインSは、精製水製造装置10から供給される精製水が流通する配管である。精製水タンク30には、精製水製造装置10から供給ラインSを経由して精製水が供給される。
【0015】
循環ラインLは、第1循環ラインL1と、第2循環ラインL2を含んだ構成となっている。第1循環ラインL1は、精製水タンク30に貯留された精製水をユースポイント60に供給するための配管である。第2循環ラインL2は、ユースポイント60から精製水タンク30に精製水を戻すための配管である。
【0016】
第1循環ラインL1には、ポンプPが設けられている。ポンプPは、第1循環ラインL1に精製水を流通させるための装置である。ポンプPにより、精製水タンク30からユースポイント60に精製水が供給され、ユースポイント60から精製水タンク30に精製水が戻るようになっている。
【0017】
第1循環ラインL1には、分岐点D1において分岐した第1排出ラインE1が接続されている。第2循環ラインL2には、分岐点D2において分岐した第2排出ラインE2が接続されている。これらの第1排出ラインE1と第2排出ラインE2を纏めて排出ラインEとも称する。
【0018】
なお、上述した各種ラインは、一本の配管で構成されている必要はなく、複数の配管が連結したものであってもよい。また途中に各種装置が設けられいてもよい。
【0019】
フィルター装置40は、精製水を濾過するフィルターを備えた装置であり、供給ラインSに設けられている。精製水製造装置10から供給された精製水は、フィルター装置40により処理されて精製水タンク30に貯留される。フィルター装置40としては、限外濾過を行うものが好ましい。
【0020】
CIP/SIP装置50は、精製水供給装置20を定置洗浄(CIP)する洗浄装置及び定置滅菌(SIP)をするための滅菌装置である。具体的には、CIP/SIP装置50は、洗浄用ラインCを介して分岐点D3で供給ラインSに接続されている。CIP/SIP装置50は、洗浄用液体及び滅菌用流体を供給ラインSを介して精製水供給装置20を構成するフィルター装置40、精製水タンク30、循環ラインLに供給する。洗浄用液体及び滅菌用流体により精製水供給装置20は洗浄及び滅菌される。洗浄及び滅菌後は、洗浄用液体及び滅菌用流体は排出ラインEから排出される。排出ラインEには、図示しない処理装置が接続されており、洗浄用液体及び滅菌用流体はその処理装置により処理される。洗浄用液体は、水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加したもの、水に酸性薬剤を添加したもの、界面活性剤を含む水、またはそれらの薬剤を含まない水などである。もちろん、これらは併用してもよい。滅菌用流体は、精製水などを加熱して得られた温水又は蒸気である。
【0021】
また、バルブV1は第1循環ラインL1において分岐点D1よりもユースポイント60側に設けられている。バルブV2は第2循環ラインL2において分岐点D2よりもユースポイント60側に設けられている。バルブV3は第1排出ラインE1に、バルブV4は第2排出ラインE2に設けられている。バルブV5は供給ラインSにおいて分岐点D3よりも精製水製造装置10側に設けられている。バルブV6は、洗浄用ラインCに設けられている。バルブV1~V6は、後述の制御装置により制御可能なバルブである。具体的には、全開または全閉の何れかの状態に切替えることができる電磁弁、または、開度を調節できる調節弁などである。
【0022】
精製水供給システム1は、特に図示しないが、上述の構成機器を制御する制御装置を備えている。制御装置は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などである。制御装置は主に以下のプロセスを実行するための制御を行う。
・供給プロセス:精製水製造装置10から精製水供給装置20に精製水を供給するプロセス
・循環供給プロセス:精製水タンク30からユースポイント60に精製水を循環供給するプロセス
・洗浄滅菌プロセス:精製水供給装置20の洗浄及び滅菌(CIP及びSIP)を行うプロセス
・完全性試験プロセス:フィルター装置40に対して完全性試験を行うプロセス
【0023】
図2を用いて、上述した構成の精製水供給システム1で実行される供給プロセスについて説明する。なお、バルブV1からバルブV6は、白塗りであれば開いており、黒塗りであれば閉じていることを表しており、以後の図でも同様とする。
【0024】
制御装置は、バルブV1、バルブV2、バルブV5を開け、バルブV3、バルブV4、バルブV6を閉じる。制御装置は、図示しないポンプなどを作動させ、精製水製造装置10が製造した精製水を供給ラインSに供給させる。精製水は、供給ラインSを通り、フィルター装置40で滅菌されて精製水タンク30に貯留される。なお、供給プロセスは、後述する循環供給プロセスと別々に行う必要はなく、並行して行ってもよい。
【0025】
図3を用いて、上述した構成の精製水供給システム1で実行される供給プロセスについて説明する。制御装置は、精製水タンク30の排出口(図示せず)を開放し、ポンプPを作動させる。これにより、精製水タンク30から第1循環ラインL1を経由してユースポイント60に精製水が供給される。また、ユースポイント60で使用されなかった精製水は、第2循環ラインL2に戻ってくる。この精製水もポンプPによって精製水タンク30に戻る。このようにして、制御装置は、精製水タンク30→第1循環ラインL1→ユースポイント60→第2循環ラインL2→精製水タンク30というように、精製水タンク30とユースポイント60との間で精製水を循環供給させる。
【0026】
また、制御装置は、供給プロセス及び循環供給プロセスにおいて、精製水タンク30に一定量の精製水が維持されるように、精製水製造装置10による精製水の供給を制御する。具体的には、精製水タンク30には、精製水の量を計測する水面計などの各種センサーが設けられている。制御装置はそのセンサーによる値が一定値を下回ったら、バルブV5の開閉制御をするなどして精製水製造装置10から精製水タンク30に精製水を供給させる。また、制御装置はセンサーによる値が一定値を上回ったら、バルブV5の開閉制御をするなどして精製水製造装置10から精製水タンク30に供給する精製水の量を低減させ、又はゼロ(供給停止)にする。もちろん、精製水製造装置10による精製水の製造を止めてもよい。
【0027】
図4を用いて、上述した構成の精製水供給システム1で実行される洗浄滅菌プロセスについて説明する。制御装置は、バルブV1、バルブV2、バルブV5を閉じ、バルブV3、バルブV4、バルブV6を開ける。つまり、精製水製造装置10やユースポイント60には洗浄用液体や滅菌用流体が到達しないように各バルブを開閉する。
【0028】
制御装置は、CIP/SIP装置50に洗浄用液体を精製水供給装置20の各部に供給させる。洗浄用液体は、フィルター装置40、供給ラインS、精製水タンク30、循環ラインLを洗浄し、排出ラインEから排出される。次に、制御装置は、CIP/SIP装置50に滅菌用流体を精製水供給装置20の各部に供給させる。滅菌用流体は、フィルター装置40、供給ラインS、精製水タンク30、循環ラインLを洗浄し、排出ラインEから排出される。このようにして、精製水供給装置20は、洗浄用液体及び滅菌用流体によって定置洗浄及び定置滅菌される。
【0029】
特に図示しないが、上述した構成の精製水供給システム1で実行される完全性試験プロセスについて説明する。
【0030】
完全性試験とは、フィルター装置40に備わるフィルターに物理的欠陥がなく、定められた性能を有していることを確認するための試験である。この完全性試験によりフィルターの濾過機能が損なわれていないことを確認するので、フィルター装置40を流通して精製水タンク30に供給される精製水が無菌であることを担保することができる。
【0031】
完全性試験プロセスは、公知のものを適用できるが、例えば、次のように行う。制御装置は、フィルター装置40に備わるフィルターを水で湿潤させる。そして、制御装置は、フィルターの一次側(精製水製造装置10側)に気体を供給し、その気体をバブルポイント以下の適切な圧力にする。一次側における気体の圧力低下に基づいて、制御装置はフィルターの機能が維持されているか否かを判断する。
【0032】
なお、特に図示しないが、完全性試験で用いられる各種装置が精製水供給システム1に備わっている。例えば、フィルター装置40のフィルターを湿潤させるための水を供給する装置としては、精製水製造装置10であってもよいし、精製水とは別の水の供給装置であってもよい。また、フィルター装置40の一次側に気体を供給し、圧力を付与する装置も精製水供給システム1に備わっている。また、完全性試験プロセスで用いられた水は、循環ラインLから排出ラインEを経由して排出される。
【0033】
以上に説明した構成の精製水供給システム1は、精製水製造装置10と精製水供給装置20を備え、循環ラインLを介してユースポイント60に精製水を循環供給する。そしてフィルター装置40は、循環ラインLには設けられておらず、精製水製造装置10と精製水タンク30との間に設けられている。
【0034】
このような構成によれば、精製水製造装置10から精製水タンク30を接続する供給ラインSにおいて、精製水に万が一汚染が生じたとしても、フィルター装置40によって汚染を除去し、製薬溶液に要求される水準の精製水を循環ラインLを介してユースポイント60に供給することができる。
【0035】
また、精製水製造装置10は、一般に、蒸気滅菌を行わず、運転時間に応じてフィルター等を交換する運用がほとんどである。それでも十分な水準の精製水を製造することができるのであるが、精製水製造装置10で精製水に汚染が生じるリスク対策は必要である。本発明の精製水供給システム1は、供給ラインSのみならず、精製水製造装置10で生じた汚染に対してもフィルター装置40がリスク対策となり、精製水が汚染される可能性を低減し、より確実に滅菌された精製水をユースポイント60に供給することができる。
【0036】
また、循環ラインLにフィルター装置40を設置した場合を仮定する。この場合、循環する精製水はフィルター装置40によって滅菌されるし、フィルター装置40自体も適宜フィルターを交換するので精製水が汚染されるリスクは低い。しかしながら、万が一、循環ラインLに設けたフィルター装置40に汚染源が残った場合には、循環する精製水が汚染されるリスクがある。フィルター装置40を洗浄、滅菌することも考えられるが、やはり、万が一のリスクはある。
【0037】
しかしながら、本発明の精製水供給システム1は、循環ラインLにフィルター装置40を設けないので、上述したリスクはそもそも起き得ない。このように循環ラインLにフィルター装置40を設けないので、循環ラインLにおいてフィルター装置40を起源とする汚染リスクを回避することができ、背景技術で述べたような指針を遵守することができる。
【0038】
また、精製水供給システム1は、精製水供給装置20を洗浄及び滅菌するCIP/SIP装置50を備えている。CIP/SIP装置50により、精製水供給装置20の全体が洗浄及び滅菌される。特に、フィルター装置40についても洗浄、滅菌されるので、フィルター装置40が無菌であることが担保される。フィルター装置40が無菌であるので、精製水製造装置10から精製水タンク30に、より確実に無菌の精製水を供給することができる。
【0039】
なお、従来では、一般に洗浄や蒸気滅菌を行わず運転時間に応じてフィルター等を交換する場合がほとんどであった。したがって、フィルター装置40や精製水タンク30、循環ラインLを洗浄、滅菌するためのCIP/SIP装置50を設ける必要がなかった。さらに、第1-5バルブV1-V5に相当する装置や、それらの制御もない。このため、精製水製造装置10及びユースポイント60から精製水供給装置20を切り離した状態で洗浄及び滅菌を行うことができなかった。
【0040】
一方、本発明の精製水供給システム1は、洗浄、滅菌するための構成として循環ラインLに第1排出ラインE1、第2排出ラインE2を接続し、洗浄、滅菌時において、CIP/SIP装置50から供給ラインS、精製水タンク30、循環ラインL、排出ラインEへと洗浄用液体及び滅菌用流体が流通するように第1-5バルブV1-V5が設けられている。
【0041】
これらの第1-5バルブV1-V5の開閉を制御することで、精製水供給装置20(供給ラインS・精製水タンク30・循環ラインL・排出ラインEからなる)から精製水製造装置10及びユースポイント60を切り離した状態で洗浄及び滅菌を行うことができる。
【0042】
このような洗浄及び滅菌を行えることにより、本発明は特に次のような場合に有用である。すなわち、精製水製造装置10と精製水供給装置20とが別々の管理主体により管理され、精製水供給装置20側の管理主体が精製水製造装置10のフィルター交換に関知しえないような場合である。
【0043】
このような場合、精製水供給装置20の管理主体は、精製水製造装置10が管理対象でないのでフィルター交換を行うことができない。したがって、精製水製造装置10から供給される精製水が汚染されているリスクを念頭に置くことが適切である。
【0044】
精製水供給システム1では、供給ラインSに設けたフィルター装置40によって精製水製造装置10からの精製水を無菌にすることができるとともに、フィルター装置40、精製水タンク30及び循環ラインLを洗浄及び滅菌可能である。これにより、精製水製造装置10のフィルターの劣化状況に関わらず、供給ラインSに設けたフィルター装置40を常に清浄な状態で使用できるので、より確実に無菌を担保した精製水を供給することができる。
【0045】
また、精製水供給システム1は、フィルター装置40について完全性試験を実施することができる。これにより、フィルター装置40の完全性が担保され、フィルター装置40を流通して精製水タンク30に供給される精製水が無菌であることを担保することができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0047】
例えば、精製水タンク30、供給ラインS、フィルター装置40、循環ラインL、ユースポイント60は一系統であったがこのような構成に限定されない。それらの全体又は一部を冗長化した場合であっても本発明を適用することができる。
【0048】
また、精製水供給システム1は、注射用水などの製薬溶液に用いる精製水を用いる場合を例示したが、このような用途に限定されず、様々な用途の精製水を供給する場合についても適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
C…洗浄用ライン、E…排出ライン、L…循環ライン、S…供給ライン、1…精製水供給システム、10…精製水製造装置、20…精製水供給装置、30…精製水タンク、40…フィルター装置、50…CIP/SIP装置(洗浄装置、滅菌装置)、60…ユースポイント
【手続補正書】
【提出日】2021-12-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製水を製造する精製水製造装置と、
前記精製水製造装置で製造された精製水をユースポイントに循環供給する精製水供給装置と、
前記精製水供給装置に洗浄用液体を供給することで洗浄する洗浄装置、及び滅菌用流体を供給することで滅菌する滅菌装置と、を備え、
前記精製水供給装置は、
前記精製水製造装置から供給される精製水が流通する供給ラインと、
前記供給ラインから供給された精製水を貯留する精製水タンクと、
前記精製水タンクに貯留された精製水をユースポイントに供給するとともに、前記ユースポイントから前記精製水タンクに精製水を戻すための循環ラインと、
精製水を濾過するフィルター装置と、を備え、
前記フィルター装置は、前記循環ラインに設けられておらず、前記供給ラインに設けられ、
前記洗浄装置及び前記滅菌装置は、前記フィルター装置よりも上流側の第3分岐点で前記供給ラインに接続され、洗浄用液体及び滅菌用流体を前記供給ラインを介して前記フィルター装置、前記精製水タンク及び前記循環ラインに供給し、
前記循環ラインは、前記精製水タンクに貯留された精製水を前記ユースポイントに供給する第1循環ラインと、前記ユースポイントから前記精製水タンクに精製水を戻す第2循環ラインを含み、
前記第1循環ラインには、前記ユースポイントよりも上流側の第1分岐点で分岐した第1排出ラインが接続され、
前記第2循環ラインには、前記ユースポイントよりも下流側の第2分岐点で分岐した第2排出ラインが接続され、
前記第1循環ラインの前記第1分岐点と前記ユースポイントとの間に第1バルブが設けられ、
前記第2循環ラインの前記第2分岐点と前記ユースポイントとの間に第2バルブが設けられ、
前記第1排出ライン及び第2排出ラインのそれぞれに第3バルブ及び第4バルブが設けられ、
前記供給ラインには、前記第3分岐点よりも前記精製水製造装置側に第5バルブが設けられ、
前記洗浄装置及び前記滅菌装置は、前記第1バルブ、前記第2バルブ及び前記第5バルブが閉じられ、並びに、前記第3バルブ及び前記第4バルブが開けられた状態で、前記供給ラインを介して前記フィルター装置、前記精製水タンクに供給した洗浄用液体及び滅菌用流体を、前記精製水タンクから前記第1循環ライン、前記第1分岐点、前記第1排出ラインに排出させるとともに、前記精製水タンクから前記第2循環ライン、前記第2分岐点、前記第2排出ラインに排出させる
ことを特徴とする精製水供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載する精製水供給システムにおいて、
前記フィルター装置のフィルターを湿潤させるための水を供給する第1装置と、
前記フィルター装置の一次側に気体を供給し、圧力を付与する第2装置と、
前記第1装置に水を前記フィルター装置に供給させ、前記第2装置に前記フィルター装置の一次側に気体を供給させて前記気体をバブルポイント以下の圧力にさせ、一次側における気体の圧力低下に基づいてフィルターの機能が維持されているか否かを判断する完全性試験を実施する制御装置を備える
ことを特徴とする精製水供給システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、精製水を製造する精製水製造装置と、前記精製水製造装置で製造された精製水をユースポイントに循環供給する精製水供給装置と、前記精製水供給装置に洗浄用液体を供給することで洗浄する洗浄装置、及び滅菌用流体を供給することで滅菌する滅菌装置と、を備え、前記精製水供給装置は、前記精製水製造装置から供給される精製水が流通する供給ラインと、前記供給ラインから供給された精製水を貯留する精製水タンクと、前記精製水タンクに貯留された精製水をユースポイントに供給するとともに、前記ユースポイントから前記精製水タンクに精製水を戻すための循環ラインと、精製水を濾過するフィルター装置と、を備え、前記フィルター装置は、前記循環ラインに設けられておらず、前記供給ラインに設けられ、前記洗浄装置及び前記滅菌装置は、前記フィルター装置よりも上流側の第3分岐点で前記供給ラインに接続され、洗浄用液体及び滅菌用流体を前記供給ラインを介して前記フィルター装置、前記精製水タンク及び前記循環ラインに供給し、前記循環ラインは、前記精製水タンクに貯留された精製水を前記ユースポイントに供給する第1循環ラインと、前記ユースポイントから前記精製水タンクに精製水を戻す第2循環ラインを含み、前記第1循環ラインには、前記ユースポイントよりも上流側の第1分岐点で分岐した第1排出ラインが接続され、前記第2循環ラインには、前記ユースポイントよりも下流側の第2分岐点で分岐した第2排出ラインが接続され、前記第1循環ラインの前記第1分岐点と前記ユースポイントとの間に第1バルブが設けられ、前記第2循環ラインの前記第2分岐点と前記ユースポイントとの間に第2バルブが設けられ、前記第1排出ライン及び第2排出ラインのそれぞれに第3バルブ及び第4バルブが設けられ、前記供給ラインには、前記第3分岐点よりも前記精製水製造装置側に第5バルブが設けられ、前記洗浄装置及び前記滅菌装置は、前記第1バルブ、前記第2バルブ及び前記第5バルブが閉じられ、並びに、前記第3バルブ及び前記第4バルブが開けられた状態で、前記供給ラインを介して前記フィルター装置、前記精製水タンクに供給した洗浄用液体及び滅菌用流体を、前記精製水タンクから前記第1循環ライン、前記第1分岐点、前記第1排出ラインに排出させるとともに、前記精製水タンクから前記第2循環ライン、前記第2分岐点、前記第2排出ラインに排出させることを特徴とする精製水供給システムにある。