(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118082
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】洗浄水処理装置と除菌浄化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/78 20060101AFI20220804BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20220804BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220804BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C02F1/78
C02F1/42 D
C02F1/44 F
B01D65/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093670
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2019550370の分割
【原出願日】2018-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2017211281
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(71)【出願人】
【識別番号】304017476
【氏名又は名称】東洋バルヴ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】矢田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 利暖
(57)【要約】
【課題】洗浄水に含まれる有機物の分解処理及び細菌の殺菌処理を効果的に行うことができるとともに濾過装置のフィルタ及びイオン交換樹脂の寿命を延ばし、さらには洗浄処理部の殺菌・洗浄間隔を延長すること。
【解決手段】洗浄工程で使用される純水を再利用する洗浄水処理装置であって、洗浄処理部と、被処理水を一旦収納する洗浄水収納部と、オゾン供給の機能を作用させつつ細菌数の状況に応じてオゾン供給の運転を制御して洗浄水収納部に循環的に通水する被処理水にオゾン水を含有させる除菌浄化ユニットと、濾過機構部と、を具備し、洗浄水収納部内でオゾン水は被処理水との混合によりその濃度が希釈され、且つ所定の範囲に濃度調整された状態で、濾過機構部内のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)とイオン交換樹脂に通水し、フィルタとイオン交換樹脂の細菌増殖とそれらの酸化劣化の双方を抑制した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用被洗浄物の洗浄工程で使用される純水を再利用する洗浄水処理装置であって、被洗浄物を洗浄する洗浄処理部と、この洗浄処理部で洗浄処理に使用した被処理水を一旦収納する洗浄水収納部と、オゾン供給の機能を作用させつつ細菌数の状況に応じてオゾン供給の運転を制御して前記洗浄水収納部に循環的に通水する前記被処理水にオゾン水を含有させる除菌浄化ユニットと、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂を含んで構成され、前記洗浄処理部で洗浄水として再利用するために、前記洗浄水収納部から供給される被処理水を濾過する濾過機構部と、を具備し、前記洗浄水収納部内で前記オゾン水は前記被処理水との混合によりその濃度が希釈され、且つ所定の範囲に濃度調整された状態で、前記濾過機構部内の前記フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)と前記イオン交換樹脂に通水し、前記フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)と前記イオン交換樹脂の細菌増殖とそれらの酸化劣化の双方を抑制したことを特徴とする洗浄水処理装置。
【請求項2】
洗浄用の純水が貯留される洗浄水水槽と、オゾン供給の機能を作用させつつ前記洗浄水水槽に循環的に通水する前記洗浄用の純水にオゾン水を含有させる除菌浄化ユニットと、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)を含んで構成され、前記洗浄水水槽内で前記オゾン水は前記洗浄用の純水との混合によりその濃度が希釈され供給されながら順次濾過を行う濾過装置と、を具備し、前記除菌浄化ユニットのオゾン供給の運転を制御することで、前記洗浄水水槽内の前記洗浄用の純水が希釈されたオゾン水を含有し且つその濃度を5.37mg/L未満に濃度調整された状態で前記フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)に通水し、前記フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)の細菌増殖と酸化劣化の双方を抑制したことを特徴とする洗浄水処理装置。
【請求項3】
被処理体を順次洗浄するために洗浄用の純水が貯留される複数の洗浄水水槽と、オゾン供給の機能を作用させつつ所定の洗浄水水槽に循環的に通水する前記洗浄用の純水にオゾン水を含有させる除菌浄化ユニットと、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂を含んで構成され、前記所定の洗浄水水槽で洗浄水として再利用するために、前記洗浄水水槽内で前記オゾン水は前記洗浄用の純水との混合によりその濃度が希釈され供給されながら濾過を行う濾過機構部と、を具備し、前記除菌浄化ユニットのオゾン供給の運転を制御して前記所定の洗浄水水槽内の前記被処理水が希釈されたオゾン水を含有し且つ所定の範囲に濃度調整された状態で、前記フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)と前記イオン交換樹脂の双方に通水することで、これらフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂の細菌増殖とそれらの酸化劣化を抑制したことを特徴とする洗浄水処理装置。
【請求項4】
被洗浄物を洗浄する洗浄処理部と、この洗浄処理部で洗浄処理に使用した被処理水を一旦収納する洗浄水収納部と、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂を含んで構成され、前記洗浄処理部で洗浄水として再利用するために順次濾過を行う濾過機構部と、を含む洗浄水処理装置に使用するための除菌浄化装置であって、前記除菌浄化装置はオゾンを供給するオゾン供給部を具備し、前記除菌浄化装置を前記洗浄水収納部に循環可能に接続すると共に、前記洗浄水収納部から流入する被処理水にオゾンを混合して除菌浄化した後に洗浄水収納部に返送し循環させ、前記洗浄水収納部に収納される被処理水のオゾン濃度を希釈するようにして、前記フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)と前記イオン交換樹脂の双方に通水することで、これらフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂の細菌増殖を抑制すると共にそれらの酸化劣化を抑制したことを特徴とする除菌浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造や液晶製造、並びに電子部品のメッキ処理の洗浄工程で使用した純水を再使用可能に処理する洗浄水処理装置、除菌浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶ガラスの製造、あるいは電子部品のメッキ処理における洗浄工程では、半導体ウエハ基板、液晶ガラス基板、ガラス基板、メッキ処理した電子部品などを洗浄するために多量の純水が使用されている。
【0003】
特に、ULSI(超高密度大規模集積回路)の集積度の増加に伴って洗浄に使用する純水の純度に対する要求は益々厳しくなってきているが、環境への負荷低減、水資源の有効活用などの観点から、洗浄に使用した純水の回収、再利用が広く行われている。
【0004】
例えば、ULSI等に代表される半導体素子の製造工程や液晶ガラスの製造工程ではフォトレジストの剥離等に有機溶剤が多用されており、半導体素子や液晶ガラスの洗浄工程で使用した純水(以下、「洗浄水」という。)中には、異物やアルコール、界面活性剤などの有機物が混入しているため、この洗浄水を回収して半導体の生産工程に再利用するにあたっては、洗浄水中に含まれている固形微粒物や有機物を除去する必要がある。
【0005】
半導体素子や液晶ガラスの製造における洗浄工程で有機物を含んだ純水を使用すると、被洗浄物に付着した有機物が基板表面の回路パターンなどに欠陥を生じさせたり、その後の熱処理工程で炭化して絶縁不良を引き起こしたりして製品の品質の悪化や歩留まりの悪化を生じさせる。また、電子部品のメッキ処理における洗浄工程で有機物を含む純水を使用すると、製品に付着した有機物が回路の短絡などを生じさせ、製品の品質の悪化、歩留まりの悪化を生じさせる。
【0006】
ところで、上記の洗浄工程では洗浄水を回収し、濾過処理して洗浄水中に含まれる固形微粒物や有機物を除去した後に純水として再使用しているが、当初は殆んど細菌を含んでいない純水であっても、元々装置や被洗浄物に付着している細菌、並びに大気中に存在している細菌が純水中に入り込み、低栄養下でも増殖する種類の細菌が洗浄水を回収、再使用する間に増殖し、純水、純水の貯水槽や洗浄水の貯水槽、並びにこれらの水槽を循環する配管内を汚染する。
【0007】
細菌も有機物であるため、細菌に汚染された純水を半導体素子や液晶ガラスの製造における洗浄工程や、電子部品のメッキ処理における洗浄工程に使用すると、基板表面の回路パターンなどに欠陥を生じさせたり、回路の短絡などを生じさせたりして、製品の品質の悪化や歩留まりの悪化を生じさせる。
【0008】
したがって、これら不可避的に純水中に存在する細菌を極力低レベルに維持するため、定期的に製造装置の運転を停止し、次亜塩素酸ソーダ等の殺菌剤により洗浄装置(以下、「洗浄処理部」という。)内の純水の貯水槽や洗浄水の貯水槽、並びにこれらの水槽を循環する配管内を殺菌、洗浄処理したり、貯水槽の壁面に付着しているバイオフィルムを拭き取ったりするとともに、洗浄処理部内に殺菌剤が残存しないように純水による徹底的な装置内の後洗浄と、洗浄処理部に新しい純水を充填する必要がある。
【0009】
純水は高価であるため、頻繁な交換は製品の製造コストの上昇を招き、また定期的に実施する製造装置を停止して実施する洗浄処理部内の殺菌処理は、製造装置の稼働率を低下させ、製品の製造コストの上昇を招くことになる。
【0010】
また、洗浄工程で使用した洗浄水を回収、再使用する場合には、通常、中空糸膜フィルタや活性炭等の濾過装置で洗浄水中の比較的大きな有機物を捕捉除去した後、イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)に接触させて洗浄水中のイオンを除去し、純水として再利用するが、濾過装置の目詰まりやイオン交換樹脂の機能低下が早期に発生し、濾過装置のフィルタやイオン交換樹脂の交換頻度が増加し、製品の製造コストを押し上げる要因となる。
【0011】
このため、従来から、洗浄処理部内の純水に含まれる有機物を分解除去する技術、また、細菌を殺菌、分解する技術が提案されており、例えば、特許文献1には、液晶や半導体の製造工程で発生する有機物含有水を、オゾンによる酸化分解、活性炭吸着及びイオン交換により逐次処理し、有機物がほぼ除去された純水を製造する有機物含有水の処理方法及び処理装置が提案されている。
【0012】
特許文献2には、半導体の洗浄工程で用いられた洗浄水に過酸化水素を供給するとともにオゾンを溶解させ、洗浄水中の有機物を分解酸化させる工程と、その工程を経た洗浄水からイオン性物質を除去する工程とを洗浄水の流路に沿って実行する水処理方法及び装置が提案されている。
【0013】
また、特許文献3には、純水供給システム出口の供給管よりオゾンを注入した全配管系の殺菌を行うとともに、ユースポイントの近傍で純水中のオゾン及びオゾン分解により発生する溶存酸素を除去し、ユースポイントで連続使用しながら全配管系の殺菌が可能な殺菌方法及びシステムが提案されている。
【0014】
特許文献4には、最終洗浄に使用した超純水を回収して、回収水にオゾンを作用させて回収水中の菌を減らして、吸着槽での菌の増殖を抑制した回収水処理システムが提案されている。
【0015】
特許文献5には、複数のオゾン供給装置を連接して、処理水中に高濃度のオゾンを多量に注入して、半導体用の超純水など効率よく得る水処理方法、水処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006-272052号公報
【特許文献2】特開2000-84574号公報
【特許文献3】特開平11-47754号公報
【特許文献4】特開昭61-283394号公報
【特許文献5】特開平5-305298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献1の有機物含有水の処理方法及び処理装置は、強力な酸化力を有するオゾン含有ガスで被処理水中の有機物を酸化した後、活性炭に被処理水に含まれるオゾンを吸着、分解させるものであるが、活性炭に吸着されたオゾンは反応速度が遅い発熱反応により分解してO2になるため、活性炭の温度管理が必要であり、装置が複雑化する問題がある。また、活性炭で確実に被処理水に含まれるオゾンの吸着が行われず、オゾンを含んだ被処理水がイオン交換樹脂に達すると、イオン交換樹脂を分解してしまうおそれがある。
【0018】
特許文献2の水処理方法及び装置は、過酸化水素およびオゾンの供給を必要とするためランニングコストの上昇を伴うとともに、被処理水中に供給されたオゾンを高濃度で被処理水中に溶解させるための加圧容器や、被処理水中に過飽和の状態で溶解していたオゾンを放出させるバッファタンクを備えているため、装置が複雑化する問題がある。
【0019】
また、特許文献3の殺菌方法及びシステムは、オゾン供給ポイントをユースポイントの近傍に設け、ユースポイントにオゾンを含まない純水を供給するために、オゾン供給ポイントとユースポイントとの間にオゾンを分解するUVランプと脱気装置を設けているため、やはり装置が複雑化する問題がある。
【0020】
特許文献4の回収水処理システムは、半導体ウエハーの洗浄水を再利用可能に処理するシステムに関するものであり、吸着槽によってオゾンが除去されるため、吸着槽の後段にあるフィルタやイオン交換槽にはオゾン水が通水されないので、フィルタやイオン交換槽で増殖する細菌を抑制できないばかりか、オゾン水濃度を希釈制御することもなく通水するから、これらフィルタ類の酸化劣化も抑制できないという問題がある。
【0021】
特許文献5の水処理方法および水処理装置は、超純水などを効率よく浄化処理する技術に関するものであり、フィルタ通過後の被処理水中に残存する高濃度オゾンをイオン交換樹脂塔でイオン交換を行ってゼロにしてしまうものであるから、高濃度の残留オゾンによってイオン交換樹脂の劣化やその寿命を短くしてしまう問題があり、フィルタ及びイオン交換樹脂の細菌増殖と酸化劣化の抑制という相反する効果を達成できないという問題がある。
【0022】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、洗浄水に含まれる有機物の分解処理及び細菌の殺菌処理を効果的に行うことができるとともに濾過装置のフィルタ及びイオン交換樹脂の寿命を延ばし、さらには洗浄処理部の殺菌・洗浄間隔を延長することができる洗浄水処理装置、除菌浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、工業用被洗浄物の洗浄工程で使用される純水を再利用する洗浄水処理装置であって、被洗浄物を洗浄する洗浄処理部と、この洗浄処理部で洗浄処理に使用した被処理水を一旦収納する洗浄水収納部と、オゾン供給の機能を作用させつつ細菌数の状況に応じてオゾン供給の運転を制御して洗浄水収納部に循環的に通水する被処理水にオゾン水を含有させる除菌浄化ユニットと、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂を含んで構成され、洗浄処理部で洗浄水として再利用するために、洗浄水収納部から供給される被処理水を濾過する濾過機構部と、を具備し、洗浄水収納部内でオゾン水は被処理水との混合によりその濃度が希釈され、且つ所定の範囲に濃度調整された状態で、濾過機構部内のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)とイオン交換樹脂に通水し、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)とイオン交換樹脂の細菌増殖とそれらの酸化劣化の双方を抑制した洗浄水処理装置である。
【0024】
請求項2に係る発明は、洗浄用の純水が貯留される洗浄水水槽と、オゾン供給の機能を作用させつつ洗浄水水槽に循環的に通水する洗浄用の純水にオゾン水を含有させる除菌浄化ユニットと、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)を含んで構成され、洗浄水水槽内でオゾン水は洗浄用の純水との混合によりその濃度が希釈され供給されながら順次濾過を行う濾過装置と、を具備し、除菌浄化ユニットのオゾン供給の運転を制御することで、洗浄水水槽内の洗浄用の純水を、希釈されたオゾン水を含有し且つその濃度を5.37mg/L未満に濃度調整された状態でフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)に通水し、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)の細菌増殖と酸化劣化の双方を抑制した洗浄水処理装置である。
【0025】
請求項3に係る発明は、被処理体を順次洗浄するために洗浄用の純水が貯留される複数の洗浄水水槽と、オゾン供給の機能を作用させつつ所定の洗浄水水槽に循環的に通水する洗浄用の純水にオゾン水を含有させる除菌浄化ユニットと、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂を含んで構成され、所定の洗浄水水槽で洗浄水として再利用するために、洗浄水水槽内でオゾン水は洗浄用の純水との混合によりその濃度が希釈され供給されながら濾過を行う濾過機構部と、を具備し、除菌浄化ユニットのオゾン供給の運転を制御して所定の洗浄水水槽内の被処理水が希釈されたオゾン水を含有し且つ所定の範囲に濃度調整された状態で、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)とイオン交換樹脂の双方に通水することで、これらフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂の細菌増殖とそれらの酸化劣化を抑制した洗浄水処理装置である。
【0026】
請求項4に係る発明は、被洗浄物を洗浄する洗浄処理部と、この洗浄処理部で洗浄処理に使用した被処理水を一旦収納する洗浄水収納部と、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂を含んで構成され、洗浄処理部で洗浄水として再利用するために順次濾過を行う濾過機構部と、を含む洗浄水処理装置に使用するための除菌浄化装置であって、除菌浄化装置はオゾンを供給するオゾン供給部を具備し、除菌浄化装置を洗浄水収納部に循環可能に接続すると共に、洗浄水収納部から流入する被処理水にオゾンを混合して除菌浄化した後に洗浄水収納部に返送し循環させ、洗浄水収納部に収納される被処理水のオゾン濃度を希釈するようにして、フィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)とイオン交換樹脂の双方に通水することで、これらフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂の細菌増殖を抑制すると共にそれらの酸化劣化を抑制した除菌浄化装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、洗浄水収納部と濾過機構部とを接続し、洗浄水収納部には除菌浄化ユニットの流入流路及び流出流路を循環可能に接続しているため、洗浄水収納部に流入させた被洗浄水を洗浄水収納部と除菌浄化ユニットの間で循環させながら被洗浄水に含まれる細菌を殺菌処理するとともに殺菌された細菌の死骸を含む有機物を分解処理し、細菌及び有機物を大幅に削減した被処理水を濾過機構部に送って濾過処理するので、除菌・浄化して再利用可能な洗浄水を洗浄水収納部に返送することができる。
【0028】
そして、除菌浄化ユニットでオゾン処理された被処理水は、洗浄水収納部に返送された後、洗浄水収納部内の被処理水と混合されるので、洗浄水収納部に収納される被処理水全体としてのオゾン濃度は希釈されるとともに、洗浄水収納部に収納されている間にオゾンが分解されるため、濾過機構部に送られる被処理水のオゾン濃度を低下させることができ、被処理水に含まれるオゾンはオゾン濃度が十分に希釈されて、希釈されたオゾン水を含有した被処理水が濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)やイオン交換樹脂に通水されているので濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)やイオン交換樹脂を痛めることがなく、これらの寿命を延長することができる。
【0029】
また、除菌浄化ユニットは、オゾン供給の運転の停止と再開を適宜選択しつつ(例えば細菌数の状況に応じてオゾン供給の運転を制御するなど)、被処理水の残留オゾン濃度を調整しながら、除菌浄化ユニットで殺菌処理することにより、洗浄処理部と、洗浄水収納部及び濾過機構部等との間を循環する洗浄水に含まれる細菌の増殖を抑制することができるため、細菌による濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)の目詰まりやイオン交換樹脂の酸化劣化による機能低下が起きにくくなり、これらの寿命を延長することができる。
【0030】
加えて、オゾン濃度を低下させた被処理水が濾過機構部に送られているので、濾過機構部の後段にある装置や配管などで細菌の増殖が抑制されて、貯水槽の壁面等でのバイオフィルムの発生を抑制することができるため、洗浄装置の洗浄及び清掃間隔や、純水の交換間隔を延長することができる。
【0031】
よって、洗浄水収納部と濾過機構部とを接続し、かつ、洗浄水収納部には除菌浄化ユニットの流入流路及び流出流路を循環可能に接続しているため、洗浄水収納部に流入させた被洗浄水を洗浄水収納部と除菌浄化ユニットの間で循環させながら被洗浄水に含まれる細菌(生菌)を殺菌処理するとともに殺菌された細菌の死骸を含む有機物を分解処理し、細菌及び有機物を大幅に削減した被処理水を濾過機構部に送って、被処理水を濾過処理するので、除菌浄化処理かつ濾過処理により再利用可能な洗浄水を濾過機構部から洗浄処理部に返送することができると共に、除菌浄化ユニットは、細菌数の状況に応じてオゾン供給の運転を制御して、洗浄水収納部内の被処理水が希釈されたオゾン水を含有し且つ所定の範囲に濃度調整された状態で、濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂に通水させることで、これらフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)及びイオン交換樹脂の細菌増殖を抑制すると共にそれらの酸化劣化を抑制することができる。
【0032】
なお、オゾン供給部によりオゾン処理した後の残留オゾン水の濃度を5.37mg/L未満に抑制することが望ましい。
【0033】
除菌浄化ユニット(除菌浄化装置)は、オゾンを供給するオゾン供給部により、洗浄水中の細菌を殺菌するとともに、殺菌された細菌の死骸と水に溶けた有機物を分解することができる。
【0034】
洗浄水収納部と除菌浄化ユニットとの間を連続的に被処理水が循環し、除菌浄化ユニットで被処理水に含まれる有機物の分解処理と細菌の殺菌処理を連続的に実施することにより、洗浄水収納部内に収納されている被処理水に含まれる有機物と細菌を漸次削減することができる。
【0035】
除菌浄化ユニットでオゾン処理された被処理水は、洗浄水収納部に返送された後、洗浄水収納部内の被処理水と混合されるので、洗浄水収納部に収納される被処理水全体としてのオゾン濃度は希釈されるとともに、洗浄水収納部に収納されている間にオゾンが分解されるため、濾過機構部に送られる被処理水のオゾン濃度は低下しており、被処理水に含まれるオゾンにより濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)やイオン交換樹脂を痛めることがなく、これらの寿命を延長することができる。
【0036】
洗浄水収納部内の被洗浄水の細菌数の状況に応じて運転を制御して、除菌浄化ユニットで殺菌処理することにより、洗浄処理部と、洗浄水収納部及び濾過機構部等との間を循環する洗浄水に含まれる細菌の増殖を抑制することができるため、細菌による濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)の目詰まりやイオン交換樹脂の酸化劣化による機能低下が起きにくくなり、これらの寿命を延長することができる。また、細菌の増殖が抑制されることにより、貯水槽の壁面等でのバイオフィルムの発生を抑制することができるため、洗浄装置の洗浄及び清掃間隔や、純水の交換間隔を延長することができる。
【0037】
除菌浄化ユニットでの有機物の分解処理により、濾過機構部に送られる被処理水に含まれる有機物量が抑制される結果、細菌の死骸を含む有機物による濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)の目詰まりやイオン交換樹脂の機能低下が起きにくくなり、これらの寿命を延長することができる。
【0038】
また、洗浄水水槽に除菌浄化ユニットの流入流路及び流出流路を循環可能に接続すると共に、洗浄水水槽と濾過機構部を接続しているので、洗浄水水槽内の被処理水を洗浄水水槽と除菌浄化ユニットとの間を循環させながら除菌浄化処理した後、濾過機構部で濾過処理した再利用可能な洗浄水を洗浄水水槽に返送して被洗浄物を洗浄することができるため、メッキ品質を損なうことなく洗浄水を節水することができる。
洗浄用の純水を貯留する洗浄水水槽に除菌浄化ユニットを循環可能に接続する場合、有機物の存在が少ない洗浄用の純水において安定した水質を保持しながら貯留できるから、洗浄水を節水することができると共に、洗浄水水槽の後段にある濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)の目詰まりやイオン交換樹脂の機能低下が起きにくくなり、これらの寿命を延長することができる。洗浄水水槽は、洗浄用の純水を貯留している水槽(貯水槽、予備用の洗浄水水槽、予備の貯留用水槽など)であってもよい。
【0039】
また、除菌浄化ユニットを複数の洗浄水水槽のうち最終の洗浄水水槽に接続しているので、洗浄による有機物の存在が最も少ない最終の洗浄水水槽で貯留している洗浄水を対象に除菌浄化するため、メッキ品質を損なうことなく洗浄水を節水することができる。
【0040】
また、多連状態の洗浄水水槽に対して個別に除菌浄化ユニットを接続することで、多連状態の洗浄水水槽毎に洗浄水を除菌浄化して再利用するため、メッキ品質を損なうことなく洗浄水を節水することができる。
【0041】
また、多連状態の洗浄水水槽に対し切替機構を介して順次除菌浄化ユニットを接続可能に設けることにより、純水中のような低栄養下でも増殖する細菌は増殖速度が遅いので、細菌の増殖状況に合わせて除菌浄化ユニットで除菌浄化処理を行う洗浄水水槽を順次切替えることが可能となるため、除菌浄化ユニットの設置数と所要の配管を削減して洗浄水処理のコストを削減することができる。
【0042】
また、除菌浄化ユニットで除菌浄化処理した後、濾過機構部で濾過処理して再利用可能とした洗浄水を洗浄処理部に供給することができるので、洗浄水を節水することができる。また、除菌・浄化して再利用可能とした洗浄水により、洗浄処理部でメッキ処理するためのコンデンサ等の電子部品を洗浄するので、高品質にメッキ処理された電子部品を製造することができる。
【0043】
また、半導体処理容体で半導体を洗浄した純水や機能水からなる洗浄水を洗浄水収納部(洗浄水回収水槽)に収納し、この洗浄水収納部(洗浄水回収水槽)に除菌浄化ユニットの流入流路及び流出流路を循環可能に接続しているので、除菌浄化ユニットで除菌浄化処理した後、濾過機構部で濾過処理して再利用可能とした洗浄水を半導体処理容体に供給することができるので、洗浄水を節水して高品質の半導体製品を製造することができる。
【0044】
また、除菌・浄化して再利用可能とした洗浄水により、洗浄処理部で半導体ウエハ基板、液晶ガラス基板、フィルタ基板、ガラス基板等の処理基盤を洗浄するので、洗浄水を節水して高品質の製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明による洗浄水処理装置の一実施例を示す模式図である。
【
図2】
図1の洗浄水処理装置の除菌浄化ユニットの模式図である。
【
図3】
図2の除菌浄化ユニットのオゾナイザの構造を示す模式図である。
【
図4】
図2の除菌浄化ユニットの紫外線照射部及び光触媒作用部の構造示す模式図である。
【
図5】複数の洗浄水収納部に切替機構を介して除菌浄化ユニットを接続した場合を示す模式図である。
【
図6】メッキ処理工程の複数の洗浄水水槽のうち最終の洗浄水水槽に本発明の洗浄水処理装置を適用した場合を示す模式図である。
【
図7】半導体処理容体に本発明の洗浄水処理装置を適用した場合を示す模式図である。
【
図8】ガラス基板製造装置に本発明の洗浄水処理装置を適用した場合を示す模式図である。
【
図9】高濃度オゾンによる処理装置の劣化状態を試験する概略ブロック図である。
【
図10】イオン交換樹脂装置のTOC溶出試験のブロック図である。
【
図11】イオン交換樹脂装置のTOC溶出試験のブロック図である。
【
図12】イオン交換樹脂装置のTOC溶出試験のブロック図である。
【
図13】濾過フィルタのTOC溶出試験のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明における洗浄水処理装置と洗浄水処理方法を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、洗浄水処理装置の一実施例の構成を示す模式図であり、
図2は、除菌浄化ユニットの構成を示す模式図である。
【0047】
先ず、
図1により洗浄水処理装置11の構成について説明する。
図1において、洗浄水処理装置11は、洗浄水収納部12と、除菌浄化ユニット(除菌浄化装置)13と、濾過機構部14を備え、洗浄水収納部12と除菌浄化ユニット13との間は流入流路15と流出流路16により循環可能に接続され、洗浄水収納部12と濾過機構部14との間は供給流路17により接続されるとともに、濾過機構部14と洗浄処理部10との間は還流流路18により接続されている。
【0048】
洗浄水収納部12は、洗浄処理部10で被洗浄対象の洗浄処理に使用した被処理水を、配管19を介して流入させて収納するための水槽である。洗浄水収納部12には、除菌浄化ユニット13との間で循環可能に設けた流入流路15と流出流路16、並びに濾過機構部14への供給流路17が接続されている。
【0049】
除菌浄化ユニット13は、ユニット内部に設けた図示しないポンプにより洗浄水収納部12から供給される被処理水を除菌浄化処理するユニットである。洗浄水収納部12に収納された被処理水は、除菌浄化ユニット13と洗浄水収納部12との間に循環可能に接続された流入流路15と流出流路16により、洗浄水収納部12と除菌浄化ユニット13との間を循環しながら除菌浄化処理される。なお、洗浄水収納部12から除菌浄化ユニット13に被処理水を供給するポンプは、洗浄水を循環させるため濾過装置51に既設のポンプを利用することもできる。
【0050】
除菌浄化ユニット13は、
図2に示すように、オゾンを供給するオゾン供給部21と、紫外線を照射する紫外線照射部22と、光触媒を作用させる光触媒作用部23とを備えており、各機能を有機的に結合して被処理水の除菌浄化処理を行う。
【0051】
先ず、オゾン供給部21から説明する。オゾン供給部21は、流入流路15を介して洗浄水収納部12から供給される被処理水にオゾンを供給する部位であり、空気を原料としてオゾンを生成するオゾナイザ25と、流入流路15に設けられて流入流路15内を流れる被処理水にオゾンを供給して混合させるエジェクタ26と、オゾナイザ25とエジェクタ26との間を接続するオゾン供給管27と、オゾンの逆流を防ぐためにオゾン供給管27に設けた逆止弁28とを備えている。
【0052】
オゾナイザ25は、
図3に示すように、アース電極31と高圧電極を貼りつけた誘電体32との間に放電空隙33を設け、アース電極31と誘電体32との間に高電圧を印加して放電させ、放電空隙33を流れる空気にオゾンを生成するものである。空気34は、図示しないポンプによりオゾナイザ25の放電空隙33に連続的に供給され、生成されたオゾン(及び溶存酸素)35は、オゾナイザ25に接続されたオゾン供給管27を介してエジェクタ26へと供給される。
【0053】
また、本実施例では、放電空隙33の間隔を0.5mmに設定しており、アース電極31と誘電体32との間で放電させることにより発生する熱は、放熱パッド36を介して放熱フィン37に伝達し、外部に放熱している。なお、本実施例では、アース電極としてチタン製のアース電極31を利用しているが、被処理水をアース電極として利用することもできる。
【0054】
エジェクタ26は、例えば、フッ素樹脂等の樹脂、セラミックや金属を材料として形成され、流入流路15を流れる被処理水と、オゾン供給管27から流れるオゾン(及び溶存酸素)とを混合させることにより微細気泡状の混合液(オゾン水)を作るようになっている。このとき、逆止弁28を通過したオゾンと溶存酸素は、エジェクタ26内部の図示しない溢路により流速が早められながら流入流路15に供給され、気泡状態で被処理水中に溶け込んだ状態になる。
【0055】
次に、紫外線を照射する紫外線照射部22と光触媒を作用させる光触媒作用部23について説明する。紫外線照射部22と光触媒作用部23は、
図2及び
図4に示すように、紫外線・光触媒ユニット41として一体化されている。
【0056】
図4に示すように、紫外線・光触媒ユニット41は、中央部に紫外線光源42を有し、この紫外線光源42の外周側に保護用の内ガラス管43が設けられている。紫外線光源42は、紫外線を照射可能に設けられ、後述する光触媒44から正孔および電子を効率良く生じさせるために、例えば、波長が410nm以下の紫外線を多く含む特性とすることがよい。紫外線光源42としては、例えば、紫外線ランプや低圧又は高圧水銀ランプを用いることが好ましい。更に、紫外線光源42は、400nmの波長を有する蛍光ランプや、紫外光を照射するLEDを複数個並べたものであってもよい。ただし、促進酸化効果を効率良く発揮させるためには、254nmの波長を用いるのが最も良い。紫外線光源がLEDランプのときには、この光源本体の寿命を延ばすことと小型化が可能になり、更には、発熱量も抑えられて効率の良い浄化が可能になる。更に、図示しないが、紫外線光源の形状は、直線(ストレート)形、円筒(サークル)形、螺旋形、波形などであればよく、何れかの形状を選択することで光触媒44を効率的に機能させることが可能になる。
【0057】
紫外線光源42の外周の内ガラス管43は、例えば、石英ガラスやホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスなどから形成される。このうち、特に、ホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスは、比較的安価であり、材料をそのまま使用することができるが、紫外線透過率、耐熱性、強度等の点を考慮した場合、石英ガラスを材料とすることが最も好ましい。内ガラス管43の外周側には所定の内径を有する外ガラス管45が設けられ、この外ガラス管45と内ガラス管43との間に被処理水の流路46が形成されている。この流路46内に、光触媒作用部である光触媒44が配設されている。
【0058】
光触媒44は、金属チタン基材の表面を酸化させて酸化チタンを生成することで剥離しない光触媒を利用したものであり、例えば、図示しない網やチタン線、繊維状チタン材料の集合体、その他多孔性チタン材料等からなるチタン又はチタン合金などの材料の表面側に二酸化チタンを被覆することで形成される。金属チタン基材を細状に形成した場合には反応面積が大きくなり、オゾンとの反応性が良くなる。金属チタン基材はチタンやチタン合金以外の材料であってもよく例えば、ガラスやシリカゲル等を材料とし、この材料の表面に酸化チタンを形成するようにしてもよいが、耐久性を考えた場合、チタン基材に形成したものが良い。
【0059】
本例においては、紫外線・光触媒ユニット41の中央部に紫外線光源42を配置した構造としていることでユニット全体のコンパクト化を図ることができ、かつ、被処理水に効率的に紫外線を照射できる。図示しないが、紫外線・光触媒ユニットを内ガラス管の外側に紫外線光源、内側に光触媒をそれぞれ設けた構造としてもよい。この場合、被処理水は内ガラス管の内部を流れることになる。
【0060】
図4において、紫外線・光触媒ユニット41には、入口側接続口47、出口側接続口48が設けられ、この各接続口47、48に前述した流入流路15、流出流路16がそれぞれ接続される。
【0061】
濾過機構部14は、
図1に示すように、濾過装置51とイオン交換樹脂52とにより構成されている。濾過装置51は中空糸膜フィルタなど(但し、活性炭フィルタを除く)を使用することができるが、被処理水に含まれる細菌や、細菌の死骸を含む有機物を効果的に濾過するためには、精密濾過膜(MF膜)若しくは限外濾過膜(UF膜)の中空糸膜を使用することが好ましい。
【0062】
また、イオン交換樹脂52は、オゾン処理や濾過処理では取り除くことができない被処理水中のカルシウム、ナトリウム、シリカなどの塩類成分を取り除くために使用するものであり、陽イオンを交換する陽イオン交換樹脂(カチオン交換樹脂)と、陰イオン(マイナスイオン)を交換する陰イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂)を混合して使用することが好ましい。
【0063】
続いて、本発明における洗浄水処理装置の動作について説明する。
図1に示すように、洗浄水処理装置11には、洗浄処理部10で被洗浄物の洗浄処理に使用した被処理水が配管19を介して流入し、洗浄水収納部12(容積:200L~300L)に収納される。洗浄水収納部12に収納された被洗浄水は、図示しないポンプにより流入流路15を介して除菌浄化ユニット13に送水される。
【0064】
除菌浄化ユニット13に送水された被処理水には、オゾン供給部21の流入流路15に設けたエジェクタ26からオゾナイザ25が生成したオゾン(及び溶存酸素)が混合され、微細気泡状のオゾンが気泡状態で被処理水中に溶け込んだ混合液(オゾン水)が作られる。
【0065】
供給されたオゾンの殺菌効果により被処理水中の細菌の多くは殺菌され、殺菌された細菌の死骸を含む有機物の多くは分解処理される。
【0066】
オゾンを含んだ被処理水が入口側接続口47から紫外線・光触媒ユニット41に流入すると、流路46内の紫外線光源42と光触媒44とを通過し、オゾンが溶け込んだ被処理水に紫外線照射部22の紫外線光源より紫外線を照射されることにより、・OH(ヒドロキシラジカル又はOHラジカル)といわれるラジカル(不対電子を持つ化学種で活性化が強い物質)が生成される。
【0067】
この・OHは活性化が強いため、オゾン供給部21でオゾン処理した際に殺菌されずに被処理水中に残留している細菌をほぼ殺菌することができるとともに、分解されずに被処理水中に残留している有機物をほぼ分解処理することができる。また、OHラジカルは非常に短時間に消失するため、濾過装置51やイオン交換樹脂52を痛めることはない。
以上のように、紫外線照射部22と光触媒作用部23によってOHラジカルが生成されることと、低濃度のオゾンとの組合せ、即ち有機的結合により、確実に洗浄水収納部12に残留している細菌・有機物を除菌浄化すると共に、濾過装置51やイオン交換樹脂52を痛めることなく延命することができる。
【0068】
紫外線・光触媒ユニット41で除菌浄化処理が終了した被処理水は、出口側接続口48から流出流路16を介して洗浄水収納部12に返送される。
【0069】
このように、洗浄水収納部12に収納された被洗浄水は、洗浄水収納部12と除菌浄化ユニット13との間を循環しながら除菌浄化されるので、洗浄水収納部12に返送された被処理水に残留しているオゾンにより、洗浄水収納部12内でも殺菌効果が発揮され、細菌の増殖が抑制されることにより、洗浄水収納部の壁面等でのバイオフィルムの発生を抑制することができるため、洗浄処理装置や洗浄水収納部及びこれらに附随する配管の洗浄及び清掃の間隔や、洗浄水として使用する純水の交換間隔を延長することができる。
【0070】
また、除菌浄化ユニット13で除菌浄化した後、直ちに濾過機構部14に送られるのではなく、洗浄水収納部12に返送された後、洗浄水収納部12内に収納されている被処理水と混合されるので、洗浄水収納部12に収納される被処理水全体としてのオゾン濃度は希釈されるとともに、洗浄水収納部12に収納されている間にオゾンが分解されるため、濾過機構部14に送られる被処理水のオゾン濃度は低下する。
【0071】
このように、オゾン濃度が大幅に低下した被処理水が供給流路17を介して濾過機構部14に送られるため、除菌浄化ユニット13が洗浄水収納部12と濾過装置51との間に設けられるのに比べ、被処理水中の残留オゾンにより濾過機構部14の濾過装置51のフィルタやイオン交換樹脂52を痛め、寿命を短くするおそれがない。また、除菌浄化ユニット13で被処理水中に残留している細菌をほぼ殺菌し、また、被処理水中に残留している有機物がほぼ分解処理された被処理水が供給流路17を介して濾過機構部14に送られるため、細菌や有機物による濾過機構部のフィルタの目詰まりやイオン交換樹脂の機能低下が起きにくくなり、これらの寿命を延長することができる。
【0072】
洗浄水収納部12から濾過機構部14に送られた被処理水は、濾過装置51で被処理水中に残留する細菌と有機物を除去する濾過処理が行われた後、イオン交換樹脂でオゾン処理や濾過処理では取り除くことができない被処理水中塩類成分が取り除かれ、還流流路18を介して洗浄処理部10へと還流させる。
【0073】
以上説明したように、洗浄水処理装置11では、洗浄処理部10で洗浄に使用した被処理水を洗浄水収納部12に収納し、洗浄水収納部12と除菌浄化ユニット13との間で被処理水を循環させながら連続的に除菌浄化処理するのと同時に、収納した被処理水を濾過機構部14に送って濾過処理した後、還流流路18を介して洗浄処理部10に還流させている。
【0074】
洗浄水収納部12と除菌浄化ユニット13との間で被処理水を循環させながら除菌浄化処理を行うことにより、オゾンが溶存した除菌浄化処理済みの被処理水を洗浄水収納部12に戻し、洗浄水収納部12内の被処理水に含まれる有機物と細菌を漸次削減するとともに、洗浄水収納部12内での細菌の増殖を抑制することができる。
【0075】
この結果、洗浄水収納部12から濾過機構部14に送られる被処理水に含まれる有機物や細菌は、除菌浄化ユニット13で循環処理しない場合と比べると大幅に少なくなるので、細菌や有機物を濾過処理することによる濾過装置51のフィルタの目詰まりやイオン交換樹脂52の機能低下の発生を抑制することができる。
【0076】
また、洗浄水収納部12から濾過機構部14に送られる被処理水は、除菌浄化ユニット13から戻された直後の被処理水ではないので、濾過機構部14に送られる時点では被処理水に溶存するオゾン濃度は十分に低下しているため、濾過機構部14の濾過装置51のフィルタやイオン交換樹脂52を痛めることがない。その一方で、その程度のオゾン濃度であっても、濾過機構部14や還流流路18及び洗浄処理部10で細菌の増殖を抑制することができる。なお、前述したように、純水中のような低栄養下でも増殖する細菌は増殖速度が遅いため、除菌浄化ユニット13は、必ずしも運転を継続させる必要はなく、洗浄水収納部12内の被洗浄水の状態に対応し、運転の停止と再開を適宜選択することができる。
【0077】
濾過機構部14では、濾過装置51のフィルタ(好ましくはUF膜の中空糸膜)が微粒子、細菌や高分子有機物を除去するとともに、イオン交換樹脂52がオゾン処理や濾過処理では取り除くことができない被処理水中のカルシウム、ナトリウム、シリカなどの塩類成分を取り除き、最終的に被処理水を純水として再利用可能にしている。
【0078】
以上の実施例では、洗浄水収納部12に除菌浄化ユニット13を被処理水が循環可能に接続したが、これに加え、還流流路18の途中に除菌浄化ユニット13を被処理水が循環可能に接続してもよい。
【0079】
洗浄水処理装置では、被処理水に対して以上のように除菌浄化処理及び濾過処理を行うため、洗浄処理部で洗浄水(純水)として再利用しても製品の品質に悪影響を及ぼすことがなく、洗浄処理部で使用する純水を節水し、洗浄コストを抑制することが可能となる。
【0080】
次に、複数の洗浄水水槽に対し切替機構を介して順次除菌浄化ユニットを接続可能に設けた洗浄水処理装置について説明する。なお、以上の説明と同じ機能の部分については同一の符号を使用するとともに、説明を省略する。
図5に示すように、洗浄水処理装置では、二つの洗浄水処理装置が切替機構62を介して除菌浄化ユニット13を共有するように構成されている。
【0081】
被洗浄水は配管19a、19bを介して流入し、洗浄水収納部12a、12bに収納される。二つの洗浄水収納部12a、12bの流入流路63a、63b及び流出流路64a、64bは切替機構62に接続され、切替機構62と除菌浄化ユニット13とは、流入流路15と流出流路16により接続されている。切替機構62では、流入流路63a、63bと流入流路15の接続、また流出流路64a、64bと流出流路16の接続が切替可能であり、流入流路63aと流入流路15が接続された場合には流出流路64aと流出流路16が接続され、流入流路63bと流入流路15が接続された場合には流出流路64bと流出流路16が接続されるようになっている。
【0082】
このように切替機構62を構成しているので、切替機構62で流路の接続を切替えることにより、除菌浄化ユニット13では洗浄水収納部12a、12bのどちらか一方の除菌浄化処理を選択して行うことができる。このように構成したことにより、除菌浄化ユニット13の設置数と配管を削減することができ、被洗浄水の処理コストを抑制することができる。
【0083】
このような構成が可能であるのは、前述したように、純水中のような低栄養下でも増殖する細菌は増殖速度が遅いため、常に除菌浄化ユニット13で除菌浄化処理を行う必要がなく、洗浄水中の細菌の増殖状況が一定の基準に達した時に除菌浄化ユニットで除菌浄化処理を行えば実用上の問題がないため、1台の除菌浄化ユニット13で、順番に複数の洗浄水収納部に収納された洗浄水の除菌浄化処理を行うことができるためである。
【0084】
切替機構62で除菌浄化ユニット13に接続する洗浄水収納部を切替えるタイミングは、洗浄水収納部12a、12b内に収納された洗浄水中のTOC(全有機炭素)濃度や、一般細菌数、従属栄養細菌数等を指標として、その計測値に従って手動乃至自動で切替えるようにしても良いし、洗浄水収納部12a、12b内に収納された洗浄水中のTOC濃度や、一般細菌数、従属栄養細菌数等の増加状況が安定している場合には、タイマーにより自動的に切替えるようにしたり、除菌浄化ユニット13の運転を停止したりすることもできる。
【0085】
また、以上では、二つの洗浄水処理装置が切替機構62を介して除菌浄化ユニット13を共有するように構成されている場合を説明したが、切替機構62を介して除菌浄化ユニット13に接続する洗浄水処理装置の数はこれに限定されるわけではなく、使用状況に応じて接続数を当然に増やすことができる。
【0086】
なお、
図5では、複数の洗浄水水槽に対し切替機構を介して除菌浄化ユニットを接続する場合を説明したが、複数の洗浄水水槽に対して除菌浄化ユニットを接続する方法は切替機構を使用する場合に限られるわけではなく、例えば、複数の洗浄水水槽のそれぞれに除菌浄化ユニットの流入流路と流出流路との接続口を設け、除菌浄化ユニットを台車などに搭載し、移動させながら順次複数の洗浄水水槽に接続して除菌浄化処理を行うようにすることもできる。
【0087】
次に本発明の洗浄水処理装置をメッキ処理工程に適用した場合を説明する。なお、今までの説明と同じ機能の部分については同一の符号を使用するとともに、説明を省略する。
図6に示すように、このメッキ処理工程では、4つ設けた洗浄水水槽のうち最終の洗浄水水槽に除菌浄化ユニットを接続している。
【0088】
このメッキ処理工程では、メッキ槽71でメッキ処理を行い、洗浄水水槽(回収槽)72はメッキ液を回収するために設けられ、洗浄水水槽73、74、75は、メッキ処理後の被処理体を洗浄するために設けられている。
【0089】
洗浄水水槽73と洗浄水水槽74は連接して設けられており、洗浄水水槽74に給水した純水が、洗浄水水槽73と洗浄水水槽74の間の仕切をオーバーフローして洗浄水水槽73内に流入し、洗浄水水槽73に設けた排水口76から排出されるように構成されている。
【0090】
洗浄水水槽75には洗浄用の純水が貯留されており、洗浄水水槽75と除菌浄化ユニット13との間は、流入流路15と流出流路16により循環可能に接続され、また、洗浄水水槽75と濾過機構部14とは供給流路17により接続されている。さらに濾過機構部14と洗浄水水槽75との間は還流流路18により接続されている。
【0091】
すなわち、
図6に示すメッキ処理工程では、洗浄水水槽75が洗浄処理部10であり、また洗浄水収納部12でもある。従って、洗浄処理部10である洗浄水水槽75で被処理体の洗浄に使用された純水は、洗浄水水槽75と除菌浄化ユニット13との間を循環しながら除菌浄化処理されるとともに、洗浄水水槽75から濾過機構部14に送られて濾過処理された後に洗浄処理部である洗浄水水槽75に還流される。
【0092】
このように、洗浄水収納部12である洗浄水水槽75に収納された洗浄水は、洗浄水水槽75と除菌浄化ユニット13との間を循環しながら除菌浄化処理されるとともに、洗浄水水槽75と濾過機構部14との間を循環しながら濾過処理されることにより、再使用可能な状態が維持される。
よって、除菌浄化ユニットを複数の洗浄水水槽のうち最終の洗浄水水槽に接続することにより、有機物の存在が最も少ない最終の洗浄水水槽に貯留される洗浄水の純水を対象に除菌浄化するため、貯留される洗浄水の水質を維持して節水することができると共に、メッキ品質を損なうことがない。
また、洗浄用の純水を貯留する洗浄水水槽に除菌浄化ユニットを循環可能に接続する場合、貯留される洗浄用の純水が安定した水質を維持可能で節水することができると共に、洗浄水水槽の後段にある濾過機構部のフィルタ(但し、活性炭フィルタを除く)の目詰まりやイオン交換樹脂の機能低下が起きにくくなり、これらの寿命を延長することができる。なお、除菌浄化ユニットに接続している洗浄水水槽は、洗浄用の純水を一次的に貯留する水槽(貯水槽、予備用の洗浄水水槽、予備の貯留用水槽など)であってもよい。
また、多連状態の洗浄水水槽に対して個別に除菌浄化ユニットを接続すれば、多連状態の洗浄水水槽毎に洗浄水を除菌浄化して貯留される洗浄水の水質を維持するため、メッキ品質を損なうことなく洗浄水を節水することができる。
【0093】
次に本発明の洗浄水処理装置を半導体製造装置に適用した場合を説明する。今までの説明と同じ機能の部分については同一の符号を使用するとともに、説明を省略する。
図7は、枚葉式洗浄装置81を模式的に示しており、ターンテーブル82に載置されて回転するウエハ83に、ノズル84から純水を吹付けてウエハ83表面を洗浄する状況を示している。洗浄に使用した純水は、被処理水として枚葉式洗浄装置81の下部に設けた洗浄水回収水槽85に収納される。
【0094】
従って、
図7の枚葉式洗浄装置81では、ノズル84とターンテーブル82が洗浄処理部10であり、枚葉式洗浄装置81の下部に設けた洗浄水回収水槽85が洗浄水収納部12となる。
【0095】
図7の枚葉式洗浄装置81では、
図6のメッキ処理工程と同様に、洗浄水収納部12である洗浄水回収水槽85に収納された洗浄水は、洗浄水回収水槽85と除菌浄化ユニット13との間を循環しながら除菌浄化処理されるとともに、洗浄水回収水槽85と濾過機構部14との間を循環しながら濾過処理されることにより、再使用可能な状態が維持される。
【0096】
さらに、ガラス基板製造装置に本発明の洗浄水処理装置を適用した場合を説明する。
図8は、水平搬送方式のガラス基板洗浄装置91を模式的に示している。ガラス基板92は、搬送ローラー93で搬送されながら、洗浄用ノズル94から純水を吹付けられて洗浄される。洗浄に使用した純水は、被処理水としてガラス基板洗浄装置91の下部に設けた洗浄水回収水槽95に収納される。
【0097】
従って、
図8のガラス基板洗浄装置91では、洗浄用ノズル94と搬送ローラー93が洗浄処理部10であり、ガラス基板洗浄装置91の下部に設けた洗浄水回収水槽95が洗浄水収納部12となる。
【0098】
図8のガラス基板洗浄装置91では、
図6のメッキ処理工程や
図7の枚葉式洗浄装置81と同様に、洗浄水収納部12である洗浄水回収水槽95に収納された洗浄水は、除菌浄化ユニット13との間を循環しながら除菌浄化処理されるとともに、洗浄水回収水槽95と濾過機構部14との間を循環しながら濾過処理されることにより、再使用可能な状態が維持される。
【0099】
以上説明した様に、本発明の洗浄水処理装置と洗浄水処理方法によると、洗浄処理部で被洗浄物の洗浄に使用した純水を除菌浄化処理と濾過処理して再利用することができるだけでなく、再利用する洗浄水に含まれる細菌と有機物を低レベルに保つことができるので、洗浄装置内部の清掃と純水の交換間隔を長くすることができるだけでなく、濾過フィルタやイオン交換樹脂の寿命を延長することができる。これにより、本発明の洗浄水処理装置と洗浄水処理方法を使用する製造装置の稼働率を向上させて製造コストの削減を図ることができる。
【実施例0100】
本発明における除菌浄化ユニット13におけるオゾン供給部21から供給されるオゾンの濃度は、高濃度であると後段の濾過機構部14の濾過装置51のフィルタやイオン交換樹脂52の寿命を短くするおそれがあるので、洗浄水収納部12の容量、被処理水の送水量、効果的なオゾン処理を行うためのオゾン濃度の上限値を総合的に判断し、本実施例では、オゾン供給部21で供給するオゾン量を0.3と2.0(g/h)に調整している。
また、供給されるオゾン水の濃度は、高濃度であるとオゾン処理した後の残留オゾンによって、
図1における洗浄水収納部12の後段にある濾過機構部14の濾過装置51のフィルタ、イオン交換樹脂52及びこれらの容器や充填物さらには図示しない被処理水を循環させるための循環ポンプのインペラ等が劣化して寿命を短くするおそれがある。
特に、オゾンの強い殺菌性から低濃度でのオゾン処理技術は知られているが、本発明の技術分野における高濃度領域の上限を示す技術はなく、洗浄水処理装置のオゾンによる劣化について何ら言及されていないのが現状である。
【0101】
そこで、本発明における洗浄水処理装置又は洗浄水処理方法における後段装置への影響を確認するために試験を行った。以下にその試験の一例を示す。
【0102】
図9は、高濃度オゾンによる処理装置の劣化状態を試験するための概略ブロック図を示している。試験に用いた機器は、試験装置120(ピュアキレイザー(登録商標) ZPVS3U11)、オゾナイザ125((株)増田研究所 オゾン発生装置 OZS-EP3-20)、オゾン水濃度計110(オキトロテック(株) オゾン水濃度計 OZM-7000LN)である。なお同図において、111はセンサBOXであり、pH、ORP、水温、導電率を計測する。また、112は流量計であり、115はデイスクフィルタであり、118は排水である。また、121は循環ポンプであり試験装置120に内蔵されている。また、123はコンプレッサー(空気圧縮機)であり、124は流量計であり、128は流量調整弁である。また、130は試験水槽であり、135はバルブである。
【0103】
試験方法は、イオン交換樹脂152及び濾過フィルタ155への通水試験として、試験装置120に導入するオゾン水濃度を2種類に変化させて、イオン交換水(純水)に対して試験装置120を30分運転し、所定の濃度に調整した。オゾナイザ125及びエジェクタ126によって2種類のオゾン水濃度(オゾン発生量を0.3g/hとしたときを試験1、オゾン発生量を2.0g/hとしたときを試験2)に調整したオゾン水をイオン交換樹脂152(オルガノ製カートリッジ純水器 アンバーライト MB2 容量5L)と、濾過フィルタ155(日本フィルター製 CW-1及びEC-1)とに切り替えて行った。送水ポンプ131を運転しイオン交換樹脂152又は濾過フィルタ155にオゾン水を8時間通水した。
【0104】
その試験条件は次の通りである。
[試験条件]
試験水 イオン交換水
試験水量 40L
循環流量 20L/min(1ターン120秒)
オゾン発生量 0.3g/h(試験1)
2.0g/h(試験2)
【0105】
まず、イオン交換樹脂のオゾンについての影響であるが、イオン交換樹脂はオゾンにより酸化されると官能基が外れたり、樹脂の母体が酸化されて膨張することが想定されるため、劣化を把握するための分析項目として、「総交換容量」「中性塩分解容量」及び「水分保有能力」について測定した。
【0106】
【0107】
【0108】
イオン交換樹脂の分析結果を表1に示し、表2に示したオゾン通水前のイオン交換膜樹脂の仕様との比較において、オゾン水濃度が1.31mg/Lおよび5.37mg/Lの高濃度下において、イオン交換樹脂と高濃度オゾン水が反応しているものの明確な劣化は見られず実用上のイオン交換能力は確保されていた。
【0109】
また、濾過フィルタへの影響についても、ポリプロピレン製及びポリエチレン製フィルタは高濃度オゾン水と反応するもののフィルタ繊維の断裂等の劣化はみられなかった。
【0110】
図10、
図11、
図12はイオン交換樹脂装置のTOC溶出試験のブロック図であり、オゾナイザ125、エジェクタ126及び循環ポンプ121を備えたオゾン供給部140から試験水槽130に所定のオゾン水を供給するようにしている。
【0111】
TOCの溶出部位を特定するために、循環ポンプ121、イオン交換樹脂152を内包した樹脂の充填容器であるFRP製ボンベ153を次のように試験した。
図10は、イオン交換樹脂152、FRP製ボンベ153と循環ポンプ121の全てを合わせた系を示し、
図11は、イオン交換樹脂なしのFRP製ボンベ153そのものを示し、
図12は循環ポンプ121のみを示している。いずれの試験においてオゾン発生量を2.0g/hとしてオゾン水濃度を5.37mg/Lに高濃度に調整している。これらの高濃度オゾン水によるTOC試験結果を表3、表4、表5に示す。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
TOCの値は、純水での一般的な許容値として1.0mg/L以下とされているが、試験によればオゾン通水から8時間経過後は、FRP製ボンベ153と循環ポンプ121から許容値を超えるTOCが検出された。特に
図12及び表5において、循環ポンプ121単独からTOCが検出されたのは、循環ポンプ121の内部にある樹脂製インペラから溶出したものと考えられる。また、
図10及び表3においてTOCの値が最も少ない理由は、いったんFRP製ボンベ153と循環ポンプ121の樹脂製インペラから溶出したTOCがイオン交換樹脂152に吸着したため他の試験より低い値を示したと考えられる。
【0116】
図13は、濾過フィルタ155のTOC溶出試験ブロック図であり、これによる測定結果を表6に示す。
【0117】
【0118】
試験において、オゾン発生量を0.3g/hと、オゾン発生量を2.0g/hとし、オゾン水濃度を1.31mg/Lと5.37mg/L未満の2種類の高濃度に調整した。その他の試験環境は、
図10乃至
図12と同じである。オゾン通水から8時間経過後には濾過フィルタ155から高濃度のTOCが検出されたことから、濾過フィルタ155の材質であるポリプロピレンやポリエチレンから有機物の溶出があったと考えられる。
【0119】
以上のことから、本発明の技術分野における洗浄処理装置において、高濃度オゾン水による処理後の残留オゾンにより、イオン交換樹脂152や濾過フィルタ155の劣化よりもFRP製ボンベ153、循環ポンプ121の接液部(樹脂製インペラ等)、濾過フィルタ155の材質であるポリプロピレンやポリエチレンから高濃度の有機物が溶出することが分かり、残留オゾン水の濃度を5.37mg/L未満に制御することによって洗浄処理装置の寿命を長くすることができることが分かった。また、殺菌効果よりもTOC溶出低減がより望まれる場合には、上記の5.37mg/L未満の残留オゾン水の濃度を1.31mg/L未満に制御してもよい。