(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118142
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】トレー
(51)【国際特許分類】
B65D 5/20 20060101AFI20220804BHJP
B65D 5/44 20060101ALI20220804BHJP
B65D 21/032 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B65D5/20 A
B65D5/44 E
B65D21/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099481
(22)【出願日】2022-06-21
(62)【分割の表示】P 2019158381の分割
【原出願日】2019-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青野 典生
(57)【要約】
【課題】積み重ね強度を向上させたトレーを提供する。
【解決手段】底板と、一組の第1の側面と、他の一組の第2の側面とを有するトレーであって、前記第1の側面の上端部に連設された桟部と、前記桟部に連設された差込片と、前記第2の側面の上端部に連設された係合片と、前記係合片に設けられた差込孔と、前記第2の側面の前記第1の側面に隣接する端部に連設された折曲片とを有し、前記折曲片が、前記第1の側面の前記トレー内側面に接するように折り曲げられ、前記差込片が、前記差込孔に差し込まれており、前記底板と前記第2の側面とが形成する角度が鋭角であるトレーの提供。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板の対向する一組の端縁に連設された第1の側面と、
前記底板の対向する他の一組の端縁に連設された第2の側面とを備えたトレーであって、
前記第1の側面の上端部に連設された桟部と、
前記桟部に連設された差込片と、
前記第2の側面の上端部に連設された係合片と、
前記係合片に設けられた差込孔と、
前記第2の側面の前記第1の側面に隣接する端部に連設された折曲片とを有し、
前記折曲片が、前記第1の側面の前記トレー内側面に接するように折り曲げられ、
前記差込片が、前記差込孔に差し込まれており、
前記底板と前記第2の側面とが形成する角度が鋭角であることを特徴とするトレー。
【請求項2】
前記桟部と前記差込片を区画する折り曲げ線が、前記桟部の前記第2の側面に隣接する端縁から前記桟部の第1の側面と反対側の端縁に向かって、前記桟部の中央方向に傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトレー。
【請求項3】
前記差込孔は、中心を前記第1の側面側とし、一方の辺が前記第2の側面と略平行であり、他方の辺が前記第2の側面から離れる方向に傾斜している略扇形であることを特徴とする請求項1または2に記載のトレー。
【請求項4】
前記折曲片の第2の側面に連設する辺と前記底板に接する辺が形成する角度が鋭角であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のトレー。
【請求項5】
前記底板と前記第2の側面とが形成する角度が85°~89°であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに一項に記載のトレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み重ね強度を向上させたトレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレーは、野菜や果物などの青果物の出荷等に用いられている。その際に一度に多くの出荷を行えるよう、トレーは積み重ねて利用される。
【0003】
トレーの天面は開放されているため、いくつかのトレーでは、積み重ねて利用する際に内容物が潰れたり傷ついたりすることのないよう、端部または四隅に桟を設け、安定に積み重ねられるように設計されている(特許文献1および特許文献2)。
【0004】
しかしながら、このようなトレーでは、端部に桟を設ける場合は一般に短側面側に設けられている。また、長側面側の中心には積み重ね時のずれ防止用の突起が設けられており、その部分には荷重がかかっていない。従って主として短側面側で荷重を支えている。また、トレーの側面は垂直に起立するよう設計されているが、シート素材の折曲げによる反発や、上からの荷重により、側面をトレーの外側に傾斜させる力が働く。側面が外側に傾斜すると、上段のトレーの重量を側面が十分に支えることができず、トレー全体の耐荷重が弱くなる。さらに外側への傾斜が強くなると、上段のトレーが下段トレーの内側に落ち込むおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-16875号公報
【特許文献2】特開2018-52528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、積層した際に長側面も荷重を支えるのに寄与し、トレー全体としての耐荷量を向上させたトレーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施態様は、底板と、前記底板の対向する一組の端縁に連設された第1の側面と、前記底板の対向する他の一組の端縁に連設された第2の側面とを備えたトレーであって、前記第1の側面の上端部に連設された桟部と、前記桟部に連設された差込片と、前記第2の側面の上端部に連設された係合片と、前記係合片に設けられた差込孔と、前記第2の側面の前記第1の側面に隣接する端部に連設された折曲片とを有し、前記折曲片が、前記第1の側面の前記トレー内側面に接するように折り曲げられ、前記差込片が、前記差込孔に差し込まれており、前記底板と前記第2の側面とが形成する角度が鋭角であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の実施態様において、前記桟部と前記差込片を区画する折り曲げ線が、前記桟部の前記第2の側面に隣接する端縁から前記桟部の第1の側面と反対側の端縁に向かって、前記桟部の中央方向に傾斜していることが好ましい。
【0009】
また、本発明の実施態様において、前記差込孔は、中心を前記第1の側面側とし、一方の辺が前記第2の側面と略平行であり、他方の辺が前記第2の側面から離れる方向に傾斜している略扇形とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明の実施態様において、前記折曲片の第2の側面に連設する辺と前記底板に接する辺が形成する角度が鋭角とすることが好ましい。
また、本発明の実施態様において、前記底板と前記第2の側面とが形成する角度が85°~89°であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の実施態様において、前記トレーは一枚のシートから形成することができる。前記シートは段ボールであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例を示すトレーの全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるトレー100の実施態様について、
図1~
図4を参照にしながら詳細に説明する。本発明の実施態様において、トレー100は、矩形状の底板10と、一組の第1の側面20と、一組の第2の側面30とを有し、桟部40と、桟部40に連設する差込片41と、第2の側面に連設され、差込片41が差し込まれる差込孔33が設けられた係合片32、及び、折曲片31とを備える(
図1参照)。
【0014】
本発明の実施態様において、第1の側面20は、底板10の短辺から立ち上がって、トレー100の短側面を形成する。第1の側面20は中央上部に第1の開口部21を設けてもよい。第1の開口部21は指かけ部となり、トレー100を持ち運びしやすいものとする。
【0015】
また、第1の側面20は、上端部中央から突出した第1の支持部22と、下端部中央を含む第2の開口部23とを設けてもよい。このような構成により、トレー100を積み重ねて利用する際に、第1の支持部22は上段のトレー100の第2の開口部23に嵌合することができ、移送中等のトレーの積みずれを防止することができる。
【0016】
本発明の実施態様において、第2の側面30は、底板10の長辺から鋭角となる角度で立ち上がり、トレー100の長側面を形成する。好ましくは、第2の側面30は底板10から85°~89°の角度で立ち上がる。
【0017】
第2の側面30の上端部には、係合片32が連接され、係合片32には差込孔33が設けられている。また、第2の側面30の第1の側面20に隣接する端部には折曲片31が連設されている(
図1、
図2参照)。
【0018】
折曲片31は、第1の側面20の内側面に接するように折り曲げられ、その上端は後述する桟部40を下方向から支持する。折曲片31の、底板10に接する辺と、第2の側面30と連設する辺とで形成する角度R1は90°未満の鋭角である(
図3参照)。折曲片31は、第1の開口部21に対応する位置に第1の切欠部35(図示せず。後述の第1の切欠部になる部分235に対応。)を設けてもよい。また、第1の支持部22に対応する第2の支持部34を設けてもよく、第2の開口部23に対応する位置に第2の切欠部36(図示せず。後述の第2の切欠部になる部分236に対応。)を設けることができる。
【0019】
本発明の実施態様において、桟部40は第1の側面20の上端部に連設し、トレー100の内側に向かって突出する部分である。桟部40には第1の側面20側中央部分に第3の開口部42が設けられてもよく、第3の開口部42から、第1の支持部22と第2の支持部34とを突出させることができる。第2の支持部34が第3の開口部42の中に位置することにより、折曲片31が固定され、位置ずれを防止することができる。
【0020】
本発明の実施態様において、桟部40の第2の側面30に隣接する両端には差込片41が連設されている。桟部40と差込片41を区画する折り曲げ線(後述の第4の折り曲げ線L4に対応。)は、前記第2の側面側の端縁から前記桟部の第1の側面と反対側の端縁に向かって、前記桟部の中央方向に傾斜している。即ち、角度R3(
図5参照)は90°より大きい鈍角となる。このことにより、差込片41は、トレー100の内側方向に傾斜するように、差込孔33に上面から差し込まれ、第2の側面30を固定する(
図4参照)。
【0021】
また、本発明の実施態様において、差込孔33は、中心を第1の側面20側とし、一辺が第2の側面30と略平行であり、他の一辺が第2の側面30から離れる方向に傾斜している略扇形に形成されている。略扇形の中心角R2は鋭角である。
【0022】
R3が鈍角であり、また、差込孔33が略扇形で一辺が第2の側面から離れる方向に傾斜しているため、差込片41を差込孔33に差し込んで係合することで、係合片32にトレー内側に向かう力を掛けることができる。それにより、底板10から鋭角をなす角度で立ち上がった第2の側面30は、その角度を保ちつつ固定することが容易となる。
【0023】
第2の側面30が底板10から鋭角で立ち上がった場合、第2の側面30はトレー100の内側に傾くこととなる。その結果、第2の側面30は、シート素材の折曲げによる反発や、上からの荷重により、側面がトレーの外側に傾斜させる力が働いても、側面が垂直方向より外側に傾斜することがなく、上段のトレーの重量を側面が十分に支えることができる。従って、トレー全体の耐荷重が弱くなることがない。また、側面が垂直より外側に傾斜することがないので上段のトレーが下段トレーの内側に落ち込みなどを防止できる。
【0024】
即ち、本発明の実施態様においては、短側面となる第1の側面20だけでなく、長側面である第2の側面30全体でも荷重を支えることができるため、トレー全体の耐荷量強度を向上することができる。
【0025】
さらに、本発明の実施態様において、トレー100は1枚のシートから形成することができる。また、シートの材質は切断や折り曲げ等によりトレー100を形成することができればよく、好ましくは板紙であり、段ボール、クラフト紙などを用いることができる。さらに好ましくは段ボールである。また、本願発明の実施態様において、板紙は収容される物品により強度や性質を適宜選択してもよい。例えば、表面に撥水コーティングした段ボールをシートに用いてもよい。また、強化材や厚みを増加させた強化段ボールを用いてもよい。なお、シートの材質が段ボールの場合、長側面での耐荷重を向上させるためには、長側面(第2の側面30)の上下方向と、段ボールの段方向を一致させることが好ましい(
図5参照)。
【0026】
また、本発明のトレー100を形成するブランク200について、
図5を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0027】
本発明の実施態様において、ブランク200は、矩形状の底板となる部分210と、底板となる部分210を挟んで対向し、底板となる部分210に第1の折り曲げ線(L1)を介してそれぞれ隣接する一組の第1の側面となる部分220を有する。
【0028】
第1の側面となる部分220は、第1の折り曲げ線(L1)に平行な第3の折り曲げ線(L3)を介して連設する桟部となる部分240と、桟部となる部分240に第4の折り曲げ線(L4)を介して連設された差込片となる部分241を有する。第4の折り曲げ線(L4)は、桟部となる部分240における第2の側面となる部分方向の端縁を始点とし、第1の側面となる部分220の反対方向の端縁に向かって、ブランク内側方向に傾斜して設けられている。言い換えれば、R3は鈍角となる。
【0029】
なお、第1の側面となる部分220には、第1の開口部となる部分221および/または第2の開口部となる部分223を、第1の側面となる部分220にそれぞれ設けられていてもよい。
【0030】
また、第1の側面となる220に第1の支持部となる部分222が形成されるように、桟部となる部分240に第3の折り曲げ線(L3)を越えて切れ込みを設け、更に第3の開口部となる部分242を設けてもよい。
【0031】
また、ブランク200は、底板となる部分210を挟んで対向し、底板となる部分210に第2の折り曲げ線(L2)を介してそれぞれ隣接する一組の第2の側面となる部分230を有する。
【0032】
第2の側面となる部分230は、第2の折り曲げ線(L2)と平行な第5の折り曲げ線(L5)を介して連設される係合片となる部分232と、係合片となる部分232に設けられた差込孔となる部分233と、第1の折り曲げ線(L1)と平行な第6の折り曲げ線(L6)を介して連設される折曲片となる部分231とを備える。
【0033】
なお、折曲片となる部分231は、第1の側面となる部分220に隣接する辺と第6の折り曲げ線(L6)とが形成する角度(R1)が90°未満の鋭角である。
【0034】
また、折曲片となる部分231は、第1の開口部となる部分221に対応する位置に第1の切欠部となる部分235を設けてもよい。また、第1の支持部となる部分222に対応する第2の支持部となる部分234を設けてもよく、第2の開口部となる部分223に対応する位置に第2の切欠部となる部分236を設けてもよい。
【0035】
ブランク200からトレー100を組み立てる際は、第2の側面となる部分230を、トレー100の内側に向けて折り曲げて、第2の側面30を形成する。
【0036】
続いて、折曲片となる部分231をトレー100の内側に向けて折り曲げて折曲片31とする。
【0037】
続いて、第1の側面となる部分220を、折曲片31の外側に接するようにトレー100の内側に向けて折り曲げて、第1の側面20を形成する。
【0038】
続いて、係合片となる部分232を、トレー100の内側に向けて折り曲げて、係合片32を形成する。
【0039】
続いて、桟部となる部分240を、トレー100の内側に向けて折り曲げて、桟部40を形成する。
【0040】
続いて、差込片となる部分241を、係合片32に設けられた差込孔33に上から差込んで、差込片41を形成する。
【0041】
以上により、トレー100が形成される。
【0042】
本発明の実施態様において、ブランク200に対し、折り曲げ加工、および任意選択的に接着加工を行うことにより、トレー100を提供することができる。折り曲げ加工および接着加工は機械的に行ってもよく、また手作業で行ってもよい。
【0043】
このように形成されたトレー100は、野菜や果物などの青果物の輸送および/または保管に好ましく、特に、内容物が軟性であるなどの破損しやすい物品の輸送および/または保管に好ましく用いられる。
【0044】
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施態様においても本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施態様におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的に応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0045】
10 底板
20 第1の側面
21 第1の開口部
22 第1の支持部
23 第2の開口部
30 第2の側面
31 折曲片
32 係合片
33 差込孔
34 第2の支持部
35 第1の切欠部
36 第2の切欠部
40 桟部
41 差込片
42 第3の開口部
100 トレー
200 ブランク
210 底板となる部分
220 第1の側面となる部分
221 第1の開口部となる部分
222 第1の支持部となる部分
223 第2の開口部となる部分
230 第2の側面となる部分
231 折曲片となる部分
232 係合片となる部分
233 差込孔となる部分
234 第2の支持部となる部分
235 第1の切欠部となる部分
236 第2の切欠部となる部分
240 桟部となる部分
241 差込片となる部分
242 第3の開口部となる部分
L1 第1の折り曲げ線
L2 第2の折り曲げ線
L3 第3の折り曲げ線
L4 第4の折り曲げ線
L5 第5の折り曲げ線
L6 第6の折り曲げ線