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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118186
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】パーソナルケア装置
(51)【国際特許分類】
   B26B 19/38 20060101AFI20220804BHJP
   B26B 19/04 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B26B19/38 C
B26B19/04 U
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022100298
(22)【出願日】2022-06-22
(62)【分割の表示】P 2019047272の分割
【原出願日】2019-03-14
(31)【優先権主張番号】18164335.4
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508117514
【氏名又は名称】ブラウン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フュアースト
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト アイヒホルン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ルートヴィヒ ヴォルフガング フュエルグラーベ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネ ユリアン ヴァインカウフ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ナイヤー
(57)【要約】
【課題】パーソナルケア装置、特に電気シェーバーのようなスキントリートメント装置に関する。
【解決手段】パーソナルケア装置は、作業ヘッドを皮膚表面に沿って移動させるためのハンドルに取り付けられた作業ヘッドを備える。作業ヘッドは作業ヘッドの皮膚接触輪郭を画定する少なくとも1つの作業ツールを含み、少なくとも1つの作業ツールは、作業ヘッドの皮膚接触輪郭がハンドルに対して枢動するのを可能にする支持構造体によって、皮膚接触圧下で当該ハンドルに対して移動可能であり、作業ツールを付勢するための付勢装置が設けられている。調節アクチュエータを含む調節装置は、電子制御ユニットによって制御されて、パーソナルケア処理を行うときのパーソナルケア装置の操作中に、少なくとも1つの検出器によって検出された作業ヘッドの少なくとも1つの皮膚接触圧に応じて、作業ヘッドの枢動剛性及び/又は浮上剛性を調節する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルケア装置であって、前記パーソナルケア装置は、
作業ヘッドであって、前記作業ヘッドを皮膚表面に沿って移動させるためのハンドルに取り付けられた、作業ヘッドを備え、前記作業ヘッドは、前記作業ヘッドの皮膚接触輪郭を画定する少なくとも1つの作業ツールを含み、
前記少なくとも1つの作業ツールは、前記作業ヘッドの皮膚接触輪郭が前記ハンドルに対して枢動するのを可能にする支持構造体によって、皮膚接触圧下で前記ハンドルに対して移動可能であり、前記作業ツール及び/若しくは前記作業ヘッドを付勢するために、並びに/又は前記作業ツール及び/若しくは前記作業ヘッドの枢動運動抵抗を増加させるために、付勢装置が設けられており、電子制御ユニット(80)によって制御される調節アクチュエータ(AA)を含む調節装置が、前記作業ヘッド(2)の枢動剛性を調節するために提供されることを特徴とする、パーソナルケア装置。
【請求項2】
前記電子制御ユニット(80)によって制御される前記調節アクチュエータ(AA)を含む前記調節装置は、パーソナルケア処理を行うときの前記パーソナルケア装置の操作中に、少なくとも1つの検出器(41)によって検出された少なくとも1つの特徴的な処理パラメータに応じて前記作業ヘッド(2)の少なくとも一部の枢動剛性を調節するために提供される、請求項1に記載のパーソナルケア装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの検出器は、前記皮膚に対する前記作業ヘッド(2)の圧力を検出するための皮膚圧力センサーを含み、前記制御ユニット(80)は、皮膚接触圧を示す前記皮膚圧力センサーの信号に応じて前記調節アクチュエータ(AA)を制御するように構成されている、請求項2に記載のパーソナルケア装置。
【請求項4】
前記制御ユニット(80)は、前記検出器の信号が皮膚接触圧の増加を示すときに前記作業ヘッド(2)の少なくとも一部の枢動剛性を増大させるように、かつ/又は前記検出器の信号が皮膚接触圧の低下を示すときに枢動剛性を低下させるように、前記調節アクチュエータ(AA)を作動させるように構成されている、請求項1~3の少なくとも一項に記載のパーソナルケア装置。
【請求項5】
前記制御ユニット(80)は、パーソナルケアセッション中にリアルタイムで検出された皮膚接触圧に応じて前記作業ヘッド(2)の少なくとも一部の枢動剛性を連続的に調節するために、前記調節アクチュエータ(AA)を連続的に作動させるように構成されている、請求項3又は4に記載のパーソナルケア装置。
【請求項6】
前記制御ユニット(80)は、パーソナルケアセッション中にリアルタイムで検出された皮膚接触圧に応じて前記作業ヘッド(2)の少なくとも一部の枢動剛性を段階的に調節するために、前記調節アクチュエータ(AA)を段階的に作動させるように構成されている、請求項3又は4に記載のパーソナルケア装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの作業ツール(4)は、作業ヘッドフレーム(12)に対して移動可能に支持され、前記作業ヘッドフレーム(12)は、前記ハンドル(3)に対して前記少なくとも1つの枢動軸(8)の周りで枢動可能に支持され、前記付勢装置(10)は、前記作業ツール(4)を前記作業ヘッドフレーム(12)に対して付勢するための少なくとも1つの付勢要素(10a)、及び/又は前記作業ヘッドフレーム(12)を前記ハンドル(3)に対して前記少なくとも1つの枢動軸(8)の周りで付勢するための少なくとも1つの更なる付勢要素(10b)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のパーソナルケア装置。
【請求項8】
前記調節アクチュエータ(AA)は、前記付勢装置(10)と連結されて、前記付勢要素(10a、10b)の少なくとも1つによって与えられる付勢力及び/又は付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを調節する、請求項7に記載のパーソナルケア装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの検出器(41)は、前記付勢要素(10a)の付勢力及び/又は抵抗力/トルクに抗した、前記作業ヘッドフレーム(12)に対する前記少なくとも1つの作業ツールの変位を検出するための変位センサーを含み、前記制御ユニット(80)は、前記作業ヘッドフレーム(12)及び/又は前記作業ヘッドの他の部分を、前記ハンドル(3)に対して及び/又は前記作業ヘッドの他の部分に対して付勢するために、前記変位センサーの信号に応じて前記調節アクチュエータ(AA)を作動させ、他方の前記付勢要素(10b)の付勢力及び/又は付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを調節するべく構成されている、請求項7又は8に記載のパーソナルケア装置。
【請求項10】
前記制御ユニット(80)は、前記作業ヘッドフレーム(12)に対する前記作業ツール(4)の潜りが増加したときに、前記作業ヘッドフレーム(12)の前記ハンドル(3)に対する及び/又は前記作業ヘッドの他の部分に対する枢動剛性を増大させるように、かつ/又は前記作業ヘッドフレーム(12)に対する前記作業ツール(4)の潜りが減少したときに、前記作業ヘッドフレーム(12)の前記ハンドル(3)に対する及び/又は前記作業ヘッドの他の部分に対する枢動剛性を低下させるように構成されている、請求項1~9の少なくとも一項に記載のパーソナルケア装置。
【請求項11】
前記作業ヘッド(2)の少なくとも一部の枢動剛性を調節するための前記調節アクチュエータ(AA)に加えて、前記作業ヘッド(2)の前記少なくとも一部が前記ハンドル(3)に対して及び/又は前記作業ヘッドの他の部分に対して枢動するのを完全に防止するために、前記作業ヘッド(2)の前記少なくとも一部を前記ハンドル(3)及び/又は前記作業ヘッドの他の部分に対してロックするためのロック装置が提供される、請求項1~10のいずれか一項に記載のパーソナルケア装置。
【請求項12】
前記調節装置は、
-前記作業ヘッドと使用者の身体との接触を検出するためのタッチ検出器、
-前記パーソナルケア装置の速度及び/又は加速度を検出するための速度及び/又は加速度検出器、
-3次元、2次元、又は1次元で前記パーソナルケア装置の回転及び/又は向きを検出するための回転検出器、
-ストローク速度及び/又はストローク長を検出するためのストローク速度及び/又はストローク長検出器、
-処理される身体部分の所定領域にわたるストローク数を検出するためのストローク密度検出器、
-鏡からの前記パーソナルケア装置及び/又は前記使用者の距離を検出するための距離検出器、
-前記パーソナルケア処理の一時停止を検出するための検出器、
-使用者の顔に対する前記作業ヘッドの角度の変化、及び/又は使用者の顔に対する前記ハンドルの角度の変化、及び/又は使用者の手若しくは腕に対するハンドルの角度の変化を検出するための角度センサー、
-前記ハンドル上の指などのグリップの種類の変化を検出するためのグリップ検出器、 -前記シェーバーヘッドと前記使用者の顔との接触領域、及び/又は前記接触領域の変化を検出するための接触検出器、
-毛髪密度及び/又は毛髪長を検出するための毛髪検出器、
-気湿及び/又は気温を検出するための環境検出器、
-前記ハンドルに対する前記作業ヘッドの直線及び/又は回転変位を検出するための変位検出器、
-前記パーソナルケア装置の切断動作を検出するための切断動作検出器、
-中及び/又は長毛髪トリマーの位置を検出するためのトリマー位置検出器、
-前記皮膚の水分を検出するための皮膚水分検出器、
-前記皮膚の油分を検出するための皮膚油分検出器、
-前記パーソナルケア装置と前記皮膚との間に加えられた力を示す前記皮膚接触力を検出するための皮膚接触力検出器、のうちの少なくとも1つの信号に応じて、前記パーソナルケア処理を行うために前記作業ヘッド及び/又は前記作業ツールの枢動剛性及び/又は潜り剛性を調節するように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のパーソナルケア装置。
【請求項13】
環境検出器が、気温、気湿、皮膚油分、及び皮膚水分の群から選択される環境パラメータを検出するために提供され、前記制御ユニットは、前記検出された環境パラメータに応じて、前記作業ヘッド(3)の少なくとも一部の前記枢動剛性を調節するべく構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のパーソナルケア装置。
【請求項14】
感度を調節するための感度コントローラが提供され、この感度コントローラを用いた前記感度の調節とともに、前記パーソナルケア処理を行うときの前記パーソナルケア装置の操作中に少なくとも1つの検出器(41)によって検出された少なくとも1つの特徴的な処理パラメータに応じて前記作業ヘッド(2)の少なくとも一部の枢動剛性及び/又は浮上剛性の程度が調節される、請求項1~13のいずれか一項に記載のパーソナルケア装置。
【請求項15】
前記付勢装置は、更に、皮膚接触圧の非存在下で前記作業ツールを中立位置に付勢するためにも提供される、請求項1~14のいずれか一項に記載のパーソナルケア装置。
【請求項16】
電子制御ユニット(80)によって制御される前記調節アクチュエータ(AA)を含む前記調節装置は、浮上剛性も調節するために提供される、請求項15に記載のパーソナルケア装置。
【請求項17】
パーソナルケア装置を制御するための方法であって、
-パーソナルケア処理を体表面に施しているときの前記パーソナルケア装置の操作中に皮膚接触圧センサー(41)を用いて、使用者の皮膚に対する作業ヘッド(2)の皮膚接触圧を検出する工程、を含み、
前記パーソナルケア処理中に電子制御ユニット(80)によって制御される調節アクチュエータAAによって、前記検出された皮膚接触圧に応じて、前記パーソナルケア装置のハンドルに対する及び/又は前記作業ヘッド(3)の他の部分に対する前記作業ヘッド(2)の少なくとも一部の枢動剛性を調節することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルケア装置、特に電気シェーバーのような除毛装置に関し、当該パーソナルケア装置は、作業ヘッドであって、作業ヘッドを皮膚表面に沿って移動させるためのハンドルに取り付けられた、作業ヘッドを備える。当該作業ヘッドは、作業ヘッドの皮膚接触輪郭(skin contact contour)を画定する少なくとも1つの作業ツールを含み、当該少なくとも1つの作業ツールは、作業ヘッドの皮膚接触輪郭がハンドルに対して枢動するのを可能にする支持構造体によって、皮膚接触圧下で当該ハンドルに対して移動可能であり、当該作業ツールを付勢するための付勢装置が設けられている。本発明はまた、そのようなパーソナルケア装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱毛器、髭用トリマー及び電気シェーバーなどの除毛装置は、通常、電気駆動ユニットによって、カッター要素がせん断フォイル下で往復運動する振動様式で駆動される、1つ又は複数のカッター要素を有し、このようなカッター要素又はアンダーカッターは細長い形状を有している場合があり、それらの長手方向軸線に沿って往復運動することができる。他の型の電気シェーバーでは、振動様式又は連続様式で駆動され得る回転カッター要素を用いている。当該電気駆動ユニットは、電気モーター又は電気式リニアモーターを含み得、駆動ユニットは、カッター要素にモーターの駆動運動を伝達するための細長い駆動送信器などの要素を有する駆動トレインを含み得、モーターは、シェーバーのハンドル部分内で、又は代替的にそのシェーバーヘッド中で受容され得る。
【0003】
そのようなシェーバーは、ほとんどの使用者が毎日のように使用しているが、シェーバーを実際に完全に操作する及び取り扱うことは困難である場合がある。異なる使用者の異なる好み及び習慣により、シェーバーは、多くの場合、その最適範囲で動作されない。例えば、たとえ作業ヘッドがいくつかの角度変位を補償するように枢動可能に支持されるとしても、カッター要素を有する作業ヘッドは、あまりに強く皮膚に対して押し付けられ得るか、又は、シェーバーは、皮膚との全面接触から作業ヘッドのせん断フォイルを妨げる配向で保持され得る。
【0004】
例えば、シェーバーヘッドを移動可能に停止して、カッター要素がそれらの位置及び向きを自己調節することを可能にして、より良好に皮膚輪郭に従うことは、シェーバーの分野において公知である。より具体的には、ハンドルが「誤った」向きに保持されているときでも、シェーバーヘッドの作業面が皮膚の輪郭に全面接触したままであり得るように、シェーバーヘッドは、ハンドルの長手方向軸線を横断して延びる1つ又は2つ又はそれ以上の枢軸の周りで枢動するように、枢動可能に支持され得る。更に、カッター要素は、シェーバーヘッドを皮膚に押し付けている過剰な力を補償する又は過剰な力に反応するように、浮上する又はシェーバーヘッド構造体内に潜る(dive)ことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の基礎をなす目的は、先行技術の不利な点の少なくとも1つを回避する、及び/又は既存の解決策を更に発展させる、改善されたパーソナルケア装置、特に、シェーバー又は脱毛器などの除毛装置を提供することである。本発明の基礎をなすより具体的な目的は、使用者にパーソナルケア装置の改善された自己調節を提供することである。
【0006】
本発明の基礎をなす更なる目的は、複雑な皮膚の輪郭に対する作業ヘッドの作業ツールの広範囲にわたる容易な自己適合とともに皮膚の低刺激処理を可能にしながらも、徹底した処理を達成するために作業ヘッドを皮膚部分に押し付けたときに良好な制御感を提供することである。
【0007】
上記の目的の少なくとも1つは、請求項1の特徴によって達成される。有利な実施形態は従属請求項の特徴によって与えられる。
【0008】
上記の目的の少なくとも1つを達成するために、ハンドルに対する作業ヘッドの皮膚接触輪郭の剛性を調節することが示唆されており、調節アクチュエータは、使用者の挙動に応じて、パーソナルケア装置に、より積極的で性能重視の操作を与える一方で、他方ではより快適でより滑らかな操作を与えるように、作業ヘッドのサスペンションの枢動剛性及び/若しくは浮上剛性、並びに/又は枢動運動及び/又は浮上運動に対する作業ヘッドの抵抗及び/若しくは故障を調節するよう構成されている。一態様によると、調節アクチュエータを含む調節装置は、電子制御ユニットによって制御されて、パーソナルケア処理を行うときのパーソナルケア装置の取り扱い中に少なくとも1つの検出器(以下でより詳細に説明される)によって検出された少なくとも1つの特徴的な処理パラメータに応じて、作業ヘッドの枢動剛性及び/又は浮上剛性を調節する。
【0009】
より詳細には、調節機構は、作業ヘッドの皮膚接触輪郭をハンドルに対して枢動させる及び/又はその中立位置から逸脱する作業ヘッドの皮膚接触輪郭の特定の枢動角度を達成するのに必要なトルク及び/又は力を変動させることができる。枢動剛性のこのような調節は、処理セッション中に検出器によって検出された少なくとも1つの特徴的な処理パラメータに応じて、制御ユニットによって自動的に制御されることができる。当該検出器は、そのような特徴的な処理パラメータを示す信号を当該制御ユニットに提供する。具体的には、作業ヘッドの枢動剛性及び/又は浮上剛性は、作業ヘッドの皮膚接触輪郭が使用者の皮膚に対して押し付けられる皮膚圧力に応じて調節されてもよく、そのような皮膚圧力は、好適な皮膚圧力センサーによって検出され得る。シェーバーの使用者が、例えば、特に密着した剃毛を望む場合、使用者は、通常、シェーバーヘッドを皮膚に対してより強く押し付ける。使用者はそのとき、シェーバーヘッドがあまりにも容易に枢動するという印象を受ける場合がある。このため、調節機構は、増加した皮膚圧力を検出したときに、枢動剛性を増加させることができる。
【0010】
これに対して、皮膚に対する作業ヘッドの圧力が低下していることを皮膚圧力センサーが検出した場合、及び/又は使用者がシェーバーヘッドを皮膚に対してほんのわずかだけ押し当てた場合、制御ユニットは、そのような低い皮膚接触圧を示すセンサー信号に応じて調節アクチュエータを作動させることによって、作業ツール及び/又は作業ヘッドサスペンションの剛性を低下させて、作業ヘッドの皮膚接触輪郭のより容易な枢動を可能にすることができる。このため、使用者は、作業ヘッドがより可撓性である印象を受け、かつ、皮膚をやさしく処理するときに様々な皮膚輪郭及び皮膚表面の向きにより容易に適応して、皮層刺激を回避することができる。作業ツール又は作業ヘッドの「剛性」又は「枢動剛性」とは、本明細書及び本明細書の上文及び下文において、作業ツール又は作業ヘッドが移動又は旋回又は枢動することができる抵抗の程度を意味し、かつ該抵抗の程度を指す。シェーバーのハンドルに対して及び/又は他の切断ユニットに対して可動性抵抗又は無抵抗である電動乾式シェーバーの作業ツールが、シェーバー装置の作業ヘッド内に提供される場合、この剛性は、作業ヘッドの装置ハンドルに対して及び/又は他の部品(例えば、1つの毛髪切断ユニット)に対して調節されてもよい。あるいは、この剛性は、例えばシェーバー作業ヘッド一式、又は作業ヘッドのいくつかのユニット/毛髪カッターを有する翼部の、シェーバーのハンドルに対する、又は更なる切断ユニット/毛髪カッターを備えた作業ヘッドの他の翼部に対する可動性抵抗又は無抵抗によって調節されてもよい。
【0011】
パーソナルケア装置が使用者の取り扱いの変化に対する迅速な応答を提供するように、皮膚圧力を示す当該センサー信号は、現在の処理セッション中に発生したリアルタイムデータ及び皮膚圧力の変動を表示することができる。
【0012】
枢動運動及び/又は浮上運動に対する作業ヘッドの剛性及び/又は作業ツールの剛性を所望通りに変化させるために、調節アクチュエータは、可動作業ヘッドの可動性抵抗を調節するために付勢力及び/又はトルクを与える付勢装置の設定を変更することができる。必ずしもではないが、好ましくは、付勢装置の付勢力はまた、作業ヘッドの可動要素及び/又は作業ヘッド一式を、作業ヘッドの皮膚接触輪郭が中立位置にある中立位置へと付勢する。より詳細には、調節アクチュエータは、付勢装置を調節して、増大した剛性を実現するために、増大した付勢力及び/又は増大した付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを与えることができ、あるいはその一方で、低下した剛性を実現するために、付勢力及び/又は付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを低下させることができる。これは、例えば付勢装置を起動停止にすることによって達成することができる作業ヘッドのゼロ剛性又は最大旋回又は可動性も含むことができる。また、当該付勢装置又は枢動抵抗制コントローラは、例えば、作業ツール及び/又は作業ヘッドの回転/枢動/運動に対する抵抗を生じさせる制動装置若しくはダンパー又は他の装置を含んでいてもよい。
【0013】
例えば、当該付勢装置は、作業ヘッド及び/又は作業ツールにばね力を加える少なくとも1つのばね要素を含んでいてもよく、作業ツールはこのバネ力に抵抗して運動し、皮膚接触輪郭を枢動させることができ、調節アクチュエータは、かかるばねの事前張力を増減させて作業ヘッド構造体の剛性を調節することができる。
【0014】
そのようなばね装置に加えて、あるいはその代わりに、作業ヘッドは、ハンドルに対する作業ヘッドの運動及び/又は作業ヘッドフレームに対する作業ツールの運動を減衰させるために、少なくとも1つのダンパーを含んでいてもよく、かかるダンパーは、より小さな減衰作用又はより大きな減衰作用を与えるように調節アクチュエータによって調節されて、作業ヘッドの剛性を増減させることができる。
【0015】
そのようなばね装置に加えて、あるいはその代わりに、作業ヘッドは、ハンドルに対する作業ヘッドの運動及び/又は作業ヘッドフレームに対する作業ツールの運動を減衰させる又は制動するために、少なくとも1つの制動装置を含んでいてもよく、かかる制動装置は、より小さな制動作用又はより大きな制動作用を与えるように調節アクチュエータによって調節されて、作業ヘッドの剛性を増減させることができる。
【0016】
また、パーソナルケア装置、具体的にはシェーバー又は脱毛器のような除毛装置を制御する、改善された方法を提供することも目的である。
【0017】
この目的は、請求項17の特徴によって達成される。
【0018】
これら及び他の優位点は、図面及び可能な例に言及する以下の説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ハンドル及びそれに枢動可能に接続されるシェーバーヘッドを備える電気シェーバーに関するパーソナルケア装置の斜視図であり、シェーバーヘッドの枢動剛性、並びにカッター要素の駆動又は浮上抵抗は、使用者挙動に応じて調節され得る。
図2】一対の短毛カッター及びそれらの間のトリマーを示す、図1のシェーバーの作業ヘッドの概略側面図である。
図3】当該一対の短毛カッター及びそれらの間の当該トリマーを示す、図2の作業ヘッドの概略上面図である。
図4】剃圧を決定するためにカッター要素の個別の潜りを検出するための検出器を示す、図1図3のシェーバーの概略側面図である。
図5】更なる実施形態による、剃圧を判定するためにカッター要素の個々の潜りを検出するための検出器を有する、図4のシェーバーの概略正面図である。
図6】枢動剛性を調節するための調節機構と、潜り又は浮上を検出するための検出器とを示す、図4に類似したシェーバーの概略側面図である。
図7】枢動剛性を調節するための調節機構と、潜り又は浮上を検出するための検出器とを示す、図5に類似したシェーバーの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
複雑な皮膚の輪郭に対する作業ヘッドの作業ツールの広範囲にわたる容易な自己適合とともに皮膚の低刺激処理を達成しながらも、徹底した処理を達成するために作業ヘッドを皮膚部分に押し付けたときに良好な制御感を提供するために、ハンドルに対する作業ヘッドの皮膚接触輪郭の剛性を調節することが示唆されており、調節アクチュエータは、使用者の挙動に応じて、パーソナルケア装置により積極的で性能重視な取り扱いを与える一方で、他方ではより快適でより滑らかな操作を与えるように、少なくとも1つの作業ツールによって画定される作業ヘッドの皮膚接触輪郭の枢動剛性及び/又は浮動剛性を調節するように構成されている。一態様によると、調節アクチュエータを含む調節装置は、電子制御ユニットによって制御されて、パーソナルケア処理を行うときのパーソナルケア装置の操作中に少なくとも1つの検出器によって検出された少なくとも1つの特徴的な処理パラメータに応じて、作業ヘッドの枢動剛性及び/又は浮上剛性を調節する。
【0021】
枢動剛性のこのような調節は、処理セッション中に検出器によって検出された少なくとも1つの特徴的な処理パラメータに応じて、制御ユニットによって自動的に制御されることができる。当該検出器は、そのような特徴的な処理パラメータを示すリアルタイム信号を当該制御ユニットに提供する。具体的には、作業ヘッドの枢動剛性は、作業ヘッド及び/又はその処理ツールが使用者の皮膚に対して押し付けられる皮膚圧力に応じて調節されてもよく、そのような皮膚圧力は、好適な皮膚圧力センサーによって検出されてもよい。シェーバーの使用者が、例えば、特に密着した剃毛を望む場合、使用者は、通常、シェーバーヘッドを皮膚に対してより強く押し付ける。使用者はそのとき、シェーバーヘッドがあまりにも容易に枢動するという印象を受ける場合がある。このため、調節機構は、増加した皮膚圧力を検出したときに、枢動剛性を増加させることができる。
【0022】
これに対して、皮膚に対する作業ヘッドの圧力が低下していることを皮膚圧力センサーが検出した場合、及び/又は使用者がシェーバーヘッドを皮膚に対してほんのわずかだけ押し当てた場合、制御ユニットは、そのような低い皮膚接触圧を示すセンサー信号に応じて調節アクチュエータを作動させることによって、作業ツール及び/又は作業ヘッドサスペンションの剛性を低下させて、作業ヘッドの皮膚接触輪郭のより容易な枢動を可能にすることができる。このため、使用者は、作業ヘッドがより可撓性である印象を受け、かつ、皮膚をやさしく処理するときに様々な皮膚輪郭及び皮膚表面の向きにより容易に適応して、皮層刺激を回避することができる。
【0023】
パーソナルケア装置が使用者の取り扱いの変化に対する迅速な応答を提供するように、皮膚圧力を示す当該センサー信号は、現在の処理セッション中に発生したリアルタイムデータ及び皮膚圧力の変動を表示することができる。
【0024】
そのような皮膚圧力検出器は、容量性若しくは抵抗性タッチセンサー又は他の力測定センサーを備えていてもよく、こうしたセンサーは、皮膚表面と作業ヘッド及び/又はシェーバーヘッドの切断部との間の皮膚接触力、並びに/又は各切断要素に加わる力及び異なる要素にわたる分布を検出するために使用され得る。加えて又は代替的に、1次元、2次元、又は3次元で構成され得る力センサーなどの少なくとも1つの検出器は、使用者が皮膚に対して装置を押し付ける結果として生じる方向を検出することができる。加えて又は代替的に、ホールセンサーなどの少なくとも1つの検出器は、外力により互いに対して相対的に装置の部品の運動を検出し得る。加えて又は代替的に、モーター電流ベースの検出システムなどの少なくとも1つの検出器は、皮膚接触力を判定してもよい。
【0025】
枢動運動及び/又は浮上運動に対する作業ヘッドの剛性及び/又は作業ツールの剛性を所望通りに変化させるために、調節アクチュエータは、可動作業ヘッドの可動性抵抗を調節するために付勢力及び/又は付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを与える付勢装置の設定を変更することができる。必ずしもではないが、好ましくは、付勢装置の付勢力はまた、作業ヘッドの可動要素を、作業ヘッドの皮膚接触輪郭が中立位置又は所定位置にある中立位置あるいは所定位置へと付勢する。より詳細には、調節アクチュエータは、付勢装置を調節して、増大した剛性を実現するために、増大した付勢力及び/又は増大した付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを与えることができ、あるいはその一方で、低下した剛性を実現するために、付勢力及び/又は付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを低下させることができる。これらの調整は、作業ヘッド全体に、作業ヘッド上に設けられた他の部品に対して1つの作業ツール(又は毛髪切断ユニット)だけに、あるいは少なくとも1つの作業ツール又は毛髪切断ユニットに作用することができる。1つ又は複数の作業ツール/毛髪カッターのそのような群は、例えば、1つの翼部内に1つ又は複数の毛髪カッターを有し、また他の翼部内に1つ又は複数の毛髪カッターを有する翼構造によって実装することができ、各翼部は他方に対してかつハンドルに対して枢動可能に支持されることができる。
【0026】
例えば、当該付勢装置は、作業ヘッド及び/又は作業ツールにばね力を加える少なくとも1つのばね要素を含んでいてもよく、作業ツールはこのバネ力に抵抗して運動し、皮膚接触輪郭を枢動させることができ、調節アクチュエータは、かかるばねの事前張力を増減させて作業ヘッド構造体の剛性を調節することができる。
【0027】
そのようなばね装置に加えて、あるいはその代わりに、作業ヘッドは、ハンドルに対する作業ヘッドの運動及び/又は作業ヘッドフレームに対する作業ツールの運動を減衰させる又は制動するために、少なくとも1つのダンパー又は制動装置を含んでいてもよく、かかるダンパー又は制動装置は、より小さな減衰/制動作用又はより大きな減衰/制動作用を与えるように調節アクチュエータによって調節されて、作業ヘッドの剛性を増減させることができる。
【0028】
支持構造体の運動学は、異なる構成を有することができる。例えば、1つの枢動軸のみが存在してもよく、それを中心に作業ヘッド全体がハンドルに対して枢動可能である。代替的に、支持構造体は多軸枢動を可能にしてもよく、その場合、旋回軸及び傾斜軸は、互いに対して実質的に垂直に延び、かつ作業ヘッドの皮膚接触輪郭に対する包絡面に対して平行に(作業ヘッドが中立位置にあると考えた場合)延びる。
【0029】
加えて又は代替的に、少なくとも1つの除毛ツールは、作業ヘッドフレームに対して及び/又は他の除毛ツール(設けられている場合)に対して枢動及び潜る又は浮上することができる。
【0030】
より詳細には、少なくとも1つの除毛ツールが異なるレベルで枢動することが可能であり得る。更なる態様によると、少なくとも1つの除毛ツールは、作業ヘッドフレーム又は作業ヘッドフレームの一部に対して移動可能に支持され、当該作業ヘッドフレームは、ハンドルに対して枢動可能に支持されて皮膚接触輪郭をハンドルに対して枢動させることができ、支持構造体及び付勢装置は、作業ヘッドフレームが1つ又は複数の枢軸の周りでハンドルに対して枢動するのを可能にし、かつ、皮膚接触輪郭が、少なくとも1つの作業ツールを作業ヘッドフレームに対して動かすことによって上記の枢軸に平行な1つ又は複数の枢軸の周りで当該作業ヘッドフレームに対して枢動するのを可能にするように構成される。作業ヘッド及びその作業ツールの多自由度により、作業ヘッド及び/又はその作業ツールに加わる力に対する異なる枢動応答が存在し得る。
【0031】
付勢装置は、作業ツールを作業ヘッドフレームに対して付勢するための別個の付勢要素を含み得、かかる付勢要素は、作業ヘッドフレームに対する作業ツールの潜り及び/又は浮上を回避しようとする、かつ/又は作業ツールが作業ヘッドフレームに対して最大高さを有する中立位置にそのツールを付勢しようとする。
【0032】
一方、付勢装置は、作業ヘッドフレームをハンドルに対して中立角度位置に付勢するための付勢要素を含むことができる。
【0033】
調節アクチュエータは、当該付勢要素の一方、又は両方の付勢要素の設定を変更し、作業ヘッドフレームに加わるハンドルに対する付勢力及び付勢トルク及び/又は抵抗力/トルク、並びに作業ツールに加わる当該作業フレームに対する付勢力及び付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを調節し、作業ヘッドフレームの枢動剛性及び作業ツールの浮上剛性を増減させ、それによって、皮膚接触輪郭の枢動剛性を調節することができる。
【0034】
枢動剛性及び/又は浮上剛性は、処理される身体部分に沿ってパーソナルケア装置を移動させる速度、ストロークの周波数、重力場に対するパーソナルケア装置の角度方向、ハンドルを把持する指の位置、及び処理される身体に対する作業ヘッドの位置を含むパラメータの群から選択される1つ又は複数の他の特徴的な処理パラメータに応じて、処理セッション中に調節アクチュエータによって調節されてもよい。
【0035】
例えば、使用者がパーソナルケア装置を、処理される身体部分にわたって高速で及び/又は高いストローク周波数で移動させるとき、使用者は作業ヘッドをより迅速に枢動させる必要があるので枢動剛性はあまり必要でなくなる。そのため、調節機構は、対応するセンサーによって検出される速度及び/又はストローク周波数に応じて枢動剛性を低下させてもよい。
【0036】
加えて又は代替的に、例えば、使用者が首部分を剃毛しているときに、使用者が装置に適合していることを示す、ハンドル上の指把持位置の変化が検出される、並びに/又はハンドルの角度方向及び/若しくはハンドルの角度回転の変化が検出されるとき、調節機構は、枢動剛性を増加させ得る。典型的には、首領域を剃毛するとき、使用者は、シェーバーの前側が使用者から離れた位置を指すように、ハンドルの長手方向軸を中心にシェーバーを回転させて、指把持位置を変化させる。更に、使用者は、次いで、シェーバーヘッドの旋回軸と平行に軸を中心にシェーバーを回転させる。そのような把持位置の検出に基づいて、調節機構は、枢動剛性を増加させることができる。
【0037】
加えて又は代替的に、枢動剛性及び/又は浮上剛性は、環境パラメータなどの他のパラメータに応じて調節されてもよい。例えば、少なくとも1つの環境検出器は、気湿及び気温を検出し得、枢動剛性及び/又は浮上剛性及び/又はカッター速度及び/又はカッター周波数は、検出された気湿及び/又は気温に応じて調節され得る。
【0038】
代替的に又は加えて、枢動剛性は、好適な生理的検出器によって検出され得る使用者の生理的パラメータに応じて調節され得る。例えば、剃毛される皮膚部分上の毛髪の密度及び/又は長さは、カメラなどの視覚又は光学センサーによって検出され得る。更に、上記作業パラメータのうちの1つを調節するために、皮膚水分又は皮膚油分を検出してもよい。
【0039】
また、調節機構は、より大きな又はより小さな最大角度変位を可能にするために、作業ヘッドの角度枢動範囲を調節するように構成されてもよい。最大角度変位のそのような調節は、対応する検出器によって検出された又はユーザー入力(例えば、シェーバーに直接又はスマートフォンなどの外部装置を介しての入力)を介して調節されることができる上記のパラメータの任意の1つ又は複数に応じて、処理セッション中に自動で変更することができる。最大利用可能枢動角度がより小さいとき、パーソナルケア装置は、使用者により積極的な性能重視感を与える一方で、より快適な、より平滑な感覚は、より大きな最大枢動角度でもたらされる。
【0040】
例えば、皮膚接触輪郭がハンドルに対して枢動可能である枢動角度を調節するために、当該角度αが+/-35°未満かつ+/-2°超である第1の設定と、当該角度αが+/-25°未満かつ+/-2°超である第2の設定とを有し、当該第2の設定は当該第1の設定と異なる、枢動範囲調節装置が提供されてもよい。従来技術のシェーバーにおいて、シェーバーヘッドがハンドルに対して枢動し得ないようにシェーバーヘッドをロックすることが知られている。これは、本発明の除毛装置の作業ヘッドに対しても可能である。しかしながら、そのようなロックに加えて、上記の枢動範囲調節手段は、最大枢動角度が異なる値(それぞれの値は0と異なる)を有するように設定することができる。換言すれば、最大枢動角度は、大きな値を取らせるように、かつより小さな値ではあるが0ではない値を有するように設定することができる。例えば、当該第1の設定では、角度αは+/-30°未満かつ+/-20°超であってもよく、当該第2の設定では、角度αは+/-20°未満かつ+/-2超であってもよい。
【0041】
枢動範囲調節装置は、最大枢動角度を特定の範囲にわたって連続的に調節することができるように構成されてもよい。例えば、最大枢動角度を+/-2°~+/-20°の範囲にわたって調節することができる場合、連続調節とは、-2°~+20°の任意の値を最大許容枢動角度に設定することができることを意味する。そのような連続調節により、使用者のニーズに細かく応えることができる。加えて又は代替的に、枢動範囲調節装置は、最大枢動角度を段階的に調節できるように構成されてもよく、そのような段階的な調節は、例えば、+/-5°~+/-10°~+/-20°の少なくとも3段階を含んでもよい。そのような段階的な調節により、より迅速な設定が可能となり、枢動範囲の変化のより迅速な認識につがなる。+/-2°として上で述べられた(このパラグラフ及びこのパラグラフの1つ上のパラグラフで)最小調節範囲は、代わりに、+/-3°又は+/-4°又は+/-5°とすることもできる。
【0042】
これら及び他の特徴は図面に示す例からより明らかになる。図1から分かるように、パーソナルケア装置は、ハンドル3を含む電気シェーバー1として構成されることができ、ハンドル3の内部には、電動モーターと電子制御ユニットとを含む駆動ユニットが収容されていてもよい。このようなハンドル3は、長手方向軸線3lに沿って延びる、細長い略骨形状の構成を有することができる。
【0043】
オンオフスイッチ又は電源スイッチは、ハンドル3に配置され得る。そのような電源スイッチによって、駆動ユニットを起動し、再び電源を切ることができる。シェーバー1は、ハンドル3上に(例えばその前側に)設けられ得るディスプレイを更に含むことができる。このようなディスプレイは、個々の設定の好みを入力することができるタッチ表示装置であってもよく、その場合、シェーバー1は、例えば、タッチボタンが電源スイッチの近傍に位置付けられるという点から、更なる入力要素を含むことができる。
【0044】
作業ヘッド2は、当該ハンドル3の一端において当該ハンドル3に取り付けられてもよく、作業ヘッド2は、当該ハンドル3において移動可能に支持されることができる。例えば、作業ヘッド2をハンドル3において支持する支持構造体11は、ハンドル3に対する作業ヘッド2全体の単軸又は多軸枢動及び/又は旋回運動を可能にすることができる。
【0045】
このような基本的な可動性に加えて、作業ヘッド2は、ある種の内部運動を可能にすることができる。より詳細は、作業ヘッド2は、作業ヘッドの基部構造体に対して移動可能に支持された一対の短毛カッター5及び6並びにトリマー7を含むことができる複数の除毛ツール4を含む。
【0046】
より詳細には、作業ヘッド2は、ハンドル3に対する支持フレーム12、ひいては作業ヘッド2全体の枢動運動を可能にする少なくとも1つの枢動軸8の周りでハンドル3に枢動可能に支持され得る、支持フレーム又は作業ヘッドフレーム12を含むことができる。
【0047】
当該枢動軸8は、短毛カッター4及び5を相互に分離する第1の平面に対して平行に、かつ、ハンドル3の上記の長手方向軸線3lに対して実質的に垂直に延在する第2の平面に対して平行に延びていてよい。
【0048】
図3から分かるように、上記の短毛カッター5及び6、並びに上記のトリマー7は、細長い実質的にブロック状の形状及び/又は細長い実質的に矩形の形状を有することができる。短毛カッター5及び6は、アンダーカッター及び/又はカッターブレードブロックがその下で往復運動することができる、表面が湾曲した可撓性メッシュスクリーンを含むことができる。一方、トリマー7は、互いに対して往復運動する一対の鎌状フィンガバー及び/又は切断ブレード付きアンダーカッターがその下で往復運動することができる、比較的大きな開口を有する開口付き箔を含んでいてもよい。
【0049】
短毛カッター及びトリマーが上記のように細長い形状であることから、上記の短毛カッター5及び6並びにトリマー7の上面によって形成された作業ヘッド2の皮膚接触面は、帯状構成を有することができ、また全体として、上から見たときに矩形構成を有することができる。
【0050】
短毛カッター5及び6並びにトリマー7の観点から見た当該除毛ツール4は、作業ヘッドフレーム12に対して浮上でき、したがって、少なくとも皮膚接触輪郭9が図2に示すように中立位置又は初期位置にあると考えた場合に、実質的に皮膚接触輪郭9に対して垂直な方向に沿って作業ヘッドツール内に潜ることができる。各除毛ツール4は個別に浮上又は潜ることができるので、皮膚接触輪郭9は、除毛ツール4の一方が潜り、他方が潜っていないときに枢動することができる。具体的には、非対称の皮膚圧力を受けた場合、短毛カッター5の一方は潜るのに対して、他方は潜らず、皮膚接触輪郭9は、上記の枢動軸8に略平行な軸線の周りで枢動する。
【0051】
図3から分かるように、多軸枢動が可能であり、第2の枢動軸14は上記の第1の枢動軸8に対して実質的に垂直に延びていてもよい。かかる第2の枢動軸14の周りの枢動も、異なるレベルで行われてよい。すなわち、支持構造体11は、作業ヘッドフレーム12をかかる第2の軸14の周りで枢動させることができてもよい、かつ/又は除毛ツール4は、除毛ツール4がかかる第2の軸14の周りで作業ヘッドフレーム12に対して枢動するように、作業ヘッドフレーム12に対して非対称的に浮上及び/又は潜ってもよい。
【0052】
作業ヘッド2及びその除毛ツール4の多自由度により、作業ヘッド2及び/又はその除毛ツール4に加わる力に対する異なる枢動応答が存在し得る。
【0053】
付勢装置10、より詳細には、除毛ツール4及び/又は作業ヘッドフレーム12に加わる付勢力及び/又は付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクに応じて、除毛ツール4の一方に加わる力は、除毛ツール4を駆動させることにより、作業ヘッドフレーム12の枢動及び/又は皮膚接触輪郭9の枢動を生じさせることができる。
【0054】
当該付勢装置10は、除毛ツール4を作業ヘッドフレーム12に対して付勢するための別個の付勢要素10aを含み得、かかる付勢要素10aは、作業ヘッドフレーム12に対する除毛ツール4の潜り及び/又は浮上を回避しようとする、かつ/又は除毛ツール4が作業ヘッドフレーム12に対して最大高さを有する中立位置にそのツール4を付勢しようとする。一方、付勢装置10は、作業ヘッドフレーム12をハンドル3に対して中立角度位置に付勢するための付勢要素10bを含むことができる。
【0055】
調節装置は、詳述するように、シェーバーヘッド2の枢動剛性を変化させることができる。そのような調節装置は、電気モーター又は電気主体、又は磁気主体などのエネルギーの他の形態を使用する他の種類の主体などの1つ又は複数の調節アクチュエータAAを含み得る。そのような調節アクチュエータは、制御ユニット80によって制御され得、そのような制御ユニット80は、電子制御ユニット、特に、メモリ内に記憶されたソフトウェアに基づいて作動するマイクロコントローラを含み得る。装置は、検出されたパラメータに基づいて、異なる方法で調節され得る。より具体的には、制御ユニット80の制御アルゴリズムは、算出ルールに従って、並びに/又は当該電子制御ユニット80内で、例えば、マイクロコントローラがアクセスしたメモリデバイス内で実装された曲線及び/若しくはマップに基づいて、調節アクチュエータAAを制御するために、制御出力信号を設定し得る。
【0056】
そのような調節アクチュエータAAは、当該付勢装置の付勢力及び/又は付勢トルク及び/又は抵抗力/トルクを増大及び/又は減少させるように、上記の付勢装置10の設定を調節することができ、その場合、アクチュエータAAは、作業ヘッドフレームに対する作業ツールの付勢及びハンドル3に対する作業ヘッドフレームの付勢を調節するように、上記の付勢要素10a及び10bの一方のみ、又は付勢要素10a及び10bの両方を調節することができる。
【0057】
調節アクチュエータAAは、シェービングセッション中のリアルタイムデータとしての皮膚接触圧検出に応じて、制御ユニット80によって制御されることができる。
【0058】
より具体的には、作業ヘッド2を有するシェーバー1は、圧力センサー41と、運動の方向及び速度を検出するセンサー43とを備えている。1つ又は複数の切断要素4は、ばね上げされており、小さな磁石103(図4及び図5参照)を担持している。剃圧が高くなるほど、切断要素4は、より押し下げされる。この運動は、各々の切断要素の下でホールセンサー104を介して追跡される。ホールセンサーは、シェーバーの内部PCB上の電子制御ユニット80に接続される。加速度計は、好ましくは装置の3つの軸全て又は少なくとも1つ又は複数の軸の加速を検出するために、PCB上に実装されてもよい。
【0059】
電子制御ユニット80は、ホールセンサー104及び加速度計の信号を受信する。数学関数は、信号を圧力及び運動データに変換する。例えば、消費者は、典型的なものよりも高い剃圧を加え始め、切断要素4は、シェービングヘッド3内により深く移動している。あるいは、移動は、より速くかつより短い。電子制御ユニット80は、ホールセンサー104及び加速度計からこれらの信号を受信して、それを圧力及び移動値に変換する。これらの値は、制御ユニット80内でリアルタイムで値の所与のマトリックスと比較されて、アクチュエータAAに対する割り当てられた信号を生成するために評価される。
【0060】
基本的に、非対称の剃圧がシェービングシステムに加えられるとき(短毛カッター5の一方に対する圧力F1が、他方に対するF2よりも大きいことを意味する)、トルクが発生し、シェービングヘッド2は、顔の輪郭上で整列するように、その軸(8)を中心に揺動する。作業ヘッド2の反力は最小限に抑えられて、低圧が加えられるときでさえシェービングシステムの良好な適合を確実にする。上記の付勢装置10は、ヘッド2の下端部とシェーバー本体3との間に実装された引っ張りばね112を含むことができる(図6及び図7参照)。ばね112は、ヘッド2を揺動させる力を設定する。ばねがより強く設定されるほど、ヘッドは、より激しく揺動し得る。
【0061】
アクチュエータAAは、シェーバー本体に取り付けられて、ばねの端部を保持する。それは、ばねの長さを変化させることによって、ばね112の予荷重を設定し得る。中立アクチュエータ位置では、ばねは、最低予荷重を有し、揺動ヘッドは、非常に容易に揺動し得る。最大作動において、ばねはぴんと引っ張られ、シェービングヘッドは、移動するためにより多くの剃圧を必要とする。消費者は、より剛性かつ硬質なシステムを感じる。アクチュエータは、ばね荷重を最低作動位置と最高作動位置との間で無段に設定し得る。
【0062】
また更なる実施形態によると、使用者は、アルゴリズムに追加データを提供するために、例えば、スマートフォン若しくは別の装置を介して、又は直接シェーバー内に、直接データを入力することを要求され得る。これは、例えば購入後の1回の入力であり得るか、又は定期的に要求され得、そのような入力は、例えば、音声及び音声認識によって実行され得る。次に、この入力を用いて付勢手段の設定を調節し、作業ヘッドの所望の剛性を設定することができる。
【0063】
更なる態様によると、高い気湿は、皮膚と剃毛フォイル/トリマーとの間の摩擦力が増加されることを意味する粘着性の皮膚に繋がる。これは、シェーバーが交互に皮膚の上方で滑りやすく、皮膚に密着するという「スティックスリップ効果」と呼ばれる現象に繋がる。これは、剃毛をより困難かつ不快にする。使用者は、これに様々な方法で反応し、典型的には、使用する剃圧を低減させることによって製品環境状況に自らの挙動を適合し得る。しかしながら、剃圧の一般的な低下は複数の原因を有し得、この状況では、制御ユニット80がこの特定の状況に適したシェーバー調節(スティックスリップに起因するヘッドの制御されない旋回を低減するために作業ヘッド2の枢動剛性を増大させるなど)を特定することができるように、追加の気湿センサーが使用されてもよい。別の言い方をすれば、アクチュエータAAは、湿度検出器によって高い気湿が検出されたときにばね112の付勢力を増加させることができる。
【0064】
任意に、調節装置は、
-作業ヘッドと使用者の身体との接触を検出するためのタッチ検出器、
-パーソナルケア装置の速度及び/又は加速度を検出するための速度及び/又は加速度検出器、
-3次元、1次元、又は2次元でパーソナルケア装置の回転及び/又は向きを検出するための回転検出器、
-ストローク速度及び/又はストローク長を検出するためのストローク速度及び/又はストローク長検出器、
-処理される身体部分の所定領域にわたるストローク数を検出するためのストローク密度検出器、
-鏡からのパーソナルケア装置及び/又は使用者の距離を検出するための距離検出器、 -パーソナルケア処理の一時停止を検出するための検出器、
-使用者の顔に対する作業ヘッドの角度の変化、及び/又は使用者の顔に対するハンドルの角度の変化、及び/又は使用者の手若しくは腕に対するハンドルの角度の変化を検出するための角度センサー、
-ハンドル上の指などのグリップの種類の変化を検出するためのグリップ検出器、
-シェーバーヘッドと使用者の顔との接触領域、及び/又は接触領域の変化を検出するための接触検出器、
-毛髪密度及び/又は毛髪長を検出するための毛髪検出器、
-気湿及び/又は気温を検出するための環境検出器、
-ハンドルに対する作業ヘッドの直線及び/又は回転変位を検出するための変位検出器、
-前記パーソナルケア装置の切断動作を検出するための切断動作検出器、
-中及び/又は長毛髪トリマーの位置を検出するためのトリマー位置検出器、
-皮膚の水分を検出するための皮膚水分検出器、
-皮膚の油分を検出するための皮膚油分検出器、
-パーソナルケア装置と皮膚との間に加えられた力を示す皮膚接触力を検出するための皮膚接触力検出器、のうちの少なくとも1つの信号に応じて、パーソナルケア処理を行うために作業ヘッド及び/又は作業ツールの枢動剛性及び/又は潜り剛性を調節するように構成されている。
【0065】
更に任意追加的に、感度を調節するための感度コントローラが提供され、この感度コントローラを用いた当該感度の調節とともに、パーソナルケア処理を行うときのパーソナルケア装置の操作中に少なくとも1つの検出器41によって検出された少なくとも1つの特徴的な処理パラメータに応じて作業ヘッド2の少なくとも一部の枢動剛性及び/又は浮上剛性の程度が調節される。当該感度は、装置が皮膚に対して押し付けられる、測定された皮膚接触力に応じて調節される、並びに/又は当該感度は、既定の皮膚接触力に応じて、及び/若しくは枢動剛性が変化する閾値に応じて調節される。感度調節は、自動であってもよく、あるいはシェーバーにおける、又はシェーバーが無線接続される外部装置(例えばスマートフォンとして)におけるユーザー入力によるものであってもよい。
【0066】
毛髪カッター、短毛カッター、トリマー、切断ユニットなどの特徴は、上記において交換可能に考えられてよい点に留意されたい。更に、線形振動作業ツールとの関連において本明細書に記述されている全てのものは、回転式運動作業ツールにも適用可能である。
【0067】
上記において、特定の角度値°に関する+/-値°は、完全な角度範囲が2*値°であることを意味し、したがって、例えば+/-20°は、2*20°=40°の角度範囲を指す点に更に留意されたい。更に、+/-値°は、必ずしも範囲の中央の範囲の中点に関するとは限らず、作業ヘッドの中点又は中立/所定位置はまた、作業ヘッド又は作業ツールが範囲内で枢動する限りにおいて、範囲の外側最端又は範囲内のいずれの位置であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】