(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118241
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】検査測定値の正確性を向上させる方法及びそのための添加剤
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
G01N33/531 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102008
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2018034365の分割
【原出願日】2018-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 正昭
(72)【発明者】
【氏名】石井 明
(57)【要約】
【課題】撹拌棒を介した反応液、洗浄液の次検体への持込みを抑制することにより検査測定値の正確性を向上させる方法であって、汎用の自動分析装置に適用可能な方法及びそのための添加剤を提供すること。
【解決手段】検査測定値の正確性を向上させる方法は、撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際に、試薬と検体の混合物中にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を共存させる。撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際の検査測定値の正確性向上添加剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体から成る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際に、試薬と検体の混合物中にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を共存させる、検査測定値の正確性を向上させる方法。
【請求項2】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を、前記試薬に添加し、該試薬と前記検体を混合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試薬が、第1試薬及び第2試薬から構成される、請求項1記又は2載の方法。
【請求項4】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、前記第1試薬に含有される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量8,000~17,000であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が75~95モル%である請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量10,800であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるもの、重量平均分子量13,333であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が85モル%であるもの、及び重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるものから選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の方法。
【請求項7】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)から選ばれる少なくとも1種である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体から成る、撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際の検査測定値の正確性向上添加剤。
【請求項9】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量8,000~17,000であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が75~95モル%である請求項8記載の添加剤。
【請求項10】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量10,800であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるもの、重量平均分子量13,333であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が85モル%であるもの、重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるものから選ばれる少なくとも1種である請求項9記載の添加剤。
【請求項11】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)から選ばれる少なくとも1種である請求項8~10のいずれか1項に記載の添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際における、検査測定値の正確性を向上させる方法及びそのための添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置としては、例えば、血清等のサンプルに所望の試薬を混合して反応させた反応液を分析対象とし、その吸光度を測定することで分析を行う装置が知られている。この種の分析装置は、サンプルおよび試薬を反応容器に注入する機構と、反応容器内のサンプルおよび試薬を撹拌する機構と、反応中または反応が終了したサンプルの物性を分析する機構等を備えて構成されている。
【0003】
分析装置の分野では、サンプルおよび試薬の微量化が大きな技術課題となっている。すなわち、分析項目が増えていくのに伴い、単項目に割くことのできるサンプル量が少量になっていることや、サンプル自体が多量に準備できない乳幼児の血液検査といった少量サンプルの分析が行われている。また、分析内容が高度化するにつれて、高価な試薬が一般的に利用されるようになり、コストの面からも、試薬の微量化が要望されている。このようなサンプルおよび試薬の微量化は、反応容器の小形化を進め、また反応容器の小形化は新たな技術課題を生んでいる。例えば、検体・試薬分注機構や反応液撹拌機構では反応液や洗浄液の次検体への持ち込みの液量比が増大し、分析結果に影響を及ぼしやすくなってきたことは課題の一つである。
【0004】
一般的な撹拌機構は、へら状の撹拌棒を反応容器中の被撹拌液に浸漬し、回転させることにより行っている。撹拌棒は洗浄液で洗浄された後、次の反応容器中の被撹拌液に浸漬するが、この際に撹拌棒に洗浄液や前の被攪拌液が水滴として付着して残った場合、次の反応容器中に洗浄液や前の被攪拌液が付着したり、被撹拌液と混ざり合うことにより、余分な液体が持ち込まれる。また、撹拌棒が回転する際に反応容器内壁に被撹拌液が飛び散り付着することで反応容器中の反応液量が少なくなったり、測定時に反応容器内壁に付着した被撹拌液が反応液に垂れ落ちて反応液に持ち込みされることで正確に測定できなくなる。
【0005】
このような撹拌棒では反応液や洗浄液の次検体への持込みを完全に無くする事は難しい。そのため、特許文献1では被撹拌液に超音波を照射して撹拌する技術が開示されており、また特許文献2では被撹拌液に空気を噴射することで撹拌する技術が開示されている。このような被撹拌液と物理的に接触せずに撹拌する方法は、原理的に撹拌棒を介した反応液,洗浄液の次検体への持込みを無くすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-242177号公報
【特許文献2】特開2004-340791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
撹拌棒を使用しない撹拌方法は上記のメリットはあるが、撹拌棒を用いる撹拌に比べコストが高くなる懸念がある。また、汎用の自動分析装置に使用できない場合は、検査現場は新しい自動分析装置を導入する必要があり、負担が増大する。
【0008】
本発明の目的は、撹拌棒を介した反応液、洗浄液の次検体への持込みを抑制することにより検査測定値の正確性を向上させる方法であって、汎用の自動分析装置に適用可能な方法及びそのための添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究をおこなったところ、試薬にポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体を入れることで反応液、洗浄液の次検体へ持ち込みによる測定値の誤差を防ぐことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1) 撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際に、試薬と検体の混合物中にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を共存させる、検査測定値の正確性を向上させる方法。
(2) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を、前記試薬に添加し、該試薬と前記検体を混合する、(1)記載の方法。
(3) 前記試薬が、第1試薬及び第2試薬から構成される、(1)又は(2)記載の方法。
(4) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、前記第1試薬に含有される、(3)記載の方法。
(5) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量8,000~17,000であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が75~95モル%である(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量10,800であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるもの、重量平均分子量13,333であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が85モル%であるもの、及び重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるものから選ばれる少なくとも1種である(5)記載の方法。
(7) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)から選ばれる少なくとも1種である(1)~(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体から成る、撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際の検査測定値の正確性向上添加剤。
(9) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量8,000~17,000であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が75~95モル%である(8)記載の添加剤。
(10) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量10,800であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるもの、重量平均分子量13,333であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が85モル%であるもの、重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるものから選ばれる少なくとも1種である(9)記載の添加剤。
(11) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)から選ばれる少なくとも1種である(8)~(10)のいずれか1項に記載の添加剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、生体試料中あるいは測定系外から撹拌棒を介して持ち込まれる液量を減少させ、ひいては、非目的成分の量を減少させてその影響を抑制し、生体試料中の目的成分の正確な測定が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体は、ポリオキシエチレン部分とポリオキシプロピレン部分を含むブロック共重合体であり、好ましくは、疎水性のポリオキシプロピレンブロックポリマーが、2つの親水性のポリオキシエチレンブロックポリマーにより挟まれた構造より成り、非イオン性界面活性剤として挙動する。
【0013】
本発明において使用するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を含有する市販品の具体的な例としては、一般に「プルロニック」の名称で販売されている非イオン性界面活性剤のうち「F」で括られる製品を挙げることができる。また「エパン」の名称で販売されている非イオン性界面活性剤、「プロノン」の名称で販売されている非イオン性界面活性剤も使用することができる。
【0014】
なお、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の成分としての表記方法は数種類存在し、各表記間で相互に同一性、類似性を確認できるが、同一名称の市販品であっても各表記間での数値が完全に一致しなかったり、ポリオキシエチレン(「EO」と記載することがある)やポリオキシプロピレン(「PO」と記載することがある)の含量モル%から分子全体の分子量を計算しようとした場合などにも表示されている数値と完全に一致しないことがある。しかしながら、これらは重合性高分子に特有のものであり当業者は当然に理解しうる。
【0015】
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体は、EO含有量(モル%)を横軸、PPG分子量を縦軸として区分けする「プルロニックグリッド」と呼ばれる区分け法があり、市販品のカタログ等にも記載されており、これらを参照して本発明のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を選抜することができる。
【0016】
本発明においては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の重量平均分子量が8,000~17,000であり、かつ分子中のEO含量が75~95モル%であるものが好適であり、また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の重量平均分子量が10,800であり、かつ分子中のEO含量が80モル%(市販品名:プルロニックF88)であるか、重量平均分子量が13,333であり、かつ分子中のEO含量が85モル%(市販品名:エパン785)であるか、重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のEO含量が80モル%(市販品名:プルロニックF108)であるか、重量平均分子量8,000であり、かつ分子中のEO含量が85モル%(市販品名:エパン485)であるものが好適であり、また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)(市販品名:プルロニックF88)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)(市販品名:エパン785)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)(市販品名:プルロニックF108)であるものが好適である。
【0017】
本発明で用いるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体を用いた自動分析装置用試薬の調製方法について、臨床検査の分野で繁用されるラテックス粒子を用いる試薬を例として以下説明する。臨床検査の分野で繁用されるラテックス粒子を用いる試薬は、ラテックス粒子を含有しない試薬(第1試薬)及びラテックス粒子を含有する試薬(第2試薬)の二試薬系で構成されている場合が多い。そしてこの構成を採用する場合、第1試薬は、第2試薬が行う抗原抗体反応に好適な測定環境(例えば、目的成分の希釈や抗原エピトープの露出など)を準備する役割を担っている場合が多い。
【0018】
本発明で用いるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体は、第1試薬あるいは第2試薬のいずれに添加してもよいが、上述の二試薬の構成の場合には、撹拌棒が最初に試薬に接触し撹拌する際には、持ち込み現象を防ぐことが望ましいので、少なくとも第1試薬に添加するのが好ましい。
【0019】
本発明で用いるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体の濃度は、例えば、ラテックス免疫凝集反応時の終濃度で規定することができる。該濃度としては、0.0001重量%~1重量%が好適であり、好ましくは0.001重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.3重量%である。
【0020】
本発明で用いるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体は、自動分析装置用試薬において、測定系としての所望の測定感度、測定範囲、再現性、あるいは試薬の安定性などが得られることを勘案したうえで、実用的に最適な種類、濃度、試薬の調製方法を選択し適宜利用することができる。
【0021】
本発明の方法は、自動分析装置における撹拌棒に付着する液量を減少させることにより検査測定値の正確性を向上させる方法であるから、撹拌棒を用いる自動分析装置による全ての検査に適用可能である。これらのうちでも、免疫測定法、特に体液中の病原体や、病原体に対する抗体の検査に好適に利用可能である。
【0022】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、濃度は、特に断りがない限り重量基準である。
【0023】
参考例1
(1)試薬の調製
HELICOBACTER PYLORI の NATIVE 抗原を用いて、以下の通りに免疫凝集法による測定試薬を調製した。
i)HELICOBACTER PYLORI の NATIVE 抗原を平均粒径300nmのポリスチレンラテックス浮遊液1mLに対し5.2mg担持させてなる感作粒子を、緩衝液(MOPS、pH7)に0.15%となるように懸濁し、ラテックス浮遊液を調製した。
ii)MES 緩衝液 (pH6.0)に BSAを2%になるように添加し、第1試薬とした。
【0024】
(2)自動分析装置による測定
自動分析装置は日立ハイテクノロジーズ社7180形日立自動分析装置によりエンドポイント法で自動測定を行った。
【0025】
前述の試薬を用いて、コントロールサンプルの測定をそれぞれ連続2回行った。検体溶液3.5μLに第1試薬200μLを添加し、この混合液を37℃で撹拌混合した。5分間放置後、上記で調製したラテックス浮遊液40μLを添加し、更に37℃で撹拌混合した。約5分間の凝集反応を吸光度変化量として測定した。
【0026】
1回目の測定時、検体に第1試薬を添加撹拌後、その撹拌混合に用いられた撹拌棒を乾燥した紙ウェスでふき取り、その後、続けて2回目の測定を行った。1回目測定値と2回目測定値の割合を算出した。また、検体、第1試薬とラテックス浮遊液の撹拌混合に用いられた、撹拌棒はふき取りを実施しなかった。結果を下記表1に示す。
【0027】
参考例2
(1)試薬の調製
参考例1と同様に操作し、ラテックス浮遊液、第1試薬を調整した。
【0028】
(2)自動分析装置による測定
参考例1と同様に操作し、測定を行った。1回目の測定時、検体と第1試薬にラテックス浮遊液を添加撹拌後、その撹拌混合に用いられた撹拌棒を乾燥した紙ウェスでふき取り、その後、続けて2回目の測定を行った。1回目測定値と2回目測定値の割合を算出した。また、検体と第1試薬の撹拌混合に用いられた、撹拌棒はふき取りを実施しなかった。結果を下記表1に示す。
【0029】
参考例3
(1)試薬の調製
参考例1と同様に操作し、ラテックス浮遊液、第1試薬を調整した。
【0030】
(2)自動分析装置による測定
参考例1と同様に操作し、測定を行った。1回目の測定時、検体に第1試薬を添加撹拌後、その撹拌混合に用いられた撹拌棒を乾燥した紙ウェスでふき取った。さらに、その後、検体と第1試薬にラテックス浮遊液を添加撹拌後、その撹拌混合に用いられた撹拌棒を乾燥した紙ウェスでふき取り、その後、続けて2回目の測定を行った。1回目測定値と2回目測定値の割合を算出した。結果を下記表1に示す。
【0031】
参考例4
(1)試薬の調製
参考例1と同様に操作し、ラテックス浮遊液、第1試薬を調整した。
【0032】
(2)自動分析装置による測定
参考例1と同様に操作し、測定を行った。
【0033】
撹拌棒のふき取りを実施せず、連続2回測定を行った。1回目測定値と2回目測定値の割合を算出した。結果を下記表1に示す。
【0034】
【0035】
表1より、撹拌棒をふき取ることにより、2回目の測定値の低下が改善されることが示された。また、ラテックス試薬添加後、混合に用いた撹拌棒を、ふき取った場合の改善効果が大きいことが示された。
【0036】
実施例1、比較例1~4
(1)試薬の調製
HELICOBACTER PYLORI の NATIVE 抗原を用いて、以下の通りに免疫凝集法による測定試薬を調製した。
【0037】
i)HELICOBACTER PYLORI の NATIVE 抗原を平均粒径300nmのポリスチレンラテックス浮遊液1mLに対し5.2mg担持させてなる感作粒子を、緩衝液(MOPS、pH7)に0.15%となるように懸濁し、ラテックス浮遊液を調製した。
ii)緩衝液(MES、BSA、pH6.0)に、各種界面活性剤を添加し、下記の試薬A~Dを調製した。比較例として、界面活性剤成分を添加しない、試薬Eを調製した。
【0038】
【表2】
A~D:非イオン性界面活性剤(A:「プロノン208」(日油)、B:「エマルゲン707」(花王)、C:「Tween80」(和光純薬)D:「エマルゲンB66」(花王)をそれぞれ使用
E:緩衝剤のみ
【0039】
(2)自動分析装置による測定
自動分析装置は日立ハイテクノロジーズ社7180形日立自動分析装置によりエンドポイント法で自動測定を行った。
【0040】
前述の試薬A~Eの緩衝液を用いて、コントロールサンプル(40U/mL)の測定をそれぞれ連続5回行った。検体溶液3.5μLに試薬A~Hの緩衝液200μLを添加し、この混合液を37℃で撹拌混合した。5分間放置後、上記で調製したラテックス浮遊液40μLを添加し、更に37℃で撹拌混合した。約5分間の凝集反応を吸光度変化量として測定し、1回目測定値と5回目測定値の割合を算出した。また、併せて、比較例1と実施例の測定値の比較を行った。結果を下記表2に示す。
【0041】
【0042】
表3より、界面活性剤を添加することで、測定値の低下現象が改善されることが示された。また、界面活性剤を添加していない試薬の測定値(1回目測定値が正しい値)とポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物を添加した試薬の測定値に差が少ないことから、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物は、測定値低下を防ぎつつ且つ感度に影響を与えないことが示された。これに対し、比較例1~3は、5回目測定値/1回目測定値(%)の比は、実施例1と同様に優れているものの、比較例4(現在行われている従来法)の1回目の測定値(正しい測定値)との乖離が大きく、界面活性剤により測定値の正確性が損なわれていることがわかる。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌棒を有する自動分析装置でラテックス免疫凝集法により検体を検査する際に、試薬と検体の混合物中にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を共存させて撹拌棒を介した反応液、洗浄液の次検体への持込みを抑制することを含み、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の、ラテックス免疫凝集反応時の終濃度が0.0001重量%~1重量%(ただし、0.05重量%以下の範囲を除く)である、検査測定値の正確性を向上させる方法。
【請求項2】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を、前記試薬に添加し、該試薬と前記検体を混合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試薬が、第1試薬及び第2試薬から構成される、請求項1記又は2載の方法。
【請求項4】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、前記第1試薬に含有される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量8,000~17,000であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が75~95モル%である請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量10,800であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるもの、重量平均分子量13,333であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が85モル%であるもの、及び重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるものから選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の方法。
【請求項7】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)から選ばれる少なくとも1種である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体から成る、請求項1記載の方法により撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際の検査測定値の正確性向上添加剤。
【請求項9】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量8,000~17,000であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が75~95モル%である請求項8記載の添加剤。
【請求項10】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量10,800であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるもの、重量平均分子量13,333であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が85モル%であるもの、重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるものから選ばれる少なくとも1種である請求項9記載の添加剤。
【請求項11】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)から選ばれる少なくとも1種である請求項8~10のいずれか1項に記載の添加剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1) 撹拌棒を有する自動分析装置でラテックス免疫凝集法により検体を検査する際に、試薬と検体の混合物中にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を共存させて撹拌棒を介した反応液、洗浄液の次検体への持込みを抑制することを含み、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の、ラテックス免疫凝集反応時の終濃度が0.0001重量%~1重量%(ただし、0.05重量%以下の範囲を除く)である、検査測定値の正確性を向上させる方法。
(2) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を、前記試薬に添加し、該試薬と前記検体を混合する、(1)記載の方法。
(3) 前記試薬が、第1試薬及び第2試薬から構成される、(1)又は(2)記載の方法。
(4) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、前記第1試薬に含有される、(3)記載の方法。
(5) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量8,000~17,000であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が75~95モル%である(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量10,800であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるもの、重量平均分子量13,333であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が85モル%であるもの、及び重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるものから選ばれる少なくとも1種である(5)記載の方法。
(7) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)から選ばれる少なくとも1種である(1)~(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体から成る、(1)記載の方法により撹拌棒を有する自動分析装置で検体を検査する際の検査測定値の正確性向上添加剤。
(9) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量8,000~17,000であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が75~95モル%である(8)記載の添加剤。
(10) 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、重量平均分子量10,800であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるもの、重量平均分子量13,333であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が85モル%であるもの、重量平均分子量15,500であり、かつ分子中のエチレンオキシド含量が80モル%であるものから選ばれる少なくとも1種である(9)記載の添加剤。
(11) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(40)、ポリオキシエチレン(260)ポリオキシプロピレングリコール(35)、ポリオキシエチレン(280)ポリオキシプロピレングリコール(55)から選ばれる少なくとも1種である(8)~(10)のいずれか1項に記載の添加剤。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】