(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118244
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】重症度評価装置及びモデル生成装置
(51)【国際特許分類】
G16H 10/40 20180101AFI20220804BHJP
G16H 50/00 20180101ALI20220804BHJP
G16H 30/00 20180101ALI20220804BHJP
G16H 30/20 20180101ALI20220804BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20220804BHJP
【FI】
G16H10/40
G16H50/00
G16H30/00
G16H30/20
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102347
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2019194633の分割
【原出願日】2019-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】519383751
【氏名又は名称】岡田 直己
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直己
(57)【要約】
【課題】最適な医療資源の分配を可能にすることで最適化された医療の提供を可能にする重症度評価装置を提供する。
【解決手段】モデル生成装置10は、CT画像に対して身体部位の疾患の度合いを示す疾患情報をラベル付けした教師データ90を取得する教師データ取得部31と、教師データ90を用いて、CT画像を入力すると疾患情報を出力する疾患情報モデル50を機械学習により生成するモデル生成部32とを備える。重症度評価装置20は、患者のCT画像60を取得する測定データ取得部41と、疾患情報モデル50を用いてCT画像60からそれぞれの疾患情報70を取得する疾患情報取得部42と、疾患情報取得部42により取得された疾患情報70に基づいて患者の重症度75を算出する重症度算出部43とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の身体の状態を測定した測定データに対して、該測定データに含まれる身体部位の疾患に関する情報を示す疾患情報をラベル付けした教師データを取得する教師データ取得部と、
前記教師データ取得部により取得された前記教師データを用いて、人間の身体の状態を測定した測定データを入力すると該測定データに含まれる身体部位の疾患情報を出力する疾患情報モデルを機械学習により生成する疾患情報モデル生成部と
を備える、モデル生成装置。
【請求項2】
人間の身体の状態を測定した測定データに対して、該測定データに含まれる身体部位の分類をラベル付けした教師データを取得する教師データ取得部と、
前記教師データ取得部により取得された前記教師データを用いて、人間の身体の状態を測定した測定データを入力すると該測定データに含まれる身体部位の分類を出力する部位分類モデルを機械学習により生成する部位分類モデル生成部と
を備える、モデル生成装置。
【請求項3】
人間の身体の状態を測定した測定データに対して、該測定データに含まれる身体部位の分類と該身体部位の疾患に関する情報を示す疾患情報とをラベル付けした教師データを取得する教師データ取得部と、
前記教師データ取得部により取得された前記教師データを用いて、人間の身体の状態を測定した測定データ及び該測定データに含まれる身体部位の分類を入力すると該測定データに含まれる身体部位の疾患情報を出力する疾患情報モデルを機械学習により生成する疾患情報モデル生成部と
を備える、モデル生成装置。
【請求項4】
前記測定データは、CT画像、MRI画像、三次元計測データ、採血データ、生理学的検査データ、レントゲン検査データ、エコー検査データ、及び生命兆候を示すデータのうち少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のモデル生成装置。
【請求項5】
患者の身体の状態を測定した複数の測定データを取得する測定データ取得部と、
人間の身体の状態を測定した測定データを入力すると該測定データに含まれる身体部位の疾患に関する情報を示す疾患情報を出力する疾患情報モデルを用いて、前記測定データ取得部により取得された前記複数の測定データからそれぞれの測定データに含まれる身体部位の疾患情報を取得する疾患情報取得部と、
前記疾患情報取得部により取得された前記疾患情報に基づいて前記患者の重症度を算出する重症度算出部と
を備える、重症度評価装置。
【請求項6】
患者の身体の状態を測定した複数の測定データを取得する測定データ取得部と、
人間の身体の状態を測定した測定データを入力すると該測定データに含まれる身体部位の分類を出力する部位分類モデルを用いて、前記測定データ取得部により取得された前記複数の測定データからそれぞれに含まれる身体部位の分類を取得する部位分類取得部と、
人間の身体の状態を測定した測定データ及び該測定データに含まれる身体部位の分類を入力すると該測定データに含まれる身体部位の疾患情報を出力する疾患情報モデルを用いて、前記測定データ取得部により取得された前記複数の測定データと前記部位分類取得部により取得された身体部位の分類とからそれぞれの測定データに含まれる身体部位の疾患情報を取得する疾患情報取得部と、
前記疾患情報取得部により取得された前記疾患情報に基づいて前記患者の重症度を算出する重症度算出部と
を備える、重症度評価装置。
【請求項7】
前記重症度算出部は、前記身体部位の分類ごとに前記患者の重症度を算出するように構成される、請求項6に記載の重症度評価装置。
【請求項8】
前記重症度算出部は、身体所見、他の測定データ、及び患者の疾患原因に関するデータのうち少なくとも1つをさらに考慮して前記患者の重症度を算出するように構成される、請求項5から7のいずれか一項に記載の重症度評価装置。
【請求項9】
前記測定データは、CT画像、MRI画像、三次元計測データ、採血データ、生理学的検査データ、レントゲン検査データ、エコー検査データ、及び生命兆候を示すデータのうち少なくとも1つを含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の重症度評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重症度評価装置及びモデル生成装置に係り、特に救命救急が必要な患者の重症度を評価する重症度評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、日本では高齢化が急速に進んでおり、その患者数の増加に伴って医師の数が不足している。また、世界各国でも医師不足が叫ばれている。特に、救命救急科は、年間600万件以上の救急搬送及び時間外診療を担う、国民にとって不可欠なインフラとなっているが、救命救急医療は、極めて迅速かつ的確な処置が要求されるため医師に敬遠されがちである。このため、医師不足が特に深刻であり、慢性的に時間と人員が不足している。
【0003】
そのような救命救急医療の初期診療で最も優先度が高いことは、患者の重症度を正確に評価することである。上述のように時間と人員に制限がある中では、軽症患者と重症患者とを見分けることこそが、最適な医療資源の分配を可能にし、多くの命を救うこととなるからである。しかしながら、救命救急の現場においては、次から次へと患者が搬送されてくることも多く、限られた医療資源の中では、救命救急医が多数の患者の重症度の評価を迅速かつ的確に行うことが難しい。したがって、それぞれの患者の重症度に応じた最適な救命救急医療を提供できるシステムの構築が一刻も早く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、最適な医療資源の分配を可能にすることで最適化された医療の提供を可能にするモデル生成装置及び重症度評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、最適な医療資源の分配を可能にすることで最適化された医療の提供を可能にするモデル生成装置が提供される。このモデル生成装置は、人間の身体の状態を測定した測定データに対して、該測定データに含まれる身体部位の疾患に関する情報を示す疾患情報をラベル付けした教師データを取得する教師データ取得部と、上記教師データ取得部により取得された上記教師データを用いて、人間の身体の状態を測定した測定データを入力すると該測定データに含まれる身体部位の疾患情報を出力する疾患情報モデルを機械学習により生成する疾患情報モデル生成部とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、最適な医療資源の分配を可能にすることで最適化された医療の提供を可能にするモデル生成装置が提供される。このモデル生成装置は、人間の身体の状態を測定した測定データに対して、該測定データに含まれる身体部位の分類をラベル付けした教師データを取得する教師データ取得部と、上記教師データ取得部により取得された上記教師データを用いて、人間の身体の状態を測定した測定データを入力すると該測定データに含まれる身体部位の分類を出力する部位分類モデルを機械学習により生成する部位分類モデル生成部とを備える。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、最適な医療資源の分配を可能にすることで最適化された医療の提供を可能にするモデル生成装置が提供される。このモデル生成装置は、人間の身体の状態を測定した測定データに対して、該測定データに含まれる身体部位の分類と該身体部位の疾患に関する情報を示す疾患情報とをラベル付けした教師データを取得する教師データ取得部と、上記教師データ取得部により取得された上記教師データを用いて、人間の身体の状態を測定した測定データ及び該測定データに含まれる身体部位の分類を入力すると該測定データに含まれる身体部位の疾患情報を出力する疾患情報モデルを機械学習により生成する疾患情報モデル生成部とを備える。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、最適な医療資源の分配を可能にすることで最適化された医療の提供を可能にする重症度評価装置が提供される。この重症度評価装置は、患者の身体の状態を測定した複数の測定データを取得する測定データ取得部と、人間の身体の状態を測定した測定データを入力すると該測定データに含まれる身体部位の疾患に関する情報を示す疾患情報を出力する疾患情報モデルを用いて、上記測定データ取得部により取得された上記複数の測定データからそれぞれの測定データに含まれる身体部位の疾患情報を取得する疾患情報取得部と、上記疾患情報取得部により取得された上記疾患情報に基づいて上記患者の重症度を算出する重症度算出部とを備える。
【0009】
本発明の第5の態様によれば、最適な医療資源の分配を可能にすることで最適化された医療の提供を可能にする重症度評価装置が提供される。この重症度評価装置は、患者の身体の状態を測定した複数の測定データを取得する測定データ取得部と、人間の身体の状態を測定した測定データを入力すると該測定データに含まれる身体部位の分類を出力する部位分類モデルを用いて、上記測定データ取得部により取得された上記複数の測定データからそれぞれに含まれる身体部位の分類を取得する部位分類取得部と、人間の身体の状態を測定した測定データ及び該測定データに含まれる身体部位の分類を入力すると該測定データに含まれる身体部位の疾患情報を出力する疾患情報モデルを用いて、上記測定データ取得部により取得された上記複数の測定データと上記部位分類取得部により取得された身体部位の分類とからそれぞれの測定データに含まれる身体部位の疾患情報を取得する疾患情報取得部と、上記疾患情報取得部により取得された上記疾患情報に基づいて上記患者の重症度を算出する重症度算出部とを備える。上記重症度算出部は、上記身体部位の分類ごとに上記患者の重症度を算出するように構成されていてもよい。
【0010】
本発明に係る構成によれば、測定データに含まれる身体部位の疾患情報を出力可能な疾患情報モデルを用いることによって、患者の身体の状態を測定した複数の測定データからその患者の重症度を短時間で自動的に評価することができ、患者の重症度を即座に医師に知らしめることが可能となる。これによって、医療資源をそれぞれの患者の重症度に応じて最適に分配することが可能となり、最適化された医療の提供が可能となる。
【0011】
上記重症度算出部は、身体所見、他の測定データ(例えば、血圧や体温、脈拍や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、三次元計測データ、採血データ、生理学的検査データ、レントゲン検査データ、エコー検査データ、生命兆候を示すデータなど)、及び患者の疾患原因に関するデータ(救急隊からの情報(例えば、患者の疾患原因(交通事故、転倒、火災など)や事故の発生状況、目撃情報、身体所見、及び生体情報モニタからの測定データ)、過去に担当した医師からの情報、カルテ、過去の検査結果など)のうち少なくとも1つをさらに考慮して上記患者の重症度を算出するように構成されていてもよい。また、上記測定データは、CT画像、MRI画像、三次元計測データ、採血データ、心電、呼吸機能データなどの生理学的検査データ、レントゲン検査データ、エコー検査データ、及び生命兆候を示すデータのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定データに含まれる身体部位の疾患情報を出力可能な疾患情報モデルを用いることによって、患者の身体の状態を測定した複数の測定データからその患者の重症度を短時間で自動的に評価することができ、患者の重症度を即座に医師に知らしめることが可能となる。これによって、医療資源をそれぞれの患者の重症度に応じて最適に分配することが可能となり、最適化された医療の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における重症度評価装置を含む救命救急支援システムを模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すモデル生成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す重症度評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態における重症度評価装置を含む救命救急支援システムを模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るモデル生成装置及び重症度評価装置を含む救命救急支援システムの実施形態について
図1から
図4を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図4において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図4においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態における救命救急支援システム1を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態における救命救急支援システム1は、機械学習により疾患情報モデル50を生成するモデル生成装置10と、モデル生成装置10により生成された疾患情報モデル50を用いて、患者の身体の状態を測定した測定データから患者の重症度を評価する重症度評価装置20を含むものである。
【0016】
本実施形態では、人間の身体の状態を測定した測定データとして患者の身体の内部を撮影したCT画像(コンピュータ断層撮影画像)を用いる例を説明するが、使用可能な測定データはCT画像に限られるものではなく、例えばMRI画像(磁気共鳴断層撮影画像)や三次元計測データ、採血データ、心電、呼吸機能データなどの生理学的検査データ、レントゲン検査データ、エコー検査データ、生命兆候を示すデータ、その他の検査データであってもよく、これらのデータを組み合わせて用いることも可能である。
【0017】
本実施形態における救命救急支援システム1は、患者の身体の状態を測定する測定装置80を含んでいる。本実施形態では、上述したように、測定データとしてCT画像を用いるため、エックス線を用いて患者の身体の内部の断面画像を撮影するCT装置が測定装置80として用いられる。測定データとしてMRI画像を用いる場合には、磁気共鳴現象を用いて患者の身体の内部の情報を画像化するMRI装置が測定装置80として用いられる。また、測定データとして他の検査データを用いる場合には、各々の検査における患者の身体情報を記述したデータを取得する検査装置が、測定装置80として用いられる。
【0018】
図2は、モデル生成装置10のハードウェア構成の一例を示すブロックである。このモデル生成装置10は、例えばサーバコンピュータ、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は携帯端末などにより構成され得るものであり、これらの機器を複数台組み合わせて構成されるものであってもよい。また、モデル生成装置10は、他の装置とハードウェアを共用するものであってもよい。
【0019】
図2に示すように、モデル生成装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、ハードディスクやソリッドステートディスクなどの記憶デバイス14と、ディスプレイなどの表示装置15と、キーボードやマウスなどの入力装置16と、他の機器との通信を可能にする通信インタフェイス17とを備えている。CPU11は、ROM12、RAM13、又は記憶デバイス14に保存されているプログラムを読み出し、これを実行することにより後述する様々な機能部を実現するものである。通信インタフェイス17は、他の装置との有線又は無線による通信を制御するものである。なお、表示装置15及び入力装置16をタッチパネルなどの表示機能と入力機能を有する機器により構成することもできる。
【0020】
図1に示すように、モデル生成装置10は、上述したプログラムにより実現される機能部として、後述する教師データ90を取得する教師データ取得部31と、教師データ取得部31により取得された教師データ90を用いて後述する疾患情報モデルを機械学習により生成する疾患情報モデル生成部32とを含んでいる。
【0021】
図3は、重症度評価装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。この重症度評価装置20は、例えばサーバコンピュータ、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は携帯端末などにより構成され得るものであり、これらの機器を複数台組み合わせて構成されるものであってもよい。また、重症度評価装置20は、他の装置とハードウェアを共用するものであってもよい。
【0022】
図3に示すように、重症度評価装置20は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、ハードディスクやソリッドステートディスクなどの記憶デバイス24と、ディスプレイなどの表示装置25と、キーボードやマウスなどの入力装置26と、他の機器との通信を可能にする通信インタフェイス27とを備えている。CPU21は、ROM22、RAM23、又は記憶デバイス24に保存されているプログラムを読み出し、これを実行することにより後述する様々な機能部を実現するものである。通信インタフェイス27は、他の装置との有線又は無線による通信を制御するものである。なお、表示装置25及び入力装置26をタッチパネルなどの表示機能と入力機能を有する機器により構成することもできる。
【0023】
図1に示すように、重症度評価装置20は、上述したプログラムにより実現される機能部として、測定データ取得部41、疾患情報取得部42、及び重症度算出部43を含んでいる。重症度評価装置20の測定データ取得部41は、上述した通信インタフェイス27を介して測定装置80と接続可能に構成されており、重症度評価装置20の測定データ取得部41と測定装置80とは、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、近距離通信ネットワーク、イントラネット、インターネットなどのネットワークにより互いに接続されていてもよい。
【0024】
ここで、救命救急支援システム1の運用に先立って、まず、過去の多数のCT画像に対してそれぞれのCT画像中に見られる身体部位の疾患に関する情報(例えば疾患の度合い)を疾患情報としてラベル付けし、多数のCT画像に対して疾患情報をラベル付けした教師データ90を作成する。この教師データ90は、モデル生成装置10とネットワークを介して接続された機器や記憶媒体、あるいはモデル生成装置10内の記憶デバイス14に保存される。
【0025】
教師データ90のラベル付けに用いられる疾患情報としては、例えば疾患の度合いを用いることができ、この場合の疾患の度合いは、外科的な評価においては例えば身体部位の損傷の度合いに応じて決定してもよく、内科的な評価においては例えば身体部位の病変の度合い及び炎症の大きさに応じて決定してもよい。このような疾患の度合いを示す疾患情報として、例えば「軽症」、「中等症」、「重症」の3つのラベルを用いてもよい。また、疾患情報として、例えば、患者の来院時の状態、入院後の経過(患者の予後の状態を例えば入院後の経過(軽快、脳死、死亡など)などにより分類したもの)、施された処置(手術や薬剤投与の有無、薬剤の量など)などを用いることもできる。
【0026】
モデル生成装置10の教師データ取得部31は、上述のようにして作成された教師データ90を外部の機器から通信インタフェイス17を介して取得し、あるいは、記録媒体や記憶デバイス14から読み出す。教師データ取得部31により取得された教師データ90は、疾患情報モデル生成部32における機械学習に用いられる。疾患情報モデル生成部32は、教師データ90を用いた機械学習によって、CT画像を入力するとそのCT画像中に見られる身体部位の疾患情報を出力することが可能な疾患情報モデル50を生成する。この疾患情報モデル生成部32において行われる機械学習の方法は特定のものに限られるものではなく、例えばニューラルネットワークを用いた機械学習であってもよい。疾患情報モデル生成部32で生成された疾患情報モデル50は、重症度評価装置20とネットワークを介して接続された機器や記憶媒体、あるいは重症度評価装置20内の記憶デバイス24に保存される。
【0027】
重症度評価装置20においては、このような疾患情報モデル50を用いることによって、例えば救急搬送されてきた患者の重症度を短時間で自動的に評価することが可能となる。より具体的には、患者が救急搬送されてくると、測定装置80によって患者の全身のCT画像60が撮影される。重症度評価装置20の測定データ取得部41は、これらのCT画像60を測定装置80から取得して疾患情報取得部42に送る。
【0028】
疾患情報取得部42は、モデル生成装置10により生成された疾患情報モデル50をネットワーク上の外部の機器から通信インタフェイス17を介して取得し、あるいは、記録媒体や記憶デバイス24から読み出す。そして、疾患情報取得部42は、測定装置80から取得したCT画像60をこの疾患情報モデル50に入力し、それぞれのCT画像60に対する疾患情報70を出力として得る。
【0029】
重症度評価装置20の重症度算出部43は、疾患情報取得部42により得られたそれぞれのCT画像60に対する疾患情報70に基づいて患者の総合的な重症度75を算出する。この総合的な重症度75の算出方法は、救命救急医が経験的に得たものであってもよく、特定のガイドラインや論文に基づくものであってもよい。
【0030】
また、重症度算出部43は、疾患情報取得部42により得られた疾患情報70に加えて、他の付加的な情報を考慮して重症度75を算出してもよい。このような付加的な情報としては、例えば、身体所見や他の測定データ(例えば、血圧や体温、脈拍や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、三次元計測データ、採血データ、生理学的検査データ、レントゲン検査データ、エコー検査データ、生命兆候を示すデータなど)、患者の疾患原因に関するデータ(救急隊からの情報(例えば、患者の疾患原因(交通事故、転倒、火災など)や事故の発生状況、目撃情報、身体所見及び生体情報モニタからの測定データ)、過去に担当した医師からの情報、カルテ、過去の検査結果など)が挙げられる。
【0031】
このようにして算出された患者の重症度75は、ディスプレイなどの表示装置15に表示される。これにより、救命救急医は、その患者の総合的な重症度を即座に知ることが可能となる。また、算出された重症度75から入院日数や治療費を予測してディスプレイなどの表示装置15に付加的に表示してもよい。
【0032】
このように、本実施形態の重症度評価装置20によれば、患者の全身のCT画像60からその患者の総合的な重症度75を短時間で自動的に評価することができ、救命救急医はその患者の総合的な重症度を即座に知ることが可能となる。これにより、救命救急医は、それぞれの患者に対する処置の優先順位を決定することが容易となり、医療資源をそれぞれの患者の重症度に応じて最適に分配することが可能となる。また、救命救急医が、患者の重症度の評価に時間を割くことなく、より多くの時間を患者の処置に割くことが可能となるため、より多くの人命を救うことが可能となる。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施形態における救命救急支援システム101を模式的に示すブロック図である。
図4に示すように、本実施形態における救命救急支援システム101は、機械学習により部位分類モデル151及び疾患情報モデル152を生成するモデル生成装置110と、モデル生成装置110により生成された部位分類モデル151及び疾患情報モデル152を用いて、患者の身体の状態を測定した測定データ(例えばCT画像)から患者の重症度を評価する重症度評価装置120を含んでいる。
【0034】
本実施形態におけるモデル生成装置110は、
図2に示すモデル生成装置10のハードウェア構成と同様のハードウェア構成を有しており、
図4に示すように、後述する第1の教師データ191を取得する第1の教師データ取得部131と、第1の教師データ取得部131により取得された第1の教師データ191を用いて後述する部位分類モデル151を機械学習により生成する部位分類モデル生成部132と、後述する第2の教師データ192を取得する第2の教師データ取得部133と、第2の教師データ取得部133により取得された第2の教師データ192を用いて後述する疾患情報モデル152を機械学習により生成する疾患情報モデル生成部134とを含んでいる。
【0035】
また、本実施形態における重症度評価装置120は、
図3に示す重症度評価装置20のハードウェア構成と同様のハードウェア構成を有しており、
図4に示すように、第1の実施形態の測定データ取得部41及び重症度算出部43に加えて、部位分類取得部141及び疾患情報取得部142を含んでいる。
【0036】
本実施形態において使用される第1の教師データ191は、過去の多数のCT画像に対してそれぞれのCT画像中に見られる身体部位の解剖学的分類(例えば「肝臓」、「膵臓」、「脾臓」など)をラベル付けしたものである。また、本実施形態において使用される第2の教師データ192は、過去の多数のCT画像に対してそれぞれのCT画像中に見られる身体部位の解剖学的分類とともに当該身体部位の疾患に関する情報(例えば疾患の度合い)を疾患情報としてラベル付けしたものである。
【0037】
これらの第1の教師データ191及び第2の教師データ192は、モデル生成装置110とネットワークを介して接続された機器や記憶媒体、あるいはモデル生成装置110内の記憶デバイス14(
図2参照)に保存される。なお、第1の教師データ191及び第2の教師データ192においてラベルとして用いられる身体部位の分類としては、上述のような解剖学的な分類を用いてもよいし、他の分類を用いてもよい。また、例えば、患者の身体を「頭部」、「胸部」、「腹部」などの大分類で分け、これらの大分類をさらに「骨」、「血管」などの小分類で分けるなどして、多階層化した分類を用いて第1の教師データ191及び第2の教師データ192のラベル付けを行ってもよい。
【0038】
モデル生成装置110の第1の教師データ取得部131は、第1の教師データ191を外部の機器から通信インタフェイス17を介して取得し、あるいは、記録媒体や記憶デバイス14から読み出す。第1の教師データ取得部131により取得された第1の教師データ191は、部位分類モデル生成部132における機械学習に用いられる。部位分類モデル生成部132は、第1の教師データ191を用いた機械学習によって、CT画像を入力するとそのCT画像中に見られる身体部位の分類を出力することが可能な部位分類モデル151を生成する。この部位分類モデル生成部132において行われる機械学習の方法は特定のものに限られるものではなく、例えばニューラルネットワークを用いた機械学習であってもよい。部位分類モデル生成部132で生成された部位分類モデル151は、重症度評価装置120とネットワークを介して接続された機器や記憶媒体、あるいは重症度評価装置120内の記憶デバイス24に保存される。
【0039】
モデル生成装置110の第2の教師データ取得部133は、第2の教師データ192を外部の機器から通信インタフェイス17を介して取得し、あるいは、記録媒体や記憶デバイス14から読み出す。第2の教師データ取得部133により取得された第2の教師データ192は、疾患情報モデル生成部134における機械学習に用いられる。疾患情報モデル生成部134は、第2の教師データ192を用いた機械学習によって、CT画像をそのCT画像中に見られる身体部位の分類とともに入力すると疾患情報を出力することが可能な疾患情報モデル152を生成する。この疾患情報モデル生成部134において行われる機械学習の方法は特定のものに限られるものではなく、例えばニューラルネットワークを用いた機械学習であってもよい。疾患情報モデル生成部134で生成された疾患情報モデル152は、重症度評価装置120とネットワークを介して接続された機器や記憶媒体、あるいは重症度評価装置120内の記憶デバイス24に保存される。
【0040】
重症度評価装置120においては、測定装置80によって撮影された患者の全身のCT画像60が測定データ取得部41により取得され、部位分類取得部141に送られる。この部位分類取得部141は、測定装置80から取得したCT画像60を上述した部位分類モデル151に入力し、それぞれのCT画像60に対する身体部位の分類(例えば解剖学的分類)170を出力として得る。そして、疾患情報取得部142は、測定装置80から取得したCT画像60を部位分類取得部141により得られた分類170とともに上述した疾患情報モデル152に入力し、それぞれのCT画像60に対する疾患情報70を出力として得る。重症度評価装置120の重症度算出部43は、疾患情報取得部142により得られたそれぞれのCT画像60に対する疾患情報70に基づいて患者の総合的な重症度75を算出する。
【0041】
このようにして算出された患者の重症度75は、ディスプレイなどの表示装置15に表示される。これにより、救命救急医は、その患者の総合的な重症度を即座に知ることが可能となる。この場合において、重症度評価装置120の重症度算出部43は、部位分類取得部141により得られた分類170ごとに患者の重症度75を算出するように構成されていてもよい。このように構成することで、救命救急医は、例えば救急搬送されてきた患者の重症度を身体部位の分類ごとに(換言すれば臓器ごとに)即座に知ることができる。したがって、その患者の臓器のうち処置を施すべき臓器の優先順位を決定することが容易となり、その患者の救命可能性を高めることができる。
【0042】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1 救命救急支援システム
10 モデル生成装置
20 重症度評価装置
31 教師データ取得部
32 疾患情報モデル生成部
41 測定データ取得部
42 疾患情報取得部
43 重症度算出部
50 疾患情報モデル
60 CT画像
70 疾患情報
75 重症度
80 測定装置
90 教師データ
101 救命救急支援システム
110 モデル生成装置
120 重症度評価装置
131 第1の教師データ取得部
132 部位分類モデル生成部
133 第2の教師データ取得部
134 疾患情報モデル生成部
141 部位分類取得部
142 疾患情報取得部
151 部位分類モデル
152 疾患情報モデル
191 第1の教師データ
192 第2の教師データ