(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118251
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】トンネル内消火栓設備及び消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20220804BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102487
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2022069217の分割
【原出願日】2017-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓史
(57)【要約】
【課題】道路側及び監視員通路側から消火栓装置を簡単且つ容易に取り扱うことを可能とする共に滑らかなホース引き出しを可能とする。
【解決手段】トンネル壁面に沿った監視員通路14に消火栓装置の筐体28である消火栓収納箱30が埋込み設置され、内部に泡ノズル付きのホースが収納される。筐体28には前扉32、上扉として第1上扉36及び第2上扉38が設けられ、第2上扉38は、第1上扉36の扉開口に配置されている。道路15側から操作する場合は、第2上扉38の前開きにより前扉32の係止を解除し開放して、第1ホースガイド60で仕切られた前面ホース取出口から泡ノズル付きホースを取り出す。監視員通路14の路面側から操作する場合は、第2上扉38を後開きし、第2ホースガイド80で仕切られた上面ホース取出口から泡ノズル付きのホースを取り出す。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に消火用のホースが収納された消火栓装置が、トンネル壁面に沿った監視員通路に、前部を道路側に面し上部を前記監視員通路の路面側に面して埋込設置されたトンネル内消火栓設備であって、
前記消火栓装置は、
前記前部に形成された前部開口と、
前記上部に形成された上部開口と、
前記ホースが前記前部開口から前記道路側の外部下方へ引き出される際に、前記ホースを下方でガイドする第1ホースガイドと、
前記ホースが前記上部開口から前記監視員通路の路面側の外部側方へ引き出される際に、前記ホースを側方でガイドする第2ホースガイドと、
を備え、
前記第2ホースガイドは、前記上部開口側であって、当該上部開口から下方に見て字底部が前記消火栓装置の背面側、且つ字頂部が前記前部開口側に位置すると共に、当該字頂部が開放した凸字状を成すように配置された上側ガイド部を有し、前記ホースを前記上側ガイド部の下方空間から当該上側ガイド部の前記凸字の内側を経由して前記上部開口の上方空間へ引き出し可能であり、
前記第1ホースガイドは、前記前部開口側であって、当該前部開口から後方に見て字頂部が前記上部開口側に位置したU字状を成すように配置された下側ガイド部を有し、前記ホースを前記下側ガイド部の後方空間から前記第2ホースガイドの下側であって当該下側ガイド部の前記U字の内側を経由して前記前部開口の前方外部空間へ引き出し可能であることを特徴とするトンネル内消火栓設備。
【請求項2】
内部に消火用のホースが収納され、トンネル壁面に沿った監視員通路に、前部を道路側に面し上部を前記監視員通路の路面側に面して埋込設置されるトンネル内消火栓装置であって、
設置状態で道路側となる前記前部に形成された前部開口と、
設置状態で前記監視員通路の路面側となる前記上部に形成された上部開口と、
前記ホースが前記前部開口から前記道路側の外部下方へ引き出される際に、前記ホースの下方をガイドする第1ホースガイドと、
前記ホースが前記上部開口から前記監視員通路の路面側の外部側方へ引き出される際に、前記ホースの側方をガイドする第2ホースガイドと、
を備え、
前記第2ホースガイドは、前記上部開口側であって、当該上部開口から下方に見て字底部が前記消火栓装置の背面側、且つ字頂部が前記前部開口側に位置すると共に、当該字頂部が開放した凸字状を成すように配置された上側ガイド部を有し、前記ホースを前記上側ガイド部の下方空間から当該上側ガイド部の前記凸字の内側を経由して前記上部開口の上方空間へ引き出し可能であり、
前記第1ホースガイドは、前記前部開口側であって、当該前部開口から後方に見て字頂部が前記上部開口側に位置したU字状を成すように配置された下側ガイド部を有し、前記ホースを前記下側ガイド部の後方空間から前記第2ホースガイドの下側であって当該下側ガイド部の前記U字の内側を経由して前記前部開口の前方外部空間へ引き出し可能であることを特徴とするトンネル内消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部に収納されたノズル付きホースを引き出して消火用水又は消火泡を放出させるトンネル内消火栓装置及び当該消火栓装置が設置されたトンネル内消火栓設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置するトンネル非常用設備として消火栓装置が設けられており、消火栓装置は開放自在な消火栓扉を備え、先端にノズル
を装着したホースと消火栓弁を含むバルブ類を収納している。
【0003】
消火栓装置は、一般的に、トンネル側壁に沿って例えば50メートル間隔でトンネル壁面に埋込み設置されている。火災を伴う車両事故が発生した場合には、監視員通路のあるトンネルでは、事故車両の運転者等の道路利用者は監視員通路の側面に設置されたステップ等により監視員通路に登り、トンネル壁面に設置された消火栓装置の消火栓扉を前方に開放してノズル付きのホースを取出して消火作業を行うようにしている。
【0004】
監視員通路は路面に対し高くした側壁通路として設けられ、トンネル内の車両通行を妨げることなく且つ安全にトンネル内に設置している消火栓装置を含む各種の機器の点検を行うことを可能としている。
【0005】
また、監視員通路のないトンネルにあっては、事故車両の運転者等の利用者は、トンネル壁面に設置された消火栓装置に近づき、同様に、消火栓扉を前方に開放してノズル付きのホースを取出して消火作業を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-181057号公報
【特許文献2】特開2008-055024号公報
【特許文献3】特開2009-285126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シールド工法等により作られた都市型トンネルにあっては、トンネル壁面に消火栓装置を埋込み設置できない構造であり、監視員通路側面(壁面)に消火栓装置を埋込み設置する必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の消火栓のように扉を前開きする消火栓装置を監視員通路に設置した場合には、消火栓扉が開くと建築限界を超えて道路側に飛び出す問題がある。
【0009】
一方、この問題を解決できたとしても、消火栓装置をトンネル内の道路に面した監視員通路壁面に沿って埋込設置した場合、車両火災が発生して消火栓扉の前に車両が停止すると、停止車両が邪魔になって、消火栓扉を開いてホースを引き出すことができない場合がある。更に、仮に監視員通路上から操作できる場合でも、監視員通路から消火栓扉を開くには、体をかがめて手を伸ばす必要があり、消火栓装置の操作に手間取ってしまう場合もある。
【0010】
また、消火栓装置からホースを引き出す場合には、ホースの擦れによる損耗及び引出力を低減させる必要がある。
【0011】
本発明は、道路側及び監視員通路の路面側から消火栓を簡単且つ容易に取り扱うことを可能とする共に滑らかなホース引き出しを可能とするトンネル内消火栓装置及び当該消火栓装置が設置されたトンネル内消火栓設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(トンネル内消火栓設備)
本発明は、内部に消火用のホースが収納された消火栓装置が、トンネル壁面に沿った監視員通路に、前部を道路側に面し上部を監視員通路の路面側に面して埋込設置されたトンネル内消火栓設備であって、
消火栓装置は、
前部に形成された前部開口と、
上部に形成された上部開口と、
ホースが前部開口から道路側の外部下方へ引き出される際に、ホースを下方でガイドする第1ホースガイドと、
ホースが上部開口から監視員通路の路面側の外部側方へ引き出される際に、ホースを側方でガイドする第2ホースガイドと、
を備え、
第2ホースガイドは、上部開口側であって、当該上部開口から下方に見て字底部が消火栓装置の背面側、且つ字頂部が前部開口側に位置すると共に、当該字頂部が開放した凸字状を成すように配置された上側ガイド部を有し、ホースを上側ガイド部の下方空間から当該上側ガイド部の凸字の内側を経由して上部開口の上方空間へ引き出し可能であり、
第1ホースガイドは、前部開口側であって、当該前部開口から後方に見て字頂部が上部開口側に位置したU字状を成すように配置された下側ガイド部を有し、ホースを下側ガイド部の後方空間から第2ホースガイドの下側であって当該下側ガイド部のU字の内側を経由して前部開口の前方外部空間へ引き出し可能であることを特徴とする。
【0013】
(トンネル内消火栓装置)
本発明は、内部に消火用のホースが収納され、トンネル壁面に沿った監視員通路に、前部を道路側に面し上部を監視員通路の路面側に面して埋込設置されるトンネル内消火栓装置であって、
設置状態で道路側となる前部に形成された前部開口と、
設置状態で監視員通路の路面側となる上部に形成された上部開口と、
ホースが前部開口から道路側の外部下方へ引き出される際に、ホースの下方をガイドする第1ホースガイドと、
ホースが上部開口から監視員通路の路面側の外部側方へ引き出される際に、ホースをの側方をガイドする第2ホースガイドと、
を備え、
第2ホースガイドは、上部開口側であって、当該上部開口から下方に見て字底部が消火栓装置の背面側、且つ字頂部が前部開口側に位置すると共に、当該字頂部が開放した凸字状を成すように配置された上側ガイド部を有し、ホースを上側ガイド部の下方空間から当該上側ガイド部の凸字の内側を経由して上部開口の上方空間へ引き出し可能であり、
第1ホースガイドは、前部開口側であって、当該前部開口から後方に見て字頂部が上部開口側に位置したU字状を成すように配置された下側ガイド部を有し、ホースを下側ガイド部の後方空間から第2ホースガイドの下側であって当該下側ガイド部のU字の内側を経由して前部開口の前方外部空間へ引き出し可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(基本的な効果)
本発明は、筐体の内部にノズル付きのホースが収納された消火栓装置の筐体がトンネル壁面に沿った監視員通路に埋込設置されたトンネル内消火栓設備に於いて、消火栓装置は、道路側となる筐体の前面に形成された前面扉開口に、開閉自在に配置された前扉と、監視員通路の路面側となる筐体の上面に形成された上面扉開口に、道路側からトンネル壁面側に向かって回動して開放する前開き及びトンネル壁面側から道路側に向かって回動して開放する後開き自在に配置された上扉と、前面扉開口の筐体の内部側に、道路側へホースを引き出すための前面ホース取出口を仕切るように配置された第1ホースガイドと、上面扉開口の筐体の内部側に、監視員通路の路面側へホースを引き出すための上面ホース取出口を仕切るように配置された第2ホースガイドと、を備え、上扉の具体的な構成として、上面扉開口に、筐体の前縁部を軸として後開き自在に軸支された第1上扉と、第1上扉に形成された扉開口に、トンネル壁面側となる自身の扉後縁部を軸として前開き自在に軸支されると共に第1上扉と一体に後開きされる第2上扉と、で構成されたため、トンネル内での車両事故による火災の発生時に、利用者が道路側から操作すると、道路に面した前扉が開放されると共に上扉がトンネル壁面側に向かって前開きされ、筐体の前面扉開口及び上面扉開口が開放され、前面ホース取出口を仕切るように配置された第1ホースガイドによる案内を受けながら滑らか筐体からノズル付きのホースを簡単且つ容易に引き出して消火を行うことができる。
【0015】
また、筐体の前に車両が停止して利用者が道路側からの操作ができない場合には、利用者は監視員通路に登り、上扉を道路側に開く後開き操作を行うことで筐体の上面扉開口が開放され、停止車両に妨げられることなく、上面ホース取出口を仕切るように配置された第2ホースガイドによる案内を受けながら滑らかに筐体からノズル付きホースを簡単且つ容易に引き出して消火を行うことができる。
【0016】
また、上扉を後開きした場合にフェンスとして機能するため、筐体の上面扉開口からノズル付きのホースを引き出す場合に、利用者が道路側に落ちるような危険が回避され、また、内部から取り出したノズルを道路側に落としてしまうようなことも防止可能となる。
【0017】
また、第1ホースガイドと第2ホースガイドが筐体内に設けられたことで筐体が補強され、筐体の強度を高めることができる。
【0018】
更に、第1ホースガイドと第2ホースガイドは扉開口時にホース取出口を仕切るように露出されることから、操作者に対し操作に不要な部分を目隠し、操作性を高めることができる。
【0019】
(ホースガイド構造による効果)
また、第1ホースガイドは、パイプ部材が前面扉開口の左右両側から下側に沿って配置されると共に、下側に配置されたパイプ部材の中央部が筐体の内部側に向けて湾曲して配置され、第2ホースガイドは、パイプ部材が上面扉開口のトンネル壁面側となる後側に左右方向に長い略矩形ループ状に配置されると共に、略矩形ループ状に配置されたパイプ部材の道路側となる前側の中央部が切り離されて前方に向けて屈曲配置されたため、道路側又は監視員通路の路面側に引き出されるホースは第1ホースガイド又は第2ホースガイドを構成するパイプ部材に摺接して引き出されることから、摩擦抵抗が小さいことによりホースの損耗が低減し、また、ホース引き出し力を低減することができる。
【0020】
また、第1ホースガイドを構成するパイプ部材は、前面扉開口の設置状態での道路の車線等に沿う方向を左右方向とした場合の左右両側から設置状態での道路の路面側となる下側に沿って配置されるため、前面扉開口の左右両側及び下側のエッジ部分に対するホースの摺接を確実に防止できる。
【0021】
また、第1ホースガイドの湾曲した部位から筐体の下側のホース収納部に少なくとも2本のパイプ部材が起立配置されたホースガイド構造を筐体に備え、ホースは、設置面に対して水平内巻きにホースガイド構造により湾曲された状態でホース収納部に収納されるため、これによりホース収納部に設置面に対して水平回りに内巻きして収納されるホースが2本のパイプ部材の部分で筐体の内側に湾曲されて略ひょうたん形となり、この湾曲形状による反力でホースを重ね巻きした場合の崩れが防止され、また、ホースを引き出す際に湾曲形状による反力がホースを押し出す力として作用し、ホースの引き出し力を低減させる。
【0022】
(銘板配置の効果)
また、第2上扉の筐体の内部側となる裏面に、第2上扉を前開きした場合に視認可能に露出される第1操作銘板が配置され、第2ホースガイドに付随して、第2上扉に一体とした第1上扉を後開きした場合に視認可能に露出される第2操作銘板が配置されたため、道路側から操作する場合に前扉及び第2上扉を開放させると、前開きした第2上扉の裏面の第1操作銘板が利用者の目の前に出現し、操作に不慣れな利用者であっても、第1操作銘板に示された操作方法に従って、ノズルを取外してホースを引き出し、続いて操作レバーを開位置に操作し、最終的にノズルをもって放水する操作を手際よく行うことを可能とする。
【0023】
また、監視員通路の路面側から操作する場合には、第2上扉と一体に第1上扉を後開きすると、筐体の上面扉開口の内部側に設けられた第2ホースガイドに付随して第2操作銘板が水平に配置されており、これを見ながらノズルを取外してホースを引き出し、続いて操作レバーを開位置に操作し、最終的にノズルをもって放水する操作を手際よく行うことを可能とする。
【0024】
また、監視員通路の路面側から操作するために第2上扉と一体に第1上扉を後開きした場合、後開きされた第2上扉の裏面に配置している第1操作銘板も露出するが、第1操作銘板は上下が逆となり、且つ垂直に近い状態に開いている第2上扉の裏面にあることから、監視員通路上の利用者からは非常に見えにくい状態となっており、第1操作銘板に気をとられることなく、容易に視認可能な第2操作銘板を見ながらの操作を可能とする。
【0025】
本発明のトンネル内消火栓装置による効果は、前述したトンネル内消火栓設備の場合と同じになることから、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図
【
図2】通常時における消火栓収納箱の外観を正面、平面及び側面から示した説明図
【
図3】筐体内に配置された第1ホースガイドと第2ホースガイドを取り出して正面、平面及び側面から示した説明図
【
図4】消火栓収納箱の内部構造を正面及び平面から示した説明図
【
図5】道路側から操作する扉開放状態での消火栓収納箱の外観を正面、平面及び側面から示した説明図
【
図6】
図5の消火栓収納箱における扉開放部分を取り出して示した斜視図
【
図7】
図6の第1操作銘板を取り出して示した説明図
【
図8】前開きハンドルの裏側に配置された扉開閉機構を示した斜視図
【
図10】第2上扉を前開きして前扉の落下によりスライド開放させる扉開閉機構を断面で示した説明図
【
図11】第2上扉における扉本体と前縁枠扉のヒンジによる連結部分を断面で示した説明図
【
図12】監視員通路側から操作する扉開放状態での消火栓収納箱の外観を正面、平面及び側面から示した説明図
【
図14】第2上扉と一体に第1上扉を後開きする構造を断面で示した説明図
【
図15】放水制御機構を監視員通路側の消火栓収納箱と共に路面側から見た断面で示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
[トンネル非常用設備の概要]
図1は自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図である。
図1に示すように、シールド工法により構築されたトンネル10内は円筒形のトンネル壁面12により覆われ、床版18により仕切られることで道路15が設けられており、この例にあっては、道路15は1方向2車線としている。
【0028】
床版18で仕切られた道路15の左側のトンネル壁面12に沿って監視員通路14が設けられ、監視員通路14の下側の内部空間はダクト22として利用され、電線管等が敷設される。監視員通路14は例えば高さが90センチメートル、横幅が70センチメートルといった大きさをもつ。
【0029】
道路15が形成された床版18の下側はトンネル横方向に複数の区画に仕切られており、例えば、監視員通路14の下に位置する区画は、管理用通路20として使用され、また、管理用通路20はトンネル内での火災発生時には、緊急避難通路として使用される。管理用通路20には給水本管24が敷設されている。
【0030】
トンネル10の長手方向の50メートルおきには、消火栓設備16が設置され、消火栓設備16の消火栓装置はホースが収納された消火栓収納箱30と放水制御機構収納部100に分離して設置されている。
【0031】
消火栓収納箱30は、監視員通路14の路面及び道路15側の壁面にかけて箱形に刳り貫かれた消火栓埋込部に配置されている。放水制御機構収納部100は、消火栓収納箱30の下側となる管理用通路20に配置され、給水本管24から分岐した分岐管24aが引き込まれ、また、消火栓収納箱30に消火泡を供給する給水配管25が立ち上げられている。
【0032】
[消火栓収納箱の外観構造]
図2は消火栓収納箱の外観を正面、平面及び側面から示した説明図である。
図2に示すように、消火栓設備16の消火栓収納箱30は、監視員通路14の路面下の内部空間に埋込み設置されている。消火栓収納箱30は、
図2(A)に示すように、筐体の前面中央の上側に形成された前面扉開口31に前扉32が上下方向にスライド自在に配置されている。
【0033】
また、
図2(B)に示すように、消火栓収納箱30の監視員通路14の路面側となる筐体28の上面には、第1上扉36と第2上扉38が設けられる。第1上扉36は
図2(C)の第1上扉36aに示すように、後開き自在に配置されている。
【0034】
第2上扉38は、第1上扉36の前方に開口した扉開口35に、
図2(C)の第2上扉38aに示すように、前開き自在に配置されている。更に、第2上扉38は扉本体40と前縁枠扉42とに分割して配置され、前縁枠扉42は筐体28の上面前部に固定された前縁上枠37と同じ幅となっている。
【0035】
扉本体40と前縁枠扉42により構成された第2上扉38は、
図2(C)の第2上扉38aに示すように前開きする場合は、扉本体40と前縁枠扉42が一体となって開閉され、
図2(C)に示すように第1上扉36aが前開きする場合は、前縁枠扉42は固定され、扉本体40が第1上扉36と一体となって開閉される。
【0036】
ここで、第2上扉38の前開きとは、
図2(C)の第2上扉38aに示すように、第2上扉38の奥行側の扉後縁部を軸として上下回りに開閉されることをいう。また、第1上扉36の後開きとは、
図2(C)の第1上扉36aに示すように、上扉36の手前側の扉前縁部を軸として上下回りに開閉されることをいう。
【0037】
前扉32は第2上扉38との係合により図示の閉鎖状態に保持されている。消火栓収納箱30を道路15側から操作する場合には、前扉32に設けられた前開きハンドル34のハンドルレバーを手前に引く開操作を行うと、第2上扉38に対する前扉32の係止が解除され、前扉32はスライド落下して開放される。これと同時に第2上扉38が前開きする。
【0038】
これに対し消火栓収納箱30を監視員通路14側から操作する場合には、第1上扉36の2箇所に出没自在に設けられた取手44を引き出して持ち上げることで後開きする。
【0039】
[ホースガイドの構造]
図2に破線で示すように、前扉32の内側には前側ホース取出口を仕切り形成する第1ホースガイド60が配置され、また、第1上扉36の内側には上側ホース取出口を仕切り形成する第2ホースガイド80が配置されている。
【0040】
図3は筐体内に配置された第1ホースガイドと第2ホースガイドを取り出して正面、平面及び側面から示した説明図である。
【0041】
図3(A)に示すように、筐体28の前面上部側には、前面ホース取出口45を仕切り形成する第1ホースガイド60が配置されている。第1ホースガイド60は金属製のパイプ部材を使用しており、パイプ部材60aが
図2(A)に示した前面扉開口31の両側から下側に向かって配置されると共に、
図3(B)に示すように、パイプ部材60aは中央でパイプ部材60b,60cの連結によりに奥行方向に湾曲して配置され、更に、湾曲部位となるパイプ部材60cから筐体28の下側のホース収納部に少なくとも2本のガイドパイプ92が起立したホースガイド構造90が配置されている。
【0042】
第1ホースガイド60はパイプ部材60a~60cで構成されることで、前面ホース取出口45から泡ノズル付きのホースを道路側に引き出す際に、ホースとの接触抵抗を低減して滑らかに引き出すことを可能とし、これによりホースの損耗とホース引き出し力の低減を可能とする。
【0043】
また、
図3(B)に示すように、筐体28の上面側には、上面ホース取出口82を仕切り形成する第2ホースガイド80が配置されている。第2ホースガイド80は、第1ホースガイド60と同様に金属製のパイプ部材を使用しており、パイプ部材80aが上面扉開口の奥行側で横方向に長い略矩形ループ状に配置されると共に略矩形ループ状の中央が切り離されてパイプ部材80b,80cの連結により前方に向けて屈曲して配置されている。
【0044】
第2ホースガイド80はパイプ部材80a~80cで構成されることで、上面ホース取出口82から泡ノズル付きのホースを監視員通路側に引き出す際に、ホースとの接触抵抗を低減して滑らかに引き出すことを可能とし、これによりホースの損耗とホース引き出し力の低減を可能とする。
【0045】
[消火栓収納箱の内部構造]
図4は消火栓収納箱の内部構造を正面及び平面から示した説明図であり、
図4(A)は正面を示し、
図4(B)は
図4(A)のX-X断面から見た平面を示す。
【0046】
図4(A)に示すように、消火栓収納箱30の内部下側はホース収納部86となっており、保形構造のホース52を水平回りに内巻きしている。ここで、消火栓収納箱30の横幅は約1.4メートル程度、奥行きは約0.35メートル程度であることから、ホース収納部86に内巻きされたホース52の1ターンの長さは概ね3.5メートル程度となり、ホース長さは30メートル以上必要とすることから、ホース52は9ターン以上内巻きすればよい。
【0047】
消火栓収納箱30の前面上部には
図2に示した前面扉開口31を仕切る第1ホースガイド60が配置され、その下となるホース収納部86の前面側の中央に2本のガイドパイプ92が内側に入った位置に起立されている。
【0048】
ホース収納部86に内巻きされたホース52は、
図4(B)の平面に示すように、第1ホースガイド60の中央の湾曲部位に起立して配置された2本のガイドパイプ92の部分で内側にわずかに湾曲した状態で巻かれている。
【0049】
このためホース52の前面側の平行線ホース部分52aが内側に変形されて略ひょうたん形に近い形状となり、この変形によりホース52の変形された平行線ホース部分52aには外側に広がろうとする反発力が発生し、筐体内壁側に押し付ける力が発生することで、重ねて内巻きしたホース52の平行線部分52aが内側に崩れてしまうことを確実に防止可能とする。
【0050】
また、扉を開いてホース52を前面ホース取出口45又は上面ホース取出口82(
図3参照)から外部に引き出す場合には、ホース52の半径部分52bの変形によるホース52を押し出そうとする力に加え、ホース52の平行線部分52aについても、ホースガイド構造による変形力によるホース52を押し出そうとする力が発生し、ホース引き出し力を低減可能とする。
【0051】
[前扉と第2上扉の開閉機構]
図5は道路側から操作する扉開放状態での消火栓収納箱の外観を正面、平面及び側面から示した説明図、
図6は
図5の消火栓収納箱における扉開放部分を取り出して示した斜視図である。
【0052】
(前扉と第2上扉の開放)
図5及び
図6に示すように、前扉32に設けられた前開きハンドル34を開操作すると、第2上扉38に対する前扉32の係止が解除され、前扉32はスライド落下して開放され、同時に第2上扉38が扉開放付勢機構として機能するガススプリング56による押上によりヒンジ46を軸中心として前開きされ、ストッパアーム58の伸展により開放位置
にロックされ、これにより前面に開いた第1ホースガイド60のパイプ部材で両側及び下側が仕切られた前面ホース取出口45が開放される。
【0053】
また、前面ホース取出口45は第2上扉38の前開きで開放された扉開口35につながっており、これにより前方及び上方に開いたホース取出空間が形成される。
【0054】
ガススプリング56は、加圧ガスとオイルが収納された円筒状の本体に、ロッドが伸縮自在に設けられており、本体に収納されたオリフィス穴を形成したピストンにロッドの上端が連結され、ピストンを介してロッドに押上力を加えた構造としている。
【0055】
第2上扉38の裏面にはノズル係止機構として機能するノズルホルダー54により泡ノズル50が着脱自在に係止されている。ノズルホルダー54は例えば3次元の自由度があり、第2上扉38の開閉位置に関わらず、ホース52の先端に連結された泡ノズル50を吊り下げ状態に係止している。
【0056】
第2上扉38の右側の上面扉開口の内部にはパイロット配管61に設けられた手動パイロット弁62が配置され、第2上扉38の前開きにより手動パイロット弁62が露出し、操作レバーによる開閉操作が可能となる。手動パイロット弁62は、
図1に示した管理用通路20の放水制御機構収納部100に設けられた消火栓弁を遠隔制御して泡ノズル50付きのホース52に消火泡を供給させる。
【0057】
第2上扉38は扉本体40と前縁枠扉42を一体化した状態で前開きされており、その詳細な構造は後の説明で明らかにされる。
【0058】
前扉32のスライド落下により開放された前面扉開口31の左右及び下側にはパイプ部材を用いた第1ホースガイド60が配置されており、ノズルホルダー54から泡ノズル50を取り外してホース52を引き出す際に、第1ガイドガイド60のパイプ部材と摺接することで、ホース52の引き出し力を低減し、ホース52の損耗を防ぐようにしている。
【0059】
泡ノズル50を持ってホース52を引き出した後は、手動パイロット弁62の操作レバーを開位置に回すことで、消火栓弁が遠隔的に開操作され、消火泡が供給されることで、泡ノズル50から消火泡を放出することができる。
【0060】
(第1操作銘板)
図5及び
図6に示すように、第2上扉38における扉本体40の裏面には第1操作銘板94が配置され、第2上扉38が前開きれた場合に第1操作銘板94は道路側から操作している利用者から視認可能に露出される。
【0061】
図7は
図6の第1操作銘板を取り出して示した説明図である。
図7に示すように、第1操作銘板94は、「操作方法」の文字に加え、操作手順が操作表示部94a,94b,94cに分けて説明文とピクトグラムにより示されている。
【0062】
この操作手順は、操作表示部94aの「1 ノズルをはずす」、操作表示部94bの「2 レバーを引く」、及び操作表示部94cの「3 水が出る」の順番となる。
【0063】
これにより道路側からの操作により
図5及び
図6に示すように前扉32及び第2上扉38が開放された場合には、第2上扉38の裏面の第1操作銘板94の操作手順に従い、利用者はノズルホルダー54から泡ノズル50を取外し、続いて、操作レバーにより手動パイロット弁62を開操作し、最終的に、引き出したホース52の先端の泡ノズル50から消火泡を放出させる操作を手際よく行うことが可能となる。
【0064】
[扉開閉機構の詳細]
図8は前開きハンドルの裏側に配置された扉開閉機構を示した斜視図、
図9は扉開閉機構による扉閉鎖状態を示した背面図である。
【0065】
図8及び
図9に示すように、前扉32の裏面側には、前開きハンドル34の操作により動作する扉開閉機構が設けられる。この扉開閉機構は、ハンドル本体34aの両側となる前扉32の裏面に軸受け部材66が配置され、軸受部材66により軸部材64の両側が回動自在に支持されており、軸部材64には軸受部材66の位置で2本を1組としたフックアーム70が上向きに起立した状態で設けられている。
【0066】
軸部材64に対してはハンドル本体34aの背後から取り出されたリンクレバー65が固定されている。リンクレバー65は前開きハンドル34のハンドルレバーを手前に引く開操作を行うと、軸部材64を奥行回りに回動させるように作動する。
【0067】
フックアーム70は先端にフック爪70aが形成されており、フック爪70aは、
図9に示すように、第2上扉38における前縁枠扉42の裏面に起立して固定されたU形の受け部材72を係止し、これにより前扉32を第2上扉38に係止して閉鎖状態に保持している。
【0068】
なお、前開きハンドル34のハンドルレバーは内蔵したバネ部材により非操作位置に付勢する力を受けており、このためリンクレバー65及び軸部材64を介して連結されているフックアーム70もフック爪70aを受け部材72に係止する方向に付勢する力を受けている。
【0069】
第2上扉38の閉鎖状態では、受け部材72に対するフックアーム70の係合により前扉32が閉鎖位置に吊下げられており、受け部材72及びフックアーム70は前扉32の重量に対応した吊下げ荷重を受けることから、受け部材72をU形とし、また、フックアーム70を2枚構成とすることで、前扉32の重量を支える十分な吊下げ強度を確保できるようにしている。
【0070】
前縁枠扉42の裏面に設けられた受け部材72の前側には位置決めリブ74が下向きに起立して配置されている。位置決めリブ74は、
図6に示す第2上扉38を閉鎖する場合に、筐体28の上部前縁に配置されている扉枠63の外側に入ることで位置決めし、且つ、第2上扉38の閉鎖状態で係止している前扉32の上端を位置決めリブ74の外側に位置させることで位置決めしている。
【0071】
前縁扉枠42に対し扉本体40を回動自在に連結させるヒンジ48は、位置決めリブ74に形成された開口75を通して前縁扉枠42と扉本体40の間を開閉自在に連結させている。
【0072】
図10は第2上扉を前開きして前扉の落下によりスライド開放させる扉開開閉機構を断面で示した説明図である。
図10に示すように、通常状態では、前開きハンドル34のハンドルレバーは非操作位置にあり、この状態で軸部材64に設けられたフックアーム70は起立状態にあり、先端のフック爪70aに閉鎖位置にある第2上扉38の裏面、詳細には第2上扉38における前縁枠扉42の裏面に起立されたU形の受け部材72が係止され、前扉32を閉鎖状態に係止させている。
【0073】
また、第2上扉38における扉本体40の後縁部側は、扉本体40が第1上扉36に形成された扉開口35(
図2参照)の中に配置されていることから、ヒンジ46の一端が第1上扉36の裏面に固定され、軸ピンを介してヒンジ46の他端が扉本体40の裏面に固定され、ヒンジ46により第2上扉38を第1上扉36に対し前開き自在としている。
【0074】
この状態で利用者が道路側から前開きハンドル34のハンドルレバーを手前に引く開操作を行うと、リンクレバー65の作動による軸部材64の回動でフックアーム70が後方に揺動してフック爪70aが受け部材72から外され、これにより受け部材72との係止が解除され、前扉32は自重によりスライド落下して開放され、また、第2上扉38は扉本体40と前縁枠扉42が一体化された状態で、想像線で示す第2上扉38aに示すように、第1上扉36に対しヒンジ46を軸中心として前開きされる。
【0075】
図11は第2上扉における扉本体と前縁枠扉のヒンジによる連結部分を断面で示した説明図である。
図11に示すように、第2上扉38を構成する扉本体40と前縁枠扉42はヒンジ48により相互に開閉自在に軸支されており、ヒンジ48は位置決めリブ74の開口75を通してヒンジ48の一端が前縁枠扉42の裏面に固定され、軸ピンを介してヒンジ48の反対側が扉本体40の裏面に固定されている。
【0076】
[第1上扉を後開きする機構]
図12は監視員通路側から操作する扉開放状態での消火栓収納箱の外観を正面、平面及び側面から示した説明図、
図13は
図12の消火栓収納箱を裏側から見て示した斜視図、
図14は第2上扉と一体に第1上扉を後開きする構造を断面で示した説明図である。
【0077】
(第2上扉と一体化した第1上扉の開放)
図12及び
図13に示すように、消火栓収納箱30を監視員通路から操作する場合には、利用者は監視員通路の路面上に位置する消火栓収納箱30の第1上扉36から取手44を引き出して持ち上げることで、第1上扉36を扉前縁部側に設けられたヒンジ76を中心に後開きさせ、ストッパアーム78の伸展により開放位置にロックさせる。
【0078】
このとき第2上扉38は、
図14に示すように、前縁枠扉42の受け部材72にフックアーム70が係止され、フックアーム70を介して前扉32を閉鎖状態に係止しており、第1上扉36が筐体28に対しヒンジ76により後開きにされると、第1上扉36とヒンジ46により連結された第2上扉38における扉本体40がヒンジ48により第1上扉36と一体に回動し、第1前扉36と一体に第2上扉38における扉本体40が後開きされる。
【0079】
このため第1上扉36と筐体28の間に設けられたヒンジ76と、第2上扉38における扉本体40と前縁扉枠42の間に設けられたヒンジ48は、それぞれの回転中心となる軸ピンが横方向の同じ軸中心線上に並ぶように配置されている。
【0080】
第1上扉36が第2上扉38における扉本体40と一体に後開きされると、筐体28の上面が開放される。筐体28の上面扉開口の周囲には上面扉枠84が縁取りするように設けられており、上面扉枠84の上に第1上扉36が乗った状態で閉鎖していることで、閉鎖状態にある第1上扉36の上を人か通っても、その重量を確実に支えることを可能とする。
【0081】
また、開放された筐体28の上面扉開口の内部には、パイプ部材を用いた第2ホースガイド80が配置されて上面ホース取出口82を仕切り形成している。上面ホース取出口82は、第2ホースガイド80のパイプ部材80aの配置により上面扉開口の奥行側で横方向に長くなる略矩形ループ状に開口し、また、略矩形ループ状の前側中央の分離部分からのパイプ部材80b,80cの配置により前方に向けて開口されている。第1ホースガイド80の下には、前面扉開口に配置された第1ホースガイド60の中央部分のパイプ部材60cが奥行方向に張出して位置している。
【0082】
第2上扉38における扉本体40の裏面のノズルホルダー54に係止された泡ノズル50は、平面的にみて第1ホースガイド60のパイプ部材60cと第2ホースガイド80のパイプ部材80b,80cに囲まれた筐体内の空間に吊下げ状態で位置している。
【0083】
第1上扉36が第2上扉38における扉本体40と一体に後開きされた状態で、ノズルホルダー54から泡ノズル50を取り外してホース52を監視員通路面となる横方向に引き出す場合、筐体28の内部下側に収納されているホース52は第2ホースガイド80により仕切られた上面ホース取出口82における略矩形ループ状の開口部分の右端又は左端を通って引き出される。
【0084】
このため
図4に示したように、横に長い筐体28内のホース収納部86に収納しているホース52を監視員通路側に引き出しても大きく曲がることなく滑らかに引き出すことができ、第2ホースガイド80に使用したパイプ部材80aとの摺接、更には、略ひょうたん形に収納されることによるホース52の反力を合わさることで、ホース52の損耗が抑制され、ホース引き出し力を低減でき、操作性が向上する。
【0085】
(第2操作銘板)
図12及び
図13に示すように、監視員通路側から操作するために、第1上扉36が第2上扉38における扉本体40と一体に後開きされると、監視員通路側から見て第2ホースガイド80の例えば右側に水平に配置された第2操作銘板96が視認可能に露出される。
【0086】
第2操作銘板96には、
図7に示した第1操作銘板94と同様に、「操作方法」の文字に加え、操作手順が操作表示部94a,94b,94cに分けて説明文とピクトグラムにより示されている。
【0087】
このため利用者は、第2操作銘板96を見ながらノズルホルダー54から泡ノズル50を取外し、続いて、操作レバーにより手動パイロット弁62を開操作し、最終的に、引き出したホース52の先端の泡ノズル50から消火泡を放出させる操作を手際よく行うことが可能となる。
【0088】
また、監視員通路側から操作するために第2上扉38における扉本体40と一体に第1上扉36を後開きした場合、後開きされた第2上扉38における扉本体40の裏面に配置している第1操作銘板94も露出するが、第1操作銘板94は上下が逆となり、且つ垂直に近い状態に開いている扉本体40の裏面にあることから、監視員通路上の利用者からは非常に見えにくい状態となっており、第1操作銘板94に気をとられることなく、容易に視認可能な第2操作銘板96を見ながらの操作が可能となる。
【0089】
[放水制御機構の構成]
図15は放水制御機構を監視員通路側の消火栓収納箱と共に路面側から見た断面で示した説明図である。
【0090】
(放水制御機構の構成)
図15に示すように、消火栓収納箱30が配置された監視員通路14の内部空間の下側となる管理用通路20には放水制御機構収納部100が配置されている。
【0091】
放水制御機構収納部100には、放水制御機構を構成するバルブ類として、加圧開放型の消火栓弁102、自動調圧弁104、泡混合器106が設けられる。
【0092】
給水本管24から分岐された分岐管24aは消火栓弁102の1次側に接続され、消火栓弁102に続いて自動調圧弁104と泡混合器106が接続される。泡混合器106には泡原液タンク108からの配管が接続され、泡混合器106を流れる消火用水に泡原液を所定割合で混合させた消火泡を、給水配管25を介して消火栓収納箱30のホース52に供給させるようにしている。
【0093】
消火栓弁102は加圧開放を行うための弁開閉機構として、シリンダ室110にピストン112が摺動自在に設けられ、ピストン112には弁体115がピストンロッドにより連結され、シリンダ室110の反対側にはスプリング114が組み込まれている。
【0094】
消火栓弁102は通常状態では閉鎖している。消火栓弁102の閉鎖は、シリンダ室110から消火用水を排出してパイロット圧を減圧してゼロとし、ピストン112をスプリング114により閉鎖方向に押し、弁体115を弁座に当接させることにより1次側と2次側の流路を閉じて閉鎖状態としている。
【0095】
消火栓弁102を開放させるには、シリンダ室110に消火用水を供給してパイロット圧を加圧させることで、スプリング114に抗してピストン112を外側にストロークさせ、弁体115を弁座から離して1次側と2次側を連通させることで開放状態とする。
【0096】
消火栓弁102を遠隔操作により開放させるため、操作レバーにより開閉される手動パイロット弁62が設けられている。手動パイロット弁62の1次側には分岐管24aから引き出されたパイロット配管116aが接続され、手動パイロット弁62の2次側は、パイロット配管116bにより消火栓弁102のシリンダ室110に接続されている。
【0097】
なお、本実施形態にあっては、レバーにより手動パイロット弁62を直接開閉するようにしているが、手動パイロット弁62を消火栓収納箱30内の別の場所に配置し、ワイヤリンクなどにより遠隔開閉させても良い。
【0098】
また、消火栓収納箱30の前面左上部には通報装置パネル130が設けられる。通報装置パネル130には、赤色表示灯132、発信機134、応答ランプ136及び電話ジャック138が設けられている。赤色表示灯132は常時点灯し、消火栓設備の設置場所が遠方から分かるようにしている。
【0099】
火災時には、発信機134を押して押し釦スイッチをオンすると、発信信号が監視室の火災受信機に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が火災受信機から送られて、応答ランプ136が点灯され、更に、赤色表示灯132が点滅される。
【0100】
(消火栓設備の動作)
トンネル10内で火災を伴う車両事故が発生した場合には、利用者は火災発生場所に近い消火栓収納箱30に出向き、通報装置パネル130の発信機134を押して監視センターの防災受信盤に火災通報信号を送信し、防災受信盤から確認応答信号を受信して応答ランプ136が点灯されると共に赤色表示灯132が点滅され、監視センター側への通報完了を確認する。
【0101】
続いて、道路15側から消火作業を行うため、消火栓収納箱30の前開きハンドル34を開操作して係止を解除すると、前扉32がスライド落下して開放され、同時に、第2上扉38が前開きされ、前開きした第2上扉38の裏面にノズルホルダー54により係止された泡ノズル50が露出され、利用者はノズルホルダー54から泡ノズル50を取り外してホース52を引き出す。
【0102】
なお、消火栓収納箱30の前に車両が停止していて道路15側から操作できない場合には、利用者は監視員通路14側から操作することになる。
【0103】
続いて、消火栓収納箱30の上面扉開口の右側に配置されている手動パイロット弁62をレバー操作により開放すると、分岐管24aからの消火用水がパイロット配管116a、手動パイロット弁62及びパイロット配管116bを介して消火栓弁102のシリンダ室110に供給されてパイロット圧が加圧され、スプリング114に抗してピストン112を外側にストロークさせ、弁体115を弁座から離すことで消火栓弁102が開放される。
【0104】
消火栓弁102が開放されると給水本管24からの消火用水が消火栓弁102、自動調圧弁104、泡混合器106を介して給水配管25から消火栓収納箱30のホース52に向かって流れ、泡混合器106で泡原液が所定割合で混合され、消火栓収納箱30から引き出されたホース52の泡ノズル50から消火泡が放出される場合に、空気を巻き込むことで形成される消火泡が放出される。
【0105】
また、消火栓弁102が開放された場合に、ポンプ起動信号を消火ポンプ設備に送信して起動させる必要があることから、水圧を検知してオンする圧力スイッチ125を消火栓弁102の2次側に設けている。なお、圧力スイッチ125に代えて、手動パイロット弁62のレバー開操作でオンしてポンプ起動信号を送信する消火栓弁開検出スイッチを設けても良い。
【0106】
火災が鎮火して消火作業が終了した場合には、操作レバーを閉位置に戻して手動パイロット弁62を閉鎖させる。これによりオリフィス126を介してシリンダ室110の水がゆっくりと排水され、パイロット圧がゼロに減圧され、スプリング114によりピストン112が押し戻されて弁座に当接させ、消火栓弁102が閉鎖して消火泡の放出が停止される。
【0107】
また、放水制御機構を点検する場合には、担当者が管理用通路20に配置された放水制御機構収納部100に出向き、手動開放弁122を開くと、シリンダ室110に消火用水が供給されてパイロット圧が加圧され、消火栓弁102を開放させて所定の放水試験を行わせることを可能とする。この場合、消火栓弁102を閉鎖するには手動排水弁124を開くようにしても良い。
【0108】
[本発明の変形例]
(扉開閉機構)
上記の実施形態に示した前扉と第2上扉の扉開閉機構は一例であり、第2上扉の閉鎖位置で前扉を閉鎖位置に係止し、第2上扉の前開きに伴い前扉の係止を解除してスライド開放させ、また、第2前扉と一体に第1上扉を後開きさせる機能であれば、適宜の機構が含まれる。
【0109】
(ホースガイド)
また、上記の実施形態に示したホースガイドは一例であり、前面扉開口の内側に道路側へのホースを引き出す前面ホース取出口を仕切り形成し、また、上面扉開口の内側に監視員通路側へのホースを引き出す上面ホース取出口を仕切り形成する適宜の構造のホースガイドが含まれる。
【0110】
(操作銘板)
また、上記の実施形態に示した操作銘板は一例であり、上扉を前開きした場合に道路側から視認可能に露出され、また、操作銘板が配置され、第2上扉と一体に第1上扉を後ろ開きした場合に視認可能に露出される操作銘板であれば、適宜の配置及び構造の操作銘板が含まれる。
【0111】
(泡消火栓設備)
上記の実施形態は、消火泡を放出させる泡消火栓設備を例にとっているが、これに限定されず、消火用水を放水させる消火栓設備としても良い。
【0112】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0113】
10:トンネル
12:トンネル壁面
14:監視員通路
15:道路
16:消火栓設備
18:床版
20:管理用通路
22:ダクト
24:給水本管
24a:分岐管
25:給水配管
28:筐体
30:消火栓収納箱
28:筐体
31:前面扉開口
32:前扉
34:前開きハンドル
34a:ハンドル本体
35:扉開口
36:第1上扉
37:前縁上枠
38:第2上扉
40:扉本体
42:前縁枠扉
44:取手
45:前面ホース取出口
46,48,76:ヒンジ
50:泡ノズル
52:ホース
54:ノズルホルダー
56:ガススプリング
58,78:ストッパアーム
60:第1ホースガイド
60a,60b,60c,80a,80b,80c:パイプ部材
62:手動パイロット弁
61:パイロット配管
64:軸部材
66:軸受部材
70:フックアーム
72:受け部材
74:位置決めリブ
75:開口
80:第2ホースガイド
82:上面ホース取出口
84:上面扉枠
86:ホース収納部
90:ホースガイド構造
92:ガイドパイプ
94:第1操作銘板
96:第2操作銘板
100:放水制御機構収納部
102:消火栓弁
104:自動調圧弁
106:泡混合器
108:泡原液タンク
110:シリンダ室
112:ピストン
114:スプリング
115:弁体
116a,116b:パイロット配管
122:手動開放弁
124:手動排水弁
125:圧力スイッチ
126:オリフィス