(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118273
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20220804BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20220804BHJP
【FI】
G01S7/40
G01S13/931
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102931
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2022027181の分割
【原出願日】2019-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2018176513
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018179002
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】佐原 徹
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 正光
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(57)【要約】
【課題】送信波を反射した対象物を検出する性能を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子機器は、送信波を送信する送信アンテナと、温度を検知する温度検出部と、温度検出部が検出した温度に基づいて送信波の周波数を決定する制御部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信する送信アンテナと、
温度を検知する温度検出部と、
前記送信波の周波数を、前記温度検出部が検出した温度に基づいて決定する制御部と、
を有する電子機器。
【請求項2】
前記送信波が物体に反射された反射波を受信する受信部を有し、
前記制御部は、前記送信波と前記反射波とに基づいて前記物体を検出する、請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記送信波の周波数が、所定の温度範囲毎に設定されているテーブルを記憶する記憶部を有する、請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
送信波を送信する送信工程と、
温度を検出する温度検出工程と、
前記送信波の周波数を、前記温度検出工程において検出した温度に基づいて決定する決定工程と、
を備える、電子機器の制御方法。
【請求項5】
前記送信波が物体に反射された反射波を受信する受信工程と、
前記送信波と前記反射波とに基づいて前記物体を検出する検出工程と、
を備える、請求項4記載の制御方法。
【請求項6】
前記送信波の周波数が、所定の温度範囲毎に設定されている、請求項4記載の制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
送信波を送信する送信工程と、
温度を検出する温度検出工程と、
前記送信波の周波数を、前記温度検出工程において検出した温度に基づいて決定する決定工程と、
を実行させる、プログラム。
【請求項8】
前記コンピュータに、
前記送信波が物体に反射された反射波を受信する受信工程と、
前記送信波と前記反射波とに基づいて前記物体を検出する検出工程と、
を実行させる、請求項7記載のプログラム。
【請求項9】
前記送信波の周波数が、所定の温度範囲毎に設定されている、請求項7記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年9月20日に日本国に特許出願された特願2018-176513、及び2018年9月25日に日本国に特許出願された特願2018-179002の優先権を主張するものであり、これらの先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば自動車に関連する産業などの分野において、自車両と対象物との間の距離などを測定する技術が重要視されている。特に、近年、ミリ波のような電波を送信し、障害物などの対象物に反射した反射波を受信することで、対象物との間の距離などを測定するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))の技術が、種々研究されている。このような距離などを測定する技術の重要性は、運転者の運転をアシストする技術、及び、運転の一部又は全部を自動化する自動運転に関連する技術の発展に伴い、今後ますます高まると予想される。
【0004】
また、送信された電波が所定の物体に反射した反射波を受信することで、当該物体の存在を検出する技術について、種々の提案がされている。例えば特許文献1は、特定の周期で直線FM変調を行った送信信号を目標物体に照射し、目標物体からの受信信号との差によりビート信号を検出し、この信号の周波数分析から距離・速度計測を行うFM-CWレーダ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
一実施形態に係る電子機器は、
送信波を送信する送信アンテナと、
温度を検知する温度検出部と、
前記送信波の周波数を、前記温度検出部が検出した温度に基づいて決定する制御部と、
を有する。
【0007】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信波を送信する送信工程と、
温度を検出する温度検出工程と、
前記送信波の周波数を、前記温度検出工程において検出した温度に基づいて決定する決定工程と、
を備える。
【0008】
一実施形態に係るプログラムは、
コンピュータに、
送信波を送信する送信工程と、
温度を検出する温度検出工程と、
前記送信波の周波数を、前記温度検出工程において検出した温度に基づいて決定する決定工程と、
を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
【
図2】一実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る送信信号の構成を説明する図である。
【
図4】一実施形態に係るセンサの構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図5】従来のセンサにおける受信信号の損失を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図7】一実施形態において送信波の周波数ごとに検出される受信信号の強度の一例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】一実施形態に係る電子機器における温度と周波数とを対応付ける動作を説明するフローチャートである。
【
図10】一実施形態において送信波の周波数ごとに検出される受信信号の強度の一例を示す図である。
【
図11】一実施形態において送信波の周波数ごとに検出される受信信号の強度の他の例を示す図である。
【
図12】一実施形態に係る電子機器における温度と周波数との対応付けの一例を示す図である。
【
図13】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
送信された送信波が所定の物体(対象物)に反射した反射波を受信することにより、当該物体の存在を検出する技術において、検出の性能を向上させることが望ましい。本開示の目的は、送信波を反射した対象物を検出する性能を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することにある。一実施形態によれば、送信波を反射した対象物を検出する性能を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の対象物を検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0012】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、移動体の例として乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。
【0013】
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
【0015】
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、
図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(
図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。
図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。
図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0016】
図1に示すように、移動体100には、複数の送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。
図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、
図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。
【0017】
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の対象物(例えば
図1に示す対象物200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該対象物によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該対象物を検出することができる。
【0018】
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0019】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の対象物200を検出することができる。例えば、
図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の対象物200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の対象物200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の対象物200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
【0020】
ここで、対象物200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、対象物200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、対象物200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、対象物200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。本開示において、センサ5が検出する対象物には、無生物の他に、人及び動物などの生物も含む。本開示のセンサ5が検出する対象物は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含む。
【0021】
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、
図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。また、センサ5が移動体100に設置される位置は、移動体100の外部及び内部のいずれとしてもよい。移動体100の内部とは、例えば、移動体100のボディの内側、バンパーの内側、ヘッドライトの内部、車内の空間内、又はこれらの任意の組み合わせでよい。
【0022】
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0023】
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0024】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、このような実施形態について説明する。なお、本開示で利用されるFMCWレーダレーダ方式は、通常より短い周期でチャープ信号を送信するFCM方式(Fast-Chirp Modulation)を含むとしてもよい。信号生成部21が生成する信号はFM-CW方式の信号に限定されない。信号生成部21が生成する信号はFM-CW方式以外の各種の方式の信号としてもよい。記憶部40に記憶される送信信号列は、これら各種の方式によって異なるものとしてよい。例えば、上述のFM-CW方式のレーダ信号の場合、時間サンプルごとに周波数が増加する信号及び減少する信号を使用してよい。上述の各種の方式は、公知の技術を適宜適用することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0025】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とから構成される。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。ECU50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。一実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部20、受信部30A~30D、及び記憶部40などの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。
図2に示すように、電子機器1は、受信部30A~30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
【0026】
制御部10は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、到来角推定部13、物体検出部14、及び周波数選択部15を備えてよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0027】
送信部20は、
図2に示すように、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25を備えてよい。
【0028】
受信部30は、
図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A~31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、
図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、及びAD変換部35を備えてよい。受信部30A~30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。
図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
【0029】
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
【0030】
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0031】
記憶部40は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部40は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部40は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部40は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部40は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
【0032】
一実施形態において、記憶部40は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数と、温度との対応関係を記憶する。このような対応関係については、さらに後述する。
【0033】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部40に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
【0034】
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10(周波数選択部15)による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10から周波数情報を受け取ることにより、例えば77~81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
【0035】
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
【0036】
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば記憶部40などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
【0037】
図3は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0038】
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。
図3に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。
図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。
図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0039】
図3に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、
図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、
図3に示す例において、サブフレーム1~サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、
図3に示すフレーム1及びフレーム2など、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、
図3に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。
【0040】
図3において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、
図3において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、
図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。
【0041】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0042】
以下、電子機器1は、
図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、
図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、
図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。
【0043】
図2に戻り、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。例えば、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、周波数選択部15によって選択された周波数としてよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部40に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
【0044】
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部40に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。
【0045】
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
【0046】
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0047】
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25備え、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体に収められてもよい。また、この場合、当該1つの筐体は、容易に開けることができない構造としてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24が1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。上述した例えばレーダカバーのようなカバー部材については、さらに後述する。
【0048】
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25を1つ備える例を示している。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備えてもよい。この場合、電子機器1は、複数の送信アンテナ25に対応させて、位相制御部23及び増幅器24もそれぞれ複数備えてよい。そして、複数の位相制御部23は、シンセサイザ22から供給されて複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信波の位相を、それぞれ制御してよい。また、複数の増幅器24は、複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信信号のパワーを、それぞれ増幅してよい。また、この場合、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。このように、
図2に示す電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備える場合、当該複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ複数含んで構成してよい。
【0049】
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の対象物200に反射したものである。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A~受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
【0050】
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の対象物200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0051】
また、受信アンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのようなカバー部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
【0052】
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
【0053】
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
【0054】
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部35に供給される。
【0055】
AD変換部35は、IF部34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35は、任意のアナログ-デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、制御部10の距離FFT処理部11に供給される。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部35によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、距離FFT処理部11に供給されてよい。
【0056】
距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、対象物200との間の距離を推定する。距離FFT処理部11は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換以外のフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0057】
距離FFT処理部11は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「距離FFT処理」と記す)。例えば、距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部11は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部11は、距離FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の対象物200があると判断してもよい。例えば、定誤差確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))検出処理のように、外乱信号の平均電力又は振幅から閾値以上のピーク値が検出された場合、送信波を反射する対象物(反射物体)が存在するものと判断する方法が知られている。
【0058】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する対象物200を検出することができる。
【0059】
距離FFT処理部11は、1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1)に基づいて、所定の対象物との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、距離FFT処理を行うことにより、
図1に示した距離Lを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果(例えば距離の情報)は、速度FFT処理部12に供給されてよい。また、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果は、物体検出部14にも供給されてよい。
【0060】
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、対象物200との相対速度を推定する。速度FFT処理部12は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部12は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。速度FFT処理部12は、高速フーリエ変換以外のフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0061】
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「速度FFT処理」と記す)。例えば、速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部12は、チャープ信号のサブフレーム(例えば
図3に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の対象物との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に距離FFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して速度FFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理を行うことにより、
図1に示した移動体100と所定の対象物200との相対速度を測定(推定)することができる。距離FFT処理を行った結果に対して速度FFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、到来角推定部13に供給されてよい。また、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果は、物体検出部14にも供給されてよい。
【0062】
到来角推定部13は、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、所定の対象物200から反射波Rが到来する方向を推定する。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の対象物200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、到来角推定部13は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理が行われた結果に基づいて、
図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。
【0063】
速度FFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。例えば、既知の到来方向推定のアルゴリズムとしては、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Technique)などが知られている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部13によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、物体検出部14に供給されてよい。
【0064】
物体検出部14は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、及び到来角推定部13の少なくともいずれかから供給される情報に基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。物体検出部14は、供給された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってもよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。物体検出部14において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、周波数選択部15に供給されてよい。また、物体検出部14において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、ECU50に供給されてもよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
【0065】
周波数選択部15は、物体検出部14から供給される情報に基づいて、電子機器1の送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を選択する。後述するように、周波数選択部15は、送信波Tを送信する周波数の帯域として使用可能な帯域をいくつかに区分し、その中から送信波Tを送信する複数の周波数を選択してもよい。また、後述するように、周波数選択部15は、前述のように送信された複数の周波数の送信波Tが反射されたそれぞれの反射波Rとして受信した信号の信号強度(例えば電力)が最大になる周波数を選択してもよい。周波数選択部15は、上述のようにして選択した周波数を、シンセサイザ22に設定してよい。これにより、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、周波数選択部15によって選択された周波数まで上昇させることができる。また、周波数選択部15は、後述する温度検出部60が検出した温度の情報に基づいて、周波数を選択する動作を開始してもよい。
【0066】
一実施形態において、周波数選択部15は、例えば温度検出部60が検出する温度に基づいて、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を選択してよい。この場合、後述のように、温度検出部60は、例えば送信アンテナ25及び/又は受信アンテナを覆うカバー部材の温度を検出してよい。また、後述のように、温度と最適周波数とを対応付ける動作を行う際に、周波数選択部15は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を変化させることにより、複数の周波数を順次選択してよい。また、温度と最適周波数とを対応付ける動作を行う際、周波数選択部15は、送信された複数の周波数の送信波Tが反射されたそれぞれの反射波Rとして受信した信号の信号強度(例えば電力)が最大になる周波数を選択してもよい。そして、所定の対象物200を検出する動作を行う際に、周波数選択部15は、上述のようにして選択した周波数を、シンセサイザ22に設定してよい。
【0067】
一実施形態に係る電子機器1が備えるECU50は、移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
【0068】
温度検出部60は、例えば電子機器1における所定の部位の温度を検出することができる。温度検出部60は、温度を検出することができれば、例えば測温抵抗体又は熱電対などを採用したセンサのような、任意の温度センサとしてよい。温度検出部60が温度を検出する部位の具体例については、さらに後述する。温度検出部60が検出した温度の情報は、制御部10に供給されてよい。また、温度検出部60が検出した温度の情報は、例えば制御部10における周波数選択部15に供給されてよい。上述のように、例えば所定の対象物200を検出する動作を行う際、周波数選択部15は、温度検出部60が検出した温度の情報に基づいて、周波数を選択してよい。
【0069】
図2に示す電子機器1は、1つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備えてもよい。例えば、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、仮想的に8本のアンテナにより構成される仮想アンテナアレイを備えるものと考えることができる。このように、電子機器1は、例えば仮想8本のアンテナを用いることにより、
図3に示す16のサブフレームの反射波Rを受信してもよい。
【0070】
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。
【0071】
一実施形態に係る電子機器1は、上述のように、送信波Tとして送信される送信信号及び反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する対象物200を検出する。この場合、送信波T及び反射波Rの少なくとも一方の少なくとも一部が、例えば樹脂製などのカバー部材で覆われていると、送信波Tの送信及び反射波Rの受信の少なくとも一方に影響し得る。電子機器1を構成するセンサ5を例えば自動車のような移動体100に搭載する場合、送信アンテナ25及び受信アンテナ31をレーダカバーのようなカバー部材で覆うことによって保護してもよい。また、意匠的な観点からも、センサ5を移動体100に搭載する場合、送信アンテナ25及び受信アンテナ31を外部に露出させずに、レーダカバーのようなカバー部材で覆ってもよい。
【0072】
以下、一実施形態に係る電子機器1を構成するセンサ5は、カバー部材によって少なくとも一部が覆われているものとして説明する。センサ5がカバー部材に覆われていると、送信アンテナ25から送信される送信波T及び受信アンテナ31から受信される反射波Rの少なくとも一方は、カバー部材を通過する際に減衰し、損失が発生することがある。
【0073】
図4は、一実施形態に係る電子機器1を構成するセンサ5の構成を概略的に示す図である。
図4は、
図1と同様に、センサ5を上から見た状態を示している。また、
図4において、センサ5と対象物200との位置関係は、概略的に示してある。
【0074】
図4に示すように、センサ5は、上述した送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えている。また、センサ5は、センサ基板6と、カバー部材7とを備えている。センサ基板6は、センサ基板表面6a及びセンサ基板裏面6bを有している。またカバー部材7は、カバー部材表面7a及びカバー部材裏面7bを有している。カバー部材7は、必ずしもレーダカバー又はレドームのような部材に限定されず、例えば移動体100のボディの少なくとも一部を構成する部材としてもよい。
【0075】
図4に示すように、センサ5において、送信アンテナ25及び受信アンテナ31は、センサ基板6に配置されている。特に、センサ基板6において、送信アンテナ25及び受信アンテナ31は、センサ基板表面6a上に配置されている。
図4において、送信アンテナ25及び受信アンテナ31は、例えばパッチアンテナのように平面的に構成されたアンテナとして示してある。また、センサ5において、カバー部材7は、送信アンテナ25及び受信アンテナ31を覆うように配置される。特に、カバー部材7は、送信アンテナ25及び受信アンテナ31から所定の距離sだけ離間して配置されている。また、カバー部材7は、例えば合成樹脂のような樹脂又はゴムのような素材で構成してよい。カバー部材7は、電磁波を通過させる物質で構成してよい。
【0076】
このように、一実施形態において、カバー部材7は、送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくとも一方の少なくとも一部を覆ってもよい。また、カバー部材7の少なくとも一部は樹脂製であってもよい。
【0077】
図4に示すような構成において送信波Tとして送信信号を送信すると、反射波Rとして受信される受信信号の強度(電力)は、送信波Tの波長λに依存して変動することを、出願人は確認した。また、
図4に示すような構成において、反射波Rとして受信される受信信号の強度(電力)は、送信アンテナ25及び受信アンテナ31とカバー部材7との距離sにも依存して変動することを、出願人は確認した。
【0078】
図5は、送信アンテナ25及び受信アンテナ31とカバー部材7との距離sと、反射波Rとして受信した受信信号の強度の損失Pとの相関を示す図である。
図5において、横軸は、送信アンテナ25及び受信アンテナ31とカバー部材7との距離s(
図4参照)を示す。また、縦軸は、反射波Rとして受信した受信信号の強度の損失Pを示す。
図5に示すように、距離sを例えば徐々に増大させると、それに応じて、受信信号の強度の損失Pは増減を繰り返す。すなわち、送信アンテナ25及び受信アンテナ31とカバー部材7と配置によっては、カバー部材7を構成する樹脂などに起因する受信信号の損失が大きくなる。受信信号の損失が大きくなると、対象物200を検出可能な距離が短くなる。また、
図5に示すように、このような変化は、送信波Tの周波数によっても異なる。
【0079】
上述のような受信信号の強度の損失Pの変動は、
図4に示す構成において送信波T及び受信波Rがカバー部材7を経て送信及び受信されることに起因すると考えられる。
【0080】
図4に示すように、送信アンテナ25から送信される送信波Tの一部は、(1)に示すように、送信アンテナ25からカバー部材7を透過して対象物200に直接到達する。一方、
図4に示すように、送信アンテナ25から送信される送信波Tの一部は、(3)に次いで(2)に示すように、カバー部材7に反射してから送信アンテナ25又はセンサ基板6に戻ってくる。そして、(2)に示すように送信アンテナ25又はセンサ基板6に戻った送信波Tの一部は、(1)に示すように、送信アンテナ25からカバー部材7を透過して対象物200に到達する。また、このような反射をさらに繰り返す送信波Tも存在することが想定される。したがって、対象物200に到達する送信波Tは、上述の送信波Tの合成であると想定される。
【0081】
また、
図4に示すように、対象物200に反射した反射波Rの一部は、(4)に示すように、カバー部材7を透過して受信アンテナ31に直接到達する。一方、
図4に示すように、カバー部材7を透過して受信アンテナ31に到達した反射波Rの一部は、(4)に次いで(5)に示すように、受信アンテナ31又はセンサ基板6において跳ね返り、カバー部材7に戻ってくる。そして、(5)に示すようにカバー部材7に戻った反射波Rの一部は、(6)に示すように、カバー部材7に反射してから受信アンテナ31に到達する。また、このような反射をさらに繰り返す反射波Rも存在することが想定される。したがって、受信アンテナ31が受信する反射波Rは、上述の反射波Rの合成であると想定される。
【0082】
ここで、送信波T及び反射波Rがカバー部材7を透過する透過率、並びに送信波T及び反射波Rがカバー部材7によって反射する反射率は、カバー部材7の素材に依存する。また、このカバー部材7は、温度に依存して膨張又は収縮することが想定される。すなわち、カバー部材7の厚さは、温度に依存して変化する。また、送信波T及び反射波Rがカバー部材7を透過する透過率、並びに送信波T及び反射波Rがカバー部材7によって反射する反射率は、カバー部材7の温度にも依存する。このため、送信アンテナ25が送信した送信波Tを受信アンテナ31が反射波Rとして受信した受信信号の強度の損失は、カバー部材7の温度に依存することになる。
【0083】
一実施形態において、センサ5は、温度検出部60を備えてよい。温度検出部60は、
図4に示すように、カバー部材7に設置してよい。ここで、温度検出部60は、カバー部材表面7a又はカバー部材裏面7bのいずれかに設置してよい。また、温度検出部60は、カバー部材表面7a及びカバー部材裏面7bの両方に設置してもよい。この場合、複数の温度検出部60が検出する温度のうち、最低温度を用いてもよいし、最高温度を用いてもよいし、平均温度を用いてもよい。また、温度検出部60は、センサ基板表面6a及び/又はセンサ基板裏面6bに設置してもよい。また、温度検出部60は、センサ5内の任意の箇所に設置してセンサ5内の温度を検出してもよいし、センサ5外の任意の箇所に設置して雰囲気温度を検出してもよい。本開示において、温度検出部60の個数は、1以上の任意の数でよい。
【0084】
以上のような構成により、電子機器1は、カバー部材7の特性が温度によって変化したとしても、受信信号の損失が少なくなるように動作を行う。
【0085】
以下、一実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。一実施形態に係る電子機器1は、異なる周波数で送信波Tを送信し、送信波Tが反射した反射波Rとして受信される受信信号の強度(電力)が最も強くなる周波数を用いて、物体の検出を行う。
【0086】
図6~
図8は、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する。以下、電子機器1は、ミリ波方式のFMCWレーダとして構成されるものとして説明する。
【0087】
図6は、一実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。
図6に示す動作は、例えば、電子機器1が、移動体100の周囲に存在する所定の対象物200を検出する際に開始してよい。
【0088】
図6に示す動作が開始すると、電子機器1の制御部10は、まず、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を決定する(ステップS1)。
【0089】
一実施形態において、電子機器1は、複数の送信波Tを異なる周波数で送信する。したがって、ステップS1において送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を決定する前に、制御部10は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数帯の中から、複数の異なる周波数を用意する。例えば、制御部10は、
図7に示すように、送信波Tの周波数帯を77GHzから81GHzとする場合、この周波数帯を0.5GHzごとの8つに区分してもよい。
【0090】
図7は、送信波Tの周波数帯(77GHz~81GHz)を8つに区分し、8つに区分した周波数帯のそれぞれに中心周波数を設定した例を示している。例えば、77.0GHz~77.5GHzの周波数帯には、77.25GHzの中心周波数が設定してある。また、例えば、77.5GHz~78.0GHzの周波数帯には、77.75GHzの中心周波数が設定してある。また、例えば、78.0GHz~78.5GHzの周波数帯には、78.25GHzの中心周波数が設定してある。
【0091】
図7に示す例では、77GHz~81GHzの周波数帯を、8つに区分してある。しかしながら、一実施形態において、任意の範囲の周波数帯を、任意の複数に区分してもよい。例えば、本開示において、77GHz~81GHzの周波数帯を、任意の個数の周波数帯で区分してよい。例えば、本開示において、77GHz~81GHzの周波数帯を、2つの周波数帯で区分してもよいし、10個の周波数帯で区分してもよい。また、それぞれの周波数帯は、少なくとも2つが等しい周波数帯域であるとしてもよい。
【0092】
また、
図7に示す例では、送信波Tの周波数帯(77GHz~81GHz)を区分したもののそれぞれは、重複なく連続して区分してある。しかしながら、一実施形態において、複数の送信波Tを異なる周波数で送信することができれば、送信波Tの周波数帯を区分した帯域のそれぞれは重複を含んでもよい。例えば、送信波Tの周波数帯(77~81GHz)を区分する際、77.0~78.0GHz(中心周波数77.5GHz)、77.5~78.5GHz(中心周波数78.0GHz)、78.0~79.0GHz(中心周波数78.5GHz)、…のようにしてもよい。また、一実施形態において、送信波Tの周波数帯を区分した帯域のそれぞれは不連続な部分を含んでもよい。例えば、送信波Tの周波数帯(77~81GHz)を区分する際、77.0~77.5GHz(中心周波数77.25GHz)、78.0~78.5GHz(中心周波数78.25GHz)、79.0~79.5GHz(中心周波数79.25GHz)、…のようにしてもよい。以下の説明においては、
図7に示す例のように、77GHz~81GHzの周波数帯は8つの区分に等分され、8つの区分された周波数帯はそれぞれ連続しているものとする。
【0093】
図6に示すステップS1において、制御部10は、
図7に示すように区分された周波数帯(に対応する中心周波数)のいずれかから、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を決定する。
【0094】
図8は、
図6に示したステップS1において行う周波数の決定の動作をより詳細に示すフローチャートである。以下、ステップS1において周波数を決定する動作を、より詳細に説明する。
【0095】
図6に示すステップS1の動作が開始すると、
図8に示すように、制御部10は、電子機器1が所定の条件を満たすか否か判定する(ステップS11)。ステップS11において判定する電子機器1における所定の条件とは、各種の条件を想定することができる。一実施形態において、所定の条件とは、例えば、温度検出部60が検出する温度に関する条件としてよい。
【0096】
一例として、制御部10は、電子機器1が搭載される移動体100において平常時の温度の範囲を10℃から28℃などのように規定してもよい。この場合、10℃から28℃
の範囲外の温度が温度検出部60によって検出されたら、制御部10は、所定の条件が満たされたと判定してもよい。また、一例として、制御部10は、単位時間において温度検出部60によって検出される所定の温度変化(温度変化率)を規定しておき、この温度変化率が所定以上になる場合に、所定の条件が満たされたと判定してもよい。すなわち、この場合、温度検出部60によってある程度の温度変化が検出される場合に、所定の条件が満たされたと判定される。上述したように、温度検出部60は、センサ5内の任意の箇所に設置してセンサ5内の温度を検出してもよいし、センサ5外の任意の箇所に設置して雰囲気温度を検出してもよい。
【0097】
また、温度検出部60は、
図4に示したように、センサ5においてカバー部材7の温度を検出するものとしてもよい。そこで、他の例として、制御部10は、カバー部材7の平常時の温度の範囲を15℃から25℃などのように規定してもよい。この場合、カバー部材7の温度が15℃から25℃の範囲外であると温度検出部60によって検出されたら、制御部10は、所定の条件が満たされたと判定してもよい。また、他の例として、制御部10は、カバー部材7の単位時間における所定の温度変化(温度変化率)を規定しておき、このカバー部材7の温度変化率が所定以上になる場合に、所定の条件が満たされたと判定してもよい。すなわち、この場合、カバー部材7においてある程度の温度変化が温度検出部60によって検出される場合に、所定の条件が満たされたと判定される。
【0098】
このように、例えば、温度検出部60がカバー部材7又はカバー部材7近傍において所定の範囲外の温度を検出すると、制御部10は、所定の条件が満たされたと判定してもよい。また、温度検出部60がカバー部材7又はカバー部材7近傍における所定の温度変化を検出すると、制御部10は、所定の条件が満たされたと判定してもよい。本開示において、制御部10は、温度検出部60の検出温度に基づいて、所定の条件が満たされたと判定してもよい。
【0099】
ステップS11において所定の条件を満たさないと判定される場合、制御部10は、所定の周波数を選択して(ステップS12)、
図8に示す動作を終了する。ここで、ステップS12における所定の周波数とは、例えばデフォルトで規定された周波数としてもよいし、前回の動作で使用した周波数を今回も使用するとしてもよい。すなわち、ステップS12においては、
図8に示す動作を行わずに周波数を決定してよい。このように、一実施形態において、制御部10は、ステップS11において所定の条件が満たされない場合、デフォルトの周波数又は前回使用した周波数など、予め定めた周波数を選択してよい。
【0100】
一方、ステップS11において所定の条件を満たすと判定される場合、制御部10は、送信波Tの周波数として用意された周波数のうち、最初の周波数を設定する(ステップS13)。より具体的には、ステップS13において、周波数選択部15は、
図7において中心周波数として示したような複数の異なる周波数のうち、最初の周波数を、シンセサイザ22に通知する。これにより、シンセサイザ22は、信号生成部21によって生成された信号の周波数を、周波数選択部15から通知された周波数にすることができる。ここで、最初の周波数とは、
図7において中心周波数として示したような複数の異なる周波数のうち、例えば最上段に示す最も低い周波数77.25GHzとしてよい。
【0101】
ステップS13において周波数が設定されたら、電子機器1は、設定された周波数の送信波Tを送信アンテナ25から送信する(ステップS14)。上述のように、送信アンテナ25から送信波Tが送信され、移動体100の周囲に所定の対象物200などが存在する場合、送信波Tは反射されて反射波Rになる。
【0102】
ステップS14において送信波Tが送信されると、電子機器1は、反射波Rを受信アンテナ31から受信する(ステップS15)。ステップS15において反射波Rを受信すると、制御部10は、反射波Rとして受信した受信信号の信号強度(例えば電力)を、例えば記憶部40に記憶する(ステップS16)。例えば、ステップS14において周波数77.25の送信波Tを送信し、ステップS15において反射波Rとして受信した受信信号の強度(電力)は、
図7に示すようにa[dB]であったとする。この場合、ステップS16において、制御部10は、周波数77.25に対応させて信号強度a[dB]を記憶部40などに記憶する。
【0103】
ステップS16において信号強度が記憶されたら、制御部10は、送信波Tを送信する次の周波数が存在するか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17において次の周波数が存在する場合、制御部10は、次の周波数を設定する(ステップS18)。例えば、ステップS12において、制御部10は、最初の周波数として
図7に示す中心周波数77.25GHzを設定したとする。この場合、制御部10は、ステップS17において次の周波数として77.75GHzが存在すると判定し、ステップS18において77.75GHzの周波数を設定する。
【0104】
ステップS18において周波数が設定されたら、制御部10は、ステップS13の後と同様に、その周波数を用いてステップS14において送信波Tを送信し、ステップS15において反射波Rを受信する。例えば、ステップS14において周波数77.75の送信波Tを送信し、ステップS15において反射波Rとして受信した受信信号の強度(電力)は、
図7に示すようにb[dB]であったとする。この場合、ステップS16において、制御部10は、周波数77.75に対応させて信号強度b[dB]を記憶部40などに記憶する。そして、制御部10は、ステップS17において次の周波数として
図7に示す中心周波数78.25GHzが存在すると判定し、ステップS18において送信波Tを送信する周波数として78.25GHzを設定する。
【0105】
以降同様にして、制御部10は、
図7に示す中心周波数の残りが存在する限り、
図8に示すステップS14からステップS18までを繰り返す。そして、制御部10は、ステップS18において送信波Tを送信する周波数として
図7に示す80.75GHzを設定したとする。この場合、制御部10は、ステップS14において送信波Tを送信し、ステップS15において反射波Rを受信し、ステップS16において信号強度を記憶した後、ステップS17において次の周波数はないと判断する。
【0106】
ステップS17において次の周波数がないと判断される場合、記憶部40には、
図7に示すようなテーブルが記憶されていることになる。すなちわ、ステップS17においてNOに進む場合、
図7に示すように、中心周波数77.25~80.75GHzにおけるそれぞれの周波数に対応する信号強度a~h[dB]の値がそれぞれ記憶されている。
【0107】
ステップS17においてNOに進む場合、制御部10は、信号強度(電力)が最大となる周波数を選択する(ステップS19)。例えば、
図7に示す信号強度a~h[dB]の値のうち、値e[dB]が最大であったとする。この場合、制御部10は、ステップS19において、値e[dB]に対応する周波数78.75GHzを選択する。ステップS19において周波数が選択されたら、制御部10は、
図8に示す動作を終了し、選択された周波数を、送信波Tを送信する周波数に決定する。
【0108】
上述の説明においては、制御部10は、
図7に示す中心周波数のうち、最初の周波数として最低の周波数(77.25GHz)を設定し、次に設定する周波数が徐々に大きくなるようにした。しかしながら、一実施形態において、周波数を他の態様で設定してもよい。例えば、制御部10は、
図7に示す中心周波数のうち、最初の周波数として最大の周波数(80.75GHz)を設定し、次に設定する周波数が徐々に小さくなるようにしてもよい。また、最初の周波数として選択される周波数は、用意された周波数帯の中で最大又は最小でなくてもよい。さらに、次に設定する周波数は、徐々に増大又は減少するように変化しなくてもよい。
【0109】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信アンテナ25から送信された周波数の異なる複数の送信波Tが反射されたそれぞれの反射波Rを受信アンテナ31から受信する。そして、制御部10は、受信アンテナ31から受信した結果に基づいて、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を決定する。
【0110】
ここで、制御部10は、送信アンテナ25から複数の送信波を逐次的に送信して、当該複数の送信波が反射されたそれぞれの反射波を受信アンテナ31から受信してもよい。また、制御部10は、複数の送信波が反射されたそれぞれの反射波として受信される受信信号の強度に基づいて、送信アンテナ25から送信する送信波の周波数を決定してもよい。より具体的には、制御部10は、複数の送信波のうち、反射波として受信される受信信号の強度が最も大きくなる送信波の周波数を、送信アンテナ25から送信する送信波の周波数として決定してもよい。
【0111】
上述のように、一実施形態において、制御部10は、所定の条件が満たされると、送信波Tの周波数を決定する動作を開始してもよい。また、一実施形態において、制御部10は、電子機器1の始動時又は起動時に、送信波Tの周波数を決定する動作を開始してもよい。また、一実施形態において、制御部10は、所定の範囲外の温度を検出すると、送信波Tの周波数を決定する動作を開始してもよい。また、一実施形態において、制御部10は、所定の温度変化を検出すると、送信波Tの周波数を決定する動作を開始してもよい。
【0112】
また、一実施形態において、制御部10は、カバー部材7又はカバー部材7近傍において所定の範囲外の温度を検出すると、送信波Tの周波数を決定する動作を開始してもよい。また、一実施形態において、制御部10は、カバー部材7又はカバー部材7近傍における所定の温度変化を検出すると、送信波Tの周波数を決定する動作を開始してもよい。
【0113】
図6に戻り、ステップS1において送信波Tの周波数が決定されたら、制御部10は、送信部20の送信アンテナ25からチャープ信号を決定された周波数の送信波Tとして送信するように制御する(ステップS2)。具体的には、制御部10は、信号生成部21に送信信号(チャープ信号)の生成を指示する。そして、制御部10は、チャープ信号が、シンセサイザ22、位相制御部23、及び増幅器24を得て、送信アンテナ25から送信波Tとして送信されるように制御する。ここで、制御部10の周波数選択部15は、ステップS1で決定された周波数を、シンセサイザ22に通知する。そして、シンセサイザ22は、信号生成部21によって生成された信号の周波数を、周波数選択部15から通知された周波数に上昇させる。
【0114】
ステップS2において送信波Tとして送信信号が送信されると、例えば移動体100の周囲に所定の対象物200が存在する場合、送信波Tは対象物200に反射して反射波Rになる。
【0115】
ステップS2においてチャープ信号が送信されると、制御部10は、受信部30の受信アンテナ31からチャープ信号を反射波Rとして受信するように制御する(ステップS3)。ステップS3においてチャープ信号が受信されると、制御部10は、送信チャープ信号と受信チャープ信号を掛け合わせることにより、ビート信号を生成するように受信部30を制御する(ステップS4)。具体的には、制御部10は、受信アンテナ31から受信されたチャープ信号が、LNA32により増幅され、ミキサ33によって送信チャープ信号と掛け合わされるように制御する。ステップS1からステップS3までの処理は、例えば既知のミリ波方式のFMCWレーダの技術を採用することで行ってよい。
【0116】
ステップS4においてビート信号が生成されると、制御部10は、生成された各チャープ信号から、所定の対象物200までの距離Lを推定する(ステップS5)。
【0117】
ステップS5において、距離FFT処理部11は、ステップS4で生成されたビート信号に距離FFT処理を行う。ステップS5において距離FFT処理が行われると、各周波数に対応する信号強度(電力)が得られる。ステップS5において、距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給されるデジタルのビート信号に、距離FFT処理を行ってよい。ステップS5において、距離FFT処理部11は、生成されたビート信号のうち、距離FFT処理が行われた結果におけるピークが所定の閾値以上になるか否かの判定に基づいて、所定の対象物200との間の距離を推定してもよい。また、ステップS5において距離FFT処理が行われるビート信号は、例えば1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1など)を単位としてよい。
【0118】
ステップS5において距離が推定されたら、制御部10は、対象物200との相対速度を推定する(ステップS6)。
【0119】
ステップS6において、速度FFT処理部12は、ステップS5において距離FFT処理された結果に速度FFT処理を行う。ステップS6において、速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果に、速度FFT処理を行ってよい。ステップS6において、速度FFT処理部12は、速度FFT処理が行われた結果におけるピークが所定の閾値以上になるか否かの判定に基づいて、所定の対象物200との相対速度を推定してもよい。ステップS6において速度FFT処理が行われる信号は、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号(例えば
図3に示すc1~c8)を単位としてよい。
【0120】
ステップS6において距離が推定されたら、制御部10は、対象物200から反射波Rが到来する方向を推定する(ステップS7)。
【0121】
ステップS7において、到来角推定部13は、ステップS6において速度FFT処理が行われた結果に基づいて、対象物200から反射波Rが到来する方向を推定してよい。ステップS7において、到来角推定部13は、上述のように、MUSIC及びESPRITのようなアルゴリズムを用いて、反射波Rが到来する方向を推定してよい。ステップS7において到来方向の推定が行われる信号は、例えば1つのフレーム(例えば
図3に示すフレーム1)に含まれる16のサブフレーム(
図3に示すサブフレーム1~サブフレーム16)のチャープ信号の全てを単位としてよい。
【0122】
ステップS7において到来方向が推定されたら、制御部10は、対象物200を検出する(ステップS8)。ステップS8において、物体検出部14は、ステップS5において推定された距離、ステップS6において推定された相対速度、及びステップ7において推定された到来方向の少なくともいずれかに基づいて、所定の対象物200が存在するか否かを判定してよい。一実施形態に係る電子機器1は、例えば1つのフレームごとに、
図6に示す動作を行ってもよい。
【0123】
従来のミリ波レーダの技術を用いたレーダセンサは、レーダカバーのようなカバー部材が例えば樹脂製である場合に、送信アンテナ及び/又は受信アンテナとの位置関係によっては、測定を良好に行うことができない場合も想定される。例えば、送信信号及び/又は受信信号が樹脂製のカバー部材を通過することによって、受信信号の強度に損失が発生することがある。受信信号の強度の損失が大きくなると、レーダセンサが所定の対象物を検出可能な距離が短くなってしまうことが想定される。これは、カバー部材を構成する樹脂が温度に依存して膨張又は収縮するため、送信信号及び/又は受信信号が樹脂を通過する際に受信信号の強度の損失が変化することが主な要因と考えられる。
【0124】
これに対し、一実施形態に係る電子機器1は、カバー部材7の温度又は雰囲気温度などを測定して、その温度が所定の範囲外となる場合、送信波Tの周波数を最適化させるように動作する。この場合、電子機器1は、送信波Tの周波数として使用できる帯域を区分して(
図7参照)、それぞれ区分された帯域における周波数で送信波Tを送信する。そして、電子機器1は、送信波Tが反射した反射波Rとして受信する受信信号の電力強度が最大となる周波数を、送信波Tの周波数として決定する。
【0125】
このため、電子機器1は、カバー部材7の温度又は雰囲気温度などが相当程度変化した場合などにおいても、送信波Tの周波数として最適な周波数を決定することができる。このようにして、電子機器1は、カバー部材7を構成する樹脂に起因する受信信号の強度の損失を最小にすることができるため、所定の対象物を検出可能な距離を最大にすることができる。
【0126】
したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、送信波を反射した対象物を検出する性能を向上させることができる。
【0127】
図9~
図13は、一実施形態に係る電子機器1の動作の他の例を説明する図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の動作の他の例を説明する。以下、上述場合と同様に、電子機器1は、ミリ波方式のFMCWレーダとして構成されるものとして説明する。
【0128】
まず、一実施形態に係る電子機器1において、温度と最適周波数とを対応付ける動作について説明する。一実施形態に係る電子機器1は、所定の温度において、異なる周波数で送信波Tを送信し、送信波Tが反射した反射波Rとして受信される受信信号の例えば強度(電力)が最も強くなる周波数(最適周波数)を、前記所定の温度に対応付ける。
【0129】
図9は、一実施形態に係る電子機器1において、温度と最適周波数とを対応付ける動作(以下、適宜「対応付け」と記す)を示すフローチャートである。
図9に示す対応付けは、例えば電子機器1(センサ5)を搭載した移動体100の工場出荷時などに行う動作としてよい。また、
図9に示す対応付けは、電子機器1(センサ5)を搭載した移動体100において例えばテストモードとして行うようなキャリブレーションとしてもよい。
【0130】
図9に示す対応付けにおいては、カバー部材7又はカバー部材7近傍を所定の温度にした状態で、電子機器1を動作させる。したがって、この対応付けを行う際は、例えばヒータ及び/又はクーラのような任意の温度調節機構を用いて、カバー部材7又はカバー部材7近傍を所定の温度にすることができる状態にする。このような温度調節機構は、例えばセンサ5の内部に設置されるものとしてもよいし、例えば温度制御可能な試験環境のようにセンサ5の外部に設置されるものとしてもよい。
【0131】
図9に示す対応付けは、所定の温度範囲について行う。また、一実施形態において、所定の温度範囲は、複数の温度範囲としてよい。したがって、この場合、
図9に示す対応付けは、複数の所定の温度範囲のそれぞれについて行ってよい。ここで、所定の温度範囲は、各種の範囲を想定することができる。例えば、所定の温度範囲は、20℃刻みとして、0℃~20℃、20℃~40℃、40℃~60℃などのような範囲としてよい。また、所定の温度範囲は、10℃刻みとして、0℃~10℃、10℃~20℃、20℃~30℃などのような範囲としてよい。また、所定の温度範囲は、5℃刻みとして、0℃~5℃、5℃~10℃、10℃~15℃などのような範囲としてよい。また、所定の温度範囲は、1℃刻みとして、0℃~1℃、1℃~2℃、2℃~3℃などのような範囲としてよい。このように、所定の温度範囲は、任意の温度範囲において、任意の温度刻みとしてよい。なお、本開示において、A,Bを任意の数として、A℃~B℃、及び温度範囲A~B[℃]との記載は、A℃以上、B℃未満を意味するものとする。
【0132】
以下、所定の温度範囲は、一例として、20℃刻みで、-40℃~100℃の温度範囲として説明する。すなわち、この場合、
図9に示す対応付けは、-40℃~-20℃、-20℃~0℃、0℃~20℃、20℃~40℃、40℃~60℃、60℃~80℃、及び80℃~100℃の温度範囲のそれぞれについて(つまり複数回)行ってよい。
【0133】
例として、まず、所定の温度範囲0℃~20℃について行う対応付けについて説明する。
図9に示す動作が開始すると、制御部10は、温度検出部60によって検出される温度が所定の温度範囲0℃~20℃にあるか否か判定する(ステップS21)。ステップS21において温度検出部60によって検出される温度は、カバー部材7又はカバー部材7近傍の温度としてもよい。すなわち、ステップS21においては、カバー部材7又はカバー部材7近傍の温度が0℃~20℃であるか否かを判定する。
【0134】
ステップS21において所定の温度範囲でないと判定される場合、制御部10は、
図9に示す動作を終了する。このようにして
図9に示す動作が終了した場合、制御部10は、再び
図9に示す動作を開始することにより、温度検出部60によって検出される温度が所定の温度範囲になるまで待ってもよい。例えば、上述のように所定の温度範囲を0℃~20℃として対応付けを行っている際に、温度検出部60によって検出された温度が23℃である場合、クーラのような温度調節機構を用いてカバー部材7又はカバー部材7近傍を冷却してもよい。このようにすれば、時間の経過を経て、温度検出部60によって検出される温度は、所定の温度範囲(0℃~20℃)内に変化すると想定される。また、例えば、上述のように所定の温度範囲を0℃~20℃として対応付けを行っている際に、温度検出部60によって検出された温度が-5℃である場合、ヒータのような温度調節機構を用いてカバー部材7又はカバー部材7近傍を加熱してもよい。このようにすれば、時間の経過を経て、温度検出部60によって検出される温度は、所定の温度範囲(0℃~20℃)内に変化すると想定される。
【0135】
また、ステップS21において所定の温度範囲でない(NO)と判定されて
図9に示す動作が終了した場合、制御部10は、対応付けを行う所定の温度範囲を変更してもよい。例えば、上述のように所定の温度範囲を0℃~20℃として対応付けを行っている際に、温度検出部60によって検出された温度が23℃である場合、制御部10は、対応付けを行う所定の温度範囲を、20℃~40℃に変更してもよい。このようにすれば、再び
図9に示す動作を開始することにより、温度検出部60によって検出される温度は所定の温度範囲にあると判定される。
【0136】
一方、ステップS21において所定の温度範囲であると判定される場合、制御部10は、送信波Tの周波数として用意された周波数のうち、最初の周波数を設定する(ステップS22)。
【0137】
ここで、電子機器1が送信波Tを送信するに際し設定する周波数について説明する。一実施形態において、電子機器1は、複数の送信波Tを異なる周波数で送信する。したがって、ステップS22において送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を決定する前に、制御部10は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数帯の中から、複数の異なる周波数を用意する。例えば、制御部10は、
図10に示すように、送信波Tの周波数帯を77GHzから81GHzとする場合、この周波数帯を0.5GHzごとの8つに区分してもよい。
【0138】
図10は、送信波Tの周波数帯(77GHz~81GHz)を8つに区分し、8つに区分した周波数帯のそれぞれに中心周波数を設定した例を示している。例えば、77.0GHz~77.5GHzの周波数帯には、77.25GHzの中心周波数が設定してある。また、例えば、77.5GHz~78.0GHzの周波数帯には、77.75GHzの中心周波数が設定してある。また、例えば、78.0GHz~78.5GHzの周波数帯には、78.25GHzの中心周波数が設定してある。なお、本開示において、A,Bを任意の数として、AGHz~BGHz、及びA~BGHzとの記載は、AGHz以上、BGHz未満を意味するものとする。
【0139】
図10に示す例では、77GHz~81GHzの周波数帯を、8つに区分してある。しかしながら、一実施形態において、任意の範囲の周波数帯を、任意の複数に区分してもよい。
【0140】
また、
図10に示す例では、送信波Tの周波数帯(77GHz~81GHz)を区分したもののそれぞれは、重複なく連続して区分してある。しかしながら、一実施形態において、複数の送信波Tを異なる周波数で送信することができれば、送信波Tの周波数帯を区分した帯域のそれぞれは重複を含んでもよい。例えば、送信波Tの周波数帯(77~81GHz)を区分する際、77.0~78.0GHz(中心周波数77.5GHz)、77.5~78.5GHz(中心周波数78.0GHz)、78.0~79.0GHz(中心周波数78.5GHz)、…のようにしてもよい。また、一実施形態において、送信波Tの周波数帯を区分した帯域のそれぞれは不連続な部分を含んでもよい。例えば、送信波Tの周波数帯(77~81GHz)を区分する際、77.0~77.5GHz(中心周波数77.25GHz)、78.0~78.5GHz(中心周波数78.25GHz)、79.0~79.5GHz(中心周波数79.25GHz)、…のようにしてもよい。以下の説明においては、
図10に示す例のように、77GHz~81GHzの周波数帯は8つの区分に等分され、8つの区分された周波数帯はそれぞれ連続しているものとする。
【0141】
図9に示すステップS22において、制御部10は、
図10に示すように区分された周波数帯(に対応する中心周波数)のいずれかから、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を設定する。より具体的には、ステップS22において、周波数選択部15は、
図10において中心周波数として示したような複数の異なる周波数のうち、最初の周波数を、シンセサイザ22に通知する。これにより、シンセサイザ22は、信号生成部21によって生成された信号の周波数を、周波数選択部15から通知された周波数にすることができる。ここで、最初の周波数とは、例えば
図10において中心周波数として示したような複数の異なる周波数のうち、例えば最上段に示す最も低い周波数77.25GHzとしてよい。
【0142】
ステップS22において周波数が設定されたら、電子機器1は、設定された周波数の送信波Tを送信アンテナ25から送信する(ステップS23)。上述のように、送信アンテナ25から送信波Tが送信され、移動体100の周囲に所定の対象物200などが存在する場合、送信波Tは反射されて反射波Rになる。
【0143】
ステップS23において送信波Tが送信されると、電子機器1は、反射波Rを受信アンテナ31から受信する(ステップS24)。ステップS24において反射波Rを受信すると、制御部10は、反射波Rとして受信した受信信号の信号強度(例えば電力)を、例えば記憶部40に記憶する(ステップS25)。ステップS25における処理までに、制御部10は、送信信号と受信信号とを掛け合わせて生成したビート信号に高速フーリエ変換処理を行って、距離、速度、角度、及び電力を算出することにより、所定の対象物200を検出してもよい。このようにして算出される電力を、制御部10は、記憶部40に記憶してよい。このような物体検出については、さらに後述する。例えば、ステップS23において周波数77.25の送信波Tを送信し、ステップS24において反射波Rとして受信した受信信号の強度(電力)は、
図10に示すようにa1[dB]であったとする。この場合、ステップS25において、制御部10は、周波数77.25に対応付けて信号強度a1[dB]を記憶部40などに記憶する。
【0144】
ステップS25において信号強度が記憶されたら、制御部10は、送信波Tを送信する次の周波数が存在するか否かを判定する(ステップS26)。ステップS26において次の周波数が存在する場合、制御部10は、次の周波数を設定する(ステップS27)。例えば、ステップS22において、制御部10は、最初の周波数として
図10に示す中心周波数77.25GHzを設定したとする。この場合、制御部10は、ステップS26において次の周波数として77.75GHzが存在すると判定し、ステップS27において77.75GHzの周波数を設定する。
【0145】
ステップS27において周波数が設定されたら、制御部10は、ステップS22の後と同様に、その周波数を用いてステップS23において送信波Tを送信し、ステップS24において反射波Rを受信する。例えば、ステップS23において周波数77.75の送信波Tを送信し、ステップS24において反射波Rとして受信した受信信号の強度(電力)は、
図10に示すようにb1[dB]であったとする。この場合、ステップS25において、制御部10は、周波数77.75に対応させて信号強度b1[dB]を記憶部40などに記憶する。そして、制御部10は、ステップS26において次の周波数として
図10に示す中心周波数78.25GHzが存在すると判定し、ステップS27において送信波Tを送信する周波数として78.25GHzを設定する。
【0146】
以降同様にして、制御部10は、
図10に示す中心周波数の残りが存在する限り、
図9に示すステップS23からステップS27までを繰り返す。そして、制御部10は、ステップS27において送信波Tを送信する周波数として
図10に示す80.75GHzを設定したとする。この場合、制御部10は、ステップS23において送信波Tを送信し、ステップS24において反射波Rを受信し、ステップS25において信号強度を記憶した後、ステップS26において次の周波数はないと判断する。
【0147】
ステップS26において次の周波数がないと判断される場合、記憶部40には、
図10に示すようなテーブルが記憶されていることになる。すなわち、ステップS26においてNOに進む場合、
図10に示すように、温度範囲0℃~20℃について、中心周波数77.25~80.75GHzにおけるそれぞれの周波数に対応する信号強度a1~h1[dB]の値がそれぞれ記憶されている。
【0148】
ステップS26においてNOに進む場合、制御部10は、信号強度(電力)が最大となる周波数を、上述した所定の温度範囲に対応付ける(ステップS28)。すなわち、本例においては、所定の温度範囲を0℃~20℃として対応付けを行った。例えば、
図10に示す信号強度a1~h1[dB]の値のうち、値f1[dB]が最大であったとする。この場合、制御部10は、ステップS28において、値f1[dB]に対応する周波数79.75GHzを、温度範囲0℃~20℃に対応付ける(記憶部40に記憶する)。ステップS28において周波数を温度に対応付けたら、制御部10は、
図9に示す動作を終了する。このようにして、電子機器1は、温度範囲0℃~20℃について対応付けをすることができる。上述の例では、電子機器1は、温度範囲0℃~20℃において最適な周波数として、79.75GHzの周波数を対応付ける。
【0149】
上述の説明においては、制御部10は、
図10に示す中心周波数のうち、最初の周波数として最低の周波数(77.25GHz)を設定し、次に設定する周波数が徐々に大きくなるようにした。しかしながら、一実施形態において、周波数を他の態様で設定してもよい。例えば、制御部10は、
図10に示す中心周波数のうち、最初の周波数として最大の周波数(80.75GHz)を設定し、次に設定する周波数が徐々に小さくなるようにしてもよい。また、最初の周波数として選択される周波数は、用意された周波数帯の中で最大又は最小でなくてもよい。さらに、次に設定する周波数は、徐々に増大又は減少するように変化しなくてもよい。
【0150】
以上のようにして、
図9に示す対応付けを温度範囲0℃~20℃について行った後、制御部10は、次の所定の温度範囲について再び
図9に示す対応付けを行う。以下、温度範囲0℃~20℃に続いて、次の所定の温度範囲20℃~40℃について行う例を示す。
【0151】
図11は、
図9に示す対応付けを温度範囲20℃~40℃について行った結果の例を示す図である。
図11は、所定の温度範囲を20℃~40℃として
図9に示す対応付けを行った結果を、
図10に示した結果と同様の形態で示す図である。すなわち、
図11は、温度範囲20℃~40℃について、中心周波数77.25~80.75GHzにおけるそれぞれの周波数に対応する信号強度a2~h2[dB]の値がそれぞれ記憶された例を示している。例えば、
図11に示す信号強度a2~h2[dB]の値のうち、値b2[dB]が最大であったとする。この場合、制御部10は、ステップS28(
図9)において、
図11に示す値b2[dB]に対応する周波数77.75GHzを、温度範囲20℃~40℃に対応付ける(記憶部40に記憶する)。このようにして、電子機器1は、温度範囲20℃~40℃について対応付けをすることができる。本例では、電子機器1は、温度範囲20℃~40℃において最適な周波数として、77.75GHzの周波数を対応付ける。なお、本開示において、A,Bを任意の数として、信号強度A~B[dB]との記載が有る場合、A[dB]以上、B[dB]未満を意味するものとする。
【0152】
このようにして、複数の所定の温度範囲についてそれぞれ対応付けを行うと、電子機器1は、例えば記憶部40において、
図12に示すテーブルのような対応関係を記憶することができる。
【0153】
図12は、電子機器1における温度と周波数との対応付けの一例を示す図である。上述の例において、
図12に示すように、温度範囲0~20[℃]には、最適の周波数としてf3=79.75[dB]が対応付けられている。また、上述の例において、
図12に示すように、温度範囲20~40[℃]には、最適の周波数としてf4=77.75[dB]が対応付けられている。同様に、
図9に示す対応付けを、-40℃~-20℃、-20℃~0℃、40℃~60℃、60℃~80℃、及び80℃~100℃の温度範囲のそれぞれについて行うことにより、
図12に示すテーブルの情報を追加することができる。
図12に示すテーブルにおける情報が埋まることにより、電子機器1は、所定の温度範囲において、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を決定することができる。
【0154】
このように、一実施形態では、所定の温度において、送信アンテナ25から送信された送信波Tが反射された反射波Rを受信アンテナ31から受信した結果に基づいて、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数が所定の温度に対応付けられてもよい。ここで、一実施形態において、送信アンテナ25から周波数を異ならせて送信された複数の送信波Tが反射されたそれぞれの反射波Rを受信アンテナ31から受信した複数の結果に基づいて、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数が所定の温度に対応付けられてもよい。さらに、一実施形態において、複数の送信波Tが反射されたそれぞれの反射波Rとして受信される受信信号の強度に基づいて、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数が所定の温度に対応付けられてもよい。より具体的には、一実施形態において、複数の送信波Tのうち、反射波Rとして受信される受信信号の強度が最も大きくなる送信波の周波数が、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として所定の温度に対応づけられてもよい。
【0155】
次に、一実施形態に係る電子機器1において、
図9に示した対応付けに基づいて、所定の対象物を検出する動作について説明する。
【0156】
図13は、一実施形態に係る電子機器1が所定の対象物を検出する動作を説明するフローチャートである。
図13に示す動作は、
図9に示した対応付けが所定の温度範囲の少なくともいくつかについて行われたことを前提として開始してよい。また、
図13に示す動作は、電子機器1が、移動体100の周囲に存在する所定の対象物200を検出する際に開始してよい。
【0157】
図13に示す動作が開始すると、電子機器1の制御部10は、温度検出部60によって検出される温度を取得する(ステップS31)。ステップS31において、温度検出部60は、カバー部材7又はカバー部材7近傍の温度を検出してよい。
【0158】
ステップS31において温度を取得したら、制御部10は、取得した温度に基づいて周波数を決定する(ステップS32)。具体的には、ステップS32において、制御部10の周波数選択部15は、記憶部40に記憶された情報に基づいて、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を決定する。ここで、記憶部40には、例えば
図12に示したような、温度と周波数との対応付けが記憶されている。したがって、例えば、温度検出部60によって検出される温度が2℃であれば、周波数選択部15は、温度範囲0~20[℃]に対応する周波数f3=79.75[GHz]を選択する。これにより、ステップS32において決定される周波数は79.75[GHz]になる。また、例えば、温度検出部60によって検出される温度が38℃であれば、周波数選択部15は、温度範囲20~40[℃]に対応する周波数f4=77.75[GHz]を選択する。これにより、ステップS32において決定される周波数は77.75[GHz]になる。同様に、例えば、温度検出部60によって検出される温度が51℃であれば、周波数選択部15は、温度範囲40~60[℃]に対応する周波数f5[GHz]を選択する。
【0159】
ステップS32において送信波Tの周波数が決定されたら、制御部10は、送信部20の送信アンテナ25からチャープ信号を決定された周波数の送信波Tとして送信するように制御する(ステップS33)。具体的には、制御部10は、信号生成部21に送信信号(チャープ信号)の生成を指示する。そして、制御部10は、チャープ信号が、シンセサイザ22、位相制御部23、及び増幅器24を得て、送信アンテナ25から送信波Tとして送信されるように制御する。ここで、制御部10の周波数選択部15は、ステップS32で決定された周波数を、シンセサイザ22に通知する。そして、シンセサイザ32は、信号生成部21によって生成された信号の周波数を、周波数選択部15から通知された周波数に上昇させる。
【0160】
ステップS33において送信波Tとして送信信号が送信されると、例えば移動体100の周囲に所定の対象物200が存在する場合、送信波Tは対象物200に反射して反射波Rになる。
【0161】
ステップS33においてチャープ信号が送信されると、制御部10は、受信部30の受信アンテナ31からチャープ信号を反射波Rとして受信するように制御する(ステップS34)。ステップS34においてチャープ信号が受信されると、制御部10は、送信チャープ信号と受信チャープ信号を掛け合わせることにより、ビート信号を生成するように受信部30を制御する(ステップS35)。具体的には、制御部10は、受信アンテナ31から受信されたチャープ信号が、LNA32により増幅され、ミキサ33によって送信チャープ信号と掛け合わされるように制御する。ステップS33からステップS34までの処理は、例えば既知のミリ波方式のFMCWレーダの技術を採用することによって行ってよい。
【0162】
ステップS35においてビート信号が生成されると、制御部10は、生成された各チャープ信号から、所定の対象物200までの距離Lを推定する(ステップS36)。
【0163】
ステップS36において、距離FFT処理部11は、ステップS35で生成されたビート信号に距離FFT処理を行う。ステップS36において距離FFT処理が行われると、各周波数に対応する信号強度(電力)が得られる。ステップS36において、距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給されるデジタルのビート信号に、距離FFT処理を行ってよい。ステップS36において、距離FFT処理部11は、生成されたビート信号のうち、距離FFT処理が行われた結果におけるピークが所定の閾値以上になるか否かの判定に基づいて、所定の対象物200との間の距離を推定してもよい。また、ステップS36において距離FFT処理が行われるビート信号は、例えば1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1など)を単位としてよい。
【0164】
ステップS36において距離が推定されたら、制御部10は、対象物200との相対速度を推定する(ステップS37)。
【0165】
ステップS37において、速度FFT処理部12は、ステップS36において距離FFT処理された結果に速度FFT処理を行う。ステップS37において、速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果に、速度FFT処理を行ってよい。ステップS37において、速度FFT処理部12は、速度FFT処理が行われた結果におけるピークが所定の閾値以上になるか否かの判定に基づいて、所定の対象物200との相対速度を推定してもよい。ステップS37において速度FFT処理が行われる信号は、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号(例えば
図3に示すc1~c8)を単位としてよい。
【0166】
ステップS37において距離が推定されたら、制御部10は、対象物200から反射波Rが到来する方向を推定する(ステップS38)。
【0167】
ステップS38において、到来角推定部13は、ステップS37において速度FFT処理が行われた結果に基づいて、対象物200から反射波Rが到来する方向を推定してよい。ステップS38において、到来角推定部13は、上述のように、MUSIC及びESPRITのようなアルゴリズムを用いて、反射波Rが到来する方向を推定してよい。ステップS38において到来方向の推定が行われる信号は、例えば1つのフレーム(例えば
図3に示すフレーム1)に含まれる16のサブフレーム(
図3に示すサブフレーム1~サブフレーム16)のチャープ信号の全てを単位としてよい。
【0168】
ステップS38において到来方向が推定されたら、制御部10は、対象物200を検出する(ステップS39)。ステップS39において、物体検出部14は、ステップS36において推定された距離、ステップS37において推定された相対速度、及びステップ38において推定された到来方向の少なくともいずれかに基づいて、所定の対象物200が存在するか否かを判定してよい。一実施形態に係る電子機器1は、例えば1つのフレームごとに、
図13に示す動作を行ってもよい。
【0169】
このように、制御部10は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を、例えば温度検出部60によって検出される温度に基づいて決定する。ここで、温度検出部60は、カバー部材7又はカバー部材7近傍の温度を検出してもよい。すなわち、一実施形態において、制御部10は、カバー部材7又はカバー部材7近傍の温度に基づいて、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を決定してもよい。また、一実施形態において、制御部10は、温度検出部60によって検出される温度と、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数との対応関係を記憶させてもよい。この場合、温度検出部60によって検出される温度と、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数との対応関係を記憶する記憶部40を備えてもよい。
【0170】
一実施形態において、温度検出部60によって検出される温度と、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数との対応関係を、記憶部40などに記憶しなくてもよい。この場合、例えば、温度検出部60によって検出される温度と、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数との対応関係とを規定する演算式などを、記憶部40などに記憶してもよい。このようにして、一実施形態において、制御部10は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数を、温度検出部60によって検出される温度に基づいて算出してもよい。
【0171】
従来のミリ波レーダの技術を用いたレーダセンサは、レーダカバーのようなカバー部材が例えば樹脂製である場合に、送信アンテナ及び/又は受信アンテナとの位置関係によっては、測定を良好に行うことができない場合も想定される。例えば、送信信号及び/又は受信信号が樹脂製のカバー部材を通過することによって、受信信号の強度に損失が発生することがある。受信信号の強度の損失が大きくなると、レーダセンサが所定の対象物を検出可能な距離が短くなってしまうことが想定される。これは、カバー部材を構成する樹脂が温度に依存して膨張又は収縮するため、送信信号及び/又は受信信号が樹脂を通過する際に受信信号の強度の損失が変化することが主な要因と考えられる。
【0172】
これに対し、一実施形態に係る電子機器1は、カバー部材7の温度又は雰囲気温度などを検出し、その温度において送信波Tの周波数を最適化させるように動作する。
【0173】
このため、電子機器1は、カバー部材7の温度又は雰囲気温度などが変化した場合などにおいても、送信波Tの周波数として最適な周波数を決定することができる。このようにして、電子機器1は、カバー部材7を構成する樹脂に起因する受信信号の強度の損失を最小にすることができるため、所定の対象物を検出可能な距離を最大にすることができる。
【0174】
したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、送信波を反射した対象物を検出する性能を向上させることができる。
【0175】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0176】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御プログラムとして実施してもよい。
【0177】
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えばセンサ5又は制御部10の一方のみの少なくとも一部を備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、
図3に示すような、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ31、LNA32、ミキサ33、IF部34、AD変換部35の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、記憶部40を含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様を採ることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0178】
1 電子機器
5 センサ
6 センサ基板
7 カバー部材
10 制御部
11 距離FFT処理部
12 速度FFT処理部
13 到来角推定部
14 物体検出部
15 周波数選択部
20 送信部
21 信号生成部
22 シンセサイザ
23 位相制御部
24 増幅器
25 送信アンテナ
30 受信部
31 受信アンテナ
32 LNA
33 ミキサ
34 IF部
35 AD変換部
40 記憶部
50 ECU
60 温度検出部
100 移動体
200 対象物(物体)