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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118279
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20220805BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
B65G1/00 511A
B65G1/04 537B
B65G1/04 543
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014684
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】清水 透
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ09
3F022MM52
3F022MM57
3F022NN57
3F022PP01
3F022PP06
3F022QQ06
3F022QQ11
(57)【要約】
【課題】搬送設備と制御装置との間で行われる通信の適正化を図る。
【解決手段】搬送システム(1)は、人が侵入可能な作業領域(R1)に設けられ、荷を搬送する搬送設備(10)と、搬送設備(10)を制御する制御装置(20)と、制御装置(20)と搬送設備(10)との間でデータを伝送する第1通信システム(141)と、制御装置(20)と搬送設備(10)との間でデータを伝送する第2通信システム(142)とを備え、作業領域(R1)へ人が進入する場合に、第1通信システム(141)の動作が停止され、第2通信システム(142)の動作が維持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が侵入可能な作業領域に設けられ、荷を搬送する搬送設備と、
前記搬送設備を制御する制御装置と、
前記制御装置と前記搬送設備との間でデータを伝送する第1通信システムと、
前記制御装置と前記搬送設備との間でデータを伝送する第2通信システムと、
を備え、
前記作業領域へ人が進入する場合に、前記第1通信システムの動作が停止され、前記第2通信システムの動作が維持される、
搬送システム。
【請求項2】
前記第1通信システムは光無線通信でデータを伝送し、
前記第2通信システムは無線通信でデータを伝送する、
請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記搬送設備は、
荷を保管する保管棚と、
前記保管棚に隣接する走行路と、
前記走行路に沿って移動可能であり、前記保管棚から荷を出し入れする第1搬送装置と、
を含む請求項1又は請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記第1通信システムは、前記搬送設備を動作させる動作指令を伝送し、
前記第2通信システムは、前記搬送設備の診断データを伝送する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記動作指令の通信経路を前記第1通信システムを介した通信経路から前記第2通信システムを介した通信経路に切り替え可能な通信経路切替部を備える、
請求項4記載の搬送システム。
【請求項6】
前記通信経路切替部は、手動により前記通信経路を切り替え可能である、
請求項5記載の搬送システム。
【請求項7】
前記第1搬送装置上の荷の有無を検出するセンサ、前記第1搬送装置上の荷のサイズオーバーを検出するセンサ、前記第1搬送装置の移動位置を検出するセンサ、前記第1搬送装置の加減速を検出するセンサ、前記搬送設備の部品の状態を検出するセンサ、前記第1通信システムの通信障害を監視する通信監視装置、並びに、前記第2通信システムの通信障害を監視する通信監視装置のうち、1つ又は複数を備える、
請求項3記載の搬送システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記搬送設備の異常情報を出力する情報出力部を有する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記第1通信システムは、
前記第1搬送装置に設けられた第1伝送装置と、
前記第1伝送装置と光を介して通信可能であり、前記制御装置と通信可能な第2伝送装置と、
を有し、
前記第1伝送装置と前記第2伝送装置とが授受する光の光軸は前記走行路に沿う、
請求項3又は請求項7に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業領域で荷を搬送する搬送装置を備えた搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、荷を保管可能な格納庫と、格納庫に荷を出し入れする移載装置とを備えた自動倉庫について記載されている。この自動倉庫では、メンテナンスのために作業者が非常扉を開けると、非常扉の開放に連動してプラグが抜けることで、移載装置の主電源が切断され、移載装置が走行不能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-167006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業領域で荷を搬送する搬送設備を備えた搬送システムにおいて、搬送設備で何らかの異常が生じて作業員が作業領域に進入する際、作業領域への進入に連動して搬送設備の動作が停止されることでメンテナンスの作業性を向上できる。一方、搬送設備の動作の停止に伴って、搬送設備と作業領域外の制御装置との間で全ての通信が遮断されると、例えばメンテナンスに有用な情報が得られなくなることから、搬送設備の復旧に時間がかかるという課題が生じる。
【0005】
本発明は、搬送設備と制御装置との間で行われる通信の適正化を図ることのできる搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
人が侵入可能な作業領域に設けられ、荷を搬送する搬送設備と、
前記搬送設備を制御する制御装置と、
前記制御装置と前記搬送設備との間でデータを伝送する第1通信システムと、
前記制御装置と前記搬送設備との間でデータを伝送する第2通信システムと、
を備え、
前記作業領域へ人が進入する場合に、前記第1通信システムの動作が停止され、前記第2通信システムの動作が維持される、
搬送システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送設備と制御装置との間で行われる通信の適正化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の自動倉庫システムを示す図である。
図2】地上制御盤の詳細を示すブロック図である。
図3】地上制御盤と搬送設備とにより実行される搬送処理の第1例を示すシーケンス図である。
図4】地上制御盤と搬送設備とにより実行される搬送処理の第2例を示すシーケンス図である。
図5】地上制御盤と搬送設備とにより実行される搬送処理の第3例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態の自動倉庫システムを示す図である。
【0010】
実施形態に係る自動倉庫システム1は、荷を保管及び搬送するための搬送設備10と、搬送設備10を制御する地上制御盤20とを備える。搬送設備10は、所定の作業領域R1に配置される。作業領域R1は、柵30で囲まれ、人の自由な進入が阻止される。作業領域R1では、通常時、人が居ない状態で搬送設備10が荷の搬送を行う。地上制御盤20は、柵30の外に配置される。柵30には、メンテナンスの際に作業員が進入可能な扉(進入路)31が設けられ、作業員は扉31を介して作業領域R1に入ることができる。自動倉庫システム1は、本発明に係る搬送システムの一例に相当する。地上制御盤20は、本発明に係る制御装置の一例に相当する。
【0011】
搬送設備10は、荷を格納可能な複数の収納スペースを有する保管棚11と、保管棚11の各収納スペースから荷を出し入れ可能なスタッカークレーンなどの第1搬送装置12と、第1搬送装置12を動かすための周辺設備及び周辺装置と、を備える。周辺設備には、第1搬送装置12に電力を供給する給電トロリー13が含まれる。周辺装置には、第1通信システムとしての空間光伝送システム141と、第2通信システムとしての無線通信システム142とが含まれる。
【0012】
第1搬送装置12は、作業領域R1の所定の走行路に沿って移動する走行装置121と、走行装置121に支持されて昇降枠122aを昇降させる昇降装置122と、昇降枠122aに搭載されて保管棚11の収納スペースへフォーク123aを進退させる進退装置123と、走行装置121、昇降装置122及び進退装置123を制御する機上制御盤125とを備える。機上制御盤125は、走行装置121に支持され、第1搬送装置12の走行に伴って移動する。機上制御盤125は、本発明に係る通信監視装置としても機能する。
【0013】
機上制御盤125は、走行装置121、昇降装置122及び進退装置123に電力を供給する配電部125Aと、第1搬送装置12の制御を行う制御部125Bとを備える。機上制御盤125は、地上制御盤20と通信を行い、地上制御盤20から送られた動作指令に基づいて各駆動部(走行装置121、昇降装置122及び進退装置123)の制御を行う。制御部125Bは、CPU(Central Processing Unit)125a、CPU125aが実行する制御プログラムを格納した記憶装置125b、信号を授受するインタフェース125c、並びに、メンテナンス時に手動で各駆動部の試運転を行うための操作部125dを有するコンピュータである。インタフェース125cは、CPU125aと、配電部125A、第1伝送装置141a、無線装置142a、並びに、後述する各種のセンサ126との間で信号又はデータのやり取りを仲介する。
【0014】
保管棚11は、第1搬送装置12の走行路に隣接して、上記走行路に沿った方向に複数列、高さ方向に複数段の収納スペースを有する。保管棚11は、第1搬送装置12の走行路を挟んで、一方の側ともう一方の側とに配置されていてもよい。第1搬送装置12が所定の列の前まで移動し、フォーク123aを所定段の高さまで上昇させ、保管棚11の収納スペースにフォーク123aを進退させることで、荷を出し入れすることができる。
【0015】
なお、搬送設備10には、複数の第1搬送装置12と、複数の第1搬送装置12がそれぞれ荷を出し入れする複数組の保管棚11とが設けられていてもよい。また、搬送設備10には、第1搬送装置12が出し入れする荷を、第1搬送装置12と搬入用コンベア又は搬出用コンベアとの間で搬送する第2搬送装置が含まれてもよい。
【0016】
空間光伝送システム141は、第1伝送装置141aと第2伝送装置141bとを有し、第1伝送装置141aと第2伝送装置141bとの間で空間を伝播するレーザ光を介してデータを伝送する。第1伝送装置141aは第1搬送装置12に搭載され、第2伝送装置141bは作業領域R1のフロア側に配置される。第2伝送装置141bは通信線を介して地上制御盤20に接続され、地上制御盤20と第1搬送装置12(その機上制御盤125)とは空間光伝送システム141を介して通信を行う。「フロア側」とは、作業領域R1内の移動体以外の部分を意味する。移動体とは、荷を搬送するために移動する構成(第1搬送装置12等)である。
【0017】
第1伝送装置141a及び第2伝送装置141bが授受するレーザ光の光軸は、第1搬送装置12の走行方向に沿うように設定され、第1搬送装置12の走行により第1伝送装置141aが移動しても第1伝送装置141aと第2伝送装置141bとの通信を行うことができる。人や物がレーザ光の光軸上に位置し、レーザ光を遮断すると、空間光伝送システム141を介した通信が遮断される。
【0018】
無線通信システム142は、複数の無線装置142a~142cを有し、これらの間で無線通信(例えばWi-Fi、Bluetooth(登録商標)などの通信規格による無線通信)を行う。1つの無線装置142aは第1搬送装置12に搭載され、別の無線装置142b、142cは、作業領域R1のフロア側又は作業領域R1外に配置される。無線装置142bは通信線を介して地上制御盤20に接続され、無線装置142cはフロア監視装置15に接続され、地上制御盤20と第1搬送装置12(その機上制御盤125)並びにフロア監視装置15とが、無線通信システム142を介して通信を行う。
【0019】
地上制御盤20は、搬送設備10へ主電源及び副電源の供給を行う配電部21と、制御処理を行う制御部22とを備える。制御部22は、CPU221と、CPU221が実行する制御プログラム並びに収集した診断データを格納する記憶装置222と、表示装置223と、オペレータによる操作の入力を行うタッチパネルなどの入力装置224と、通信データの入出力を行うインタフェース225とを備えるコンピュータである。入力装置224は、本発明に係る通信経路切替部として機能する。表示装置223は、本発明に係る情報出力部の一例に相当する。
【0020】
<搬送設備への配電構成>
地上制御盤20から搬送設備10へ送られる電源には、給電トロリー13を介して第1搬送装置12へ送られる主電源と、フロア側の電気機器に送られる副電源とが含まれる。主電源は、第1搬送装置12の駆動電力、並びに、第1搬送装置12に搭載される周辺装置(141a、142a)の動作電力を供給する。副電源は、フロア側の周辺装置(141b、142b、142c)の動作電力を供給する。
【0021】
作業領域R1へ通じる扉31には、扉31の開放と連動して抜き差しされるプラグ311が設けられている。プラグ311は、副電源の電源ラインのうち第2伝送装置141bに電力を供給する電源ラインに介在され、作業員が扉31を開けて作業領域R1に進入すると、プラグ311が外れて第2伝送装置141bの動作電力が断たれるようになっている。
【0022】
<搬送設備の診断構成>
第1搬送装置12は、当該第1搬送装置12の各部の状態を検知する複数のセンサ126を備える。複数のセンサ126には、フォーク123a上の荷の有無を検知するセンサ(マイクロスイッチ又は近接スイッチ等)、荷のサイズオーバーを検出するセンサ、フォーク123aの進退状態を検知するセンサ、昇降枠122aの昇降状態を検知するセンサ、第1搬送装置12の移動位置を検出するための距離センサ、第1搬送装置12の加減速を検出する加減速センサ、配電部125Aの電磁接触器(リレー等)125qのアンサーバック情報を出力する回路、配電部125Aのインバータ回路125pの動作情報(出力周波数、出力電流等)を出力する回路などが含まれる。複数のセンサ126の出力が、第1搬送装置12の各部の状態を表わす診断データとなる。
【0023】
さらに、第1搬送装置12の機上制御盤125は、第1搬送装置12に搭載される第1伝送装置141a及び無線装置142aを介した通信に障害が生じていないか監視を行い、第1伝送装置141a又は無線装置142aの通信が切断された場合に、通信障害を検出する。機上制御盤125による通信切断の情報も第1搬送装置12の診断データの一つとなる。
【0024】
搬送設備10は、保管棚11、給電トロリー13、並びに、フロア側の周辺装置(第2伝送装置141b、無線装置142b、142cなど)に異常が生じていないか監視を行うための複数のセンサ及びフロア監視装置15を備えていてもよい。当該複数のセンサには、収納スペースからの荷のはみ出しを検出するセンサが含まれていてもよい。フロア監視装置15の監視結果は、搬送設備10のフロア側の診断データとなる。
【0025】
<通信内容と通信経路>
地上制御盤20は、第1搬送装置12の駆動制御と、第1搬送装置12を含む搬送設備10の診断データの収集を行うために、空間光伝送システム141と無線通信システム142を介した通信を行う。
【0026】
第1搬送装置12の駆動制御は、地上制御盤20から第1搬送装置12の機上制御盤125へ、動作指令が送られることで実現される。動作指令とは、走行装置121への走行指令、昇降装置122への昇降指令、進退装置123への進退指令など、第1搬送装置12を動作させる指令である。地上制御盤20が動作指令を受信し、動作指令に応じて走行装置121、昇降装置122、進退装置123を駆動することで、第1搬送装置12が動作する。
【0027】
動作指令は、通常時、空間光伝送システム141を介した通信経路で伝送される。人又は物が第1搬送装置12の走行路上に侵入するなどして、空間光伝送システム141のレーザ光の通り道が遮られた場合には、動作指令の伝送が中断され、第1搬送装置12は停止する。また、扉31が開放されて、第2伝送装置141bの副電源が断たれることでも動作指令の伝送が中断され、第1搬送装置12は停止する。
【0028】
動作指令は、オペレータが地上制御盤20の入力装置224を介して、手動で設定を切り替えることで、空間光伝送システム141を介した通信経路から、無線通信システム142を介した通信経路に切り替えて伝送可能である。すなわち、通常時、地上制御盤20の制御部22では、CPU221が動作指令を第2伝送装置141bを介して送信し、機上制御盤125のCPU125aは第1伝送装置141aを介して受信されたデータを動作指令として解釈し、動作指令に基づき走行装置121、昇降装置122及び進退装置123を駆動する。一方、オペレータが入力装置224を介して設定を切り替えると、地上制御盤20の制御部22では、CPU221が動作指令を無線装置142bを介して送信し、機上制御盤125のCPU125aは無線装置142aを介して受信された動作指令のデータを、データヘッダ等から動作指令であると解釈する。そして、動作指令に基づき走行装置121、昇降装置122及び進退装置123を駆動する。
【0029】
第1搬送装置12の診断データ、並びに、搬送設備10のフロア側の診断データは、無線通信システム142を介した通信経路で伝送される。第1搬送装置12の診断データは、機上制御盤125から地上制御盤20へ送られ、フロア側の診断データは、フロア監視装置15から地上制御盤20へ送られる。
【0030】
第1搬送装置12の診断データは、第1搬送装置12に搭載された上記診断構成の出力に基づくデータであり、フォーク123a上の荷の有無を示す検知データ、荷のオーバーサイズを示す検知データ、昇降枠122aの昇降状態を示す検知データ、フォーク123aの進退状態を示す検知データ、第1搬送装置12の移動位置と加減速を示す検知データ、各駆動部(走行装置121、昇降装置122及び進退装置123)の電力系統に含まれる電磁接触器(リレー等)125qのアンサーバックの情報、当該電力系統に含まれるインバータ回路125pの動作情報(出力周波数、出力電流等)などを含む。また、診断データには、第1搬送装置12に搭載された第1伝送装置141a及び無線装置142aの通信接続又は通信切断の情報などが含まれる。
【0031】
フロア監視装置15の診断データは、保管棚11、給電トロリー13、フロア側の周辺装置(第2伝送装置141b、無線装置142b、142cなど)の正常又は異常を示す情報を含む。
【0032】
<地上制御盤の診断関連機能>
地上制御盤20は、インタフェース225を介して別のコンピュータを接続し、当該コンピュータから診断データのダウンロード要求を行うことで、収集した診断データを接続されたコンピュータに送る機能を有する。メンテナンス作業員は、ダウンロードした診断データを解析することで、搬送設備10の異常時に異常箇所の候補を特定することができる。
【0033】
さらに、地上制御盤20は、収集した診断データが異常を示す場合に、異常に対処する処理を行う。異常に対処する処理は、異常が生じた第1搬送装置12への動作指令の送信を停止し、第1搬送装置12を停止させる処理、表示装置223等を用いて異常発生を報知する処理、診断データから異常箇所の特定が可能な場合に、異常箇所の特定及び表示を行う処理などを含む。
【0034】
<動作説明1>
図3は、地上制御盤と搬送設備との動作の一例を示すシーケンス図である。図3の動作例は、正常時の動作である。図3図5のシーケンス図では、空間光伝送システム141を介したデータ伝送を一点鎖線で示し、無線通信システム142を介したデータ伝送を長破線で示す。
【0035】
地上制御盤20の制御部22には、荷の移動元と移動先の情報が複数登録されており、制御部22は、当該登録情報に基づき、第1搬送装置12が移動元から荷を受け、移動先へ荷を渡すように、第1搬送装置12の機上制御盤125に、順次、動作指令を送信する(ステップJ1、J4、J8)。動作指令は、空間光伝送システム141を介した通信経路で伝送される。機上制御盤125は、動作指令を受信すると、動作指令に基づき第1搬送装置12の各駆動部(走行装置121、昇降装置122、進退装置123)を駆動し、当該駆動により荷を移動元から移動先へ受け渡す(ステップJ2、J5、J9)。
【0036】
機上制御盤125及びフロア監視装置15は、第1搬送装置12の上記の荷の搬送処理の期間中、或いは、搬送処理の休止期間において、診断データを収集し(ステップJ3、J6、J10)、収集した診断データを地上制御盤20へ送信する(ステップJ7、J11)。診断データは、無線通信システム142を介した通信経路で伝送される。
【0037】
通常動作時、上記のような荷の搬送処理と診断データの収集及び伝送の処理が繰り返される。なお、荷の搬送処理中に、第1搬送装置12の走行路に物又は人が侵入し、空間光伝送システム141のレーザ光が遮られると、動作指令の伝送が途切れることで第1搬送装置12が停止する。しかし、この場合でも、無線通信システム142を介した診断データの伝送は継続される。したがって、第1搬送装置12が走行する走行路の安全性が向上されつつ、地上制御盤20による診断データの収集を継続できる。さらに、診断データの伝送により負の作用が及ぼされることは無く、また、第1搬送装置12が停止しても、診断データによって第1搬送装置12又は作業領域R1の状況を把握できる可能性が高くなることから、診断データの収集を継続できることは有用である。
【0038】
<動作説明2>
図4は、地上制御盤と搬送設備との動作の一例を示すシーケンス図である。図4の動作例は、搬送設備10に異常が生じてメンテナンス作業員がメンテナンスを行うときの動作である。
【0039】
搬送設備10に何らかの異常が発生した場合(ステップJ21)、異常が示された診断データが機上制御盤125又はフロア監視装置15から地上制御盤20へ送られる(ステップJ22)。例えば、第1搬送装置12の駆動部の異常であれば、幾つかのセンサ126の出力情報から、動作指令に反する状態を示す出力があったり、正常なアンサーバックが出力されなかったりすることで、異常が診断データに示される。
【0040】
異常が示された診断データを受けると、地上制御盤20は、異常が生じた第1搬送装置12への動作指令を停止して(ステップJ23)、表示装置223などを介して異常の発生を報知する(ステップJ24)。作業員は、上記報知に基づいて、地上制御盤20から近々の診断データを読み出し(ステップJ25)、この診断データから異常箇所を推測する(ステップJ27)。そして、作業員は、作業領域R1に進入し(ステップJ29)、搬送設備10のメンテナンスを行う(ステップJ31)。作業員の作業領域R1への進入に際して、第2伝送装置141bの電源が遮断され、空間光伝送システム141が停止される(ステップJ30)。したがって、仮に、メンテナンスの際に、地上制御盤20から第1搬送装置12へ動作指令が出力されてしまった場合でも(ステップJ33)、動作指令は第1搬送装置12へ送られず、予期せず第1搬送装置12が動いてしまうといった事態が抑制される。
【0041】
作業員は、メンテナンスにより異常箇所を確認する際など、操作部125dを手動により操作して第1搬送装置12の各駆動部の動作確認を行う(ステップJ34)。
【0042】
機上制御盤125は、第1搬送装置12が停止されてからメンテナンスの際、並びに、動作確認の前後においても診断データを収集し(ステップJ26、J32、J35)、収集された診断データを地上制御盤20へ送る(ステップJ28、J36)。これらの診断データは、作業員が地上制御盤20から読み出すことができ(ステップJ27)、作業員は、当該診断データに基づいて、ステップJ34の動作確認を検証したり、ステップJ34の動作確認の結果が異常である場合に、真の異常箇所を推定することができる。
【0043】
<動作説明3>
図5は、地上制御盤と搬送設備との動作の一例を示すシーケンス図である。図5の動作例は、第1搬送装置12の動作に支障がない範囲の異常が発生した場合の対処の一例を示す。
【0044】
搬送設備10に異常が発生した場合(ステップJ41)、この異常が示された診断データが機上制御盤125又はフロア監視装置15から地上制御盤20へ送られる(ステップJ42)。ここでは、第2伝送装置141bの断線等が生じて、空間光伝送システム141の通信切断を示す診断データが伝送されたものとする。
【0045】
このような場合、地上制御盤20は、異常が生じた第1搬送装置12への動作指令を停止し(ステップJ43)、表示装置223などを介して異常の発生を報知する(ステップJ44)。地上制御盤20は、診断データから空間光伝送システム141の通信異常と判別し、判別した異常の内容をステップJ44の報知に含めるようにしてもよい。作業員は、上記報知に基づいて、地上制御盤20から診断データを読み出し(ステップJ45)、この診断データから異常箇所を推測する(ステップJ46)。ここで、作業員は、診断データの内容から通信切断が荷の落下等に起因するものでないことを確認することにより、異常箇所が空間光伝送システム141の部品にあり、第1搬送装置12の駆動には支障が無いことを判断できる。
【0046】
このように第1搬送装置12の駆動に支障がない通信切断の異常と判断された場合、作業員は、異常箇所の復旧時期を遅らせて、荷の搬送処理を先に進めるという方針を選択することができる。
【0047】
このような方針を選択した場合、作業員は、まず、地上制御盤20の入力装置224を操作することで、動作指令の通信経路を、空間光伝送システム141を介した通信経路から、無線通信システム142を介した通信経路へ切り替える(ステップJ47)。そして、作業員は、扉31を開放しても第1搬送装置12が停止しない状態になることを周囲の作業員に注意喚起し(ステップJ48)、地上制御盤20に搬送設備10の動作指令の送信再開(搬送再開)の操作を行う(ステップJ49)。すると、地上制御盤20は、動作指令の送信を再開し(ステップJ50)、動作指令が無線通信システム142を介して伝送される。そして、第1搬送装置12が動作指令に応じて動作を再開する(ステップJ51)。
【0048】
そして、搬送処理が進んで搬送設備10が休止となったら(ステップJ52)、作業員は、地上制御盤20の入力装置224を操作することで、動作指令の通信経路を、無線通信システム142を介した通信経路から、空間光伝送システム141を介した通信経路へ戻す(ステップJ53)。そして、作業員は、作業領域R1へ進入し、異常箇所のメンテナンスを行う(ステップJ54)。
【0049】
このような動作例によれば、例えば搬送処理が繁忙な期間に、第1搬送装置12の動作に支障のない異常が生じた場合、荷の搬送処理を継続させて繁忙な期間に対応しつつ、その後、繁忙さが解消してからメンテナンスを行って異常箇所を改修することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態の自動倉庫システム1によれば、搬送設備10と地上制御盤20との間でデータ伝送する空間光伝送システム141と無線通信システム142との2つの通信経路を備える。そして、人が作業領域R1に侵入する際に、空間光伝送システム141の動作が停止し、無線通信システム142の動作が維持されるようになっている。したがって、搬送設備10と地上制御盤20との間で伝送されるデータを、人の作業領域R1への侵入時に遮断された方が良いデータと、人の作業領域R1への侵入時にも遮断されない方が都合の良いデータとの2系統に分け、2系統のデータにそれぞれ適したデータ伝送を実現することができる。したがって、地上制御盤20と搬送設備10との間で行われる通信の適正化を図ることができる。
【0051】
さらに、本実施形態の自動倉庫システム1によれば、2系統の通信システムの一方である第1通信システムには光無線通信でデータを伝送する空間光伝送システム141が適用され、2系統の通信システムの他方である第2通信システムには無線の通信でデータを伝送する無線通信システム142が適用される。したがって、人又は物体が通信経路上に位置したときには、空間光伝送システム141のみデータ伝送不可とし、無線通信システム142はデータ伝送可能な状態に維持できる。したがって、通信経路が遮られることでデータの伝送が遮断された方が良いデータが空間光伝送システム141で伝送され、遮断されない方が良いデータが無線通信システム142で伝送されることで、2系統のデータにそれぞれ適したデータ伝送を実現できる。そして、地上制御盤20と搬送設備10との間で行われる通信の適正化を図ることができる。なお、無線の通信と光無線通信とを区別して記したときには、無線の通信には光無線通信は含まれないものとする。
【0052】
さらに、本実施形態の自動倉庫システム1によれば、第1搬送装置12を動作させる動作指令が、作業領域R1への人の進入により停止される空間光伝送システム141を介して伝送される。さらに、搬送設備10の診断データが、作業領域R1への人の進入で停止されない無線通信システム142を介して伝送される。したがって、メンテナンスのため作業員が作業領域R1へ進入する場合に、動作指令の伝送が停止してメンテナンスの作業性を向上でき、メンテナンス中の動作確認の際などには診断データの伝送が継続されるので、この診断データを用いて動作確認の検証や、未だ異常箇所が明らかになっていない場合には、異常箇所の解明に利用することができる。
【0053】
なお、作業領域R1への人の進入により動作が停止する第1通信システムと、動作が維持する第2通信システムとは、それぞれ空間光伝送システム141と無線通信システム142に限定されることはなく、上記の逆としたり、第1通信システムと第2通信システムとの両方を互いに独立した無線通信システムとするなど、どのような組合せが適用されてもよい。これらの場合でも、上記と同様の作用効果が奏される。
【0054】
さらに、本実施形態の自動倉庫システム1によれば、第1搬送装置12を動作される動作指令の通信経路を、作業領域R1への人の進入により停止される空間光伝送システム141を介した通信経路から、作業領域R1への人の進入で動作が維持される無線通信システム142を介した通信経路へ切替え可能である。したがって、動作指令を伝送する通信経路に異常があり、かつ、第1搬送装置12の動作に支障がないような場合に、動作指令の通信経路を切り替えることで、異常の回復を後回しにして、第1搬送装置12による荷の搬送を継続することができる。よって、荷の搬送処理が繁忙な期間に、状況に合わせた柔軟なメンテナンスのスケジュール調整が可能となる。
【0055】
さらに、本実施形態の自動倉庫システム1によれば、動作指令の通信経路は作業員の手動の操作によって切り替え可能である。動作指令の通信経路を切り替えることで、人が作業領域R1に進入しても第1搬送装置12の動作が停止しない要注意状態となるので、手動による切り替えにより上記の状態の注意喚起を促すことができ、作業員が知らないうちに作業領域R1が要注意状態となってしまうことを回避できる。
【0056】
さらに、本実施形態の自動倉庫システム1によれば、診断データにより異常が示された場合に、地上制御盤20は、表示装置223等を用いて異常の報知(異常情報の出力)を行う。また、診断データから異常箇所の特定が可能な場合に、地上制御盤20は、異常箇所の表示(異常情報の出力)を行う。したがって、作業員は、これらの情報を利用し、2系統の通信経路を有することで得られる複数の対処方針の中から、適正な対処方針を選択することができる。そして、適正な対処方針が選択されることで、異常発生により荷の搬送処理に及ぼされる遅延を抑制することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の自動倉庫システム1によれば、第1通信システムである空間光伝送システム141が、第1搬送装置12に設けられた第1伝送装置141aと、第1伝送装置141aと光(具体的にはレーザ光)を介して通信可能で、地上制御盤20と通信可能な第2伝送装置141bとを有し、通信媒体の光の光軸が、第1搬送装置12の走行路に沿うように構成される。したがって、空間光伝送システム141の稼働中に人又は物が第1搬送装置12の走行路に侵入し、通信媒体である光を遮ったときに、第1搬送装置12の動作指令の伝送が遮られて、第1搬送装置12の走行を停止させることができ、走行路の安全性をより向上できる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、搬送設備が保管棚と保管棚から荷を出し入れする第1搬送装置とを有する構成を示したが、搬送設備は、このような構成に限定されず、例えば、所定の搬入口(第1ベルトコンベアの一端等)から所定の搬出口(第2ベルトコンベアの一端等)まで荷を自動搬送する自動搬送台車を備える一方、保管棚や第1搬送装置が含まれない構成であってもよい。また、上記実施形態では、スタッカークレーンを第1搬送装置として有する自動倉庫システムを示したが、本発明は、保管棚の同一階段の複数の収納エリアに縦横に移動する自動搬送台車と、自動搬送台車が搬送する荷を昇降するリフトとを備えた自動倉庫システムに適用されてもよい。
【0059】
また、第1通信システムと第2通信システムは、無線通信システムと空間光伝送システムに限られず、どのような方式の通信システムであってもよい。これにより、人が作業領域へ進入する場合に、一方の通信システムを停止させて作業領域における作業の安全性を確保しつつ、他方の通信システムを停止させずに有用なデータ通信を継続することができる。
【0060】
また、人が作業領域へ進入する場合に停止する通信経路を介して伝送されるデータと、人が作業領域へ進入する場合に動作が維持される通信経路を介して伝送されるデータとは、前者が動作指令で、後者が診断データであることに限定されず、その他、様々な種別のデータが伝送されて、データ種別の特性に適した通信経路の割り当てがなされてもよい。例えば、診断データが空間光伝送システムを介して伝送されてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、動作指令が伝送される通信経路の切替えが、作業員による手動により実施できる構成を示したが、動作指令の通信経路が異常となった場合に、所定の条件に基づいて動作指令の通信経路が自動的に切り替えられる構成が採用されてもよい。その他、診断データを作成するためのセンサの種類、診断データの具体的な内容など、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 自動倉庫システム
10 搬送設備
11 保管棚
12 第1搬送装置
121 走行装置
122 昇降装置
123 進退装置
125 機上制御盤
125A 配電部
125B 制御部
126 センサ
20 地上制御盤
21 配電部
22 制御部
30 柵
31 扉
311 プラグ
141 空間光伝送システム
141a 第1伝送装置
141b 第2伝送装置
142 無線通信システム
142a~142c 無線装置
図1
図2
図3
図4
図5