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▶ 日本圧着端子製造株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011830
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタ構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6473 20110101AFI20220107BHJP
   H01R 13/6581 20110101ALI20220107BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20220107BHJP
【FI】
H01R13/6473
H01R13/6581
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113214
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 英央
(72)【発明者】
【氏名】楳原 雅憲
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FB01
5E021FB20
5E021FC23
5E021LA09
5E223AA21
5E223AB60
5E223AB65
5E223AC21
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB31
5E223CD01
5E223EA14
5E223EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信号の減衰の度合いを小さくすることができる、差動信号を送受信するためのコネクタおよびコネクタ構造を提供すること。
【解決手段】コネクタは、一端側が、基材の実装面に接続可能な実装領域を有し、他端側が、相手方コネクタに接続可能な接続領域を有する、一対の端子を構成する第1の端子および第2の端子と、相手方ハウジングの相手方嵌合部と嵌合可能な嵌合部と、一対の端子が挿通される挿通部とを有するハウジングとを備える。第1の端子および第2の端子は、実装領域において、実装面に略水平な第1の方向で互いに離間する第1の配置となり、接続領域において、第1の方向に略垂直な第2の方向で互いに離間する第2の配置となるように、実装領域と接続領域との間で、第1の配置から第2の配置へと遷移する遷移領域を有する。挿通部は、一対の端子を保持領域で保持する保持部を有する。遷移領域は、保持領域から接続領域までの間に位置している。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に接続されるとともに、相手方ハウジングを有する相手方コネクタに嵌合により接続される、差動信号を送受信するためのコネクタであって、
前記コネクタは、
一端側が、前記基材の実装面に接続可能な実装領域を有し、他端側が、前記相手方コネクタの一対の相手方端子に接続可能な接続領域を有する、前記差動信号を送受信するための一対の端子を構成する第1の端子および第2の端子と、
前記相手方ハウジングの相手方嵌合部と嵌合可能な嵌合部と、前記一対の端子が挿通される挿通部とを有するハウジングと
を備え、
前記第1の端子および前記第2の端子は、前記実装領域において、前記実装面に略水平な第1の方向で互いに離間する第1の配置となり、前記接続領域において、前記第1の方向に略垂直な第2の方向で互いに離間する第2の配置となるように、前記実装領域と前記接続領域との間で、前記第1の配置から前記第2の配置へと遷移する遷移領域を有し、
前記挿通部は、前記一対の端子を保持領域で保持する保持部を有し、
前記遷移領域は、前記保持領域から前記接続領域までの間に位置している、コネクタ。
【請求項2】
前記挿通部は、前記遷移領域を収容する遷移領域収容部をさらに有し、
前記遷移領域収容部は、絶縁性を有し、前記第1の端子および前記第2の端子の周囲を囲むように設けられる、請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、導電性を有する導電部を備え、
前記導電部は、前記挿通部を介在させた状態で、前記一対の端子を囲むように設けられる、請求項1または2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1の端子および前記第2の端子は、互いに略同じ長さを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1の端子および前記第2の端子の端縁は、前記実装領域において、前記第1の方向および前記第2の方向に略垂直な第3の方向で略一致するよう配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のコネクタと、前記コネクタと接続される相手方コネクタとを備える、差動信号を送受信するためのコネクタ構造であって、
前記相手方コネクタは、
一対の相手方端子である第1の相手方端子および第2の相手方端子と、
相手方嵌合部を有する相手方ハウジングと
を備え、
前記第1の相手方端子および第2の相手方端子は、前記第1の端子および第2の端子にそれぞれ接続されており、
前記相手方ハウジングの前記相手方嵌合部は、前記ハウジングの前記嵌合部と嵌合している、コネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を送受信するためのコネクタおよびコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波の電気信号を送受信するために、電気信号として差動信号が採用されることがある。たとえば、特許文献1には、差動信号の伝送路となる一対の端子を複数有し、複数対の端子が、一方側でプリント回路基板に実装されることにより接続され、他方側で相手方コネクタに嵌合することにより接続されるコネクタが開示されている。複数対の端子のうちの一対の端子は、一端側で、プリント基板と平行な方向に揃えられ(以後、「水平配置」と呼ぶ)、一端側から他端側に向かう途中で屈曲されることで、他方側で、プリント基板に垂直な方向に揃えられている(以後、「垂直配置」と呼ぶ)。上記コネクタは、複数対の端子がプリント回路基板に実装される側からコネクタのハウジングに圧入されて保持されるように、組み立てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-355819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対の端子の配置を水平配置から垂直配置に遷移させる端子構造を採用する場合、端子の配置が遷移する遷移領域において、端子間の間隔が変化する。この端子間の間隔の変化に起因して、コネクタ内の伝送路の特性インピーダンスは、遷移領域で変化する。相手方コネクタがコネクタと嵌合して接続された際に、コネクタのハウジングと相手方コネクタの相手方ハウジングとの間に、ハウジングおよび相手方ハウジングの公差などによって、ある程度の隙間(空気層、以下、「嵌合隙間」と呼ぶ)が生じる。ハウジングおよび相手方ハウジングを構成する樹脂や金属などの誘電率と、嵌合隙間を構成する周辺雰囲気(空気層)の誘電率とは、互いに異なる。この誘電率の違いに起因して、相手方コネクタがコネクタと接続したコネクタ構造内の伝送路の特性インピーダンスも、嵌合隙間において変化する。
【0005】
相手方コネクタと嵌合する際に加えられる力などへの耐性を有するように、ハウジングに端子を保持するためには、端子を保持するためのある程度の領域(保持部)がハウジングに確保される。特許文献1のコネクタでは、端子の遷移領域は、保持部に対してプリント回路基板への実装領域側となるハウジングの外部に位置する。つまり、端子の遷移領域と、相手方コネクタと嵌合する側に位置する嵌合隙間との間に、ハウジングの保持部が介在することになる。そのため、遷移領域と嵌合隙間とは、端子の実装領域となる一端側から他端側へ向かう方向の間隔が大きくなる。この場合、遷移領域および嵌合隙間のそれぞれにおいて、特性インピーダンスが変化して、差動信号はこれらの領域で個別に複数回反射され、差動信号の減衰の度合いが大きくなってしまうことを本発明者らは見出した。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みて、相手方コネクタと接続したときに、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる、差動信号を送受信するためのコネクタおよびコネクタ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るコネクタは、基材に接続されるとともに、相手方ハウジングを有する相手方コネクタに嵌合により接続される、差動信号を送受信するためのコネクタであって、前記コネクタは、一端側が、前記基材の実装面に接続可能な実装領域を有し、他端側が、前記相手方コネクタの一対の相手方端子に接続可能な接続領域を有する、前記差動信号を送受信するための一対の端子を構成する第1の端子および第2の端子と、前記相手方ハウジングの相手方嵌合部と嵌合可能な嵌合部と、前記一対の端子が挿通される挿通部とを有するハウジングとを備え、前記第1の端子および前記第2の端子は、前記実装領域において、前記実装面に略水平な第1の方向で互いに離間する第1の配置となり、前記接続領域において、前記第1の方向に略垂直な第2の方向で互いに離間する第2の配置となるように、前記実装領域と前記接続領域との間で、前記第1の配置から前記第2の配置へと遷移する遷移領域を有し、前記挿通部は、前記一対の端子を保持領域で保持する保持部を有し、前記遷移領域は、前記保持領域から前記接続領域までの間に位置している。
【0008】
前記挿通部は、前記遷移領域を収容する遷移領域収容部をさらに有し、前記遷移領域収容部は、絶縁性を有し、前記第1の端子および前記第2の端子の周囲を囲むように設けられることが好ましい。
【0009】
前記ハウジングは、導電性を有する導電部を備え、前記導電部は、前記挿通部を介在させた状態で、前記一対の端子を囲むように設けられることが好ましい。
【0010】
前記第1の端子および前記第2の端子は、互いに略同じ長さを有することが好ましい。
【0011】
前記第1の端子および前記第2の端子の端縁は、前記実装領域において、前記第1の方向および前記第2の方向に略垂直な第3の方向で略一致するよう配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態に係るコネクタ構造は、上記コネクタと、前記コネクタと接続される相手方コネクタとを備える、差動信号を送受信するためのコネクタ構造であって、前記相手方コネクタは、一対の相手方端子である第1の相手方端子および第2の相手方端子と、相手方嵌合部を有する相手方ハウジングとを備え、前記第1の相手方端子および第2の相手方端子は、前記第1の端子および第2の端子にそれぞれ接続されており、前記相手方ハウジングの前記相手方嵌合部は、前記ハウジングの前記嵌合部と嵌合している。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコネクタおよびコネクタ構造によれば、相手方コネクタと接続したときに、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の一実施形態に係るコネクタおよび相手方コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図である。
図1B】本発明の一実施形態に係るコネクタおよび相手方コネクタの嵌合後の状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコネクタを正面側から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコネクタを背面側から見た、コネクタの一部分を示す斜視図である。
図4】第2の端子の実装領域および保持領域を通るように、嵌合・離脱方向に沿って切断された、本発明の一実施形態に係るコネクタの断面図である。
図5A】本発明の一実施形態に係るコネクタの一対の端子を示す斜視図である。
図5B】本発明の一実施形態に係るコネクタの一対の端子を示す側面図である。
図5C】本発明の一実施形態に係るコネクタの一対の端子を示す上面図である。
図6A】本発明の一実施形態に係るコネクタにおける挿通部の挿通孔を示す、挿通部を嵌合方向側から見た模式的な図である。
図6B図6Aに示される挿通孔へ一対の端子が挿通された状態を示す模式的な図である。
図7A図6Aに示される挿通孔への一対の端子の挿通状態を示す、一対の端子の保持領域での模式的な、嵌合・離脱方向に垂直な切断図であり、図4におけるVIIA-VIIA線の切断図である。
図7B図6Aに示される挿通孔への一対の端子の挿通状態を示す、一対の端子の保持領域での模式的な、嵌合・離脱方向に垂直な切断図である。図4におけるVIIB-VIIB線の切断図である。
図7C図6Aに示される挿通孔への一対の端子の挿通状態を示す、一対の端子の遷移領域での模式的な、嵌合・離脱方向に垂直な切断図であり、図4におけるVIIC-VIIC線の切断図である。
図7D図6Aに示される挿通孔への一対の端子の挿通状態を示す、一対の端子の遷移領域での模式的な、嵌合・離脱方向に垂直な切断図であり、図4におけるVIID-VIID線の切断図である。
図7E図6Aに示される挿通孔への一対の端子の挿通状態を示す、一対の端子の遷移領域での模式的な、嵌合・離脱方向に垂直な切断図であり、図4におけるVIIE-VIIE線の切断図である。
図8】本発明の一実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図9A】本発明の一実施形態に係るコネクタ構造における特性インピーダンスを示す図である。
図9B】従来のコネクタ構造における特性インピーダンスを示す図である。
図10】従来のコネクタ構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るコネクタおよびコネクタ構造を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のコネクタおよびコネクタ構造は、以下の実施形態に限定されない。
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係るコネクタ構造について、図1A図2などを参照しながら、説明する。本実施形態に係るコネクタ構造Sは、差動信号を送受信するためのコネクタ構造である。コネクタ構造Sの用途は、特に限定されないが、本実施形態では、コネクタ構造Sは、自動車に搭載される装置や部品などの間を接続し、高周波の電気信号である差動信号を送受信するための車載用コネクタ構造である。コネクタ構造Sは、図1Aおよび図1Bに示されるように、コネクタ1と、コネクタ1と接続される相手方コネクタCとを備える。本実施形態では、コネクタ構造Sは、コネクタ1と相手方コネクタCとが互いに嵌合することによって構成されている。本実施形態では、コネクタ1がオスコネクタであり、相手方コネクタCがメスコネクタである。なお、コネクタ1がメスコネクタであり、相手方コネクタCがオスコネクタであってもよい。コネクタ構造Sは、たとえば、図1Aおよび図1Bに示されるように、基材Bに取り付けられたコネクタ1と、電線EWに接続された相手方コネクタCとを接続するコネクタ構造Sであってもよいし、基材(基板)対基材(基板)など、他の構造を有するコネクタ構造であってもよい。
【0017】
なお、以下では、基材Bの実装面BPに略水平な一の方向を第1の方向D1と呼ぶ。第1の方向D1は、後述するように、コネクタ1の一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)が基材Bの実装面BPに接続する実装領域A1(図5Aなど参照)において、互いに離間する方向と同方向となっている。また、第1の方向D1に略垂直な一の方向を第2の方向D2と呼ぶ。第2の方向D2は、後述するように、コネクタ1の一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)が、相手方コネクタCの一対の相手方端子Tに接続する接続領域A2(図5Aなど参照)において、互いに離間する方向と同方向となっている。また、第1の方向D1および第2の方向D2の両方に垂直な方向を第3の方向D3と呼ぶ。本実施形態では、第3の方向D3は、相手方コネクタCのコネクタ1に対する嵌合・離脱方向である(以下、第3の方向を嵌合・離脱方向D3と呼ぶ)。本実施形態では、相手方コネクタCがコネクタ1に嵌合する方向を嵌合方向D31と呼び、相手方コネクタCがコネクタ1から離脱する方向を離脱方向D32と呼び、両方向をまとめて嵌合・離脱方向D3と呼ぶ。なお、本実施形態では、基材(回路基板)Bの実装面BPに垂直な方向が第2の方向D2となり、第2の方向D2と第3の方向(嵌合・離脱方向)D3との両方に垂直な方向である第1の方向D1は、コネクタ1の幅方向とも言い換えることができる。
【0018】
相手方コネクタCは、コネクタ1に嵌合することで、コネクタ1に接続される。相手方コネクタCは、コネクタ1との間で差動信号を送受信する。相手方コネクタCは、本実施形態では、一対の相手方端子Tである第1の相手方端子T1および第2の相手方端子T2と、第1の相手方端子T1および第2の相手方端子T2(一対の相手方端子T)が取り付けられる相手方ハウジングHとを備えている。
【0019】
第1の相手方端子T1および第2の相手方端子T2(一対の相手方端子T)は、相手方コネクタCに設けられた差動信号を送受信するための一対の端子である。一対の相手方端子Tは、相手方コネクタC内の差動信号の伝送路を構成する。一対の相手方端子Tは、導電性を有する材料、たとえば金属材料などによって構成されている。本実施形態では、第1の相手方端子T1および第2の相手方端子T2は、一端側が、コネクタ1の第1の端子21および第2の端子22にそれぞれ接続され、他端側が、電線EWにそれぞれ接続されている。一対の相手方端子Tの形状は、特に限定されないが、本実施形態では、嵌合・離脱方向D3に沿って延びる略直線状に形成され、コネクタ1に設けられた一対の端子2の接続領域A2(図5A参照)に対応して、第2の方向D2で互いに離間して配置されている。図示される例では、一対の相手方端子Tはメス端子であり、オス端子である一対の端子2にそれぞれ外嵌される。この場合、相手方コネクタCがコネクタ1に嵌合したときに、第1の相手方端子T1および第2の相手方端子T2は、コネクタ1の第1の端子21および第2の端子22にそれぞれ外嵌されて接続される。具体的には、一対の相手方端子Tは、一対の端子2が後述する接続孔M21(図1A参照)に挿入されることで、一対の端子2と接続される。なお、一対の相手方端子Tがオス端子であり、一対の端子2がメス端子であってもよい。本実施形態では、一対の相手方端子Tは、第1の方向D1に並列配置される複数対(4つの対)によって構成されるが、コネクタ1の一対の端子2の対の数および配置に応じて、適宜変更される。また、本実施形態では、第1の相手方端子T1および第2の相手方端子T2は、互いに略同じ長さを有する。これにより、相手方コネクタC内の伝送路の線路長に差異が生じることがなくなるので、送受信される差動信号の位相ずれが防止される。
【0020】
相手方ハウジングHは、一対の相手方端子T(第1の相手方端子T1および第2の相手方端子T2)を保持する。相手方ハウジングHは、コネクタ1と嵌合可能な相手方嵌合部Mを有している。
【0021】
相手方嵌合部Mは、相手方ハウジングHのうち、後述するコネクタ1の嵌合部12(図2参照)に嵌合する部位である。相手方嵌合部Mは、相手方ハウジングHにおいて嵌合方向D31に設けることができる。本実施形態では、相手方嵌合部Mは、嵌合部12(図2参照)の嵌合凹部へと嵌合方向D31に挿入されて収容される。本実施形態では、相手方嵌合部Mは、図1Aに示されるように、相手方外側嵌合部M1と、相手方外側嵌合部M1の内側に設けられる相手方内側嵌合部M2とを備えている。
【0022】
相手方外側嵌合部M1は、本実施形態では、後述する嵌合部12の外側嵌合部121(図2参照)に挿入されて収容される。相手方外側嵌合部M1は、後述されるコネクタ1の嵌合部12の外側嵌合部121(図2参照)に内嵌されてもよく、後述されるコネクタ1の嵌合部12の内側嵌合部122(図2参照)に外嵌されてもよい。本実施形態では、相手方外側嵌合部M1は、後述するコネクタ1の内側側壁122w(図2参照)が挿入されて収容される、収容空間MSを有している。具体的には、相手方外側嵌合部M1は、嵌合・離脱方向D3に延伸する四角枠状に形成された側壁によって構成された相手方外部ハウジングH3を有している。相手方外部ハウジングH3は、具体的には、絶縁性を有する材料、たとえば樹脂材料によって構成されている。相手方外側嵌合部M1の収容空間MSは、相手方外部ハウジングH3の側壁の内側に画定されている。なお、相手方外側嵌合部M1の形状は、コネクタ1の嵌合部12と嵌合可能であれば、特に限定されない。
【0023】
相手方外側嵌合部M1は、図1Aに示されるように、嵌合方向D31側の端面である相手方外側端面M10を有している。相手方外側端面M10は、コネクタ1の嵌合部12(図2参照)と嵌合したときに、後述するコネクタ1の外側嵌合部121(図2参照)の嵌合方向D31での突き当り面となる外側端面121bと対向する(図4参照)。
【0024】
相手方内側嵌合部M2は、本実施形態では、後述される嵌合部12の内側嵌合部122(図2参照)に挿入されて収容される。相手方内側嵌合部M2は、本実施形態では、一対の相手方端子T(第1の相手方端子T1および第2の相手方端子T2)を収容する。具体的には、相手方内側嵌合部M2は、一対の相手方端子Tの延伸方向の周方向で、一対の相手方端子Tを囲むように設けられる。相手方内側嵌合部M2は、後述する嵌合部12の内側嵌合部122(図2参照)に内嵌することができる。相手方内側嵌合部M2の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、相手方内側嵌合部M2は、嵌合・離脱方向D3に延伸する略四角形状に形成されている。本実施形態では、相手方内側嵌合部M2は、相手方外側嵌合部M1と相手方内側嵌合部M2との間(収容空間MS)に、後述されるコネクタ1の内側側壁122w(図2参照)を収容可能であるように、相手方外側嵌合部M1の相手方側壁Wから離間して設けられている。相手方内側嵌合部M2は、図1Aに示されるように、嵌合方向D31側の端面である相手方内側端面M20を有している。相手方内側端面M20は、コネクタ1の嵌合部12と嵌合したときに、後述するコネクタ1の内側嵌合部122の内側端面122b(図2参照)と対向する(図4参照)。相手方内側端面M20は、本実施形態では、コネクタ1の嵌合部12(図2参照)と嵌合したときに、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)を挿入可能な接続孔M21を有する。相手方内側嵌合部M2は、一対の相手方端子Tが取り付けられる相手方内部ハウジングH1によって構成することができる。相手方内部ハウジングH1は、絶縁性を有する材料、たとえば樹脂材料によって構成されている。相手方内側嵌合部M2は、相手方内部ハウジングH1に加え、相手方内部ハウジングH1を介在させた状態で、一対の相手方端子Tを囲むように設けられる相手方導電部H2を有していてもよい。相手方導電部H2は、具体的には、導電性を有する材料、たとえば金属材料から構成されている。この場合、相手方導電部H2は、外部から一対の相手方端子Tに及ぶ電磁波、および/または、一対の相手方端子Tから外部に漏れる電磁波を遮断する相手方導電シェルとして機能する。本実施形態では、相手方導電部H2は、複数対の相手方端子Tに対応して、各一対の相手方端子Tを分離して囲むように、第1の方向D1において、並列に複数(4つ)設けられている。
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係るコネクタ1について、図1A図2に加え、図3図8Eを参照しながら、説明する。本実施形態に係るコネクタ1は、差動信号を送受信するためのコネクタである。コネクタ1は、図1A図2に示されるように、基材Bに接続されるとともに、相手方コネクタCに嵌合により接続される。コネクタ1は、基材Bに接続可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、コネクタ1は、基材Bの実装面BPに接続されたコネクタ1に対して、相手方コネクタCが実装面BPに水平な嵌合方向D31に移動することで嵌合する水平接続式コネクタである。しかしながら、コネクタ1は、基材Bの実装面BPに接続されたコネクタ1に対して、相手方コネクタCが実装面BPに垂直な嵌合方向(図1A図2では、第2の方向D2)から嵌合する垂直接続式コネクタであってもよい。コネクタ1は、図2図3、および図4に示されるように、一対の端子2を構成する第1の端子21および第2の端子22と、第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)が取り付けられるハウジング3とを備えている。
【0026】
コネクタ1が接続される基材Bは、コネクタ1が接続可能な実装面BPを有していれば、特に限定されないが、本実施形態では、図1Aおよび図1Bなどに示されるように、実装面BPに回路パターンBCを有する回路基板であり、コネクタ1と半田接続される。
【0027】
第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)は、差動信号を送受信するための一対の端子である。一対の端子2は、コネクタ1内の差動信号の伝送路を構成する。一対の端子2は、導電性を有する材料、たとえば金属材料によって構成されている。一対の端子2の対の数は、一対であっても複数対であってもよいが、本実施形態では、図2に示されるように、一対の端子2は、4つの対によって構成されている。一対の端子2は、図1Aおよび図1Bに示されるように、一端側が、基材Bの実装面BP(回路パターンBC)に接続され、他端側が、相手方コネクタCの一対の相手方端子Tに接続される。このような接続を可能にするために、一対の端子2は、図5A図5Cに示されるように、一端側が、基材Bの実装面BPに接続可能な実装領域A1を有し、他端側が、相手方コネクタCの一対の相手方端子Tに接続可能な接続領域A2を有している。一対の端子2は、実装領域A1において、実装面BPに略水平な第1の方向D1で互いに離間する第1の配置(図5A参照。以下、水平配置という)となり、接続領域A2において、第1の方向D1に略垂直な第2の方向D2で互いに離間する第2の配置(図5B参照。以下、垂直配置という)となる。このような配置変換を可能にするために、一対の端子2は、実装領域A1と接続領域A2との間で、第1の配置(水平配置)から第2の配置(垂直配置)へと遷移する遷移領域A3を有している。図5A図5Cの例では、一対の端子2は、実装領域A1において、水平配置で嵌合・離脱方向D3に延伸し、接続領域A2において、垂直配置で嵌合・離脱方向D3に延伸に延伸している。一対の端子2はさらに、ハウジング3に保持される保持領域A4を有している。本実施形態では、一対の端子2は、保持領域A4において、水平配置で嵌合・離脱方向D3に延伸している。遷移領域A3は、保持領域A4から接続領域A2までの間に位置している。なお、本明細書において、「AからBまでの間」は、起点であるAおよび終点であるBを含むものとし、「AとBとの間」はAおよびBを含まないものとする。つまり、「保持領域A4から接続領域A2までの間」は、保持領域A4および接続領域A2を含むことを意味する。本実施形態では、遷移領域A3は、保持領域A4に対して接続領域A2寄りに位置し、接続領域A2に対して実装領域A1寄りに位置している。一対の端子2のハウジング3への保持については、後述される。
【0028】
第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)は、遷移領域A3において、第1の方向D1に遷移する水平遷移領域A31と、第2の方向D2に遷移する垂直遷移領域A32とをさらに有していてもよい。本実施形態では、第1の端子21および第2の端子22は、保持領域A4から接続領域A2に向かって、第2の方向D2で互いが離れるように遷移した後に(図5B参照)、第1の方向D1で互いに近づくように遷移する(図5C参照)。これにより、コネクタ1内の伝送路の特性インピーダンスの変化が抑制され、かつ、遷移領域A3の長さが短縮される。水平遷移領域A31および垂直遷移領域A32は、オーバラップしていてもよい。つまり、第1の端子21および第2の端子22は、遷移領域A3において、第1の方向D1に遷移しながら第2の方向D2にも遷移してもよい。
【0029】
第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)は、後述するコネクタ1の嵌合部12(図2参照)の第2の方向D2の位置に応じて、接続領域A2での第2の方向D2の位置を調整する接続位置調整領域(垂直方向延在領域)A5を有していてもよい。本実施形態では、第1の端子21および第2の端子22は、実装領域A1と保持領域A4との間に、接続位置調整領域A5を有している。具体的には、第1の端子21および第1の端子22は、嵌合方向D31側から離脱方向D32に向かって順に、実装領域A1、接続位置調整領域A5、保持領域A4、遷移領域A3(垂直遷移領域A32、水平遷移領域A31)、接続領域A2を有している。接続位置調整領域A5は、保持領域A4とオーバラップしていてもよい。つまり第1の端子21および第2の端子22は、接続位置調整領域A5で後述する保持部131に保持されてもよい。図5A図5Cの例では、第1の端子21および第2の端子22は、接続位置調整領域A5において、第2の方向D2に水平配置で延伸している。換言すれば、第1の端子21および第2の端子22は、図5Bに示されるように、実装領域A1から接続位置調整領域A5に向かって、略垂直な角度で屈曲し、接続位置調整領域A5から保持領域A4に向かって、略垂直な角度で屈曲しながら、水平配置で延伸している。これにより、嵌合・離脱方向D3での第1の端子21および第2の端子22の長さ、さらには、嵌合・離脱方向D3でのコネクタ1の長さが短くなるので、コネクタ1を小型化することができる。しかしながら、第1の端子21および第2の端子22は、実装領域A1から接続位置調整領域A5に向かって、鈍角な角度で屈曲し、接続位置調整領域A5から保持領域A4に向かって、鈍角な角度で屈曲しながら延伸してもよい。この場合、第1の端子21および第2の端子22の屈曲が小さくなるので、コネクタ1内の伝送路の伝送特性の劣化が抑制される。基材Bの端部に形成された切り欠きに設けられ、コネクタ1が切り欠きに挿入されて基材Bに実装される場合など、第1の端子21および第2の端子22が、第2の方向D2において、実装領域A1での第2の方向D2の位置と、接続領域A2での第2の方向D2の位置が同等である場合、接続位置調整領域A5は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0030】
第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)の長さ(端子を直線状に伸ばした場合の端部から端部までの長さ)は、基材Bの実装面BPに接続可能であり、相手方コネクタCと接続可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、第1の端子21および第2の端子22は、互いに略同じ長さを有する。これにより、第1の端子21の線路長と第2の端子22の線路長との間に差異が生じることがなくなるので、送受信される差動信号の位相ずれが防止される。
【0031】
第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)の端縁21a、22aの位置は、基材Bの実装面BPに接続可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、第1の端子21および第2の端子22の端縁21a、22aは、実装領域A1において、第1の方向D1および第2の方向D2に略垂直な第3の方向(本実施形態では、嵌合・離脱方向D3)で略一致するよう配置されている。これにより、本実施形態のように、第1の端子21および第2の端子22の各領域(たとえば、実装領域A1、接続位置調整領域A5、保持領域A4、遷移領域A3、接続領域A2)が同じ長さであり、遷移領域A3以外の領域で、同じ形状を有する場合には、第1の端子21および第2の端子22が互いに平行に配置され得る区間を最大限に確保することができる。そのため、第1の端子21および第2の端子22の特性インピーダンスの変化を抑制することができる。なお、第1の端子21および第2の端子22の端縁の位置は、第3の方向(本実施形態では、嵌合・離脱方向D3)で異なっていてもよい。
【0032】
第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)の形状は、基材Bの実装面BPに接続可能であり、相手方コネクタCと接続可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、第1の端子21および第2の端子22は、平面形状(2次元形状)から曲げ加工されており、曲げ加工前に、互いに同じ形状および寸法を有する。具体的には、第2の端子22は、曲げ加工前において、嵌合・離脱方向D3を回転軸として、第1の端子21に対して180°回転対称となる形状を有している。これにより、平面形状に作製するまで、第1の端子21および第2の端子22を同一の製造工程で製造することができる。本実施形態では、さらに、第1の端子21および第2の端子22は、遷移領域A3が曲げ加工され、保持領域A4と接続位置調整領域A5との間および実装領域A1と接続位置調整領域A5との間が曲げ加工される前の状態において、互いに同じ形状を有する。具体的には、第2の端子22は、遷移領域A3が曲げ加工され、保持領域A4と接続位置調整領域A5との間および実装領域A1と接続位置調整領域A5との間が曲げ加工される前の状態において、同じ状態の第1の端子21の向きを第2の方向D2で反転させた形状と同じ形状を有する。これにより、遷移領域A3の曲げ加工後であって、保持領域A4と接続位置調整領域A5との間および実装領域A1と接続位置調整領域A5との間が曲げ加工前まで、第1の端子21および第2の端子22を同一の製造工程で製造することができる。
【0033】
第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)はそれぞれ、保持領域A4に近接する領域に、断面寸法が大きくなる幅広部20を有していてもよい。幅広部20は、図3に示されるように、たとえば、第1の端子21および第2の端子22がハウジング3(具体的には、後述する挿通部13)に圧入により保持される場合などに、第1の端子21および第2の端子22を圧入する方向(本実施形態では、離脱方向D32と略一致する。以下、「圧入方向D32」とも呼ぶ)に押圧する際に用いられる。具体的には、幅広部20は、圧入方向D32と反対方向を向く押圧面20aを有している。押圧面20aが圧入方向D32に押圧されることで、第1の端子21および第2の端子22は、ハウジング3に圧入される。本実施形態では、幅広部20は、図5A図5Cに示されるように、保持領域A4に近接する実装領域A1側の領域に設けられている。幅広部20の断面寸法が大きくなる方向は、幅広部20が押圧面20aを有するように形成されれば、特に限定されないが、本実施形態では、幅広部20は、第1の方向D1で幅広となっている。しかしながら、幅広部20は、第2の方向D2で幅広となってもよい。なお、第1の端子21および第2の端子22がハウジング3(図3参照)に圧入により保持される場合であっても、幅広部20は、必ずしも設けられなくてもよい。この場合、曲げ加工により接続位置調整領域A5を形成する前に、チャックなどの挟持具(図示せず)を用いて、圧入される保持領域A4より圧入方向D32の手前側の領域(たとえば、接続位置調整領域A5および実装領域A1)を挟持しながら、第1の端子21および第2の端子22を圧入方向D32に圧入する。また、幅広部20が設けられる場合であっても、挟持具を用いて、圧入される保持領域A4より圧入方向D32の手前側の領域を挟持しながら、第1の端子21および第2の端子22を圧入方向D32に圧入することがある。この際、本実施形態では、圧入される保持領域A4が遷移領域A3に対して実装領域A1寄りに位置しているので、挟持具に挟持される領域(たとえば、接続位置調整領域A5および実装領域A1)と圧入される保持領域A4との間に遷移領域A3が介在しない。つまり、圧入の際に、挟持具に挟持される領域から圧入される保持領域A4までの間を圧入方向D32に略平行な直線状にすることができる。そのため、圧入方向D32に加えられる力を圧入される保持領域A4に伝えやすくなり、第1の端子21および第2の端子22をハウジング3(図3参照)に容易に圧入することができる。これに対し、上述の従来のコネクタでは、圧入される保持領域が遷移領域に対して接続領域寄りに位置しているので、挟持具に挟持される領域と圧入される保持領域との間に遷移領域が介在する。つまり、挿入される一対の端子は、挟持具に挟持される領域から圧入される保持領域までの間で屈曲している。そのため、圧入方向に加えられる力を圧入される保持領域に伝えにくくなり、圧入作業に時間がかかるうえに、圧入の際に、一対の端子を変形させてしまうおそれもある。
【0034】
ハウジング3は、図4などに示されるように、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)を保持する。ハウジング3は、相手方コネクタC(図4では、二点鎖線で示される)と嵌合可能な嵌合部12と、一対の端子2が挿通される挿通部13とを有している。
【0035】
嵌合部12は、相手方コネクタCの相手方嵌合部Mと嵌合する。嵌合部12は、本実施形態では、ハウジング3において、離脱方向D32側に設けられている。嵌合部12は、本実施形態では、ハウジング3の嵌合方向D31側から嵌合凸部として形成された相手方嵌合部Mを挿入および収容可能な、嵌合・離脱方向D3に延伸する嵌合凹部である。なお、嵌合部12が嵌合凸部であり、相手方嵌合部Mが嵌合凹部であってもよい。本実施形態では、嵌合部12は、図2に示されるように、外側嵌合部121と、外側嵌合部121の内側に設けられる内側嵌合部122とを備えている。
【0036】
外側嵌合部121は、本実施形態では、相手方外側嵌合部M1を収容する。具体的には、外側嵌合部121は、相手方コネクタCの相手方嵌合部Mの相手方外側嵌合部M1を内嵌する。本実施形態では、外側嵌合部121は、図2に示されるように、相手方外側嵌合部M1を収容する外側収容空間121sを有している。具体的には、外側嵌合部121は、嵌合・離脱方向D3に延伸する外側側壁121wを有しており、外側収容空間121sは、外側側壁121wおよび内側側壁122wとの間の空間として画定されている。外側収容空間121sは、具体的には、ハウジング3の離脱方向D32に設けられた外側開口121aから外側端面121bまで延伸する有底筒状の形状を有している。外側端面121bは、本実施形態では、相手方コネクタCと嵌合したときに、相手方外側端面M10と対向する(図4参照)。図4に示されるように、相手方コネクタCが嵌合したときに、内側端面122bと相手方内側端面M20との間に嵌合隙間MGが形成される。嵌合隙間MGは、本実施形態では、内側端面122bが相手方外側端面M10と当接することで、内部ハウジング31に嵌合方向D31への力が加わり、シェル32からの内部ハウジング31の離脱、内部ハウジング31の損傷、ひいては、内部ハウジング31(具体的には、後述する保持部131)に取り付けられた一対の端子2への好ましくない影響を防止するために設けられる(内部ハウジング31およびシェル32については、後述する)。外側嵌合部121の嵌合・離脱方向D3に垂直な断面形状は、相手方コネクタCの相手方嵌合部Mと嵌合可能であれば、特に限定されないが、本実施形態では、外側嵌合部121は、嵌合・離脱方向D3に延伸する四角枠状に形成されている(図2参照)。外側嵌合部121は、後述する、ハウジング3の外郭の一部をなす外部ハウジング33によって構成することができる。
【0037】
内側嵌合部122は、本実施形態では、相手方内側嵌合部M2を収容する。内側嵌合部122は、本実施形態では、第1の端子21および第2の端子22を収容する。内側嵌合部122は、具体的には、第1の端子21および第2の端子22の延伸方向(本実施形態では、嵌合・離脱方向D3)の周方向で、第1の端子21および第2の端子22(一対の端子2)から離間して囲むように設けられる。内側嵌合部122は、本実施形態では、相手方外側嵌合部M1を外嵌し、相手方内側嵌合部M2を内嵌する。なお、嵌合部12は、外側嵌合部121および内側嵌合部122のうちのいずれか一方を有していればよく、相手方外側嵌合部M1および相手方内側嵌合部M2のうちのいずれかに嵌合すればよい。
【0038】
本実施形態では、内側嵌合部122は、図2に示されるように、相手方内側嵌合部M2を収容する内側収容空間122sを有している。内側嵌合部122は、本実施形態では、嵌合・離脱方向D3に延伸する内側側壁122wを有しており、内側収容空間122sは、内側側壁122wによって画定されている。具体的には、内側収容空間122sは、ハウジング3の離脱方向D32に設けられた内側開口122aから内側端面122bまで延伸する有底筒状の形状を有している。一対の端子2は、内側端面122bから離脱方向D32に延伸している。内側端面122bは、本実施形態では、図4に示されるように、相手方コネクタCと嵌合したときに、相手方内側端面M20と対向する。
【0039】
内側嵌合部122の嵌合・離脱方向D3に垂直な断面形状は、相手方コネクタCの相手方嵌合部Mと嵌合可能であれば、特に限定されないが、本実施形態では、内側嵌合部122は、嵌合・離脱方向D3に延伸する四角枠状に形成されている(図2参照)。内側嵌合部122は、内側側壁122wとなる導電部(シェル)32および内側端面122bとなる内部ハウジング31(図4および図8参照)によって構成することができる。本実施形態では、内側嵌合部122は、複数対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)に対応して、各一対の端子2に分離して囲むように、第1の方向D1に並列に複数(4つ)設けられている。
【0040】
挿通部13は、図3に示されるように、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)を挿通させた状態で、一対の端子2を保持する。本実施形態では、挿通部13は、嵌合・離脱方向D3で一対の端子2を挿通させて、保持領域A4および遷移領域A3(図5A図5C参照)を収容する。挿通部13は、本実施形態では、ハウジング3において嵌合方向D31側に設けられている。挿通部13は、後述する内部ハウジング31によって構成することができる。挿通部13は、本実施形態では、各一対の端子2に対応して、複数(4つ)設けられている(図2など参照)。挿通部13は、図4に示されるように、一対の端子2を保持する保持部131を有している。本実施形態では、挿通部13は、一対の端子2の遷移領域A3を収容する遷移領域収容部132をさらに有している。
【0041】
保持部131は、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)を保持領域A4で保持する。本実施形態では、保持部131は、遷移領域A3が挿通部13において離脱方向D32寄りに位置するように、一対の端子2を保持する。保持部131は、本実施形態では、第1の端子21と第2の端子22との間の短絡を防止するために、絶縁性を有する。保持部131は、本実施形態では、挿通部13において、実装領域A1寄り(嵌合方向D31側)に設けられている。保持部131による一対の端子2を保持する方法は、特に限定されないが、本実施形態では、保持部131は、挿通部13の嵌合方向D31側から離脱方向D32に向かって一対の端子2が圧入されることで、一対の端子2を保持領域A4で保持する圧入部である。しかしながら、保持部131は、樹脂によるインサート成形などにより、一対の端子2を埋設することで、一対の端子2を保持してもよい。
【0042】
遷移領域収容部132は、本実施形態では、挿通部13において、接続領域A2寄り(離脱方向D32側)に設けられている。遷移領域収容部132は、本実施形態では、第1の端子21と第2の端子22との間の短絡を防止するために、絶縁性を有する。遷移領域収容部132は、本実施形態では、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)の周囲を囲むように設けられている。これにより、遷移領域A3において、一対の端子2が、水平配置から垂直配置に変化しても(図5A図5C参照)、一対の端子2の特性インピーダンスの変化が抑制される。具体的には、遷移領域A3において、第1の端子21と第2の端子22との間の距離が広がるが、距離が広がる第1の端子21と第2の端子22との間を空隙(空気層)とせずに、空隙(空気層)より誘電率が大きい(たとえば、樹脂によって構成される)遷移領域収容部132を設けることで、第1の端子21と第2の端子22との間の距離が広がることに起因する特性インピーダンスの増大を招来しないように、特性インピーダンスを調整する。遷移領域収容部132は、保持部131が一対の端子2を圧入により保持する場合、圧入による遷移領域収容部132への応力を抑制するために、一対の端子2を少なくとも部分的に離間して囲むように設けられてもよい。遷移領域収容部132は、保持部131が一対の端子2をインサート成形により保持する場合、保持部131と一体となって一対の端子2を埋設することで、囲むように設けられてもよい。
【0043】
挿通部13は、本実施形態では、図6A(挿通部13を嵌合方向D31側から見た模式図)に示されように、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)をそれぞれ挿通する一対の挿通孔P1、P2を有している。挿通部13は、本実施形態では、図6Bに示されるように、一対の端子2を一対の挿通孔P1、P2に挿通することで、一対の端子2を保持する。一対の挿通孔P1、P2は、図6Aおよび図6Bに示されるように、本実施形態では、第1の端子21を挿通する第1の挿通孔P1と、第2の端子22を挿通する第2の挿通孔P2とを含む。第1の挿通孔P1および第2の挿通孔P2は、本実施形態では、保持領域A4から接続領域A2までの領域の形状(図5A図5C参照)に対応して、嵌合・離脱方向D3と回転軸として、互いに180°回転した形状を有している。本実施形態では、第1の挿通孔P1および第2の挿通孔P2はそれぞれ、保持領域A4を収容する保持領域収容孔P4と、遷移領域A3を収容する遷移領域収容孔P3とを含む。
【0044】
保持領域収容孔P4は、図6Bに示されるように、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)の保持領域A4を収容して保持するために、挿通部13の嵌合方向D31側から離脱方向D32に向かって延伸する孔である。保持領域収容孔P4は、特に限定されないが、本実施形態では、保持領域A4を収容可能(図4では、第1の配置(水平配置)から第2の配置(垂直配置)に遷移しつつある垂直遷移領域A32の一部も収容している)な長さで離脱方向D32に延伸する有底孔である(図6Aも参照)。保持領域収容孔P4を有底孔とすることで、保持領域収容孔P4の底部より離脱方向D32側に位置する水平遷移領域A31において、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)が、遷移領域収容部132に近接して囲まれることとなるので(図7C図7E参照)、遷移領域A3における一対の端子2の特性インピーダンスの変化が抑制される。本実施形態では、保持領域収容孔P4は、図7Aおよび図7Bに示されるように、保持領域A4が保持領域収容孔P4(保持部131)の内側壁PW4に圧入可能であるように、保持領域A4と少なくとも部分的に略同じ大きさに形成されている(図6Aも参照)。具体的には、たとえば図7Bに示されるように、保持領域収容孔P4は、保持領域A4が第1の方向D1で対向する内側壁PW4に圧入可能であるように、保持領域A4と第1の方向D1で略同じ大きさに形成されている(図6Aも参照)。しかしながら、保持領域収容孔P4は、保持領域A4が第2の方向D2で圧入可能であるように、保持領域A4と第2の方向D2で略同じ大きさに形成されてもよい。
【0045】
なお、本実施形態では、保持領域収容孔P4は、図6Bに示されるように、嵌合方向D31側に、幅広部20(図5A図5Cも参照)を収容する幅広部収容部P41を有している。本実施形態では、幅広部20の形状に沿って幅広部20を収容可能であるように、幅広部収容部P41は、第1の方向D1に長尺な略長方形の形状を有している。また、幅広部収容部P41は、本実施形態では、図7Aに示されるように、保持領域A4が保持部131に圧入されるときに、幅広部収容部P41は、幅広部20が圧入されないように、幅広部20より一回り大きい大きさに形成されている。しかしながら、幅広部20が幅広部収容部P41(保持部131)の第2の方向D2で対向する内側壁PW41に圧入可能であるように、幅広部20と第2の方向D2で略同じ大きさに形成されていてもよく、第1の方向D1で対向する内側壁PW41に圧入可能であるように、幅広部20と第1の方向D1で略同じ大きさに形成されてもよい。この場合、幅広部20は、保持領域A4に含まれる。
【0046】
遷移領域収容孔P3は、図6Bに示されるように、遷移領域A3(図5A図5Cも参照)を収容するために、挿通部13の嵌合方向D31側から離脱方向D32に延伸する孔である。遷移領域収容孔P3は、垂直遷移領域A32を収容する垂直遷移領域収容孔P32と、水平遷移領域A31を収容する水平遷移領域収容孔P31と含む。
【0047】
垂直遷移領域収容孔P32は、図6Bに示されるように、垂直遷移領域A32(図5A図5Cも参照)を収容するために、挿通部13の嵌合方向D31側から離脱方向D32に延伸する孔である。垂直遷移領域収容孔P32は、特に限定されないが、本実施形態では、垂直遷移領域収容孔P32とともに、垂直遷移領域A32から離脱方向D32に屈曲しながら延伸する水平遷移領域A31(図5A図5C参照)を収容可能な長さで離脱方向D32に延伸する有底孔である(図6Aも参照)。垂直遷移領域収容孔P32を有底孔とすることで、垂直遷移領域A32より離脱方向D32側に位置する水平遷移領域A31において、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)が、遷移領域収容部132に近接して囲まれることとなるので(図7Dおよび図7E参照)、遷移領域A3における一対の端子2の特性インピーダンスの変化が抑制される。垂直遷移領域収容孔P32は、本実施形態では、垂直遷移領域A32の形状に沿って垂直遷移領域A32を収容可能であるように、挿通部13を嵌合方向D31側から見て、第2の方向D2に長尺な略長方形の形状を有している(図6Aも参照)。これにより、一対の端子2が、遷移領域収容部132にさらに近接して囲まれることとなるので、遷移領域A3における特性インピーダンスの変化がさらに抑制される。本実施形態では、垂直遷移領域収容孔P32は、保持領域収容孔P4は、図7Cに示されるように、垂直遷移領域A32が垂直遷移領域収容孔P32(遷移領域収容部132)の内側壁PW32に圧入されないように、垂直遷移領域A32より一回り大きい大きさに形成されている。これにより、一対の端子2を圧入する際に、内側壁PW32との接触によって圧入方向D32以外の応力が加わることによる垂直遷移領域A32の変形が防止される。しかしながら、垂直遷移領域収容孔P32は、垂直遷移領域A32が垂直遷移領域収容孔P32(遷移領域収容部132)の第1の方向D1で対向する内側壁PW32に圧入可能であるように、垂直遷移領域A32と第1の方向D1で略同じ大きさに形成されてもよい。垂直遷移領域収容孔P32は、本実施形態では、第2の方向D2の一方向で保持領域収容孔P4と連通し、第2の方向D2の他方向で水平遷移領域収容孔P31と連通している。
【0048】
水平遷移領域収容孔P31は、図6Bに示されるように、水平遷移領域A31(図5A図5Cも参照)を収容するために、挿通部13の嵌合方向D31側から離脱方向D32に延伸する孔である。水平遷移領域収容孔P31は、特に限定されないが、本実施形態では、嵌合・離脱方向D3で挿通部13を貫通する貫通孔である(図6Aも参照)。水平遷移領域収容孔P31は、本実施形態では、水平遷移領域A31の形状に沿って水平遷移領域A31を収容可能であるように、挿通部13を嵌合方向D31側から見て、第1の方向D1に長尺な略長方形の形状を有している(図6Aも参照)。これにより、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)が、遷移領域収容部132に近接して囲まれることとなるので、遷移領域A3における一対の端子2の特性インピーダンスの変化が抑制される。本実施形態では、水平遷移領域収容孔P31は、図7Dおよび図7Eに示されるように、水平遷移領域A31が圧入されないように、水平遷移領域A31より一回り大きい大きさに形成されている。これにより、一対の端子2を圧入する際に、内側壁PW31との接触によって圧入方向D32以外の応力が加わることによる水平遷移領域A31の変形が防止される。しかしながら、水平遷移領域A31が水平遷移領域収容孔P31(遷移領域収容部132)の第2の方向D2で対向する内側壁PW31に圧入可能であるように、水平遷移領域A31と第2の方向D2で略同じ大きさに形成されてもよい。
【0049】
挿通部13は、図3に示されるように、嵌合方向D31側に、一対の端子2(第1の端子21および第2の端子22)の接続位置調整領域A5を収容する調整領域収容部13aを備えていてもよい。これにより、接続位置調整領域A5において、第1の端子21と第2の端子22との間の絶縁性が高められ、接続位置調整領域A5における一対の端子2の特性インピーダンスの変化も抑制される。調整領域収容部13aは、具体的には、挿通部13の嵌合方向D31側の側壁13wに設けられる、第2の方向D2に略平行に延伸する溝状の収容凹部である。本実施形態では、調整領域収容部13aは、第1の端子21と第2の端子22とを隔離する隔壁13bを有している。これにより、接続位置調整領域A5において、第1の端子21と第2の端子22との間の絶縁性がさらに高められ、接続位置調整領域A5における一対の端子2の特性インピーダンスの変化もさらに抑制される。隔壁13bは、具体的には、接続位置調整領域A5の第1の端子21と第2の端子22との間に設けられる、第2の方向D2に略平行に延伸する凸部である。
【0050】
ハウジング3は、本実施形態では、図8に示されるように、複数の部材によって組み立てられる。ハウジング3は、具体的には、絶縁性を有する絶縁部31、33と、導電性を有する導電部(シェル)32、34を有している。
【0051】
絶縁部31、33は、たとえば樹脂材料によって構成される。絶縁部31、33は、具体的には、内部ハウジング31と、外部ハウジング33とを備えている。
【0052】
内部ハウジング31は、本実施形態では、第1の端子21と第2の端子22との間の短絡を防止する。内部ハウジング31は、本実施形態では、挿通部13を有するハウジングである。内部ハウジング31は、本実施形態では、嵌合方向D31側からシェル32に内嵌される。内部ハウジング31は、本実施形態では、挿通部13に対応して、複数(4つ)設けられている。
【0053】
外部ハウジング33は、本実施形態では、コネクタ1が相手方コネクタCと嵌合したときに、相手方ハウジングHと係合して、コネクタ1と相手方コネクタCとの接続状態を保持する。外部ハウジング33は、本実施形態では、外側嵌合部121を有するハウジングである。外部ハウジング33は、本実施形態では、離脱方向D32側からシェル32に内嵌される。
【0054】
導電部32、34は、外部から一対の端子2に及ぶ電磁波、および/または、一対の端子2から外部に漏れる電磁波を遮断する。導電部32、34は、たとえば金属材料から構成される。導電部32、34は、本実施形態では、絶縁部(内部ハウジング)31を介在させた状態で、一対の端子2(第1の端子21と第2の端子22)を囲むように設けられている。導電部32、34は、具体的には、シェル32と、カバーシェル34とを備えている。なお、カバーシェル34は、説明の都合上、図2および図4では図示されていない。
【0055】
シェル32は、本実施形態では、内側嵌合部122として機能する。シェル32は、本実施形態では、離脱方向D32側で外部ハウジング33を内嵌し、嵌合方向D31側で内部ハウジング31、カバーシェル34をこの順で内嵌する。
【0056】
カバーシェル34は、本実施形態では、嵌合方向D31で内部ハウジング31を覆う。カバーシェル34は、図8に示される例では、第1の方向D1の両方向と、第2の方向D2の一方向(実装面BPが向く方向。図1Aおよび図1Bなど参照)で内部ハウジング31をさらに覆う。カバーシェル34は、本実施形態では、嵌合方向D31側から内部ハウジング31を内嵌する。カバーシェル34は、本実施形態では、内部ハウジング31に対応して、複数(4つ)設けられている。
【0057】
次に、本実施形態に係るコネクタ1と相手方コネクタCとのコネクタ構造S内の伝送路について、従来のコネクタ構造と比較して説明する。
【0058】
従来のコネクタ構造では、図10に示されるように、コネクタ100は、コネクタ100のハウジング300と相手方コネクタC0の相手方ハウジングH0との間に嵌合隙間MG0を生じた状態で、相手方コネクタC0と嵌合接続する。コネクタ100の一対の端子200(第1の端子210および第2の端子220)は、嵌合方向D310側から離脱方向D320側に向かって順に、プリント回路基板B0の実装面BP0に接続される実装領域A100、実装面BP0に垂直な垂直方向D200の位置を調整する接続位置調整領域A500、垂直方向D200および実装面BP0に平行な水平方向D100における一対の端子200の配置が遷移する遷移領域A300、ハウジング300の保持部1320に保持される保持領域A400、相手方コネクタC0に接続される接続領域A200を有している。つまり、コネクタ100が相手方コネクタC0と嵌合接続したときに、遷移領域A300と嵌合隙間MG0との間に、ハウジング300の保持部1320が介在している。一対の端子200は、実装領域A100から保持領域A400までは、嵌合方向D310側で、ハウジング300の外部に位置している。つまり、一対の端子200は、実装領域A100から遷移領域A300までは、ハウジング300から露出している。一対の端子200には、嵌合方向D310側の保持領域A400の端部に、幅広部2000が形成されている。つまり、幅広部2000は、遷移領域A300より離脱方向D320寄りに位置している。
【0059】
従来のコネクタ100では、相手方コネクタC0と嵌合接続したときに、嵌合方向D310側から離脱方向D320側に向かって順に、ハウジング300に覆われてない実装領域A100、接続位置調整領域A500、遷移領域A300、ハウジング300に覆われる保持領域A400、ハウジング300に覆われてない嵌合隙間MG0、接続領域A200を経由して相手方コネクタC0に差動信号が伝送される。この場合、遷移領域A300では、一対の端子200の間隔が変化するので、特性インピーダンスが変化し(図9Bの特性インピーダンスの変化V1参照)、保持領域A400では、特性インピーダンスの変化が抑制され、嵌合隙間MG0では、ハウジング300と嵌合隙間(空気層)MG0との誘電率が互いに異なるので、再び特性インピーダンスが変化する(図9Bの特性インピーダンスの変化V2参照)。そのため、図9Bに示されるように、特性インピーダンスの変化を示す山が2つ現れることになり、複数の特性インピーダンスの変化V1、V2ごとに差動信号の反射が生じるので、送受信される差動信号の減衰の度合いが大きくなってしまうことがわかった。
【0060】
これに対して、本実施形態に係るコネクタ1は、図4に示されるように、一端側が、基材Bの実装面BPに接続可能な実装領域A1を有し、他端側が、相手方コネクタCの一対の相手方端子Tに接続可能な接続領域A2を有する、差動信号を送受信するための一対の端子2を構成する第1の端子21および第2の端子22と、相手方ハウジングHの相手方嵌合部Mと嵌合可能な嵌合部12と、一対の端子2が挿通される挿通部13とを有するハウジング3とを備えている。第1の端子21および第2の端子22は、実装領域A1において、実装面BPに略水平な第1の方向D1で互いに離間する第1の配置(水平配置)となり、接続領域A2において、第1の方向D1に略垂直な第2の方向D2で互いに離間する第2の配置(垂直配置)となるように、実装領域A1と接続領域A2との間で、第1の配置(水平配置)から第2の配置(垂直配置)へと遷移する遷移領域A3を有し、挿通部13は、一対の端子2を保持領域A4で保持する保持部131を有し、遷移領域A3は、保持領域A4から接続領域A2までの間に位置している。
【0061】
本実施形態では、上述したように、遷移領域A3は、保持領域A4から接続領域A2までの間に位置している(図5A図5C参照)。この場合、遷移領域A3と嵌合隙間MGとの間の、第1の方向D1および第2の方向D2に垂直な方向(嵌合・離脱方向D3の間隔)が短くなる。これにより、図9Aに示されるように、遷移領域A3に起因する特性インピーダンスの変化の山と嵌合隙間MGに起因する特性インピーダンスの山とが部分的に重なる(本実施形態では、嵌合隙間MGに起因する特性インピーダンスの変化と、遷移領域A3に起因する特性インピーダンスの変化とが重なって1つの特性インピーダンスの変化V0となっている)。これにより、本実施形態に係るコネクタ1では、相手方コネクタCと接続したときのコネクタ構造S内の伝送路において、差動信号の反射が抑制されるので、送受信される差動信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【0062】
本実施形態では、好ましくは、遷移領域A3が、挿通部13において離脱方向D32寄りに位置している。この場合、遷移領域A3と嵌合隙間MGとの間の距離をさらに短く設定することができる。これにより、嵌合隙間MGに起因する特性インピーダンスの変化と、遷移領域A3に起因する特性インピーダンスの変化とが重なって1つの特性インピーダンスの変化V0となるように、コネクタ構造S内の伝送路での特性インピーダンスを設定することが、さらに容易になる。
【0063】
本実施形態では、一対の端子2が実装領域A1から接続位置調整領域(垂直方向延在領域)A5に遷移するときに、一対の端子2は、挿通部13の側壁13wに形成された溝状の収容凹部である調整領域収容部13aに囲まれるように収容された後、保持部131に保持される。これにより、接続位置調整領域A500において、一対の端子200がハウジング300から露出した状態になる従来のコネクタ100と比べて、コネクタ1内の伝送路の特性インピーダンスは、実装領域A1から接続位置調整領域A5に遷移するとき、徐々に変化する。したがって、差動信号の反射がさらに抑制される。本実施形態では、一対の端子2は、好ましくは、接続位置調整領域(垂直方向延在領域)A5の略全領域で、調整領域収容部13aに囲まれるように収容されている。これにより、本実施形態では、コネクタ1内の伝送路の特性インピーダンスは、より緩やかに変化するので、差動信号の反射が一層抑制される。
【0064】
本実施形態では、(保持領域A4に任意で設けられる)幅広部20は、遷移領域A3より実装領域A1側に位置している。たとえば、幅広部20(押圧面20a)に圧入方向D32に押圧することで、一対の端子2を嵌合方向D31側から保持部131に圧入して保持する場合、従来のコネクタ100では、押圧すべき幅広部2000が、嵌合方向D310側から見て、複雑な形状を有する遷移領域A300より奥に位置するのに対して、本実施形態では、押圧すべき幅広部20は、遷移領域A3より手前に位置する。そのため、本実施形態では、幅広部20を押圧しやすいので、一対の端子2を保持部131に圧入しやすくなる。
【符号の説明】
【0065】
1 コネクタ
12 嵌合部
121 外側嵌合部
121a 外側開口
121b 外側端面
121s 外側収容空間
121w 外側側壁
122 内側嵌合部
122a 内側開口
122b 内側端面
122s 内側収容空間
122w 内側側壁
13 挿通部
13a 調整領域収容部
13b 隔壁
13w 側壁
131 保持部
132 遷移領域収容部
2 一対の端子
20 幅広部
20a 押圧面
21 第1の端子
21a 第1の端子の端縁
22 第2の端子
22a 第2の端子の端縁
3 ハウジング
31 内部ハウジング(絶縁部)
32 シェル(導電部)
33 外部ハウジング(絶縁部)
34 カバーシェル(導電部)
A1 実装領域
A2 接続領域
A3 遷移領域
A31 水平遷移領域
A32 垂直遷移領域
A4 保持領域
A5 接続位置調整領域
B 基材
BC 回路パターン
BP 実装面
C 相手方コネクタ
D1 第1の方向
D2 第2の方向
D3 嵌合・離脱方向
D31 嵌合方向
D32 離脱方向(圧入方向)
EW 電線
H 相手方ハウジング
H1 相手方内部ハウジング
H2 相手方導電部
H3 相手方外部ハウジング
M 相手方嵌合部
M1 相手方外側嵌合部
M10 相手方外側端面
M2 相手方内側嵌合部
M20 相手方内側端面
M21 接続孔
MG 嵌合隙間
MS 収容空間
P1 第1の挿通孔
P2 第2の挿通孔
P3 遷移領域収容孔
P31 水平遷移領域収容孔
P32 垂直遷移領域収容孔
P4 保持領域収容孔
P41 幅広部収容部
PW31、PW32、PW4、PW41 内側壁
S コネクタ構造
T 一対の相手方端子
T2 第2の相手方端子
T1 第1の相手方端子
V0~V2 特性インピーダンスの変化
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図10