(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118343
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】試験装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
G01D 21/00 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
G01D21/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014782
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊
【テーマコード(参考)】
2F076
【Fターム(参考)】
2F076BA05
2F076BE04
2F076BE05
2F076BE09
2F076BE10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被試験器の特性に応じて、短時間で試験に適した試験条件を設定して試験を効率的に行うことができ、また、突発的なデータの影響を抑えて、被試験器の特性を良好に反映した測定値を得る試験装置及び試験方法を提供する。
【解決手段】制御部が、試験条件を決定する際に、被試験器への試験信号の入力値として、測定器に初期の入力値S1を設定し、被試験器からの出力値が指定値に一致しない場合、出力値を指定値に近づけるよう、まず、最大のステップ幅で入力値を増加又は減少させ、以降は、入力値を増減させる方向が変わらない場合には前回のステップ幅で入力値を変化させ、変わる場合にはそれより小さいステップ幅で入力値を変化させる収束動作を出力値が指定値に一致するまで繰り返し、一致した時点での最終入力値と最終ステップ幅とを試験条件として記憶すると共に、測定器に当該入力値を用いて測定を行わせる試験装置及び試験方法としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能なモジュールを複数備えた被試験器に対して試験を実施する試験装置であって、
試験信号を出力して、前記被試験器からの出力を測定する複数の測定器と、
前記測定器のいずれかと前記被試験器とを接続する切替部と、
前記複数の測定器に対して前記被試験器への前記試験信号の入力値を設定し、当該測定器からの出力を測定データとして入力して分析する制御部とを備え、
前記制御部は、前記試験を行う試験条件を決定する際に、初回時は、前記測定器に前記入力値として予め定められた初期の入力値を設定し、前記被試験器からの出力値が指定値に一致しない場合、前記出力値を前記指定値に近づけるよう、予め設定された最大のステップ幅で前記入力値を増加又は減少させるよう変化させ、その後、前記出力値が前記指定値に一致しない場合、前記入力値を変化させる方向が直前と同じ場合には前記直前のステップ幅を維持して入力値を変化させ、変化させる方向が前記直前と異なる場合には前記直前のステップ幅より小さいステップ幅で前記入力値を変化させる収束動作を、前記出力値が前記指定値に一致するまで繰り返し、前記出力値が前記指定値に一致した時点での最終入力値と最終ステップ幅とを前記試験条件として記憶すると共に、前記測定器に前記試験条件の入力値を用いて測定を行わせることを特徴とする試験装置。
【請求項2】
制御部は、次回時以降に、試験条件として記憶されている最終入力値及び最終ステップ幅に基づいて、前記最終入力値から前記最終ステップ幅だけ下げた入力値を初期の入力値とし、その後、前記最終ステップ幅だけ上げるよう入力値を変化させて、収束動作を行うことを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項3】
制御部は、次回時以降に、初期の入力値によって得られる出力値と、指定値との差が設定されたしきい値より大きい場合に、初回時と同様に試験条件を決定することを特徴とする請求項2記載の試験装置。
【請求項4】
制御部が、測定器からの測定データから測定値を算出する際に、初回時は、測定データの平均値を算出し、当該平均値から突出する2つのデータを除外して再度平均値を算出して当該値を測定値とすると共に、前記測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値を有効範囲として記憶し、次回時以降は、前記記憶された有効範囲内の測定データの数と前記有効範囲外の測定データの数に応じて測定値を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の試験装置。
【請求項5】
制御部は、次回時以降において、記憶された有効範囲内の測定データの数が半数以上である場合には、前記有効範囲内の測定データの平均値を測定値とすると共に、前記測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値で有効範囲を更新し、前記記憶された有効範囲内の測定データの数が半数未満である場合には、初回時と同様に測定値を算出して有効範囲を記憶することを特徴とする請求項4記載の試験装置。
【請求項6】
交換可能なモジュールを複数備えた被試験器に対して、測定器を用いて試験を実施する試験装置における試験方法であって、
制御部が、前記試験を行う試験条件を決定する際に、初回時は、前記測定器に入力値として予め定められた初期の入力値を設定し、前記被試験器からの出力値が指定値に一致しない場合、前記出力値を前記指定値に近づけるよう、予め設定された最大のステップ幅で前記入力値を増加又は減少させるよう変化させ、その後、前記出力値が前記指定値に一致しない場合、前記入力値を変化させる方向が直前と同じ場合には前記直前のステップ幅を維持して前記入力値を変化させ、前記変化させる方向が前記直前と異なる場合には前記直前のステップ幅より小さいステップ幅で前記入力値を変化させる収束動作を、前記出力値が前記指定値に一致するまで繰り返し、前記出力値が前記指定値に一致した時点での最終入力値と最終ステップ幅とを前記試験条件として記憶すると共に、前記測定器に前記試験条件の入力値を用いて測定を行わせることを特徴とする試験方法。
【請求項7】
制御部が、測定器からの測定データから測定値を算出する際に、初回時は、測定データの平均値を算出し、当該平均値から突出する2つのデータを除外して再度平均値を算出して当該値を測定値とすると共に、前記測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値を有効範囲として記憶し、次回時以降は、前記記憶された有効範囲内の測定データの数と前記有効範囲外の測定データの数に応じて測定値を算出することを特徴とする請求項6記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機等の電子機器の性能を自動測定する試験装置及び試験方法に係り、特に被試験器の特性に応じて、効率的に試験可能な条件を設定して試験時間を短縮すると共に、特性をよく反映した測定値を得ることができる試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
航空機等に搭載される電子機器の自動試験を行う試験装置としては、GP-IB(General Purpose Interface Bus)等の通信を用いて、被試験器を遠隔操作することにより試験を行うものがある。
試験装置では、被試験器に信号(試験信号)を与え、被試験器からの出力信号を測定器で測定し、そのデータ(試験結果)に基づいて、正常又は異常を判定する。
更に、故障と判定された場合には、被試験器に含まれる複数のモジュールの内、どのモジュールが故障したかが特定されて、作業員によって、故障モジュールの調整、修理又は交換が行われる。
【0003】
試験装置において故障診断のための測定を行う場合には、所定の条件の下で測定を行う。
具体的には、試験信号の入力レベルを調整して、被試験器からの出力レベルを指定レベルに合わせた状態(適正状態)で測定を実施する。
従来は、入力レベルの初期値(入力レベル初期値)として固定の入力レベルの試験信号を入力し、それに対する被試験器からの出力レベルが指定レベルに満たない場合には、固定のステップ幅で入力レベルを増大させ、逆に出力レベルが指定レベルを超えている場合には、固定のステップ幅で入力レベルを減少させて、出力レベルが指定レベルとなるよう入力レベルを調整していた。
【0004】
しかし、被試験器の性能が劣化した場合や、バージョンアップされた場合には、それまでと特定が変わるため、同じ初期入力レベルやステップ幅で調整したのでは、出力レベルを指定レベルに合わせるのに時間がかかったり、更には、既定の時間内に指定レベルに合わせられずに試験を行えず、試験プログラムの修正が必要になることがあった。
【0005】
[従来の入力レベルの調整:
図15]
従来の試験装置において、所定の試験可能状態とするための入力レベルの調整について、
図15を用いて説明する。
図15は、従来の入力レベルの調整を示す説明図である。
図15では、入力レベルに対する出力レベルの特性がA~Cの3通りの場合について、被試験器への入力レベルと出力レベルの関係を示している。
従来の試験装置では、入力レベルの初期値(初期レベル)と、入力レベルのステップ幅の値は、予め設定されており、固定の値である。
被試験器の入力レベル-出力レベルの特性が、特性Bであった場合には、入力レベルを初期レベルから固定のステップ幅で2回ステップさせることで被試験器からの出力レベルを指定レベルに一致させることが可能である。
【0006】
しかし、被試験器の特性が、特性Aであった場合、初期レベルでは出力レベルは指定レベルに達せず、1回ステップすると変化量が大きすぎて指定レベルを超えてしまい、指定レベルに合わせることができない。
【0007】
また、特性Cであった場合には、入力レベルの変化に対する出力レベルの変化量が小さく、指定レベルに設定することはできるものの、何度もステップさせなければならず、時間がかかってしまう。
【0008】
このように、従来は、試験を実施する前に、被試験器の特性に関わらず、同一の初期レベル、同一のステップ幅を用いて所定の出力状態(適正状態、被試験器からの出力レベルが指定レベルに一致している状態)に合わせなければならず、入力レベルの調整が煩雑で、時間がかかっていた。
尚、レベルに限らず、周波数についても入力周波数を調整して出力周波数を所定の周波数にした状態(適正状態)で試験を行うため、同様の問題があった。
【0009】
[従来の測定値の求め方:
図16]
また、レベルや周波数の測定において、変動(バラツキ)の大きい特性の場合には、測定回数を増やして多くの測定データを求め、それらを平均化して測定値として算出している。
従来の試験装置における測定値の求め方について
図16を用いて説明する。
図16は、従来の試験装置における測定値の求め方を示す説明図である。ここではレベル測定を例として説明する。
【0010】
図16に示すように、不安定な特性、例えば安定しないレベル波形について、レベルの測定値を求める場合には、所定の測定間隔で多くの測定データを取得して、測定データの平均を算出して測定値とする。
通常は、測定データにバラツキはあるものの、ほぼ一定の範囲内(
図17では点線内)に収まっており、それらを平均した測定値も当該範囲内の値が得られる。これは、被試験器の特性に即した値である。
【0011】
しかし、
図16に示すように、例えば、測定データに極端に大きな値があると、平均化によって、本来の特性よりも大きな測定値となってしまう。この値は、被試験器の特性を十分反映したものとは言えない。
【0012】
[関連技術]
尚、試験装置に関する従来技術としては、特開2012-58120号公報「試験装置」(特許文献1)、特開2013-186717号公報「試験装置」(特許文献2)がある。
特許文献1には、複数のモジュールを備えた機器の試験において、複数の試験結果の良否の組み合わせに基づいて故障モジュールを特定する試験装置が記載されている。
特許文献2には、試験結果に基づいてモジュール毎の平均故障期間を算出し、復旧作業予算を求め、更に校正検定予算を算出して、特定期間内の保守予算を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012-58120号公報
【特許文献2】特開2013-186717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、従来の試験装置では、試験を行うための適正状態とするため、入力レベル等を調整する試験条件の設定方法が、被試験器の特性に応じたものではなく、試験条件を設定するのに時間がかかり、所定の時間内に試験条件を決定できず、試験を実施できない場合もあり、不便であるという問題点があった。
特に、被試験器のバージョンが変わったり、被試験器が劣化して特性が大きく変わった場合には、試験条件の設定に時間がかかっていた。
【0015】
また、従来の試験装置では、変化の大きいデータを平均化して測定値とすると、突発的に生じた極端に大きいデータや極端に小さいデータの影響を受けて、実際の被試験器の特性とは異なる測定値となってしまうという問題点があった。
【0016】
尚、特許文献1及び特許文献2には、試験条件を決定する際に、初期値やステップ幅を被試験器の特性に応じて変えることや、変化の大きい特性の場合に、突発的な測定データの影響を抑えた測定値を得ることは記載されていない。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、被試験器の特性に応じて試験条件の探索を行い、短時間で試験に適した試験条件を設定して、試験を効率的に行うことができ、また、突発的なデータの影響を受けずに、被試験器の特性を良好に反映した測定値を得ることができる試験装置及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、交換可能なモジュールを複数備えた被試験器に対して試験を実施する試験装置であって、試験信号を出力して、被試験器からの出力を測定する複数の測定器と、測定器のいずれかと被試験器とを接続する切替部と、複数の測定器に対して被試験器への試験信号の入力値を設定し、当該測定器からの出力を測定データとして入力して分析する制御部とを備え、制御部は、試験を行う試験条件を決定する際に、初回時は、測定器に入力値として予め定められた初期の入力値を設定し、被試験器からの出力値が指定値に一致しない場合、出力値を指定値に近づけるよう、予め設定された最大のステップ幅で入力値を増加又は減少させるよう変化させ、その後、出力値が指定値に一致しない場合、入力値を変化させる方向が直前と同じ場合には直前のステップ幅を維持して入力値を変化させ、変化させる方向が直前と異なる場合には直前のステップ幅より小さいステップ幅で入力値を変化させる収束動作を、出力値が指定値に一致するまで繰り返し、出力値が指定値に一致した時点での最終入力値と最終ステップ幅とを試験条件として記憶すると共に、測定器に試験条件の入力値を用いて測定を行わせることを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部は、次回時以降に、試験条件として記憶されている最終入力値及び最終ステップ幅に基づいて、最終入力値から最終ステップ幅だけ下げた入力値を初期の入力値とし、その後、最終ステップ幅だけ上げるよう入力値を変化させて、収束動作を行うことを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部は、次回時以降に、初期の入力値によって得られる出力値と、指定値との差が設定されたしきい値より大きい場合に、初回時と同様に試験条件を決定することを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部が、測定器からの測定データから測定値を算出する際に、初回時は、測定データの平均値を算出し、当該平均値から突出する2つのデータを除外して再度平均値を算出して当該値を測定値とすると共に、測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値を有効範囲として記憶し、次回時以降は、記憶された有効範囲内の測定データの数と有効範囲外の測定データの数に応じて測定値を算出することを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部は、次回時以降において、記憶された有効範囲内の測定データの数が半数以上である場合には、有効範囲内の測定データの平均値を測定値とすると共に、測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値で有効範囲を更新し、記憶された有効範囲内の測定データの数が半数未満である場合には、初回時と同様に測定値を算出して有効範囲を記憶することを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、交換可能なモジュールを複数備えた被試験器に対して、測定器を用いて試験を実施する試験装置における試験方法であって、制御部が、試験を行う試験条件を決定する際に、初回時は、測定器に入力値として予め定められた初期の入力値を設定し、被試験器からの出力値が指定値に一致しない場合、出力値を指定値に近づけるよう、予め設定された最大のステップ幅で入力値を増加又は減少させるよう変化させ、その後、出力値が指定値に一致しない場合、入力値を変化させる方向が直前と同じ場合には直前のステップ幅を維持して入力値を変化させ、変化させる方向が直前と異なる場合には直前のステップ幅より小さいステップ幅で入力値を変化させる収束動作を、出力値が指定値に一致するまで繰り返し、出力値が指定値に一致した時点での最終入力値と最終ステップ幅とを試験条件として記憶すると共に、測定器に試験条件の入力値を用いて測定を行わせることを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記試験方法において、制御部が、測定器からの測定データから測定値を算出する際に、初回時は、測定データの平均値を算出し、当該平均値から突出する2つのデータを除外して再度平均値を算出して当該値を測定値とすると共に、測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値を有効範囲として記憶し、次回時以降は、記憶された有効範囲内の測定データの数と有効範囲外の測定データの数に応じて測定値を算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、交換可能なモジュールを複数備えた被試験器に対して試験を実施する試験装置であって、試験信号を出力して、被試験器からの出力を測定する複数の測定器と、測定器のいずれかと被試験器とを接続する切替部と、複数の測定器に対して被試験器への試験信号の入力値を設定し、当該測定器からの出力を測定データとして入力して分析する制御部とを備え、制御部は、試験を行う試験条件を決定する際に、初回時は、測定器に入力値として予め定められた初期の入力値を設定し、被試験器からの出力値が指定値に一致しない場合、出力値を指定値に近づけるよう、予め設定された最大のステップ幅で入力値を増加又は減少させるよう変化させ、その後、出力値が指定値に一致しない場合、入力値を変化させる方向が直前と同じ場合には直前のステップ幅を維持して入力値を変化させ、変化させる方向が直前と異なる場合には直前のステップ幅より小さいステップ幅で入力値を変化させる収束動作を、出力値が指定値に一致するまで繰り返し、出力値が指定値に一致した時点での最終入力値と最終ステップ幅とを試験条件として記憶すると共に、測定器に試験条件の入力値を用いて測定を行わせることを特徴としているので、出力値が指定値から離れている場合には入力値を大きくステップさせ、指定値を境に上下するようになると、徐々にステップ幅を小さくして迅速に指定値に収束させることができ、被試験器の特性に応じて試験条件を短時間で設定することができ、試験を効率的に実施することができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、制御部は、次回時以降に、試験条件として記憶されている最終入力値及び最終ステップ幅に基づいて、最終入力値から最終ステップ幅だけ下げた入力値を初期の入力値とし、その後、最終ステップ幅だけ上げるよう入力値を変化させて、収束動作を行う上記試験装置としているので、前回の試験条件から近いところから探索を開始して短時間で試験条件を設定でき、試験を効率的に実施することができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、制御部は、次回時以降に、試験条件として記憶されている最終入力値及び最終ステップ幅に基づいて、最終入力値から最終ステップ幅だけ下げた入力値を初期の入力値とし、その後、最終ステップ幅だけ上げるよう入力値を変化させて、収束動作を行う上記試験装置としているので、被試験器が劣化したりバージョンが変わったりして、前回と大きく特性が変わった場合でも、その特性に応じて試験条件を短時間で設定することができ、試験プログラムを変更することなく、効率的に試験を実施することができる効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、制御部が、測定器からの測定データから測定値を算出する際に、初回時は、測定データの平均値を算出し、当該平均値から突出する2つのデータを除外して再度平均値を算出して当該値を測定値とすると共に、測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値を有効範囲として記憶し、次回時以降は、記憶された有効範囲内の測定データの数と有効範囲外の測定データの数に応じて測定値を算出する上記試験装置としているので、突発的に発生した極端に大きい又は小さい測定データの影響を抑えて、被試験器の特性を良好に反映する測定値を得ることができ、試験の信頼性を向上させる効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、交換可能なモジュールを複数備えた被試験器に対して、測定器を用いて試験を実施する試験装置における試験方法であって、制御部が、試験を行う試験条件を決定する際に、初回時は、測定器に入力値として予め定められた初期の入力値を設定し、被試験器からの出力値が指定値に一致しない場合、出力値を指定値に近づけるよう、予め設定された最大のステップ幅で入力値を増加又は減少させるよう変化させ、その後、出力値が指定値に一致しない場合、入力値を変化させる方向が直前と同じ場合には直前のステップ幅を維持して入力値を変化させ、変化させる方向が直前と異なる場合には直前のステップ幅より小さいステップ幅で入力値を変化させる収束動作を、出力値が指定値に一致するまで繰り返し、出力値が指定値に一致した時点での最終入力値と最終ステップ幅とを試験条件として記憶すると共に、測定器に試験条件の入力値を用いて測定を行わせる試験方法としているので、出力値が指定値から離れている場合には入力値を大きくステップさせ、指定値を境に上下するようになると、徐々にステップ幅を小さくして迅速に指定値に収束させることができ、被試験器の特性に応じて試験条件を短時間で設定することができ、試験を効率的に実施することができる効果がある。
【0030】
また、本発明によれば、制御部が、測定器からの測定データから測定値を算出する際に、初回時は、測定データの平均値を算出し、当該平均値から突出する2つのデータを除外して再度平均値を算出して当該値を測定値とすると共に、測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値を有効範囲として記憶し、次回時以降は、記憶された有効範囲内の測定データの数と有効範囲外の測定データの数に応じて測定値を算出する上記試験方法としているので、突発的に発生した極端に大きい又は小さい測定データの影響を抑えて、被試験器の特性を良好に反映する測定値を得ることができ、試験の信頼性を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】本試験装置における入力レベルの調整方法を示す説明図である。
【
図3】2回目以降の入力レベルの調整方法を示す説明図である。
【
図4】入力レベル調整の具体例(1)の初回時の調整例を示す説明図である。
【
図5】入力レベル調整の具体例(1)の2回目以降の調整例を示す説明図である。
【
図6】入力レベル調整の具体例(2)の初回時の調整例を示す説明図である。
【
図7】入力レベル調整の具体例(2)の2回目以降の調整例を示す説明図である。
【
図8】入力レベル調整の具体例(3)の初回時の調整例を示す説明図である。
【
図9】入力レベル調整の具体例(3)の2回目以降の調整例を示す説明図である。
【
図10】本試験装置の測定値の算出方法における初回時の算出方法を示す説明図である。
【
図11】本試験装置の測定値の算出方法における2回目以降の算出方法を示す説明図である。
【
図12】測定結果表示画面の例を示す説明図である。
【
図14】試験実施の処理を示すフローチャートである。
【
図15】従来の入力レベルの調整を示す説明図である。
【
図16】従来の試験装置における測定値の求め方を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る試験装置(本試験装置)及び試験方法(本試験方法)は、制御部が、試験を行う試験条件を決定する際に、被試験器への試験信号の入力値として、測定器に予め定められた初期の入力値を設定し、被試験器からの出力値が指定値に一致しない場合、出力値を指定値に近づけるよう、まず、最大のステップ幅で入力値を増加又は減少させ、以降は、入力値を増減させる方向が変わらない場合には前回のステップ幅のまま入力値を変化させ、増減させる方向が変わる場合には前回のステップ幅より小さいステップ幅で入力値を変化させる収束動作を出力値が指定値に一致するまで繰り返し、出力値が指定値に一致した時点での最終入力値と最終ステップ幅とを試験条件として記憶すると共に、測定器に当該入力値を用いて測定を行わせるものであり、被試験器の特性に応じて、出力値が指定値から離れている場合には、入力値を大きいステップ幅で変化させ、出力値が指定値に近づいた場合には、入力値を小さいステップで変化させて、出力値を指定値に迅速に収束させることができ、バージョンアップや劣化等で被試験器の特性が大きく変わった場合でも、短時間で試験可能な試験条件を設定して試験を実施でき、プログラムの変更を不要とし、試験の効率を大幅に向上させることができるものである。
【0033】
ここで、本試験装置は、レベル又は周波数の測定に適用されるものであり、請求項に記載した試験信号の入力値は入力レベル又は入力周波数、出力値は出力レベル又は出力周波数、指定値は指定レベル又は指定周波数に相当している。
【0034】
また、本試験装置及び本試験方法は、制御部が、測定器から取得した測定データから測定値を算出する際に、初回時は、特定期間内の全測定データの平均値を算出し、当該平均値から突出する2つのデータを除外して再度平均値を算出して当該値を測定値とし、測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値を、次回の有効範囲として記憶し、次回以降は記憶された有効範囲内の測定データの数と、有効範囲外の測定データの数に応じて、測定値を算出するようにしており、突発的に現れた極端に大きいデータや極端に小さいデータの影響を除外して、被試験器の特性に近い測定値を得ることができるものである。
【0035】
[本試験装置の構成:
図1]
本試験装置の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本試験装置の概略構成図である。
図1に示すように、試験装置1は、被試験器(被試験装置)2とネットワークにより接続され、各種の試験を実施するものである。
試験装置1は、試験コントローラ20と、各種の計測を行うn台の測定器10-1,10-2,…~10-n(測定器10と記載することもある)と、切替部30とを備えている。
【0036】
測定器10-1,10-2,…~10-nは、試験コントローラ20の指示に従って、切替部30を介して試験信号を被試験器2に出力し、被試験器2からの出力信号を受信して計測(測定)し、計測結果を試験コントローラ20に出力する。
切替部30は、試験コントローラ20と切替部制御ラインによって接続され、試験コントローラ20からの切替制御信号に従って、被試験器2に接続する測定器10を切り替える。
【0037】
試験コントローラ20は、試験全体の制御を行うコンピュータであり、基本的に、処理を行う制御部と、処理プログラムやデータを記憶する記憶部と、ネットワーク等に接続するインタフェース部とを備えている。また、試験コントローラ20は、表示部及び入力部を備えている。尚、試験コントローラ20は、請求項に記載した制御部に相当している。
後述する実施の形態で説明する各種の処理は、制御部が、記憶部に記憶された処理プログラムを起動することによって実行されるものである。また、記憶部には、後述する測定結果ファイルが記憶されている。
【0038】
試験コントローラ20は、ネットワークを介して測定器10、切替部30、及び被試験器2と接続されている。
また、試験コントローラ20は、試験結果を蓄積するデータベース(図示せず)に接続され、データベースへのデータの書き込み/読み出しを行う。
【0039】
被試験器2は、たとえば航空機等に搭載される電子機器であって、試験装置1によって実行される試験の対象となる機器である。また、被試験器2は、1つ又は複数の機器を備え、更に各機器は、交換可能な複数のモジュールを備えている。
被試験器2は、ネットワークを介して試験コントローラ20に接続し、試験に必要な情報の送受信を行う。
例えば、試験コントローラ20は、被試験器2に試験に必要な各種のデータを設定し、被試験器2は、応答を送信する。
【0040】
[本試験装置の入力レベルの調整方法(初回時):
図2]
本試験装置1は、従来と同様に、試験に適した適正状態で試験を行うため、試験開始前に、試験を実施する試験条件を設定する。
以下、レベルの測定を行う場合を例として説明する。
具体的には、試験コントローラ20が、測定器10を制御して、被試験器2に入力される試験信号の入力レベルを調整し、被試験器2からの出力信号のレベルが予め指定された指定レベルとなるように入力レベルを調整して、当該入力レベルで試験を実施する。そして、その際の入力レベルの調整方法が本試験装置の特徴部分となっている。
【0041】
本試験装置における入力レベルの調整方法(探索方法)について
図2を用いて説明する。
図2は、本試験装置における入力レベルの調整方法を示す説明図である。
図2では、横軸に被試験器2への入力レベル、縦軸に出力レベルを示しており、出力レベルが指定レベルL1となった状態が適正状態である。
当該被試験器2について初めて測定を実施する時(初回の測定時)において、試験コントローラ20は、まず、固定の初期レベルを設定して出力レベルをチェックし、出力レベルが指定レベルL1に満たない場合には、予め記憶されている複数のステップ幅の内、最大のステップ幅を設定して、入力レベルを増加させる(S1)。
【0042】
これによって出力レベルが指定レベルL1を超えると、出力レベルを指定レベルL1に収束させるよう、前回のステップ幅より小さいステップ幅で入力レベルを減少させる(S2)。
以下同様にして、入力レベルを増減させる方向(増加させるか減少させるか)が変わる場合には、順次ステップ幅を小さくしていき、出力レベルを収束させて、指定レベルL1に合わせる(S3,S4)。
【0043】
尚、入力レベルを増減させる方向が変わらない場合には、直前のステップ幅を維持して、直前と同じ方向に増加又は減少させる。入力レベルを増減させて出力レベルを指定レベルに収束させる動作を収束動作と称するものとする。
【0044】
このように調整することにより、調整開始直後の、出力レベルが指定レベルL1から大きく離れている時点では、大きいステップ幅で入力レベルを変化させ、指定レベルL1に近づいて、指定レベルを超えて上下すると、ステップ幅を小さくして微調整しながら収束させることができ、被試験器2の特性に応じて効率よく入力レベルを設定できるものである。
【0045】
そして、試験コントローラ20は、出力レベルが指定レベルL1に一致した際の入力レベル(a)を最終入力レベルとし、その際のステップ幅(b)を最終ステップ幅として、最終入力レベル(a)と最終ステップ幅(b)の組を試験条件として記憶しておく。
記憶された試験条件は、次回の測定時に利用されるものである。
【0046】
[本試験装置の入力レベルの調整方法(2回目以降):
図3]
2回目以降の入力レベルの調整方法について
図3を用いて説明する。
図3は、2回目以降の入力レベルの調整方法を示す説明図である。
図3に示すように、当該被試験器2についての2回目以降の測定時は、前回の測定時に記憶した試験条件を用いて、試験条件として記憶されている最終入力レベル(a)から、同様に記憶されている最終ステップ幅(b)を減算した値(a-b)を初期レベルとして設定する。
【0047】
そして、被試験器2からの出力レベルが指定レベルに満たない場合、最終ステップ幅(b)だけ入力レベルを増加させ、入力レベルをaとする。
図3の例では、この動作により、出力レベルが指定レベルL1に一致する。そして、試験コントローラ20は、試験条件として、最終入力レベル(a)と最終ステップ幅(b)とを記憶する。
【0048】
このように、前回の試験条件に基づいて今回の初期レベルとステップ幅を設定することにより、前回適正状態となった入力レベルに近い値から探索を開始して、迅速に試験条件を決定できるものである。
【0049】
尚、2回目以降において、最終入力レベルから最終ステップ幅を減算した値を初期レベルとした場合に、出力レベルが指定レベルから特定のしきい値以上離れていた場合には、初回時と同様に、固定の初期レベルと最大のステップ幅とを用いて入力レベルの調整を行う。
【0050】
[入力レベル調整の具体例(1)]:
図4,
図5]
本試験装置における入力レベル調整の具体例(1)について
図4、
図5を用いて説明する。
図4は初回時の入力レベル調整例を示し、
図5は、2回目以降の調整例を示している。
[初回時:
図4]
図4に示すように、当該被試験器2について、初回の試験時には、初期値として記憶されている初期レベル(ここでは0.5V)と最大のステップ幅(1V)を用いて、所定の出力レベルが得られる入力レベルを探索する。
図4の例では、まず、入力レベルとして初期レベル0.5Vを設定した場合、出力レベルは指定レベルの2.5Vに満たないため、試験コントローラ20は、入力レベルを最大のステップ幅である1Vだけ増加させる(S1)。
【0051】
入力レベル1.5Vでは出力レベルが指定レベルより高くなるため、次は入力レベルを減少させるが、その際、前回入力レベルを変化させた向きと反対となるため、ステップ幅を前回の1Vよりも小さくして、減少させる。ここでは、ステップ幅を0.5Vとして入力レベルを減少させる(S2)。
【0052】
減少させた結果、入力レベルは1V、出力レベルは指定レベルの2.5Vより低くなり、再度入力レベルを増加させる。変化の向きが逆転するので、ステップ幅は0.5Vよりも小さい0.25Vとして、入力レベルを増加させる(S3)。
【0053】
入力レベルは1.25V、出力レベルは指定レベルよりも高くなったため、入力レベルを、前回のステップ幅より小さい0.125Vだけ減少させる(S4)。
この結果、入力レベルは1.125V、出力レベルは指定レベルの2.5Vとなり、試験実施可能となる。
この時の入力レベル(1.125V)を最終入力レベル、ステップ幅(0.125V)を最終ステップ幅とし、これらの組を試験条件として後述する試験結果ファイルに保存する。このようにして初回時の調整が行われる。
【0054】
尚、
図4の例では、ステップ幅を小さくする際、直前のステップ幅の1/2にしているが、これに限るものではない。ステップ幅は、出力レベルと指定レベルの差分値と、入力レベルの値の両方に対応するマトリクス状のテーブルによって予め記憶されており、各時点での差分値と入力レベルに対応するステップ幅を読み出して用いる。
入力レベルの値が大きいほど、また、出力レベルの差分値が大きいほど、ステップ幅の値は大きくなる。初回時の調整に用いられる最初のステップ幅は、当該テーブルに記憶されている最大の値である。
【0055】
[2回目以降:
図5]
当該被試験器2の試験が2回目以降である場合、試験結果ファイルに前回試験時の試験条件が記憶されている。
そこで、試験コントローラ20は。初期レベルとして、前回の最終入力レベルから最終ステップ幅を減算した値を設定する。
図5の例では、前回の最終入力レベルは1.125V、最終ステップ幅は0.125Vであるから、1.125-0.125=1Vを初期レベルとする。
【0056】
この入力レベルでは、出力レベルが指定レベルの2.5Vに満たないので、入力レベルを、記憶されている最終ステップ幅0.125Vだけ増加させる。
これにより、出力レベルは指定レベルに一致し、試験実施可能な状態となる。そして、試験コントローラ20は、最終入力レベル1.125V及び最終ステップ幅0.125Vを保存する。
このようにして、2回目以降の調整が行われる。2回目以降は、前回の試験条件を初期値として探索開始するため、短時間で適切な入力レベルを求めることができ、試験の効率を向上させることができるものである。
【0057】
[入力レベル調整の具体例(2):
図6,
図7]
本試験装置における入力レベル調整の具体例(2)について
図6、
図7を用いて説明する。
図6は初回時の入力レベル調整例を示し、
図7は、2回目以降の調整例を示している。尚、
図6,
図7の例は、入力レベルに対する出力レベルの変化が急峻な特性の場合である。
[初回時:
図6]
上述した調整例と同様に、初回時は、入力レベルを初期値の初期レベル0.5Vとし、出力レベルが指定レベルの2.5Vに満たないので、試験コントローラ20は、最大ステップ幅の1Vだけ入力レベルを増加させ、1.5Vとする(S1)。
これにより、出力レベルは2.5Vを超え、入力レベルを最大ステップ幅より小さい0.5Vのステップ幅で減少させる(S2)。しかし、まだ出力レベルは指定レベルを上回っているため、再び同じステップ幅で減少させる(S3)。このように、入力レベルを変化させる方向が変わらない場合には、直前のステップ幅と同じステップ幅で変化させる。
【0058】
その後は、具体例(1)と同様に収束動作を行って、入力レベルを増減させて、出力レベルを指定レベルに収束させ、最終入力レベル(0.625V)と最終ステップ幅(0.125V)を試験条件として保存する(S4,S5)。
【0059】
出力レベルの変化が急峻な特性を持つ被試験器2の場合、固定のステップ幅では出力レベルを指定レベルに合わせることができなかったが、本試験装置では、収束し始めるとステップ幅を順次小さくしていくことにより、入力レベルを精度良く試験に適した値に設定することができるものである。
【0060】
[2回目以降:
図7]
2回目以降は、具体例(1)と同様に、試験条件として記憶されている最終入力レベル(0.625V)から最終ステップ幅(0.125V)を減算した値(0.5V)を初期レベルとし、出力レベルが指定レベルに満たなければ、最終ステップ幅を加算して、0.625Vとし、出力レベルを指定レベルに合わせる(S1)。
そして、最終入力レベル0.625Vと最終ステップ幅0.125Vを試験条件として保存する。
【0061】
[入力レベル調整の具体例(3):
図8,
図9]
本試験装置における入力レベル調整の具体例(3)について
図8、
図9を用いて説明する。
図8は初回時の入力レベル調整例を示し、
図9は、2回目以降の調整例を示している。尚、
図8,
図9の例は、入力レベルに対する出力レベルの変化が緩い特性の場合である。
[初回時:
図8]
初回時は、入力レベルを初期値の初期レベル0.5Vとし、出力レベルが指定レベルの2.5Vに満たないので、試験コントローラ20は、最大ステップ幅の1Vだけ入力レベルを増加させ、1.5Vとする(S1)。
それでもまだ、出力レベルは指定レベルに満たないので、再び最大ステップ幅1Vで入力レベルを増加させる(S2)。
これにより、出力レベルは指定レベルの2.5Vとなり、試験条件として最終入力レベル2.5Vと、最終ステップ幅1Vを保存する。
【0062】
特性の変化が緩い被試験器の場合、固定のステップ幅では、出力レベルが指定レベルになるように入力レベルを増加させるのに、長い時間を要し、タイムアウトにより試験が実施できなくなる場合があったが、本試験装置では、入力レベルの変化の方向が変わらない内は最大のステップ幅で入力レベルを変化させ続けるため、短時間で収束させることができるものである。
【0063】
[2回目以降:
図9]
2回目以降は、試験条件として記憶されている最終入力レベル(2.5V)から最終ステップ幅(1V)を減算した値(1.5V)を初期レベルとし、出力レベルが指定レベルに満たなければ、最終ステップ幅を加算して、2.5Vとし、出力レベルを指定レベルに合わせる(S1)。
そして、最終入力レベル2.5Vと最終ステップ幅1Vを試験条件として試験結果ファイルに保存する。
このようにして本試験装置における入力レベルの調整が行われる。
【0064】
[本試験装置における測定値の算出方法:
図10,
図11]
次に、本試験装置における測定値の算出方法について
図10及び
図11を用いて説明する。
図10、
図11は、本試験装置における測定値の算出方法を示す説明図であり、
図10は初回時、
図11は2回目以降の算出方法を示している。尚、
図10及び
図11は、概略を示す図であって、縦横のスケールは共通ではない。
[初回時:
図10]
図10に示すように、変動の大きい波形のレベルを測定する場合、まず、短い時間間隔でレベルを一定時間測定して十分な数の測定データを取得する。
図10では、波形のピークに矢印が付され、測定データが取得されたことを示しているが、ピークと測定箇所が一致しないこともある。
【0065】
そして、試験コントローラ20は、十分な数の測定データについて平均値(
図10では一点鎖線で示す)を求め、当該平均値から離れている(平均値との差分の絶対値が大きい)2つの測定データを特定する。
つまり、当該2つの測定データは、両方とも平均値より上に突出していてもよいし、下に突出していてもよいし、一方が上に他方が下に突出していてもよい。
これらの測定データは突発的に生じた極大値又は極小値である可能性がある。
【0066】
そこで、試験コントローラ20は、当該2つの測定データを除く他の測定データを用いて平均値(図示せず)を算出し、これを初回時の測定値とする。
これにより、突発的な測定データの影響を受けない測定値を得ることができるものである。
更に、試験コントローラ20は、平均値を算出するのに用いた測定データの最大値と最小値(上限値と下限値)を次回の測定時の有効範囲(
図10では破線で示す)として、測定値及び有効範囲を測定結果ファイルに記憶する。
【0067】
[2回目以降:
図11]
2回目以降の試験時には、前回の試験で得られた有効範囲が記憶されているため、これを利用する。
試験コントローラ20は、十分な数の測定データを取得すると、記憶されている有効範囲と比較して、各測定データが有効範囲内(有効)か、有効範囲外(無効)かを判定する。
そして、一定期間内の全測定データの内、有効な測定データ(有効データ)が半数以上であった場合には、有効データの平均値を算出して、今回の測定値とする。
更に、試験コントローラ20は、有効データの最大値と最小値を次回の有効範囲(破線で示す)として記憶する。
つまり、有効範囲は試験を重ねるごとに徐々に狭まっていくことになる。
【0068】
また、有効データが、全測定データの半数未満であった場合には、試験コントローラ20は、
図10に示した初回時と同様に測定値及び有効範囲を求める。
このようにして、本試験装置における測定値の算出が行われる。
【0069】
[測定結果表示画面の例:
図12]
本試験装置において試験が実施されると、被試験器2毎に測定結果が表示される。
図12は測定結果表示画面の例を示す説明図である。
図12に示すように、測定結果表示画面では、機材名及び製造番号に対応する被測定器2ごとに、試験1~試験3の各試験項目の基準、前回測定値、今回の測定値、そして、今回の良否判定の結果が表示されている。
また、不良と判定された試験及び試験項目は、前回の試験2及び試験2-1のように、着色表示され、一目でわかるようになっている。
【0070】
[測定結果ファイル:
図13]
次に、試験コントローラ20の記憶部に記憶されている測定結果ファイルについて
図13を用いて説明する。
図13は、測定結果ファイルの説明図であり、
図12の測定値(今回の測定値)に対応するものである。
図13に示すように、測定結果ファイルは、各被試験器2の試験を行う度にその結果を保存するものであり、被試験器2毎に、測定日、試験開始時間、試験良否判定、更に各試験や試験に含まれる試験項目毎に結果が書き込まれている。
【0071】
そして、本試験装置の特徴として、試験項目毎に、試験条件と、測定値算出のための有効範囲とを記憶している。
試験条件は、上述した入力レベルの調整の際に、出力レベルが指定レベルに一致したときの入力レベル(最終入力レベル)及びステップ幅(最終ステップ幅)である。
また、有効範囲は、測定値算出の際に取得された、平均算出に用いた測定データの上限値(最大値)及び下限値(最小値)である。
【0072】
但し、入力レベルの大小が試験に影響しないような試験項目については、試験条件を記憶しておく必要はなく、同様に、測定データがばらつかない試験項目については、有効範囲を記憶する必要はない。
どの試験項目について試験条件や有効範囲を記憶するかは予め設定されており、試験コントローラ20はそれに応じた処理を行う。
【0073】
測定結果ファイルは、試験を行う度に保存されるので、最新の試験の結果を保存した測定結果ファイルには、試験条件や有効範囲も最新の値が記憶されている。最新の値を保持することを請求項では更新と記載している。
本試験装置では、これらの値を基に、入力レベルの調整や測定値の算出を行うことで、試験時間を短縮すると共に測定値の信頼性を向上させることができるものである。
【0074】
[試験実施の処理:
図14]
次に、本試験装置における試験実施の処理について
図14を用いて説明する。
図14は、試験実施の処理を示すフローチャートである。
図14に示すように、試験コントローラ20は、被試験器2について試験を開始する際に、測定結果ファイルを参照して、前回の試験結果があるかどうかを判定する(100)。
【0075】
前回の試験結果がなければ(Noの場合)、初回の試験であるとして、最初の試験項目について、試験条件に初期値を使用して(102)、処理106に移行する。試験条件の初期値は、固定値の入力レベルと、最大のステップ幅である。
また、処理100で前回の結果があれば、2回目以降の試験であるため、測定結果ファイルに保存された試験条件を使用し(104)、処理106に移行する。
【0076】
そして、試験コントローラ20は、試験を行う適正状態かどうかをチェックするため、出力レベルが指定レベルに一致しているかどうかを判断し(106)、一致していない場合(Noの場合)には、入力レベルを増減させて出力レベルを指定レベルに収束させる収束動作を行って、試験条件を変更し(108)、処理106に移行する。
【0077】
処理106で、出力レベルが指定レベルに一致して、試験に適した入力レベルが決まると(Yesの場合)、試験コントローラ20は、出力レベルが指定レベルに一致した場合の最終入力レベル及び最終ステップ幅を試験条件として、保持しておく。
そして、試験コントローラ20は、測定器10に当該入力レベルでの測定を行うよう、指示を出力し、当該試験項目の試験を実施する(110)。
【0078】
測定器10から当該試験項目の試験の結果として測定データが出力されると、試験コントローラ20は、測定データに基づいて測定値を算出したり、良否を判定し(112)、測定値や良否結果を、今回の測定結果ファイルの当該試験項目に対応させて保存する。その際に、保持している試験条件も試験項目に対応させて保存する(114)。
【0079】
尚、処理112において、バラツキの大きい測定データの場合には、試験コントローラ20は、
図10,
図11に示したように、突出した測定データの影響を受けないように、測定値の算出を行う。
そして、次回の試験において、測定値の算出に用いる有効範囲を、測定結果ファイルの試験項目に対応付けて記憶する。
【0080】
そして、試験コントローラ20は、全試験が終了したかどうかを判定し(116)、終了していない場合(Noの場合)には、処理104に戻って、次の試験項目の試験条件を取得し、同様の処理を繰り返す。
処理116で全試験が終了した場合(Yesの場合)には、処理を終了する。
このようにして、本試験装置における処理が行われる。
【0081】
[周波数測定への適用]
本試験装置及び本試験方法は、レベルの測定だけでなく、周波数の測定にも適用可能である。
上述した例では、レベルについて記載しているが、周波数についても同様に実現することが可能である。
つまり、試験コントローラ20が、入力周波数の調整を行って、出力周波数を指定周波数に収束させ、その時の最終入力周波数と最終ステップ幅を試験条件として記憶しておき、次回以降に使用する。
【0082】
また、試験コントローラ20は、周波数測定においても、測定データのバラツキが大きい場合には、
図10,11に示したように、突発的に高い周波数や低い周波数の値を取り込まないよう、適正に測定値を算出する。
【0083】
[実施の形態の効果]
本試験装置及び本試験方法によれば、試験コントローラ20が、試験を行う試験条件を決定する際に、被試験器2への試験信号の入力レベルとして、測定器10に予め定められた初期の入力レベルを設定し、被試験器2からの出力レベルが指定レベルに一致しない場合、出力レベルを指定レベルに近づけるよう、まず、最大のステップ幅で入力レベルを増加又は減少させ、以降は、入力レベルを増減させる方向が変わらない場合には前回のステップ幅のまま入力レベルを変化させ、増減させる方向が変わる場合には前回のステップ幅より小さいステップ幅で入力レベルを変化させる収束動作を出力レベルが指定レベルに一致するまで繰り返し、出力レベルが指定レベルに一致した時点での最終入力レベルと最終ステップ幅とを試験条件として記憶すると共に、測定器10に当該入力レベルで測定を行わせるものであり、被試験器2の特性に応じて、出力レベルが指定レベルから離れている場合には、入力レベルを大きいステップ幅で変化させ、出力レベルが指定レベルに近づいた場合には、入力レベルを小さいステップで変化させて、出力レベルを指定レベルに迅速に収束させることができ、バージョンアップや劣化等で被試験器2の特性が大きく変わった場合でも、短時間で試験可能な試験条件を設定して試験を実施でき、プログラムの変更を不要とし、試験の効率を大幅に向上させることができる効果がある。
【0084】
また、本試験装置及び本試験方法によれば、試験コントローラ20が、試験を行う試験条件を決定する際に、被試験器2への試験信号の入力周波数として、測定器10に予め定められた初期の入力周波数を設定し、被試験器2からの出力周波数が指定周波数に一致しない場合、出力周波数を指定周波数に近づけるよう、まず、最大のステップ幅で入力周波数を増加又は減少させ、以降は、入力周波数を増減させる方向が変わらない場合には前回のステップ幅のまま入力周波数を変化させ、増減させる方向が変わる場合には前回のステップ幅より小さいステップ幅で入力周波数を変化させる収束動作を出力周波数が指定周波数に一致するまで繰り返し、出力周波数が指定周波数に一致した時点での最終入力周波数と最終ステップ幅とを試験条件として記憶すると共に、測定器10に当該入力周波数で測定を開始させるものであり、被試験器2の特性に応じて、出力周波数が指定周波数から離れている場合には、入力周波数を大きいステップ幅で変化させ、出力周波数が指定周波数に近づいた場合には、入力周波数を小さいステップで変化させて、出力周波数を指定周波数に迅速に収束させることができ、バージョンアップや劣化等で被試験器2の特性が大きく変わった場合でも、短時間で試験可能な試験条件を設定して試験を実施でき、プログラムの変更を不要とし、試験の効率を大幅に向上させることができる効果がある。
【0085】
また、本試験装置及び本試験方法によれば、本試験装置及び本試験方法は、試験コントローラ20が、測定器10から取得した測定データから測定値を算出する際に、初回時は、特定期間内の全測定データの平均値を算出し、当該平均値から突出する2つのデータを除外して再度平均値を算出して当該値を測定値とし、測定値の算出に用いた測定データの上限値と下限値を、次回の有効範囲として記憶し、次回以降は記憶された有効範囲内の測定データの数と、有効範囲外の測定データの数に応じて、測定値を算出するようにしており、突発的に現れた極端に大きいデータや極端に小さいデータの影響を除外して、被試験器2の特性に近い測定値を得ることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、被試験器の特性に応じて、効率的に試験可能な条件を設定して試験時間を短縮すると共に、特性をよく反映した測定値を得ることができる試験装置及び試験方法に適している。
【符号の説明】
【0087】
1…試験装置、 2…被試験器、 10…測定器、 20…試験コントローラ、 30…切替部