(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118354
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】制動装置
(51)【国際特許分類】
F16D 63/00 20060101AFI20220805BHJP
F16D 65/14 20060101ALI20220805BHJP
F16D 37/02 20060101ALI20220805BHJP
F16D 121/20 20120101ALN20220805BHJP
【FI】
F16D63/00 P
F16D65/14
F16D37/02 Z
F16D121:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014803
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000236665
【氏名又は名称】不二ラテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹森 弘明
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AB27
3J058BA64
3J058CC13
3J058DC03
3J058DC13
3J058DD19
3J058DD26
3J058EA08
3J058EA13
(57)【要約】
【課題】作動室の隙間寸法の設定を安定して行わせることを可能とする制動装置を提供する。
【解決手段】ケース3にコイル7と鉄心5とローター9とを収容し密閉した制動装置1であって、鉄心5はケース3の周壁の内面に配置されローター9の回転軸芯周りに周回形状のアウターコア29とインナーコア31とを一体的に備え、アウターコア29とインナーコア31との間に回転半径方向で設定隙間を周回状に有し磁気粘性流体を収容した作動室37を備え、コイル7は鉄心5のインナーコア31とアウターコア29との少なくとも一方に支持されて通電により作動室37に交差する磁束ループを形成し、ローター9はケース3に支持され回転軸芯周りに回転可能な回転軸21に一体的に取り付けられて作動室37に配置される周回状のローター作用部9aを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースにコイルと鉄心とローターとを収容し密閉した制動装置であって、
前記鉄心は前記ケースの周壁の内面に配置され前記ローターの回転軸芯周りに周回形状のアウターコアとこのアウターコアの内周に配置され前記回転軸芯周りに周回形状のインナーコアとを一体的に備え、
前記アウターコアとインナーコアとの間に回転半径方向で設定隙間を周回状に有し磁気粘性流体を収容した作動室を備え、
前記コイルは前記鉄心のインナーコアとアウターコアとの少なくとも一方に支持されて通電により前記作動室に交差する磁束ループを形成し、
前記ローターは前記ケースに支持され前記回転軸芯周りに回転可能な回転軸に一体的に取り付けられて前記作動室に配置される周回状のローター作用部を備えた、
制動装置。
【請求項2】
請求項1記載の制動装置であって、
前記鉄心は前記アウターコアとインナーコアとを回転半径方向の端部コアで結合し、
前記作動室は前記アウターコアと前記インナーコアとの間の軸方向一側に形成され、
前記コイルは前記アウターコアと前記インナーコアとの間の軸方向他側に支持された、
制動装置。
【請求項3】
請求項1記載の制動装置であって、
前記コイルはインナーコアに対し回転軸芯方向の中間部に支持され、
前記ローター部は前記コイルに対向する窓を備えた、
制動装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の制動装置であって、
前記ケースは非磁性体製の密閉構造である、
制動装置。
【請求項5】
請求項4記載の制動装置であって、
前記ケースは樹脂又はアルミ合金で形成されると共に端壁を有する本体部と前記端壁に対向するキャップとからなり、
前記本体部は前記回転軸の一端を支持する軸受部を一体に備え、
前記キャップは前記回転軸の他端を突出させる貫通孔を備えて前記ケースが樹脂であるとき前記本体部に溶着され又は前記ケースがアルミ合金であるとき前記本体部にカシメられた、
制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気粘性流体を用いた制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の制動装置として特許文献1に記載のものがある。この制動装置はコイルへの通電による磁力により磁気粘性流体の粘性を変化させ、回転部に磁気粘性流体による剪断抵抗を与えて制動力を発生させるものである。
【0003】
この制動装置は軟磁性体のケースの内部に軟磁性体のコイル保持部に保持されたコイルを備え、ケースの周壁の内周面とコイル保持部の外周面との間及びケースの端壁の内面とコイル保持部の端面との間に渡る作動室を備えている。作動室内には磁気粘性流体が充填されると共にロータを含む軟磁性体の回転部が配置され、この回転部に磁気粘性流体による制動力を発生させようとするものである。
【0004】
しかし、従来の制動装置はケースを磁気通路として磁束ループを構成しているためコイル保持部を含む鉄心部を作動室を含めてサブユニット化することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、鉄心部を作動室を含めてサブユニット化することが困難であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鉄心部を作動室を含めてサブユニット化することを可能とするために、ケースに鉄心とコイルとローターとを収容して密閉した制動装置であって、前記鉄心は前記ケースの周壁の内面に配置され前記ローターの回転軸芯周りに周回形状のアウターコアとこのアウターコアの内周に配置され前記回転軸芯周りに周回形状のインナーコアとを一体的に備え、前記アウターコアとインナーコアとの間に回転半径方向で設定隙間を周回状に有し磁気粘性流体を収容した作動室を備え、前記コイルは前記鉄心のインナーコアとアウターコアとの少なくとも一方に支持されて通電により前記作動室に交差する磁束ループを形成し、前記ローターは前記ケースに支持され前記回転軸芯周りに回転可能な回転軸に一体的に取り付けられて前記作動室に配置される周回状のローター作用部を備えた。
【発明の効果】
【0008】
本発明の制動装置では、鉄心のアウターコアとインナーコアと端部コアとコイルとが鉄心ユニットとしてサブユニット化でき、ローターと回転軸とがローターユニットとしてサブユニット化されている。
【0009】
このためケースに対して鉄心ユニットとローターユニットとを一方向から順に挿入して組み付ければよく、ケース3に対する部品の組付けを容易且つ迅速に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】回転軸のカシメ前の要部断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、鉄心部を作動室を含めてサブユニット化することを可能にするという目的を以下のように実現した。
【0012】
ケースに鉄心とコイルとローターとを収容して密閉した制動装置であって、前記鉄心は前記ケースの周壁の内面に配置され前記ローターの回転軸芯周りに周回形状のアウターコアとこのアウターコアの内周に配置され前記回転軸芯周りに周回形状のインナーコアとを一体的に備え、前記アウターコアとインナーコアとの間に回転半径方向で設定隙間を周回状に有し磁気粘性流体を収容した作動室を備え、前記コイルは前記鉄心のインナーコアとアウターコアとの少なくとも一方に支持されて通電により前記作動室に交差する磁束ループを形成する構成であり、前記ローターは前記ケースに支持され前記回転軸芯周りに回転可能な回転軸に一体的に取り付けられて前記作動室に配置される周回状のローター作用部を備えた。
【0013】
前記ケースは鉄心とコイルとローターとを収容して密閉できればよく、材質の選択は自由である。
【0014】
前記ケースは周壁の内面にローターのアウターコアを配置できればよく、形状、構造の選択は自由である。
【0015】
前記鉄心はアウターコアとインナーコアとを一体的に備えればよい。一体的とは軟磁性体によりアウターコアとインナーコアとを備える鉄心を一体に形成する形態、或いは別体ではあるが組み込み時に鉄心ユニットとして組み合わせられてケースに組み込む形態を含む。
【0016】
前記作動室はアウターコアとこのアウターコアの内周に配置されたインナーコアとの間で回転半径方向で設定隙間を有すればよい。加えて作動室は前記ケースの端壁に沿ってインナーコアとアウターコアとに径方向の端部インナーコア及び端部アウターコアを形成しこの端部インナーコア及び端部アウターコア間に回転軸芯方向で設定隙間を形成し、周方向、径方向に連続する場合を含む。
【0017】
前記コイルは前記アウターコアのみに支持される形態を含む。
【0018】
前記ローターは前記作動室が回転軸芯方向の設定隙間を連続的に形成した場合に回転軸芯方向の設定隙間にも配置される形態としてもよい。
【0019】
前記鉄心は前記アウターコアとインナーコアとを回転半径方向の端部コアで結合し、前記作動室は前記アウターコアと前記インナーコアとの間の軸方向一側に形成され、前記コイルは前記アウターコアと前記インナーコアとの間の軸方向他側に支持された。
【0020】
前記結合は締結結合、接着結合、圧入等を用いることができる。
【0021】
前記支持はコイルをインナーコアに位置決めることができるものであればその形態は自由である。
【0022】
前記コイルはインナーコアに対し回転軸芯方向の中間部に支持され、前記ローター部は前記コイルに対向する窓を備えた。
【0023】
前記窓の形態は磁束ループの形成に支障がない限り自由である。
【0024】
前記ケースは非磁性体製で密閉構造である。非磁性体としたのは軽量小型で密閉構造の制動装置に適しているからである。
【0025】
前記ケースは樹脂又はアルミ合金で形成されると共に端壁を有する本体部と前記端壁に対向するキャップとからなり、前記本体部は前記回転軸の一端を支持する軸受部を一体に備え、前記キャップは前記回転軸の他端を突出させる貫通孔を備えて前記ケースが樹脂であるとき前記本体部に溶着され又は前記ケースがアルミ合金であるとき前記本体部にカシメられた。ケースとキャップはねじ締めで結合することもできる。
【実施例0026】
図1は、本発明の実施例1に係る制動装置の断面図である。
図2は制動装置の分解断面図である。以下の説明において回転軸心とは後述するローターの回転軸心を意味し、軸方向とは回転軸心に沿った方向を意味し、回転半径方向とはローターの回転軸心に対する方向を意味し、周方向とは回転前後方向での周方向を意味する。
【0027】
図1、
図2のように、制動装置1はケース3に鉄心5とコイル7とローター9とを収容し密閉した構造となっている。
【0028】
前記ケース3は非磁性体製である。非磁性体は例えば樹脂である。このケース3は本体部11とキャップ13とで構成されている。
【0029】
前記本体部11は、端壁15を有する有底の円筒状に形成されている。本体部11の外周には取り付け用のフランジ17を備えている。端壁15には回転軸芯と同芯の軸受部19を一体に備えている。軸受部19は本体部11内に突出し、回転軸21の一端21aを嵌合させ、回転軸21の一端21aを回転自在に支持している。端壁15には軸受部19に隣接して配線引き出し用の貫通孔23が形成されている。貫通孔23の周囲には端壁15の内面となる側にシール用の凹部23aを備えている。貫通孔23は端壁15の外面でボス部23bを備えている。本体部11は端壁15に対向する側にキャップ取付口25を備えている。キャップ取付口25は前記キャップ13をインローで取り付けるキャップ嵌合口部25a及び溶着部25bを備えている。溶着部25bはキャップ嵌合口部25aに連続する軸方向の面とこの軸方向の面に直交する径方向の面により溶融用の角部を構成している。なお、説明上は溶着部25bを軸方向の面と径方向の面との角部としてキャップ13に対し重ねて明示しているが、組付け状態ではキャップ13の後述する超音波溶着により溶融する部分となる。
【0030】
前記キャップ13は前記端壁15に対向して配置され外周部が本体部11のキャップ取付口25内に嵌合する径に形成され、密に嵌合している。このキャップ13はキャップ取付口25の最外部に嵌合する縁部13aとこの縁部13aに続くテーパー部13bとテーパー部13bの内端に連続する軸方向の嵌合部13cとを備えている。縁部13aの外径はキャップ取付口25の最外部の内径とほぼ一致している。
【0031】
前記テーパー部13bは前記したケース3の溶着部25bの溶融により溶着されている。この溶着でキャップ13の外周部と本体部11のキャップ取付口25との間の密閉性が保持されている。キャップ13の外周部には本体部11の内周面に対向する突条部26が内向きに突設されている。突条部26と本体部11の内周面との間に鉄心5の縁部を保持する。
【0032】
前記キャップ13には中央部に軸受部27を備えている。軸受部27は回転軸21の他端21bを突出させる貫通孔27aを備えている。軸受部27はキャップ13の内面で貫通孔27aにシール用の凹部27bを備えている。
【0033】
前記鉄心5は軟磁性体製であり、アウターコア29とインナーコア31とが端部コアであるボトムコア33により結合されて一体的に備えられたものである。
【0034】
前記アウターコア29はケース3の周壁の内面に配置され前記ローター9の回転軸芯周りに周回形状となっている。アウターコア29は一定厚みの円筒状に形成されている。アウターコア29の一端は前記突条部26と本体部11の内周面との間に保持されている。アウターコア29の他端内周とインナーコア31の端面と前記キャップ13の内面との間は磁気粘性流体を収容する空間となっている。
【0035】
前記インナーコア31は前記アウターコア29の内周に配置され前記回転軸芯周りに周回形状となっている。インナーコア31は一端側の大径部31a及び他端側の小径部31bを備えている。インナーコア31の軸心部には軸挿通孔31cが備えられている。軸挿通孔31cには小径部31bの端部で若干大径に形成された嵌合部31dが連続している。嵌合部31dは軸受部19に嵌合している。
【0036】
【0037】
図1~
図3のボトムコア33は概ね円板形状に形成され、平面から見て一部に切欠き部33aを有している。ボトムコア33の外周径はアウターコア29の外周径と同一に形成されている。
【0038】
前記ボトムコア33には突条部33bが周回状に突設されている。突条部33bはアウターコア29の他端とインナーコア31の小径部31bとの間に嵌合している。アウターコア29の他端と突条部33bとは嵌合により結合されている。この嵌合はすきまばめ、しまりばめ、中間ばめのいずれでもよく、すきまばめを接着等で結合してもよい。ボトムコア33はインナーコア31の小径部31b端面に軟磁性体製のボルト35により締結固定されている。ボトムコア33にはボルト35挿通用の孔33cが周方向120°配置で3箇所に形成されている。前記ボルト35は3箇所の孔33cで前記締結が行われている。ボトムコア33の中心部には嵌合部33dを備えている。嵌合部33dは軸受部19に嵌合して位置決められている。
【0039】
前記アウターコア29とインナーコア31との間に回転半径方向で設定隙間を周回状に有し磁気粘性流体を収容した作動室37を備えている。作動室37はインナーコア31の大径部31aとアウターコア29との回転半径方向間に形成されている。つまりアウターコア29とインナーコア31との間の軸方向の一側に作動室37が形成されている。作動室37はアウターコア29の一端とインナーコア31の端面とキャップ13の内面との間の空間に連続している。磁気粘性流体は合成油等の流体中に強磁性粒子を分散させたものである。この磁気粘性流体は無磁場の状態では液状であり、磁場を印加すると分散していた粒子が互いに連結し磁場強度に応じて剪断応力が増加する。
【0040】
前記コイル7は前記鉄心5のインナーコア31とアウターコア29との間に支持されて通電により前記作動室37に交差する磁束ループを形成する構成である。
【0041】
前記コイル7は配線39と共に樹脂モールドされている。このコイル7はインナーコア31とアウターコア29との間の軸方向他側であるインナーコア31の小径部31bとアウターコア29との間に介設されている。樹脂モールドされたコイル7はインナーコア31とアウターコア29との間に挟持され或いは接着等により固定されている。
【0042】
前記配線39のモールドはコイル7のモールドと一体に形成され配線部モールド41となっている。配線部モールド41は大径部41a及び小径部41bを備えている。大径部41aは前記ボトムコア33の切欠き部33aに嵌合している。小径部41bはケース3のボス部23bに嵌合している。小径部41bの外面とボス部23bの外面とはほぼ面一となっている。ケース3の凹部23aにはオーリング43が保持され、小径部41b外周面に密接している。
【0043】
【0044】
図1、
図2、
図4のように前記ローター9は軟磁性体製の板材を用い絞りプレス加工で形成され、周回状のローター部9aを備えている。このローター9は前記ケース3に支持された回転軸21にカシメ加工により一体的に取り付けられ、前記ローター部9aが前記作動室37に配置されている。ローター部9aは作動室37の隙間に配置され、アウターコア29及びインナーコア31に対して僅かな隙間を形成している。ローター部9aは円板部9bと一体となっている。円板部9bは回転中心部に嵌合孔9baを備えている。嵌合孔9baには回り止め用の凹部9bbを備えている。円板部9bには貫通孔9bcが周方向に一定間隔で複数連設されている。
【0045】
【0046】
図1、
図2、
図5のように前記回転軸21は他端側にシール受け用のフランジ部45を備えている。フランジ部45に隣接して一側にローター嵌合部47を備えている。ローター嵌合部47はカシメ用の突起47aを周回状に備えている。ローター嵌合部47にローター9の嵌合孔9baが嵌合し、突起47aがカシメられている。カシメにより突起47aの肉の一部が凹部9bbに入り込み、回転軸21に対するローター9の回り止めを行った一体的な結合が行われている。
【0047】
前記フランジ部45の他側にはシール用の密接部49を備えている。密接部49はキャップ13の凹部27bに配置されている。凹部27bにオーリング51が支持され、オーリング51は密接部49に密接している。オーリング51とフランジ部45との間には座金53が介設されている。
【0048】
前記回転軸21は結合軸部21bを備えている。結合軸部21bはキャップ13の軸受部27に支持され且つ貫通して外部に突出している。
【0049】
前記回転軸21は前記インナーコア31の軸挿通孔31cに遊嵌している。回転軸21の一端21aは相対的に小径に形成され、前記のようにケース3の軸受部19に回転自在に支持されている。
【0050】
[組立]
図2のように制動装置1の組み立てはサブユニット化して行う。
【0051】
図2では鉄心5のアウターコア29とインナーコア31とボトムコア33とコイル7とが鉄心ユニット55としてサブユニット化され、ローター9と回転軸21とがローターユニット57としてサブユニット化されている。
【0052】
この状態においてまずケース3の本体部11の凹部23aにオーリング43を保持させ、ケース3上に鉄心ユニット55を配置し、鉄心ユニット55を本体部11内に差し込む。この差し込みで鉄心ユニット55のアウターコア29がケース3の本体部11内周面に嵌合する。同時にボトムコア33もケース3の本体部11の端壁15に突き当たり、嵌合部33dが軸受部19に嵌合する。
【0053】
次いでローターユニット57を鉄心ユニット55の上方に配置して軸合わせを行い、回転軸21を軸挿通孔31cに挿入する。この挿入により回転軸21の一端21aを軸受部19に嵌合支持させる。ローター9のローター部9aは作動室37に差し込まれ、アウターコア29とインナーコア31との間に隙間を形成する。
【0054】
次いで作動室37内に磁気粘性流体を充填し、回転軸21のフランジ部45に座金53を配置してキャップ13をキャップ取付口25に取り付ける。このとき予めキャップ13の凹部27bにオーリング51を支持させる。
【0055】
このキャップ13は縁部13aが本体部11のキャップ取付口25に嵌合してインローで取り付けられる。この取り付けはキャップ13のテーパー部13bがキャップ取付口25の溶着部25bの角部に突き当てられるように配置され、キャップ13の軸方向の超音波振動により行われる。このキャップ13の超音波振動により溶着部25bが溶融してテーパー部13bに溶着し
図1のように組付けられる。この溶着でキャップ13の外周部と本体部11のキャップ取付口25との間の密閉性が保持される。
【0056】
前記キャップ13の外周は本体部11のキャップ取付口25内に嵌合し、突条部26と本体部11の内周面との間に鉄心5の縁部を保持する。
【0057】
[制動装置の動作]
上記制動装置1は、取り付け用のフランジ17が固定側にビスなどにより締結固定され、結合軸部21bが制動対象に結合される。配線39は電源に接続され、制御部によりコイル7への通電が制御される。
【0058】
このコイル7が通電制御されると磁束ループが形成される。磁束ループは、コイル7の周りでインナーコア31、作動室37、アウターコア29、ボトムコア33を通るように形成され作動室37に交差する状態となる。この磁束ループが作動室37の磁気粘性流体の粘性を変化させる。
【0059】
したがって、ローター部9aが磁気粘性流体の剪断抵抗を受けローター9が制動力を受ける。コイル7への通電を制御してローター9の制動力を制御し、ローター9の回転速度を減速させ、或いはローター9の回転を停止させることができる。
【0060】
こうしたローター9の制動により結合軸部21bに結合された制動対象を制動制御することができる。
【0061】
[作用効果]
上記のように制動装置1は鉄心5のアウターコア29とインナーコア31とボトムコア33とコイル7とが鉄心ユニット55としてサブユニット化され、ローター9と回転軸21とがローターユニット57としてサブユニット化されている。
【0062】
このためケース3に対して鉄心ユニット55とローターユニット57とを一方向から順に挿入して組み付ければよく、ケース3に対する部品の組付けを容易且つ迅速に行わせることができる。
【0063】
前記鉄心5は設定隙間の作動室37を含めて鉄心ユニット55とするから作動室37の隙間設定を正確に行わせることができる。
【0064】
前記ケース3はキャップ13を本体部11に溶着し、ケース3の端壁15と配線部モールド41との間をオーリング43で閉止し、キャップ13と回転軸21との間をオーリング51で閉止するため磁気粘性流体を密封した密閉性の高い制動装置1を簡単に得ることができる。
【0065】
前記ケース3は樹脂やアルミ合金で射出成形することができ、取り付け用のフランジ17や軸受部19を一体化し、コストダウンを図ることができる。ケース3が樹脂であっても内周面にアウターコア29が存在することでケース3の補強を兼ねることができ、樹脂のケース3を実現している。なお、ケース3をアルミ合金の射出成形により形成する場合、キャップ13は本体部11にカシメ加工により結合されて同様の密閉性を保持する。
【0066】
前記ケース3を非磁性体である樹脂やアルミ合金で形成することで軽量且つコンパクトな制動装置を得ることができる。
【0067】
前記ローターユニット57は絞りプレス加工のローター9を回転軸21にカシメ加工で結合しており、コスト低減を図ることができる。
但し本実施例2の制動装置1はコイル7がインナーコア31に対し回転軸芯方向の中間部に支持され、ローター部9aが前記コイル7に対向する窓9aaを備えたものである。窓9aaは作動室37を交差する磁束ループの形成に影響しないことを考慮しながら周方向に所定間隔で形成されている。
つまりインナーコア31の小径部31bが回転軸芯方向の中間部に形成され、小径部31bの軸方向両側がインナーコア31の大径部31aとなっている。インナーコア31は本体部59とボトム部61とからなっている。ボトム部61と本体部59とはボルト35により一体的に結合されている。前記同様にボルト35は周方向等間隔で3箇所程度配置されている。
前記ボトム部61の断面形状は実施例1のボトムコア33と類似している。但しボトム部61はインナーコア31を構成するため外周面がローター部9aの先端内周に回転半径方向に対向する形状となっている。このボトム部61に対応してアウターコア29の一端が回転半径方向で対向するように配置されている。作動室37はボトム部61とアウターコア29の他端との間に渡っている。
前記ボトム部61には非磁性のアルミ板63が共締めされている。アルミ板63は円盤状に形成されている。アルミ板63の外周円はケース3の本体部11内周に至りアウターコア29の端縁を支持している。アルミ板63はケース3の端壁15に沿って配置されている。アルミ板63には孔63a、63bが形成されている。孔63aは軸受部19に嵌合している。孔63bは配線部モールド41に嵌合している。
実施例2の鉄心ユニット55はアウターコア29及びインナーコア31にアルミ板63及びコイル7によりユニット化する。ユニット化した鉄心ユニット55は実施例1と同様にケース3に上方から組付けられ、アウターコア29がケース3の本体部11内周面に嵌合する。
前記実施例2のローターユニット57は実施例1と同様に組付けられ、ローター部9aの先端部がインナーコア31のボトム部61とアウターコア29との間に介在する形態になる。
本実施例においてコイル7が通電制御されると磁束ループはインナーコア31の本体部59とアウターコア29との間で作動室37に交差し、且つインナーコア31のボトム部61とアウターコア29との間で作動室37に交差する。