(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118370
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】測量システム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20220805BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
G01S5/14
G01C15/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014826
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】511112308
【氏名又は名称】株式会社ゾディアック
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】堀田 淳
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB02
5J062BB08
5J062CC18
5J062HH05
(57)【要約】
【課題】複数の測定点を一人でも測量することができる測量システムを提供する。
【解決手段】測量システム100は、複数のクライアント側発信端末機101および1つのホスト側受信端末機120をそれぞれ備えている。各クライアント側発信端末機101は、自身以外の他のクライアント側発信端末機101が発信する識別情報を受信して受信強度を特定する信号強度特定部105cと特定した受信強度を距離情報信号として発信する送信部104aとを備えている。ホスト側受信端末機120は、距離情報信号を受信して各クライアント側発信端末機101間の相互距離を計算する距離算出部124a、相互距離を用いて各クライアント側発信端末機101の配置位置関係を特定する配置位置関係特定部124bおよび各クライアント側発信端末機101で囲まれた領域の面積を算出する面積算出部124cを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の識別情報を表す無線信号である識別情報信号を発信する送信部を有する複数のクライアント側発信端末機と、
前記複数のクライアント側発信端末機がそれぞれ発信する無線信号を受信して前記複数のクライアント側発信端末機相互間の位置関係を管理するホスト側受信端末機とを有した測量システムであって、
前記複数のクライアント側発信端末機は、
自身以外の他の前記クライアント側発信端末機が発信した前記識別情報信号を受信する受信部と、
前記受信した前記識別情報信号の信号強度を特定する信号強度特定部とを有しており、
前記送信部は、
前記特定した前記信号強度を表す無線信号である距離情報信号を発信するものであり、
前記ホスト側受信端末機は、
前記距離情報信号を受信して前記複数のクライアント側発信端末機相互間の距離である相互距離を算出する距離算出部を備えていることを特徴とする測量システム。
【請求項2】
固有の識別情報を表す無線信号である識別情報信号を発信する送信部を有する複数のクライアント側発信端末機と、
前記複数のクライアント側発信端末機がそれぞれ発信する無線信号を受信して前記複数のクライアント側発信端末機相互間の位置関係を管理するホスト側受信端末機とを有した測量システムであって、
前記複数のクライアント側発信端末機は、
自身以外の他の前記クライアント側発信端末機が発信した前記識別情報信号を受信する受信部と、
前記受信した前記識別情報信号の信号強度を特定する信号強度特定部と、
前記特定した前記信号強度を用いて自身と自身以外の他の前記クライアント側発信端末機との間の相互距離を算出する距離算出部とを有しており、
前記送信部は、
前記算出した前記相互距離を表す無線信号である距離情報信号を発信するものであり、
前記ホスト側受信端末機は、
前記距離情報信号を受信して前記複数のクライアント側発信端末機間における前記相互距離を管理することを特徴とする測量システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した測量システムにおいて、
前記ホスト側受信端末機は、
前記相互距離を用いて前記複数のクライアント側発信端末機における相互の配置位置関係を特定する配置位置関係特定部を備えていることを特徴とする測量システム。
【請求項4】
請求項3に記載した測量システムにおいて、
前記複数のクライアント側発信端末機は、
少なくとも3つ存在するとともに、これらのうちの少なくとも2つの前記クライアント側発信端末機間の前記相互距離が既知であり、
前記配置位置関係特定部は、
前記既知の相互距離を用いて前記複数のクライアント側発信端末機における相互の前記配置位置関係を特定することを特徴とする測量システム。
【請求項5】
請求項4に記載の測量システムにおいて、
前記ホスト側受信端末機は、
前記相互距離および前記配置位置関係を用いて前記複数のクライアント側発信端末機で囲まれた領域の面積を算出する面積算出部を備えていることを特徴とする測量システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちの少なとも1つに記載の測量システムにおいて、さらに、
前記クライアント側発信端末機を地面または床面から所定の高さ位置に支持する発信端末機支持体を備えることを特徴とする測量システム。
【請求項7】
請求項6に記載した測量システムにおいて、
前記発信端末機支持体は、
上方に向かって尖った錐状に形成されており、
前記クライアント側発信端末機は、
前記発信端末機支持体における上端部に支持されていることを特徴とする測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のポイント間の距離を測定する測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地中に対するガス、水道または電話線などのインフラ工事または道路工事などの各種工事現場においては、工事現場の測量が行われている。例えば、下記特許文献1には、既知点に設けた測量装置に対して複数の測定点にそれぞれ作業員を配置して各測定点の測量を同時に行う測定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された測定システムにおいては、複数の測定点ごとに作業員を配置する必要があり測量作業が煩雑で非効率であるという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、複数の測定点を一人でも測量することができる測量システムを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、固有の識別情報を表す無線信号である識別情報信号を発信する送信部を有する複数のクライアント側発信端末機と、複数のクライアント側発信端末機がそれぞれ発信する無線信号を受信して複数のクライアント側発信端末機相互間の位置関係を管理するホスト側受信端末機とを有した測量システムであって、複数のクライアント側発信端末機は、自身以外の他のクライアント側発信端末機が発信した識別情報信号を受信する受信部と、受信した識別情報信号の信号強度を特定する信号強度特定部とを有しており、送信部は、特定した信号強度を表す無線信号である距離情報信号を発信するものであり、ホスト側受信端末機は、距離情報信号を受信して複数のクライアント側発信端末機相互間の距離である相互距離を算出する距離算出部を備えていることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、測量システムは、複数のクライアント側発信端末機が自身以外のクライアント側発信端末機からの信号強度を取得するとともに、ホスト側受信端末機が前記信号強度を用いて複数のクライアント側発信端末機間の相互距離を算出している。これにより、本発明に係る測量システムは、各クライアント側発信端末機を測定点に配置するだけでホスト側受信端末機が各測定点間の距離を取得することができるため、複数の測定点を一人で測量することができる。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明の特徴は、固有の識別情報を表す無線信号である識別情報信号を発信する送信部を有する複数のクライアント側発信端末機と、複数のクライアント側発信端末機がそれぞれ発信する無線信号を受信して複数のクライアント側発信端末機相互間の位置関係を管理するホスト側受信端末機とを有した測量システムであって、複数のクライアント側発信端末機は、自身以外の他のクライアント側発信端末機が発信した識別情報信号を受信する受信部と、受信した識別情報信号の信号強度を特定する信号強度特定部と、特定した信号強度を用いて自身と自身以外の他のクライアント側発信端末機との間の相互距離を算出する距離算出部とを有しており、送信部は、算出した相互距離を表す無線信号である距離情報信号を発信するものであり、ホスト側受信端末機は、距離情報信号を受信して複数のクライアント側発信端末機間における相互距離を管理することにある。
【0009】
このように構成した本発明の特徴によれば、測量システムは、複数のクライアント側発信端末機が自身以外のクライアント側発信端末機からの信号強度を取得するとともにこの信号強度を用いて自身と他のクライアント側発信端末機間の相互距離を算出してホスト側受信端末機に発信している。これにより、本発明に係る測量システムは、各クライアント側発信端末機を測定点に配置するだけでホスト側受信端末機が各測定点間の距離を取得することができるため、複数の測定点を一人で測量することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記測量システムにおいて、ホスト側受信端末機は、相互距離を用いて複数のクライアント側発信端末機における相互の配置位置関係を特定する配置位置関係特定部を備えていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、測量システムは、ホスト側受信端末機が相互距離を用いて複数のクライアント側発信端末機における相互の配置位置関係を特定する配置位置関係特定部を備えているため、複数のクライアント側発信端末機における相互の配置関係、具体的には、クライアント側発信端末機間における向きおよび距離を特定することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記測量システムにおいて、複数のクライアント側発信端末機は、少なくとも3つ存在するとともに、これらのうちの少なくとも2つのクライアント側発信端末機間の相互距離が既知であり、配置位置関係特定部は、既知の相互距離を用いて複数のクライアント側発信端末機における相互の配置位置関係を特定することにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、測量システムは、配置位置関係特定部が既知の相互距離を用いて複数のクライアント側発信端末機における相互の配置位置関係を特定しているため、クライアント側発信端末機の相互の配置位置関係を精度良く特定することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記測量システムにおいて、ホスト側受信端末機は、相互距離および配置位置関係を用いて複数のクライアント側発信端末機で囲まれた領域の面積を算出する面積算出部を備えていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、測量システムは、ホスト側受信端末機が相互距離および配置位置関係を用いて複数のクライアント側発信端末機で囲まれた領域の面積を算出する面積算出部を備えているため、複数のクライアント側発信端末機で囲まれた領域の面積を簡単に特定することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記測量システムにおいて、さらに、クライアント側発信端末機を地面または床面から所定の高さ位置に支持する発信端末機支持体を備えることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、測量システムは、クライアント側発信端末機を地面または床面から所定の高さ位置に保持する発信端末機支持体を備えているため、クライアント側発信端末機が他のクライアント側発信端末機が発信した無線信号の受信感度が向上するとともにクライアント側発信端末機とホスト側受信端末機との受信感度が向上して測量精度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記測量システムにおいて、発信端末機支持体は、上方に向かって尖った錐状に形成されており、クライアント側発信端末機は、発信端末機支持体における上端部に支持されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、測量システムは、発信端末機支持体が上方に向かって尖った錐状に形成されており、この錐状に尖った上端部にクライアント側発信端末機が支持されているため、クライアント側発信端末機を所定の高さ位置に安定的に支持しながら地面上または床面上におけるクライアント側発信端末機の配置位置を把握し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る測量システムのシステム構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図1に示す測量システムにおける制御システムの概略を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す測量システムにおけるクライアント側発信端末機を発信端末機支持体上に取り付けた状態を示す外観斜視図である。
【
図4】本発明の変形例に係る測量システムにおける制御システムの概略を示すブロック図である。
【
図5】本発明の他の変形例に係る測量システムにおける制御システムの概略を示すブロック図である。
【
図6】本発明の他の変形例に係る発信端末機支持体上にクライアント側発信端末機を取り付けた状態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る測量システムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る測量システム100のシステム構成を模式的に示す説明図である。
図2は、
図1に示す測量システム100における制御システムの概略を示すブロック図である。この測量システム100は、工事現場、工場、倉庫、農場、船舶または山林などの各種現場において複数のポイントを測定点Pとしてこれらの測定点P間の距離(長さ)、位置関係および各測定点Pで囲まれた領域の面積をそれぞれ算出または特定する測量装置である。
【0022】
この測量システム100は、主として、クライアント側発信端末機101、発信端末機支持体110およびホスト側受信端末機120を備えて構成されている。クライアント側発信端末機101は、測量を行いたいポイントである測定点Pに配置されて識別情報信号を発信するとともに自身以外の他のクライアント側発信端末機101が発信した識別情報信号の受信強度を特定してホスト側受信端末機120に対して発信する装置であり、箱型に形成されている。このクライアント側発信端末機101は、
図3に示すように、筐体102、送受信部104、制御部105および電源部107をそれぞれ備えて構成されている。
【0023】
筐体102は、送受信部104、制御部105および電源部107をそれぞれ収容するための部品であり、金属材または樹脂材を箱型に形成して構成されている。本実施形態においては、筐体102は、片手で持つことができる程度の大きさに形成されている。この筐体102の下面には取付部103が形成されている。
【0024】
取付部103は、筐体102を発信端末機支持体110上に着脱自在に取り付けるための部分である。この取付部103は、脚部103aと連結部103bとで構成されている。脚部103aは、筐体102に対して連結部103bを連結するための部品であり、筐体102の下方に向かって延びる金属製または樹脂製の4つの板状体で構成されている。連結部103bは、発信端末機支持体110に取り付けられる部分であり、水平方向に延びる金属製または樹脂製の円環状に形成されている。
【0025】
送受信部104は、識別情報信号および距離情報信号をそれぞれ発信するとともに自身以外の他のクライアント側発信端末機101が発信した識別情報信号を受信する電気回路であり、制御部105によって作動が制御される。この送受信部104は、主として、送信部104a、受信部104bおよびアンテナ104cをそれぞれ備えて構成されている。
【0026】
送信部104aは、制御部105から出力される識別情報信号および距離情報信号をそれぞれ高周波電気信号に変調してアンテナ104cを介して無線信号として発信する電気回路である。受信部104bは、自身以外の他のクライアント側発信端末機101が発信した識別情報信号を表す無線信号をアンテナ104cを介して受信して復調した後、制御部105に出力する電気回路である。
【0027】
アンテナ104cは、電流と電波とを相互に変換するための器具であり、モノポールアンテナ、チップアンテナ、パターンアンテナまたはダイポールアンテナで構成することができる。本実施形態においては、送受信部104は、近距離無線通信の1つであるブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を用いて送受信を行う。
【0028】
制御部105は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、ROMに予め記憶される測量基礎データ取得プログラムを実行することにより、識別情報信号の発信制御、識別情報信号の受信制御および識別情報信号の信号強度の特定および距離情報信号の発信制御をそれぞれ実行する。具体的には、制御部105は、測量基礎データ取得プログラムの実行によって作動する識別情報信号発信部105a、識別情報信号受信部105b、信号強度特定部105cおよび距離情報信号発信部105dをそれぞれ備えている。
【0029】
識別情報信号発信部105aは、識別情報を表す識別情報信号を生成して送信部104aに出力する。ここで、識別情報は、複数用意される各クライアント側発信端末機101がそれぞれ自身と他のクライアント側発信端末機101とを区別するための情報であり、各クライアント側発信端末機101ごとに互いに異なる固有の情報が制御部105の記憶装置に予め記憶されている。
【0030】
識別情報信号受信部105bは、他のクライアント側発信端末機101が発信し送受信部104の受信部104bが受信した他のクライアント側発信端末機101の識別情報を表す識別情報信号を入力する。信号強度特定部105cは、受信部104bが受信した識別情報信号の受信電波強度(RSSI値)を信号強度として取得する。距離情報信号発信部105dは、信号強度特定部105cが特定した信号強度を表す距離情報信号を生成して送信部104aに出力する。
【0031】
また、制御部105は、操作子106aおよび表示部106bがそれぞれ接続されている。操作子106aは、測量システム100の使用者からの手動操作に応じた操作信号を制御部105に出力する入力装置であり、押しボタンで構成されている。この操作子106aは、筐体102の外表面上に露出している。また、表示部106bは、制御部105の作動状態を光の明滅によって表示する表示装置である。本実施形態においては、表示部106bは、筐体102の外表面上に露出した1つのLED発光素子(Light Emitting Diode:発光ダイオード)によって構成されている。
【0032】
電源部107は、送受信部104および制御部105にそれぞれ電力を供給する電池107aを備えた電気回路である。この場合、電池107aは、充電ができず放電のみを行う一次電池または繰り返し充放電を行う二次電池を用いることができる。制御部105は、本実施形態においては、電源部107に電池107aが装着されることで前記制御プログラムの実行を自動的に開始する。
【0033】
発信端末機支持体110は、クライアント側発信端末機101を地面または床面などの設置面Gの上方位置で支持するための器具であり、金属材または樹脂材を設置面G上から上方に向かって延びる円錐状に形成されている。この発信端末機支持体110は、主として、設置部111と柱部112とで構成されている。
【0034】
設置部111は、設置面G上に載置される部分であり、平板板状に形成されている。柱部112は、筐体102に設けられた取付部103の連結部103bが着脱自在に嵌合する部分であり、設置部111の上面から上方に向かって円錐状に延びて形成されている。本実施形態においては、発信端末機支持体110は、設置部111と柱部112とが樹脂材によって一体的に成形されている。
【0035】
ホスト側受信端末機120は、各測定点Pごとに配置されたクライアント側発信端末機101からそれぞれ発信される距離情報信号をそれぞれ受信して各測定点Pの配置位置関係および各測定点Pで囲まれた領域の面積を算出する通信機能を有した計算機であり、薄板状に形成されている。このホスト側受信端末機120は、筐体121、受信部122、制御部124および電源部126をそれぞれ備えて構成されている。
【0036】
筐体121は、受信部122、制御部124および電源部126をそれぞれ収容するための部品であり、金属材または樹脂材を箱型に形成して構成されている。本実施形態においては、筐体121は、片手で持つことができる程度の大きさに形成されている。
【0037】
受信部122は、各クライアント側発信端末機101が発信した距離情報信号を受信する電気回路であり、制御部124によって作動が制御される。具体的には、受信部122は、各クライアント側発信端末機101が発信した距離情報信号を表す無線信号をアンテナ123を介して受信して復調した後、制御部124に出力する。アンテナ123は、電流と電波とを相互に変換するための器具であり、受信部122に電気的に接続されている。このアンテナ123は、モノポールアンテナ、チップアンテナ、パターンアンテナまたはダイポールアンテナで構成することができる。本実施形態においては、アンテナ123は、チップアンテナで構成されており、筐体121内に収容されている。
【0038】
制御部124は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、ROMに予め記憶される測量置計算プログラムを実行することにより、相互距離の算出、配置位置関係の特定および面積の算出の各処理をそれぞれ実行する。具体的には、制御部124は、測量置計算プログラムの実行によって作動する距離算出部124a、配置位置関係特定部124bおよび面積算出部124cをそれぞれ備えている。
【0039】
距離算出部124aは、受信部122が受信した距離情報信号が表す信号強度を用いて送信側のクライアント側発信端末機101と受信側のクライアント側発信端末機101との間の距離を相互距離として計算する。なお、距離算出部124aには、複数の各信号強度に対応する相互距離を関連付けた距離変換テーブルまたは信号強度を相互距離に変換する変換式が予め記憶されている。
【0040】
なお、距離算出部124aは、2つの測定点P間の距離の算出においては、各測定点Pごとの距離算出によって結果として2つの相互距離が算出される。例えば、測定点P1と測定点P2との間の距離は、測定点P1に対する測定点P2の距離と、測定点P2に対する測定点P1の距離との2つの距離が算出される。この場合、距離算出部124aは、これら2つの距離の中央値を2つの測定点P間の相互距離としてもよいし、所定の時間内に複数回2つの測定点P間の距離を算出した値の平均値を2つの測定点P間の相互距離とすることもできる。
【0041】
配置位置関係特定部124bは、距離算出部124aによって算出した各クライアント側発信端末機101間の相互距離に基づいて各クライアント側発信端末機101の配置位置関係を特定する。具体的には、例えば、配置位置関係特定部124bは、例えば、3つのクライアント側発信端末機101の各位置である3つの測定点P1~P3における測定点P1に対する測定点P2および測定点P3までの各相互距離を保持するとともに、測定点P2に対する測定点P1および測定点P3までの各相互距離を保持していれば、測定点P3の位置は測定点P1と測定点P3との間の相互距離を半径とする円と測定点P2と測定点P3との間の相互距離を半径とする円との交点に存在することを推定することができる。
【0042】
この場合、配置位置関係特定部124bは、測定点P1と測定点P3との間の相互距離を半径とする球と測定点P2と測定点P3との間の相互距離を半径とする球との交点によって測定点P3の位置関係を3次元的に推定することができる。また、配置位置関係特定部124bは、測定点Pをノードとし、測定点間の相互距離をエッジとしてグラフ理論によって各測定点Pの相互の位置関係、すなわち、各クライアント側発信端末機101の相互の位置関係を特定することができる。
【0043】
面積算出部124cは、配置位置関係特定部124bによって特定した各クライアント側発信端末機101相互間の配置位置関係に基づいて各クライアント側発信端末機101によって囲まれた領域の面積を算出する。この場合、面積算出部124cは、互いに隣接するクライアント側発信端末機101間を直線で結んだ領域の面積を算出する。なお、面積算出部124cは、配置位置関係特定部124bによって特定した各クライアント側発信端末機101相互間の配置位置関係を輪郭データとして、この輪郭データの外形に応じて設定した基準形状(楕円、方形、ひし形、台形、三角形など)をパターンフィッティング処理を行って面積を算出することができる。
【0044】
また、制御部124は、操作パネル125を備えている。操作パネル125は、制御部124に対してこの測量システム100を利用する利用者からの指示を入力するアイコンなどの入力用画面および制御部124からの情報を表示するための液晶ディスプレイで構成されたユーザインターフェースである。
【0045】
電源部126は、受信部122および制御部124にそれぞれ電力を供給する電池126aを備えた電気回路である。この場合、電池126aは、充電ができず放電のみを行う一次電池または繰り返し充放電を行う二次電池を用いることができる。
【0046】
このホスト側受信端末機120は、本実施形態においては、スマートフォンで構成されている。ここで、スマートフォンとは、携帯型のコンピュータ用のOSを備えた携帯電話であり、液晶表示画面を操作することで通信、データ処理および画像処理を行うことができる。したがって、受信部122は、近距離無線通信の1つであるブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を用いて受信を行う。また、制御部124は、スマートフォンの全体を総合的に制御するマイクロコンピュータによって構成されている。
【0047】
(測量システム100の作動)
次に、上記のように構成した測量システム100の作動について説明する。まず、測量システム100を使用する使用者は、測量を行う現場にクライアント側発信端末機101、発信端末機支持体110およびホスト側受信端末機120をそれぞれ用意する。この場合、クライアント側発信端末機101は、測量を行う測定点Pの数だけ用意する。また、発信端末機支持体110は、クライアント側発信端末機101の数だけ用意する。また、ホスト側受信端末機120は、1つ用意する。
【0048】
本実施形態においては、測量システム100は、道路などを掘削して形成した平面視で方形の有底穴である測量対象WKの測量を行う。すなわち、本実施形態における測量対象WKは、4つの角部を4つの測定点P1~P4として設定することができる。したがって、使用者は、4つのクライアント側発信端末機101、4つの発信端末機支持体110および1つのホスト側受信端末機120をそれぞれ用意する。
【0049】
次に、使用者は、4つのクライアント側発信端末機101をそれぞれ発信端末機支持体110に1つずつ取り付ける。具体的には、使用者は、クライアント側発信端末機101における取付部103の連結部103bを発信端末機支持体110の柱部112の上端部に嵌合させた状態で載置する。これにより、使用者は、発信端末機支持体110の上端部上にクライアント側発信端末機101を取り付けることができる。
【0050】
次に、使用者は、クライアント側発信端末機101を測定点P1~P4にそれぞれ配置する。具体的には、使用者は、クライアント側発信端末機101が載置された4つの発信端末機支持体110をそれぞれ測定点P1~P4に1つずつ配置する。この場合、使用者は、発信端末機支持体110の安定性を考慮して測定点P1~P4の近傍を設置面Gとして発信端末機支持体110をそれぞれ配置する。なお、使用者は、測量対象WKを構成する穴の底部に配置することもできる。
【0051】
次に、使用者は、測量対象WKに設定した測定点P1~P4について測量を行う。この場合、4つのクライアント側発信端末機101は、電源部107に電池107aが装着されていることで自動的に測量基礎データ取得プログラムを実行して自機の識別情報の発信、他機からの識別情報の受信、識別情報信号の信号強度の特定および距離情報信号の発信の各処理を実行する。
【0052】
したがって、使用者は、各クライアント側発信端末機101に電池107aが電源部107に装着されていない場合には、電源部107に電池107aに装着することで、クライアント側発信端末機101に自機の識別情報の発信、他機からの識別情報の受信、識別情報信号の信号強度の特定および距離情報信号の発信の各処理の実行を開始させることができる。これにより、各クライアント側発信端末機101は、識別情報信号発信部105aによって自己の識別情報を表す識別情報信号を発信する。
【0053】
また、各クライアント側発信端末機101は、識別情報信号受信部105bによって他機からの識別情報信号を受信する。また、各クライアント側発信端末機101は、信号強度特定部105cによって受信した各識別情報信号の受信電波強度(RSSI値)を信号強度として取得する。また、各クライアント側発信端末機101は、距離情報信号発信部105dによって受信した各識別情報信号の受信電波強度(RSSI値)を表す距離情報信号を発信する。
【0054】
なお、各クライアント側発信端末機101は、制御部105に対して電力の供給の開始または遮断する電源スイッチまたは測量基礎データ取得プログラムの実行の開始または中断する操作子を設けておくことで使用者による操作によって測量基礎データ取得プログラムの実行の開始または中断を行うようにすることもできる。
【0055】
また、使用者は、ホスト側受信端末機120の操作パネル125を操作して測量値計算プログラムの実行を開始させる。これにより、制御部124は、距離算出部124aによって測定点P1と測定点P2との間の相互距離L12、測定点P1と測定点P3との間の相互距離L13、測定点P1と測定点P4との間の相互距離L14、測定点P2と測定点P3との間の相互距離L23、測定点P2と測定点P4との間の相互距離L24および測定点P3と測定点P4との間の相互距離L34、をそれぞれ算出して操作パネル125上に表示するとともに算出した各相互距離をそれぞれ記憶する。
【0056】
また、制御部124は、配置位置関係特定部124bによって相互距離L12、相互距離L13、相互距離L14、相互距離L23、相互距離L24および相互距離L34をそれぞれ用いて測定点P1~P4の3次元的な配置関係して操作パネル125上に表示するとともに特定した測定点P1~P4の位置関係をそれぞれ記憶する。さらに、制御部124は、面積算出部124cによって測定点P1~P4の配置関係に基づいて測定点P1~P4で囲まれた領域の面積を算出して操作パネル125上に表示するとともに算出した面積を記憶する。
【0057】
次に、使用者は、操作パネル125上に表示された測定点P1~P4ごとの各相互距離、配置位置および面積を確認してこれらの各測量情報が妥当であると判断できる場合には操作パネル125を操作して測量基礎データ取得プログラムの実行の終了を指示する。一方、使用者は、操作パネル125上に表示された測定点P1~P4ごとの各相互距離、配置位置および面積を確認してこれらの各測量情報が妥当であると判断できない場合には操作パネル125を操作して再度測定点P1~P4ごとの各相互距離、配置位置および面積の算出処理の実行を指示する。
【0058】
そして、使用者は、測定点P1~P4の測量作業を終了する場合には、クライアント側発信端末機101および発信端末機支持体110の回収を行う。これにより、使用者は、測定点P1~P4の測量作業を終了することができる。
【0059】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、測量システム100は、4つのクライアント側発信端末機101が自身以外のクライアント側発信端末機101からの信号強度を取得するとともに、ホスト側受信端末機120が前記信号強度を用いて4つのクライアント側発信端末機101間の相互距離を算出している。これにより、本発明に係る測量システム100は、各クライアント側発信端末機101を測定点P1~P4に配置するだけでホスト側受信端末機120が各測定点P1~P4間の距離を取得することができるため、複数の測定点P1~P4を一人で測量することができる。
【0060】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付している。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、ホスト側受信端末機120は、測定点P1~P4ごとの各相互距離、配置位置および面積をそれぞれ算出するように構成した。しかし、ホスト側受信端末機120は、複数の測定点Pごとの少なくとも相互距離を算出するように構成すればよく、必ずしも、配置位置および面積まで算出する必要はない。
【0062】
また、上記実施形態においては、ホスト側受信端末機120は、測定点P1~P4ごとの各相互距離、配置位置および面積を操作パネル125上に表示するように構成した。この場合、ホスト側受信端末機120は、GPS(Global Positioning System)機能を有している場合には、測定点P1~P4の配置位置を地図上に表示させることもできる。この場合、ホスト側受信端末機120は、各クライアント側発信端末機101が発信する識別情報信号または距離情報信号の受信電波強度(RSSI値)を特定することで各クライアント側発信端末機101との相互距離および位置関係を特定することができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、測量システム100は、各測定点P1~P4間の相互距離が不知であることを前提として測定点P1~P4ごとの相互距離、配置位置および面積をそれぞれ算出するように構成した。しかし、測量システム100は、複数の測定点Pのうちの少なくともいずれか2つの測定点P間の相互距離が既知であることを前提として測定点P1~P4ごとの相互距離、配置位置および面積をそれぞれ算出することができる。
【0064】
具体的には、クライアント側発信端末機101は、
図4に示すように、自身以外の他のクライアント側発信端末機のうちの少なくとも1つの特定のクライアント側発信端末機101(以降、これを「特定クライアント側発信端末機」という)との間の相互距離またはこの相互距離に対応する受信電波強度(RSSI値)を記憶する既知距離記憶部105eを備えておく。そして、クライアント側発信端末機101における距離情報信号発信部105dは、既知距離記憶部105eに記憶されている距離または受信電波強度(RSSI値)を表す距離情報信号を自身と特定クライアント側発信端末機との間の相互距離を表す距離情報信号として発信する。
【0065】
この場合、クライアント側発信端末機101は、既知の相互距離に基づく距離情報信号を他の不知の相互距離に基づく距離情報信号と区別せず発信してもよいし、既知の相互距離に基づく距離情報信号を既知距離情報信号として他の不知の相互距離に基づく距離情報信号と区別して発信することもできる。
【0066】
一方、ホスト側受信端末機120は、既知の相互距離に基づく距離情報信号を他の不知の相互距離に基づく距離情報信号と区別することなく複数の測定点Pごとの相互距離、配置位置および面積をそれぞれ算出することができる。これにより、ホスト側受信端末機120は、複数の測定点Pごとの相互距離、配置位置および面積の算出精度を向上させることができる。
【0067】
また、ホスト側受信端末機120は、既知の相互距離に基づく特定距離情報信号を他の不知の相互距離に基づく距離情報信号と区別して複数の測定点Pごとの相互距離、配置位置および面積をそれぞれ算出することができる。この場合、ホスト側受信端末機120は、特定距離情報信号を優先的に用いて複数の測定点Pごとの相互距離、配置位置および面積をそれぞれ算出することができる。
【0068】
例えば、上記実施形態における相互距離L12、相互距離L13、相互距離L14、相互距離L23、相互距離L24および相互距離L34のうちの相互距離L12が既知である場合、相互距離L12に基づいて測定点P1と測定点P2との位置関係を特定し、この特定した測定点P1と測定点P2との位置関係および相互距離L12に基づいて測定点P3または測定点P4の位置関係を特定し、この測定点P3または測定点P4の位置に基づいて測定点P4または測定点P3の位置を特定するようにする。これにより、ホスト側受信端末機120は、複数の測定点Pごとの相互距離、配置位置および面積の算出精度をより向上させることができる。
【0069】
また、上記実施形態においては、測量システム100は、距離算出部124aをホスト側受信端末機120に設けて構成した。しかし、測量システム100は、
図5に示すように、距離算出部124aに相当する距離算出部105fをクライアント側発信端末機101に設けて構成することもできる。この場合、距離算出部105fは、信号強度特定部105cが特定した信号強度を用いて送信側のクライアント側発信端末機101と受信側のクライアント側発信端末機101との間の相互距離を計算する。
【0070】
また、この場合、クライアント側発信端末機101における距離情報信号発信部105dは、距離算出部105fが算出したクライアント側発信端末機101間の相互距離を表す距離情報信号を生成して送信部104aに出力する。一方、ホスト側受信端末機120は、距離算出部105fが算出したクライアント側発信端末機101間の相互距離を受信部122を介して入力するとともに、この相互距離に基づいて配置位置関係特定部124bが各クライアント側発信端末機101の配置位置関係を特定する
【0071】
また、上記実施形態においては、測量システム100は、4つのクライアント側発信端末機101と1つのホスト側受信端末機120とをそれぞれ備えて構成した。しかし、測量システム100は、少なくとも2つ以上のクライアント側発信端末機101と少なくとも1つ以上のホスト側受信端末機120とを備えて構成することができる。また、ホスト側受信端末機120は、各クライアント側発信端末機101が発信する距離情報信号を受信して各クライアント側発信端末機101相互間の位置関係を管理するように構成されていればよく、スマートフォン以外の機器、例えば、専用の機器として構成することもできる。
【0072】
また、上記実施形態においては、発信端末機支持体110は、上方に向かって尖った円錐状に形成した。しかし、発信端末機支持体110は、各クライアント側発信端末機101をそれぞれ所定の高さ位置に保持できる形状に形成されていればよい。したがって、発信端末機支持体110は、円錐以外の錐形状であってもよい、錐形状以外の形状に形成されていてもよい。
【0073】
例えば、発信端末機支持体110は、
図6に示すように、設置部111および柱部112をそれぞれが柱状または棒状に形成することができる。この場合、クライアント側発信端末機101における取付部103は、連結部103bが設置部111の上端部に着脱自在に嵌合する筒状に形成されている。これらの場合、発信端末機支持体110は、設置部111の下端部を設置面G上に突き刺すことができるように尖って形状に形成されているとよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、測量システム100は、発信端末機支持体110を備えて構成した。しかし、測量システム100は、発信端末機支持体110を省略して構成することもできる。この場合、測量システム100は、各クライアント側発信端末機101を直接設置面G上に配置することができる。この場合、各クライアント側発信端末機101は、取付部103を省略して構成することができるが、この取付部103を設けて設置面G上に直接載置することで発信端末機支持体110上に取り付ける設置方法と兼用することもできる。
【符号の説明】
【0075】
G…設置面、WK…測量対象、P…測定点、
100…測量システム、101…クライアント側発信端末機、102…筐体、103…取付部、103a…脚部、103b…連結部、104…送受信部、104a…送信部、104b…受信部、104c…アンテナ、105…制御部、105a…識別情報信号発信部、105b…識別情報信号受信部、105c…信号強度特定部、105d…距離情報信号発信部、105e…既知距離記憶部、105f…距離算出部、106a…操作子、106b…表示部、107…電源部、107a…電池、
110…発信端末機支持体、111…設置部、112…柱部、
120…ホスト側受信端末機、121…筐体、122…受信部、123…アンテナ、124…制御部、124a…距離算出部、124b…配置位置関係特定部、124c…面積算出部、125…操作パネル、126…電源部、126a…電池。