(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118418
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】垂直軸型風車
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
F03D3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014924
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀部 房二
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178BB31
3H178CC01
3H178CC02
(57)【要約】
【課題】従来と比較して高効率を実現できる垂直軸型風車を提供する。
【解決手段】垂直軸型風車1は、軸A周りに回転自在であり、軸Aを中心とする円周P上に等間隔に配置された複数の翼部材11,12を有する第1翼群10と、第1翼群10とともに軸周りに回転自在であり、円周P上に等間隔且つ第1翼群10の各翼部材11,12と交互に配置された複数の翼部材21,22を有する第2翼群20と、を備えており、第1翼群10の各翼部材11,12と、第1翼群10の各翼部材11,12の円周P上における回転方向後方に隣接する第2翼群20の翼部材21,22との周方向の間隔をθ1、第1翼群10の各翼部材11,12と、第1翼群10の各翼部材11,12の円周P上における回転方向前方に隣接する第2翼群20の翼部材21,22との周方向の間隔をθ2、円周上に配置されている全翼部材数をNとした場合、θ1<(360°/N)<θ2を満たす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸周りに回転自在であり、前記軸を中心とする円周上に等間隔に配置された複数の翼部材を有する第1翼群と、
前記第1翼群とともに前記軸周りに回転自在であり、前記円周上に等間隔且つ前記第1翼群の各翼部材と交互に配置された複数の翼部材を有する第2翼群と、
を備えており、
前記第1翼群の各翼部材と、前記第1翼群の各翼部材の前記円周上における回転方向後方に隣接する前記第2翼群の翼部材との周方向の間隔をθ1、前記第1翼群の各翼部材と、前記第1翼群の各翼部材の前記円周上における回転方向前方に隣接する前記第2翼群の翼部材との周方向の間隔をθ2、前記円周上に配置されている全翼部材数をNとした場合、
θ1<(360°/N)<θ2
を満たす垂直軸型風車。
【請求項2】
前記翼部材の翼弦は、前記円周の接線に重なっている請求項1に記載の垂直軸型風車。
【請求項3】
前記第1翼群の一の前記翼部材と、前記一の翼部材に隣接する前記第2翼群の前記翼部材のうちの前記一の翼部材に近いほうの翼部材と、の距離は、前記翼部材の翼弦長の1.0倍以上2.0倍以下の大きさである請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の垂直軸型風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は垂直軸型風車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の風車を開示している。この風車は、複数の直線翼を備えている。複数の直線翼は、同心円状に少なくとも内周側と外周側の2列以上の円周上に配置されている。この風車は、第1のソリディティを第2のソリディティよりも大きく設定することによって、起動性や微風時の特性等を向上させ、効率の改善を図っている。第1のソリディティは、内周側の円周に配置された複数の直線翼のソリディティである。第2のソリディティは、外周側の円周に配置された複数の直線翼のソリディティである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、ベースとなる出力特性を発揮するのは外周側の円周に配置された直線翼によるものであり、この外周側の円周に配置された直線翼による効率自体は向上できていない。一般的に、垂直軸型風車における効率は、水平軸型風車と比較しても低く、必ずしも十分とは言えないのが実情である。このため、垂直軸型風車における更なる効率の向上が望まれていた。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、従来と比較して高効率を実現できる垂直軸型風車を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の垂直軸型風車は、所定の軸周りに回転自在であり、前記軸を中心とする円周上に等間隔に配置された複数の翼部材を有する第1翼群と、前記第1翼群とともに前記軸周りに回転自在であり、前記円周上に等間隔且つ前記第1翼群の各翼部材と交互に配置された複数の翼部材を有する第2翼群と、を備えており、前記第1翼群の各翼部材と、前記第1翼群の各翼部材の前記円周上における回転方向後方に隣接する前記第2翼群の翼部材との周方向の間隔を角度θ1、前記第1翼群の各翼部材と、前記第1翼群の各翼部材の前記円周上における回転方向前方に隣接する前記第2翼群の翼部材との周方向の間隔を角度θ2、前記円周上に配置されている全翼部材数をNとした場合、θ1<(360°/N)<θ2を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る垂直軸型風車を示す平面断面図である。
【
図3】実施形態1に係る垂直軸型風車において、各翼部材の配置形態を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態1に係る垂直軸型風車の作用を説明するための図(その1)である。
【
図5】実施形態1に係る垂直軸型風車の作用を説明するための図(その2)である。
【
図6】実施形態2に係る垂直軸型風車において、各翼部材の配置形態を模式的に示す図である。
【
図7】他の実施形態に係る垂直軸型風車において、各翼部材の配置形態を模式的に示す図である。
【
図8】更に他の実施形態に係る垂直軸型風車において、各翼部材の配置形態を模式的に示す図である。
【
図9】実験(1)の実験結果を示すグラフ(その1)である。
【
図10】実験(1)の実験結果を示すグラフ(その2)である。
【
図11】実験(2)の実験結果を示すグラフである。
【
図12】実験(3)の実験結果を示すグラフである。
【
図13】実験(4)の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
実施形態1に係る垂直軸型風車1(以下、単に風車1とも表記する)は、風力発電装置に用いられる風車である。
図1から
図3に示すように、風車1は、第1翼群10及び第2翼群20を備えている。第1翼群10及び第2翼群20は、軸A周りに回転自在である。第1翼群10は、複数の翼部材として2つの翼部材11,12を有している。第2翼群20は、複数の翼部材として2つの翼部材21,22を有している。第1翼群10の各翼部材11,12、及び第2翼群20の各翼部材21,22は、それぞれ翼型及びサイズが同等である。これら4つの翼部材11,12,21,22は、軸Aを中心とする円周P上にそれぞれ配置されている。
【0009】
図1に示すように、第1翼群10の2つの翼部材11,12は、円周P上に等間隔(周方向に180°間隔)に配置されている。第2翼群20の2つの翼部材21,22は、第1翼群10の翼部材11,12と同様に、円周P上に等間隔(周方向に180°間隔)に配置されている。第1翼群10の翼部材11,12と、第2翼群20の翼部材21,22とは、円周P上に交互に配置されている。各翼部材11,12,21,22は、軸Aの延伸方向に沿って平行に延びたいわゆる直線翼である。各翼部材11,12,21,22は、軸Aを中心に円周P上を回転自在に設けられている。風車1は、各翼部材11,12,21,22が翼型断面を有するいわゆる揚力型風車である。
【0010】
図1に示すように、風車1は、各翼部材11,12,21,22を、それぞれ連結部材3を介して軸部材5に連結した形態である。軸部材5は円筒状に形成されている。軸部材5は、中心軸である軸A周りに回転自在に設けられている。軸部材5は、軸方向の一端側において図示しない発電機に連結されている。軸部材5は、第1翼群10及び第2翼群20の回転に伴って回転して発電機を駆動する。
【0011】
図2に示すように(
図2では、翼部材11,21を例示する)、各翼部材11,12,21,22は、それぞれの翼弦Cの中心を円周P上に配置している。翼弦Cは、各翼部材11,12,21,22における翼型の前縁と後縁を結んだ線分である。各翼部材11,12,21,22は、それぞれの翼弦Cを円周Pの接線に重ねて配置している。すなわち、各翼部材11,12,21,22はピッチ角0°で円周P上に配置されている。各翼部材11,12,21,22は翼弦Cの長さ(翼弦長)がLcに設定されている。
【0012】
距離S1は、翼部材11,12,21,22の翼弦Cの長さLcよりも小さい。距離S1は、第1翼群10の翼部材11,12と、翼部材11,12に隣接する第2翼群20の各翼部材21,22のうちの近いほうの翼部材との距離である。
図2に示すように、距離S1は、後述する角度θ1の間隔で隣接して配置されている翼部材間の距離である。
図2に示すように、距離S1は、回転方向の前方に位置する翼部材の翼弦後端と、回転方向の後方に位置する翼部材の翼弦前端との距離である。
図2の場合、距離S1は、翼部材11の翼弦Cの後端と、翼部材21の翼弦Cの前端との間の距離である。距離S1は、翼弦Cの長さLcよりも小さく設定されている。
【0013】
上述のように、第1翼群10の各翼部材11,12と、第2翼群20の各翼部材21,22とは、円周P上に交互に配置される。
図3に示すように、風車1は、第1翼群10の翼部材11から見て、回転方向後方には第2翼群20の翼部材21が隣接し、回転方向前方には翼部材22が隣接する形態である。第1翼群10の翼部材11と翼部材21との間隔のほうが、第1翼群10の翼部材11と翼部材22との間隔よりも小さい。すなわち、第1翼群10の各翼部材11,12と、各翼部材11,12から見て回転方向前方に隣接する翼部材21,22との間隔に比べて、第1翼群10の各翼部材11,12と、各翼部材11,12から見て回転方向後方に隣接する翼部材21,22との間隔のほうが小さく設定されている。具体的には、第1翼群10の各翼部材から見て、回転方向後方で隣り合う第2翼群20の翼部材は、角度θ1の間隔で円周P上に配置されている。第1翼群10の各翼部材から見て回転方向前方で隣り合う第2翼群20の翼部材は、円周P上に角度θ2の間隔で配置されている。角度θ1は角度θ2よりも小さい。
【0014】
角度θ1,θ2について具体的に説明する。
図3に示すように、翼弦Cの中心を各翼部材11,12,21,22の基準点とした場合を考える。第1翼群10の各翼部材11,12の翼弦Cの中心を通り軸Aに直交する直線をL1と定義する。各翼部材11,12の回転方向後方に位置する第2翼群20の翼部材21,22の翼弦Cの中心を通り軸Aに直交する直線をL2と定義する。各翼部材11,12の回転方向前方に位置する第2翼群20の翼部材21,22の翼弦Cの中心を通り軸Aに直交する直線をL3と定義する。直線L1と直線L2とのなす角度はθ1であり、直線L1と直線L3とのなす角度はθ2である。直線L1と直線L2とのなす角度θ1は、直線L1と直線L3とのなす角度θ2よりも小さく設定されている。第1翼群10及び第2翼群20の各翼部材11,12,21,22は、同じ翼群に属する翼部材同士で見ると円周P上に等間隔でありながら、周方向前後に隣接する他方の翼群の翼部材との間隔は異なっている。角度θ1及び角度θ2は、θ1<θ2の条件を満たすように設けられている。
【0015】
第1翼群10の各翼部材11,12と、これら各翼部材11,12の回転方向後方に隣接する第2翼群20の各翼部材21,22との角度θ1は、円周P上の全翼部材を等間隔で配置した場合の角度よりも小さく設定されている。すなわち、全翼部材数をNとすると、等間隔配置した場合の各角度は360°/Nであり、角度θ1<(360°/N)である。円周P上に配置されている翼部材は、第1翼群10及び第2翼群20の各翼部材11,12,21,22の4つである。すなわち、全翼部材数Nは、N=4である。4つの翼部材11,12,21,22を円周P上に等間隔で配置した場合の間隔は、360°/4=90°である。角度θ1は、この90°よりも小さい間隔で設定されている。すなわち、風車1は、θ1<θ2の条件に加えて、θ1<(360°/N)の条件を満たすように設けられている。
【0016】
各翼群10,20の翼部材11,12,21,22が、円周P上の2箇所に180°間隔で纏めて配置されたことによって、風車1は2枚翼風車の形状に近い。円周P上に配置した複数の翼部材11,12,21,22が周方向に不等間隔で配置されている。複数の翼部材11,12,21,22のうちの円周P上で隣り合う翼部材同士の周方向の角度間隔において、最も小さい角度θ1は、全翼部材を円周P上に均等配置した場合の角度間隔である360°/Nよりも小さい。この場合、円周P上で隣り合う翼部材同士の周方向の角度のうち、最も大きい角度θ2は、360°/Nよりも大きい。このように、風車1における翼部材の配置は、θ1<(360°/N)<θ2を満たしている。
【0017】
上記構成の風車1の作用及び効果について説明する。風車1は、通常、軸Aを地面に垂直にして配置される。これによって、風車1は、地面に沿って吹く風であれば、その風向きに依らず、軸Aに交差する方向から受けることができる。風車1は、風を受けることによって各翼部材11,12,21,22に揚力及び抗力が生じ、これらの力のバランスに応じて回転トルクが発生して軸A周りに回転する。回転した風車1は、軸部材5に連結されている図示しない発電機を駆動して発電することができる。
【0018】
上述のように、第1翼群10の各翼部材11,12のそれぞれから見て、回転方向の前後に隣接する第2翼群20の翼部材21,22は異なる間隔で配置されている。風車1は、翼部材をこのように配置したことで、円周P上において隣接する翼部材同士の間隔の小さい部分と大きい部分とを設けている。これによって、風車1は、4つの翼部材11,12,21,22を有しながら2枚翼の風車のような外観を呈している。
【0019】
翼部材を等間隔に配置した一般的な風車では、ソリディティσが小さく、周速比λが大きいほど効率(パワー係数Cp)が高くなることが知られている。具体的には、同翼型、同サイズの翼部材を有する風車の効率を翼部材の枚数の違いで比較した場合、2枚の翼部材を有する風車(2枚翼風車)は、3枚翼風車、4枚翼風車等の翼部材の数が相対的に多い風車よりも効率がよい。本願発明者は、風車の効率の向上を図るにあたりこの点に着目した。すなわち、本願発明者は、4枚翼以上の複数の翼部材を有する風車において、2枚翼風車の形状に近づけるため、周方向に隣接する翼部材を近づけて配置して翼部材同士の間隔の相対的に小さい部分を形成した。これによって、翼部材同士の間隔の相対的に大きい部分を設けるようにした。
【0020】
2枚翼風車が相対的に高効率であるのは以下の理由であると考える。
図4に示すように、翼部材同士の間隔の相対的に大きい部分において風車を通過する風は、風上側を移動する翼部材による攪乱の影響を受けることなく風下の翼部材に到達することができる。これに対し、
図5に示すように、翼部材同士の間隔が均等である場合、風車を通過する風は、風上側を移動する翼部材によって攪乱されて速度低下が生じると考えられる。この場合、風下側を移動する翼部材が風から受ける運動エネルギーは、攪乱されていない風を受ける場合と比較して小さくなってしまう。このように、等間隔配置した場合よりも翼部材同士の間隔が大きい部分を設けた場合、翼部材が受ける風の運動エネルギーの低下を抑制でき、効率が向上すると考えられる。すなわち、本開示に係る風車は、翼部材の配置がθ1<(360°/N)<θ2の条件を満たすように設けたことによって、全翼部材を等間隔配置した場合よりも翼部材同士の間隔の大きい部分を設け、効率向上を図っている。
【0021】
本実施形態の場合、異なる翼群の翼部材同士を周方向に近接させて配置して角度θ1の部分を設けたことで、全翼部材を周方向に等間隔配置した場合よりも翼部材同士の間隔が相対的に大きい部分である角度θ2の部分を設けた。これによって、風車1は、角度θ2の間隔で翼部材が配置された部分を風が通過する際の風の速度低減率を小さくすることができ、効率を向上させることができると考えられる。
【0022】
第1翼群10の翼部材11,12と、これら翼部材11,12に隣接する第2翼群20の翼部材21,22のうちの各翼部材11,12に近い方の翼部材との距離S1が翼弦Cの長さLcよりも小さい。このように、距離S1を翼弦Cの長さLcよりも小さくしたことによって、各翼部材間の間隔が大きいほうの部分における距離は、相対的に大きくされる。このため、風車1を通過する風の速度低減率が一層抑えられる。
【0023】
距離S1を小さくする意義としては、円周P上を移動する際に風車1全体が空気から受ける抗力を抑制する効果があると考えられる。すなわち、近接して配置された2つの翼部材のうち、回転方向後方に位置する翼部材は、前方に位置する翼部材が風除けとなるため、抗力が減少すると考えられる。特に、揚力型風車の場合、翼部材の回転円周上の移動速度は風速より大きくなるため、抗力の抑制という観点において、翼部材同士を回転方向において近接して配置することは効果的であると考える。
【0024】
各翼部材11,12,21,22は、それぞれの翼弦Cが円周Pの接線に重なるように配置されている。このように各翼部材11,12,21,22を配置したことによって、円周軌道に対して効果的にトルクを伝達することができるので、発生トルクのロスを低減できる。円周P上を移動する際に翼部材が移動方向の空気から受ける抗力を低減することができる。
【0025】
各翼部材11,12,21,22の翼弦Cは、円周Pの接線に重ねて配置されている。このため、各翼部材11,12,21,22が円周P上を移動する際、移動方向における各翼部材11,12,21,22の投影面積が抑えられ、円周P上を移動することによって生じる抗力の大きさが抑えられる。
【0026】
<実施形態2>
実施形態2に係る垂直軸型風車201について、
図6等を参照しつつ説明する。実施形態2において、上記実施形態1と略同じ構成部位には同符号を付けて、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0027】
垂直軸型風車201(以下、単に風車201とも表記する)は、実施形態1の風車1の構成である第1翼群10及び第2翼群20に加えて、第3翼群30を備えている。第3翼群30は、複数の翼部材として2つの翼部材31,32を有している。すなわち、風車201の円周P上の全翼部材数Nは、N=6である。第3翼群30の各翼部材31,32は、翼部材11,12,21,22と翼型及びサイズが同等である。
【0028】
翼部材31,32は、翼部材11,12,21,22と同様に、連結部材3を介して軸部材5に連結されている。第3翼群30の各翼部材31,32は、第1翼群10及び第2翼群20と同様に、円周P上に等間隔(周方向に180°間隔)に配置されている。各翼部材31,32は、円周P上において第1翼群10の各翼部材11,12の前方にそれぞれ配置されている。換言すると、第1翼群10、第2翼群20、及び第3翼群30の各翼部材11,12,21,22,31,32は、回転方向前方から、第1翼群10の翼部材11,12、第2翼群20の翼部材21,22、第3翼群30の翼部材31,32、の順に円周P上に配置されている。
【0029】
図6に示すように、第3翼群30の各翼部材31,32は、第1翼群10及び第2翼群20の各翼部材11,12,21,22と同様、それぞれの翼弦Cの中心が円周P上に配置され、それぞれの翼弦Cが円周Pの接線に重なっている。
【0030】
図6に示すように、第1翼群10の各翼部材から見て回転方向後方に隣り合う第2翼群20の翼部材は、周方向に角度θ1の間隔で配置されている。第1翼群10の各翼部材から見て回転方向前方に隣り合う第2翼群20の翼部材は、周方向に角度θ2の間隔で配置されている。角度θ1は、角度θ2よりも小さく設定されている。すなわち、風車201は、θ1<θ2の条件を満たすように設けられている。
【0031】
角度θ1,θ2と全翼部材を円周P上に均等配置した場合の各翼部材の間隔360°/Nと比較すると、θ1<(360°/N)<θ2が成立する。上述のように、風車201における全翼部材数Nは、N=6である。6つの翼部材11,12,21,22,31,32を円周P上に等間隔で配置した場合の間隔は、360°/6=60°である。角度θ1は、60°よりも小さく設定されている。すなわち、風車201は、θ1<θ2の条件に加えて、θ1<(360°/N)の条件を満たすように設けられている。
【0032】
図6に示すように、第3翼群30の各翼部材31,32は、第2翼群20の各翼部材21,22から見て、回転方向後方にそれぞれ位置している。すなわち、第3翼群30の各翼部材は、第1翼群10及び第2翼群20の各翼部材が角度θ2の間隔で配置されている部分に配置されている。第3翼群30の各翼部材31,32は、回転方向前方の第2翼群20の翼部材21,22から見て周方向に角度θ3の間隔で配置されている。第3翼群30の各翼部材31,32は、回転方向後方の第1翼群10の翼部材11,12から見て周方向に角度θ4の間隔で配置されている。角度θ2と、角度θ3及び角度θ4との関係は、θ2=θ3+θ4である。
【0033】
円周P上で隣接する第1翼群10及び第2翼群20の各翼部材同士の配置間隔である角度θ1が60°(=360°/N)よりも小さい場合、角度θ2の範囲に配置される第3翼群30の翼部材31,32を如何様な配置とした場合であっても、角度θ3及び角度θ4の少なくとも一方は、60°よりも大きくなる。
【0034】
角度θ3は角度θ1と等しい大きさに設定されている。すなわち、第1翼群10の翼部材11,12と、これらの翼部材11,12の回転方向後方に隣接して配置された第2翼群20の翼部材21,22とのなす角度θ1は、第2翼群20の翼部材21,22と、これらの翼部材21,22の回転方向後方に隣接して配置された第3翼群30の翼部材31,32とのなす角度θ3と略同等である。これによって、風車201は、各翼群10,20,30の翼部材11,12,21,22,31,32が円周P上の2箇所に纏まって配置され、2枚翼風車のような外観をなしている。
【0035】
上記構成の垂直軸型風車201も、実施形態1の垂直軸型風車1と同様の効果を奏する。風車201は、それぞれ複数の翼部材を円周上に等間隔で配置した第1翼群10、第2翼群20、及び第3翼群30の3つの翼群を備え、第1翼群10及び第2翼群20の翼部材同士を周方向に近接させて角度θ1の間隔で配置した部分を設けたことによって、全翼部材を周方向に等間隔配置した場合よりも翼部材同士の間隔が相対的に大きい部分を設けることができる。これによって、翼部材同士の間隔が等間隔である場合と比較して、等間隔配置した場合よりも翼部材同士の間隔の大きな部分を設けることができ、この部分を風が通過する際の風の速度低減率を小さくすることができる。その結果、従来と比較して効率を向上させることができる。
【0036】
風車201は、第1翼群10、第2翼群20、及び第3翼群30の各翼部材を円周P上の2箇所に纏めて配置した2枚翼風車のような形状をなしている。これによって、全翼部材を等間隔配置した場合と比較して、翼部材同士の間隔の一層大きな部分を設けることができ、この部分を風が通過する際の風の速度低減率を一層小さくすることができる。その結果、従来と比較して効率を一層向上させることができる。
【0037】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0038】
(1)翼部材の材質、構成、形状、翼型等は特に限定されない。翼部材が直線翼であることは必須でなく、例えば、ヘリカル型、ダリウス型等であってもよい。翼部材の形状は、揚力で主な回転力を得る形状であれば、如何様な形状であってもよい。
【0039】
(2)第3翼群、第4翼群等の他の翼群を更に備える場合、他の翼群の構成、翼部材の数、翼部材の配置等は特に限定されない。他の翼群は、例えば、第1翼群及び第2翼群とともに所定の軸周りに回転自在であり、第1翼群及び第2翼群の各翼部材が配置される円周上に等間隔に配置された複数の翼部材を有することができる。この場合、他の翼群の翼部材は、例えば、近接して配置されている第1翼群及び第2翼群の各翼部材に対して近接して配置されることが好ましい。
【0040】
(3)各翼群が有する翼部材の数は、3以上であってもよい。
図7に、各翼群がそれぞれ3枚の翼部材を有する垂直軸型風車301(以下、単に風車301と表記する)を例示する。この風車301では、第1翼群310の3つの翼部材11,12,13は円周P上に等間隔(120°間隔)で配置され、第2翼群320の3つの翼部材21,22,23は円周P上に等間隔(120°間隔)で配置される。第1翼群310の各翼部材11,12,13と、第1翼群310の各翼部材11,12,13の円周P上における回転方向後方に隣接する第2翼群320の各翼部材21,22,23との周方向の間隔をθ1、円周P上における回転方向前方に隣接する翼部材21,22,23との周方向の間隔をθ2、円周P上に配置されている全翼部材数をNとした場合、風車301は、θ1<(360°/N)<θ2を満たしている。換言すると、風車301は、各翼群10,20の翼部材11,12,13,21,22,23を円周P上の3箇所に120°間隔で纏めて配置したことによって、3枚翼風車の形状に近づけている。この場合も、上述の各実施形態と同様の効果を奏する。
【0041】
各翼部材のピッチ角は特に限定されない。例えば、各翼部材は、翼群毎に異なるピッチ角で配置されていてもよいし、個別の翼部材毎に異なるピッチ角であってもよい。例えば、
図8に示す垂直軸型風車401は、第1翼群10の翼部材11,12のピッチ角と、第2翼群20の翼部材21,22のピッチ角とが異なっている。特に、風車401の場合、近接して隣り合う2つの翼部材11,21(12,22)の翼弦Cが同一直線状に配置されるようにピッチ角を設定している。この場合も、上述の実施形態と同様に、従来の風車と比較して高効率化を図ることができる。
【0042】
本開示に係る風車の効果を確認するため、以下の実験を行った。各実験は、実験1として、従来の風車との効率の比較、実験2として、4枚翼風車における翼部材間の周方向の間隔の違いによる効率の比較、実験3として、6枚翼風車における翼部材間の周方向の間隔の違いによる効率の比較をそれぞれ行った。
【0043】
(1)実験1
本開示に係る風車と従来の風車との効率の比較を行った。実験では、本開示に係る風車としての実験例1の風車と、比較例として、翼部材を等間隔に配置した従来の風車4種類(比較例1から比較例4)のそれぞれについて出力測定を行い、測定した出力値に基づいてパワー係数Cpを求めた。実験条件は、各風車における受風面積(円周Pの直径×翼長)、翼部材の翼型、大きさ等を同一とした。詳細は以下のとおりである。
翼部材の翼型 NACA0021
翼弦の長さ(L) 340mm
翼長 4000mm
円周Pの直径 1800mm
風速(V) 10m/s
【0044】
パワー係数Cpは、風車が受ける風の運動エネルギーの回転エネルギーへの変換効率を示す数値であり、以下の数式で表される。
パワー係数 Cp=W/(1/2ρAV3)
(W:風車の出力、ρ:空気の密度、A:風車の受風面積、V:風速)
結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
表1によれば、実験例1の風車のパワー係数Cpは、いずれの比較例よりも大きかった。特に、実験例1の風車は、同数の翼部材を等間隔配置した比較例3の風車と比較すると、パワー係数Cpが約1.5倍も大きかった。これは、上述したように、回転方向前後の翼部材との間隔が異なるように翼部材を配置したことによって、翼部材を等間隔配置した従来の風車よりも風の速度低減率が小さくなったためと考えられる。上記数式に示したように、風車の出力の大きさは、風速の3乗に比例する。したがって、風の速度低減率を抑制することは、風車の効率の向上に極めて大きな意義があると考える。
【0047】
図9は、表1に示した各例のパワー係数Cpをソリディティσとの相関として示したグラフである。
図10は、表1に示した各例のパワー係数Cpを周速比λとの相関として示したグラフである。ソリディティσとは、周長に対する全翼部材の翼弦の長さの合計の比率である。周速比λとは、風速に対する翼部材の周速(円周P上の移動速度)の比率である。上述のように、一般的な従来の風車では、ソリディティσが小さく、周速比λが大きいほど効率(パワー係数Cp)が高くなることが知られている。
図9及び
図10において、比較例1から比較例4を見るとそのような傾向が表れている。すなわち、比較例1から比較例4を比較した場合、ソリディティσが最も小さく周速比λが最も大きい比較例1の風車において、パワー係数Cpが最も大きいという結果であった。これに対し、実験例1の風車については、ソリディティσ及び周速比λが比較例3と略同等であるにも関わらず、比較例のうちで最も高いパワー係数Cpを示した比較例1よりも高いパワー係数Cpを示した。
【0048】
上述のように、従来の風車では、2枚翼風車のような相対的にソリディティσの小さい、周速比λの大きい風車ほど効率が高くなることが知られている。その一方で、ソリディティσが小さい風車の場合には、回転開始時に大きなトルクを必要とするため、回転し難いというデメリットがある。同様に、周速比λが大きい風車、すなわち回転速度が相対的に大きくなる風車の場合には、それに耐えうる強度が必要となる。実験例1の風車は、翼部材を等間隔に配置した従来の風車と比較してソリディティσを大きく、周速比λを小さく設定しながら高効率化を図ることができる、という顕著な効果を奏すると言える。
【0049】
(2)実験2
4枚翼風車における翼部材間の周方向の間隔の違いによる効率の比較を行った。実験では、同じソリディティσで角度θ1の大きさの異なる実験例2、及び実験例3の2種類の風車と、これらの風車と同じソリディティσであって、従来の等間隔配置の比較例5の風車とを比較した。実験条件は以下の通りである。
翼部材数(N) 4枚
翼部材の翼型 NACA4412
翼弦の長さ(Lc) 45mm
翼長 300mm
円周Pの直径 300mm
風速(V) 10m/s
各風車における角度θ1,θ2(
図3参照)、距離S1(
図2参照)は表2のとおりである。
【0050】
【0051】
結果を
図11に示す。これによると、実験例2及び実験例3の各風車のパワー係数Cpの最大値は、比較例5よりも極めて大きかった。このように、本実験において、翼部材同士の間隔をθ1<(360°/N)<θ2とすることによる効率向上の効果を実証できた。特に、実験例2の風車のパワー係数Cpの最大値は、比較例5の風車のパワー係数Cpの最大値よりも約2.3倍も大きかった。実験例3の風車のパワー係数Cpの最大値についても、比較例5よりも約60%大きかった。このように、本実験の実験結果によれば、相対的に角度θ1が小さい(角度θ2が大きい、距離S1が小さい)程、効率が高くなる、と言える。
【0052】
(3)実験3
6枚翼風車における翼部材間の周方向の間隔の違いによる効率の比較を行った。実験では、同じソリディティσで角度θ1の大きさの異なる実験例4、及び実験例5の2種類の風車と、これらの風車と同じソリディティσであって、従来の等間隔配置の比較例6の風車とを比較した。実験条件は以下の通りである。
翼部材数(N) 6枚
翼部材の翼型 NACA4412
翼弦の長さ(Lc) 45mm
翼長 300mm
円周Pの直径 300mm
風速(V) 10m/s
各風車における角度θ1,θ2、θ3(
図6参照)、距離S1(
図2参照)は表3のとおりである。
【0053】
【0054】
結果を
図12に示す。これによると、実験例4及び実験例5の各風車のパワー係数Cpの最大値は、比較例6よりも大きかった。このように、本実験においても、翼部材同士の間隔をθ1<(360°/N)<θ2とすることによる効率向上の効果を実証できた。実験例4の風車のパワー係数Cpの最大値は、比較例6の風車のパワー係数Cpの最大値よりも約40%大きかった。実験例5の風車のパワー係数Cpの最大値は、実験例4の風車と比較すると小さいものの、比較例5よりも約35%大きかった。実験例4と実験例5とを比較すると、角度θ1の大きさは同じであり、角度θ3の大きさについては実験例4のほうが小さい。したがって、本実験の結果によれば、角度θ3を小さくする程、効率を高くできる、と言える。これに加えて、6枚翼風車の場合、角度θ1の大きさが同等の場合には、角度θ3の大きさの小さな風車のほうが、更に効率を高くできる、とも言える。
【0055】
(4)実験4
実験4は、翼部材間の距離に着目したものである。実験4では、6枚翼風車における翼部材間の距離の違いによる効率の比較を行った。具体的には、同じソリディティσであって、距離S1の大きさの異なる実験例6、実験例7、及び実験例8の3種類の風車について効率を求め、これらを比較した。実験条件は以下の通りである。
翼部材数(N) 6枚
翼部材の翼型 NACA4412
翼弦の長さ(Lc) 78mm
翼長 700mm
円周Pの直径 600mm
風速(V) 10m/s
各風車における距離S1(
図2参照)、角度θ1,θ2(
図7参照)は表4のとおりである。
【0056】
【0057】
結果を
図13に示す。これによると、各風車のパワー係数Cpは、翼部材間の距離が最も小さい実験例6において最も小さく、翼部材間の距離が最も大きい実験例8において最も大きかった。すなわち、距離S1が大きい程効率が向上するという結果であり、小さければ小さい程よい、といったものではないことが分かった。その一方で、距離S1を大きくしてゆくと、いずれ等間隔配置と同等の配置になることは明らかである。このことから、効率向上を図ることができる距離S1の大きさには上限が存在するものと考えられる。
【0058】
ここで、上述の(2)実験2において、実験例2及び実験例3の各風車の効率は比較例2よりも高く、そのS1/Lcの大きさは、それぞれ0.76倍及び2.47倍であった(表2参照)。したがって、本開示においては、距離S1に対する翼弦Cの長さLcの比が、少なくとも0.76倍以上2.47倍以下の範囲であれば効率向上を図ることができる、と言える。すなわち、本開示に係る風車において、第1翼群の一の翼部材と、この一の翼部材に隣接する第2翼群の翼部材のうちの第1翼群の一の翼部材に近いほうの翼部材と、の距離は、各翼部材における翼弦長の0.76倍以上2.47倍以下であることができる。この範囲であれば、全翼部材を等間隔配置した風車と比較して確実に効率を向上させることができる。本実験4の結果と合わせて推測した結果、このS1/Lcの範囲は、1.0倍以上2.0倍以下であることが好ましく、1.2倍以上1.5倍以下であることが殊更好ましい、と考えられる。これらの範囲であれば、一層の効率向上を図ることができる、と考える。
【0059】
以上のように、本開示に係る風車によれば、所定の軸周りに回転自在であり、この軸を中心とする円周上に等間隔に配置された複数の翼部材を有する第1翼群と、この第1翼群とともに軸周りに回転自在であり、円周上に等間隔且つ第1翼群10の各翼部材と交互に配置された複数の翼部材を有する第2翼群と、を備えている。そして、第1翼群の各翼部材と、これら第1翼群の各翼部材の円周P上における回転方向後方に隣接する第2翼群の翼部材との周方向の間隔をθ1、第1翼群の各翼部材と、これら第1翼群の各翼部材の円周上における回転方向前方に隣接する第2翼群の翼部材との周方向の間隔をθ2、円周上に配置されている全翼部材数をNとした場合、θ1<(360°/N)<θ2を満たしている。
【0060】
このような構成によって、本開示の風車は、全翼部材を円周上に均等配置した場合と比較して高効率化を図ることができる。このため、翼数及びソリディティが等しい従来の等間隔配置の風車と比較して、高効率を実現できる。このため、例えば、単に高効率化を図るのみならず、高ソリディティ化によって周速比を抑えることで耐久性の向上を図る等、風車の設計自由度を向上させることができる。
【0061】
本開示に係る風車の構成は、既存の風車に適用する場合にも有効である。例えば、2n枚(nは2以上の整数)の翼部材を有する既存風車において、それぞれ2枚の翼部材を有するnの翼群に分けたり、それぞれn枚の翼部材を有する2つの翼群に分けたりし、翼群毎に翼部材を円周上に等間隔配置するとともに、異なる翼群の翼部材同士を周方向に近接させて配置(少なくとも一の翼群に属する翼部材を、全翼部材を円周上に等間隔配置した場合の位置から周方向に位相をずらして配置)することによって、本開示に係る風車を容易に実現することができる。このように、高効率化を図るために既存の風車を改良する場合でも、本開示に係る風車は、翼部材や連結部材等を再設計することなく高効率化を図ることができる。
【0062】
本開示に係る風車は、従来の等間隔配置の風車と比較して相対的に高ソリディティであっても、従来と同様の効率を実現できる。このため、例えば、翼枚数を増やした構成を採用することで加振トルクを分散させ、風車回転時の共振を軽減することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,201,301,401…垂直軸型風車、10…第1翼群、11,12…第1翼群の翼部材、20…第2翼群、21,22…第2翼群の翼部材、Lc…翼部材の翼弦の長さ(翼弦長)、S1…翼部材間の距離、θ1,θ2,θ3…翼部材間の周方向の間隔を表す角度