(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118426
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】環状オレフィン系共重合体樹脂組成物、ワニス、及び、架橋体
(51)【国際特許分類】
C08L 47/00 20060101AFI20220805BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20220805BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20220805BHJP
C08F 236/02 20060101ALI20220805BHJP
C08F 279/00 20060101ALI20220805BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20220805BHJP
C08F 291/00 20060101ALI20220805BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220805BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20220805BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20220805BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220805BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220805BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C08L47/00
C08L45/00
C08L65/00
C08F236/02
C08F279/00
C08K5/3415
C08F291/00
C08F2/44 C
B32B5/28 Z
B32B7/025
B32B27/00 A
C08J5/18 CES
C08J5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014937
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】上野 真菜美
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文人
【テーマコード(参考)】
4F071
4F072
4F100
4J002
4J011
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA21
4F071AA69
4F071AA86
4F071AC02
4F071AC11
4F071AC12
4F071AC19
4F071AE02
4F071AE05
4F071AE19
4F071AF30
4F071AF40
4F071AF45
4F071AG05
4F071AG34
4F071AH05
4F071AH07
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB05
4F072AB06
4F072AB09
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
4F072AD04
4F072AD11
4F072AE01
4F072AE10
4F072AF29
4F072AG03
4F072AH02
4F072AH22
4F072AH31
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL13
4F100AK02A
4F100AK42B
4F100AK49A
4F100AL01A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DG11A
4F100DH01A
4F100EH46A
4F100EJ05A
4F100EJ82A
4F100GB41
4F100JG01B
4F100JG04A
4F100YY00A
4J002BB101
4J002BB102
4J002BK001
4J002BK002
4J002BL021
4J002CE002
4J002EU026
4J002FD146
4J002GB01
4J002GF00
4J002GG01
4J002GH00
4J002GJ01
4J002GN00
4J002GP01
4J002GP02
4J002GQ01
4J002GS02
4J002HA05
4J011PA64
4J026AA12
4J026AA13
4J026AA64
4J026AA72
4J026AC18
4J026AC22
4J026BA44
4J026DA02
4J026DA08
4J026DA10
4J026DA15
4J026DB06
4J026DB15
4J026GA06
4J026GA07
4J100AA02P
4J100AA03P
4J100AA04P
4J100AA07P
4J100AA09P
4J100AA15P
4J100AA16P
4J100AA17P
4J100AA18P
4J100AA19P
4J100AA21P
4J100AR09R
4J100AR11R
4J100AS15Q
4J100BC04Q
4J100BC43Q
4J100CA05
4J100DA09
4J100DA25
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA33
4J100JA35
4J100JA36
4J100JA44
4J100JA51
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】誘電特性と透明性のバランスに優れた環状オレフィン系共重合体組成物を提供する。
【解決手段】環状オレフィン系共重合体(M)と、マレイミド化合物(L)とを含む環状オレフィン系共重合体樹脂組成物であって、上記環状オレフィン系共重合体(M)は、特定の一般式で表される繰り返し単位を含む環状オレフィン系共重合体(m)を含み、上記マレイミド化合物(L)は、特定の一般式で表される分子内に1つのマレイミド基を有するモノマレイミド化合物であり、上記環状オレフィン系共重合体(M)と上記マレイミド化合物(L)の合計を100質量部とした場合に、上記マレイミド化合物(L)の含有量が1質量部以上50質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系共重合体(M)と、マレイミド化合物(L)とを含む環状オレフィン系共重合体樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系共重合体(M)は、
下記一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位と、
下記一般式(III)で表される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、
下記一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位と、を含む環状オレフィン系共重合体(m)を含み、
前記マレイミド化合物(L)は、
下記一般式(X)で表される分子内に1つのマレイミド基を有するモノマレイミド化合物であり、
前記環状オレフィン系共重合体(M)と前記マレイミド化合物(L)の合計を100質量部とした場合に、前記マレイミド化合物(L)の含有量が1質量部以上50質量部以下である環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
【化1】
〔上記一般式(I)において、R
300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
【化2】
〔上記一般式(III)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61~R
76ならびにR
a1およびR
b1は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R
104は水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、tは0~10の正の整数であり、R
75およびR
76は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【化3】
〔上記一般式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61~R
78ならびにR
a1およびR
b1は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R
75~R
78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【化4】
〔上記一般式(X)中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、または炭素数1~20のアリール基である。〕
【請求項2】
前記環状オレフィン系共重合体(m)中の繰り返し単位の合計モル数を100モル%とした場合に、前記環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量が19モル%以上40モル%以下の範囲である請求項1に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状オレフィン系共重合体(m)において、前記環状非共役ジエン由来の繰り返し単位を構成する環状非共役ジエンが5-ビニル-2-ノルボルネンを含み、前記環状オレフィン由来の繰り返し単位を構成する環状オレフィンがテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンを含む請求項1又は2に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物において、
前記環状オレフィン系共重合体(m)とは異なる環状オレフィン系共重合体(n)をさらに含み、
前記環状オレフィン系共重合体(n)は、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(n1)(ただし、前記共重合体(n1)は前記一般式(III)で表される環状非共役ジエン由来の繰り返し単位を含まない)および環状オレフィンの開環重合体(n2)から選択される少なくとも一種を含み、
前記環状オレフィン系共重合体(m)と前記環状オレフィン系共重合体(n)との合計量を100質量%としたとき、
前記環状オレフィン系共重合体(m)の含有量が5質量%以上95質量%以下であり、前記環状オレフィン系共重合体(n)の含有量が5質量%以上95質量%以下である環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
【請求項5】
前記モノマレイミド化合物がN-フェニルマレイミドまたはN-シクロヘキシルマレイミドである請求項1~4のいずれか一項に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物と、溶媒と、を含有するワニス。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を架橋して得られる架橋体。
【請求項8】
請求項7に記載の架橋体を含むフィルムまたはシート。
【請求項9】
請求項7に記載の架橋体を含む積層体。
【請求項10】
請求項7に記載の架橋体を含む電気絶縁層と、前記電気絶縁層上に設けられた導体層とを含む回路基板。
【請求項11】
請求項10に記載の回路基板を備えた電子機器。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物と、シート状繊維基材と、を含むプリプレグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系共重合体組成物、ワニス、及び、架橋体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、高周波帯域を使用する無線通信機器等の増加に加え、通信速度の高速化によって、必然的に高い帯域の周波数帯が用いられることが多くなってきた。これに伴い、高周波における伝送損失を極限まで軽減するために絶縁性が高く誘電正接が小さい回路基板用材料が求められている。
【0003】
このような回路基板に用いる樹脂材料としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されたジエンを共重合させた環状オレフィン共重合体が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、単官能マレイミド化合物を用いたスチレン系重合体が開示されている。
また特許文献2には、ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-194307号公報
【特許文献2】特開2020-200434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のスチレン系重合体の架橋体は、誘電特性が低く、かつ耐熱性も高いが、透明性を必要とする用途には適していなかった。また特許文献2に記載のポリフェニレンエーテル含有樹脂組成物においても、電気特性、耐熱性、及び靭性が向上するが、透明性を必要とする用途には適していなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、誘電特性と透明性のバランスに優れた環状オレフィン系共重合体組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、誘電特性と透明性のバランスが向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示す環状オレフィン系共重合体組成物、ワニス、および、架橋体が提供される。
【0010】
[1] 環状オレフィン系共重合体(M)と、マレイミド化合物(L)とを含む環状オレフィン系共重合体樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系共重合体(M)は、
下記一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位と、
下記一般式(III)で表される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、
下記一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位と、を含む環状オレフィン系共重合体(m)を含み、
前記マレイミド化合物(L)は、
下記一般式(X)で表される分子内に1つのマレイミド基を有するモノマレイミド化合物であり、
前記環状オレフィン系共重合体(M)と前記マレイミド化合物(L)の合計を100質量部とした場合に、前記マレイミド化合物(L)の含有量が1質量部以上50質量部以下である環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
【化1】
〔上記一般式(I)において、R
300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
【化2】
〔上記一般式(III)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61~R
76ならびにR
a1およびR
b1は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R
104は水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、tは0~10の正の整数であり、R
75およびR
76は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【化3】
〔上記一般式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61~R
78ならびにR
a1およびR
b1は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R
75~R
78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【化4】
〔上記一般式(X)中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、または炭素数1~20のアリール基である。〕
[2] 前記環状オレフィン系共重合体(m)中の繰り返し単位の合計モル数を100モル%とした場合に、前記環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量が19モル%以上40モル%以下の範囲である[1]に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
[3] 前記環状オレフィン系共重合体(m)において、前記環状非共役ジエン由来の繰り返し単位を構成する環状非共役ジエンが5-ビニル-2-ノルボルネンを含み、前記環状オレフィン由来の繰り返し単位を構成する環状オレフィンがテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]-3-ドデセンを含む[1]又は[2]に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
[4] [3]に記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物において、
前記環状オレフィン系共重合体(m)とは異なる環状オレフィン系共重合体(n)をさらに含み、
前記環状オレフィン系共重合体(n)は、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(n1)(ただし、前記共重合体(n1)は前記一般式(III)で表される環状非共役ジエン由来の繰り返し単位を含まない)および環状オレフィンの開環重合体(n2)から選択される少なくとも一種を含み、
前記環状オレフィン系共重合体(m)と前記環状オレフィン系共重合体(n)との合計量を100質量%としたとき、
前記環状オレフィン系共重合体(m)の含有量が5質量%以上95質量%以下であり、前記環状オレフィン系共重合体(n)の含有量が5質量%以上95質量%以下である環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
[5] 前記モノマレイミド化合物がN-フェニルマレイミドまたはN-シクロヘキシルマレイミドである[1]~[4]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物。
[6] [1]~[5]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物と、溶媒と、を含有するワニス。
[7] [1]~[5]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を架橋して得られる架橋体。
[8] [7]に記載の架橋体を含むフィルムまたはシート。
[9] [7]に記載の架橋体を含む積層体。
[10] [7]に記載の架橋体を含む電気絶縁層と、前記電気絶縁層上に設けられた導体層とを含む回路基板。
[11] [10]に記載の回路基板を備えた電子機器。
[12] [1]~[5]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物と、シート状繊維基材と、を含むプリプレグ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誘電特性と透明性のバランスに優れた環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」はとくに断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0013】
まず、本発明に係る実施形態の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物について説明する。本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物は、環状オレフィン系共重合体(M)と、マレイミド化合物(L)とを含む。
上記環状オレフィン系共重合体(M)は、
下記一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位と、
下記一般式(III)で表される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、
下記一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位と、を含む環状オレフィン系共重合体(m)を含み、
上記マレイミド化合物(L)は、
下記一般式(X)で表される分子内に1つのマレイミド基を有するモノマレイミド化合物であり、
上記環状オレフィン系共重合体(M)と上記マレイミド化合物(L)の合計を100質量部とした場合に、上記マレイミド化合物(L)の含有量が1質量部以上50質量部以下である。
【0014】
また、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物に含まれる環状オレフィン系共重合体(M)とマレイミド化合物(L)との合計量を100質量部としたとき、マレイミド化合物(L)の含有量は、1質量部以上50質量部以下であり、好ましくは1質量部以上40質量部以下、より好ましくは1質量部以上30質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上25質量部以下である。
【0015】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物によれば、環状オレフィン系共重合体(M)として上記態様の環状オレフィン系共重合体(m)を含み、マレイミド化合物(L)として上記態様のモノマレイミド化合物を含み、かつ、環状オレフィン系共重合体(M)とマレイミド化合物(L)の配合量を上記数値範囲内とすることによって、環状オレフィン系共重合体の優れた誘電特性と透明性のバランスが良好な架橋体を得ることができる環状オレフィン系共重合体樹脂組成物とすることができる。
【0016】
[環状オレフィン系共重合体(M)]
まず、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(M)について説明する。上記したように本実施形態に係る上記環状オレフィン系共重合体(M)は、環状オレフィン系共重合体(m)を含む。また、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物は環状オレフィン系共重合体(m)とは異なる環状オレフィン系共重合体(n)をさらに含有することもできる。
以下、まず、本発明に係る実施形態の環状オレフィン系共重合体(m)について説明する。
【0017】
[環状オレフィン系共重合体(m)]
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(m)は、
下記一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位と、
下記一般式(III)で表される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、
下記一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位と、を含む架橋性基を有する環状オレフィン系共重合体である。
【0018】
そして、上記環状オレフィン系共重合体(m)中の繰り返し単位の合計モル数を100モル%とした場合に、上記環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量が19モル%以上40モル%以下であることが好ましく、好ましくは20モル%以上39モル%以下、より好ましくは23モル%以上38モル%以下である。
環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量が上記範囲内であると、環状オレフィン系共重合体(m)から得られる架橋体は、誘電特性の経時的安定性に優れるとともに耐熱性にも優れる。さらに、機械特性、誘電特性、透明性およびガスバリア性にも優れた架橋体を得ることができる。言い換えればこれらの物性のバランスに優れた架橋体を得ることができる。
環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量が上記上限値以下であると、環状オレフィン系共重合体(m)の成形性や溶解性が向上し、架橋体の誘電特性の経時的安定性が向上する。環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量が上記下限値以上であると、環状オレフィン系共重合体(m)を架橋することによって得られる架橋体の耐熱性および機械的特性が向上する。
【0019】
また、環状オレフィン系共重合体(m)の数平均分子量Mnは3,000以上、好ましくは4,500以上、より好ましくは6,000以上である。環状オレフィン系共重合体(m)の数平均分子量Mnが上記下限値以上であると、環状オレフィン系共重合体(m)または本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を架橋することによって得られる架橋体の誘電特性や耐熱性、機械的特性を良好にすることができる。
また、環状オレフィン系共重合体(m)の数平均分子量Mnは30,000以下、好ましくは25,000以下、より好ましくは20,000以下である。環状オレフィン系共重合体(m)の数平均分子量Mnが上記上限値以下であると、環状オレフィン系共重合体(m)または本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物の回路基板作製時の繊維基材への含浸性や配線埋め込み性等の成形性を良好にすることができる。
環状オレフィン系共重合体(m)の数平均分子量Mnは、重合触媒、助触媒、H2添加量、重合温度等の重合条件により制御することが可能である。
【0020】
ここで、環状オレフィン系共重合体(m)の数平均分子量Mnが上記範囲内であると、環状オレフィン系共重合体(m)が有する優れた誘電特性を有しながら、流動性、機械特性及び回路基板作製時の繊維基材への含浸性や配線埋め込み性等の成形性を良好にすることができる。
ここで、従来の環状オレフィン共重合体では、数平均分子量が上記のような範囲内であると、比較的低分子量となるので、得られる架橋体の耐熱性や、誘電特性、機械特性等が低下する傾向にある。しかし、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(m)は数平均分子量Mnが上記範囲内であっても、繊維基材への含浸性が良好で、また無機フィラー、難燃剤等の添加剤との混合性が向上するため、機械強度の低下を抑制することができる。
【0021】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(m)において、環状オレフィン系共重合体(m)中の繰り返し単位の合計モル数を100モル%とした場合に、環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量と環状オレフィン由来の繰り返し単位の含有量の合計は、好ましくは60モル%未満の範囲であり、より好ましくは50モル%未満の範囲であり、さらに好ましくは48モル%未満の範囲である。
環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量と環状オレフィン由来の繰り返し単位の含有量の合計の下限は特に限定されないが、例えば20モル%以上、好ましくは26モル%以上である。
【0022】
【0023】
上記一般式(I)において、R300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。
【0024】
【0025】
上記一般式(III)中、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R61~R76ならびにRa1およびRb1は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、tは0~10の正の整数であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0026】
【0027】
上記一般式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R61~R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R75~R78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0028】
環状オレフィン系共重合体(m)において、環状オレフィン系共重合体(m)中の繰り返し単位の合計モル数を100モル%とした場合に、オレフィン由来の繰り返し単位の含有量が好ましくは20モル%以上80モル%以下、より好ましくは30モル%以上75モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上70モル%以下、特に好ましくは50モル%以上70モル%以下であり、環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量が19モル%以上40モル%以下、好ましくは20モル%以上39モル%以下、より好ましくは23モル%以上38モル%以下であり、環状オレフィン由来の繰り返し単位の含有量が好ましくは1モル%以上30モル%以下、より好ましくは2モル%以上25モル%以下、さらに好ましくは3モル%以上20モル%以下である。
環状オレフィン系共重合体(m)中の繰り返し単位の各含有量が上記範囲内であると、環状オレフィン系共重合体(m)から得られる架橋体は、誘電特性の経時的安定性に優れるとともに耐熱性にも優れる。さらに、機械特性、誘電特性、透明性およびガスバリア性にも優れた架橋体を得ることができる。言い換えればこれらの物性のバランスに優れた架橋体を得ることができる。
【0029】
環状オレフィン系共重合体(m)の共重合原料の一つであるオレフィンモノマーは、付加共重合して上記式(I)で表される骨格を与えるモノマーであり、下記一般式(Ia)で表されるオレフィンである。
【0030】
【0031】
上記一般式(Ia)中、R300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。一般式(Ia)で表されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。より優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性およびガスバリア性を有する架橋体を得る観点から、これらの中でも、エチレンとプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。上記式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは二種類以上を用いてもよい。
【0032】
環状オレフィン系共重合体(m)の共重合原料の一つである環状非共役ジエン単量体は付加共重合して上記式(III)で表される構成単位を形成するものである。具体的には、上記一般式(III)に対応する下記一般式(IIIa)で表される環状非共役ジエンが用いられる。
【0033】
【0034】
上記一般式(IIIa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R61~R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、tは0~10の正の整数であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0035】
上記一般式(IIIa)で表される環状非共役ジエンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式で表される環状非共役ジエンを挙げることができる。これらのうち5-ビニル-2-ノルボルネン、8-ビニル-9-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンが好ましく、5-ビニル-2-ノルボルネンが特に好ましい。
【0036】
【0037】
【0038】
上記一般式(IIIa)で表される環状非共役ジエンは、具体的には以下の一般式(IIIb)で表すこともできる。
【0039】
【0040】
一般式(IIIb)中のnは0~10の整数であり、R1は水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、R2は水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基である。
【0041】
本実施形態の環状オレフィン系共重合体(m)には、一般式(III)で表される環状非共役ジエン由来の構成単位が含まれることにより、側鎖部分、すなわち共重合の主鎖以外の部分に二重結合を有することが特徴である。
【0042】
環状オレフィン系共重合体(m)の共重合原料の一つである環状オレフィンモノマーは付加共重合して上記式(V)で表される構成単位を形成するものである。具体的には、上記一般式(V)に対応する下記一般式(Va)で表される環状オレフィンモノマーが用いられる。
【0043】
【0044】
上記一般式(Va)中、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R61~R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R75~R78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0045】
上記一般式(Va)で表される環状オレフィンの具体例については国際公開第2006/118261号に記載の化合物を用いることができる。
上記一般式(Va)で表される環状オレフィンとしては、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネンとも呼ぶ。)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)が好ましく、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンがより好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体および架橋体の弾性率が保持され易く、また異種二重結合構造を含まないため架橋の制御をし易くなる利点がある。
【0046】
共重合成分として、前述した一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(Va)で表される環状オレフィンモノマーを用いることにより、環状オレフィン系共重合体(m)の溶媒への溶解性がより向上するため成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。
【0047】
環状オレフィン系共重合体(m)は、一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位、一般式(III)で表される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位、および、一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位に加えて、一般式(III)で表される環状非共役ジエンおよび一般式(V)で表される環状オレフィン以外の環状オレフィン、および/または鎖状ポリエン由来の繰り返し単位とから構成されていてもよい。
この場合、環状オレフィン系共重合体(m)の共重合原料として、一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(IIIa)で表される環状非共役ジエンモノマー、一般式(Va)で表される環状オレフィンモノマーに加えて、一般式(IIIa)で表される環状非共役ジエンモノマーおよび一般式(Va)で表される環状オレフィンモノマー以外の環状オレフィンモノマー、および/または鎖状ポリエンモノマーを用いることができる。
このような環状オレフィンモノマーおよび鎖状ポリエンモノマーとしては下記一般式(VIa)または(VIIa)で表される環状オレフィン、または下記一般式(VIIIa)で表される鎖状ポリエンである。これらの環状オレフィンや鎖状ポリエンは異なる二種以上を用いてもよい。
【0048】
【0049】
一般式(VIa)中、xおよびdは0または1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、yおよびzは0、1または2であり、R81~R99は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R89およびR90が結合している炭素原子と、R93が結合している炭素原子またはR91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R95とR92またはR95とR99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0050】
【0051】
一般式(VIIa)中、R100およびR101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0052】
【0053】
一般式(VIIIa)中、R201からR206は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素原子数1~20の炭化水素基であり、Pは炭素原子数1~20の直鎖または分岐状の炭化水素基で、二重結合および/または三重結合を含んでいてもよい。
【0054】
一般式(VIa)および一般式(VIIa)で表される環状オレフィンの具体例については国際公開第2006/118261号の段落0037~0063に記載の化合物を用いることができる。
【0055】
一般式(VIIIa)で表される鎖状ポリエンとして、具体的には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、DMDT、1,3-ブタジエン,1,5-ヘキサジエン等が挙げられる。また1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン等のポリエンから環化した環化性のポリエンを用いてもよい。
【0056】
環状オレフィン系共重合体(m)が、上記一般式(VIIIa)で表される鎖状ポリエン由来の構成単位、あるいは一般式(III)で表される環状非共役ジエンおよび一般式(V)で表される環状オレフィン以外の環状オレフィン〔例えば、一般式(VIa)、一般式(VIIa)〕に由来する構成単位を含む場合は、該構成単位の含有量は、上記一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位、上記一般式(III)で表される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位、上記一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位の合計モル数に対して、通常0.1~100mol%、好ましくは0.1~50mol%である。
【0057】
共重合成分として、前述した一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(VIa)または(VIIa)で表される環状オレフィンおよび一般式(VIIIa)で表される鎖状ポリエンを用いることにより、本実施形態に係る効果が得られるとともに、環状オレフィン系共重合体の溶媒への溶解性がより向上するため成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。これらのうちでも一般式(VIa)または(VIIa)で表される環状オレフィンが好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体および架橋体の弾性率が保持され易く、また異種二重結合構造を含まないため架橋の制御をし易くなる利点がある。
【0058】
環状オレフィン系共重合体(m)は目的とする用途に応じて、モノマーの仕込み比により、そのコモノマー含有量、およびガラス転移点(Tg)をコントロールできる。環状オレフィン系共重合体(m)のTgは、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下、さらにより好ましくは170℃以下、とりわけ好ましくは150℃以下である。Tgが上記上限値以下であると、環状オレフィン系共重合体(m)の溶融成形性およびワニス化するときの溶媒への溶解性が向上する。
【0059】
[環状オレフィン系共重合体(m)の製造方法]
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(m)は、例えば、国際公開第2012/046443号の段落0075~0219に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法にしたがって製造することができる。ここでは詳細は省略する。
【0060】
(環状オレフィン系共重合体(n))
環状オレフィン系共重合体(n)は、環状オレフィン共重合体(m)とは異なる環状オレフィン共重合体である。具体的には、環状オレフィン系共重合体(n)は、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(n1)および環状オレフィンの開環重合体(n2)から選択される少なくとも一種を含む。本実施形態の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物は、環状オレフィン系共重合体(n)を含むことにより、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を架橋して得られる架橋体の誘電特性をより一層良好なものとすることができる。
ここで、上記共重合体(n1)は上記一般式(III)で表される環状非共役ジエン由来の繰り返し単位を含まない。本実施形態において、上記共重合体(n1)が上記一般式(III)で表される環状非共役ジエン由来の繰り返し単位を含まないとは、上記共重合体(n1)中の繰り返し単位の合計モル数を100モル%とした場合に、上記一般式(III)で表される環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量が0.05モル%以下であることを意味する。
【0061】
エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(n1)としては、例えば、国際公開第2008/047468号の段落0030~0123に記載の重合体を用いることができる。
【0062】
例えば、繰り返し構造単位の少なくとも一部に脂環族構造を有する重合体(以下、単に「脂環族構造を有する重合体」ともいう)であり、重合体の繰り返し単位の少なくとも一部に脂環族構造を有するものであればよく、具体的には下記一般式(13)で表される1種ないし2種以上の構造を有する重合体を含むことが好ましい。
【0063】
【0064】
(式(13)中、x、yは共重合比を示し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。x、yはモル基準である。
nは置換基Qの置換数を示し、0≦n≦2の実数である。
Raは、炭素原子数2~20の炭化水素基よりなる群から選ばれる2+n価の基である。
Rbは、水素原子、又は炭素原子数1~10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。
Rcは、炭素原子数2~10の炭化水素基よりなる群から選ばれる4価の基である。
Qは、COORd(Rdは、水素原子、または炭素原子数1~10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。)である。
Ra、Rb、RcおよびQは、それぞれ1種であってもよく、2種以上を任意の割合で有していてもよい。)
【0065】
また上記一般式(13)において、Raは、好ましくは、炭素原子数2~12の炭化水素基から選ばれる1種ないし2種以上の2価の基であり、さらに好ましくはn=0の場合、下記一般式(17)で表される2価の基であり、最も好ましくは、下記一般式(17)において、pが0または1である2価の基である。Raの構造は1種のみ用いても、2種以上を併用しても構わない。
【0066】
【0067】
ここで、式(17)中、pは、0~2の整数である。
【0068】
また、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(n1)としては、下記一般式(14)で表現される環状オレフィン系共重合体である。例えば、エチレンまたは炭素原子数が3~30の直鎖状または分岐状のα-オレフィン由来の構成単位(A)と、環状オレフィン由来の構成単位(B)とからなる。
【0069】
【0070】
(式(14)中、Raは、炭素原子数2~20の炭化水素基よりなる群から選ばれる2価の基である。
Rbは、水素原子、または炭素原子数1~10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。
RaおよびRbは、それぞれ1種であってもよく、2種以上を任意の割合で有していてもよい。
x、yは共重合比を示し、5/95≦y/x≦95/5を満たす実数である。好ましくは50/50≦y/x≦95/5、さらに好ましくは、55/45≦y/x≦80/20である。x、yはモル基準である。
【0071】
エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(n1)は、エチレンおよび環状オレフィンからなる共重合体が好ましく、環状オレフィンがビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン、シクロペンタジエン-ベンザイン付加物およびシクロペンタジエン-アセナフチレン付加物からなる群から選ばれる一種または二種以上であるものが好ましく、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選択される少なくとも一種であるものがより好ましい。
エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(n1)としては、上記一般式(13)で表される1種ないし2種以上の構造を有する重合体または上記一般式(14)で表現される環状オレフィン系共重合体が水素添加処理された重合体であってもよい。
【0072】
また、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(n1)としては、炭素数4~12のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体も好ましい。炭素数4~12のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体としては、例えば、国際公開第2015/178145号の段落0056~0070に記載の重合体を用いることができる。
炭素数4~12のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体を構成する環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン及び置換ノルボルネンが挙げられ、ノルボルネンが好ましい。上記環状オレフィンは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0073】
上記置換ノルボルネンは特に限定されず、この置換ノルボルネンが有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、1価又は2価の炭化水素基が挙げられる。置換ノルボルネンの具体例としては、下記一般式(A)で示されるものが挙げられる。
【0074】
【0075】
(式中、R1~R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、R9とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R9又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。また、nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、R5~R8は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、n=0の場合、R1~R4及びR9~R12の少なくとも1個は、水素原子ではない。)
【0076】
一般式(A)で示される置換ノルボルネンについて説明する。一般式(A)におけるR1~R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0077】
R1~R8の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;炭素数1以上20以下のアルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0078】
また、R9~R12の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;炭素数1以上20以下のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、その他アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0079】
R9とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0080】
R9又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0081】
一般式(A)で示される置換ノルボルネンの具体例としては、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等の2環の環状オレフィン;トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,7-ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,8-ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3-エン;5-シクロペンチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エンといった3環の環状オレフィン;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-プロペニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エンといった4環の環状オレフィン;8-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキシル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキセニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ-4,9,11,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ-5,10,12,14-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-へキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]-4-ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]-14-エイコセン;シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンを挙げることができる。
【0082】
中でも、アルキル置換ノルボルネン(例えば、1個以上のアルキル基で置換されたビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)、アルキリデン置換ノルボルネン(例えば、1個以上のアルキリデン基で置換されたビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)が好ましく、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(慣用名:5-エチリデン-2-ノルボルネン、又は、単にエチリデンノルボルネン)が特に好ましい。
【0083】
炭素数4~12のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体を構成する炭素数4~12のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数4~12のα-オレフィンや、ハロゲン原子等の少なくとも1種の置換基を有する炭素数4~12のα-オレフィンが挙げられ、炭素数4~12のα-オレフィンが好ましい。
【0084】
炭素数4~12のα-オレフィンは特に限定されないが、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられる。中でも、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンが好ましい。
【0085】
本実施形態に係る炭素数4~12のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体は、当該共重合体中に含まれる繰り返し単位の合計を100モル%としたとき、炭素数4~12のα-オレフィン由来の繰り返し単位の割合が、好ましくは10モル%以上90モル%以下、より好ましくは15モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上70モル%以下である。
また、本実施形態に係る炭素数4~12のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体は、当該共重合体中に含まれる繰り返し単位の合計を100モル%としたとき、環状オレフィン由来の繰り返し単位の割合が、好ましくは10モル%以上90モル%以下、より好ましくは20モル%以上85モル%以下、さらに好ましくは30モル%以上80モル%以下である。
【0086】
炭素数4~12のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体を得るための重合工程の条件は、所望の共重合体が得られる限り、特に限定されず、公知の条件を用いることができ、重合温度、重合圧力、重合時間等は適宜調整される。
【0087】
また、環状オレフィン系共重合体(n)としては、環状オレフィンの開環重合体(n2)を用いることができる。
環状オレフィンの開環重合体(n2)としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体およびノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。
【0088】
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体、等が挙げられる。
これらの誘導体の環に置換される置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。なお、置換基は、1個または2個以上を有することができる。このような環に置換基を有する誘導体としては、例えば、8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン等が挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0089】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、またはノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。
開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウム等の金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒;チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒;等を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体等を挙げることができる。
【0090】
ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物や、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体の水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素-炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0091】
本実施形態において環状オレフィン系共重合体(n)は1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
[マレイミド化合物(L)]
次に、本実施形態に係るマレイミド化合物(L)について説明する。
本発明におけるマレイミド化合物(L)は、下記一般式(X)で表される分子内に1つのマレイミド基を有するモノマレイミド化合物である。
上記態様のモノマレイミド化合物を含むことにより、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体と、マレイミド化合物とを含みつつ、配合成分が十分に溶解した組成物とすることができ、かつ、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物は、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を架橋して得られる架橋体において、回路基板等に好適な高周波領域での誘電特性および透明性を満足しながら、耐熱性を向上させることが可能となる。
【0093】
【0094】
上記一般式(X)中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、または炭素数1~20のアリール基である。
【0095】
[モノマレイミド化合物]
モノマレイミド化合物の具体例としては、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、o-メチルフェニルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、o-クロロフェニルマレイミドが挙げられる。この中でも、特に、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドが好ましい。モノマレイミド化合物は、2種以上を併用してもよい。これにより、環状オレフィン系共重合体(m)との相溶性が良好となる。
【0096】
以下、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物が含み得るその他の成分について説明する。
【0097】
(添加剤)
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物には、目的に応じて、各種添加剤を添加してもよい。添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて適宜選択される。
上記添加剤としては、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐放射線剤、摩擦磨耗性向上剤、難燃剤、発泡剤、耐衝撃剤、充填材、塩酸吸収剤および金属不活性化剤からなる群から選択される一種または二種以上の添加剤が挙げられる。
【0098】
上記耐熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系耐熱安定剤;硫黄系耐熱安定剤;アミン系耐熱安定剤等を挙げることができる。また、これらを一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、ホスファイト系耐熱安定剤、およびヒンダードフェノール系耐熱安定剤が好ましい。
上記添加剤としては、例えば、国際公開第2017/150218号の段落0085~0120に記載の、耐熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐放射線剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、摩擦磨耗性向上剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、着色剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、耐衝撃剤、表面ぬれ改善剤、充填材、塩酸吸収剤、金属不活性化剤等を用いることができる。
【0099】
(環状オレフィン系共重合体樹脂組成物の調製方法)
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物の調製方法は、環状オレフィン系共重合体(M)と、マレイミド化合物(L)と、必要に応じてエラストマーや、各種添加剤と、を混合することにより調製できる。混合方法としては、押出機等で溶融ブレンドする方法、または適当な溶媒に溶解、分散させて行う溶液ブレンド法等を採用することができる。溶媒については、以下詳述する。
【0100】
[ワニス]
本実施形態に係るワニスは、上記環状オレフィン系共重合体樹脂組成物と、溶媒とを含有することができる。
上記溶媒は、少なくとも1種の非極性溶媒(X)を含むことが好ましい。
非極性溶媒(X)としては、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の飽和炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環状炭化水素;トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン等の芳香族炭化水素;を挙げることができる。
【0101】
非極性溶媒(X)としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、および、デカヒドロナフタレンから選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0102】
これらの中でも、ワニスの長期安定性、溶解性および汎用性の観点から、非極性溶媒(X)として、少なくともトルエンを含むことが特に好ましい。ワニスの安定性や性能を損なわない範囲で、極性溶媒(Y)として、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、および、シクロヘキサノンをさらに含んでも良い。
【0103】
本実施形態において、ワニスを作製する方法としては、いかなる方法で実施してもよいが、通常は環状オレフィン系共重合体樹脂組成物と溶媒とを混合する工程を含む。各成分の混合については、その順序に制限はなく、一括または分割等のいかなる方式でも実施することができる。ワニスを調製する装置としても、制限はなく、撹拌、混合が可能な、バッチ式、もしくは連続式の、いかなる装置で実施してもよい。ワニスを調製する際の温度は、室温から溶媒の沸点までの範囲で任意に選択することができる。
なお、環状オレフィン系共重合体(m)が得られた際の反応溶液をそのまま溶媒として用い、そこへ環状オレフィン系共重合体(n)を溶解させることによりワニスを調製してもよい。また、環状オレフィン系共重合体(m)が得られた際の反応溶液に、別途調製した環状オレフィン系共重合体(n)のワニスを混合することによりワニスを調製してもよい。
【0104】
[架橋体の製造方法]
架橋体は、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物の架橋体であり、上述の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物中の環状オレフィン系共重合体(M)を架橋することにより得られる。環状オレフィン系共重合体(M)の架橋方法としては特に制限はないが、ラジカル重合開始剤や硫黄、ヒドロシリル基含有化合物、電子線や他の放射線を用いて、任意の形に成形しながら、または成形後に架橋する方法等が挙げられる。
【0105】
ラジカル重合開始剤による架橋は、ポリオレフィンで適用されている通常のラジカル重合開始剤による架橋方法をそのまま適用できる。すなわち環状オレフィン系共重合体樹脂組成物にジクミルペルオキシドのようなラジカル重合開始剤を配合し、加熱、架橋する。ラジカル重合開始剤の配合割合は特に制限がないものの、環状オレフィン系共重合体(m)100質量部あたり通常は0.02~20質量部、好ましくは0.05~10質量部であり、さらに好ましくは0.5~10質量部である。ラジカル重合開始剤の配合割合が上記上限値以下であると、架橋体の誘電特性が向上し、上記下限値以上であると、架橋体の耐熱性、機械的特性を向上させることができる。
【0106】
上記ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤およびこれらを併用することができる。これらのラジカル重合開始剤のうち、熱ラジカル重合開始剤を使用する場合は、保存安定性の観点から10時間半減期温度が通常80℃以上、好ましくは120℃以上のものである。このような開始剤として、例えば、ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)2,5-ジメチルヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキシド、イソプロピルクミル-t-ブチルパーオキシド、ビス(α-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、等のジアルキルパーオキシド類;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、エチル-3,3-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキシシクロノナン等のパーオキシケタール類;ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル類;t-ブチルハイドロパーオキシド、t-ヘキシルハイドロパーオキシド、クミンハイドロパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、p-メンタンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類;2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のビベンジル化合物類;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン等が挙げられる。
【0107】
ラジカル重合開始剤のうち、光ラジカル重合開始剤は具体的には、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントンおよびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。また、これらの光ラジカル重合開始剤とともに増感剤を使用することもできる。増感剤の例としては、アントラキノン、1,2-ナフトキノン、1,4-ナフトキノン、ベンズアントロン、p,p'-テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p-ジニトロベンゼン、2-ニトロフルオレン等のニトロ化合物、アントラセン、クリセン等の芳香族炭化水素、ジフェニルジスルフィド等の硫黄化合物、ニトロアニリン、2-クロロ-4-ニトロアニリン、5-ニトロ-2-アミノトルエン、テトラシアノエチレン等の窒素化合物等を挙げることができる。
【0108】
硫黄等により架橋する場合には、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物に硫黄系化合物、必要に応じて加硫促進剤、加硫促進助剤を配合して加熱し、架橋反応を行う。硫黄系化合物の配合量はとくに制限はないものの、架橋反応を効率よく進行させ、かつ得られる架橋物の物性改善を計ることおよび経済性の面等から環状オレフィン系共重合体(m)100質量部に対して通常0.1~10質量部、好ましくは0.3~5質量部の範囲で使用され、加硫促進剤や加硫促進助剤を併用する場合には通常0.1~20質量部、好ましくは0.2~10質量部の範囲で使用される。
架橋反応を起こすため使用される硫黄系化合物は公知の種々のものが使用でき、一例を挙げると硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン等がある。また加硫促進剤も種々のものを使用でき、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ベンゾチアジル-ジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジ-オルソ-トリルグアニジン、オルソートリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン系;アセトアルデヒド-アニリン反応物;ブチルアルデヒド-アニリン縮合物;ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミン、またはアルデヒド-アンモニア系;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;チオカルバニリド、ジエチルチオユリアジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソートリルチオユリア等のチオユリア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系;等を挙げることができる。加硫促進助剤としては、酸化亜鉛、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、酸化マグネシウム、リサージ、鉛丹、塩基性炭酸鉛等の金属酸化物系、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸鉛等の脂肪酸系、トリエタノールアミン、ジエチレングリコール等の有機アミン・グリコール系等を挙げることができる。
【0109】
環状オレフィン系共重合体樹脂組成物をラジカル重合開始剤架橋、硫黄架橋共に、架橋する温度は通常100~300℃、好ましくは120~250℃、さらに好ましくは120~220℃の温度で行い、温度を段階的に変化させて架橋を行ってもよい。上記下限値以上であると、架橋を十分に進行させることができる。また、上記上限値以下であると、得られる架橋体の着色が抑制できたり、プロセスを簡略化できたりする。なお、参考として、代表的な二重結合含有重合体であるポリブタジエンは、一般に上記のような条件では架橋できず、300℃のような高温での架橋条件を必要とする。
【0110】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物は、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2つ有するヒドロシリル基含有化合物を用いて架橋することもできる。ヒドロシリル基含有化合物を用いた架橋については、例えば、特開2015-193680号公報に記載の方法にしたがって行うことができる。ここでは詳細は省略する。
【0111】
電子線や他の放射線を用いて架橋する方法は、成型時の温度、流動性の制限を伴わないという利点があり、放射線としては、電子線の他、γ線、UV等を挙げることができる。
【0112】
ラジカル重合開始剤や硫黄、ヒドロシリル基含有化合物等を用いる方法、放射線を用いて架橋する方法のいずれの場合も、架橋助剤の併用下に架橋することができる。
【0113】
架橋助剤としては特に制限はないが、例えば、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム類;エチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸/酸化亜鉛混合物、アリルメタクリレート等のアクリレートもしくはメタクリレート類;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等のビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物類;N,N'-m-フェニレンビスマレイミド、N,N'-(4,4'-メチレンジフェニレン)ジマレイミド等のマレイミド化合物類等、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン類が挙げられる。これらの架橋助剤は単独で用いてもよいし、組み合わせて使用することもできる。
【0114】
架橋反応は、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物と、上記したラジカル重合開始剤や硫黄、ヒドロシリル基含有化合物等の化合物との混合物を溶融状態として行うこともできるし、または該混合物を溶媒に溶解、または分散させた溶液状態で行うこともできるし、または溶媒に溶解した溶液状態から溶媒を揮発させフィルム、コーティング等任意の形に成形した後にさらに架橋反応を進行させることもできる。
【0115】
溶融状態で反応を行う場合はミキシングロール、バンバリーミキサー、押出機、ニーダ、連続ミキサー等の混練装置を用いて、原料の混合物を溶融混練して反応させる。また、任意の手法で成形した後に更に架橋反応を進行させることもできる。
【0116】
溶液状態で反応を行う場合に使用する溶媒としては上記溶液ブレンド法で用いた溶媒と同様の溶媒が使用できる。
【0117】
電子線またはその他の放射線、UVを用いて架橋反応を行う場合には、任意の方法で付形した後に、反応を行うことができる。
【0118】
[フィルムまたはシート]
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物の架橋体はフィルムまたはシートに成形して各種用途に用いることができる。本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を用いて、フィルムまたはシートを形成する方法としては、各種公知の方法が適用可能である。例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の支持基材上に上述したワニスを塗布して乾燥後、加熱処理等して環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を架橋することにより形成する方法が挙げられる。ワニスの支持基材への塗布方法は特に限定されないが、例えば、スピンコーターを用いた塗布、スプレーコーターを用いた塗布、バーコーターを用いた塗布等を挙げることができる。
また、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を溶融成形して、フィルムまたはシートを得る方法も挙げることができる。
【0119】
[積層体]
本実施形態に係る上記フィルムまたはシートは基材に積層することにより、積層体として各種用途に用いることができる。本実施形態に係る積層体を形成する方法は各種公知の方法が適用可能である。
例えば、基材に対し、上述の方法により製造したフィルムまたはシートを積層し、必要に応じてプレス等により加熱硬化することにより積層体を作製することができる。
また、導体層に対して、前述した架橋体を含む電気絶縁層を積層することにより積層体を作製することもできる。
【0120】
[多層成形体または多層積層フィルム]
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物は、各種の多層成形体または多層積層フィルムの表層に形成してもよい。このとき、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物により形成された樹脂層は100μm以下であるのが好ましい。
各種の多層成形体または多層積層フィルムとしては、例えば、樹脂光学レンズ表面に本実施形態の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物が形成された光学レンズ用多層成形体や、PETフィルムやPEフィルム等の樹脂フィルム表面にガスバリア性付与のために本実施形態の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物が形成された多層ガスバリアフィルム等が挙げられる。
【0121】
[プリプレグ]
また、本実施形態に係るプリプレグは、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物とシート状繊維基材とを複合して形成されたものである。
プリプレグの製造方法としては特に限定されず、各種公知の方法が適用可能である。例えば、上述したワニスをシート状繊維基材に含浸し含浸体を得る工程と、得られた含浸体を加熱し上記ワニスに含まれる溶媒を乾燥する工程とを含む方法が挙げられる。
上記ワニスのシート状繊維基材への含浸は、例えば、所定量のワニスを、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法によりシート状繊維基材に塗布し、必要に応じてその上に保護フィルムを重ね、上側からローラー等で押圧することにより行うことができる。
また、上記含浸体を加熱し、上記ワニスに含まれる溶媒を乾燥する工程はとくに限定されないが、例えば、バッチ式で送風乾燥機により空気中あるいは窒素中で乾燥する、あるいは、連続工程で加熱炉を通すことによって乾燥する、等の方法を挙げることができる。
【0122】
本実施形態においては、ワニスをシート状繊維基材に含浸させた後、得られた含浸体を所定温度に加熱することにより、上記ワニスに含まれる溶媒が蒸発し、プリプレグが得られる。
本実施形態に係るシート状繊維基材を構成する繊維としては無機系および/または有機系の繊維が使用でき、特に限定されないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維等の有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維等の無機繊維;等を挙げることができる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス、Tガラス等を挙げることができる。
シート状繊維基材へのワニスの含浸は、例えば、浸漬および塗布によって実施される。含浸は必要に応じて複数回繰り返してもよい。
これらのシート状繊維基材は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、所望により適宜選択されるが、プリプレグあるいは積層体中の、通常、10~90質量%、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%の範囲である。この範囲にあれば、得られる積層体の誘電特性と機械強度が高度にバランスされ、好適である。
【0123】
本実施形態に係るプリプレグの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は0.001~10mmであり、好ましくは0.005~1mmであり、より好ましくは0.01~0.5mmである。この範囲にあれば、積層時の賦形性や、硬化して得られる積層体の機械強度や靭性等の特性が充分に発揮され好適である。
【0124】
[回路基板]
上述したように、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物は、誘電特性、耐熱性、機械的特性等に優れることから、回路基板に好適に用いることができる。
回路基板の製造方法としては一般的に公知の方法を採用でき特に限定されないが、例えば、前述の方法により製造したフィルム、シートまたはプリプレグを積層プレス等により加熱硬化し、電気絶縁層を形成する。次いで、得られた電気絶縁層に導体層を公知の方法で積層し、積層体を作製する。その後、該積層体中の導体層を回路加工等することにより、回路基板を得ることができる。
【0125】
導体層となる金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀、ステンレス等の金属を用いることができる。導体層の形成方法としては、例えば、該金属類を箔等にして電気絶縁層上に熱融着させる方法、該金属類を箔等にして電気絶縁層上に接着剤を用いて張り合わせる方法、あるいはスパッタ、蒸着、めっき等の方法で電気絶縁層上に該金属類からなる導体層を形成する方法等が挙げられる。回路基板の態様としては、片面板、両面板のいずれでもよい。
【0126】
このような回路基板は、例えば、半導体素子等の電子部品を搭載することにより、電子機器として使用することができる。電子機器は公知の情報に基づいて作製することができる。
このような電子機器としては、例えば、サーバ、ルータ、スーパーコンピューター、メインフレーム、ワークステーション等のICTインフラ機器;GPSアンテナ、無線基地局用アンテナ、ミリ波アンテナ、RFIDアンテナ等のアンテナ類;携帯電話、スマートフォン、PHS、PDA、タブレット端末等の通信機器;パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、POS端末、ウェアラブル端末、デジタルメディアプレーヤー等のデジタル機器;電子制御システム装置、車載通信機器、カーナビゲーション機器、ミリ波レーダー、車載カメラモジュール等の車載電子機器;半導体試験装置、高周波計測装置等;等が挙げられる。
【0127】
[発泡体]
また、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を架橋するとともに発泡せしめることにより発泡体とすることができる。このとき、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物に前述した発泡剤を添加してもよい。
【0128】
[用途]
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(m)、環状オレフィン系共重合体樹脂組成物および架橋体は、耐溶剤性、耐熱性、機械的強度、透明性に優れるので、当該架橋体からなる成形体は、例えば光ファイバー、光導波路、光ディスク基盤、光フィルター、レンズ、光学用接着剤、PDP用光学フィルター、有機EL用コーティング材料、航空宇宙分野における太陽電池のベースフィルム基材、太陽電池や熱制御システムのコーティング材、半導体素子、発光ダイオード、各種メモリー類等の電子素子、ハイブリッドIC、MCM、回路基板、回路基板の絶縁層を形成するために用いられるプリプレグや積層体、表示部品等のオーバコート材料あるいは層間絶縁材料、液晶ディスプレイや太陽電池の基板、医療用器具、自動車用部材、離型剤、樹脂改質剤、ディスプレイ用透明基板、リチウムイオン電池用部材、半導体プロセス部材、フィルムコンデンサ、ガスバリアコート材、電線被服材、自動車用部材、航空宇宙用部材、半導体用プロセス材、電線被覆材、リチウムイオン電池用部材、燃料電池用部材、コンデンサーフィルム、フレキシブルディスプレイ部材、アンカーコート材、透明接着剤、改質材、架橋助剤、医療用容器、医療用カテーテル部材、防水シール材、離型材、ハードコート材、発泡改質剤といった用途で使用することができる。
特に、誘電特性の経時安定性に優れ、耐溶剤性、耐熱性、透明性、機械的特性等にも優れるので、高周波回路基板等の高周波用途に好適に用いることができる。さらに、ガスバリア性にも優れるため、液晶ディスプレイや太陽電池の基板やフィルムまたはシートとして好適に用いることができる。
【0129】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0130】
以下、本発明を合成例、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
【0131】
なお、合成例、実施例、比較例で用いた環状オレフィン系共重合体(m)の組成は、次に述べる方法で測定した。
【0132】
組成;1H-NMR測定を行い、二重結合炭素に直接結合している水素由来のピークとそれ以外の水素のピークの強度により環状非共役ジエン含量を算出した。
【0133】
実施例および比較例によって得られた積層体は次に述べる方法で評価を行った。
【0134】
実験には以下の原材料を用いた。
【0135】
遷移金属化合物(1):
特開2004-331965号公報に記載の方法により合成した。
【0136】
【0137】
MMAO(東ソー・ファインケム社製)
トルエン(和光純薬工業株式会社製:和光特級)
5-ビニル-2-ノルボルネン(東京化成工業株式会社製)
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(三井化学株式会社製)
アセトン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製:和光特級)
メタノール(富士フイルム和光純薬工業株式会社製:和光特級)
シクロヘキサン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製:和光特級)
【0138】
マレイミド化合物(L):
化合物l-1:下記式(l-1)で表されるN-フェニルマレイミド(東京化成工業社製)
【0139】
【0140】
化合物l-2:下記式(l-2)で表されるN-シクロヘキシルマレイミド(富士フイルム和光純薬社製)
【0141】
【0142】
化合物l-3:下記式(l-3)で表されるビスマレイミド化合物(大和化成製、BMI-TMH)
【0143】
【0144】
環状オレフィン系共重合体(n):
重合体1:エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとからなる共重合体(製品名:アペル6509T、三井化学株式会社製)
【0145】
ラジカル重合開始剤:
ラジカル重合開始剤1:パークミルD(日本油脂社製)
【0146】
耐熱安定剤:
ヒンダートフェノール系化合物(G):
化合物(G)-1:イルガノックス1010(BASF社製)
化合物(G)-2:KEMISORB114(ケミプロ化成社製)
ヒンダートアミン系化合物(H):
化合物(H)-1:CHIMASSORB2020FDL(分子量2600~3400)(BASF社製)
化合物(H)-2:CHIMASSORB944FDL(分子量2000~3100)(BASF社製)
【0147】
環状オレフィン系共重合体(m):
〔合成例1(環状オレフィン系共重合体(m-1))〕
十分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに、トルエン450ml、5-ビニル-2-ノルボルネン(以下、VNBとも呼ぶ)30ml、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(以下、TDとも呼ぶ)16ml、MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液をAl換算で0.9mmol、水素360mlを投入した後、系中にエチレンを全圧0.6MPaになるまで導入した。遷移金属化合物(1)0.028mmolのトルエン溶液を添加し、35℃で180分間重合を行った。その後、1mlのメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られた環状オレフィン系共重合体(m-1)の極限粘度[η]は0.35(dL/g)、1H-NMRにより決定したポリマー中のVNB由来構造の組成比は26mol%、TD由来構造の組成比は12mol%、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度は96℃であった。
【0148】
[実施例1]
(ワニス1の調製)
合成例1で得られた環状オレフィン系共重合体(m-1)、モノマレイミドとして化合物l-1、ヒンダートフェノール系化合物(G)として化合物(G)-1、ラジカル重合(架橋)開始剤としてラジカル重合開始剤1、溶媒としてトルエン/シクロヘキサン混合溶媒を用い、表1の配合組成に従い秤量した。秤量したサンプルを十分に溶解するまで撹拌し、目的とするワニス状の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を得た。なお、表1中における各原料の配合割合の単位は質量部である。
【0149】
(積層体製膜)
得られたワニス状の環状オレフィン系共重合体樹脂組成物を、離型処理されたPETフィルム上に10mm/秒の速度で塗工した後、窒素気流下送風乾燥機中150℃下で4分乾燥した。得られたフィルムを2枚重ね、真空プレスにより、3.5MPaに加圧し、室温(25℃)から一定速度で昇温し、180℃下で120分保持し、積層体を得た。得られた積層体について、全光線透過率、ガラス転移温度Tg、比誘電率、誘電正接と耐熱安定性の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0150】
(ガラス転移温度Tgの評価)
以下の条件で得られた積層体の固体粘弾性温度分散測定を行い、ガラス転移温度Tgの評価を行った。ガラス転移温度Tgは損失正接(tanδ)のピーク温度とした。
装置:RSA-III(ティー・エイ・インスツルメント社製)
変形モード:引張
温度範囲:25℃~300℃
昇温速度:3℃/分
周波数:1Hz
設定歪:0.1%
環境:窒素雰囲気下
【0151】
(比誘電率、誘電正接および耐熱安定性評価)
実施例および比較例によって得られた積層体について、円筒空洞共振器法により、10GHzにおける比誘電率、誘電正接を測定した。ここで、積層体を125℃で1000時間加熱処理をおこない、加熱処理前、加熱500時間後、および加熱1000時間後における誘電正接をそれぞれ測定し、加熱処理前後の誘電正接の変化量によって積層体の耐熱安定性を評価した。
また誘電正接が0.014以下である場合に誘電特性が良好であると評価し、加熱1000時間後と加熱前の誘電正接の差が0.001以下である場合に耐熱安定性が良好であると評価した。
【0152】
(透明性評価)
実施例および比較例によって得られた積層体について、ヘイズメーターを用いJIS K7136に準拠した方法で全光線透過率(%)を測定した。全光線透過率80%以上の積層体は透明であると評価した。
【0153】
[実施例2および3]
表1の配合組成に従い、合成例1で得られた環状オレフィン系共重合体(m-1)、環状オレフィン系共重合体(n)として重合体1、マレイミド化合物(L)として化合物l-1、ヒンダートフェノール系化合物(G)として(G)-2、ヒンダードアミン系化合物(H)として化合物(H)-1を加えて実施例1と同様にワニスおよび積層体の作製を行い、評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0154】
[実施例4、5および6]
表1に示す配合組成に変えた以外は、実施例1と同様に積層体をそれぞれ作製し、評価を実施した。すなわち、環状オレフィン系共重合体(n)として重合体1を加え、マレイミド化合物(L)として化合物l-1の代わりに化合物l-2、ヒンダートフェノール系化合物(G)として(G)-2、ヒンダードアミン系化合物(H)として化合物(H)-1を加えた。得られた結果を表1に示す。
【0155】
[比較例1]
表1に示す配合組成に変えた以外は、実施例1と同様に積層体を作製し、評価を実施した。すなわち、マレイミド化合物(L)を加えずに、合成例1で得られた環状オレフィン系共重合体(m-1)のみを加えた。得られた結果を表1に示す。
【0156】
[比較例2および3]
表1に示す配合組成に変えた以外は、実施例1と同様に積層体をそれぞれ作製し、それぞれ評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0157】
[比較例4]
表1に示す配合組成に変えた以外は、実施例1と同様に積層体を作製し、評価を実施した。すなれち、マレイミド化合物l-1およびヒンダードフェノール系化合物(G)-1を加えず、マレイミド化合物(L)として化合物l-3、およびヒンダードアミン系化合物(H)として化合物(H)-2を加えた。得られた結果を表1に示す。
【0158】