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特開2022-118476照射光学系、照射装置、及び、光学測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118476
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】照射光学系、照射装置、及び、光学測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20220805BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
G01N21/01 D
G01N21/78 A
G01N21/78 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015041
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】小野田 浩久
(72)【発明者】
【氏名】松村 朋和
(72)【発明者】
【氏名】近藤 房宣
(72)【発明者】
【氏名】森下 直計
【テーマコード(参考)】
2G054
2G059
【Fターム(参考)】
2G054AA07
2G054AB04
2G054AB05
2G054BB07
2G054CA20
2G054CA21
2G054CE02
2G054EA03
2G054EB01
2G054FA01
2G054FA02
2G054FA08
2G054FA12
2G054FA32
2G054FA33
2G054FB02
2G054FB03
2G054GA02
2G054GA04
2G054GB02
2G054GE06
2G054JA08
2G054JA10
2G054JA11
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC17
2G059DD03
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE07
2G059GG02
2G059HH03
2G059JJ03
2G059JJ11
2G059KK01
2G059KK03
2G059LL01
2G059NN06
(57)【要約】
【課題】より均一な光照射を可能とする照射光学系、照射装置、及び光学測定装置を提供する。
【解決手段】
照射光学系C1は、光出射面102sから照射光L1を出射する面発光素子102と、面発光素子102から出射された照射光L1の指向性を高めるためのレンズ部103bとを含む光源101と、光源101から出射された照射光L1を光入射面121から入射し、入射した照射光L1をスリット120sにより整形して出射するための光整形部材120と、光整形部材120のスリット120sの像を結像するための第1レンズ111と、を備える。面発光素子102の光出射面102sと光整形部材120の光入射面121との距離Hは、光出射面102sの一方向についての大きさの26倍以下である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に第1光を照射するための照射光学系であって、
光出射面から前記第1光を出射する面発光素子と、前記面発光素子から出射された前記第1光の指向性を高めるためのレンズ部とを含む光源と、
前記光源から出射された前記第1光を光入射面から入射し、入射した前記第1光を光通過孔により整形して出射するための光整形部材と、
前記光整形部材から出射された前記第1光の像を前記対象物に結像するための第1レンズと、
を備え、
前記面発光素子の光出射面と前記光整形部材の光入射面との距離は、前記光出射面の一方向についての大きさの26倍以下である、
照射光学系。
【請求項2】
前記光源と前記第1レンズとの間に配置され、前記第1レンズで生じる収差を補正するための第2レンズを備える、
請求項1に記載の照射光学系。
【請求項3】
前記第2レンズは、前記光源と前記光整形部材との間、または、前記光整形部材と前記第1レンズとの間に配置されており、前記光源から出射された前記第1光の指向性を高める機能を有する、
請求項2に記載の照射光学系。
【請求項4】
前記第2レンズは、前記光整形部材に固定されている、
請求項2又は3に記載の照射光学系。
【請求項5】
前記光源は、前記面発光素子を封止する光透過性の透光部を含み、
前記レンズ部は、前記透光部に形成されて前記面発光素子と一体化されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の照射光学系。
【請求項6】
前記光源と前記第1レンズとの間に設けられ、前記第1光のうちの一部の波長成分を前記第1レンズに向けて選択的に透過するための第1波長選択フィルタを備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の照射光学系。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の照射光学系と、
前記照射光学系を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体は、
前記第1光の光路が形成される第1空間部と、
前記第1空間部を画定する第1内壁面と、
を含む、
照射装置。
【請求項8】
前記第1空間部には、前記光整形部材と前記第1レンズとの間において拡幅された第1拡幅部が形成されており、
前記第1内壁面は、前記第1拡幅部において、前記第1光の光路に交差すると共に前記光整形部材側に臨む第1交差面を含む、
請求項7に記載の照射装置。
【請求項9】
前記第1光の光路に臨むように前記第1内壁面に設置され、前記光源から出射されて拡散する前記第1光の一部を検出することにより、前記光源から出射された前記第1光の光量を検知するための第1光検出器を備える、
請求項7又は8に記載の照射装置。
【請求項10】
前記第1光の光量を示す検出信号を前記第1光検出器から入力しつつ、当該光量が一定となるように前記面発光素子を駆動するための駆動回路を備える、
請求項9に記載の照射装置。
【請求項11】
前記筐体は、前記第1光に対して吸収性を有する材料からなる、
請求項7~10のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項12】
前記筐体は、前記第1光により自家蛍光が生じない材料からなる、
請求項7~11のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか一項に記載の照射装置と、
前記第1光が照射された前記対象物からの第2光を検出するための検出光学系と、
を備え、
前記筐体は、前記検出光学系をさらに収容すると共に、
前記第2光の光路が形成される第2空間部と、
前記第2空間部を画定する第2内壁面と、
を含み、
前記検出光学系は、
前記第2光を検出するための第2光検出器と、
前記第2光を前記第2光検出器に向けて集光するための第3レンズと、
を備える光学測定装置。
【請求項14】
前記第3レンズと前記第2光検出器との間に設けられ、前記第2光のうちの一部の波長成分を前記第2光検出器に向けて選択的に透過するための第2波長選択フィルタを備える、
請求項13に記載の光学測定装置。
【請求項15】
前記第2空間部には、前記第3レンズと前記第2波長選択フィルタとの間において拡幅された第2拡幅部が形成されており、
前記第2内壁面は、前記第2拡幅部において、前記第2光の光路に交差すると共に前記第3レンズ側に臨む第2交差面を含む、
請求項14に記載の光学測定装置。
【請求項16】
前記第2波長選択フィルタは、誘電体多層膜フィルタと、前記誘電体多層膜フィルタよりも前記第2光検出器側に配置された色ガラスフィルタと、を含む、
請求項14又は15に記載の光学測定装置。
【請求項17】
前記第2光の検出に応じて前記第2光検出器から出力される電流信号を電圧信号に変換するための電流電圧変換器を備え、
前記第2光検出器は、前記電流電圧変換器の基板に実装されている、
請求項13~16のいずれか一項に記載の光学測定装置。
【請求項18】
少なくとも前記第2光検出器及び前記電流電圧変換器を覆うように前記筐体に設けられた金属シールドを備える、
請求項17に記載の光学測定装置。
【請求項19】
前記第1光は、前記対象物を励起するための励起光を含み、
前記第2光は、前記励起光の照射に応じて前記対象物が放出する蛍光を含む、
請求項13~18のいずれか一項に記載の光学測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射光学系、照射装置、及び、光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、試料濃度測定装置に用いられる光学部が記載されている。これらの光学部は、光源となる半導体レーザと、半導体レーザから出射されたビームを平行ビームに変換するコリメートレンズと、コリメートレンズを通過したビームを開口及びビームスプリッタを介して入射し、当該ビームを免疫クロマトグラフィー試験片に導くシリンドリカルレンズと、これらを収容する光学台と、を備えている。
【0003】
これらの試料濃度測定装置では、半導体レーザから出射されたビームは、コリメートレンズを介して平行ビームにされる。この平行ビームは、開口を介して偏光ビームスプリッタに入射される。偏光ビームスプリッタを透過したビームは、シリンドリカルレンズに入射され、シリンドリカルレンズにより、免疫クロマトグラフィー試験片の長さ方向のみ結像されて免疫クロマトグラフィー試験片に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-98078号公報
【特許文献2】特開2002-98631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した試料濃度測定装置では、半導体レーザから出射されたビームをシリンドリカルレンズによって楕円形状にし、もしくは、開口を用いて矩形形状にして、試料が添加された免疫クロマトグラフィー試験片に照射するようにしたことにより、免疫クロマトグラフィー試験片に対する幅方向の呈色ムラの影響を緩和することができるとされている。しかしながら、特許文献1,2に記載された光学部では、ビームを楕円形状又は矩形形状にすることが言及されているものの、その楕円形状又は矩形形状のビームの照射面内での照度分布の均一化に関して言及されておらず、そのための構成も備えていない。したがって、特許文献1,2に記載の試料濃度測定装置では、免疫クロマトグラフィー試験片に対して均一な光照射を実現することが困難である。
【0006】
本発明は、より均一な光照射を可能とする照射光学系、照射装置、及び光学測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る照射光学系は、対象物に第1光を照射するための照射光学系であって、光出射面から第1光を出射する面発光素子と、面発光素子から出射された第1光の指向性を高めるためのレンズ部とを含む光源と、光源から出射された第1光を光入射面から入射し、入射した第1光を光通過孔により整形して出射するための光整形部材と、光整形部材から出射された第1光の像を対象物に結像するための第1レンズと、を備え、面発光素子の光出射面と光整形部材の光入射面との距離は、光出射面の一方向についての大きさの26倍以下である。
【0008】
この照射光学系では、光源から出射された第1光は、光整形部材にて整形された後に、第1レンズを介して対象物に照射される。光源は、面発光素子と、面発光素子から出射された第1光の指向性を高めるためのレンズ部と、を含む。そして、面発光素子の光出射面と光整形部材の光入射面との距離が、面発光素子の光出射面の一方向の大きさの26倍以下である。本発明者の知見によれば、このように指向性を高めるためのレンズ部と併せて使用される面発光素子では、その光出射面のサイズの26倍以内の近い距離範囲で、比較的に高光量であり、且つ均一な照度分布が得られるのである。したがって、上記の距離範囲内に配置された光整形部材の入射面での第1光の像を、第1レンズで対象物に結像することにより、対象物に対してより均一な光照射が可能となる。なお、面発光素子の光出射面の一方向の大きさとは、一例として、面発光素子の光出射面が長手方向を有する場合には、当該長手方向の大きさである。
【0009】
本発明に係る照射光学系は、光源と第1レンズとの間に配置され、第1レンズで生じる収差を補正するための第2レンズを備えてもよい。この場合、より均一な光照射が可能となる。
【0010】
本発明に係る照射光学系では、第2レンズは、光源と光整形部材との間、または、光整形部材と第1レンズとの間に配置されており、光源から出射された第1光の指向性を高める機能を有してもよい。この場合、第1光の拡散によるロスが低減される。
【0011】
本発明に係る照射光学系では、第2レンズは、光整形部材に固定されていてもよい。この場合、第2レンズを別途に保持する機構が不要となる。
【0012】
本発明に係る照射光学系では、光源は、面発光素子を封止する光透過性の透光部を含み、レンズ部は、透光部に形成されて面発光素子と一体化されていてもよい。この場合、面発光素子及びレンズ部の取り扱いや位置決めが容易となる。
【0013】
本発明に係る照射光学系は、光源と第1レンズとの間に設けられ、第1光のうちの一部の波長成分を第1レンズに向けて選択的に透過するための第1波長選択フィルタを備えてもよい。この場合、第1光のうちの一部の波長成分を選択的に対象物に照射することが可能となる。
【0014】
本発明に係る照射装置は、上記の照射光学系と、照射光学系を収容する筐体と、を備え、筐体は、第1光の光路が形成される第1空間部と、第1空間部を画定する第1内壁面と、を含む。この照射装置によれば、上記の照射光学系と同様の効果を奏することが可能である。また、この照射装置によれば、上記の照射光学系が筐体に収容されるため、その取り扱いが容易となる。
【0015】
本発明に係る照射装置では、第1空間部には、光整形部材と第1レンズとの間において拡幅された第1拡幅部が形成されており、第1内壁面は、第1拡幅部において、第1光の光路に交差すると共に光整形部材側に臨む第1交差面を含んでもよい。この場合、光整形部材から第1レンズに向けて一定以上の角度で斜めに進行する光が第1交差面によってトラップされることにより、迷光の発生が抑制される。
【0016】
本発明に係る照射装置は、第1光の光路に臨むように第1内壁面に設置され、光源から出射されて拡散する第1光の一部を検出することにより、光源から出射された第1光の光量を検知するための第1光検出器を備えてもよい。この場合、第1光の光量をモニタすることが可能となる。
【0017】
本発明に係る照射装置は、第1光の光量を示す検出信号を第1光検出器から入力しつつ、当該光量が一定となるように面発光素子を駆動するための駆動回路を備えてもよい。この場合、安定した光量での光照射が可能となる。
【0018】
本発明に係る照射装置では、筐体は、第1光に対して吸収性を有する材料からなってもよい。或いは、本発明に係る照射装置では、筐体は、第1光により自家蛍光が生じない材料からなってもよい。これら場合、迷光の発生がより確実に抑制される。
【0019】
本発明に係る光学測定装置は、上記の照射装置と、第1光が照射された対象物からの第2光を検出するための検出光学系と、を備え、筐体は、検出光学系をさらに収容すると共に、第2光の光路が形成される第2空間部と、第2空間部を画定する第2内壁面と、を含み、検出光学系は、第2光を検出するための第2光検出器と、第2光を第2光検出器に向けて集光するための第3レンズと、を備える。この光学測定装置によれば、上記の照射光学系及び照射装置によって均一な光照射を受けた対象物からの第2光を検出することにより、対象物の安定した測定が可能となる。
【0020】
本発明に係る光学測定装置は、第3レンズと第2光検出器との間に設けられ、第2光のうちの一部の波長成分を第2光検出器に向けて選択的に透過するための第2波長選択フィルタを備えてもよい。この場合、第2光のうちの一部の波長成分を選択的に検出することが可能となる。
【0021】
本発明に係る光学測定装置では、第2空間部には、第3レンズと第2波長選択フィルタとの間において拡幅された第2拡幅部が形成されており、第2内壁面は、第2拡幅部において、第2光の光路に交差すると共に第3レンズ側に臨む第2交差面を含んでもよい。この場合、第3レンズから第2波長選択フィルタに向けて一定以上の角度で斜めに進行する光が第2交差面によってトラップされることにより、第2波長選択フィルタに入射する第2光の入射角の範囲が制限される。これにより、第2波長選択フィルタの特性の入射角度依存性の影響が低減され、高精度での測定が可能となる。
【0022】
本発明に係る光学測定装置では、第2波長選択フィルタは、誘電体多層膜フィルタと、誘電体多層膜フィルタよりも第2光検出器側に配置された色ガラスフィルタと、を含んでもよい。この場合、第2波長選択フィルタの特性の入射角度依存性が低減される。
【0023】
本発明に係る光学測定装置は、第2光の検出に応じて第2光検出器から出力される電流信号を電圧信号に変換するための電流電圧変換器を備え、第2光検出器は、電流電圧変換器の基板に実装されていてもよい。この場合、ノイズが低減される。
【0024】
本発明に係る光学測定装置は、少なくとも第2光検出器及び電流電圧変換器を覆うように筐体に設けられた金属シールドを備えてもよい。この場合、ノイズが低減される。
【0025】
本発明に係る光学測定装置では、第1光は、対象物を励起するための励起光を含み、第2光は、励起光の照射に応じて対象物が放出する蛍光を含んでもよい。この場合、安定した蛍光測定が可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、より均一な光照射を可能とする照射光学系、照射装置、及び光学測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本実施形態に係る光学測定装置の模式的な構成図である。
図2図2は、図1に示された試験片と検出結果の一例を示す図である。
図3図3は、図1に示された光学測定装置の一部の内部を示す模式的な側面図である。
図4図4は、図1に示された光学測定装置の一部の内部を示す別方向からの模式的な側面図である。
図5図5は、図3,4に示された光源を示す側面図である。
図6図6は、面発光素子の光出射面から特定の距離の照射面での照射光の照度分布を示すグラフである。
図7図7は、面発光素子の光出射面から特定の距離の照射面での照射光の照度分布を示すグラフである。
図8】本実施形態に係る照射光の光量を示す図である。
図9】本実施形態に係る検出光の光量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0029】
図1は、本実施形態に係る光学測定装置の模式的な構成図である。図1に示される光学測定装置1は、試料に照射された光に応じて試料から生じる光を検出する装置である。本実施形態では、光学測定装置1は、試料に照射された励起光に応じて試料から生じる蛍光を検出する蛍光測定装置であるとして説明する。励起光とは試料を励起する光であり、蛍光とは励起光に応じて試料が放出する光であって励起光の波長と異なる波長を有する光である。また、本実施形態では、光学測定装置1は、イムノクロマト法を用いた測定に係る蛍光を検出する装置であるとして説明する。イムノクロマト法とは、抗原抗体反応を利用した免疫測定法であり、例えばインフルエンザウイルスの検出等に用いられる。
【0030】
図2は、図1に示された試験片と検出結果の一例を示す図である。図1,2に示されるように、イムノクロマト法を用いた測定では、試料として免疫クロマト試験片500が用意される。免疫クロマト試験片500は、試薬ホルダ500A内に、検体が滴下される滴下部502と、蛍光試薬で標識された検出抗体を保持する保持部503と、捕捉抗体を測定対象部504に固定した測定部(対象物)501とが上流から下流に向けて配置されている。蛍光試薬は、例えばユウロピウムである。
【0031】
このような免疫クロマト試験片500に対して、滴下部502に検体を滴下すると、検体は毛細管現象により下流側へ移動する。検体中に被検出物質がある場合、保持部503の検出抗体と被検出物質とが反応して複合体を形成し、この複合体が測定部501を下流側に移動していく。そして、複合体が測定部501上の測定対象部504に達したときに、複合体が測定対象部504の捕捉抗体に捕捉され、被検出物質、検出抗体、及び捕捉抗体の3つによる複合体が形成される。
【0032】
この状態で測定領域である測定部501に対して集光位置(計測位置)を変化させながら励起光が照射されることにより、測定位置に応じた検出光強度(蛍光強度)を導出することができる。検出光強度が他と比べて大きくなっている計測位置は、複合体が捕捉されている測定対象部504の位置に対応する計測位置である。
【0033】
イムノクロマト法での測定エリアはライン上であり、ライン以外の箇所(バックグラウンド)にも蛍光物質が浮遊しているため、照射面内において励起光の照度分布が不均一であると、安定した計測が困難となる。また、ライン自体も位置によって存在する蛍光物質の量が異なり、その蛍光発光の分布が不均一である可能性があり、その場合も安定した計測が困難となる。したがって、安定した計測のためには、励起光の照度分布をより均一化することが望ましい。
【0034】
また、光学測定装置1の検出光学系で検出される検出光は、蛍光だけでなく、励起光自体に起因する光が含まれることが考えられる。このような光は、例えば、励起光の散乱光が挙げられる。このような散乱光は、例えば、励起光が免疫クロマト試験片500に照射され、散乱されることで発生する励起光の一部である。免疫クロマト試験片500のイムノクロマトメンブレンや試薬ホルダ500Aが白色であると、当該散乱光が生じやすくなる。さらには、測定する試料や検出光学系の配置によっては、励起光そのものが検出される場合がある。したがって、検出対象の蛍光以外の迷光を抑制することも望まれている。
[光学測定装置の構成]
【0035】
引き続いて、光学測定装置1の構成について説明する。図3は、図1に示された光学測定装置の一部の内部を示す模式的な側面図であり、図4は、図1に示された光学測定装置の一部の内部を示す別方向からの模式的な側面図である。図5は、図3,4に示された光源を示す側面図である。図1,3~5に示されるように、光学測定装置1は、光学ヘッド10を備えている。光学ヘッド10は、照射光学系C1と検出光学系C2とを備えている。照射光学系C1は、免疫クロマト試験片500に向けて照射光(第1光)L1を照射するためのものである。照射光L1は、免疫クロマト試験片500の蛍光試薬を励起する励起光を含む。照射光L1は、例えば340nmの波長成分を含む紫外光である。検出光学系C2は、免疫クロマト試験片500からの検出光(第2光)L2を検出するためのものである。検出光L2は、免疫クロマト試験片500の蛍光試薬からの蛍光を含む。
【0036】
まず、照射光学系C1について説明する。照射光学系C1は、光源101、第1レンズ111、第2レンズ112、光整形部材120、第1波長選択フィルタ125、及び、第1光検出器140を有している。光源101、第1レンズ111、第2レンズ112、光整形部材120、第1波長選択フィルタ125、及び、第1光検出器140は、筐体130に収容されると共に筐体130に保持され、筐体130共に照射装置100を構成している。
【0037】
光源101は、光出射面102sを含み、光出射面102sから照射光L1を出射する面発光素子102と、面発光素子102から出射された照射光L1の指向性を高めるためのレンズ部103bと、面発光素子102が設置され、面発光素子102から出射された照射光L1をレンズ部103bに向けて反射するリフレクタ104と、面発光素子102及びリフレクタ104を封止する封止部103aと、を有する。面発光素子102は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。光出射面102sは、例えば、面発光素子102の一端面における照射光L1が出射されるエリアである(図示の例では、面発光素子102の一端面の全体である)。
【0038】
封止部103aとレンズ部103bとは、照射光L1に対して透過性を有する透光性材料、例えば透光性を備えた樹脂によって一体的に形成され、面発光素子102及びリフレクタ104を封止する樹脂部(透光部)103を構成している。換言すれば、レンズ部103bは、面発光素子102と反対側に凸となるように光透過性の樹脂部103に形成され、面発光素子102と一体化されている。これにより、光源101は、面発光素子102がLEDである場合、砲弾型LEDとして構成されることとなる。
【0039】
光整形部材120は、光源101から出射された照射光L1が入射する光入射面121及び光通過孔であるスリット120sを含み、光入射面121から入射した照射光L1をスリット120sにより整形して出射する。スリット120sは、光入射面121に開口されている。照射光L1の光軸に沿った方向からみたときのスリット120sの形状は、測定対象部504の形状に対応した形状であり、一例として長手方向を有する長方形状である。
【0040】
光整形部材120は、その光入射面121が面発光素子102の光出射面102sから距離Hとなるように配置されている。光出射面102sと光入射面121との距離Hは、光出射面102sの一方向についての大きさdの26倍以下である。光出射面102sの一方向の大きさdとは、一例として、光出射面102sが正方形である場合には、当該正方形の一辺の大きさであり、光出射面102sが長手方向を有する場合には、当該長手方向の大きさである。後者の場合、距離Hは、光出射面102sの短手方向の大きさの26倍未満でもある。大きさdは、一例として0.5mmである。
【0041】
第1レンズ111には、スリット120sを介して光整形部材120から出射された照射光L1が入射される。第1レンズ111は、例えば、光整形部材120側及び光整形部材120と反対側に凸となる球面レンズであり、光整形部材から出射された照射光L1の像であるスリット120sの像を免疫クロマト試験片500に結像するように配置されている。第2レンズ112は、光源101と第1レンズ111との間に配置されている。ここでは、第2レンズ112は、光源101と光整形部材120との間に配置され、光整形部材120に固定されている。第2レンズ112は、少なくとも、第1レンズ111で生じる収差(例えば球面収差)補正するための機能を備えている。ここでは、第2レンズ112は、さらに、照射光L1の指向性を高めるための機能を有している。第2レンズ112は、例えば、光源101側に凸となるレンズである。
【0042】
第1波長選択フィルタ125は、光源101と第1レンズ111との間に設けられ、照射光L1のうちの一部の波長成分を第1レンズ111に向けて選択的に透過するためのものである。第1波長選択フィルタ125は、例えば、照射光L1のうちの蛍光試薬の励起に寄与する波長成分(励起光)を選択的に透過するように構成されている。第1波長選択フィルタ125は、例えば、特定の波長帯(蛍光試薬の励起波長)のみを透過させる誘電体多層膜フィルタが第1レンズ111に蒸着されて構成されていてもよい。
【0043】
筐体130は、照射光L1の光路が形成される第1空間部131と、第1空間部131を画定する第1内壁面132と、を含む。筐体130は、第1空間部131及び後述する第2空間部171以外において中実とされている。換言すれば、筐体130では、中実の本体部130Aに第1空間部131及び第2空間部171が形成されている。照射光学系C1の各部材は、第1空間部131内に配置されて第1内壁面132によって保持されている。筐体130は、少なくとも照射光L1に対して吸収性を有する材料からなる。筐体130は、さらに、照射光L1により自家蛍光が生じない材料からなる。筐体130の材料は、一例として、黒色のABS樹脂、又は黒色のPOM(Polyoxymethylene)である。
【0044】
第1光検出器140は、例えば光源101と光整形部材120との間において、照射光L1の光路に臨むように第1内壁面132に設置されている。第1光検出器140は、光源101から出射されて拡散する照射光L1の一部を検出することにより、光源101から出射された照射光L1の光量を検知するためのものである。第1光検出器140は、例えばフォトダイオード(一例としてSiフォトダイオード)である。第1光検出器140は、検出結果を示す信号を後述する駆動回路50に出力する。
【0045】
第1空間部131には、光整形部材120と第1レンズ111との間において拡幅された第1拡幅部133が形成されている。ここでは、第1拡幅部133は、光整形部材120と第1波長選択フィルタ125との間に設けられている。第1拡幅部133は、第1内壁面132が照射光L1の光路から離れるように窪むことにより形成されている。ここでは、第1拡幅部133の幅は一定とされている。第1拡幅部133は、一例として直方体状である。第1内壁面132は、第1拡幅部133において、照射光L1の光路(光整形部材120から第1レンズ111に向かう方向)に交差する一対の交差面134,135を含む。交差面134は、第1レンズ111側に臨む面であり、交差面(第1交差面)135は、光整形部材120側に臨む面である。交差面134と交差面135とは、互いに対向する面であり、一例として互いに平行である。
【0046】
引き続いて、検出光学系C2について説明する。検出光学系C2は、第2光検出器150、第3レンズ153、及び、第2波長選択フィルタ160を有している。第2光検出器150、第3レンズ153、及び、第2波長選択フィルタ160は、筐体130に収容されると共に筐体130に保持されている。
【0047】
第2光検出器150は、検出光L2を検出するためのものである。第2光検出器150は、例えば、フォトダイオード(一例としてSiフォトダイオード)である。第2光検出器150は、アバランシェフォトダイオード又は光電子増倍管、及びそれらのマルチピクセルアレイであってもよい。筐体130の外側面には、後述する電流電圧変換器20の基板21が取り付けられており、第2光検出器150は、当該基板21に実装されている。第2光検出器150は、検出光L2の検出結果を示す信号を電流電圧変換器20に出力する。
【0048】
第3レンズ153は、検出光L2を第2光検出器150に向けて集光するためのものである。第3レンズ153は、例えば、第2光検出器150と反対側に凸となる平凸レンズである。
【0049】
第2波長選択フィルタ160は、第3レンズ153と第2光検出器150との間に配置されている。第2波長選択フィルタ160は、検出光L2のうちの一部の波長成分を第2光検出器150に向けて選択的に透過するためのものである。第2波長選択フィルタ160は、例えば、検出光L2のうちの蛍光試薬から生じた蛍光を選択的に透過するように構成されている。第2波長選択フィルタ160は、ここでは、特定の波長帯(蛍光)のみを透過させる誘電体多層膜フィルタ161と色ガラスフィルタ162とを含む。第2波長選択フィルタ160は、例えば、誘電体多層膜フィルタ161と色ガラスフィルタ162とを組み合わせたバンドパスフィルタである。色ガラスフィルタ162は、誘電体多層膜フィルタ161よりも第2光検出器150側に配置されている。色ガラスフィルタ162は、一例として、誘電体多層膜フィルタ161に接着されている。
【0050】
筐体130は、検出光L2の光路が形成される第2空間部171と、第2空間部171を画定する第2内壁面172と、を含む。検出光学系C2の各部材は、第2空間部171内に配置されて第2内壁面172によって保持されている。
【0051】
第2空間部171には、第3レンズ153と第2波長選択フィルタ160との間において拡幅された第2拡幅部173が形成されている。第2拡幅部173は、第2内壁面172が検出光L2の光路から離れるように窪むことにより形成されている。ここでは、第2拡幅部173の幅は一定とされている。第2拡幅部173は、一例として直方体状である。第2内壁面172は、第2拡幅部173において、検出光L2の光路(第3レンズ153から第2光検出器150に向かう方向)に交差する一対の交差面174,175を含む。交差面(第2交差面)174は、第3レンズ153側に臨む面であり、交差面175は、第2波長選択フィルタ160側に臨む面である。交差面174と交差面175とは、互いに対向する面であり、一例として互いに平行である。なお、第2空間部171が第2拡幅部173を有さない場合、第2波長選択フィルタ160は、誘電体多層膜フィルタ161が第3レンズ153に蒸着されることで構成されてもよい。
【0052】
ここで、図1に示されるように、光学測定装置1は、さらに、電流電圧変換器20、AD変換器30、CPU40、及び、駆動回路50を備えている。電流電圧変換器20は、第2光検出器150から出力された電流信号を電圧信号に変換してAD変換器30に出力する。上述したように、電流電圧変換器20の基板21は筐体130の外側面に取り付けられている(図3参照)。AD変換器30は電流電圧変換器20から出力された電圧信号をデジタル信号に変更してCPU40に出力する。
【0053】
CPU40は、AD変換器80から出力されたデジタル信号について、例えば、検出信号から散乱光に応じた信号成分を除去するための信号処理を行う。駆動回路50は、CPU40からの入力を受けると共に、第1光検出器140からの入力を受ける。駆動回路50は、第1光検出器140から、照射光L1の光量を示す検出信号を第1光検出器140から入力しつつ、当該光量が一定となるように面発光素子102の駆動を制御する。
[作用・効果]
【0054】
引き続いて、本実施形態に係る光学測定装置1、照射光学系C1、及び、照射装置100の作用効果について説明する。
【0055】
本実施形態に係る照射光学系C1では、光源101から出射された照射光L1は、光整形部材120にて整形された後に、第1レンズ111を介して免疫クロマト試験片500に照射される。光源101は、面発光素子102と、面発光素子102から出射された照射光L1の指向性を高めるためのレンズ部103bと、を含む。そして、面発光素子102の光出射面102sと光整形部材120の光入射面121との距離Hが、面発光素子102の光出射面102sの一方向の大きさdの26倍以下である。この点について、本発明者の知見について説明する。
【0056】
図6及び図7は、面発光素子の光出射面から特定の距離の照射面での照射光の照度分布を示すグラフLAである。図6,7は、大きさdが0.5mmの場合の例である。図6の(a)~(f)は、順に、距離H=5mm(10d)、距離H=7mm(14d)、距離H=8.5mm(17d)、距離H=9mm(18d)、距離H=10mm(20d)、距離H=13.5mm(27d)のそれぞれの場合を示す。図7の(a)~(d)は、順に、距離H=13mm(26d)、距離H=15mm(30d)、距離H=25mm(50d)、距離H=35mm(70d)のそれぞれの場合を示す。
【0057】
図6の(a)~(e)に示される場合、すなわち、距離Hが10d~20dの範囲である場合には、中央部分において比較的均一な照度分布が得られており、且つ、比較的高光量となった。一方、図6の(f)に示される場合には、すなわち、距離Hが27dである場合には、中程度の光量が得られているものの、中央部分で照度分布が不均一となった。他方、図7の(b)~(d)に示される場合、すなわち、距離Hが30d以上である場合には、光源から十分に離れた結果として全体的に均一な照度分布が得られているものの、十分な光量が得られていない。
【0058】
これに対して、距離Hが26dである図7の(a)では、図6の(f)と比較して中央部分の照度分布が均一であり、且つ、高光量が得られた。このことから、照度分布が均一化され、且つ、相対的に高光量が得られるのは、距離Hが26d以下となる場合であるとの知見が得られた。このように、指向性を高めるためのレンズ部103bと併せて使用される面発光素子102では、その光出射面102sの大きさdの26倍以内の近い距離範囲で、比較的に高光量であり、且つ均一な照度分布が得られるのである。
【0059】
図8の(a)は、本実施形態に係る照射光学系C1により結像された照射光L1の光量を示す図である。また、図8の(b)は、本実施形態に係る照射光学系C1により結像された照射光L1のシミュレーション光量を示す図である。図8に示されるように、上記の距離範囲に設置された光整形部材120により照射光L1を整形し、且つ、第1レンズ111により結像することにより、免疫クロマト試験片500に対してより均一光照射が可能となる。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る照射光学系C1では、上記の距離範囲内に配置された光整形部材120の光入射面121での照射光L1の像(スリット120sの像)を、第1レンズ111で免疫クロマト試験片500に結像することにより、免疫クロマト試験片500に対してより均一な光照射が可能となる。照射光学系C1を備える照射装置100、及び光学測定装置1についても、同様の効果を奏することが可能である。特に、光学測定装置1では、上記の照射光学系C1及び照射装置100によって均一な光照射を受けた免疫クロマト試験片500(蛍光試薬)からの検出光L2を検出することにより、安定した測定が可能となる。
【0061】
また、本実施形態に係る照射光学系C1は、光源101と第1レンズ111との間に配置され、第1レンズ111で生じる収差を補正するための第2レンズ112を備えている。このため、より均一な光照射が可能となる。
【0062】
また、本実施形態に係る照射光学系C1では、第2レンズ112は、光源101と光整形部材120との間に配置されており、光源101から出射された照射光L1の指向性を高める機能を有している。このため、照射光L1の拡散により照射光L1が第1内壁面132にあたって吸収されることによるロスが低減される。
【0063】
また、本実施形態に係る照射光学系C1では、第2レンズ112は、光整形部材120に固定されている。このため、第2レンズ112を別途に保持する機構や位置決めすることが不要となる。
【0064】
また、本実施形態に係る照射光学系C1では、光源101は、面発光素子102を封止する光透過性の樹脂部103を含み、レンズ部103bは、樹脂部103に形成されて面発光素子102と一体化されている。このため、面発光素子102及びレンズ部103bの取り扱いや位置決めが容易となる。
【0065】
また、本実施形態に係る照射光学系C1は、光源101と第1レンズ111との間に設けられ、照射光L1のうちの一部の波長成分を第1レンズ111に向けて選択的に透過するための第1波長選択フィルタ125を備えている。このため、照射光L1のうちの一部の波長成分を選択的に免疫クロマト試験片500に照射することが可能となる。
【0066】
本実施形態に係る照射装置100は、上記の照射光学系C1と、照射光学系C1を収容する筐体130と、を備える。筐体130は、照射光L1の光路が形成される第1空間部131と、第1空間部131を画定する第1内壁面132と、を含む。この照射装置100によれば、上述したように、照射光学系C1と同様の効果を奏することが可能である。また、この照射装置100によれば、上記の照射光学系C1が筐体に収容されるため、その取り扱いが容易となる。
【0067】
本実施形態に係る照射装置100では、第1空間部131には、光整形部材120と第1レンズ111との間において拡幅された第1拡幅部133形成されており、第1内壁面132は、第1拡幅部133において、照射光L1の光路に交差すると共に光整形部材120側に臨む交差面135を含む。このため、光整形部材120から第1レンズ111に向けて一定以上の角度で斜めに進行する光が交差面135によってトラップされることにより、迷光の発生が抑制される。すなわち、第1拡幅部133及び交差面135は、迷光をトラップする構造として機能する。
【0068】
ここで、第1拡幅部133は、光整形部材120と第1波長選択フィルタ125との間に設けられている。換言すれば、本実施形態では、第1波長選択フィルタ125が、照射光L1の光路において、第1拡幅部133の後段に配置されている。したがって、第1波長選択フィルタ125に向けて一定以上の角度で斜めに進行する光が交差面135によってトラップされる結果、第1波長選択フィルタへの照射光L1の入射角度が制限される。
【0069】
一例として、第1波長選択フィルタ125は誘電体多層膜フィルタを含む場合があるが、この場合、誘電体多層膜フィルタへの照射光L1の入射角度が大きくなると、フィルタリング特性が低下するおそれがある。したがって、上記のように第1拡幅部133及び交差面135によって第1波長選択フィルタ125への入射角度を制限することにより、第1波長選択フィルタ125におけるフィルタリング特性の低下を抑制し、照射光L1のうちの一部の波長成分のみをより確実に選択的に透過させること(迷光の発生を抑制すること)が可能となる。
【0070】
なお、第1拡幅部133及び交差面135による迷光の抑制効果は、その後段側に誘電体多層膜フィルタを含む第1波長選択フィルタ125が設けられる場合に特に有効ではあるものの、その場合に限らず、単純に、第1空間部131内を一定以上の角度で斜めに進行する光をトラップすることで発揮され得る。
【0071】
また、本実施形態に係る照射装置100は、照射光L1の光路に臨むように第1内壁面132に設置され、光源101から出射されて拡散する照射光L1の一部を検出することにより、光源101から出射された照射光L1の光量を検知するための第1光検出器140を備えている。このため、照射光L1の光量をモニタすることが可能となる。
【0072】
また、本実施形態に係る照射装置100は、照射光L1の光量を示す検出信号を第1光検出器140から入力しつつ、当該光量が一定となるように面発光素子102を駆動するための駆動回路50を備えている。このため、安定した光量での光照射が可能となる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る照射装置100では、筐体130は、照射光L1に対して吸収性を有する材料からなってもよい。或いは、本実施形態に係る照射装置100では、筐体130は、照射光L1により自家蛍光が生じない材料からなってもよい。これら場合、迷光の発生がより確実に抑制される。
【0074】
ここで、本実施形態に係る光学測定装置1は、上記の照射装置100と、照射光L1が照射された免疫クロマト試験片500(蛍光試薬)からの検出光L2を検出するための検出光学系C2と、を備えている。筐体130は、検出光学系C2をさらに収容すると共に、検出光L2の光路が形成される第2空間部171と、第2空間部171を画定する第2内壁面172と、を含む。そして、検出光学系C2は、検出光L2を検出するための第2光検出器150と、検出光L2を第2光検出器150に向けて集光するための第3レンズ153と、を備える。この光学測定装置1によれば、上記の照射光学系C1及び照射装置100によって均一な光照射を受けた免疫クロマト試験片500からの検出光L2を検出することにより、免疫クロマト試験片500の安定した測定が可能となる。
【0075】
また、本実施形態に係る光学測定装置1は、第3レンズ153と第2光検出器150との間に設けられ、検出光L2のうちの一部の波長成分を第2光検出器150に向けて選択的に透過するための第2波長選択フィルタ160を備えている。このため、検出光L2のうちの一部の波長成分を選択的に検出することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態に係る光学測定装置1では、第2空間部171には、第3レンズ153と第2波長選択フィルタ160との間において拡幅された第2拡幅部173が形成されており、第2内壁面172は、第2拡幅部173において、検出光L2の光路に交差すると共に第3レンズ153側に臨む交差面174を含んでいる。このため、第3レンズ153から第2波長選択フィルタ160に向けて一定以上の角度で斜めに進行する光が交差面174によってトラップされることにより、第2波長選択フィルタ160に入射する検出光L2の入射角の範囲が制限される。
【0077】
上述したように、第2波長選択フィルタ160は、誘電体多層膜フィルタ161を含むため、フィルタリング特性の入射角度依存性を有する。したがって、上記のように第2拡幅部173及び交差面174によって第2波長選択フィルタ160への入射角度を制限することにより、第2波長選択フィルタ160におけるフィルタリング特性の低下を抑制し、検出光L2のうちの一部の波長成分のみをより確実に選択的に透過させること(迷光の発生を抑制すること)が可能となる。したがって、高精度での測定が可能となる。
【0078】
このことは、図9に示される検出結果からも理解される。すなわち、図9の(a)は、第2拡幅部173及び交差面174による迷光のトラップ構造を有さない場合の第2光検出器150の受光面での検出光L2の光量を示し、図9の(b)は、第2拡幅部173及び交差面174による迷光のトラップ構造を有する場合の第2光検出器150の検出面での検出光L2の光量を示す。図9に示されるように、本実施形態に係る迷光のトラップ構造を用いることにより、迷光に依るノイズが低減して均一な検出結果が得られている。
【0079】
なお、第2拡幅部173及び交差面174による迷光の抑制効果は、その後段側に誘電体多層膜フィルタ161を含む第2波長選択フィルタ160が設けられる場合に特に有効ではあるものの、その場合に限らず、単純に、第2空間部171内を一定以上の角度で斜めに進行する光をトラップすることで発揮され得る。
【0080】
また、本実施形態に係る光学測定装置1では、第2波長選択フィルタ160は、誘電体多層膜フィルタ161と、誘電体多層膜フィルタ161よりも第2光検出器150側に配置された色ガラスフィルタ162と、を含む。上述したように、誘電体多層膜フィルタの特性は、入射角度依存性を有する。これに対して、色ガラスフィルタ162を設けることにより、第2波長選択フィルタ160の全体としての入射角度依存性が低減され、より広い範囲の入射角度に対して、より効果的に一部の波長成分のみを選択的に透過させることが可能となる。特に、第2光検出器150に向かって、誘電体多層膜フィルタ161、色ガラスフィルタ162の順番で配置することがより効果的である。
【0081】
また、本実施形態に係る光学測定装置1は、検出光L2の検出に応じて第2光検出器150から出力される電流信号を電圧信号に変換するための電流電圧変換器20を備え、第2光検出器150は、電流電圧変換器20の基板21に実装されている。このため、第2光検出器150と電流電圧変換器20との間において検出信号にノイズが加わることが避けられ、ノイズが低減される。
【0082】
本発明に係る光学測定装置では、照射光L1は、免疫クロマト試験片500(蛍光試薬)を励起するための励起光を含み、検出光L2は、励起光の照射に応じて免疫クロマト試験片500(蛍光試薬)が放出する蛍光を含んでいる。このため、安定した蛍光測定が可能となる。
【0083】
以上の実施形態は、本発明の一態様を説明したものである。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されず、上述した照射光学系C1、照射装置100、及び、光学測定装置1を任意に変形したものとされ得る。
【0084】
例えば、上述した光学測定装置1は、少なくとも第2光検出器150及び電流電圧変換器20を覆うように筐体130に設けられた金属シールドを備えてもよい。金属シールドは、一例として、筐体130の側面全体を覆うように設けることができる。この場合、ノイズがより低減される。
【0085】
また、第2レンズ112は、光整形部材120と第1レンズ111との間に配置されてもよい。この場合であっても、第2レンズ112は、光整形部材120に固定されていてもよい。だだし、第2レンズ112は、光整形部材120と別に筐体130に固定されていてもよい。また、照射光L1の光軸に沿った方向からみたときの光整形部材120の光通過孔の形状は、測定対象部504の形状に対応した形状であれば、スリット120sのような長手方向を有する長方形状に限らず、他の形状(例えば円形や楕円形等)であってもよい。
【0086】
また、第1波長選択フィルタ125及び第2波長選択フィルタ160は、上述した構成に限らず、任意に変更され得る。例えば、第1波長選択フィルタ125も、第2波長選択フィルタ160と同様に、誘電体多層膜フィルタと(例えば誘電体多層膜フィルタよりも第1レンズ111側に配置された)色ガラスフィルタとを含んでもよいし、色ガラスフィルタのみを含んでもよい。同様に、第2波長選択フィルタ160も、誘電体多層膜フィルタ161及び色ガラスフィルタ162の一方のみを含んでもよい。
【0087】
また、光源101は、面発光素子102とレンズ部103bとが一体化された砲弾型LEDとして構成される場合に限定されず、面発光素子102とレンズ部103bとが別体に構成されてもよい。
【0088】
さらに、上記実施形態においては、蛍光イムノクロマト法に用いられる光学測定装置1について説明したが、光学測定装置1は、別の用途に用いられ得る。この場合、照射光L1が対象物を励起するための励起光を含まない場合もあるし、検出光L2が励起光の照射により対象物から放出された蛍光を含まない場合もある。
【符号の説明】
【0089】
1…光学測定装置、20…電流電圧変換器、50…駆動回路、100…照射装置、101…光源、102…面発光素子、102s…光出射面、103…樹脂部(透光部)、103b…レンズ部、111…第1レンズ、112…第2レンズ、120…光整形部材、120s…スリット(光通過孔)、121…光入射面、131…第1空間部、132…第1内壁面、133…第1拡幅部、135…交差面(第1交差面)、140…第1光検出器、150…第2光検出器、160…第2波長選択フィルタ、161…誘電体多層膜フィルタ、162…色ガラスフィルタ、171…第2空間部、172…第2内壁面、173…第2拡幅部、174…交差面(第2交差面)、C1…照射光学系、C2…検出光学系、L1…照射光(第1光)、L2…検出光(第2光)。
図1
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図9