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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118483
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】補修設備
(51)【国際特許分類】
   E21F 13/02 20060101AFI20220805BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20220805BHJP
   E02B 9/04 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
E21F13/02
E21D11/10 A
E02B9/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015051
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 正宏
(72)【発明者】
【氏名】川田 勇
(72)【発明者】
【氏名】大熊 広樹
(72)【発明者】
【氏名】東江 柊斗
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA04
2D155CA03
2D155DA02
2D155KC02
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】設備や材料ロスにかかわるコストを抑えたうえで、作業が複雑化することなく、容易に、既設の地下空間の内壁面を補修できる補修設備を提案する。
【解決手段】補修設備1は、コンクリートを積載可能で、且つ昇降自在に構成される荷台3を有し、地下導水路10(地下空間)を走行可能な小型不整地運搬車4を備えている。これにより、設備や材料ロスにかかわるコストを抑えたうえで、作業が複雑化することなく、容易に、既設の地下導水路10の内壁面を補修することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設された、小開口で任意方向に延びる地下空間の内壁面を補修する補修設備であって、
該補修設備は、コンクリートを積載可能で、且つ昇降自在に構成される荷台を有し、前記地下空間を走行可能な運搬車を備えることを特徴とする補修設備。
【請求項2】
前記荷台は、前後一対の前壁部及び後壁部と、左右一対の側壁部と、を有し、
前記側壁部は、その下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の補修設備。
【請求項3】
前記荷台は、前記側壁部が回動した際に現出される前記側壁部の前端と前記前壁部との間の空間を塞ぐ前側の閉塞板部と、前記側壁部が回動した際に現出される前記側壁部の後端と前記後壁部との間の空間を塞ぐ後側の閉塞板部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の補修設備。
【請求項4】
前記運搬車は、電動により自走する構成であることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の補修設備。
【請求項5】
前記補修設備は、前記地下空間の左右の両内壁面から間隔を置いてそれぞれ着脱自在に立設される左右一対の型枠を備え、
該型枠は、対向する前記地下空間の内壁面に固定されたアンカー部材により支持されることを特徴とする請求項1~4いずれかに記載の補修設備。
【請求項6】
前記荷台が上昇した状態で、前記荷台の側壁部が回動すると、該側壁部がその先端に向かって下方傾斜して、前記荷台内のコンクリートを前記型枠と前記地下空間の内壁面との間に流下させる構成であることを特徴とする請求項5に記載の補修設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設された、小開口で任意方向に延びる地下空間(例えば、地下導水路)の内壁面を補修するための補修設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本では、高度経済成長(1954年頃)によって、都市部及び山間部共に数多くのインフラ施設工事が行われた。当時工事が行われた土木構造物は、現在60年以上が経過しており、その劣化が著しくなっている。また、近年の豪雨や巨大台風による土木構造物への被害も各地で多く発生しており、これらの土木構造物に対して、抜本的な改修・補修工事が必要となっている。
【0003】
これらの土木構造物の補修工事の対象のひとつとして、山間部に備えられた、特に、水力発電や農業用の水を供給するための河川や地下導水路が挙げられる。その中でも、高さ及びその幅が1.5m程度の小開口で任意方向に延びる地下導水路は、コンクリートを巻き立てているものと、岩盤を素堀りしたものとがあり、コンクリートのひび割れ、鉄筋の腐食、岩盤部の亀裂などの劣化が顕著である。
【0004】
そして、従来の補修方法としては、劣化の度合いによって、開削して既設の地下導水路を取り壊し、改修または新設する方法が地下導水路の入り口近傍においては最も容易で安価である。しかしながら、山々が連なる山間部ではこの方法が適用できる場所が限られる。また、開削による湧水の処理に大きな費用がかかることから、施工方法として採用できないことが多い。そのために、開削を実施できない場所については、地下導水路を、その内部より補修を行う必要がある。なお、補修する方法として特許文献1には、トンネル掘削機を用いて施工される導水路トンネルが記載されている。しかし直線区間が少なく、急カーブが多い地下導水路ではセグメントの構築が困難となる。したがって、コンクリートを巻き立てている箇所に関しては、地下導水路の内壁面の既設コンクリートを一旦取り壊し、改めてトンネルの線形に応じてコンクリートにて巻き立てる(覆工)方法や、既設コンクリートを取り壊さずにコンクリート表面を直接補修する方法が採用されることとなる。一方、岩盤の素堀り箇所に関しては、岩盤の内壁面に新たにコンクリートを巻き立てる(覆工)方法が採用されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-202033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既設の地下導水路は、高さ及びその幅が1.5m程度の小開口であり、またこのような地下導水路は、一般的な道路トンネルとは異なり、水を流すことが用途であるために、直線区間が少なく、曲率が小さい急カーブな箇所が多く点在している。そのために、地下導水路の内壁面にコンクリートを新設または補修する装置として、道路トンネル等を施工する際に一般的に使用されるセントル(アーチ型の移動式型枠、一般的な長さは例えば10m程度)を使用することは現実的ではない。つまり、地下導水路の急カーブにセントルを通過させるためには、いったんセントルを解体し、通過後に組み立てるなどの作業が必要となり、作業に要する工程面や設備費などコスト面等の観点から効率的ではなく、現実的でない。
【0007】
しかも、この地下導水路は、坑口間の距離が1km以上となる箇所もあり、坑口からポンプ圧送によりコンクリートを供給するためには、中継ポンプが複数台必要となる。複数の中継ポンプを採用すると、これら中継ポンプを繋ぐ配管内に残留するコンクリートの処理が必要となり、材料ロスや処理にかかる作業も要し、好ましくない。それに加え、地下導水路は、小開口であるために、固定式の中継ポンプを設置すると、地下導水路内における作業員の往来も困難になり作業の妨げになる。また、移動式のコンクリート供給方法としては、軌条設備を設け、機関車に小型のアジテーターカーを牽引させて運搬する方法がある。しかしながら、機関車とアジテーターカーとが連結された車両全体が長いために、上記セントルの場合と同様に、坑内で急カーブの箇所を通過できないなどの不都合が生じる虞があり、採用できない。
【0008】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、設備や材料ロスにかかわるコストを抑えたうえで、作業が複雑化することなく、容易に、既設の地下空間の内壁面を補修できる補修設備を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、既設された、小開口で任意方向に延びる地下空間の内壁面を補修する補修設備であって、該補修設備は、コンクリートを積載可能で、且つ昇降自在に構成される荷台を有し、前記地下空間を走行可能な運搬車を備えることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、車長が短く、動力が付与される運搬車を採用することで、作業者が運搬車の運転操作からコンクリート打設までの作業を容易に行うことができる。また、荷台にコンクリートを積載することで、急カーブ等が点在している地下空間であっても、車長が短い運搬車により地下空間内の打設箇所に容易にコンクリートを運搬することができる。また、荷台は昇降自在に構成されているので、荷台内のコンクリートを容易に地下空間の内壁面に打設することができる。これにより、上述したセントルや中継ポンプ等を必要としないので、設備や材料ロスにかかわるコストを抑えることができる。しかも、作業者は、運搬車を操作して、コンクリート打設する作業だけであるので、その作業が複雑化することがなく、容易に、既設の地下空間の内壁面を補修することができる。なお、荷台は、その水平状態を維持した状態で昇降する構成に加え、荷台の底壁部が、運搬車の車幅方向のいずれか一方に向かって下方傾斜するように昇降する構成を含む。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した発明において、前記荷台は、前後一対の前壁部及び後壁部と、左右一対の側壁部と、を有し、前記側壁部は、その下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動自在に構成されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、運搬車が地下空間内の打設箇所に到着すると、電動または手動にて、荷台の側壁部を、その下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動させることで、荷台内のコンクリートを、容易に、地下空間の内壁面に打設することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載した発明において、前記荷台は、前記側壁部が回動した際に現出される前記側壁部の前端と前記前壁部との間の空間を塞ぐ前側の閉塞板部と、前記側壁部が回動した際に現出される前記側壁部の後端と前記後壁部との間の空間を塞ぐ後側の閉塞板部と、を備えることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、荷台に備えた前後一対の閉塞板部により、側壁部が回動した際に現出される側壁部の前端と前壁部との間の空間、及び側壁部の後端と後壁部との間の空間をそれぞれ塞ぐので、側壁部を回動させた際、コンクリートが荷台の前後側に零れ落ちることなく、荷台内のコンクリートを所定の打設位置に適確に流下させることができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1~3いずれかに記載した発明において、前記運搬車は、電動により自走する構成であることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、換気することが困難な地下空間内が排気ガス等で汚染されることなく、地下空間内の空気質の低下を抑制することができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1~4いずれかに記載した発明において、前記補修設備は、前記地下空間の左右の両内壁面から間隔を置いてそれぞれ着脱自在に立設される左右一対の型枠を備え、該型枠は、対向する前記地下空間の内壁面に固定されたアンカー部材により支持されることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、型枠を、対向する地下空間の内壁面に固定されたアンカー部材により支持しているので、地下空間の左右の両内壁面と対向するようにそれぞれ設置される左右一対の型枠間を運搬車が支障なく走行することが可能になる。要するに、型枠を、対向する地下空間の内壁面に固定されたアンカー部材により支持しているので、左右一対の型枠間に運搬車の走行路を確保することができる。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5に記載した発明において、前記荷台が上昇した状態で、前記荷台の側壁部が回動すると、該側壁部がその先端に向かって下方傾斜して、前記荷台内のコンクリートを前記型枠と前記地下空間の内壁面との間に流下させる構成であることを特徴とするものである。
請求項6の発明では、荷台内のコンクリートを、その自重により、スムーズに、その側壁部を経由して、地下空間の内壁面と型枠との間に流下させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る補修設備よれば、設備や材料ロスにかかわるコストを抑えたうえで、作業が複雑化することなく、小開口で長距離な、急カーブが多く点在する既設の地下空間において、容易に、その内壁面を補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る補修設備に採用した小型不整地運搬車であって、荷台が最も下降した状態の側面図である。
図2図2は、本実施形態に係る補修設備に採用した小型不整地運搬車であって、荷台が最大限上昇した状態の側面図である。
図3図3は、本実施形態に係る補修設備に採用した小型不整地運搬車であって、荷台が最大限上昇して、一方の側壁部が車幅方向外方に向かって回動した状態の後面図である。
図4図4は、生コンミキサー車から、本実施形態に係る補修設備に採用した小型不整地運搬車の荷台内にコンクリートを積載する様子を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る補修設備に採用した小型不整地運搬車が、一対の型枠間を走行または停止された様子を示す後面図である。
図6図6は、本実施形態に係る補修設備に採用した小型不整地運搬車の荷台の一方の側壁部が回動して、荷台内のコンクリートが側壁部を経由して、一方の型枠と地下導水路の内壁面との間に流下される様子を示す後面図である。
図7図7は、図6と同様の斜視図である。
図8図8は、左右一対の型枠と地下導水路の両壁面との間にコンクリートがそれぞれ打設された状態を示す図である。
図9図9は、図8の状態から左右一対の型枠を取り除いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図1図9に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る補修設備1は、既設された、高さ及び開口幅が共に1.5m程度の小開口で任意方向に延びる地下導水路10(地下空間)の左右の両内壁面を補修するためのものである。図5及び図6に示すように、本実施形態に係る補修設備1は、コンクリートを積載可能で、且つ昇降自在に構成される荷台3を有し、地下導水路10を走行可能な小型不整地運搬車4(運搬車)と、地下導水路10の左右の両内壁面から間隔を置いてそれぞれ着脱自在に立設される左右一対の型枠5、5と、を備えている。
【0018】
図1図3に示すように、小型不整地運搬車4は、不整地を走行するために無限軌道13(一般的にキャタピラーとも称される)を備えている。これにより、地下導水路10内の地面(走行面)が凹凸状であっても、障害なく走行することができる。その結果、地下導水路10の地面に対して、細かな不陸整生を行う必要はない。小型不整地運搬車4は、作業者が操作部位(図示略)を操作することで、電動にて前後方向に自走するものである。本実施形態では、小型不整地運搬車4は、その幅長が約0.8mであり、その車長(前後長)が約2.0mである。そして、当該小型不整地運搬車4は、車長が短いために、地下導水路10において、曲率が小さい急カーブな箇所も問題なく走行することが可能となる。
【0019】
小型不整地運搬車4は、無限軌道13上に荷台3を備えている。荷台3は、上方が開放されており、底壁部16と、前後一対の前壁部17及び後壁部18と、左右一対の側壁部19、19と、側壁部19が下端部を中心に車幅方向(左右方向)外側に向かって回動した際、側壁部19と前後壁部17、18との間の空間をそれぞれ塞ぐ前後一対の閉塞板部20、20と、を備えている。前後一対の閉塞板部20、20は、左右一対の側壁部19、19に対して、左右一対備えられている。この荷台3内にコンクリートが積載される。
【0020】
荷台3は、作業者が操作部位(図示略)を操作することで、水平状態を維持した状態で昇降可能な構成である。本実施形態では、荷台3が最も下降した状態では、荷台3の上端まで高さは約0.8mであり、荷台3の上端が後述する型枠5の天端よりも低くなるように設定されている。一方、荷台3が最も上昇した状態では、荷台3の下端までの高さは約1.5mとなり、荷台3の下端が後述する型枠5の天端よりも高くなるように設定されている。本実施形態では、荷台3の幅長は約0.8m、その前後長は約1.2m、その高さは約0.3mであり、またその容量は約0.3mである。なお、荷台3の昇降動作において、水平状態を維持した状態で昇降可能な構成に加えて、荷台3の底壁部16が、車幅方向(左右方向)のいずれか一方に向かって下方傾斜するように昇降する構成を含んでもよい。
【0021】
図3を参照して、荷台3の、左右一対の側壁部19、19は、その下端部を中心に車幅方向に沿って回動自在にそれぞれ構成される。左右一対の側壁部19、19の前端と、前壁部17の左右方向略中央部位とは、チェーンブロック23、23にてそれぞれ連結されている。同様に、左右一対の側壁部19、19の後端と、後壁部18の左右方向略中央部位とは、チェーンブロック23、23にてそれぞれ連結されている。そして、作業者により、前後一対のチェーンブロック23、23の操作レバー等の操作部位を操作することで、左右一対のうちいずれか一方の側壁部19を、その下端部を中心に車幅方向に沿って徐々に回動させることができる。
【0022】
前側の左右一対の閉塞板部20、20は、左右一対の側壁部19、19の前端部にそれぞれ連結される。閉塞板部20は、略扇状に形成される。閉塞板部20は、側壁部19が回動しない状態では前壁部17の左右方向略半分領域を前方から重なるように配置される。同様に、後側の左右一対の閉塞板部20、20は、左右一対の側壁部19、19の後端部にそれぞれ連結される。閉塞板部20は、側壁部19が回動しない状態では後壁部18の左右方向略半分領域を後方から重なるように配置される。
【0023】
そして、その状態から、前後一対のチェーンブロック23、23の操作部位を操作することで、側壁部19が、その下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動すると、前側の閉塞板部20が、前壁部17の左右方向端部と、側壁部19の前端部との間の空間を塞ぐ位置に移動すると共に、後側の閉塞板部20が、後壁部18の左右方向端部と、側壁部19の後端部との間の空間を塞ぐ位置に移動する。その結果、荷台3内のコンクリートを、側壁部19が回動した後、前後一対の閉塞板部20、20によりこぼれ落ちることなく、側壁部19に沿って所定の打設位置に適確に流下させることが可能になる。
【0024】
本実施形態に係る補修設備1は、図5を参照して、地下導水路10の左右の両内壁面から間隔を置いてそれぞれ着脱自在に立設される左右一対の型枠5、5を備えている。型枠5は、地下導水路10の内壁面に固定された複数のアンカー部材26、26により支持されている。なお、型枠5は、図7も参照して、地下導水路10の内壁面から間隔を置いて、地下導水路10に沿って立設される長手側型枠28と、該長手側型枠28の長手方向両端と地下導水路10の内壁面との間を塞ぐように配置される一対の短手側型枠29、29とからなる平面視コ字状を呈している。なお、コ字状の型枠5、5を地下導水路10に沿って一定間隔を置いて配置し、これら型枠5、5内にコンクリートを打設して固化させた後は、間に空間を有するコンクリート壁部間を長手側型枠28で塞ぎ、短手側型枠29、29を使用することなく、コンクリート打設することが可能である。
【0025】
図6を参照して、型枠5の高さは、打設されるコンクリートの高さに対応して適宜設定される。なお、本実施形態では、型枠5の高さは、打設されるコンクリートの高さ約1.0mに対応して約1.0mに設定されている。左右一対の型枠5、5の長手側型枠28、28間の距離は、小型不整地運搬車4の幅長より大きく、小型不整地運搬車4は、何ら問題なく、左右一対の型枠5、5の長手側型枠28、28間を走行することができる。
【0026】
次に、本実施形態に係る補修設備1により、地下導水路10の左右の両内壁面を補修する補修方法を図4図9に基づいて説明する。例えば、高さが約1.5m及び開口幅が約1.5mである馬蹄型の地下導水路10の左右の両内壁面を、無筋コンクリートで覆工する施工方法について以下に説明する。また、覆工される無筋コンクリートは、その厚みが20cmであり、高さ1.0mである。
【0027】
まず、図5に示すように、地下導水路10のコンクリート打設箇所に左右一対の型枠5、5を設置する。具体的には、上述したように、左右一対の型枠5、5(長手側型枠28及び短手側型枠29)を、地下導水路10の左右の両内壁面に固定された複数のアンカー部材26、26により、地下導水路10の左右の両内壁面から間隔(約20cm)を置いてそれぞれ立設する。このとき、本実施形態では、左右一対の型枠5、5間の作業用通路(小型不整地運搬車4の走行路)の幅長は、約1.1m(=1.5m-0.2m×2(左右の両内壁面))である。また、本実施形態では、左右一対の型枠5、5の天端から地下導水路10の天井部までのクリアランスは約50cmとなっている。なお、左右一対の型枠5、5における地下導水路10の延びる方向の長さは、補修工程等に基づいて適宜設定される。
【0028】
また、図4を参照して、地下導水路10の坑口外方にて小型不整地運搬車4を停止させて、生コンミキサー車30から小型不整地運搬車4の荷台3内にコンクリートを積載する。このとき、小型不整地運搬車4の荷台3は最も下降させた状態としている。なお、本実施形態では、生コンミキサー車30から小型不整地運搬車4の荷台3内へのコンクリート積載量は約0.28mである。この準備及び積載には5分程度を要する。
【0029】
続いて、図5に示すように、作業者が小型不整地運搬車4の操作部位を操作することで、小型不整地運搬車4を、地下導水路10内の左右一対の型枠5、5が立設された打設箇所まで自走させる。このとき、小型不整地運搬車4は、左右一対の型枠5、5間を走行する。なお、本実施形態では、小型不整地運搬車4の、地下導水路10内(カーブ箇所や直線区間等を含む)における平均走行速度は4km/h程度であり、人が歩く程度の速度である。仮に、坑口から打設箇所までの坑内運搬距離が1km程度である場合、15分程度で運搬可能となる。
【0030】
続いて、図6に示すように、作業者が操作部位を操作することで、小型不整地運搬車4の荷台3を、その下端が一対の型枠5、5の天端よりも高い位置となるまで最大限上昇させる。続いて、図7も参照して、作業者が、左右一対のうち一方の、前後一対のチェーンブロック23、23の操作部位を操作することで、荷台3の一方の側壁部19が、その下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動する。すると、一方の側壁部19の先端が一方の型枠5の長手側型枠28の上面で停止する。
【0031】
このとき、一方の側壁部19は、その先端に向かって下方傾斜した姿勢が維持される。また、前側の一方の閉塞板部20が、前壁部17の左右方向一端部と、一方の側壁部19の前端部との間の空間を塞ぐ位置に移動すると共に、後側の一方の閉塞板部20が、後壁部18の左右方向一端部と、一方の側壁部19の後端部との間の空間を塞ぐ位置に移動する。そして、荷台3内のコンクリートが自重にて、前後一対の閉塞板部20、20により囲まれた一方の側壁部19に沿って、左右一対のうち一方の型枠5と地下導水路10の内壁面との間に流下される。本実施形態では、荷台3内のほぼ全てのコンクリート(0.28m)が、一方の型枠5と地下導水路10の内壁面との間に流下される。なお、一方の型枠5と地下導水路10の内壁面との間にコンクリートを打設する打設作業に要する時間は5分程度となる。
【0032】
続いて、荷台3内のコンクリートを全て使い切ると、小型不整地運搬車4を、荷台3を最も下降させつつ坑口まで後進させて荷台3にコンクリートを再び積載した後、再び同じ箇所までコンクリートを運搬する。続いて、上述した作業を行い、荷台3内のほぼ全てのコンクリートを、一方の型枠5と地下導水路10の内壁面との間に再び流下させる。この作業を繰り返すことで、一方の型枠5と地下導水路10の内壁面との間の全域にコンクリートを充填する。
【0033】
その後、再び、小型不整地運搬車4を後進させて、その荷台3にコンクリートを積載して、同じ箇所までコンクリートを運搬する。続いて、上述した同様の作業、すなわち、左右一対のうち他方の、前後一対のチェーンブロック23、23の操作部位を操作することで、荷台3の他方の側壁部19を、その下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動させる作業等を行い、左右一対のうち他方の型枠5と地下導水路10の内壁面との間にコンクリートを流下させる。この作業を繰り返すことで、他方の型枠5と地下導水路10の内壁面との間の全域にコンクリートを充填する。そして、図8を参照して、本実施形態に係る補修設備1により、左右一対の型枠5と、地下導水路10の左右の両内壁面との間の全域にコンクリートをそれぞれ打設、充填することができる。その後、図9を参照して、適宜タイミングにて、左右の型枠5、5を取り外す。なお、図8及び図9の符号33は無筋コンクリート層を示す。
【0034】
そして、上述したように、型枠5の設置からコンクリート充填までの作業を繰り返すことにより、地下導水路10の延びる方向に沿ってその左右の両内壁面をコンクリートにより順次補修する、すなわち、その左右の両内壁面をコンクリートにより順次覆工することができる。なお、本実施形態において、コンクリート打設後、その打設箇所から坑口までの帰路(距離約1km)に約15分を要したとしても、合計約40分(コンクリート積載時間約5分+行帰走行時間約30分+打設時間約5分)程度にて、0.28m程度のコンクリートを打設することが可能となる。
【0035】
その結果、作業時間6時間/日では、小型不整地運搬車4を9回往復させることができ、2.5m以上(2.52m=0.28m×9)/日のコンクリート打設が可能にある。そして、地下導水路10の左右の両内壁面にコンクリート打設して進捗する場合、そのコンクリート打設長さが約6.3m(=2.52m/0.2m/1.0m/2(左右の両内壁面))/日程度になる。このように、本実施形態に係る補修設備1において小型不整地運搬車4を採用すれば、セントルや中継ポンプ等を必要とせず、設備や材料ロスにかかわるコストを抑えることができ、また、作業者による作業を阻害することもなく、その作業効率を大幅に向上させることができる。
【0036】
なお、小型不整地運搬車4を直列に複数台配置して、坑口外方でのコンクリート積載、打設箇所までのコンクリート運搬及びコンクリート打設を繰り返すことで、この施工進捗を調整することが可能になる。すなわち、小型の生コンミキサー車30の場合、容量が2.0mであれば、小型不整地運搬車4を7台程度準備することがコンクリートの品質確保(1~1.5時間以内に打設)の面から効率的である。そして、小型不整地運搬車4を7台(コンクリート積載量が約0.28m/1台)備え、坑口からの距離が1km程度の打設箇所では、7台の小型不整地運搬車4をそれぞれ9往復(作業時間6時間/日)させることができ、約17.6m(=0.28m×7台×9回)/日程度のコンクリート打設が可能となる。
【0037】
言い換えれば、この条件にてコンクリート打設すると、地下導水路10の左右の両内壁面にコンクリート打設して進捗する場合、コンクリート打設長さが約44.0m(=17.6m/0.2m/1.0m/2(左右の両内壁面))/日程度となる。当然ながら、地下導水路1内において、打設箇所までの運搬距離(走行距離)が短い場合には、コンクリート打設長さ/日がより長くなるのは明らかである。このように、本実施形態に係る補修設備1に小型不整地運搬車4を採用すると、上述した作用効果に加え、小型不整地運搬車4に要する費用とのバランスを考慮したうえで、施工進捗等を容易に調整することができ、補修設備1として最適なものになる。
【0038】
また、本実施形態において、荷台3の昇降動作が、その底壁部16が車幅方向いずれか一方に向かって下方傾斜する構成を含むものを採用できれば、荷台3の底壁部16を、車幅方向のいずれか一方に向かって若干下方傾斜するように昇降動作させることで、荷台3内のコンクリートの、その自重による側壁部19上の流下を助勢することができる。
【0039】
しかも、本実施形態において、荷台3の昇降動作において、その底壁部16が車幅方向いずれか一方に向かって下方傾斜する構成を含むものを採用できれば、チェーンブロック23を採用せず、側壁部19をその下端部を中心に回動できる構成として、且つ、側壁部19の回動をロック及びアンロックできる構成とする。そして、荷台3を水平状態で上昇させた後、側壁部19の回動をアンロックにした状態で、荷台3の底壁部16を、車幅方向のいずれか一方に向かって若干下方傾斜するように昇降動作させれば、荷台3内のコンクリートが、その自重によって側壁部19をその下端部を中心に回動させると共に側壁部19上を徐々に流下して、コンクリートを、容易に型枠5と地下導水路10の内壁面との間に流下させることができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、作業者が、チェーンブロック23の操作部位を操作すること(手動)で、荷台3の側壁部19を車幅方向外方に向かって回動させているが、荷台3の側壁部19を電動にて車幅方向外方に向かって回動させるように構成してもよい。
【0041】
以上説明した、本発明の実施形態に係る補修設備1では、コンクリートを積載可能で、且つ昇降自在に構成される荷台3を有し、地下導水路10を走行可能な小型不整地運搬車4を備えているので、小型不整地運搬車4により地下導水路10内の打設箇所に容易にコンクリートを運搬することができる。また、荷台3は昇降自在に構成されているので、荷台3内のコンクリートを、容易に地下導水路10の内壁面に打設することができる。
【0042】
これにより、設備や材料ロスにかかわるコストを抑えることができ、しかも、狭小空間での作業者による補修作業が軽減することができ、容易に、既設の地下導水路10の内壁面を補修することができる。要するに、本発明の実施形態に係る補修設備1によれば、設備費、施工時間や材料ロス等のコスト面、作業環境及び作業内容等、その作業効率を向上させることができる。また、小型不整地運搬車4を直列に複数備えることで、その作業効率をさらに向上させることができる。
【0043】
また、本発明の実施形態に係る補修設備1では、荷台3の側壁部19は、その下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動自在に構成されている。そして、荷台3の側壁部19を、該側壁部19の下端部を中心に徐々に回動させることで、荷台3内のコンクリートを自重にて、地下導水路10の内壁面に打設することができる。これにより、作業者による補修作業をさらに軽減することができる。
【0044】
さらに、本発明の実施形態に係る補修設備1では、荷台3に備えた前後一対の閉塞板部20、20により、側壁部19が回動した際に現出される側壁部19の前端と前壁部17との間の空間、及び側壁部19の後端と後壁部18との間の空間をそれぞれ塞ぐので、荷台3内のコンクリートを適確に所定の打設位置に流下させることができ、その作業効率を向上させることができる。
【0045】
さらにまた、本発明の実施形態に係る補修設備1では、小型不整地運搬車4は、電動により自走する構成であるので、地下導水路10内の空気質の低下を抑制することができる。
【0046】
さらにまた、本発明の実施形態に係る補修設備1では、地下導水路10の左右の両内壁面から間隔を置いてそれぞれ着脱自在に立設される左右一対の型枠5、5を備え、型枠5は、対向する地下導水路10の内壁面に固定された複数のアンカー部材26、26によりそれぞれ支持される。その結果、左右一対の型枠5、5の間に、小型不整地運搬車4の走行路を確保することができ、さらに作業効率を向上させることができる。
【0047】
さらにまた、本発明の実施形態に係る補修設備1では、荷台3が上昇して、荷台3の側壁部19がその下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動すると、該側壁部19がその先端に向かって下方傾斜するように構成されている。その結果、荷台3の側壁部19がその下端部を中心に車幅方向外方に向かって回動すると、荷台3内のコンクリートが、その自重により、スムーズに、その側壁部19を経由して、地下導水路10の内壁面と型枠5との間に流下される。これにより、作業者による補修作業をさらに軽減することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 補修設備,3 荷台,4 小型不整地運搬車(運搬車),5 型枠,10 地下導水路(地下空間),17 前壁部,18 後壁部,19 側壁部,20 閉塞板部,26 アンカー部材,28 長手側型枠
図1
図2
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図9