(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118542
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】インソール
(51)【国際特許分類】
A43B 17/02 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
A43B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015126
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】503059301
【氏名又は名称】株式会社ワールドウィングエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕史
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050AA06
4F050AA11
4F050AA21
4F050EA13
4F050EA24
4F050HA13
4F050HA28
4F050HA56
4F050HA58
4F050HA59
4F050HA61
4F050HA63
4F050HA64
4F050JA02
4F050JA03
4F050JA04
4F050JA05
4F050JA06
4F050JA09
4F050JA13
(57)【要約】
【課題】人間の足の踵の形状にフィットするインソールの形状を設計することで、使用者の足、とりわけ足を痛めている人の足をも適切に保護することができるインソールを提供することを目的とする。
【解決手段】
インソールは、履物の内底部に当接し履物の踵部側に位置する後面部から内底部の長さ方向の中間位置に至る前面部まで伸張して履物の内底部を覆うとともに、後面部と前面部の間に梁部が備えられる第1の底板部材と、底板部材の上方かつ後面部の後端部から内底部の長さ方向の中間位置側に向けて所定間隔を離隔して履物の着用者の踵最後端から踵寄りの接地点の直下に載置される中間部材と、中間部材の上方に載置され中間部材を被覆する上板部材と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の内底部に当接し前記履物の踵部側に位置する後面部から前記内底部の長さ方向の中間位置に至る前面部まで伸張して前記履物の前記内底部を覆うとともに、前記後面部と前記前面部の間に梁部が備えられる第1の底板部材と、
前記底板部材の上方かつ前記後面部の後端部から前記内底部の長さ方向の中間位置側に向けて所定間隔を離隔して前記履物の着用者の踵最後端から踵寄りの真の接地点の直下に載置される中間部材と、
前記中間部材の上方に載置され前記中間部材を被覆する上板部材と、を備える
ことを特徴とするインソール。
【請求項2】
前記履物の踵部側に位置する後面部から前記内底部の長さ方向の中間位置に至る前面部まで伸張して前記第1の底板部材を覆うとともに、前記後面部と前記前面部の間に梁部が備えられる第2の底板部材が備えられる請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
前記第1の底板部材において、前記梁部が前記履物の前記内底部の内側から順に内梁部、中梁部、及び外梁部の3本形成されている請求項1に記載のインソール。
【請求項4】
前記第2の底板部材において、前記梁部が前記履物の前記内底部の内側から順に内梁部、中梁部、及び外梁部の3本形成されている請求項2に記載のインソール。
【請求項5】
梁部同士の間に穴部が形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項6】
前記第2の底板部材は、前記第1の底板部材よりも幅狭かつ硬質である請求項2に記載のインソール。
【請求項7】
前記第1の底板部材において、前記梁部の長さは前記第1の底板部材の全長の25/100ないし35/100である請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項8】
前記第1の底板部材において、前記梁部の最大幅は前記第1の底板部材の全長の5/100ないし15/100である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項9】
前記中間部材は、前記第1の底板部材の前記後面部から前記内底部の長さ方向の前記中間位置側に向けて前記第1の底板部材の全長の8/100ないし10/100の長さを離隔して前記前記第1の底板部材に載置される請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項10】
前記中間部材の中間部材前端部は、前記第1の底板部材の前記梁部の始点位置の近傍に位置する請求項1ないし9のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項11】
前記中間部材は、前記第1の底板部材の全長の35/100ないし45/100の全長である請求項1ないし10のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項12】
前記上板部材の全長は、前記第1の底板部材の全長よりも短く形成されている請求項1ないし11のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項13】
前記第2の底板部材に第1の布部材が被着され、上板部材に第2の布部材が被着される請求項2に記載のインソール。
【請求項14】
少なくとも前記第1の底板部材と前記第2の底板部材とが異なる樹脂材料から形成されている請求項2に記載のインソール。
【請求項15】
少なくとも前記第1の底板部材と前記中間部材とが異なる樹脂材料から形成されている請求項1ないし12のいずれか1項に記載のインソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインソールに関し、特に、各種の履物内に挿入され履物の着用者の足を保護するインソールに関する。
【背景技術】
【0002】
履物の底を形成するソールとして、近年、使用者の足を保護する機能性に優れるソールに関する技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ソールであって、使用者の足首を保護する機能を備えるソールが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されているソールは、アウトソールと、アウトソールに設置されヒール保護フィルムを少なくとも含む炭素繊維シートと、炭素繊維シートに設置される中敷とを備えるソール構造であり、この構造を備えることにより、使用者の足が滑りやすい地面を踏んでしまったり他人の足を踏んでしまったりして足首をひねり、重度の捻挫等の運動障害が発生するという問題点を解決し、足首保護機能が発揮されるとされている。
【0005】
特許文献1に開示されているソールの場合、インソールは平坦な1層のシートのみからなる。一般的に、人間の歩行、走行動作は三通りあることが知られる。一つ目は踵部(踵側から踵骨骨端)からつま先にかけて順次着地するとともに踵からつま先にかけて順次離地して重心を移動させることにより行われる。つまり、踵は着地および離地において最初に地面に足圧をかける部位であり、この部位を適切に保護する必要がある。人間の足の最後端は踵およびその周辺の筋肉からなり、また、踵骨最後端(踵骨骨端)から着地すると重心移動にブレーキをかける。地面と接する部分は若干浮いている。地面と接する部分は足の最後端から若干の距離を空けた部分である。このため、上記特許文献1に開示されているインソールでは、形状が平坦であり人間の足の踵寄りの真の着地点の、足裏の形状にフィットしていないため、適切に足を保護することができないという問題がある。二つ目は母指球など足指球(横アーチ側と呼ばれる)部分から着地して一つ目と同じ部分(踵)で押して進む。三つ目は一つ目と二つ目との中間型着地、つまり踵骨最下端と横アーチ部分のほぼ同時着地である。これらの3タイプは各国の民族的文化、また踵の高さ、シューズの特徴がこれらを成すことが知られている。なお、踵最後端は仮の接地点(着地点)である。対して、真の接地点は踵骨最下端部(踵骨最後部~最後端からくるぶし側に位置する踵骨最下端部)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて成されたものであり、人間の足の踵から踵寄りの接地点、土踏まず周辺の足裏の形状にフィットし、歩行、走行時の重心移動を円滑かつ容易にするインソールの形状を設計することで、使用者の足、とりわけ足を痛めている人の足をも適切に保護することができるインソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るインソールは、履物の内底部に当接し履物の踵部側に位置する後面部から内底部の長さ方向の中間位置に至る前面部まで伸張して履物の内底部を覆うとともに、後面部と前面部の間に梁部が備えられる第1の底板部材と、底板部材の上方かつ後面部の後端部から内底部の長さ方向の中間位置側に向けて所定間隔を離隔して履物の着用者の踵最後端から踵寄りの真の接地点の直下に載置される中間部材と、中間部材の上方に載置され中間部材を被覆する上板部材と、を備える。
【0009】
上記インソールにおいて、履物の踵部側に位置する後面部から内底部の長さ方向の中間位置に至る前面部まで伸張して第1の底板部材を覆うとともに、後面部と前面部の間に梁部が備えられる第2の底板部材が備えられてもよい。
【0010】
上記インソールにおいて、第1の底板部材において、梁部が履物の内底部の内側から順に内梁部、中梁部、及び外梁部の3本形成されていてもよい。また、第2の底板部材において、梁部が履物の内底部の内側から順に内梁部、中梁部、及び外梁部の3本形成されていてもよい。
【0011】
上記インソールにおいて、梁部同士の間に穴部が形成されていてもよい。
【0012】
第2の底板部材は、前記第1の底板部材よりも幅狭かつ硬質であってもよい。
【0013】
上記インソールにおいて、第1の底板部材において、梁部の長さは底板部材の全長の25/100ないし35/100であってもよい。また、上記インソールにおいて、第1の底板部材において、梁部の最大幅は底板部材の全長の5/100ないし15/100であってもよい。
【0014】
上記インソールにおいて、中間部材は、第1の底板部材の後端部から内底部の長さ方向の中間位置側に向けて第1の底板部材の全長の8/100ないし10/100の長さを離隔して第1の底板部材に載置されてもよい。
【0015】
上記インソールにおいて、中間部材の前端部は、第1の底板部材の梁部の始点位置の近傍に位置してもよい。
【0016】
上記インソールにおいて、中間部材は、第1の底板部材の全長の35/100ないし45/100の全長であってもよい。
【0017】
上記インソールにおいて、上板部材の全長は、第1の底板部材の全長よりも短く形成されていてもよい。
【0018】
上記インソールにおいて、第2の底板部材に第1の布部材が被着され、上板部材に第2の布部材が被着されてもよい。
【0019】
上記インソールにおいて、少なくとも第1の底板部材と第2の底板部材とが異なる樹脂材料から形成されていてもよい。
【0020】
少なくとも第1の底板部材と中間部材とが異なる樹脂材料から形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のインソールは、履物の内底部に当接し履物の踵部側に位置する後面部から内底部の長さ方向の中間位置に至る前面部まで伸張して履物の内底部を覆うとともに、後面部と前面部の間に梁部が備えられる第1の底板部材と、底板部材の上方かつ後面部の後端部から内底部の長さ方向の中間位置側に向けて所定間隔を離隔して履物の着用者の踵最後端から踵寄りの真の接地点の直下に載置される中間部材と、中間部材の上方に載置され中間部材を被覆する上板部材とを備えるため、人間の足の踵から踵寄りの接地点、土踏まず周辺の足裏の形状にフィットし、歩行、走行時の重心移動を円滑かつ容易にするインソールの形状を設計することができ、使用者の足、とりわけ足を痛めている人の足をも適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態によるインソールを表す分解斜視図である。
【
図2】(a)は同インソールの第1の底板部材を示す平面図、(b)は同インソールの中間部材を示す平面図、(c)は同インソールの上板部材を示す平面図である。
【
図3】(a)は同インソールの第1の底板部材と第2の底板部材とを重ね合わせた状態を示す平面図、(b)は同インソールの第1の底板部材と第2の底板部材と第1の布部材とを重ね合わせた状態を示す平面図である。
【
図4】(a)は同インソールの第1の底板部材と第2の底板部材と第1の布部材と中間部材とを重ね合わせた状態を示す平面図、(b)は同インソールの第1の底板部材と第2の底板部材と第1の布部材と中間部材と上板部材とを重ね合わせた状態を示す平面図である。
【
図5】(a)は同インソールの第1の底板部材と第2の底板部材と第1の布部材と中間部材とを重ね合わせた状態を示す斜視図、(b)は同インソールの第1の底板部材と第2の底板部材と第1の布部材と中間部材と上板部材とを重ね合わせた状態を示す斜視図である。
【
図6】同インソールの第1の底板部材と第2の底板部材と第1の布部材と中間部材と上板部材とを重ね合わせた上に第2の布部材を重ね合わせた状態を示す斜視図である。
【
図7】人間の足の骨およびその周辺の筋肉を示す解剖図である。
【
図8】人間の足と本発明のインソールとを組み合わせた状態を示す図である。
【
図9】本発明のインソールの使用状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明のインソールの使用状態を透明に示す側面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態によるインソールを表す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のインソールは、ランニングシューズ、ウォーキングシューズ、ベースボールシューズ、サッカーシューズ、バスケットボールシューズ、テニスシューズ、ゴルフシューズ、スキー、スノーボード用のブーツ等の各種のスポーツ用の靴、ブーツ類、ビジネスシューズ、パンプス、ナースシューズ、サンダル等の公知の履物の内部に挿入され、これらの履物の内底部(履物の内部側の底面)に載置、当接される。そして、インソールは、履物の着用者の足の裏が直接履物の内底部の全部または一部(目的により接する可能性がある)と接することを防ぐ。言わば、インソールは履物から着用者の足裏に伝わる衝撃を緩和するとともに、不必要なブレーキを抑制して推進力を助ける部材の一種である。これまでの多くのシューズの難点である足首の内折れとこれによる故障、ストレスを防ぐために用いることができる。
【0024】
本発明の第1実施形態のインソール1について、
図1をはじめとして各図を参照しながら説明する。
図1の分解斜視図から理解されるように、インソール1は、履物60(後出の
図9参照)の内底部61に当接する側から順に、第1の底板部材21、第2の底板部材22、第1の布部材51、中間部材30、上板部材40、第2の布部材52として積層されて備えられる。図示の実施形態では、上板部材40の上方に第2の布部材52が被着されている。また、第1の底板部材21と第2の底板部材22は底板部材2として総称されている。第2の底板部材22は省略して第1の底板部材21のみであってもよい。また、第2の底板部材22に代えて、滑り止めのようなタック感のある素材を第1の底板部材21の下に被着してもよい。
【0025】
第1の底板部材21は、履物60の内底部61に当接する部材である。なお、前述のように滑り止めのようなタック感のある素材を第1の底板部材21の下に被着する場合は第1の底板部材21は、履物60の内底部61に当接しない。さらに
図2(a)に示されるとおり、第1の底板部材21は、履物60の踵部62(
図9参照)側に位置する第1の底板部材21の後面部212から履物60の内底部61の長さ方向の中間位置に至る前面部211まで伸張する。このため、インソール1の履物60内への挿入時、履物60の内底部61は概ね半分が覆われる。さらに、第1の底板部材21には、後面部212と前面部211の間に梁部23が備えられる。
【0026】
実施形態の第1の底板部材21では、梁部23は3本形成されており、履物60の内底部61の内側(土踏まず側)から内梁部231、中梁部232、及び外梁部233の順に梁部23は形成される(
図2(a)参照)。図示では、第1の底板部材21の後面部212と前面部211を接続する形態である。なお、図示は右足用の開示であり左足用は対称であるため図示等を省略する。第1の底板部材21に複数本の梁部23が設けられることにより、歩行時に履物60から第1の底板部材21を経由して着用者の足裏に伝わる衝撃は軽減される。
【0027】
特に図示から理解されるように、梁部23同士の間には穴部234が形成されている。実施形態にあっては、内梁部231と中梁部232との間、中梁部232と外梁部233との間にそれぞれ穴部234が形成されている。第1の底板部材21において、複数の梁部23(内梁部231、中梁部232、及び外梁部233)と、当該梁部23以外の部分の厚さに強弱を設けるに当たっては、穴部234を形成する形態が好適である。また、穴部234の形成は打ち抜き(トムソン加工等)や射出成型の加工によるため、加工性に優れ量産性は高い。第1の底板部材21の梁部23の形成位置は、図示の実施形態に加え、着用者の土踏まず側(
図6の舟状骨B2側)または第5中足骨B8側に形成しても良い。履物の着用者が扁平足の場合、または骨の大きさ、形状、障害の程度等により、第1の底板部材21の梁部23の形成位置は調整される。
図7中の足の骨の名称について、B1は踵骨、B2は舟状骨、B3は楔状骨、B4は第1中足骨、B5は第2中足骨、B6は第3中足骨、B7は第4中足骨、B8は第5中足骨である。
【0028】
第1の底板部材21の梁部23の役割は概ね次のとおりである。履物の着用者が歩行する際、履物を踵から地面に着地し、
図7の踵骨B1から舟状骨B2、そして、第5中足骨B8側へと着地部分が円弧状に移動する。このとき、梁部23の外梁部233は、着用者の足の着地部分の軌跡(重心移動)と一致する位置に相当する。そこで、梁部23の外梁部233は着用者の足の着地部分の軌跡に対応するように、着用者の足裏を歩行時の衝撃から保護することができる。母指球などに並ぶ横アーチ部分で着地した場合、第四指から踵寄りの真の接地点へと力が伝達され、アキレス腱、ふくらはぎの力をストレスなく引き出す。中間型着地の場合も同様である。股関節を含む骨盤と脛とにストレスがかかると膝には割れる、あるいは開かれるような力とストレスとがかかるため、このストレスを軽減することで膝関節変形症を防止することができる。
【0029】
前述のとおり、第1の底板部材21においては、外梁部233に着用者の足の着地部分の軌跡が一致する。そうすると、歩行を続ける内に第1の底板部材21には梁部23の外梁部233に集中して荷重が多く加わりねじれが生じる。そこで、第1の底板部材21に生じるねじれの作用を緩和して第1の底板部材21自体の過剰な変形を抑制するため、内梁部231、中梁部232が形成される。内梁部231と中梁部232は穴部234により直接外梁部233と接していないため、外梁部233から伝わる、押すまたは引く等の作用は軽減される。結果として、履物内のインソール1の形状安定性に寄与する。
【0030】
第1の底板部材21において、梁部23の長さd3は第1の底板部材21の全長d1の25/100ないし35/100とされる(
図2(a)参照)。なお、内梁部231、中梁部232、及び外梁部233の長さについては、個々に長短は存在する。梁部23の長さd3が第1の底板部材21の全長d1の25/100を下回る場合、梁部23が短くなり梁部23を設ける効果(重心移動)が薄い。逆に、梁部23の長さd3が第1の底板部材21の全長d1の35/100を上回る場合、第1の底板部材21に占める梁部23が大きくなり、第1の底板部材21自体の強度維持の面から好ましくない。そこで、前述の範囲が好例である。
【0031】
第1の底板部材21において、梁部23の最大幅d4,d5,d6は第1の底板部材21の全長d1の5/100ないし15/100とされる(
図2(a)参照)。図示の実施形態では、内梁部231の幅はd4、中梁部232の幅はd5、及び外梁部233の幅はd6である。個々の梁部23の形成位置により幅は異なる。梁部23の最大幅が第1の底板部材21の全長d1の6/100を下回る場合、梁部23の幅が狭く、歩行時の重心移動を受け止めることができず、また、着用者の足裏に伝わる衝撃吸収の効果が少なくなる。梁部23の最大幅が第1の底板部材21の全長d1の10/100を上回る場合、梁部23の幅が広くなりすぎて前述のねじれ変形への抵抗力が発揮されにくくなる。
【0032】
内梁部231、中梁部232および外梁部233の厚み(足底部からの高さ)は、均一であってもよく、中梁部232と外梁部233とが同じ厚みで内梁部231が低くてもよく、中梁部232を中心高として、外梁部233は中梁部232と同一の厚みとし、内梁部231を低くしてもよい。第4指部分に相当する中梁部232が最も厚いことにより、第4指のイニシャルコンタクト(歩行時の最初の接地)が誘導できる。また、d4、d5およびd6の長さは基本的に均一であるが、変化してもよい。
【0033】
第2の底板部材22は、第1の底板部材21に当接する部材である。さらに
図3(a)に示されるとおり、第2の底板部材22は、履物60の踵部62(
図10参照)側に位置する第1の底板部材21の後面部212から履物60の内底部61の長さ方向の中間位置に至る前面部211まで伸張する。このため、インソール1の履物60内への挿入時、履物60の内底部61は概ね半分が覆われる。さらに、第2の底板部材22には、後面部212と前面部211の間に梁部24が備えられる。
【0034】
実施形態の第2の底板部材22では、梁部24は3本形成されており、履物60の内底部61の内側(土踏まず側)から内梁部241、中梁部242、及び外梁部243の順に梁部24は形成される(
図3(a)参照)。図示では、第2の底板部材22の後面部222と前面部221を接続する形態である。なお、図示は右足用の開示であり左足用は対称であるため図示等を省略する。第2の底板部材22に複数本の梁部24が設けられることにより、歩行時に履物60から第2の底板部材22を経由して着用者の足裏に伝わる衝撃は軽減される。
【0035】
特に図示から理解されるように、梁部24同士の間には穴部244が形成されている。実施形態にあっては、内梁部241と中梁部242との間、中梁部242と外梁部243との間にそれぞれ穴部244が形成されている。第2の底板部材22において、複数の梁部24(内梁部241、中梁部242、及び外梁部243)と、当該梁部24以外の部分の厚さに強弱を設けるに当たっては、穴部244を形成する形態が好適である。また、穴部244の形成は打ち抜き(トムソン加工等)や射出成型の加工によるため、加工性に優れ量産性は高い。第2の底板部材22の梁部24の形成位置は、図示の実施形態に加え、着用者の土踏まず側(
図7の舟状骨B2側)または第5中足骨B8側に形成しても良い。履物の着用者が扁平足の場合、または骨の大きさ、形状、障害の程度等により、第2の底板部材22の梁部24の形成位置は調整される。
図7中の足の骨の名称について、B1は踵骨、B2は舟状骨、B3は楔状骨、B4は第1中足骨、B5は第2中足骨、B6は第3中足骨、B7は第4中足骨、B8は第5中足骨である。
【0036】
第2の底板部材22の梁部24の役割は概ね次のとおりである。履物の着用者が歩行する際、履物を踵から地面に着地し、
図7の踵骨B1から舟状骨B2、そして、第5中足骨B8側へと着地部分が円弧状に移動する。このとき、梁部24の外梁部243は、着用者の足の着地部分の軌跡(重心移動)と一致する位置に相当する。そこで、梁部24の外梁部243は着用者の足の着地部分の軌跡に対応するように、着用者の足裏を歩行時の衝撃から保護することができる。母指球などに並ぶ横アーチ部分で着地した場合、第四指から踵寄りの真の接地点へと力が伝達され、アキレス腱、ふくらはぎの力をストレスなく引き出す。中間型着地の場合も同様である。股関節を含む骨盤と脛とにストレスがかかると膝には割れる、あるいは開かれるような力とストレスとがかかるため、このストレスを軽減することで膝関節変形症を防止することができる。
【0037】
前述のとおり、第2の底板部材22においては、外梁部243に着用者の足の着地部分の軌跡が一致する。そうすると、歩行を続ける内に第2の底板部材22には梁部24の外梁部243に集中して荷重が多く加わりねじれが生じる。そこで、第2の底板部材22に生じるねじれの作用を緩和して第2の底板部材22自体の過剰な変形を抑制するため、内梁部241、中梁部242が形成される。内梁部241と中梁部242は穴部244により直接外梁部243と接していないため、外梁部243から伝わる、押すまたは引く等の作用は軽減される。結果として、履物内のインソール1の形状安定性に寄与する。
【0038】
第2の底板部材22において、長手方向の長さd13は、第1の底板部材21の長手方向の長さd1よりやや短く、幅方向の長さd14は、第1の底板部材21の幅方向の長さd2よりやや短くなっている。梁部24の長さd15、中梁部242の幅d17、及び、穴部244の幅d19は、第1の底板部材21の梁部23の長さd3、中梁部232の幅d5、及び、穴部234の幅d7と略同じである。内梁部241の幅d16、外梁部243の幅d18は内梁部231の幅d4、外梁部233の幅d6よりやや短くなっている。
【0039】
梁部24の長さについては、個々に長短は存在する。梁部24の長さd15が第2の底板部材22の全長d13の25/100を下回る場合、梁部24が短くなり梁部23を設ける効果(重心移動)が薄い。逆に、梁部24の長さd15が第2の底板部材22の全長d13の35/100を上回る場合、第2の底板部材22に占める梁部24が大きくなり、第2の底板部材22自体の強度維持の面から好ましくない。そこで、前述の範囲が好例である。
【0040】
第2の底板部材22において、梁部24の最大幅d16,d17,d18は第2の底板部材22の全長d1の6/100ないし10/100とされる(
図3(a)参照)。図示の実施形態では、内梁部241の幅はd16、中梁部242の幅はd17、及び外梁部244の幅はd18である。個々の梁部24の形成位置により幅は異なる。梁部24の最大幅が第2の底板部材22の全長d13の6/100を下回る場合、梁部24の幅が狭く、歩行時の重心移動を受け止めることができず、また、着用者の足裏に伝わる衝撃吸収の効果が少なくなる。梁部24の最大幅が第2の底板部材22の全長d13の10/100を上回る場合、梁部24の幅が広くなりすぎて前述のねじれ変形への抵抗力が発揮されにくくなる。底板部材2が第1の底板部材21と第2の底板部材22の2枚の組み合わせであることにより、衝撃吸収効果の向上とともに、歩行時に両部材21,22間に作用するずれ応力も加わり足への負荷が軽減可能である。
【0041】
第2の底板部材22の内梁部241の幅d16の長さは、第1の底板部材21の内梁部231の幅d4の長さよりやや短くなっている。これは、着用者の足のd4にあたる部分は筋肉が厚くなっており、第1の底板部材21の内梁部231と第2の底板部材22の内梁部241との段差間にその厚くなっている筋肉部分がはまるようになるためである。外梁部243の幅d18の長さも、外梁部233の幅d6よりやや短くなっている。
【0042】
内梁部231、中梁部232および外梁部233の厚み(足底部からの高さ)は、均一であってもよく、中梁部232と外梁部233とが同じ厚みで内梁部231が低くてもよく、中梁部232を中心高として、外梁部233は中梁部232と同一の厚みとし、内梁部231を低くしてもよい。第4指部分に相当する中梁部232が最も厚いことにより、第4指のイニシャルコンタクト(歩行時の最初の接地)が誘導できる。また、d16、d17およびd18の幅は基本的には均一であるが、変化してもよい。
【0043】
次に、
図3(b)に示すように、第1の底板部材21と第2の底板部材22とが重ね合わせられた上に第1の布部材51が被着される。これは外観の向上のためである。
【0044】
中間部材30は、
図1、
図4、
図5から理解されるように、第1の底板部材21の上方かつ後面部212の後端部から履物60の内底部61の長さ方向の中間位置側に向けて所定間隔を離隔して履物60の着用者の踵(踵骨B1)から踵寄りの真の接地(着地)部の直下に載置される(
図7,8参照)。そして、中間部材30の前端部31は、第1の底板部材21の梁部23の始点位置の近傍に位置する。中間部材30は、第1の底板部材21とともに、歩行時に着用者の足裏、特には踵に伝わる衝撃の緩和を担う。また、着用者の足の長さが左右で異なる場合に、中間部材30の厚さを調整することより、左右の足の長さを揃えて歩行時の負担軽減を図ることができる。中間部材30は専ら衝撃吸収と調整の用途から第1の底板部材21の全面では無く、踵から踵寄りの真の接地部分に積層される。
【0045】
そこで、中間部材30の全長d8は、第1の底板部材21の全長d1の35/100ないし45/100の全長である。中間部材30の全長d8が第1の底板部材21の全長d1の35/100を下回る場合、中間部材30自体が短く(小さく)足裏に伝わる衝撃吸収効果が乏しくなる。中間部材30の全長d8が第1の底板部材21の全長d1の45/100を上回る場合、第1の底板部材21の梁部23を覆うこととなり、梁部23の効果を減殺するおそれがある。
【0046】
さらに、中間部材30の積層の特徴として、第1の底板部材21の後面部212と中間部材30後端部32の端は一致していない。
図4のとおり、中間部材30の後端部32は、第1の底板部材21の後面部212から爪先方向にずらされている。
【0047】
敢えて中間部材30の積層位置をずらす理由として、
図8の模式図のとおり、履物の着用者の踵から踵寄り部分(真の接地部)の形状に対応するようにへこませたためである。踵骨B1(
図7参照)の周囲には、筋肉、皮膚等の組織が存在する。また、踵骨B1から第1中足骨B4等にかけて弓なりに反っている。つまり、踵骨B1の周囲が足裏において突出した部位となる。そこで、踵骨B1の周囲の突出を適切に受け止めるため、中間部材30の積層位置をずらすことにより、インソール1を履物60内に挿入した際に履物60の踵部62(
図9,10参照)側に適度な窪みがインソール1に形成される。そこで、踵骨B1の周囲はこの窪みに収まり、踵から踵寄りの真の接地部は履物60の踵部62とインソール1により包み込まれ、履物の履き心地、安定性が高められる。
【0048】
中間部材30の積層位置についてより詳しく述べると、中間部材30は、第1の底板部材21の後面部212から履物60の内底部61の長さ方向の中間位置側に向けて第1の底板部材21の全長d1の8/100ないし10/100の長さを離隔して(離隔長さd10)第1の底板部材21に載置される。離隔長さd10が第1の底板部材21の全長d1の8/100を下回る場合、離隔長さd10自体が短く、インソール1を履物60内に挿入した際に所望の窪みが形成されない。また、上板部材40の積層を考慮すると、不十分となる。離隔長さd10が第1の底板部材21の全長d1の10/100を上回る場合、逆に、インソール1を履物60内に挿入した際に生じる窪み部分が大きくなりすぎて、中間部材30による衝撃吸収効果、履き心地の低下を招来しかねない。
【0049】
上板部材40は、中間部材30の上方に載置され中間部材30を被覆する(
図4(b),
図5(b),
図6参照)。中間部材30は第1の布部材51に載置されるため、中間部材30に
図5,6等のように傾斜部位3sを設けても、第1の布部材51と中間部材30との段差は存在する。着用者は当該段差に違和感を覚えやすい。そこで、段差の解消、履き心地の改善から主に第1の布部材51と中間部材30の段差を緩和するため、上板部材40が中間部材30の上方に載置される。
図6,8から理解されるように、段差は解消され第1の底板部材21の前面部211に向けてなだらかな傾斜となる。
【0050】
図示の実施形態では、上板部材40は中間部材30の後端部32の端と一致されている。これは、インソール1を履物60内に挿入した際に適度な窪みを形成するためである。
【0051】
さらに、上板部材40に第2の布部材52が被着される。第2の布部材52は、
図5,7のように、上板部材40に被着する。つまり、第2の布部材52の最後端は、中間部材30の最後端と同じ位置にある。すなわち、第2の布部材52は、第1の底板部材21の後面部212から履物60の内底部61の長さ方向の中間位置側に向けて第1の底板部材21の全長d1の8/100ないし10/100の長さを離隔して(離隔長さd10)上板部材40に載置される。敢えて第2の布部材52の積層位置をずらす理由として、
図8の模式図のとおり、履物の着用者の踵から踵寄り部分(真の接地部)の形状に対応するようにへこませたためである。結果、第2の布部材52はインソール1の最上面を覆う。第2の布部材52は着用者の発汗による吸湿を担う。さらには、下層が被覆されるため、インソール1の装飾性が高められる。第2の布部材52の材質は、木綿、化繊等の適宜である。
【0052】
これまでに詳述の底板部材21、22、中間部材30、及び上板部材40は、衝撃吸収性、弾発性、形状保持等に優れた樹脂材料により形成される。これらは、例えば、ポリウレタン(PUR)、EVA(エチレン酢酸ビニル)、オレフィン系のエラストマー、ポリスチレン系のゴム素材、エポキシ樹脂等の各種の熱可塑性樹脂により形成される。これらの樹脂は軽量であり耐久性を備える。また、同種の樹脂であっても、弾発性、硬度等は適宜調整される。あるいは、これらに代えて、パルプやポリエステル樹脂等を用いてもよい。
【0053】
さらに、少なくとも第1の底板部材21と第2の底板部材22とは異なる樹脂材料から形成されている。また、第2の底板部材22は、第1の底板部材21に比して硬質の材料を用いてもよい。樹脂材料に代えて、金属など、他の異なる材料を用いてもよい。第1の底板部材21は履物60(後出の
図9参照)の内底部61に当接し、歩行時の重心移動を支えて回転に変える(上位の骨盤回転)をスムーズにする役割、歩行、走行方法によっては、母指球などの横アーチ付近からの着地、第四指、踵から踵寄りの接地部の運動を促す。第2の底板部材22は、インソール1自体の強度確保の観点から、第1の底板部材21と比較して相対的に硬質の樹脂材料が選定される。中間部材30は歩行時に着用者の踵から踵寄りの真の接地部に加わる衝撃緩和からやや弾性に富む樹脂材料が選定される。中間部材30も第1の底板部材21と比較して相対的に硬質の樹脂材料が選定される。
【0054】
ここで、インソール1の各部の大きさについて、具体例を挙げて説明する。この例は紳士用靴の場合であり、婦人用靴、子供用靴の場合には、縮小された長さに変換される。履物60の全長を例えば27cmとするとき、第1の底板部材21の長手方向の長さd1の長さは、例えば15cmとなり、第1の底板部材21の幅方向の長さd2の長さは、例えば7.2cmとなる。第1の底板部材21の梁部23の長手方向の長さd3の長さは、例えば4.5cmとなる。また、梁部23の内梁部231の幅方向の長さd4は、例えば2cm、中梁部232の幅方向の長さd5は、例えば1.5cm、梁部23の外梁部233の長さd6は、例えば1.8cmとなる。第2の底板部材22の長手方向の長さd13の長さは、例えば14cmとなり、第2の底板部材22の幅方向の長さd14の長さは、例えば6.6cmとなる。第2の底板部材22の梁部24の長手方向の長さd15の長さは、例えば4.5cmとなる。また、梁部24の内梁部241の幅方向の長さd16は、例えば1.5cm、中梁部242の幅方向の長さd17は、例えば1.4cm、梁部24の外梁部243の長さd18は、例えば1.5cmとなる。
【0055】
中間部材30の全長をd8は、例えば6cmであり、中間部材30の幅方向の長さをd9は、例えば5.5cmとなる。上板部材40の全長d11は、例えば10cmであり、上板部材40の幅方向の長さは、例えば6.5cmとなる。むろん、これらの数値は一例であり、履物の着用者の足の大きさ等により適宜変更される。また、足の障害の程度に応じても加減される。
【0056】
これまでに図示し、詳述した第1実施形態のインソール1は、下方から順に第1の底板部材21、第2の底板部材22、中間部材30、上板部材40として配置し積層した構成である。当該第1実施形態のインソール1を簡素化した構造として、
図11の分解斜視図のとおり、第2実施形態のインソール1Aが示される。
【0057】
第2実施形態のインソール1Aでは、下方から第1の底板部材2、中間部材3、及び上板部材4が順に積層され、第2の布部材に対応する布部材14が上板部材4の上部に被着される。
図11のとおり、第2実施形態のインソール1Aでは、前述の第2の底板部材と、第1の布部材が省略された構造である。
【0058】
第2実施形態のインソール1Aにおける第1の底板部材2、中間部材3、及び上板部材4の作用、効果、形状、寸法については、前述の第1実施形態のインソール1における第1の底板部材21、中間部材30、上板部材40と同様であるため説明を省略する。
【0059】
第1実施形態のインソール1では部品数を多くすることにより、インソールの使用者の足の状態に応じたきめ細かい調整が可能である。これに対し、第2実施形態のインソール1Aは部品の総数を少なくしていることから量産性に好ましく、普及品のインソールとして位置づけられる。
【符号の説明】
【0060】
1,1A インソール
21 第1の底板部材
22 第2の底板部材
30 中間部材
40 上板部材
211 前面部
212 後面部
23 梁部
231 内梁部
232 中梁部
233 外梁部
234 穴部
31 前端部
32 後端部
51 第1の布部材
52 第2の布部材
60 履物