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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118560
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】火吹き棒兼用火鋏
(51)【国際特許分類】
   F24B 15/00 20060101AFI20220805BHJP
   F24B 15/10 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
F24B15/00 C
F24B15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015156
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】513048243
【氏名又は名称】株式会社来光工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】玉利 一
(57)【要約】
【課題】屋外活動等においてユーザが火吹き棒と火鋏とを利用する場合に、荷物を減らしてユーザの負担を低減する。
【解決手段】火吹き棒兼用火鋏は、長尺状に構成された2つの主体部材を備え、2つの前記主体部材は、前記主体部材の基端部側を支点に先端部側が相互に接近する方向及び離れる方向へ移動可能に構成され、2つの前記主体部材の前記先端部側が相互に接近して閉じた状態では前記主体部材の長手方向に沿って貫通した筒状となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の2つの主体部材を備え、
2つの前記主体部材は、前記主体部材の基端部側を支点に先端部側が相互に接近する方向及び離れる方向へ移動可能に構成され、
2つの前記主体部材の前記先端部側が相互に接近して閉じた状態では直線状に延びる筒状となって内部に筒状の一方の端部から他方の端部へ連通する空気経路が形成される、
火吹き棒兼用火鋏。
【請求項2】
2つの前記主体部材は、先端部に爪部をそれぞれ有し、前記先端部側が相互に接近して閉じた状態ではそれぞれの前記主体部材に設けられた前記爪部が噛み合って密着する、
請求項1に記載の火吹き棒兼用火鋏。
【請求項3】
前記主体部材の基端部側に設けられて、2つの前記主体部材の前記先端部側を相互に離す方向へ弾性力を作用させる弾性部材を更に備え、
前記弾性部材は、2つの前記主体部材を閉じて筒状となった場合においてその筒状の中心軸を通る位置に前記弾性部材を厚み方向へ貫いた貫通穴が形成されている、
請求項1又は2に記載の火吹き棒兼用火鋏。
【請求項4】
2つの前記主体部材が閉じられた状態を維持して火吹き棒としての機能を発揮可能な状態と、2つの前記主体部材を開閉可能にして火鋏としての機能を発揮可能な状態と、をユーザの操作に基づいて切り替え可能なロック機構を更に備えている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の火吹き棒兼用火鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、火吹き棒と火鋏とを一体に構成した火吹き棒兼用火鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外での活動すなわち例えばキャンピング等のアウトドア・アクティビティが盛んになっている。キャンピング等の屋外活動を行う活動者は、焚火や炭火を扱う際に、火元に息を吹き込んで空気を供給するための火吹き棒や、薪や炭等を把持するための火鋏を利用することが多い。しかしながら、従来、活動者は、これら火吹き棒や火鋏をそれぞれ準備して活動地まで持って行く必要があり、荷物がかさばり負担となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-92313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋外活動等においてユーザが火吹き棒と火鋏とを利用する場合に、荷物を減らしてユーザの負担を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態による火吹き棒兼用火鋏は、長尺状に構成された2つの主体部材を備え、2つの前記主体部材は、前記主体部材の基端部側を支点に先端部側が相互に接近する方向及び離れる方向へ移動可能に構成され、2つの前記主体部材の前記先端部側が相互に接近して閉じた状態では前記主体部材の長手方向に沿って貫通した筒状となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態による火吹き棒兼用火鋏の一例を示す斜視図
図2】一実施形態による火吹き棒兼用火鋏の一例を示す分解斜視図
図3】一実施形態による火吹き棒兼用火鋏の一例について長手方向に沿って切断して示す断面図
図4】一実施形態による火吹き棒兼用火鋏の一例について長手方向に沿って切断して示すもので、2つの主体部材が開いた状態を示す断面図
図5】一実施形態による火吹き棒兼用火鋏の一例について図3の矢印X5部分を拡大して示す断面図
図6】一実施形態による火吹き棒兼用火鋏の一例について図3のX6-X6線に沿って示す断面図
図7】一実施形態による火吹き棒兼用火鋏の一例について図3の矢印X7部分を拡大して示す断面図
図8】一実施形態による火吹き棒兼用火鋏の一例について図7の状態からロック機構が操作された状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1等に示す火吹き棒兼用火鋏10は、キャンプ等の屋外活動において焚火や炭火を扱う際に利用されるいわゆるアウトドア用品への適用が想定される。火吹き棒兼用火鋏10は、火起こしを行う際にユーザの息を火元に吹き込むための火吹き棒と、炭や薪等を掴んで把持するための火鋏とを兼用するものである。火吹き棒兼用火鋏10は、火鋏兼用火吹き棒10と称することもできる。また、火吹き棒兼用火鋏10において、火吹き棒は火吹き筒と称することもでき、火鋏はトングと称することもできる。なお、火吹き棒兼用火鋏10の利用場面はキャンプ等の屋外活動の場面に限られない。
【0008】
火吹き棒兼用火鋏10は、図1から図4に示すように、2つの主体部材21、22、軸機構30、弾性部材40、摘み部材50、及びロック機構60を備えている。主体部材21、22は、火吹き棒兼用火鋏10の主体部分を構成するものつまり火吹き棒兼用火鋏10の大部分を占める部材であって、それぞれ金属製の長尺状の部材で構成されている。主体部材21、22は、例えばいわゆる角パイプや丸パイプ等の筒状の部材を長手方向に沿って概ね半分に割ったような形状に形成されている。
【0009】
本実施形態の場合、主体部材21、22は、いわゆる角パイプを概ね半分に割ったような形状、すなわち長手方向に対して直角に交わる面で切断した断面が矩形の溝形状となっている。主体部材21、22は、通常の想定される使用態様では折れ曲がらない程度の剛性を有している。本実施形態の場合、主体部材21、22は、例えば断面が矩形のいわゆる角パイプを長手方向に沿ってつまり角パイプの中心軸に沿って概ね半分に割ることで形成されている。これにより、主体部材21、22は、単純な板状の部材に比べて、軽量でかつ高い剛性を得ることができる。
【0010】
なお、以下の説明において、2つの主体部材21、22を区別する必要がある場合は、主体部材21を第1主体部材21と称し、主体部材22を第2主体部材22と称する。主体部材21、22は、アルミやアルミ合金等の金属製の部材で構成することができる。また、主体部材21、22は、例えばアルミやアルミ合金等の金属製の円柱又は角柱の部材を切削加工して形成したものであっても良い。
【0011】
本実施形態において、主体部材21、22は、それぞれ爪部211、221を有している。爪部211、221は、主体部材21、22の長手方向の両端部のうち少なくとも一方の端部側に設けられている。本実施形態において、主体部材21、22の長手方向のうち爪部211、221側を主体部材21、22の先端部側とし、軸機構30側を主体部材21、22の基端部側とする。
【0012】
爪部211、221は、主体部材21、22の先端から所定の領域に亘って設けられている。爪部211、221は、火吹き棒兼用火鋏10を火鋏として利用する際に、炭や木炭等の対象物の把持を補助する機能を有する。すなわち、火吹き棒兼用火鋏10は、火鋏として使用される際に、爪部211、221が把持の対象物に食い込むことで、対象物を強固に把持することができる。爪部211、221は、図2から図4、及び図7に示すように、主体部材21、22の断面を見た場合に、溝形状の底部の両側に位置する側壁面の縁部の一定の領域に設けられている。爪部211、221は、例えば山形状と谷形状とが交互に連続して配置されたいわゆる波形状、又はいわゆるサインカーブ形状、若しくは凹凸が交互に連続して配置された形状に形成されている。そのため、爪部211、221は、波形状部と称することもできる。
【0013】
図1図3、及び図6に示すように、第1主体部材21と第2主体部材22とが閉じられて筒形状となった場合に、第1主体部材21の爪部211と、第2主体部材22の爪部221とは、対向する位置に配置されて相互に噛み合って密着する。この場合、爪部211、221が相互に噛み合って密着するとは、爪部211、221の一部が接触するだけでなく、爪部211、221の全体に亘って接触することを意味するが、爪部211、221の境界部分が液体及び気体を完全に通さない程度にまで密着している必要はない。
【0014】
この場合、爪部211、221は、筒状の主体部材21、22の内部を通る空気が爪部211、221の境界部分から多量に漏れ出ることなく先端から吐出できる程度に密着すれば良い。つまり、爪部211、221は、火吹き棒兼用火鋏10を火吹き棒として機能させる場合に、吹き込んだ息が多量に漏れ出ずに先端まで到達して、火吹き棒としての機能が発揮できる程度に密着できれば良い。
【0015】
なお、第1主体部材21と第2主体部材22とは閉じられて筒形状となった場合に、主体部材21、22の両縁部のうち爪部211、221以外の部分も、対向する位置に配置されて相互に密着する。
【0016】
軸機構30は、主体部材21、22の基端部側に設けられている。軸機構30は、主体部材21、22の端部を相互に回動可能に連結している。軸機構30により、2つの主体部材21、22は、主体部材21、22の基端部側を支点に先端部側が相互に接近する方向及び離れる方向へ移動可能に構成されている。
【0017】
軸機構30は、図2及び図5等に示すように、軸受け部材31、軸部材32、33、及び連結部材34、35を有している。軸受け部材31は、軸部材32、33及び連結部材34、35を介して主体部材21、22に連結されており、主体部材21、22を回動可能に支持する。
【0018】
軸受け部材31は、例えばアルミやアルミ合金等の金属製のブロックを切削加工したもので構成することができる。軸受け部材31には、貫通穴311及び2組の軸穴312、313が形成されている。貫通穴311は、図5に示すように、軸受け部材31の中心部を例えば円形に貫いて形成されている。軸穴312、313は、軸部材32、33を通すための穴であり、軸受け部材31を例えば円形に貫いて形成されている。
【0019】
軸穴312、313は、貫通穴311を挟んで両側にそれぞれ2つずつ設けられている。軸穴312の貫通方向つまり中心軸の方向と軸穴313の中心軸の方向と平行となっている。また、貫通穴311の中心軸は、軸穴312、313の中心軸に対して直角方向へ向いている。そして、本実施形態の場合、貫通穴311の内径は、軸穴312、313の内径よりも大きく設定されている。
【0020】
軸部材32、33は、円柱の部材で構成されており、主体部材21、22の回転軸として機能する。軸部材32、33は、例えばアルミやアルミ合金等の金属製の部材で構成することができる。連結部材34、35は、例えばアルミやアルミ合金等の金属製のブロックを切削加工したもので構成することができる。連結部材34、35は、同一形状であって軸受け部材31に対して対称に配置されている。
【0021】
連結部材34、35は、それぞれ主体部材21、22の基端部において主体部材21、22の内側面つまり溝状の底部分に、図示しないねじ等を用いて固定されている。また、連結部材34、35には、それぞれ軸穴341、351が形成されている。軸穴341、351は、軸部材32、33を通すための穴である。軸部材32、33は、軸受け部材31の軸穴312、313と、連結部材34、35の軸穴341、351と、がそれぞれ直線上に配置された状態で、軸受け部材31の軸穴312、313と、連結部材34、35の軸穴341、351とに通されている。こにより、2つの主体部材21、22は、軸部材32、33を支点に先端部側が開閉可能となる。
【0022】
弾性部材40は、主体部材21、22の基端部側に設けられており、2つの主体部材21、22の先端部側を相互に離す方向つまり、主体部材21、22の先端部が相互に開く方向へ弾性力を作用させる機能を有する。弾性部材40は、金属板等で構成された板バネを折り曲げて形成することができる。弾性部材40は、取付け部41と、2つの作用部42、43とを一体に有している。取付け部41は、平板状に形成されており、軸受け部材31に接触して軸受け部材31にねじ等を用いて取り付けられている。
【0023】
弾性部材40には、図2から図5に示すように、貫通穴44が形成されている。貫通穴44は、取付け部41を厚み方向に例えば円形に貫いて形成されている。取付け部41の貫通穴44の内径は、軸受け部材31の貫通穴311の内径と同等が大きく設定されている。そして、軸受け部材31と取付け部41とを貫通穴311、44の貫通方向に見た場合に、弾性部材40の貫通穴44の内側に、軸受け部材31の貫通穴311が配置されている。
【0024】
作用部42、43は、弾性部材40の弾性力を主体部材21、22に作用させる機能を有する。作用部42、43は、貫通穴44を挟んで取付け部41の両縁側に設けられており、長方形状に形成されている。作用部42、43は、作用部42、43に外力が作用してない状態において、貫通穴44の中心軸方向に対して数十度程度傾斜している。作用部42、43は、それぞれ主体部材21、22の溝形状の内側に配置されており、主体部材21、22の溝形状の底部に接触して配置されている。これにより、弾性部材40は、作用部42、43を介して主体部材21、22の先端部が相互に開く方向へ弾性力を作用させている。
【0025】
摘み部材50は、軸機構30の軸受け部材31に設けられており、火吹き棒兼用火鋏10全体の端部を構成する。摘み部材50は、ユーザの把持を容易にするための機能や装飾機能等を有している。本実施形態の場合、摘み部材50は、本体部51と挿入部52とを一体に有しており、例えばアルミやアルミ合金等の金属製の部材を切削加工したもので構成することができる。
【0026】
本体部51は、例えば円筒形状と円錐台の円筒形状とを組み合わせた形状に形成されている。本体部51の表面の一部又は全部には、例えばローレット加工等の滑り止め又は装飾の一方又は両方を目的とした加工が施されていても良い。挿入部52は、円筒形状に形成されている。本体部51の中心軸と挿入部52の中心軸とは一致している。挿入部52の外形寸法は、軸受け部材31の貫通穴311の内径寸法よりも僅かに大きい。これにより、摘み部材50は、挿入部52が軸受け部材31の貫通穴311に圧入されて、軸受け部材31に固定されている。
【0027】
図5に示すように、摘み部材50の内部には、貫通穴53が形成されている。貫通穴53は、摘み部材50を例えば円形に貫いて形成されている。本実施形態の場合、貫通穴53は、摘み部材50の外側つまり図5の紙面左側から貫通穴53の長手方向の途中部分まで又は貫通穴53の全長全部を、内径が徐々に小さくなるいわゆるテーパ形状に形成することができる。
【0028】
また、本実施形態において、軸受け部材31の貫通穴311の中心軸と、弾性部材40の貫通穴44の中心軸と、及び摘み部材50の貫通穴53の中心軸とは一致している。そして、図3に示すように、2つの主体部材21、22を閉じて筒状となった場合におけるその筒状の中心軸を中心軸Jとすると、各貫通穴311、44、53は、中心軸Jを通る位置に形成されている。
【0029】
ロック機構60は、ロック状態と解除状態とをユーザの操作により任意に切り替えるためのものである。ロック状態とは、2つの主体部材21、22が閉じられておりかつ相互に開く方向への移動が規制された状態、つまりユーザの持ち方に寄らずに常に火吹き棒兼用火鋏10が火吹き棒としての機能を発揮可能な状態である。解除状態とは、ロック状態が解除されて2つの主体部材21、22が開閉可能な状態、つまり火吹き棒兼用火鋏10が火鋏としての機能を発揮可能な状態である。
【0030】
ロック機構60は、主体部材21、22の長手方向の途中部分、この場合、主体部材21、22の長手方向の中心に対して基端側寄りに設けられている。ロック機構60は、図2及び図7等に示すように、操作部材61、移動部材62、バネ受け部材63、係止部材64、65、及びコイルバネ66を有して構成されている。
【0031】
操作部材61は、ユーザが直接触って操作する部材つまりユーザからの操作を受ける部材である。本実施形態の場合、操作部材61は、第1主体部材21に設けられており、第1主体部材21の長手方向に沿って移動可能に構成されている。この場合、第1主体部材21には、長穴部212が形成されている。長穴部212は、第1主体部材21の溝状の底面部を第1主体部材21の長手方向に沿って長い長穴形状に貫いて形成されている。操作部材61は、長穴部212から第1主体部材21の外部に露出している。
【0032】
移動部材62は、第1主体部材21の溝形状の内側に設けられており、第1主体部材21の長手方向に沿って移動可能に構成されている。移動部材62は、操作部材61に連結されており、操作部材61の移動に伴って移動する。移動部材62は、例えば金属の板を折り曲げて形成されており、ツメ部621とバネ受け部622を有している。バネ受け部材63は、第1主体部材21の溝形状の内側に配置されており、第1主体部材21に固定されている。
【0033】
バネ受け部材63には、長穴部631が形成されている。長穴部631は、バネ受け部材63を長穴形状に貫いて形成されている。長穴部631は、バネ受け部材63のうち第1主体部材21の長穴部212と重なる位置に設けられている。操作部材61は、第1主体部材21の長穴部212とバネ受け部材63の長穴部631に通されて移動部材62に連結されている。3また、バネ受け部材63は、バネ受け部632を有している。
【0034】
係止部材64、65は、第2主体部材22の溝形状の内側に配置されており、第2主体部材22に固定されている。係止部材64、65は、例えば金属の板を折り曲げて形成されており、それぞれ係止部641、651を有している。係止部641、651は、移動部材62のツメ部621を係止可能に構成されている。
【0035】
コイルバネ66は、例えば圧縮コイルバネ等の弾性体で構成されている。コイルバネ66は、移動部材62のバネ受け部622と、バネ受け部材63のバネ受け部632との間に配置されている。コイルバネ66は、移動部材62に対してバネ受け部632から離れる方向、この場合、移動部材62のツメ部621が係止部材64の係止部641、651に入り込む方向へ弾性力を作用させている。そして、移動部材62のツメ部621が係止部材64の係止部641、651に入り込んだ状態になると、ツメ部621が係止部641、651に係止されて2つの主体部材21、22の移動が規制されたロック状態となる。また、ユーザが移動部材62を操作して第1主体部材21の先端側へ移動させると、ツメ部621が係止部641、651から外れてロック状態が解除される。
【0036】
この構成において、ロック機構60のロックが解除されている状態つまり2つの主体部材21、22が相互に回動可能な状態で、ユーザが弾性部材40の弾性力よりも強い力で主体部材21、22を握ると、主体部材21、22の先端部が相互に接近して主体部材21、22が閉じる。また、ユーザが主体部材21、22に対する握る力を解放すると、弾性部材40の弾性力によって主体部材21、22が自動で開く。本実施形態の場合、主体部材21、22は、外力が加わっていない場合では、それぞれおおよそ20°程度外側へ開く。これにより、ユーザは、火吹き棒兼用火鋏10を火鋏つまりトングとして使用することができる。
【0037】
また、2つの主体部材21、22の先端側が閉じると、2つの主体部材21、22が組み合わさることで、図6に示すように断面が矩形の筒状となる。そして、この状態において、2つの主体部材21、22の内側は、弾性部材40の貫通穴44、軸受け部材31の貫通穴311、及び摘み部材50の貫通穴53を介して外部に連通している。これにより、火吹き棒兼用火鋏10の内部には、図3等に白抜き矢印Aで示すように、火吹き棒兼用火鋏10の一方の端部から他方の端部に亘って連通した空気経路が形成される。
【0038】
そしてユーザが、例えば摘み部材50の貫通穴53から息を吹き込むと、その吹き込んだ息は、白抜き矢印Aで示すように、火吹き棒兼用火鋏10内に形成された空気経路を通って、火吹き棒兼用火鋏10の先端側から吹き出される。これにより、ユーザは、火吹き棒兼用火鋏10を火吹き棒として使用することができる。そして、ロック機構60によりロック状態にすることで、火吹き棒兼用火鋏10は、火吹き棒の機能を発揮できる状態が維持される。
【0039】
以上説明した実施形態によれば、火吹き棒兼用火鋏10は、長尺状の2つの主体部材21、22を備えている。2つの主体部材21、22は、主体部材21、22の基端部側を支点に先端部側が相互に接近する方向及び離れる方向へ移動可能に構成されている。そして、火吹き棒兼用火鋏10は、2つの主体部材21、22の先端部側が相互に接近して閉じた状態では直線状に延びる筒状となって内部に筒状の一方の端部から他方の端部へ連通する空気経路が形成される。
【0040】
これによれば、ユーザは、2つの主体部材21、22を握って開閉させることで火鋏として使用することができる。また、ユーザは、主体部材21、22を閉じた状態にして内部に空気経路を形成することで、火吹き棒として使用することができる。そのため、例えばキャンプ等の屋外活動等においてユーザが火吹き棒と火鋏とを利用する場合に、ユーザは、本実施形態の火吹き棒兼用火鋏10を持って行けば、火吹き棒と火鋏との両方を使用することができる。このように、本実施形態によれば、ユーザは、火吹き棒と火鋏との両方を持って行く必要がなくなり、その結果、ユーザの荷物を減らしてユーザの負担を低減することができる。
【0041】
また、本実施形態の場合、2つの主体部材21、22は、単体では筒状には構成されていない。つまり、主体部材21、22は、相互に開いた状態では空気経路を形成せず、閉じた状態となって初めて筒状となって空気経路を形成する。これによれば、例えば主体部材21、22の一方又は両方を筒状に構成して常に空気経路を維持する構成に比べて、主体部材21、22の軽量化を図りつつ、空気経路の断面積を極力大きく確保することができる。
【0042】
また、2つの主体部材21、22は、先端部に形成された爪部211、221をそれぞれ有している。そして、2つの主体部材21、22は、先端部側が相互に接近して閉じた状態ではそれぞれの主体部材21、22に設けられた爪部211、221が噛み合って密着する。
【0043】
これによれば、火吹き棒兼用火鋏10を火鋏として使用する場合に、爪部211、221が把持の対象物に食い込んで把持をし易くすることができる。更に、爪部211、221が噛み合って密着することで、火吹き棒兼用火鋏10を火吹き棒として使用する際に、爪部211、221によって隙間が生じてその隙間からユーザが吹き込んだ息がその隙間から漏れ出ることを抑制できる。すなわち、本実施形態によれば、火吹き棒の性能を損なうことなく、火鋏としての機能の向上つまり把持をし易くすることができる。
【0044】
また、主体部材21、22の長手方向に対して直角方向でかつ主体部材21、22の回動方向に対して直角方向を、主体部材21、22の幅方向とした場合、すなわち図6の紙面左右方向を主体部材21、22の幅方向とした場合に、爪部211、221は、主体部材21、22の幅方向の両端部の2か所に設けられている。そして、爪部211、221の厚み寸法は、主体部材21、22の肉厚寸法tに一致する。これによれば、主体部材21、22の幅方向の全体に亘って爪部211、221を設けた場合に比べて爪部211、221の厚み寸法を小さくすることで、把持物に爪部211、221が食い込み易くなり、その結果、対象物を強固に把持することができる。
【0045】
また、火吹き棒兼用火鋏10は、弾性部材40を更に備えている。弾性部材40は、主体部材21、22の基端部側に設けられており、2つの主体部材21、22の先端部側を相互に離す方向へ弾性力を作用させる。また、そして、弾性部材40は、2つの主体部材21、22を閉じて筒状となった場合においてその筒状の中心軸Jを通る位置に弾性部材40を厚み方向へ貫いた貫通穴44が形成されている。
【0046】
これによれば、弾性部材40の弾性力が2つの主体部材21、22を開く方向へ作用することで、ユーザは、主体部材21、22を握る力を緩めることで主体部材21、22の先端部を開くことができ、その結果、火鋏として使用し易くなる。そして、弾性部材40には貫通穴44が形成されているため、弾性部材40を設けたことにより空気経路を通る空気の流れが阻害されることを抑制できる。その結果、火吹き棒の性能を損なうことなく、火鋏としての機能の向上つまり把持をし易くすることができる。
【0047】
また、火吹き棒兼用火鋏10は、ロック機構60を更に備えている。ロック機構60は、2つの主体部材21、22が閉じられた状態を維持して火吹き棒としての機能を発揮可能な状態と、2つの主体部材21、22が開閉可能にして火鋏としての機能を発揮可能な状態と、をユーザの操作に基づいて切り替え可能に構成されている。これによれば、例えばユーザが火吹き棒として使用したい場合に、意図せず主体部材21、22が開いてしまうといったことを抑制できる。その結果、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0048】
更に、本実施形態において、少なくとも主体部材21、22は金属部材を切削加工したもので構成されている。これによれば、少なくとも主体部材21、22を、切削加工によって精密なものとすることができる。そのため、例えば爪部211、221の噛み合わせを精密にして、火吹き棒兼用火鋏10を火吹き棒として使用する際に爪部211、221の境界部分から空気が漏れ出ることを更に効果的に抑制でき、その結果、火吹き棒としての機能を更に向上させることができる。また、火吹き棒兼用火鋏10の大部分を占める主体部材21、22を金属製の切削加工品とすることで、高級感を出すことができる。
【0049】
なお、上記実施形態において、第1主体部材21及び第2主体部材22はそれぞれ別体の構成として説明したが、第1主体部材21及び第2主体部材22は一体の構成であっても良い。
また、主体部材21、22以外の部品については金属製でなくても良く、例えば樹脂材料等を採用することもできる。
更に、第1主体部材21と第2主体部材22とが閉じた状態における断面形状は、矩形でなくても良く、例えば円形や楕円形若しくは扁平形状であっても良い。
また、第1主体部材21と第2主体部材22とが閉じた状態における断面形状は、第1主体部材21及び第2主体部材22の長手方向の全体に亘って同一である必要はなく、途中で変化していても良い。
また、本実施形態において、火吹き棒兼用火鋏10は、1つのロック機構60を備えているが、2つ以上の同一構造又は異なる構造のロック機構を備えていても良い。
【0050】
以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…火吹き棒兼用火鋏、21…第1主体部材(主体部材)、22…第2主体部材(主体部材)、40…弾性部材、44…貫通穴、60…ロック機構、211…爪部、221…爪部、A…空気経路、J…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8