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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118563
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/64 20180101AFI20220805BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20220805BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20220805BHJP
   F24F 11/85 20180101ALI20220805BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20220805BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20220805BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20220805BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20220805BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20220805BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F5/00 101Z
F24F11/46
F24F11/85
F24F11/49
F24F11/88
F24F11/84
F24F140:00
F24F140:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015161
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】溝井国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 誠
(72)【発明者】
【氏名】落合 康敬
(72)【発明者】
【氏名】田崎 宣明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 冬樹
【テーマコード(参考)】
3L054
3L260
【Fターム(参考)】
3L054BF20
3L260AB06
3L260BA02
3L260BA31
3L260BA41
3L260CB37
3L260CB63
3L260EA07
3L260FA10
3L260FB25
3L260FB26
(57)【要約】
【課題】熱交換装置の負荷が増大した場合に、熱源機を早期に定常状態にできるようにする。
【解決手段】温度取得部11は、熱源機20に流入する際の水の温度を流入温度として取得する。温度比較部12は、温度取得部11により取得された流入温度と、流入温度の目標温度とを比較する。流量制御部13は、温度比較部12による比較結果に基づいて、水の第2の往路42での流量とバイパス路45での流量とを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換に用いられる流体を供給する熱源機と、
前記流体を用いて前記熱交換を行う熱交換装置と、
前記熱源機に接続され、前記熱源機からの前記流体を前記熱交換装置に向けて流す第1の往路と、
前記第1の往路と前記熱交換装置とに接続され、前記第1の往路を流れた前記流体を前記熱交換装置に流す第2の往路と、
前記熱交換装置に接続され、前記熱交換装置からの前記熱交換後の前記流体を前記熱源機に向けて流す第1の還路と、
前記第1の還路と前記熱源機とに接続され、前記第1の還路を流れた前記流体を前記熱源機に流す第2の還路と、
前記第1の往路と前記第2の還路とに接続され、前記第1の往路を流れた前記流体を前記第2の還路に流すバイパス路とを備える熱交換システム
を制御する制御装置であって、
前記熱源機に流入する際の前記流体の温度を流入温度として取得する温度取得部と、
前記温度取得部により取得された前記流入温度と、前記流入温度の目標温度とを比較する温度比較部と、
前記温度比較部による比較結果に基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量とを制御する流量制御部とを有する制御装置。
【請求項2】
前記流量制御部は、
前記流入温度と前記目標温度との間に温度差がある場合に、前記流入温度と前記目標温度との間の温度差に基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量とを制御する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記熱交換装置は、
冷房運転及び暖房運転の少なくともいずれかを行う空気調和機に含まれ、
前記流量制御部は、
前記流入温度と前記目標温度との間の温度差と前記空気調和機が行っている運転の種類とに基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量とを制御する請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記流量制御部は、
前記空気調和機が前記冷房運転を行っている場合に、
前記流入温度が前記目標温度よりも高ければ、前記流入温度と前記目標温度との間の温度差に基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量を現在の流量よりも増加させ、前記流体の前記バイパス路での流量を現在の流量よりも減少させ、
前記流入温度が前記目標温度よりも低ければ、前記流入温度と前記目標温度との間の温度差に基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量を現在の流量よりも減少させ、前記流体の前記バイパス路での流量を現在の流量よりも増加させる請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記流量制御部は、
前記空気調和機が前記暖房運転を行っている場合に、
前記流入温度が前記目標温度よりも低ければ、前記流入温度と前記目標温度との間の温度差に基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量を現在の流量よりも増加させ、前記流体の前記バイパス路での流量を現在の流量よりも減少させ、
前記流入温度が前記目標温度よりも高ければ、前記流入温度と前記目標温度との間の温度差に基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量を現在の流量よりも減少させ、前記流体の前記バイパス路での流量を現在の流量よりも増加させる請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記熱交換システムでは、
前記バイパス路に開閉可能なバイパス弁が設けられており、
前記流量制御部は、
前記バイパス弁の開閉を制御して、前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量とを制御する請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記熱交換システムでは、
前記第2の還路に運転周波数が可変のポンプが設けられており、
前記流量制御部は、
前記ポンプの前記運転周波数を制御して、前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量とを制御する請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記熱交換システムでは、
前記バイパス路に開閉可能なバイパス弁が設けられており、
前記流量制御部は、
前記ポンプの前記運転周波数の制御では前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量との制御が十分に行えない場合に、前記ポンプの前記運転周波数の制御に加えて前記バイパス弁の開閉を制御して、前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量とを制御する請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記熱交換システムの点検が行われることがあり、
前記温度取得部は、
前記熱交換システムの点検の開始前に前記流入温度を前記目標温度として取得し、更に、前記熱交換装置の点検の開始後に前記流入温度を取得する請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
熱交換に用いられる流体を供給する熱源機と、
前記流体を用いて前記熱交換を行う熱交換装置と、
前記熱源機に接続され、前記熱源機からの前記流体を前記熱交換装置に向けて流す第1の往路と、
前記第1の往路と前記熱交換装置とに接続され、前記第1の往路を流れた前記流体を前記熱交換装置に流す第2の往路と、
前記熱交換装置に接続され、前記熱交換装置からの前記熱交換後の前記流体を前記熱源機に向けて流す第1の還路と、
前記第1の還路と前記熱源機とに接続され、前記第1の還路を流れた前記流体を前記熱源機に流す第2の還路と、
前記第1の往路と前記第2の還路とに接続され、前記第1の往路を流れた前記流体を前記第2の還路に流すバイパス路とを備える熱交換システム
における前記流体の流量を制御する制御方法であって、
コンピュータが、前記熱源機に流入する際の前記流体の温度を流入温度として取得する温度取得ステップと、
前記コンピュータが、前記温度取得ステップにより取得された前記流入温度と、前記流入温度の目標温度とを比較する温度比較ステップと、
前記コンピュータが、前記温度比較ステップによる比較結果に基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量とを制御する流量制御ステップとを有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換システムを流れる流体の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、熱源機、負荷側機器(熱交換装置)、インバータ式1次ポンプ、バイパス弁、これらを接続する管路及びバイパス弁開度制御部で構成される水空気調和システムが開示されている。
特許文献1では、ポンプ周波数が、往還差圧(熱源機から負荷側機器への往路と還路の圧力差)が設定値となるように制御される。また、バイパス弁開度は、熱源機への流量が最小となるポンプ周波数に達したときに、往還差圧が設定値となるように制御される(開度0%から閉じる方向に変化)。熱源機流量が最小となるポンプ周波数は、設定差圧ごとに事前に記憶されているため、特許文献1によれば、設定差圧が変更されても、最小流量を確保し熱源機のフェールセーフが働くことなく、運転を継続できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-94937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱交換システムの点検(例えば、定期点検)では、熱源機の定常状態を診断するために熱源機の容量変化が少ない状態を維持することが望ましい。熱源機は通常、熱源機へ流入する際の流体の温度である流入温度(例えば、戻り水温)に応じて容量制御される。
熱交換システムの点検は、負荷側機器である熱交換装置を平常運転させたまま行われることが一般的である。このため、例えば、冷房運転時に熱交換装置での負荷が増大した場合には、熱源機への流入温度が上昇する。
特許文献1に開示されている制御では、熱交換装置への流体の流入量は変化しないため、熱源機への流入温度の上昇を抑制することができない。このため、熱源機が定常状態になるまでに長時間を要するという課題がある。そして、この課題により、結果的に、点検に長時間を要することになる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決することを主な目的の一つとしている。より具体的には、本開示は、熱交換装置の負荷が増大した場合に、熱源機を早期に定常状態にできるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る制御装置は、
熱交換に用いられる流体を供給する熱源機と、
前記流体を用いて前記熱交換を行う熱交換装置と、
前記熱源機に接続され、前記熱源機からの前記流体を前記熱交換装置に向けて流す第1の往路と、
前記第1の往路と前記熱交換装置とに接続され、前記第1の往路を流れた前記流体を前記熱交換装置に流す第2の往路と、
前記熱交換装置に接続され、前記熱交換装置からの前記熱交換後の前記流体を前記熱源機に向けて流す第1の還路と、
前記第1の還路と前記熱源機とに接続され、前記第1の還路を流れた前記流体を前記熱源機に流す第2の還路と、
前記第1の往路と前記第2の還路とに接続され、前記第1の往路を流れた前記流体を前記第2の還路に流すバイパス路とを備える熱交換システム
を制御する制御装置であって、
前記熱源機に流入する際の前記流体の温度を流入温度として取得する温度取得部と、
前記温度取得部により取得された前記流入温度と、前記流入温度の目標温度とを比較する温度比較部と、
前記温度比較部による比較結果に基づいて、前記流体の前記第2の往路での流量と前記バイパス路での流量とを制御する流量制御部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、熱交換装置の負荷が増大した場合に、熱源機を早期に定常状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る空気調和システムの構成例を示す図。
図2】実施の形態1に係る熱源機の内部構成例を示す図。
図3】実施の形態1に係る熱交換装置の内部構成例を示す図。
図4】実施の形態1に係る制御装置のハードウェア構成例を示す図。
図5】実施の形態1に係る制御装置の動作例を示すフローチャート。
図6】実施の形態1に係る点検開始前の状態の例を示す図。
図7】実施の形態1に係る点検中の状態の例を示す図。
図8】従来技術の点検中の状態の例を示す図。
図9】実施の形態1に係る点検中の状態の例を示す図。
図10】従来技術の制御方法と実施の形態1に係る制御方法とを示す図。
図11】実施の形態2に係る制御装置の動作例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を図を用いて説明する。以下の実施の形態の説明及び図面において、同一の符号を付したものは、同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る空気調和システムの構成例を示す。
本実施の形態に係る空気調和システムは、制御装置10と熱交換システム100で構成される。
【0011】
制御装置10は、熱交換システム100を制御する。制御装置10の内部構成は後述する。
制御装置10により行われる動作は制御方法に相当する。
【0012】
熱交換システム100は、熱源機20、熱交換装置30、第1の往路41、第2の往路42、第1の還路43、第2の還路44、バイパス路45、バイパス弁50、ポンプ60、流入温度センサ71、流出温度センサ72、往路圧力センサ73、還路圧力センサ74、ジョイント81及びジョイント82で構成される。
【0013】
熱源機20は、熱交換に用いられる流体を供給する。本実施の形態では、熱源機20は、流体として水を供給する。図1に示す白抜きの矢印は水の流れる方向を示している。
なお、熱源機20に水が流入する口を入口という。また、熱源機20から水が流出する口を出口という。
熱源機20は、図2に示すように、熱源機制御部21、水-冷媒熱交換器22、空気-冷媒熱交換器23、冷媒配管24、圧縮機25、四方弁26、膨張弁27及び送風機28を備える。なお、図2に示すこれらの構成は従来から存在するものであるため、説明を省略する。
【0014】
熱交換装置30は、冷房運転及び暖房運転の少なくともいずれかを行う空気調和機に含まれる。
熱交換装置30は、熱源機20から供給された水を用いて熱交換を行う。
熱交換装置30は、図3に示すように、空気-水熱交換器31、吸込温度センサ32、送風機33及び開閉弁34を備える。なお、図3に示すこれらの構成は従来から存在するものであるため、説明を省略する。
【0015】
第1の往路41は、熱源機20に接続され、熱源機20からの水を熱交換装置30に向けて流す管路である。
【0016】
第2の往路42は、ジョイント81を介して第1の往路41に接続され、また、熱交換装置30に接続されている管路である。
第2の往路42は、第1の往路41を流れた水を熱交換装置30に流す。
【0017】
第1の還路43は、熱交換装置30に接続され、熱交換装置30からの熱交換後の水を熱源機20に向けて流す管路である。
【0018】
第2の還路44は、ジョイント82を介して第1の還路43に接続され、また、熱源機20に接続されている管路である。
第2の還路44は、第1の還路43を流れた水を熱源機20に流す。
【0019】
バイパス路45は、ジョイント81を介して第1の往路41に接続され、また、ジョイント82を介して第2の還路44に接続されている管路である。
バイパス路45は、第1の往路41を流れた水を第2の還路44に流す。
【0020】
バイパス弁50は、バイパス路45に配置された弁である。
バイパス弁50は、開閉によりバイパス路45を流れる水の量を調整する。
【0021】
ポンプ60は、第2の還路44に配置され、第1の往路41、第2の往路42、第1の還路43、第2の還路44及びバイパス路45に水を搬送する。
なお、本実施の形態では、ポンプ60はインバータ式ではない。つまり、本実施の形態に係るポンプ60は運転周波数が固定されている。
【0022】
流入温度センサ71は、熱源機20の入口付近に配置され、水が熱源機20に流入する際の水温(流入温度という)を測定する。
流出温度センサ72は、熱源機20の出口付近に配置され、水が熱源機20から送出される際の水温(流出温度という)を測定する。
【0023】
往路圧力センサ73は、ジョイント81に接続され、ジョイント81での水圧を測定する。
還路圧力センサ74は、ジョイント82に接続され、ジョイント82での水圧を測定する。
なお、往路圧力センサ73及び還路圧力センサ74は省略可能である。
【0024】
ジョイント81は、第1の往路41と第2の往路42とバイパス路45とを接続する。
ジョイント82は、第1の還路43と第2の還路44とバイパス路45とを接続する。
【0025】
次に、制御装置10の構成要素を説明する。
【0026】
温度取得部11は、流入温度センサ71により測定された、熱源機20に流入する際の水の温度である流入温度を取得する。
定期点検等の熱交換システム100の点検が行われる場合に、温度取得部11は、点検の開始前の流入温度を目標温度として取得する。点検の開始後は、温度取得部11は定期的に流入温度を取得する。温度取得部11は、目標温度と流入温度とを温度比較部12に通知する。
温度取得部11により行われる処理は、流入温度取得ステップに相当する。
【0027】
温度比較部12は、温度取得部11により流入温度が通知される度に、通知された流入温度と目標温度とを比較する。
温度比較部12により行われる処理は、温度比較ステップに相当する。
【0028】
流量制御部13は、温度比較部12による比較結果に基づいて、水の第2の往路42での流量とバイパス路45での流量とを制御する。流量制御部13は、バイパス弁50の開閉を制御して、水の第2の往路42での流量とバイパス路45での流量とを制御する。
流量制御部13は、流入温度と目標温度との間に温度差がある場合に、流入温度と目標温度との間の温度差に基づいて、水の第2の往路42での流量とバイパス路45での流量とを制御する。
【0029】
前述したように、熱交換装置30は空気調和機に含まれる。流量制御部13は、流入温度と目標温度との間の温度差と空気調和機が行っている運転の種類(冷房運転か暖房運転)とに基づいて、水の第2の往路42での流量とバイパス路45での流量とを制御する。
具体的には、空気調和機が冷房運転を行っている場合は、流入温度が目標温度よりも高ければ、流量制御部13は、流入温度と目標温度との間の温度差に基づいて、第2の往路42での水の流量を現在の流量よりも増加させ、バイパス路45での水の流量を現在の流量よりも減少させる。一方、流入温度が目標温度よりも低ければ、流量制御部13は、流入温度と目標温度との間の温度差に基づいて、第2の往路42での水の流量を現在の流量よりも減少させ、バイパス路45での水の流量を現在の流量よりも増加させる。
また、空気調和機が暖房運転を行っている場合は、流入温度が目標温度よりも低ければ、流量制御部13は、流入温度と目標温度との間の温度差に基づいて、第2の往路42での水の流量を現在の流量よりも増加させ、バイパス路45での水の流量を現在の流量よりも減少させる。一方、流入温度が目標温度よりも高ければ、流量制御部13は、流入温度と目標温度との間の温度差に基づいて、第2の往路42での水の流量を現在の流量よりも減少させ、バイパス路45での水の流量を現在の流量よりも増加させる。
【0030】
流量制御部13により行われる処理は、流量制御ステップに相当する。
【0031】
図4は、制御装置10のハードウェア構成例を示す。
【0032】
本実施の形態に係る制御装置10は、コンピュータである。
制御装置10は、ハードウェアとして、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903及び通信装置904を備える。
補助記憶装置903には、温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13の機能を実現するプログラムが記憶されている。
これらプログラムは、補助記憶装置903から主記憶装置902にロードされる。そして、プロセッサ901がこれらプログラムを実行して、後述する温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13の動作を行う。
図4では、プロセッサ901が温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13の機能を実現するプログラムを実行している状態を模式的に表している。
【0033】
***動作の説明***
次に、本実施の形態に係る制御装置10の動作例を説明する。
図5は、制御装置10の動作例を示す。
【0034】
先ず、温度取得部11が流入温度センサ71から、点検開始前の流入温度を目標温度Twi0として取得する(ステップS101)。
温度取得部11は目標温度Twi0を補助記憶装置903に記憶させる(ステップS102)。
【0035】
次に、空気調和機の点検が開始された場合(ステップS103でYES)に、温度取得部11が流入温度センサ71から流入温度Twinを取得する(ステップS104)。
温度取得部11は流入温度Twinを温度比較部12に通知する。
【0036】
次に、温度比較部12が補助記憶装置903から目標温度Twi0を読み出す。
そして、温度比較部12が流入温度Twinと目標温度Twi0とを比較する(ステップS105)。
【0037】
比較の結果、流入温度Twinと目標温度Twi0が同じであれば(ステップS106でYES)、処理がステップS107に進み、温度取得部11が次の流入温度Twinの取得タイミングまで待つ。次の流入温度Twinの取得タイミングが到来したら、温度取得部11が新たな流入温度Twinを取得する。つまり、温度取得部11は定期的に流入温度Twinを取得する。
一方、流入温度Twinと目標温度Twi0が異なっていれば(ステップS106でNO)、温度比較部12が流量制御部13に流入温度Twinと目標温度Twi0との温度差を通知し、流量制御部13が通知された温度差に基づき、第2の還路44とバイパス路45との流量比を求める(ステップS108)。
【0038】
本実施の形態では、空気調和機が冷房運転を行っている場合に、Twin<Twi0であれば、流量制御部13は、第2の往路42の流量を増加させ、バイパス路45の流量を減少させるように流量比を決定する。一方で、Twin>Twi0であれば、流量制御部13は、第2の往路42の流量を減少させ、バイパス路45の流量を増加させるように流量比を決定する。
また、空気調和機が暖房運転を行っている場合は、Twin>Twi0であれば、流量制御部13は、第2の往路42の流量を増加させ、バイパス路45での流量を減少させるように流量比を決定する。一方、Twin<Twi0であれば、流量制御部13は、第2の往路42の流量を減少させ、バイパス路45の流量を増加させるように流量比を決定する。
【0039】
そして、流量制御部13は、ステップS108で求めた流量比に基づいてバイパス弁50の開度を求める(ステップS109)。
第2の往路42の流量を増加させ、バイパス路45の流量を減少させる場合は、流量制御部13はバイパス弁50を閉じる。一方、第2の往路42の流量を減少させ、バイパス路45の流量を増加させる場合は、流量制御部13はバイパス弁50を開ける。
例えば、流量制御部13は、事前に用意された、第2の往路42とバイパス路45との流量比とバイパス弁50の開度との関係を示すテーブルを参照して、バイパス弁50の開度を決定する。また、流量制御部13は、事前に用意された、第2の往路42とバイパス路45との流量比からバイパス弁50の開度を算出するための計算式を用いて、バイパス弁50の開度を決定する。
【0040】
次に、流量制御部13は、ステップS109で求めた開度に従ってバイパス弁50の開度を制御する(ステップS110)。
【0041】
点検が終了する場合(ステップS111でYES)は、制御装置10は処理を終了する。
一方、点検が継続している間(ステップS111でNO)は、処理がステップS107に進む。
【0042】
次に、図6図10を参照して、本実施の形態に係る制御装置10の動作を具体的に説明する。
以下の説明では、空気調和機が冷房運転をしているものとする。
【0043】
図6は、空気調和機の点検開始前の状態の例を示す。
なお、図6では、説明に直接関係のない制御装置10、往路圧力センサ73、還路圧力センサ74、ジョイント81、ジョイント82等の図示は省略している。図7以降でも、これらの要素の図示は省略している。
【0044】
図6の例では、点検開始前に流入温度センサ71で測定された流入温度である目標温度Twi0は12℃である。また、流出温度センサ72で測定された流出温度Two0は7℃である。また、熱交換装置30からの水の流出温度Tfo0は17℃である。
また、図6において、矢印の上に示された数字は、水の流量比である。すなわち、図6の例では、熱源機20から供給される水量のうちの半分がバイパス路45を流れる。残りの半分が第2の往路42に流れ、熱交換装置30に供給される。バイパス路45を流れた水量と、第2の往路42、熱交換装置30を経て第1の還路43を流れた水量とが第2の還路44で合流する。
【0045】
なお、前述したように、空気調和機の点検は、負荷側機器である熱交換装置30を平常運転させたまま行われることが一般的である。冷房運転時に熱交換装置30の負荷に変化がない場合は、熱源機20への流入温度に変化はない。しかし、冷房運転時に熱交換装置30の負荷が増大した場合には、熱源機20への流入温度が上昇する。
【0046】
図7は、空気調和機の点検中の状態の例を示す。
図7の例では、熱交換装置30の負荷に変化がないため、Twin、Twon及びTfonのいずれにも変化がない。また、第2の往路42の流量及びバイパス路45の流量にも変化がない。また、熱源機20内の圧縮機25(図2)の周波数compfにも変化がない。
【0047】
図8は、特許文献1に開示の従来技術における点検中の状態の例を示す。
図8の例では、熱交換装置30の負荷が増加し、流出温度Tfo0が21℃に上昇(4℃上昇)したものとする。このため、流入温度Twinが14℃に上昇(2℃上昇)し、また、圧縮機25の周波数compfも増加している。特許文献1の技術では、第2の往路42への流量とバイパス路45への流量は変化ないため、長時間にわたって流入温度Twinが14℃のままであり、また、圧縮機25の周波数compfも高いままである。
このように、従来技術では、圧縮機25の周波数compfが高いままなので、熱源機20が定常状態になるまでに長時間を要することになり、結果的に、点検に長時間を要することになる。
圧縮機25の周波数compfの増加を抑制する(安定させる)ためには、熱源機20への水の流入温度Twinを点検開始前の流入温度(つまり、目標温度Twi0)まで下げる必要がある。
このため、本実施の形態では、第2の往路42の流量を増やし、バイパス路45の流量を減らすことで、流入温度Twinを目標温度Twi0に近づける。
【0048】
図9は、本実施の形態での点検中の状態の例を示す。
図8と同様に、熱交換装置30の負荷が増加し、Tfonが21℃に上昇(4℃上昇)したものとする。熱交換装置30の負荷増加直後は、図8と同様に、Twinが14℃に上昇(2℃上昇)し、また、圧縮機25の周波数compfも増加する。
しかし、本実施の形態では、流入温度Twin(14℃)が目標温度Twi0(12℃)よりも高くなっていることから、流量制御部13が、バイパス弁50を閉じることで、第2の往路42への流量を増やし、バイパス路45への流量を減らす。図9の例では、流量制御部13は、第2の往路42への流量比を8に増やし、バイパス路45への流量比を2に減らしている。第2の往路42への流量を増やすことで、熱源機20で冷やされた水(7℃)が熱交換装置30に多く流れ込む。これにより、早期に流出温度Tfonを例えば15.75℃に下げることができる。この結果、流入温度Twinを14℃よりも低い温度にすることができる。従って、圧縮機25の周波数compfも早期に抑制することができる。
【0049】
次に、図10を用いて、本実施の形態で、従来技術に比べて流入温度Twinを低い温度にすることができる理由を説明する。
図10の(a)は、従来技術における制御(第2の往路42の流量が変化しない制御)を示す。図10の(b)は、本実施の形態における制御(第2の往路42の流量が増加する制御)を示す。
また、図10において、q1は従来技術における熱交換量を示す。q2は、本実施の形態における熱交換量を示す。
また、Gr1は従来技術における水循環量を示す。Gr2は、本実施の形態における水循環量を示す。
また、Tfinは熱交換装置30への水の流入温度を示す。
また、Tfon1は従来技術における熱交換装置30からの水の流出温度を示す。Tfon2は本実施の形態における熱交換装置30からの水の流出温度を示す。
また、Cpは水比熱を示す。
【0050】
室内機の空気側能力は下記で表される。
[空気側能力(kW)]=[熱通過率(kW/K)]×[温度差(K)]
[温度差(K)]=[室内機の吸い込み空気温度(℃)]-[熱交表面の平均温度(℃)]
水の流量を増やすと熱通過率が増大(電熱性能が向上)するので、空気側能力が増大する特性がある。
しかし、実際には、点検中の従来技術における負荷と本実施の形態における負荷は同じなので、空気側能力は増加しない。
よって、見かけ上は、[従来技術の空気側能力]>[本実施の形態の空気側能力]である。
一方、水側能力は、下記で表される。
[水側能力(kW)]=[水循環量(kg/s)]×[水比熱(kJ/kgK)]×[熱交換装置30の流入温度差(K)]
空気側能力=水側能力であり、上述の不等号が成立するので、図10のように、q1>q2が成立する。
この式を流出温度Tfon2について解くと、以下が得られる。
Gr1・Cp(Tfon1-Tfin)>Gr2・Cp(Tfon2-Tfin)
また、Gr1:Gr2=5:8
よってTfon2<15.75℃
バイパス路45を流れた水と第1の還路43を流れた水が合流した後の水温、つまり、Tfon2は以下の式で表される。
8Tfon2+2Tfin=10Tfin
よって、Tfon2<14℃
【0051】
***実施の形態の効果の説明***
本実施の形態によれば、熱交換装置の負荷が増大した場合に、熱交換装置への水の供給量を増加させることにより、熱源機を早期に定常状態にすることができる。
また、本実施の形態によれば、熱交換装置への水の供給量を増加させることで、熱交換装置での伝熱性能を向上させることができ、この結果、空気調和機の能力が向上し、居住空間の快適性を維持することができる。
【0052】
実施の形態2.
本実施の形態では、主に実施の形態1との差異を説明する。
なお、以下で説明していない事項は、実施の形態1と同様である。
【0053】
本実施の形態では、図1に示すポンプ60がインバータ式(変速式)であるものとする。つまり、本実施の形態では、ポンプ60は運転周波数が可変のポンプである。
そして、本実施の形態では、流量制御部13は、ポンプ60の運転周波数を制御して、第2の往路42の流量とバイパス路45の流量を制御する。また、流量制御部13は、ポンプ60の運転周波数の制御では、第2の往路42の流量とバイパス路45の流量の制御が十分に行えない場合に、ポンプ60の運転周波数の制御に加えてバイパス弁50の開閉を制御して、第2の往路42の流量とバイパス路45の流量を制御する。
ポンプ60がインバータ式である点及び流量制御部13がポンプ60の運転周波数を制御する点を除いては、図1に示す構成は実施の形態1に示したものと同じである。
【0054】
図11は、本実施の形態に係る制御装置10の動作例を示す。
【0055】
図11において、ステップS201~ステップS208は、図5に示すステップS101~ステップS108と同じであるため、説明を省略する。
【0056】
ステップS209において、流量制御部13は、ステップS208で決定した流量比に基づいて、ポンプ60の運転周波数を求める。
例えば、流量制御部13は、事前に用意された、第2の往路42とバイパス路45との流量比とポンプ60の運転周波数との関係を示すテーブルを参照して、ポンプ60の運転周波数を決定する。また、流量制御部13は、事前に用意された、第2の往路42とバイパス路45との流量比からポンプ60の運転周波数を算出するための計算式を用いて、ポンプ60の運転周波数を決定する。
【0057】
次に、流量制御部13は、ポンプ60の運転周波数をステップS209で決定した運転周波数に変更する(ステップS210)。
【0058】
次に、流量制御部13は、バイパス弁50の開度制御が必要か否かを判定する(ステップS211)。
ステップS210でポンプ60の運転周波数を変更した結果、熱源機20への流量が既定の最小流量となった場合には、流量制御部13はバイパス弁50の開度制御が必要であると判定する。
【0059】
バイパス弁50の開度制御が必要な場合(ステップS211でYES)は、流量制御部13はバイパス弁50の開度を求める(ステップS212)。
【0060】
流量制御部13は、ステップS212で求めた開度に従ってバイパス弁50の開度を制御する(ステップS213)。
【0061】
点検が終了する場合(ステップS214でYES)は、制御装置10は処理を終了する。
一方、点検が継続している間(ステップS214でNO)は、処理がステップS207に進む。
【0062】
以上、本実施の形態によれば、ポンプがインバータ式である空気調和システムにおいて、熱交換装置の負荷が増大した場合に、熱交換装置への水の供給量を増加させることにより、熱源機を早期に定常状態にすることができる。
【0063】
以上、実施の形態1及び2を説明したが、これら2つの実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。
あるいは、これら2つの実施の形態のうち、1つを部分的に実施しても構わない。
あるいは、これら2つの実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
また、これら2つの実施の形態に記載された構成及び手順を必要に応じて変更してもよい。
【0064】
***ハードウェア構成の補足説明***
最後に、制御装置10のハードウェア構成の補足説明を行う。
図4に示すプロセッサ901は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)である。
プロセッサ901は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等である。
図4に示す主記憶装置902は、RAM(Random Access Memory)である。
図4に示す補助記憶装置903は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等である。
図4に示す通信装置904は、データの通信処理を実行する電子回路である。
通信装置904は、例えば、通信チップ又はNIC(Network Interface Card)である。
【0065】
また、補助記憶装置903には、OS(Operating System)も記憶されている。
そして、OSの少なくとも一部がプロセッサ901により実行される。
プロセッサ901はOSの少なくとも一部を実行しながら、温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13の機能を実現するプログラムを実行する。
プロセッサ901がOSを実行することで、タスク管理、メモリ管理、ファイル管理、通信制御等が行われる。
また、温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13の処理の結果を示す情報、データ、信号値及び変数値の少なくともいずれかが、主記憶装置902、補助記憶装置903、プロセッサ901内のレジスタ及びキャッシュメモリの少なくともいずれかに記憶される。
また、温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13の機能を実現するプログラムは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD等の可搬記録媒体に格納されていてもよい。そして、温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13の機能を実現するプログラムが格納された可搬記録媒体を流量させてもよい。
【0066】
また、温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13の「部」を、「回路」又は「工程」又は「手順」又は「処理」に読み替えてもよい。
また、制御装置10は、処理回路により実現されてもよい。処理回路は、例えば、ロジックIC(Integrated Circuit)、GA(Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)である。
この場合は、温度取得部11、温度比較部12及び流量制御部13は、それぞれ処理回路の一部として実現される。
【符号の説明】
【0067】
10 制御装置、11 温度取得部、12 温度比較部、13 流量制御部、20 熱源機、21 熱源機制御部、22 水-冷媒熱交換器、23 空気-冷媒熱交換器、24 冷媒配管、25 圧縮機、26 四方弁、27 膨張弁、28 送風機、30 熱交換装置、31 空気-水熱交換器、32 吸込温度センサ、33 送風機、34 開閉弁、41 第1の往路、42 第2の往路、43 第1の還路、44 第2の還路、45 バイパス路、50 バイパス弁、60 ポンプ、71 流入温度センサ、72 流出温度センサ、73 往路圧力センサ、74 還路圧力センサ、81 ジョイント、82 ジョイント、100 熱交換システム、901 プロセッサ、902 主記憶装置、903 補助記憶装置。904 通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11