(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118567
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】引戸位置調整支援装置及び引戸位置調整支援システム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/41 20150101AFI20220805BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
E05F15/41
B61D19/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015169
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋輔
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA08
2E052DB08
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC02
2E052GA08
2E052GB06
2E052GB12
2E052HA01
(57)【要約】
【課題】引戸開閉装置の前に作業者がわざわざ行かなくても引戸の位置調整の要否判断が可能になる技術を提供する。
【解決手段】引戸位置調整支援装置は、駆動部を制御して引戸を開閉方向に移動させる駆動制御部101と、引戸の戸先に設けられた戸先ゴムが対向物に接触した状態で、駆動制御部101によって所定の動作条件で引戸を対向物に押し付ける方向に駆動させた場合の引戸の移動距離及び引戸にかかる荷重の少なくとも一方に関する測定値を取得する測定値取得部102と、測定値取得部102が取得した測定値を出力する測定値出力部103と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部を制御して引戸を開閉方向に移動させる駆動制御部と、
前記引戸の戸先に設けられた戸先ゴムが対向物に接触した状態で、前記駆動制御部によって所定の動作条件で前記引戸を前記対向物に押し付ける方向に駆動させた場合の当該引戸の移動距離及び当該引戸にかかる荷重の少なくとも一方に関する測定値を取得する測定値取得部と、
前記測定値取得部が取得した前記測定値を出力する測定値出力部と、
を備える、引戸位置調整支援装置。
【請求項2】
前記出力された測定値と予め定められた基準値との比較結果を出力する比較結果出力部をさらに備える、請求項1に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項3】
前記出力された比較結果に基づいて、前記引戸の位置調整の要否判断結果を報知する判断結果報知部をさらに備える、請求項2に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項4】
前記引戸は、プラットホーム又は鉄道車両において、鉄道車両への複数の乗降口のうちの1つを開閉する第1の引戸であり、
前記第1の引戸が設けられた前記乗降口と隣接する乗降口を開閉する第2の引戸についての前記測定値又は前記第2の引戸についての前記位置調整の要否判断結果を取得する隣接引戸情報取得部と、
前記第1の引戸についての前記測定値と前記第2の引戸についての前記測定値との乖離度合いが所定の範囲を超えた場合、又は前記第1の引戸についての前記位置調整の要否判断結果と前記第2の引戸についての前記位置調整の要否判断結果とが一致しない場合、前記第2の引戸についての前記測定値又は前記第2の引戸についての前記位置調整の要否判断結果を報知する隣接引戸情報報知部と、
を備える、請求項3に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項5】
前記比較結果出力部は、前記測定値を測定したときと同じ気温で測定された他の前記測定値を前記基準値として用いる、請求項2から4のいずれか1項に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記引戸の位置調整が完了した後に、前記戸先ゴムを前記対向物に再度押し付けるように前記駆動部を制御し、
前記測定値取得部は、前記再度押し付けられるときの測定値を取得し、
前記再度押し付けられるときの測定値を前記基準値として更新する更新部を備える、請求項2から5のいずれか1項に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項7】
前記比較結果出力部は、前記測定値を取得したときの気温と前記更新された基準値に関する前記測定値を取得したときの気温との比較結果を報知する、請求項6に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項8】
前記比較結果出力部は、前記測定値に対する前記基準値の差分を報知する、請求項2から7のいずれか1項に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項9】
前記所定の動作条件は、前記引戸に所定の荷重を加えること又は前記引戸を所定の距離だけ移動させることであり、
前記測定値取得部は、前記所定の動作条件が前記引戸に所定の荷重を加えることである場合に前記移動距離を取得し、前記所定の動作条件が前記引戸を所定の距離だけ移動させることである場合に前記荷重を取得する、請求項1から8のいずれか1項に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項10】
前記対向物は、戸当たり、又は前記引戸が両開き式の一方の引戸である場合における他方の引戸の戸先ゴムである、請求項1から9のいずれか1項に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項11】
前記駆動制御部は、前記駆動部が有するモータに流す駆動電流を制御し、
前記測定値取得部は、前記荷重に関する測定値として前記駆動電流を取得する、請求項1から10のいずれか1項に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項12】
第1の時点で取得された前記測定値と、前記第1の時点よりも前の第2の時点で取得された前記測定値との比較に基づいて、前記引戸の位置調整が必要となるタイミングを予測する予測部を備える、請求項1から11のいずれか1項に記載の引戸位置調整支援装置。
【請求項13】
プラットホーム又は鉄道車両において、鉄道車両への複数の乗降口を開閉する複数の引戸に用いられる複数の情報出力装置であって、テスト指令信号に応じて、
駆動部を制御して引戸を開閉方向に移動させる動作と、
前記引戸の戸先に設けられた戸先ゴムが対向物に接触した状態で、所定の動作条件で前記引戸を前記対向物に押し付ける方向に駆動させた場合の当該引戸の移動距離及び当該引戸にかかる荷重の少なくとも一方に関する測定値を取得する動作と、
前記取得した測定値を出力する動作と、
を実行する複数の情報出力装置と、
前記複数の情報出力装置のうちの少なくとも1つに、前記移動させる動作、前記取得する動作及び前記出力する動作を実行させるための前記テスト指令信号を出力する指令装置と、
を備える、引戸位置調整支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸位置調整支援装置及び引戸位置調整支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベビーカーの引きずり事故等の発生を抑制する観点から、戸挟検知技術に関する関心が高くなっている。特許文献1には、鉄道車両等に設けられたドアの閉動作時における戸挟みを検知する戸挟検出システムが記載される。特許文献1の戸挟検出システムでは、スライド式の1組の各ドアの閉方向の先端部に取り付けられた戸先ゴムの弾性変形に応じて、戸挟みが検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
戸挟検出システムにおいて用いられる戸先ゴム等のゴム部材の硬度は、温度や湿度などの外的要因による影響を受けやすい。温度や湿度によってこれらゴム部材の硬度が大きく変化した状態で引戸開閉装置の運用を続けると、戸挟み検知機能が適切に得られない場合がある。そのため、引戸開閉装置では、戸挟み検知機能が適切に得られるように、引戸の取付位置を調整する作業が行われる。
【0005】
しかし、従来、この位置調整作業では、全ての引戸開閉装置の前に作業者が実際に行って戸挟検知の適否を確認する必要があった。そのため、1編成の全ての引戸を確認するために、多くの時間を費やしていた。
【0006】
上記課題を鑑みて、本開示の目的は、引戸開閉装置の前に作業者がわざわざ行かなくても引戸の位置調整の要否を判断することを可能にする引戸位置調整支援装置及び引戸位置調整支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の引戸位置調整支援装置は、駆動部を制御して引戸を開閉方向に移動させる駆動制御部と、前記引戸の戸先に設けられた戸先ゴムが対向物に接触した状態で、前記駆動制御部によって所定の動作条件で前記引戸を前記対向物に押し付ける方向に駆動させた場合の当該引戸の移動距離及び当該引戸にかかる荷重の少なくとも一方に関する測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値取得部が取得した前記測定値を出力する測定値出力部と、を備える。
【0008】
本開示の別の態様の引戸位置調整支援システムは、プラットホーム又は車両において、車両への複数の乗降口を開閉する複数の引戸に用いられる複数の情報出力装置であって、指令信号に応じて、駆動部を制御して引戸を開閉方向に移動させる動作と、前記引戸の戸先に設けられた戸先ゴムが対向物に接触した状態で、所定の動作条件で前記引戸を前記対向物に押し付ける方向に駆動させた場合の当該引戸の移動距離及び当該引戸にかかる荷重の少なくとも一方に関する測定値を取得する動作と、前記取得した測定値を出力する動作と、を実行する複数の情報出力装置と、前記複数の情報出力装置のうちの少なくとも1つに、前記移動させる動作、前記取得する動作及び前記出力する動作を実行させるための前記指令信号を出力する指令装置と、を備える。
【0009】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、引戸開閉装置の前に作業者がわざわざ行かなくても引戸の位置調整の要否を判断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】引戸開閉装置の構成を概略的に示す正面図である。
【
図3】第1実施形態のドア制御装置のブロック図である。
【
図4】引戸の位置調整作業を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態のドア制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態のドア制御装置のブロック図である。
【
図7】第2実施形態のドア制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態のドア制御装置のブロック図である。
【
図9】第3実施形態のドア制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】第4実施形態のドア制御装置のブロック図である。
【
図11】第5実施形態のドア制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
[第1実施形態]
図1及び
図2を参照する。鉄道車両には、その乗降口を開閉するための引戸開閉装置1が設けられる。引戸開閉装置1は、左右一対の引戸10(10A及び10B)と、レール移動体20と、引戸レール30と、駆動部40と、ロック装置50と、ドアクローズスイッチ61及びドアロックスイッチ62と、ドア制御装置100と、を備える。ドア制御装置100は、例えば鉄道車両の運転室に設けられた車両制御装置2と通信可能である。本実施形態のドア制御装置100は、引戸位置調整支援装置及び情報出力装置の一例である。
【0014】
車両制御装置2は、ドア制御装置100の上位装置であり、ドア制御装置100に引戸10の開閉を制御するための開閉指令信号を送信可能に構成される。本実施形態の車両制御装置2は、ドア制御装置100に後述のテスト指令信号を送信可能に構成される。本実施形態の車両制御装置2は、指令装置の一例である。本実施形態の車両制御装置2及びドア制御装置100は、引戸位置調整支援システムの一例である。
【0015】
一対の引戸10A及び10Bは、それぞれ反対方向へ移動して乗降口を開閉する。本実施形態の引戸10A及び10Bは、両開き式の引戸である。各引戸10A及び10Bは、レール移動体20から吊り下げられる。各引戸10A及び10Bには、それぞれ戸先ゴム11(11A及び11B)が設けられる。戸先ゴム11は、引戸10の全閉時に対向する戸先ゴム11と突き合わされて圧着されることで、引戸10A及び10Bの戸先の間の隙間を封止する。各引戸10は、全開位置において戸袋12に収容される。引戸10と戸袋12との間の隙間には、振れ止めゴム13が設けられる。振れ止めゴム13は、引戸10の振動を抑制するように引戸10を保持する。
【0016】
レール移動体20は、ドアハンガー21と、樹脂製の戸車22と、を備える。ドアハンガー21は、戸車22を内蔵する。ドアハンガー21は、引戸10を吊り下げるように引戸10に取り付けられる。ドアハンガー21は、駆動部40の後述の引戸駆動機構42に取り付けられ、駆動部40の駆動に応じて引戸レール30に沿って開閉方向に移動可能に構成される。
【0017】
引戸レール30は、車両本体において引戸10の上方に設けられる。引戸レール30には、ドアハンガー21が戸車22を介して取り付けられる。
【0018】
駆動部40は、鉄道車両の出入口の上縁部に配置された電動式のモータ41と、ラックやピニオン等で構成される引戸駆動機構42と、を備える。モータ41は、引戸駆動機構42及びレール移動体20を介して引戸10と連結される。モータ41の出力軸が一方向に回転すると引戸10が開方向に移動し、モータ41の出力軸が他方向に回転すると引戸10が閉方向に移動する。
【0019】
ロック装置50は、全閉状態にある一対の引戸10が開かないようにロックする機能を有する。ロック装置50は、1組の引戸10毎に設けられる。ロック装置50は、引戸10側に向けて出没可能なロックピン(不図示)を備える。ロック装置50のロックピンが施錠位置に移動して全閉状態にある引戸10の穴部(不図示)に挿し入れられることで、引戸10が移動不能な状態にロックされる。なお、これに限定されず、ロック装置50は、公知の種々の手法によって引戸10が開かないようにロックしてもよい。
【0020】
ドアクローズスイッチ61は、引戸10の全閉を検出する。ドアクローズスイッチ61は、引戸10が全閉位置まで移動すると、引戸10によって押圧される全閉検出用のリミットスイッチ(不図示)を有する。全閉検出用のリミットスイッチが押圧されることにより、引戸10の全閉が検出される。
【0021】
本実施形態のドアクローズスイッチ61は、引戸10が全閉位置からその対向する引戸10の戸先ゴム11に押し付ける方向に所定の距離だけ移動したことを検出する(以下、この移動後の位置を「テスト位置」という)。ドアクローズスイッチ61は、引戸10がテスト位置まで移動すると、引戸10によって押圧されるテスト用のリミットスイッチをさらに有する。テスト用のリミットスイッチが押圧されると、引戸10がテスト位置まで移動したことが検出される。
【0022】
ドアロックスイッチ62は、ロック装置50による引戸10のロックを検出するスイッチである。ドアロックスイッチ62は、ロック装置50のロックピンが施錠位置に移動すると、ロックピンによって押圧されるロック検出用のリミットスイッチで構成される。ロック検出用のリミットスイッチが押圧されると、引戸10のロックが検出される。ドアロックスイッチ62は、例えば、ロック装置50に内蔵される。
【0023】
図3を参照して、ドア制御装置100を説明する。以下の図に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、演算機能、制御機能、記憶機能、入力機能、出力機能を有するコンピュータや、各種の電子素子、機械部品等で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックが描かれる。したがって、これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによって様々な形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
ドア制御装置100は、駆動制御部101と、測定値取得部102と、測定値出力部103と、ロック制御部104と、戸挟み検知部105と、ロック検知部106と、通信部107と、を備える。本実施形態のドア制御装置100は、1編成の全ての乗降口について、その引戸10の近傍に設置される(
図1参照)。
【0025】
駆動制御部101は、駆動部40を制御して引戸10を開閉方向に移動させる。本実施形態の駆動制御部101は、通信部107を介して供給された後述のテスト指令信号に応答して、引戸10の全閉位置から、さらに閉方向に引戸10を駆動できるように構成される。本実施形態の駆動制御部101は、駆動部40が有するモータ41に流す駆動電流を制御することにより、引戸10の開閉方向の駆動を制御する。
【0026】
測定値取得部102は、後述の所定の測定値を取得する。本実施形態の測定値取得部102は、荷重に関する測定値として駆動電流を取得する。
【0027】
測定値出力部103は、測定値取得部102が取得した測定値を出力する。本実施形態の測定値出力部103は、通信部107を介して、車両制御装置2などの外部装置に測定値を出力して、その出力結果をその表示画面に表示させる。
【0028】
ロック制御部104は、引戸10が全閉されたときに引戸10をロックするようにロック装置50を制御する。ロック制御部104は、例えば、車両制御装置2から通信部107を介して引戸10をロックさせるためのロック指令信号を受信したことに応答して、引戸10をロックする。ロック指令信号は、例えば、車両制御装置2が各乗降口に設けられた全てのドアクローズスイッチ61から引戸10の全閉の検出信号を受信した場合に車両制御装置2によって出力される。ロック制御部104は、引戸10のロックを解除するようにロック装置50を制御する。なお、駆動制御部101は、ロック装置50を制御するためにロック制御部104にロック装置50を駆動させるための指令を送ってもよい。
【0029】
戸挟み検知部105は、引戸10の戸先に異物(人及び人の一部、並びに物を含む)が挟まって引戸10をロックできない状態(いわゆる戸挟み状態)になったときに、戸挟みを検知する。例えば、戸挟み検知部105は、引戸10の閉じ駆動中において、ロック装置50によって引戸10がロックされる前にモータ41の回転が停止されたときに、戸挟み状態であると検知する。戸挟みが検知されるときの物体の厚さ(以下、戸挟み検知厚さという)は、引戸10の取り付け位置を調整することにより調整可能である。戸挟み検知部105は、戸挟みを検知すると、通信部107を介して戸挟み検知信号を車両制御装置2に送信し、戸挟みを報知する。
【0030】
ロック検知部106は、ロック装置50による引戸10のロックを検知する。例えば、ロック検知部106は、ドアロックスイッチ62による引戸10のロックの検出に応じて、引戸10のロックを検知する。ロックが検知されるときの物体の厚さ(以下、ロック検知厚さという)は、引戸10の取り付け位置を調整することにより調整可能である。ロック検知部106は、ロックを検知すると、通信部107を介してロック検知信号を車両制御装置2に送信し、ロックを報知する。
【0031】
通信部107は、外部装置と通信を行う。本実施形態の通信部107は、車両制御装置2と通信可能に構成される。
【0032】
以下、引戸10の位置調整作業について説明する。戸先ゴム11、振れ止めゴム13、樹脂製の戸車22等の柔らかさ(又は硬度)は、周囲の温度や湿度などの外部要因によって変化する。例えば、外気温が高くなり、戸先ゴム11が柔らかくなると、閉動作時に戸先ゴム11A及び11Bが異物を挟んだ場合、戸先ゴム11A及び11Bが潰れやすくなって引戸10A及び10Bが互いに近づきやすくなる。また、振れ止めゴム13や戸車22等が柔らかくなると、開閉動作の際の引戸10に対する抵抗が小さくなって引戸10A及び10Bが互いに近づきやすくなる。この場合、例えば厚さD1mmの異物を挟んだ場合に戸挟みが検知されるように元々設定されていたとしても、実際に厚さD1mmの異物を挟んだときに戸挟みが検知されずにロックしてしまうことが想定される。このように、戸挟が検知されにくくなるため、乗客の安全性に悪影響を与えてしまう。また、外気温が低くなり、戸先ゴム11が硬くなると、閉動作時に戸先ゴム11A及び11Bが異物を挟んだ場合、戸先ゴム11A及び11Bが潰れにくくなって引戸10A及び10Bが互いに近づきにくくなる。また、振れ止めゴム13や戸車22等が硬くなると、引戸10が開閉する際の抵抗が大きくなって引戸10が近づきにくくなる。この場合、例えば厚さD2mmの異物を挟んだ場合にロックされるように元々設定されたとしても、実際に厚さD2mmの異物を挟んだときにロックされずに戸挟みが検知されてしまうことが想定される。このとき、通常、薄い物体が引戸10に引っかかっているだけで発車できていたものが、発車できずに戸挟検知を繰り返し、定時運行に悪影響を与えてしまう。このように、周囲の温度や湿度等によっては、ロック機能および戸挟み検知機能が適切に得られない場合がある。これに対処するために、例えば保安点検時や季節毎に、引戸10の取り付け位置を調整する作業(位置調整作業)が行われる。
【0033】
この位置調整作業では先ず、鉄道車両に引戸開閉装置1が取り付けられる。次に、ロック検知厚さを調整するためのロック調整作業と戸挟み検知厚さを調整するための戸挟み調整作業とが実行される。
【0034】
ロック調整作業について説明する。
図4に示すように、ロック調整作業では、戸挟調整治具5を引戸10の開閉経路上に配置した状態で引戸10を閉じ駆動し、既定の厚さの戸挟調整治具5を戸先ゴム11A及び11Bで挟んだときに、ロックが検知されるかどうかが判断される。ロック調整作業の場合、ロック位置調整用の厚さの戸挟調整治具5が用いられる。ロックが検知された場合、ロックが適切になされるものとして、ロック調整作業が終了する。一方で、ロックが検知されない場合(または、戸挟みが検知される場合)、例えばロック状態において、引戸10の取り付け位置が調整される。この作業により、戸挟調整治具5を戸先ゴム11で挟んだときのロック装置50のロックピン(不図示)と引戸10の穴部(不図示)との相対的な位置が調整される。これにより、戸挟調整治具5を戸先ゴム11で挟んだときにロックピンを引戸10の穴部に挿入させて引戸10をロックさせることが図られる。その後、戸挟調整治具5を用いてロックが検知されるかどうかが再度判断され、ロックが検知されるまで引戸10の位置調整作業が繰り返される。
【0035】
戸挟み調整作業について説明する。戸挟み調整作業では、ロック調整作業の場合とは厚さが異なる戸挟調整治具5が用いられる点を除き、ロック調整作業と基本的に同様の作業が行われる。戸挟み調整作業の場合、戸挟み調整用の厚さの戸挟調整治具5が用いられる。戸挟調整治具5を戸先ゴム11A及び11Bで挟んだ状態で戸挟みが検知される場合(または、ロックが検知されない場合)、戸挟み検知が適切に機能するものとして、戸挟み調整作業が終了する。一方で、戸挟みが検知されない場合(または、ロックが検知される場合)、戸挟みが検知されるまで引戸10の位置調整作業が繰り返される。
【0036】
以上のようにして、ロック及び戸挟みが共に適切に検知されるように位置調整作業が行われる。
【0037】
しかし、従来の位置調整作業では、作業員が全ての引戸開閉装置1の前に行き、戸挟調整治具5を戸先ゴム11で挟ませて、引戸10の位置調整の要否を判断する必要があった。そのため、1編成の全ての引戸10を確認するために、多くの時間を費やしていた。
【0038】
本発明者らは、以下の手法を用いることにより、作業者が引戸開閉装置1の前にわざわざ行かなくても引戸10の位置調整の要否を判断できることを見出した。以下、この手法について詳細に説明する。
【0039】
図5を用いて、本実施形態のドア制御装置100の動作について説明する。
図5は、引戸10の位置調整の要否の判断を支援するための動作S10を示すフローチャートである。
【0040】
S11で、駆動制御部101は、通信部107を介して車両制御装置2からテスト指令信号を受信する。このテスト指令信号は、例えば鉄道事業者による引戸開閉装置1の保安点検時に、車両制御装置2へのユーザ入力に応答して車両制御装置2から1編成の少なくとも1つの乗降口に設置されたドア制御装置100に送信される。
【0041】
S12で、駆動制御部101は、テスト指令信号に応答して、戸先ゴム11を対向する戸先ゴム11に接触させるように引戸10A及び10Bを全閉位置に移動させる。さらに、駆動制御部101は、引戸10を全閉位置からその対向する戸先ゴム11に押し付ける方向に所定の距離だけさらに移動させることにより、引戸をテスト位置に移動させる。本実施形態では、ドアクローズスイッチ61の上記テスト用のリミットスイッチの押圧によって引戸10がテスト位置に位置することが検出されると、駆動制御部101は、上記押し付ける方向への引戸10の移動を停止する。このように、引戸10をテスト位置に移動させて、戸先ゴム11A及び11Bを押し潰すことにより、戸先ゴム11A及び11Bが戸挟調整治具5を挟んだ状態を模擬している。
【0042】
S13で、測定値取得部102は、S12において引戸10をテスト位置に移動させたときに引戸10にかかる開方向の荷重に関する測定値を取得する。ここで、上述したように、戸先ゴム11、振れ止めゴム13、戸車22等の硬さは、周囲の温度や湿度などの外部要因によって変化する。また、テスト位置において引戸10にかかる開方向の荷重は、戸先ゴム11、振れ止めゴム13、戸車22等の硬さに依存して変化する。戸先ゴム11の硬さは戸先ゴム11が押し付けられて潰れる際の反発力の大きさに影響を与え、振れ止めゴム13、戸車22等の硬さは開閉動作の際の引戸10に対する抵抗の大きさに影響を与えるためである。そのため、この開方向の荷重を推定することにより、仮に戸先ゴム11A及び11Bが戸挟調整治具5を挟んだときの引戸10の閉方向の移動のしやすさを把握することが可能となる。その結果、戸挟み検知及びロック検知のしやすさをそれぞれ把握することが可能となる。
【0043】
本実施形態では、上記荷重に関する測定値として駆動部40が有するモータ41の駆動電流が取得される。ここで、引戸10にかかる荷重が増えると、駆動部40で用いられるモータ41の負荷が増え、ひいてはモータ41の駆動電圧のデューティ比が大きくなり、モータ41の駆動電流も増加する。そのため、モータ41の駆動電流に基づいて、引戸10にかかる荷重を推定することが可能である。測定値取得部102は、取得した荷重に関する測定値を測定値出力部103に供給する。
【0044】
S14で、測定値出力部103は、供給された測定値を車両制御装置2に出力する。その結果、車両制御装置2の表示部(不図示)に、その測定値が表示される。
【0045】
その後、動作S10は終了する。
【0046】
以上のように、本実施形態の引戸開閉装置1は、戸先ゴム11が対向物(本実施形態では対向する戸先ゴム11)に接触した状態で、所定の動作条件で引戸10を対向物に押し付ける方向に駆動させた場合に引戸10にかかる荷重に関する測定値を出力する。本実施形態の所定の動作条件は、引戸10を所定の距離だけ移動させることである。本実施形態によると、作業者は、仮に戸先ゴム11A及び11Bが戸挟調整治具5を挟んだ場合における引戸10の閉方向の移動のしやすさを把握できるため、この測定値を引戸10の位置調整の要否判断の目安とすることができる。そのため、引戸開閉装置1の前に作業者がわざわざ行って戸先ゴム11A及び11Bに戸挟調整治具5を挟ませる作業をしなくても、引戸10の位置調整の要否を判断することが可能になる。その結果、1編成の全ての引戸10を確認する必要がなくなるため、位置調整作業の工数を低減することが可能となる。
【0047】
本実施形態では、対向物は、引戸10が両開き式の一方の引戸(例えば引戸10A)である場合における他方の引戸(例えば引戸10B)の戸先ゴム(例えば戸先ゴム11B)である。本構成によると、戸先ゴム11を押し潰すための新たな構成を設けることなく、既存の構成により引戸10の位置調整の要否を判断することが可能となる。対向物は、戸当たりであってもよい。
【0048】
本実施形態では、駆動制御部101は、駆動部40が有するモータ41に流す駆動電流を制御し、測定値取得部102は、荷重に関する測定値として駆動電流を取得する。本構成によると、荷重に関する測定値を測定するために新たにセンサを設けることなく、既存の構成により引戸10の位置調整の要否を判断することが可能となる。
【0049】
本実施形態の引戸位置調整支援システムは、複数のドア制御装置100と、複数のドア制御装置100の少なくとも1つにテスト指令信号を出力する車両制御装置2と、を備える。本構成によると、ドア制御装置100に一括でテスト指令信号を出力することができることから、複数の引戸10の位置調整の要否を一括で判断できる。そのため、引戸10の位置調整の要否を判断する際の作業負担を低減することが可能となる。
【0050】
以下、本実施形態の変形例を説明する。
【0051】
本実施形態では、鉄道車両に設けられた引戸10を例にしたが、プラットホームに設けられた引戸でもあってもよい。
【0052】
本実施形態では、両開き式の引戸10を例にしたが、これに限定されず、片開き式の引戸であってもよい。片開き式の引戸の場合、対向物は例えば戸当たりとすればよい。
【0053】
本実施形態では、戸先ゴム11が対向物に接触した状態で引戸10を所定の距離だけ移動させたときに引戸10にかかる荷重に関する測定値が取得されたが、これに限定されない。例えば、戸先ゴム11が対向物に接触した状態で引戸10に所定の荷重を加えるように引戸10を対向物に押し付ける方向に駆動させた場合の当該引戸10の移動距離に関する測定値が取得されてもよい。この場合、例えば、引戸10のストロークを検出するストロークセンサを用いて引戸10の移動距離に関する測定値が取得されてもよい。例えば、引戸10が全閉位置よりも閉方向側に移動したときに引戸10によって押圧されるリミットスイッチを上記閉方向側の位置毎に複数設け、押圧されたリミットスイッチに応じて引戸10の移動距離に関する測定値が求められてもよい。上記荷重に関する測定値及び上記移動距離に関する測定値の両方が取得されてもよい。
【0054】
本実施形態では、引戸10にかかる荷重に関する測定値としてモータ41の駆動電流を測定したが、これに限定されない。例えば、引戸10とその対向物とによって挟み込むことができる場所(戸先ゴム11など)にロードセル等の荷重センサを設置し、この荷重センサの測定値を上記引戸10にかかる荷重に関する測定値としてもよい。例えば、トルクセンサを用いて測定されたモータ41のトルクを引戸10にかかる荷重に関する測定値としてもよい。
【0055】
本実施形態では、駆動部40は電動式のモータ41を用いたが、圧縮空気を用いて引戸10を開閉方向に駆動させる空気シリンダを用いてもよい。この場合、例えば、ロードセル等の荷重センサやトルクセンサを用いて上記荷重に関する測定値が取得される。
【0056】
本実施形態では、上記測定値は、車両制御装置2に出力されたが、これに限定されず、例えば作業員の所持する外部端末装置などに出力されてもよい。以下の実施形態で後述する比較結果及び位置調整の要否判断結果も同様である。
【0057】
本実施形態では、引戸10がテスト位置まで到達したかどうかを検出するために、ドアクローズスイッチ61にテスト用のリミットスイッチが設けられたが、これに限定されない。例えば、全閉検出用のドアクローズスイッチと、引戸10がテスト位置に到達したことを検出するテスト用のドアクローズスイッチとが並列に設けられてもよい。例えば、引戸10のストロークを検出するストロークセンサを用いて引戸10がテスト位置に到達したか否かが判断されてもよい。例えば、モータ41のエンコーダの出力信号に基づいて引戸10がテスト位置に到達したか否かが判断されてもよい。
【0058】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0059】
図6を参照する。本実施形態のドア制御装置100は、記憶部108と、基準値設定部109と、比較結果出力部110と、をさらに備える。本実施形態の基準値設定部109は、更新部の一例である。本実施形態の車両制御装置2は、ドア制御装置100に、後述の第1テスト指令信号及び第2テスト指令信号を送信可能に構成される。
【0060】
図7を用いて、本実施形態のドア制御装置100の動作について説明する。
図7は、引戸10の位置調整の要否の判断を支援するための動作S20を示すフローチャートである。
【0061】
S21で、駆動制御部101は、通信部107を介して車両制御装置2からテスト指令信号を受信する。S21で受信されるテスト指令信号は、第1テスト指令信号または第2テスト指令信号である。第1テスト指令信号は、引戸10の位置調整作業が完了した後に、車両制御装置2へのユーザ入力に応答して車両制御装置2から送信される。位置調整作業は、例えば、引戸開閉装置1を鉄道車両に艤装した場合や保安点検等において作業員が必要と判断した場合に実施される。第2テスト指令信号は、例えば位置調整作業の要否を判断する際に、車両制御装置2へのユーザ入力に応答して車両制御装置2から送信される。S22及び23は、上述のS12及びS13と同様であるため、その説明を省略する。
【0062】
S24で、測定値出力部103は、S21で受信したテスト指令信号が第1テスト指令信号であるか、または第2テスト指令信号であるかを判定する。受信したテスト指令信号が第1テスト指令信号である場合、測定値出力部103は供給された測定値を基準値設定部109に出力し、動作S20はS25に移行する。受信したテスト指令信号が第2テスト指令信号である場合、測定値出力部103は供給された測定値を比較結果出力部110に出力し、動作S20はS26に移行する。
【0063】
S25で、基準値設定部109は、供給された測定値を基準値として記憶部108に記憶させることにより、基準値を設定または更新する。具体的には、基準値設定部109は、例えば引戸開閉装置1を鉄道車両に艤装したときに位置調整を実施した場合など、基準値がまだ設定されていない場合には、測定値を基準値として設定する。基準値設定部109は、例えば、基準値が既に設定されている場合には、測定値を用いて基準値を更新する。ここで、第1テスト指令信号は引戸10の位置調整作業の完了後に送信され、第1テスト指令信号に応答してその完了後の測定値が基準値として設定又は更新される。そのため、ここで設定又は更新される基準値は、ロック機能および戸挟み検知機能が適切に得られる状態での値を示す。S25の後、動作S20は終了する。
【0064】
S26で、比較結果出力部110は、供給された測定値とS25で予め定められた基準値との比較結果を通信部107を介して車両制御装置2に出力する。予め定められた基準値は、記憶部108から読み出される。本実施形態の比較結果は、例えば、測定値に対する基準値の差分を示す。比較結果が車両制御装置2に出力されると、その比較結果としての上記差分が報知される。具体的には、上記差分が車両制御装置2の表示部に表示される。S26の後、動作S20は終了する。
【0065】
以上のように、本実施形態では、比較結果出力部110は、出力された測定値と予め定められた基準値との比較結果を出力する。本構成によると、予め定められた基準値に対する測定値の比較結果を参照することにより、基準値に対する測定値の乖離度合いを把握することができるため、位置調整の要否の判断がより容易になる。
【0066】
本実施形態では、駆動制御部101は、引戸10の位置調整が完了した後に、S22において戸先ゴム11をその対向する戸先ゴム11に再度押し付けるように駆動部40を制御する。測定値取得部102は、S23においてその再度押し付けられるときの測定値を取得する。基準値設定部109は、S25においてその再度押し付けられるときの測定値を基準値として更新する。本構成によると、例えば引戸開閉装置1の艤装時の測定値を用いて定められた基準値を保持する場合と比較して、より精度よく引戸10の位置調整の要否を判断することが可能となる。
【0067】
本実施形態では、比較結果出力部110は、測定値に対する基準値の差分を報知する。本構成によると、例えば差分が正の値である場合(測定値が基準値よりも大きい場合)、引戸10が異物を挟んだときに引戸10が基準となる状態よりも閉方向に移動しやすい状態であることがわかる。そのため、引戸10を開方向側に取り付けるように引戸10の位置調整作業を行えばいいことがわかる。同様に、差分が負の値である場合(測定値が基準値よりも小さい場合)、引戸10が異物を挟んだときに引戸10が基準となる状態よりも閉方向に移動しにくい状態であることがわかる。そのため、引戸10を閉方向側に取り付けるように引戸10の位置調整作業を行えばいいことがわかる。さらに、差分の大きさに基づいて、ロック機能および戸挟み検知機能が適切に得られる状態にするために引戸10の取り付け位置をどの程度調整すればよいのかを把握することが可能になる。以上から、引戸10の位置調整作業時の負担を低減することが可能となる。
【0068】
以下、本実施形態の変形例を説明する。
【0069】
比較結果出力部110は、測定値を測定したときと同じ気温で測定された他の測定値を基準値として用いてもよい。この場合、気温毎に事前に測定値を取得し、各気温と関連付けてその測定値を記憶部108に記憶させればよい。本構成によると、同じ温度における測定値と基準値との比較結果を参照することにより、引戸開閉装置1の異常(例えば、戸車22のグリス切れや破損、引戸駆動機構42のピニオンギアの破損、モータ41の異常など)の有無を判断する際の目安とすることができる。
【0070】
比較結果出力部110は、測定値を取得したときの気温とS25での基準値を設定又は更新する際に用いられた測定値が取得されたときの気温との比較結果を報知してもよい。本構成によると、位置調整作業において、気温の比較結果に基づいて、気温の高低によって引戸10の取り付け位置を開方向側及び開方向側のどちらに調整すべきかを把握することができる。その結果、位置調整作業の負担を低減することが可能となる。比較結果出力部110は、測定値が基準値より大きいか又は小さいかの比較結果を出力してもよい。
【0071】
本実施形態では、S25において基準値を更新したが、基準値を更新せずに、例えば引戸開閉装置1の艤装時の測定値を用いて定められた基準値などの所定の基準値を保持してもよい。
【0072】
本実施形態では、比較結果は、測定値に対する基準値の差分を示したが、これに限定されず、例えば、測定値と基準値とを並べて配置したデータを示してもよい。
【0073】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の図面および説明では、第2実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第2実施形態と重複する説明を適宜省略し、第2実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0074】
図8を参照する。本実施形態のドア制御装置100は、判断結果報知部111をさらに備える。
【0075】
図9を用いて、本実施形態のドア制御装置100の動作について説明する。
図9は、引戸10の位置調整の要否の判断を支援するための動作S30を示すフローチャートである。S31からS35は、上述のS21からS25と同様であるため、その説明を省略する。
【0076】
S36で、比較結果出力部110は、供給された測定値とS35で予め定められた基準値との比較結果を判断結果報知部111に出力する。本実施形態の比較結果は、測定値が基準値から所定範囲内にあるか否かを示すデータである。ここでの所定範囲は、例えば、ロック調整作業用の戸挟調整治具5の厚さと戸挟み調整作業用の戸挟調整治具5の厚さとに基づいて設定される。これに限定されず、この所定範囲は、引戸開閉装置1の運用方法等に基づいて適宜設定される。
【0077】
S37で、判断結果報知部111は、比較結果に基づいて、引戸10の位置調整が必要か否かを判断する。本実施形態の判断結果報知部111は、測定値が基準値から所定範囲内にあるか否かを判断する。ここでの測定値が基準値から所定範囲内にはない場合とは、例えば測定値が基準値から所定範囲にある上限閾値を超え又は基準値から所定範囲にある下限閾値を下回る場合である。ここでの測定値が基準値から所定範囲内にある場合とは、例えば測定値が上限閾値以下であり且つ下限閾値以上である場合である。測定値が基準値から所定範囲内にはない場合、判断結果報知部111は引戸10の位置調整が必要であると判断し、動作S30はS38に移行する。測定値が基準値から所定範囲内にある場合、判断結果報知部111は引戸10の位置調整が必要ではないと判断し、動作S30はS39に移行する。
【0078】
S38で、判断結果報知部111は、引戸10の位置調整が必要である旨を報知する。具体的には、判断結果報知部111は、引戸10の位置調整が必要である旨を示す要否判断結果を通信部107を介して車両制御装置2に出力する。その結果、この要否判断結果が車両制御装置2の表示部に表示される。S38の後、動作S30は終了する。
【0079】
S39で、判断結果報知部111は、引戸10の位置調整が必要ではない旨を報知する。具体的には、判断結果報知部111は、引戸10の位置調整が必要ではない旨を示す要否判断結果を通信部107を介して車両制御装置2に出力する。その結果、この要否判断結果が車両制御装置2の表示部に表示される。S39の後、動作S30は終了する。
【0080】
以上のように、本実施形態では、判断結果報知部111は、比較結果に基づいて、引戸10の位置調整の要否判断結果を報知する。本構成によると、引戸10の位置調整の要否判断結果の報知により、引戸10の位置調整の要否判断がより容易になる。
【0081】
本実施形態の変形例を説明する。本実施形態では、測定値が基準値から所定範囲内にあるか否かによって引戸10の位置調整の要否が判断されたが、これに限定されない。例えば、測定値に対する基準値の差分が所定の閾値よりも大きいか否かによって引戸10の位置調整の要否が判断されてもよい。
【0082】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態の図面および説明では、第3実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第3実施形態と重複する説明を適宜省略し、第3実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0083】
図10を参照する。本実施形態のドア制御装置100Aは、要求部112と、隣接引戸情報取得部113と、隣接引戸情報報知部114と、をさらに備える。ドア制御装置100Aが開閉制御する引戸10は、鉄道車両への複数の乗降口のうちの1つを開閉する第1の引戸の一例である。第1の引戸10が設けられた乗降口と隣接する乗降口を開閉する引戸10は、第2の引戸の一例である。
図10の隣接ドア制御装置100Bは、第2の引戸10を開閉制御する。隣接ドア制御装置100Bはドア制御装置100Aと同様の構成を有する。本実施形態では、ドア制御装置100A及び隣接ドア制御装置100Bに一括で第2テスト指令信号が送信されたものとする。
【0084】
要求部112は、通信部107を介して、第2テスト指令信号を受信し、第2テスト指令信号に応答して隣接ドア制御装置100Bに上記位置調整の要否判断結果を要求する要求信号を送信する。その結果、隣接ドア制御装置100Bで上記要否判断結果が取得された後、隣接ドア制御装置100Bから上記要否判断結果が送信される。隣接引戸情報取得部113は、隣接ドア制御装置100Bから第2の引戸10についての上記要否判断結果を通信部107を介して取得する。隣接引戸情報取得部113は、取得した要否判断結果を隣接引戸情報報知部114に供給する。
【0085】
隣接引戸情報報知部114は、第1の引戸10についての位置調整の要否判断結果と第2の引戸10についての位置調整の要否判断結果とが一致するか否かを判定する。隣接引戸情報報知部114は、これらの要否判断結果が一致しない場合、第2の引戸10についての位置調整の要否判断結果を通信部107を介して車両制御装置2に報知する。
【0086】
本実施形態によると、第1の引戸10と隣接する第2の引戸10についての位置調整の要否判断結果を参考情報として、引戸開閉装置1の異常の有無の確認を促すことが可能となる。
【0087】
以下、本実施形態の変形例を説明する。
【0088】
本実施形態では、隣接引戸情報取得部113は、上記位置調整の要否判断結果を取得したが、第2の引戸10についての測定値を取得してもよい。この場合、隣接引戸情報報知部114は、第1の引戸10についての測定値と第2の引戸10についての測定値との乖離度合いが所定の範囲を超えたか否かを判断すればよい。例えば、隣接引戸情報報知部114は、測定値同士の差分や割合が所定の閾値よりも大きい場合、上記乖離度合いが所定の範囲を超えたと判断する。隣接引戸情報報知部114は、上記乖離度合いが所定の範囲を超えたと判断された場合、第2の引戸10についての測定値を報知すればよい。
【0089】
本実施形態では、ドア制御装置100A及び隣接ドア制御装置100Bに一括で第2テスト指令信号が送信された例を示したが、これに限定されない。例えば、隣接ドア制御装置100Bには第2テスト指令信号が送信されず、ドア制御装置100Aに第2テスト指令信号が送信されてもよい。この場合、隣接ドア制御装置100Bは、要求信号に応答して直近に得られた測定値又は要否判断結果を送信すればよい。
【0090】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0091】
図11を参照する。本実施形態のドア制御装置100は、記憶部108と、予測部115をさらに備える。本実施形態では、測定値出力部103は、測定値取得部102から測定値を供給される毎に、その測定値を記憶部108に供給して記憶させる。その結果、記憶部108には、測定毎の測定値が蓄積される。測定値出力部103は、測定値を予測部115に供給する。
【0092】
予測部115は、測定値が供給されると、例えば前回の測定時の測定値を記憶部108から読み出し、前回の測定値と今回の測定値との比較に基づいて、引戸10の位置調整が必要となるタイミングを予測する。例えば、予測部115は、前回の測定から今回の測定までの経過時間と、前回の測定値と今回の測定値との差分とに基づいて、測定値の時間的な変化量を求める。予測部115は、求めた時間的な変化量に基づいて、今回の測定値が所定の閾値に達するまでの時間を求めることにより、上記タイミングを予測する。
【0093】
以上のように、本実施形態では、予測部115は、第1の時点で取得された測定値と、第1の時点よりも前の第2の時点で取得された測定値との比較に基づいて、引戸10の位置調整が必要となるタイミングを予測する。本実施形態によると、引戸10の位置調整が必要になる時期を把握することが可能となる。
【0094】
本実施形態の変形例を説明する。
【0095】
本実施形態では、前回の測定値と今回の測定値の比較に基づいて上記予測をしたが、これに限定されず、今回の測定値よりも前に測定された測定値であればよい。また、3つ以上の測定値の比較に基づいて上記予測がなされてもよい。
【0096】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0097】
1 引戸開閉装置、 10 引戸、 11 戸先ゴム、 20 レール移動体、 30 引戸レール30、 40 駆動部、 50 ロック装置、 61 ドアクローズスイッチ、 62 ドアロックスイッチ、 100 ドア制御装置、 101 駆動制御部、 102 測定値取得部、 103 測定値出力部、 104 ロック制御部、105 戸挟み検知部、106 ロック検知部、107 通信部、108 記憶部、109 基準値設定部、110 比較結果出力部、111 判断結果報知部、112 要求部、113 隣接引戸情報取得部、114 隣接引戸情報報知部、115 予測部。