IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ FDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電池製造方法および電池 図1
  • 特開-電池製造方法および電池 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118580
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】電池製造方法および電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/08 20060101AFI20220805BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20220805BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220805BHJP
   H01M 6/08 20060101ALI20220805BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
H01M4/08 E
H01M4/50
H01M4/62 A
H01M6/08 A
H01M4/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015190
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野上 武男
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
(72)【発明者】
【氏名】安西 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】松井 隼司
【テーマコード(参考)】
5H024
5H050
【Fターム(参考)】
5H024AA03
5H024AA14
5H024BB05
5H024BB07
5H024DD14
5H024EE03
5H024EE05
5H024HH01
5H024HH13
5H050AA19
5H050BA04
5H050CA05
5H050CB13
5H050DA09
5H050DA10
5H050EA09
5H050EA11
5H050GA06
5H050GA08
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】正極が成型金型から取り出されるときに正極に割れが発生することを防止するために正極に添加される離型剤の量を抑制する。
【解決手段】電池製造方法は、二酸化マンガンMnOと黒鉛Cとを含有する第1粉体を造粒することと、互いに粒度が異なる複数の第2粉体に第1粉体を分離することと、複数の第2粉体から複数の第3粉体をそれぞれ分離することと、複数の第3粉体を混合することにより正極合剤を生成することと、正極合剤を正極に成型することとを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化マンガンと黒鉛とを含有する第1粉体を造粒することと、
互いに粒度が異なる複数の第2粉体に前記第1粉体を分離することと、
前記複数の第2粉体から複数の第3粉体をそれぞれ測り取ることと、
前記複数の第3粉体を混合することにより正極合剤を生成することと、
前記正極合剤を正極に成型すること
とを備える電池製造方法。
【請求項2】
前記正極合剤は、前記複数の第3粉体の各々の量に基づいて算出される量の離型剤が前記複数の第3粉体に添加されることにより生成される
請求項1に記載の電池製造方法。
【請求項3】
前記離型剤は、ステアリン酸カルシウムを含有する
請求項2に記載の電池製造方法。
【請求項4】
前記正極が浸漬される電解液の量は、前記離型剤が前記複数の第3粉体に添加される量に基づいて算出される
請求項2または請求項3に記載の電池製造方法。
【請求項5】
前記正極合剤は、ドラムミキサーを用いて前記複数の第3粉体が混合されることにより、生成される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電池製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電池製造方法により作製された正極と、
負極と、
前記正極と前記負極とが浸漬される電解液
とを備える電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、電池製造方法および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
正極と負極とが電解液に浸漬されているアルカリ乾電池が知られている。正極は、二酸化マンガンMnOと黒鉛Cとを含有する正極合剤粉末が成形金型を用いて成型加工されることにより作製される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-098164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極が成型金型から取り出されるときに正極に割れが発生することを防止するために、正極合剤粉末には、離型剤が添加されている。正極合剤粉末の粒度分布が異なるときに離型剤の必要量が変化するため、離型剤は、正極合剤粉末に対して多めに添加される。アルカリ乾電池は、正極合剤粉末に離型剤が多めに添加されたときに、その分、電池内に注入される電解液の量が低減し、放電性能が低下することがある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、離型剤の量を抑制する電池製造方法および電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による電池製造方法は、二酸化マンガンと黒鉛とを含有する第1粉体を造粒することと、互いに粒度が異なる複数の第2粉体に前記第1粉体を分離することと、前記複数の第2粉体から複数の第3粉体をそれぞれ分離することと、前記複数の第3粉体を混合することにより正極合剤を生成することと、前記正極合剤を正極に成型することとを備えている。
【発明の効果】
【0007】
開示の電池製造方法および電池は、離型剤の量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の電池を示す断面図である。
図2図2は、実施形態の電池製造方法における正極合剤の作製を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる電池製造方法および電池について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0010】
[実施形態の電池1]
実施形態の電池1は、いわゆるアルカリ電池であり、図1に示されているように、電池ケース2と正極3と負極5と集電棒6とセパレータ7とを備えている。図1は、実施形態の電池1を示す断面図である。電池ケース2は、正極缶11と負極端子板12と封口ガスケット14とを備えている。正極缶11は、金属に例示される導体から形成されている。正極缶11は、有底円筒形に形成され、側面部分15と底面部分16とを備えている。側面部分15は、円柱の側面に沿うように、屈曲した板から形成されている。底面部分16は、円柱の一方の底面に沿うように配置されている。底面部分16は、底面部分16の縁が底面部分16の一方の端に隣接するように、側面部分15に一体に繋がっている。
【0011】
底面部分16の中央には、正極端子部分17が形成されている。正極端子部分17は、正極缶11の内側から外側に向かって突出するように形成されている。正極缶11には、開口部18が形成されている。開口部18は、側面部分15のうちの円柱の他方の底面に対応する部位に形成されている。側面部分15には、ビーディング部21が形成されている。ビーディング部21は、側面部分15のうちの開口部18の近傍に形成されている。ビーディング部21は、側面部分15のうちの開口部18の近傍の一部の内径が小さくなるように、形成されている。
【0012】
負極端子板12は、金属に例示される導体から形成され、概ね円板状に形成されている。負極端子板12は、正極缶11の開口部18を閉鎖するように、円柱の他方の底面に沿うように配置されている。電池ケース2の内部には、負極端子板12が開口部18を閉鎖することにより、正極缶11と負極端子板12とに囲まれる内部空間23が形成されている。
【0013】
封口ガスケット14は、樹脂に例示される絶縁体から形成され、概ねリング状に形成されている。封口ガスケット14は、負極端子板12の縁を取り囲み、正極缶11の開口部18に配置されている。封口ガスケット14は、負極端子板12の縁と正極缶11とに挟まれ、負極端子板12の縁と正極缶11との間に形成される隙間を塞いでいる。負極端子板12は、封口ガスケット14が負極端子板12の縁と正極缶11とに挟まれることにより、封口ガスケット14を介して正極缶11に固定されている。負極端子板12は、封口ガスケット14が負極端子板12の縁と正極缶11とに挟まれることにより、封口ガスケット14を介して正極缶11から電気的に絶縁されている。
【0014】
正極3は、正極作用物質とバインダーと水酸化カリウム水溶液と離型剤とから形成され、中空円筒形に形成されている。正極作用物質は、電解二酸化マンガンMnOと黒鉛Cとを含んでいる。バインダーは、粉体を互いに接着させて固形物に形成するものであり、たとえば、高分子化合物を含有している。離型剤は、ステアリン酸カルシウムを含有している。正極3は、電池ケース2の内部空間23に配置され、正極作用物質が正極缶11に電気的に接続されるように、正極缶11の側面部分15の内周面に密着している。負極5は、負極作用物質から形成され、ゲル状に形成されている。負極作用物質は、亜鉛合金粉と水酸化カリウム水溶液とを含んでいる。負極5は、電池ケース2の内部空間23のうちの正極3の内側に配置されている。
【0015】
集電棒6は、導体から形成され、棒状に形成されている。集電棒6は、円柱の中心軸に沿うように内部空間23に配置されている。集電棒6は、さらに、負極5の負極作用物質に電気的に接続されるように、負極5に埋設されている。集電棒6は、さらに、封口ガスケット14の中央を貫通している。集電棒6の一端は、集電棒6が負極端子板12に電気的に接続されるように、負極端子板12に接合されている。
【0016】
セパレータ7は、ポリプロピレン不織布から形成されている。セパレータ7は、有底中空円筒形に形成され、側面部分25と底面部分26とを備えている。側面部分25は、内部空間23のうちの正極3と負極5との間に配置されている。底面部分26は、内部空間23のうちの負極5と正極缶11の底面部分16との間に配置されている。底面部分26は、内部空間23のうちの負極5が配置される領域が、内部空間23のうちの正極3と正極缶11とが配置される領域から隔てられるように、側面部分25に一体に繋がっている。セパレータ7は、このように配置されることにより、正極3と負極5とを隔て、負極5と正極缶11とを隔てている。負極5は、セパレータ7が正極3と負極5とを隔てていることにより、セパレータ7を介して正極3から電気的に絶縁され、セパレータ7が負極5と正極缶11とを隔てていることにより、セパレータ7を介して正極缶11から電気的に絶縁されている。電池1は、電解液をさらに備えている。電解液は、水酸化カリウムKOHを含有する水溶液から形成されている。電解液は、セパレータ7に染み込んでいる。
【0017】
[実施形態の電池製造方法]
実施形態の電池製造方法は、電池1を製造する方法であり、正極合剤の作製と、正極の成型と、電池の組立とを備えている。図2は、実施形態の電池製造方法における正極合剤の作製を示すフローチャートである。正極合剤の作製では、電解二酸化マンガンMnOと黒鉛Cとバインダーと電解液とイオン交換水とが準備される。電解二酸化マンガンMnOからは、予め定められた量の二酸化マンガンが測り取られる(ステップS1)。黒鉛Cからは、予め定められた量の黒鉛Cが測り取られる(ステップS2)。バインダーからは、予め定められた量のバインダーが測り取られる(ステップS3)。その測り取られた電解二酸化マンガンMnOと黒鉛Cとバインダーとは、乾式混合され、その乾式混合により乾式混合物が生成される(ステップS4)。
【0018】
電解液からは、予め定められた量の電解液が測り取られる(ステップS5)。イオン交換水からは、予め定められた量のイオン交換水が測り取られる(ステップS6)。乾式混合物は、その測り取られた電解液とイオン交換水とが添加されて湿式混合され(ステップS7)、その湿式混合により湿式混合物が生成される。湿式混合物は、後述されるリサイクル合剤粉体と混合され(ステップS8)、その混合により混合物が生成される。混合物は、ロールプレス等で圧延されることにより圧縮され(ステップS9)、その圧縮により固形物が生成される。固形物は、粉砕されることにより造粒され(ステップS10)、その造粒により第1粉体が生成される。
【0019】
第1粉体は、篩別され、複数の第2粉体に分離される(ステップS11)。たとえば、複数の第2粉体は、~16メッシュ粉体と16~20メッシュ粉体と20~30メッシュ粉体と30~60メッシュ粉体と60~80メッシュ粉体と80~メッシュ粉体とを含んでいる。~16メッシュ粉体は、16メッシュの篩を通過しない。16~20メッシュ粉体は、20メッシュの篩を通過せずに、16メッシュの篩を通過する。20~30メッシュ粉体は、30メッシュの篩を通過せずに、20メッシュの篩を通過する。30~60メッシュ粉体は、60メッシュの篩を通過せずに、30メッシュの篩を通過する。60~80メッシュ粉体は、80メッシュの篩を通過せずに、60メッシュの篩を通過する。80~メッシュ粉体は、80メッシュの篩を通過する。
【0020】
複数の第2粉体からは、複数の第3粉体がそれぞれ測り取られる。複数の第3粉体は、計量後16~20メッシュ粉体と計量後20~30メッシュ粉体と計量後30~60メッシュ粉体と計量後60~80メッシュ粉体とを含んでいる。すなわち、16~20メッシュ粉体からは、予め定められた量の計量後16~20メッシュ粉体が測り取られる(ステップS12)。20~30メッシュ粉体からは、予め定められた量の計量後20~30メッシュ粉体が測り取られる(ステップS13)。30~60メッシュ粉体からは、予め定められた量の計量後30~60メッシュ粉体が測り取られる(ステップS14)。60~80メッシュ粉体からは、予め定められた量の計量後60~80メッシュ粉体が測り取られる(ステップS15)。
【0021】
~16メッシュ粉体と80~メッシュ粉体とは、リサイクル合剤粉体として湿式混合物に混合される(ステップS8)。離型剤が準備され、離型剤からは、予め定められた量の離型剤が測り取られる(ステップS16)。離型剤の量は、複数の第3粉体の粒度分布に基づいて算出され、たとえば、計量後16~20メッシュ粉体の量と計量後20~30メッシュ粉体の量と計量後30~60メッシュ粉体の量と計量後60~80メッシュ粉体の量とに基づいて算出される。その測り取られた離型剤と、複数の第3粉体とは、ドラムミキサーを用いて混合され(ステップS17)、その混合により正極合剤が生成される。
【0022】
正極の成型では、正極合剤の作製により作製された正極合剤が、成形金型に流し込まれて圧力が加えられた後に成形金型から取り出されることにより、正極3が成型加工される。電池の組立では、正極3の外周面が正極缶11に内周面に接触するように、正極3が正極缶11の内部に挿入される。正極缶11は、正極3が正極缶11に挿入された後に、正極缶11の開口部18にビーディング部21が形成されるように、加工される。正極3は、正極缶11にビーディング部21が形成されることにより、正極缶11から抜け出ることが防止される。正極缶11にビーディング部21が形成された後に、セパレータ7が正極3の内側に挿入される。セパレータ7が正極3の内側に挿入された後に、予め定められた量の電解液が正極3の内側に注入されてセパレータ7に染み込ませられる。電解液の量は、複数の第3粉体に添加される離型剤の量に基づいて算出される。
【0023】
電池の組立では、さらに、亜鉛合金粉と水酸化カリウム水溶液とを用いてゲル状の負極5が調製される。負極5は、セパレータ7に電解液が染み込んだ後に、セパレータ7の内側に注入される。負極5が注入された後に、負極端子板12に接合された集電棒6が負極5に埋め込まれるように、かつ、負極端子板12と封口ガスケット14とが開口部18を閉鎖するように、集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とが正極缶11に取り付けられる。集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とが正極缶11に取り付けられた後に、負極端子板12の縁と正極缶11との間に形成される隙間が封口ガスケット14により封止されるように、正極缶11の開口部18の近傍の部分がかしめられる。正極缶11がかしめられることにより、封口ガスケット14が変形し、集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とが正極缶11に固定され、内部空間23が外部から密閉され、電池1が作製される。
【0024】
正極合剤に含まれる粉体の粒度分布が個々に異なる従来の電池では、正極が成型金型から取り出されるときに正極に割れが発生することを防止する離型剤の必要量が個々で異なっている。このため、正極合剤に含まれる粉体の粒度分布が互いに異なる従来の電池には、正極合剤の量に対して多めの離型剤が一律に添加されている。
【0025】
既述の電池製造方法により作製された複数の電池では、正極合剤に含まれる粉体の粒度分布が個々で概ね等しくなる。既述の電池製造方法により作製された複数の電池では、粒度分布が個々で概ね等しいことにより、離型剤の必要量が個々で概ね等しい。このため、既述の電池製造方法により作製された複数の電池では、正極合剤の量に対して離型剤が多めに添加される必要がなく、適切な量の離型剤が正極に添加されることができる。既述の電池製造方法により作製された複数の電池は、適切な量の離型剤が正極に添加されることにより、電解液が注入される量を増加させることができる。既述の電池製造方法により作製された複数の電池は、注入される電解液の量が増加することにより、放電容量を増加させることができる。
【0026】
ところで、既述の電池製造方法では、正極合剤が、互いに粒度が異なる4つの第3粉体が混合されることにより生成されているが、4つと異なる複数の第3粉体が混合されて生成されてもよい。たとえば、正極合剤は、互いに粒度が異なる2つの第3粉体が混合されることにより生成されてもよい。2つの第3粉体としては、計量後16~60メッシュ粉体と計量後60~80メッシュ粉体とが例示される。この場合、第1粉体は、篩別され、4つの第2粉体に分離されてもよい。4つの第2粉体は、~16メッシュ粉体と16~60メッシュ粉体と60~80メッシュ粉体と80~メッシュ粉体とを含んでいる。16~60メッシュ粉体は、60メッシュの篩を通過せずに、16メッシュの篩を通過する。60~80メッシュ粉体は、80メッシュの篩を通過せずに、60メッシュの篩を通過する。計量後16~60メッシュ粉体は、16~60メッシュ粉体から測り取られる。計量後60~80メッシュ粉体は、60~80メッシュ粉体から測り取られる。このような場合でも、電池製造方法は、正極に添加される離型剤の量を抑制することができる。
【0027】
[電池1の評価試験]
実施形態の電池1の効果を確認するために、複数の電池試料が作製され、複数の電池試料の各々に複数の評価試験が実行されている。表1は、複数の電池試料に対応する複数の作製条件と複数の評価結果とを示している。
【表1】
【0028】
複数の電池試料は、従来例1の電池と従来例2の電池と従来例3の電池と従来例4の電池と従来例5の電池と従来例6の電池と実施例1の電池と実施例2の電池と比較例1の電池と比較例2の電池とを含んでいる。複数の電池試料の各々は、既述の電池製造方法に基づいて作製された複数の電池を含んでいる。複数の電池は、詳細には、電池サイズがLR6であるように、かつ、16~60メッシュ粉体と60~80メッシュ粉体と離型剤とが混合されて正極合剤が作製されるように、既述の電池製造方法に基づいて作製されている。
【0029】
複数の電池試料は、さらに、作製条件が互いに異なるように、作製され、その作製条件が互いに異なること以外は、互いに同様に作製されている。作製条件は、微粉割合と離型剤添加量と電解液注入量とにより示される。ある電池試料に対応する微粉割合は、その電池試料の正極合剤に含まれる粉体に60~80メッシュ粉体が混合されている割合を示し、60~80メッシュ粉体の重量を、正極合剤に含まれる粉体の重量で除算した値に100を乗算した値を示している。ある電池試料に対応する離型剤添加量は、その電池試料の正極合剤に添加された離型剤の量を示し、その電池試料の正極合剤に添加された離型剤の重量を正極合剤の重量で除算した値に100を乗算した値を示している。ある電池試料に対応する電解液注入量は、その電池試料に注入された電解液の量を示し、その電池試料に注入された電解液の重量を、従来例1の電池に注入された電解液の重量で除算した値に100を乗算した値を示している。
【0030】
従来例1の電池の微粉割合は、30を示している。従来例1の電池の離型剤添加量は、0.10を示している。従来例1の電池の電解液注入量は、100を示している。従来例2の電池の微粉割合は、30を示している。従来例2の電池の離型剤添加量は、0.20を示している。従来例2の電池の電解液注入量は、100を示している。従来例3の電池の微粉割合は、30を示している。従来例3の電池の離型剤添加量は、0.30を示している。従来例3の電池の電解液注入量は、100を示している。
【0031】
従来例4の電池の微粉割合は、10を示している。従来例4の電池の離型剤添加量は、0.10を示している。従来例4の電池の電解液注入量は、100を示している。従来例5の電池の微粉割合は、10を示している。従来例5の電池の離型剤添加量は、0.20を示している。従来例5の電池の電解液注入量は、100を示している。従来例6の電池の微粉割合は、10を示している。従来例6の電池の離型剤添加量は、0.30を示している。従来例6の電池の電解液注入量は、100を示している。
【0032】
比較例1の電池の微粉割合は、30を示している。比較例1の電池の離型剤添加量は、0.30を示している。比較例1の電池の電解液注入量は、110を示している。比較例2の電池の微粉割合は、30を示している。比較例2の電池の離型剤添加量は、0.10を示している。比較例2の電池の電解液注入量は、130を示している。
【0033】
実施例1の電池の微粉割合は、30を示している。実施例1の電池の離型剤添加量は、0.10を示している。実施例1の電池の電解液注入量は、110を示している。実施例2の電池の微粉割合は、30を示している。実施例2の電池の離型剤添加量は、0.10を示している。実施例2の電池の電解液注入量は、120を示している。
【0034】
複数の評価結果は、複数の合剤割れ評価結果と複数の放電性能評価結果と複数の電圧不良発生率評価結果とを含んでいる。複数の合剤割れ評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の合剤割れ評価結果のうちのある電池試料に対応する合剤割れ評価結果は、その電池試料に対して合剤割れ評価試験が実行されることにより導出された結果を示し、「〇」または「×」を示している。ある電池試料に対して実行される合剤割れ評価試験では、その電池試料の正極が目視されることにより、その電池試料の正極に割れが発生しているか否かが評価される。複数の合剤割れ評価結果は、複数の合剤割れ評価結果のうちのある電池試料の合剤割れ評価結果が「〇」を示すときに、その電池試料の正極に割れが発生する割合が予め定められた値より小さいことを示している。複数の合剤割れ評価結果は、複数の合剤割れ評価結果のうちのある電池試料の合剤割れ評価結果が「×」を示すときに、その電池試料の正極に割れが発生する割合が予め定められた値より小さいことを示している。
【0035】
複数の合剤割れ評価結果は、従来例4の電池の正極と従来例5の電池の正極とに割れが発生していることを示し、その他の電池試料の正極に割れが発生していないことを示している。複数の合剤割れ評価結果のうちの従来例1~6の電池に対応する合剤割れ評価結果は、微粉割合が小さいときに正極に割れが発生し易いことを示している。複数の合剤割れ評価結果のうちの従来例4~6の電池に対応する合剤割れ評価結果は、離型剤が少ないときに正極に割れが発生し易いことを示している。複数の合剤割れ評価結果のうちの従来例4~6の電池に対応する合剤割れ評価結果は、さらに、微粉割合が小さい場合でも離型剤の量を増加させることにより、正極に割れが発生することを防止することができることを示している。複数の合剤割れ評価結果のうちの従来例1~6の電池に対応する合剤割れ評価結果は、さらに、正極合剤の粒度分布が異なる場合でも、正極合剤に対して離型剤が十分に添加されることにより、正極に割れが発生することを防止することができることを示している。
【0036】
複数の放電性能評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の放電性能評価結果のうちのある電池試料に対応する放電性能評価結果は、その電池試料に対して放電性能評価試験が実行されることにより導出された結果を示している。放電性能評価試験は、たとえば、JIS規格JIS C8515「一次電池個別製品仕様」に規定される放電試験に基づいている。すなわち、ある電池試料に対して実行される放電性能評価試験では、その電池試料の電池電圧が終止電圧1.05Vより小さくなるまで20℃の雰囲気で1時間の放電パターンが繰り返し実行され、放電回数が導出される。1時間の放電パターンは、5分間の放電期間と55分の休止期間とから形成されている。5分間の放電期間では、30秒の放電パターンが10回繰り返し実行されている。30秒の放電パターンは、2秒の放電期間と28秒の放電期間とから形成されている。2秒の放電期間では、その電池試料が1500mWの負荷に電気的に接続される。28秒の放電期間は、2秒の放電期間が終了した直後に開始される。28秒の放電期間では、その電池試料が650mWの負荷に28秒間電気的に接続される。55分の休止期間は、5分間の放電期間が終了時間が終了した直後に実行される。55分の休止期間では、その電池試料と負荷との電気的な接続が55分間遮断される。
【0037】
放電回数は、その電池試料の電池電圧が終止電圧1.05Vより小さくなる前に、その電池試料に対して1時間の放電パターンが繰り返し実行された回数を示している。複数の放電性能評価結果のうちのある電池試料に対応する放電性能評価結果は、その電池試料として作製された9つの電池の放電回数の平均を、比較例1の電池として作製された9つの電池の放電回数の平均で除算した値に100を乗算した値を示している。複数の放電性能評価結果は、放電性能評価結果が大きい電池試料ほど放電容量が大きいことを示し、放電性能評価結果が大きい電池試料ほど放電性能が良好であることを示している。
【0038】
複数の放電性能評価結果は、比較例1、2の電池の放電性能と実施例1、2の電池の放電性能とが従来例1~6の電池の放電性能より良好であることを示している。複数の放電性能評価結果のうちの従来例1の電池と実施例1、2の電池と比較例2の電池とに対応する放電性能評価結果は、電解液注入量が大きい電池試料ほど放電性能が良好であることを示している。
【0039】
複数の電圧不良発生率評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の電圧不良発生率評価結果のうちのある電池試料に対応する電圧不良発生率評価結果は、その電池試料に対して電圧評価試験が実行されることにより導出された結果を示し、「〇」または「×」を示している。ある電池試料に対して実行される電圧評価試験では、その電池試料の電池電圧が測定され、その電池試料に電圧不良が発生しているか否かが判定される。たとえば、電圧評価試験では、ある電池試料の電池電圧が、予め設定された範囲に含まれないときに、その電池試料に電圧不良が発生していると判定される。複数の電圧不良発生率評価結果は、ある電池試料に対応する電圧不良発生率評価結果が「〇」を示すときに、その電池試料に電圧不良が発生する割合が予め定められた値より小さいことを示している。複数の電圧不良発生率評価結果は、ある電池試料に対応する電圧不良発生率評価結果が「×」を示すときに、その電池試料に電圧不良が発生する割合が予め定められた値より大きいことを示している。
【0040】
複数の電圧不良発生率評価結果は、比較例1、2の電池に電圧不良が発生し易いことを示し、その他の電池試料に電圧不良が発生し難いことを示している。複数の電圧不良発生率評価結果のうちの従来例3の電池と比較例1の電池とに対応する電圧不良発生率評価結果は、離型剤が多い場合で電解液を増量すると、電圧不良が発生し易くなることを示している。複数の電圧不良発生率評価結果のうちの比較例1の電池と実施例1の電池とに対応する電圧不良発生率評価結果は、電解液が増量された場合でも、離型剤が低減されることにより、電圧不良が発生し難くなることを示している。複数の電圧不良発生率評価結果のうちの比較例2の電池に対応する電圧不良発生率評価結果は、離型剤が少ない場合でも電解液が過剰であると、電圧不良が発生し易くなることを示している。
【0041】
[実施形態の電池製造方法の効果]
実施形態の電池製造方法は、二酸化マンガンMnOと黒鉛Cとを含有する第1粉体を造粒することと、互いに粒度が異なる複数の第2粉体に第1粉体を分離することと、複数の第2粉体から複数の第3粉体をそれぞれ測り取ることと、複数の第3粉体を混合することにより正極合剤を生成することと、正極合剤を正極3に成型することとを備えている。
【0042】
実施形態の電池製造方法は、複数の第3粉体が複数の第2粉体からそれぞれ測り取られることにより、正極合剤を構成する粉体の粒度分布が複数の正極の個々で等しくなるように、複数の正極を作製することができる。実施形態の電池製造方法は、複数の正極の個々に含まれる正極合剤の粉体の粒度分布が等しいことにより、離型剤を正極合剤に対して多めに添加する必要がなく、離型剤の添加量を低減することができる。実施形態の電池製造方法は、離型剤の添加量が低減されることにより、正極を備える電池に注入される電解液の量を増加させることができ、電池の放電性能を向上させることができる。
【0043】
また、実施形態の電池製造方法では、正極合剤は、複数の第3粉体の各々の量に基づいて算出される量の離型剤が複数の第3粉体に添加されることにより生成される。このとき、実施形態の電池製造方法は、正極合剤に対して適切な量の離型剤を添加することができ、離型剤の添加量を低減することができる。
【0044】
ところで、既述の実施形態の電池1の正極合剤に添加される離型剤は、ステアリン酸カルシウムを含有しているが、ステアリン酸カルシウムと異なる他の化合物を含有してもよい。その化合物としては、ステアリン酸亜鉛が例示される。電池製造方法は、このような離型剤が利用された場合でも、正極合剤に対して適切な量の離型剤を添加することにより、離型剤の添加量を低減することができる。
【0045】
また、実施形態の電池製造方法では、正極3が浸漬される電解液の量は、離型剤が複数の第3粉体に添加される量に基づいて算出される。このとき、実施形態の電池製造方法は、電池に適切な量の電解液を注入することができ、電池に電圧不良が発生することを防止することができる。
【0046】
また、実施形態の電池製造方法では、正極合剤は、ドラムミキサーを用いて複数の第3粉体が混合されることにより、生成される。実施形態の電池製造方法は、ドラムミキサーを用いて複数の第3粉体が混合されることにより、複数の第3粉体の粒が壊れることを防止することができ、複数の第3粉体の粒度分布が変化することを防止することができる。実施形態の電池製造方法は、複数の第3粉体の粒度分布が変化することが防止されることにより、正極合剤に適切な量の離型剤を添加することができ、正極に添加される離型剤の量を抑制することができる。
【0047】
ところで、既述の実施形態の電池製造方法では、ドラムミキサーを用いて複数の第3粉体が混合されているが、複数の第3粉体の粒度分布が大きく変化しない場合には、ドラムミキサーと異なる他のミキサーを用いて複数の第3粉体が混合されてもよい。そのミキサーとしては、複数の第3粉体が入れられた槽内で攪拌子を回転させるものが例示される。実施形態の電池製造方法では、このようなミキサーが用いられた場合でも、正極合剤に添加される離型剤の量を低減することができる。
【0048】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
1:電池
3:正極
5:負極
図1
図2