(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118585
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/12 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
H05B3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015197
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 真志
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP15
3K092QA03
3K092QB02
3K092QB26
3K092RF02
3K092RF14
3K092VV28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】導体の断線防止を実現するとともに、高い汎用性を実現した電子部品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】電子部品は、線状の導体と、前記導体が設けられる第1部材とを有する電子部品であって、前記導体のうち前記電子部品に立体模様を形成するための曲げ加工またはプレス加工が施される部分に、他の部分よりも太い太線部が設けられており、第1部材に積層される第2部材をさらに有し、前記電子部品は、前記第1部材と前記第2部材とが積層された状態で施されるプレス加工により立体模様が形成された積層体である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の導体と、前記導体が設けられる第1部材とを有する電子部品であって、
前記導体のうち曲げ加工またはプレス加工が施される部分に、他の部分よりも太い太線部が設けられている、
電子部品。
【請求項2】
前記第1部材に積層される第2部材をさらに有し、
前記電子部品は、
前記第1部材と前記第2部材とが積層された状態で施されるプレス加工により立体模様が形成された積層体である、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記太線部は、前記立体模様の外縁部分に重なるように形成される、
請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記太線部は、その中央部分に前記立体模様の外縁部分が重なるように形成される、
請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記導体は、通電により発熱する電熱線である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記プレス加工は、エンボス加工である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記電子部品は、
車両に設けられるエンブレムである、
請求項2から6のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記電子部品は、
車両の周辺の状況を検知する検知デバイスの前方に配置される、
請求項2から7のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項9】
線状の導体と、前記導体が設けられる第1部材とを有する電子部品の製造方法であって、
前記導体のうち曲げ加工またはプレス加工が施される部分に、他の部分よりも太い太線部を形成し、
前記導体が設けられた前記第1部材に対して曲げ加工またはプレス加工を施す、
電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記プレス加工の前に、前記導体が設けられた前記第1部材に第2部材を積層し、
前記第2部材が積層された前記第1部材に対して、立体模様が形成されるように前記プレス加工を行う、
請求項9に記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記太線部を、前記立体模様の外縁部分に重なるように形成する、
請求項10に記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記太線部を、その中央部分に前記立体模様の外縁部分が重なるように形成する、
請求項11に記載の電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記導体は、通電により発熱する電熱線である、
請求項9から12のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記プレス加工は、エンボス加工である、
請求項9から13のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記電子部品は、
車両に設けられるエンブレムである、
請求項10から14のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記電子部品は、
車両の周辺の状況を検知する検知デバイスの前方に配置される、
請求項10から15のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、線状のヒータ素子(導体の一例)と、そのヒータ素子が設けられた基材と、を備えるヒータユニット(電子部品の一例)が開示されている。このヒータユニットでは、基材のうちヒータ素子が設けられた部分に、基材とヒータ素子とが一体化しないように、穴あき部分が設けられている。この構造により、ヒータユニットを車両用シートに設置する際に、基材に引っ張り力や屈曲力が生じた場合、ヒータ素子の応力を緩和し、ヒータ素子の断線を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子部品には、構造上、基材に穴を開けることが好ましくないものもある。よって、特許文献1の構造は、適用範囲が限定されてしまい、汎用性に欠けるという課題があった。
【0005】
本開示の一態様の目的は、導体の断線防止を実現するとともに、高い汎用性を実現した電子部品およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電子部品は、線状の導体と、前記導体が設けられる第1部材とを有する電子部品であって、前記導体のうち曲げ加工またはプレス加工が施される部分に、他の部分よりも太い太線部が設けられている。
【0007】
本開示の一態様に係る電子部品の製造方法は、線状の導体と、前記導体が設けられる第1部材とを有する電子部品の製造方法であって、前記導体のうち曲げ加工またはプレス加工が施される部分に、他の部分よりも太い太線部を形成し、前記導体が設けられた前記第1部材に対して曲げ加工またはプレス加工を施す。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、導体の断線防止を実現するとともに、高い汎用性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電子部品の構成の一例を示す分解斜視図
【
図2】本開示の実施の形態に係る立体模様の一例を示す斜視図
【
図3】本開示の実施の形態に係る立体模様と太線部の位置関係の一例を模式的に示す正面図
【
図4】本開示の変形例3に係る電子部品の構成の一例を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0011】
まず、
図1を用いて、本実施の形態の電子部品10の構成について説明する。
図1は、本実施の形態の電子部品10の構成の一例を示す分解斜視図である。
【0012】
図1に示すように、電子部品10は、表層部材1、第1接着部材2、絶縁シート3、電熱線4、第2接着部材5を有する。
【0013】
表層部材1は、第2部材の一例に相当する。絶縁シート3は、第1部材の一例に相当する。電熱線4は、線状の導体(電気伝導体ともいう)の一例に相当する。
【0014】
表層部材1は、第1接着部材2を介して、絶縁シート3と接合される。絶縁シート3の一面(第1接着部材2との接合面の裏面)には、電熱線4が設けられる。なお、
図1では、電熱線4の形状を把握し易くするために、絶縁シート3と電熱線4とを別々に図示したが、実際には、電熱線4は、絶縁シート3上に形成される。絶縁シート3の一面(電熱線4が形成された面)には、第2接着部材5が接合される。
【0015】
表層部材1は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)により構成された部材である。
【0016】
第1接着部材2は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、または不織布により構成された基材の両面に、アクリル系の接着剤が塗布された部材である。すなわち、第1接着部材2は、両面テープとして機能する。
【0017】
絶縁シート3は、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、またはポリカーボネート(PC)により構成された部材である。
【0018】
また、絶縁シート3の一面(第1接着部材2との接合面の裏面)には、例えば、銅、ステンレス鋼材(SUS)、またはアルミ等により構成される金属層(図示略)が設けられる。この金属層がエッチングされることにより、所定のパターンの電熱線4が形成される。電熱線4は、通電により発熱し、ヒータとして機能する。
【0019】
また、電熱線4は、部分的に太く形成された太線部6を複数有する。本実施の形態では例として、太線部6の形状を、アーモンド型(略楕円形)としている。太線部6は、電熱線4のうち、電子部品10に立体模様(詳細は後述)を形成するためのプレス加工(例えば、エンボス加工)が施される部分に形成されている。換言すれば、太線部6は、電子部品10に形成される立体模様の位置に対応して形成されている(詳細は後述)。
【0020】
なお、本実施の形態では、電熱線4が用いられる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、電熱線4の代わりに、PTC(positive temperature coefficient heater)ヒータが用いられてもよい。
【0021】
第2接着部材5は、例えば、ポリエチレン(PE)または不織布により構成された基材の一面(絶縁シート3との接合面)にアクリル系の接着剤が塗布され、その基材の他面(絶縁シート3との接合面の裏面)にPETシートが設けられた部材である。すなわち、第2接着部材5は、片面テープとして機能する。
【0022】
なお、本実施の形態では、電子部品10を構成する各部材の形状が円形である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。また、電子部品10を構成する各部材の材料は、上記例示に限定されない。
【0023】
上述した表層部材1、第1接着部材2、絶縁シート3、電熱線4、第2接着部材5が積層されることにより、積層体としての電子部品10が形成される。そして、その電子部品10に対してエンボス加工(浮き出し加工または凸加工ともいう)を施すことにより、電子部品10には、例えば、
図2に示す立体模様7が形成される。
【0024】
図2は、電子部品10に形成される立体模様7の一例を示す斜視図である。なお、
図2では、電子部品10の構成要素のうち表層部材1以外の図示を省略している。
【0025】
図2に示すように、表層部材1の表面には、エンボス加工により、アルファベットの「C」を表す立体模様7が形成される。なお、
図2に示す立体模様7は一例であり、これに限定されない。
【0026】
なお、本実施の形態では、立体模様7を形成するためのプレス加工の一例として、エンボス加工を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、立体模様7は、デボス加工(凹加工)により形成されてもよい。
【0027】
上述した立体模様7は、電熱線4に含まれる太線部6の位置に対応して形成される。換言すれば、各太線部6は、立体模様7の位置に対応して形成される。
【0028】
図3は、立体模様7と太線部6の位置関係の一例を模式的に示す正面図である。
図3に示すように、立体模様7は、太線部6に重なるように形成される。換言すれば、電熱線4のうち立体模様7の外縁部分と重なる部分は、他の部分よりも太く(
図3の例では、アーモンド型)形成されている。なお、
図3に示すように、太線部6は、その中央部分に立体模様7の外縁部分が重なるように形成されることが好ましい。
【0029】
立体模様7が形成された電子部品10は、例えば、車両に搭載されるエンブレム(オーナメントともいう)として用いられる。その場合、電子部品10は、例えば、車両に搭載された検知デバイス20の前方に配置される(
図1参照)。このとき、電子部品10は、立体模様7が車両の前進方向を向くように(表層部材1が最前に位置するように)配置される。
【0030】
図1に示した検知デバイス20は、車両の周辺の状況を検出するデバイスである。検知デバイス20としては、例えば、ミリ波レーダまたはレーザレーダ等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0031】
なお、上述したように、電子部品10が検知デバイス20の前方に配置される場合、電子部品10を構成する各部材は、検知デバイス20から送出される光または電磁波等を透過する材料で構成されればよい。
【0032】
また、本実施の形態では、表層部材1と絶縁シート3とを接合するために、第1接着部材2を用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第1接着部材2の代わりに、接合具(例えば、ネジ、ボルト、ナット等)を用いてもよい。または、例えば、表層部材1は、絶縁シート3が嵌合される構造を有してもよい。同様に、第2接着部材5の代わりに、上記接合具を用いて、絶縁シート3に対してPETシートが接合されてもよい。または、例えば、絶縁シート3は、PETシートが嵌合される構造を有してもよい。
【0033】
以上、本実施の形態の電子部品10の構成について説明した。
【0034】
次に、電子部品10の製造方法について、以下に説明する。
【0035】
まず、絶縁シート3の金属層に対してエッチング加工を行い、電熱線4を形成する。このとき、電熱線4のうちプレス加工(例えば、エンボス加工)が施される部分を、他の部分よりも太く形成する。これにより、電熱線4において、
図1、
図3に示した複数の太線部6が形成される。
【0036】
次に、
図1に示したように、表層部材1、第1接着部材2、絶縁シート3、第2接着部材5を配置し、それらを積層する。
【0037】
次に、形成された積層体(電子部品10)に対し、立体模様7が形成されるようにプレス加工を行う。これにより、電子部品10には、
図2に示した立体模様7が形成される。
【0038】
以上、電子部品10の製造方法について説明した。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態の電子部品10では、電熱線4のうちプレス加工が施される部分に、他の部分よりも太い太線部6を形成する。これにより、プレス加工の際の電熱線4の応力を緩和し、電熱線4の断線を防止することができる。また、絶縁シート3に穴を開ける必要がないため、幅広い種類の電子部品に適用することができる。よって、本実施の形態は、導体の断線防止を実現するとともに、高い汎用性を実現することができる。
【0040】
また、本実施の形態の電子部品10は、電熱線4の発熱により、電子部品10を加熱することができる。よって、電子部品10に付着した水分を取り除いたり、電子部品10に水分が付着することを予防したりすることができる。したがって、検知デバイス20から送出される光または電磁波等の透過性をより向上させることができる。
【0041】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0042】
[変形例1]
電熱線4のパターンは、
図3に示す態様に限定されない。また、太線部6の位置、数、太さ(大きさ)、および形状は、
図3に示す態様に限定されない。例えば、太線部6の形状としては、楕円形、円形、長方形、正方形等が挙げられる。
【0043】
[変形例2]
実施の形態では、電子部品10が車両用エンブレムとして用いられる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0044】
例えば、電子部品10は、車両の窓ガラスに取り付けられ、その窓ガラスを加熱するステッカタイプの面状発熱体として用いられてもよい。これにより、窓ガラスにおける霜取りまたは曇り止めを実現することができる。
【0045】
[変形例3]
実施の形態では、電子部品10が積層体である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。また、実施の形態では、電子部品10がプレス加工を施されるものである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0046】
以下、
図4を用いて、本変形例の電子部品30について説明する。
図4は、本変形例の電子部品30の構成の一例を示す斜視図である。
【0047】
図4に示すように、電子部品30は、フレキシブル基板8(第1部材の一例に相当)、ICチップ9、および銅箔線11(導体の一例に相当)を有する。ICチップ9および銅箔線11は、フレキシブル基板8上に設けられている。銅箔線11は、ICチップ9と電気的に接続されている。
【0048】
銅箔線11は、部分的に太く形成された太線部13を有する。太線部13は、フレキシブル基板8の折り曲げ部12の位置に設けられている。折り曲げ部12は、銅箔線11が設けられたフレキシブル基板8に対して曲げ加工が施される部分である。
【0049】
このように、曲げ加工が施される前に、折り曲げ部12に位置する銅箔線11を、他の部分よりも太く形成しておくことにより、曲げ加工の際の銅箔線11の応力を緩和し、銅箔線11の断線を防止することができる。また、フレキシブル基板8に穴を開ける必要がないため、幅広い種類の電子部品に適用することができる。よって、本変形例は、実施の形態と同様に、導体の断線防止を実現するとともに、高い汎用性を実現することができる。
【0050】
なお、本変形例では、導体の一例として銅箔線11を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、導体は、リード線であってもよい。
【0051】
以上、変形例について説明した。上記変形例は、任意に組み合わせて実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示の電子部品およびその製造方法は、線状の導体が部材に設けられ、曲げ加工またはプレス加工が施される電子部品およびその製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 表層部材
2 第1接着部材
3 絶縁シート
4 電熱線
5 第2接着部材
6、13 太線部
7 立体模様
8 フレキシブル基板
9 ICチップ
10、30 電子部品
11 銅箔線
12 折り曲げ部
20 検知デバイス