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特開2022-118616異種金属接合体および異種金属接合体の製造方法
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  • 特開-異種金属接合体および異種金属接合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118616
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】異種金属接合体および異種金属接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/02 20060101AFI20220805BHJP
   B23K 9/23 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
B23K9/02 M
B23K9/23 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015267
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】隅川 倫成
(72)【発明者】
【氏名】森戸 大海
【テーマコード(参考)】
4E001
4E081
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001CA01
4E001CB01
4E081BA02
4E081BA08
4E081DA13
4E081FA12
(57)【要約】
【課題】別部材を使用することなく、接合強度が高い異種金属接合体を提供する。
【解決手段】第1部材1と第2部材2とが重ねて配置されている。第2部材2は、第1部材1の第1金属材料の融点より高い融点の第2金属材料からなる。第3部材3は、第1凝固部3Xと第2凝固部3Yとを有する。第3部材は、第1金属材料の主成分の金属と同じ金属を主成分とする第3金属材料からなる。第1凝固部3Xは、第2部材2の貫通孔2hに存在する部分を有する。第2凝固部3Yは、第1凝固部3Xに対して第1部材1と反対側に形成されている。第2凝固部3Yは、第1部材1と第2部材2とが重なる方向について、貫通孔2hと重なる重複部13aと、貫通孔2hと重ならない非重複部13bとを有する。非重複部13bは、第2部材2の第2反対面2B上に形成されている。第2部材2は、非重複部13bと第1部材1とに挟まれている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属材料からなる第1部材と、前記第1部材に重ねて配置され、前記第1金属材料の融点より高い融点の第2金属材料からなる第2部材とを備えた異種金属接合体であり、
前記第2部材に、前記第1部材と重なる方向に貫通した貫通孔が形成され、
前記貫通孔に存在する部分を有する第1凝固部と、第1凝固部と連続しているとともに前記第1凝固部に対して前記第1部材と反対側に形成された第2凝固部とを有する第3部材を備え、
前記第3部材は、第1金属材料の主成分の金属と同じ金属を主成分とする第3金属材料からなり、
前記第1凝固部と前記第1部材とが融合しており、
前記第2凝固部は、前記第1部材と前記第2部材とが重なる方向について、前記貫通孔と重なる部分と、前記貫通孔と重ならない部分とを有し、
前記貫通孔と重ならない部分は、前記第2部材において前記第1部材と反対側の面上に形成され、
前記貫通孔と重ならない部分と前記第1部材とが、前記第1部材と前記第2部材とが重なる方向に、前記第2部材を挟んでいることを特徴とする異種金属接合体。
【請求項2】
前記第1金属材料は、アルミニウム合金であり、
前記第2金属材料は、鋼材であり、
前記第3金属材料の主成分がアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の異種金属接合体。
【請求項3】
複数の前記貫通孔が離れて形成され、
複数の前記第3部材が離れて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の異種金属接合体。
【請求項4】
前記貫通孔は、一方向に長い長孔であり、
前記第1凝固部および前記第2凝固部が、一方向に長いことを特徴とする請求項1または2に記載の異種金属接合体。
【請求項5】
第1金属材料からなる第1部材と、前記第1金属材料の融点より高い融点の第2金属材料からなる第2部材とを備えた異種金属接合体の製造方法であり、
前記第1部材と前記第2部材とを重ね合わせた後、前記第2部材において前記第1部材と重なる方向に貫通した貫通孔およびその周囲に、前記第1金属材料の融点より高く且つ前記第2金属材料の融点より低い温度で溶融した溶融金属を流す工程と、
前記貫通孔およびその周囲に流れた溶融金属を凝固させることにより、前記貫通孔に第1凝固部を形成するとともに、前記第1凝固部に対して前記第1部材と反対側に第2凝固部を形成する工程とを有し、
前記溶融金属は、前記第1金属材料の主成分の金属と同じ金属を主成分とした溶融金属であり、
前記第1凝固部は、前記第1部材と融合しており、
前記第2凝固部は、前記第1部材と前記第2部材とが重なる方向について、前記貫通孔と重なる部分と、前記貫通孔と重ならない部分とを有し、
前記貫通孔と重ならない部分は、前記第2部材において前記第1部材と反対側の面上に形成され、
前記貫通孔と重ならない部分と前記第1部材とが、前記第1部材と前記第2部材とが重なる方向に、前記第2部材を挟んでいることを特徴とする異種金属接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属部材が重ね合わされた異種金属接合体および異種金属接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種金属部材が重ね合わされた異種金属接合体は、建物や乗物などの様々な分野で利用されている。例えば、鋼材とアルミニウム合金との接合体がある。鋼材とアルミニウム合金とを一般的な方法で溶接した場合、接合界面に脆い金属間化合物が形成される。金属間化合物は、鋼材とアルミニウム合金との接合強度を低下させる。そこで、これらの接合強度を高める技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、鋼部材と、貫通孔が形成されたアルミニウム合金部材とを重ね合わせ、貫通孔を覆うようにアルミニウム溶加材を移行させて、鋼部材を溶融させずにアルミニウム合金部材を溶融し、アルミニウム合金部材に、アルミニウム合金部材と鋼部材との界面から離れるに従って貫通孔の外側に広がる形状のアルミ溶融金属凝固部を形成する方法が記載されている。この方法によると、鋼部材とアルミ溶融金属凝固部との金属間化合物の発生を低減できるため、異種金属材同士の接合強度が向上する。
【0004】
特許文献2には、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と鋼製の第2の板との接合に、鋼製の接合補助部材を使用する方法が記載されている。特許文献3には、鋼以外の材料からなる第1の板と鋼製の第2の板との接合に、鋼製の接合補助部材を使用する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-023994号公報
【特許文献2】特開2019-150831号公報
【特許文献3】特開2020-078826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法によると、アルミ溶融金属凝固部と鋼部材との界面に金属間化合物が発生することを低減させることができるものの、これらの界面に金属間化合物が発生する。脆い金属間化合物は、鋼部材とアルミニウム合金部材との接合強度を低下させる。また、特許文献2および特許文献3に記載された方法は接合補助部材を使用するが、接合補助部材などの別部材を使用することなく、異種金属材同士の接合強度を向上させることが望ましい。
【0007】
本発明は、別部材を使用することなく、接合強度が高い異種金属接合体を提供することを目的とする。
また、本発明は、別部材を使用することなく、接合強度が高い異種金属接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の異種金属接合体は、第1金属材料からなる第1部材と、前記第1部材に重ねて配置され、前記第1金属材料の融点より高い融点の第2金属材料からなる第2部材とを備えた異種金属接合体であり、前記第2部材に、前記第1部材と重なる方向に貫通した貫通孔が形成され、前記貫通孔に存在する部分を有する第1凝固部と、第1凝固部と連続しているとともに前記第1凝固部に対して前記第1部材と反対側に形成された第2凝固部とを有する第3部材を備え、前記第3部材は、第1金属材料の主成分の金属と同じ金属を主成分とする第3金属材料からなり、前記第1凝固部と前記第1部材とが融合しており、前記第2凝固部は、前記第1部材と前記第2部材とが重なる方向について、前記貫通孔と重なる部分と、前記貫通孔と重ならない部分とを有し、前記貫通孔と重ならない部分は、前記第2部材において前記第1部材と反対側の面上に形成され、前記貫通孔と重ならない部分と前記第1部材とが、前記第1部材と前記第2部材とが重なる方向に、前記第2部材を挟んでいる。
【0009】
第2部材の貫通孔に、第3部材の第1凝固部が存在する。第1凝固部は、第1部材と融合している。第1凝固部は、第1部材に対して動かない。第2部材に対してせん断方向(第2部材の面方向)へ引っ張る力が作用した場合、第2部材の貫通孔に存在する第1凝固部により、第2部材のせん断方向への移動が抑制される。
また、第1部材と第3部材の第2凝固部とが、第1部材と第2部材とが重なる方向について、第2部材を挟んでいる。第2凝固部は、第1凝固部を介して第1部材とつながっている。第2凝固部は、第1部材に対して動かない。第2部材に対して第1部材から剥離させる方向の力が作用した場合、第2凝固部により、第2部材が第1部材から剥離することが抑制される。
上記より、本発明は、引張せん断強度および剥離強度が高い。また、本発明は、接合補助部材といった別部材を使用していない。
したがって、本発明によると、別部材を使用することなく、接続強度が高い異種金属接合体を提供することができる。
【0010】
また、上記構成において、前記第1金属材料は、アルミニウム合金であってもよい。この場合、前記第2金属材料は、鋼材であってもよい。この場合、前記第3金属材料は、主成分がアルミニウムである金属材料でもよい。
【0011】
上記構成によると、第2部材の鋼材により異種金属接合体の強度を高めつつ、第1部材の軽量なアルミニウム合金により異種金属接合体を軽量化できる。これにより、高強度でありつつ軽量で、且つ、引張せん断強度および剥離強度が高い異種金属接合体を提供することができる。
【0012】
また、上記構成において、複数の前記貫通孔が、離れて形成されていてもよい。複数の前記第3部材が、離れて形成されていてもよい。
【0013】
第2部材の貫通孔に第3部材を形成する際、第2部材において貫通孔の周囲に熱が加えられる。第3部材が離れて形成されている場合、第2部材へ熱が加えられる部分が少なくなるため、第2部材への熱の影響(ひずみなど)を低減できる。
【0014】
また、上記構成において、前記貫通孔は、一方向に長い長孔であってもよい。この場合、前記第1凝固部および前記第2凝固部が、一方向に長くてもよい。
【0015】
第1凝固部が長い場合、第2部材がせん断方向により移動しにくい。
第2凝固部が長い場合、第2部材が第1部材からより剥離しにくい。
これらにより、引張せん断強度および剥離強度がより高い異種金属接合体を提供することができる。
【0016】
本発明の異種金属接合体の製造方法は、第1金属材料からなる第1部材と、前記第1金属材料の融点より高い融点の第2金属材料からなる第2部材とを備えた異種金属接合体の製造方法であり、
前記第1部材と前記第2部材とを重ね合わせた後、前記第2部材において前記第1部材と重なる方向に貫通した貫通孔およびその周囲に、前記第1金属材料の融点より高く且つ前記第2金属材料の融点より低い温度で溶融した溶融金属を流す工程と、
前記貫通孔およびその周囲に流れた溶融金属を凝固させることにより、前記貫通孔に第1凝固部を形成するとともに、前記第1凝固部に対して前記第1部材と反対側に第2凝固部を形成する工程とを有し、
前記溶融金属は、前記第1金属材料の主成分の金属と同じ金属を主成分とした溶融金属であり、
前記第1凝固部は、前記第1部材と融合しており、
前記第2凝固部は、前記第1部材と前記第2部材とが重なる方向について、前記貫通孔と重なる部分と、前記貫通孔と重ならない部分とを有し、
前記貫通孔と重ならない部分は、前記第2部材において前記第1部材と反対側の面上に形成され、
前記貫通孔と重ならない部分と前記第1部材とが、前記第1部材と前記第2部材とが重なる方向に、前記第2部材を挟んでいる。
【0017】
上記構成によると、別部材を使用することなく、上述した接続強度が高い異種金属接合体を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、別部材を使用することなく、引張せん断強度および剥離強度が高い異種金属接合体を提供することができる。
本発明によると、別部材を使用することなく、引張せん断強度および剥離強度が高い異種金属接合体を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る異種金属接合体の平面図である。
図2】第1実施形態に係る異種金属接合体の一部断面図(図1のII-II線に沿った断面図)である。
図3】第2実施形態に係る異種金属接合体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
ここでは、本発明の第1実施形態に係る異種金属接合体について、図1および図2を参照しつつ以下に説明する。図1に異種金属接合体100の平面図を示し、図2図1のII-II線に沿った断面図を示している。
【0021】
異種金属接合体100は、図1および図2に示すように、第1部材1と、第1部材1に重ねて配置された第2部材2と、第3部材3とを備える。
【0022】
第1部材1は、図2に示すように、板状の部材である。第1部材1は、第2部材2に対向した第1対向面1Aと、第1対向面1Aと反対側の第1反対面1Bとを有する。
【0023】
第2部材2は、板状の部材である。第2部材2は、第1部材1に対向した第2対向面(対向面)2Aと、第2対向面2Aと反対側の第2反対面(反対面)2Bとを有する。第2部材2には、第1部材1と重なる方向に貫通した貫通孔2hが形成されている。
【0024】
貫通孔2hは、図1に示すように、異種金属接合体100の平面視において、略円形状である。図1に示す異種金属接合体100の平面視は、異種金属接合体100を、第1部材1と第2部材2とが重なる方向について、第2部材2側から視た図である。
【0025】
第3部材3は、図2に示すように、第1凝固部3Xと、第2凝固部3Yとを有する。図2には、分かりやすいように第1凝固部3Xと第2凝固部3Yとの境界を破線で示しているが、第1凝固部3Xと第2凝固部3Yとの境界は無い。第1凝固部3Xと第2凝固部3Yとは、連続している。
【0026】
第1凝固部3Xは、第2部材2の第2反対面2Bの高さから第1部材1側の部分である。第1凝固部3Xは、第2部材2の貫通孔2hに存在する部分を有する。第1凝固部3Xは、第1部材1と第2部材2とが重なる方向について、貫通孔2hより長くてもよい。図2には、第1凝固部3Xが、第1部材1の第1対向面1Aの高さより第1反対面1B側まで存在する。第1凝固部3Xは、第1部材1の第1反対面1Bの高さまで存在してもよく、第1反対面1Bの高さを超えて(図2中の第1反対面1Bの高さより低い位置まで)存在してもよい。
【0027】
第1凝固部3Xの第1部材1に近い端部は、第1部材1と融合している。本発明における「融合」とは、第1凝固部3Xの端部の成分と第1部材1の成分とが、混じり合っていることである。第1凝固部3Xの端部と第1部材1とは、つながっている。図2には分かりやすいように、第1凝固部3Xの端部と第1部材1との境界を実線で示しているが、第1凝固部3Xの端部と第1部材1との境界が明確である場合もあり、第1凝固部3Xの端部と第1部材1との境界が明確でない場合もある。例えば、第1凝固部3Xの材質と第1部材1の材質が同じ場合、第1凝固部3Xの端部と第1部材1との境界が明確でないことがある。
【0028】
第2凝固部3Yは、第1凝固部3Xに対して、第1部材1と反対側に形成されている。第2凝固部3Yは、第1部材1と第2部材2とが重なる方向について、貫通孔2hと重なる重複部13aと、貫通孔2hと重ならない非重複部13bとを有する。非重複部13bは、図中の第1凝固部3Xの上に形成されている。非重複部13bは、第2反対面2Bの上に形成されている。図2には分かりやすいように、重複部13aと非重複部13bとの境界を二点鎖線で示しているが、重複部13aと非重複部13bとの境界は無い。重複部13aと非重複部13bとは連続している。非重複部13bは、重複部13aおよび第1凝固部3Xを介して、第1部材1とつながっている。非重複部13bは、第1部材1に対して動かない。
【0029】
図2に示す異種金属接合体100の断面視において、第2凝固部3Yの厚さは、中央付近から外側に向かって低くなっている。第2凝固部3Yは、図1に示す異種金属接合体100の平面視において、略円形状である。非重複部13bは、重複部13aの周囲に形成されている。非重複部13bは、重複部13aを取り囲んでいる。
【0030】
第2部材2には、図1に示すように、複数の貫通孔2hが離れて形成されている。複数の貫通孔2hは、第2部材2の長手方向に離れていてもよい。複数の貫通孔2hは、第2部材2の長手方向に関係なく、ランダムに離れていてもよい。
【0031】
第2凝固部3Yを有する第3部材3は、離れて形成されている。複数の第3部材3は、第2部材2の長手方向に離れていてもよい。複数の第3部材3は、第2部材2の長手方向に関係なく、ランダムに離れていてもよい。
【0032】
次に、第1部材1の材質、第2部材2の材質および第3部材3の材質について説明する。
【0033】
第1部材1は、第1金属材料からなる(図2参照)。第2部材2は、第1部材1の融点より高い融点の第2金属材料からなる。本発明において、「金属材料」とは、例えば、金属でもよく、金属間化合物でもよく、合金でもよい。本発明において、「金属材料」は、1種類の金属でもよい。この場合、「金属材料」は、金属に加え、非金属を含んでいてもよく、非金属を含んでいなくてもよい。本発明において、「金属材料」は、金属間化合物でもよい。金属間化合物とは、2種類以上の金属からなる化合物であり、元の金属と異なる結晶構造を有する化合物である。金属間化合物に、非金属が含まれていてもよく、非金属が含まれていなくてもよい。本発明において、「金属材料」は、1種類の金属を含む合金でもよく、2種類以上の金属を含む合金でもよい。合金に、非金属が含まれていてもよく、非金属が含まれていなくてもよい。
上述した非金属は、例えば、ある特性を高めるために含まれていてもよく、不可避不純物などとして含まれていてもよい。
【0034】
第1部材1の材質および第2部材2の材質は、上記を満たす限り、特定の材質に限定されない。例えば、第1部材1の材質が、純アルミニウムまたはアルミニウム合金でもよい。第2部材2の材質が、鋼材でもよい。
【0035】
純アルミニウムとは、アルミニウム及び不可避不純物からなる材料である。
アルミニウム合金は、特に限定されるものではない。アルミニウム合金として、例えば、アルミニウム-銅系合金(Al-Cu系合金)、アルミニウム-マンガン系合金(Al-Mn系合金)、アルミニウム-ケイ素系合金(Al-Si系合金)、アルミニウム-マグネシウム系合金(Al-Mg系合金)、アルミニウム-ジルコニウム系合金(Al-Zr系合金)アルミニウム-マグネシウム-ケイ素系合金(Al-Mg-Si系合金)、アルミニウム-亜鉛-マグネシウム系合金(Al-Zn-Mg系合金)、アルミニウム-亜鉛-マグネシウム-銅系合金(Al-Zn-Mg-Cu系合金)、アルミニウム-鉄-ジルコニウム系合金(Al-Fe-Zr系合金)が挙げられる。上記の例として、例えば、JIS A1000系、2000系、3000系、4000系、5000系が挙げられる。アルミニウム合金は、不可避不純物を含んでいてもよい。
【0036】
鋼材は、特に限定されるものではない。鋼材として、例えば、ステンレス鋼、SPCC(冷間圧延鋼板(JIS G 3141))を使用してもよい。
【0037】
第3部材3は、第1金属材料の主成分の金属と同じ金属を主成分とする第3金属材料からなる。この「金属材料」は、上述した本発明の「金属材料」と同様である。第1金属材料の主成分の金属とは、例えば、第1部材1に70%以上含まれる金属である。第3部材3の主成分の金属とは、例えば、第3部材3に90%以上含まれる金属である。第1部材1の主成分の金属と第3部材3の主成分の金属とが同じであることにより、異種金属接合体100の製造工程において、第1部材1と、第3部材3の第1凝固部3Xとが融合する。
【0038】
第3部材3の材質は、上記を満たす限り、特定の材質に限定されない。例えば、第1部材1の第1金属材料が純アルミニウムまたはアルミニウム合金である場合、純アルミニウムおよびアルミニウム合金の主成分はアルミニウム原子であることから、第3部材3の第3金属材料は、アルミニウム原子を主成分とするアルミニウムまたはアルミニウム合金である。第1部材1の材質と第3部材3の材質とは、同じでもよく、異なってもよい。
【0039】
次に、異種金属接合体100の製造方法を説明する。
【0040】
図2に示すように、第1部材1と第2部材2とを重ね合わせる。第1部材1の第1金属材料の融点より高く且つ第2部材2の第2金属材料の融点より低い温度で溶融させた溶融金属を、第2部材2の貫通孔2hおよびその周囲(第2部材2の第2反対面2B上)に流す。溶融金属は、第1部材1の第1金属材料の主成分である金属と同じ金属を主成分とするものである。溶融金属を流す方法は、特に限定されない。例えば、アーク溶接により、第2部材2の貫通孔2hおよびその周囲に溶融金属を流してもよい。
【0041】
溶融金属を貫通孔2hに流すことにより、第1部材1において溶融金属と接した部分およびその周囲が溶融する。第1部材1の溶融した部分と溶融金属とが混ざり合う。第1部材1の溶融した部分と溶融金属とは混ざり合った状態で凝固する。
【0042】
溶融金属が凝固することにより、貫通孔2hに第1凝固部3Xが形成されるとともに、第1凝固部3Xに対して第1部材1と反対側に第2凝固部3Yが形成される。第1凝固部3Xの第1部材1に近い端部と、第1部材1とは、融合している。第2凝固部3Yの重複部13aは、第1凝固部3Xの上に形成されている。第2凝固部3Yの非重複部13bは、第2部材2の第2反対面2Bの上に形成されている。非重複部13bと第1部材1とは、第1部材1と第2部材2とが重なる方向に、第2部材2を挟んでいる。
【0043】
上記方法によって製造された異種金属接合体100によると、以下の効果が得られる。
【0044】
図2に示すように、第2部材2の貫通孔2hに、第3部材3の第1凝固部3Xが存在する。第1凝固部3Xは、第1部材1と融合している。第1凝固部3Xは、第1部材1に対して動かない。第2部材2に対してせん断方向(第2部材の面方向)へ引っ張る力が作用した場合、第2部材2の貫通孔2hに存在する第1凝固部3Xにより、第2部材2のせん断方向への移動が抑制される。
【0045】
第1部材1と第2凝固部3Yの非重複部13bとが、第1部材1と第2部材2とが重なる方向について、第2部材2を挟でいる。非重複部13bは、重複部13aおよび第1凝固部3Xを介して第1部材1とつながっている。非重複部13bは、第1部材1に対して動かない。第2部材2に対して第1部材1から剥離させる方向の力が作用した場合、非重複部13bにより、第2部材2が第1部材1から剥離することが抑制される。
【0046】
上記より、第2部材2の引張せん断強度および剥離強度が高い。また、異種金属接合体100には、接合補助部材といった別部材を使用していない。
したがって、本実施形態に係る異種金属接合体100は、別部材を使用することなく、接続強度が高い異種金属接合体である。
【0047】
本実施形態に係る異種金属接合体100は、建物、乗物など様々な用途に使用可能である。例えば、異種金属接合体100を自動車および鉄道車両などの乗物に使用してもよい。
【0048】
第1部材1の材質および第2部材2の材質は特に限定されないが、例えば、第1部材1をアルミニウム合金とし、第2部材2を鋼材とした場合、第2部材2の鋼材により異種金属接合体100の強度を高めつつ、第1部材1のアルミニウム合金により軽量化を図ることができる。アルミニウム合金と鋼材を直接溶接で接合した場合、これらの界面に金属間化合物が生成するため、接合強度が低くなるが、上記構成によると、高強度でありつつ軽量で、且つ、引張せん断強度および剥離強度が高い異種金属接合体100を提供することができる。第1部材1がアルミニウム合金である場合、第3部材3は、アルミニウムを主成分とする純アルミニウムまたはアルミニウム合金であることが好ましい。これにより、第1部材1と第3部材3の第1凝固部Xが融合しやすい(図2参照)。
【0049】
また、本実施形態では、図1に示すように、第2部材2に、複数の貫通孔2hが、離れて形成されている。第3部材3が、離れて形成されている。第3部材3を形成するために貫通孔2hに溶融金属を流したとき、第2部材2に熱が加えられるが、本実施形態では、貫通孔2h同士が離れているため、第2部材2への熱の影響(ひずみなど)を低減できる。
【0050】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図3を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、(1)第2部材202の貫通孔202hの形状、および、(2)第3部材203の形状である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0051】
図3に、異種金属接合体200の平面図を示している。図3に示すように、第2部材202に、貫通孔202hが形成されている。貫通孔202hは、一方向に長い長孔である。貫通孔202hは、第2部材202の長手方向に長くてもよい。貫通孔202hは、第2部材202の長手方向に交差する方向に長くてもよい。
【0052】
図3に、第3部材203の第2凝固部203Yを示している。図3に示す平面図は、第1部材201と第2部材202とが重なる方向について、異種金属接合体200を第2部材202側から視た図である。第2凝固部203Yは、異種金属接合体200の平面視において、貫通孔202hと重複した重複部213aと、貫通孔202hと重複していない非重複部213bとを有する。非重複部213bは、第2部材202の第2反対面202Bの上に形成されている。
【0053】
異種金属接合体200の平面視において、重複部213aの奥に、図示しない第1凝固部203Xが存在する。第1凝固部203X(図示せず)は、貫通孔202hに存在する。第1凝固部203X(図示せず)と図3に示す第2凝固部203Yとは、連続している。
【0054】
第1凝固部203X(図示せず)は、貫通孔202hと同じ方向に長い。第2凝固部203Yの重複部213aおよび非重複部213bは、貫通孔202hと同じ方向に長い。
【0055】
第1部材201の材質、第2部材202の材質および第3部材203の材質は、第1実施形態の第1部材1(図示せず)の材質、第2部材202の材質および第3部材203の材質と同様である。第1部材201の材質、第2部材202の材質および第3部材203の材質として、例えば、第1実施形態で例示した第1部材1、第2部材2および第3部材3の材質を採用してもよい。
【0056】
第2実施形態に係る異種金属接合体200によると、第1実施形態に係る異種金属接合体100と同様に、貫通孔202hに存在する図示しない第1凝固部203Xにより、第2部材202がせん断方向に移動することが抑制される。また、第2凝固部203Yの非重複部213bにより、第2部材202が第1部材201から剥離されることが抑制される。したがって、別部材を使用することなく、接続強度が高い異種金属接合体200を提供することができる。
【0057】
また、貫通孔202hに存在する図示しない第1凝固部203Xが、一方向に長いため、第2部材202が、せん断方向に、より移動しにくい。また、第2凝固部203Yの非重複部213bが一方向に長いため、第2部材2が第1部材1から、より剥離しにくい。
上記より、引張せん断強度および剥離強度がより高い異種金属接合体200を提供することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
例えば、上述の第1実施形態において、図1に示すように、異種金属接合体100の平面視において、第2部材2に形成された貫通孔2hは、略円形状である。異種金属接合体100の平面視において、貫通孔2hに存在する第1凝固部3Xと、第2凝固部3Yとは、略円形状である。
上述の第2実施形態において、図3に示すように、異種金属接合体200の平面視において、第2部材202に形成された貫通孔202hは、一方向に長い長孔である。異種金属接合体100の平面視において、貫通孔202hに存在する第1凝固部203X(図示せず)と、第2凝固部203Yとは、一方向に長い。
しかし、第2部材の貫通孔の形状、貫通孔に存在する第1凝固部の形状、および、第2凝固部の形状は、上記に限定されない。第2部材の貫通孔は、例えば、多角形状でもよく、曲がっていてもよい。
【0060】
また、上述の第1実施形態において、図1に示すように、第2凝固部3Yの非重複部13bは、重複部13aを取り囲んでいる。上述の第2実施形態において、図3に示すように、第2凝固部203Yの非重複部213bは、重複部213aを取り囲んでいる。しかし、第2凝固部の非重複部は、重複部を取り囲んでいなくてもよい。非重複部が、重複部の周囲に、部分的に形成されていてもよい。第2凝固部、重複部および非重複部の形状は、限定されない。
【0061】
また、上述の第1実施形態では、図2に示す異種金属接合体100の断面視において、第2凝固部3Yの厚さが、中央付近から外側に向かって厚さが低くなっている。しかし、第2凝固部3Yの厚さは、全て同じでもよく、中央付近から外側に向かって厚くなってもよい。
【0062】
また、上述の第1実施形態において、図1に示すように、第1部材1は第2部材2よりやや大きい。第2実施形態において、図3に示すように、第1部材201は第2部材202よりやや大きい。しかし、第1部材と第2部材の大きさの大小は限定されない。例えば、第1部材が第2部材より小さくてもよい。第1部材と第2部材とが同じ大きさでもよい。第1部材と第2部材の形状、大きさ、厚さなどは変更可能である。
【0063】
また、上述の第1実施形態および第2実施形態において、異種金属接合体に別の部材が重ね合わされていてもよい。例えば、図2に示す第1部材1の第1反対面1Bに、他の部材が重ね合わされていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、201 第1部材
1A 第1対向面
1B 第1反対面
2、202 第2部材
2h、202h 貫通孔
2A 第2対向面(対向面)
2B、202B 第2反対面(反対面)
3 第3部材
3X 第1凝固部
3Y、203Y 第2凝固部
13a、213a 重複部
13b、213b 非重複部
100、200 異種金属接合体
図1
図2
図3